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  • 特許-誘引性粘着トラップ 図1
  • 特許-誘引性粘着トラップ 図2
  • 特許-誘引性粘着トラップ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】誘引性粘着トラップ
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/14 20060101AFI20221111BHJP
   A01M 1/02 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A01M1/14 S
A01M1/02 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020087032
(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公開番号】P2021168639
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391037087
【氏名又は名称】辻 英明
(72)【発明者】
【氏名】辻 英明
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-149295(JP,A)
【文献】特開2002-205904(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187440(JP,U)
【文献】特開2020-48449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
誘引剤が粘着面の最下辺に接しないが,その下方70cmの範囲内に配置される,ノシメマダラメイガ用,またはタバコシバンムシ用誘引性粘着トラップ.
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,1個当たりでも,同一サイズでも,同一誘引成分量でも,より多くの害虫を捕獲できる誘引性粘着トラップに関する.
【背景技術】
【0002】
誘引性粘着捕虫トラップは害虫を誘引して捕殺するのに便利であるため、害虫の存在を監視するモニター装置や、害虫を駆除する装置として実用されている。これらの装置のうち利用が簡単で便利なものは、紙、プラスチック,木片などの面構造に粘着剤が塗布されるか,あるいは塗布されたシートが装着されており、その粘着面に誘引性フェロモンや食物誘引物質、あるいはその製剤が固定されている。特にマダラメイガ類,シバンムシ類,のような,小型のガ類や甲虫類が飛来して壁に着陸する種類に対しては、トラップを壁面に設置し、誘引剤は粘着面の中央あるいは、誘引ガスの流下を念頭に粘着面の上半分に位置させている.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
害虫をより多く捕獲する目的には,より多くのトラップ数,より大型のトラップ,より多量か強力な誘引物を使用する等が考えられる.しかし,それには装置全体および設置回収の労働に関わるコストが問題となる.
問題の解決には,1個当たりでも,同一サイズでも,同一誘引成分量でも,より多くの害虫を捕獲できるトラップが必要である.
【課題を解決するための手段】
【0004】
誘引剤を粘着面の最下辺と接するか,より下方(0~70cm)に配置する.
本発明は以上の構成よりなる誘引性粘着トラップである.
【発明の効果】
【0005】
誘引剤を粘着面の最下辺と同じかより下方に配置することで,他の配置構成のトラップより圧倒的に多くの飛来害虫を捕獲できるので,他の配置構成のトラップ数の増加,誘引成分の増量,単なる大型化なしでも能率よく害虫を捕獲できる.
【試験例1】
【0006】
粘着紙上方に誘引剤を設置した1トラップが,害虫を左右水平方向からどの程度集中的に誘引捕獲するか試験を行った.
360cm×540cmの室内の北壁に,B5版サイズの粘着紙を,上辺の高さを床上150cmの位置に約1メートル間隔で5枚設置,その中央(C)の粘着紙上辺から離して上方10cm以内に,害虫誘引剤2種を並べて設置し,捕獲される害虫数を調べた.誘引剤はノシメマダラメイガ用(Cidetrak IMM)とタバコシバンムシ用(Cidetrak CB)(いずれも環境機器(株),大阪府高槻市)を用いた.2018年7月11日から22日までの設置期間の結果は以下の通りで,捕獲数は必ずしも誘引剤のある中央の粘着紙(C)に集中しなかった(表1).
【表1】
【試験例2】
【0007】
粘着紙に対する誘引剤の上下位置の影響を調べた.
床上高100cm~155cmの壁面に22.5cm×12.5cmの粘着紙2枚を10cmの隙間をはさんで,上下に並べ,その隙間に誘引剤を設置して,捕獲害虫数を比較した(表2).
発生の多かったノシメマダラメイガの,2019年9月15日~10月1日(16日間)の捕獲結果は表の通りで,4試験例とも誘引剤が粘着紙の下方に位置する区の捕獲数が,上方に位置する区に比べて圧倒的に(∞倍,9.6倍,7.3倍,3.0倍)多かった.
【表2】
【試験例3】
【0008】
粘着紙の下方の誘引剤が,どの程度下方に離れても有効であるのかを知るために試験を行った.
(60×20.7cm)の粘着紙の全紙を使用し,それを南北2室の壁に設置,その下方10cmの間に誘引剤種を,さらにその下に上記粘着紙の半裁品(30×20.7cm)を設置した.捕獲虫数は同一面積に対して比較する目的で,全紙の半裁分について上からA,B,Cについて計数して比較した.2019年6月23日から8月7日までの45日間に捕獲された害虫数を下に示す.この結果(表3),誘引剤が下方40cm~70cmの間に誘引剤がある粘着紙Aには,誘引剤が上方10cm以内にある粘着紙Cより5.6~3.2倍多くの捕獲数があり,下方10~40cmの間に誘引剤がある粘着紙部分Bにはcm2.6~1.9倍の捕獲数がみられた(表3).
すなわち,誘引剤の位置が粘着紙面から下方に70cm離れていても,上方10cm以内の誘引剤よりはるかに有効であった.
【表3】
【試験例4】
【0009】
誘引剤が粘着紙下方5~25cmの間に設置されたトラップが,誘引剤が上方5~25cm,あるいはそれ以上離れた位置にある別のトラップに対してどの程度有利な捕獲効果があるかを調べた.
室内の東壁に,A5版の粘着紙8枚を,縦の中央列に4枚,上辺が床上200cm(A),170(B)cm,148cm(C),110cm(D)となるように壁に設置し,粘着紙AとBの間に誘引剤を設置し,残りの4枚はBCの左右に,粘着紙の縦中心線同士50cm離して設置し,2018年9月17日から11月5日まで(設置期間48日間)設置した.その結果は誘引剤を,粘着紙の下方に設置したトラップが,上方に設置したトラップより圧倒的に多かった(表4).
【表4】
【試験例5】
【00010】
誘引剤下方設置の限界を調べた.
22.5×12.5cmの粘着紙2枚を左右に並べて用い,左粘着紙の右辺と,右粘着紙の左辺との距離を,40cm離して,同じ高さ(下辺が床上140cm)に設置し,一方の粘着紙の真下100cmの壁面に誘引剤を配置して,両方の粘着紙の捕獲虫数を比較した.
9月30日設置,10月28日検査(28日間設置)の試験の繰り返し2区の結果を示す.一方の粘着紙の100cm下に誘引剤がある場合,横に40cm離れている他方の粘着紙に比べてノシメマダラメイガ捕獲数が常に多いとは言えなかった(表5).
【表5】
【実施例1】
【0011】
粘着面や大量の捕獲害虫に人体を触れさせない目的で,縦長粘着紙(60×20.7cm)を中央で内側に曲げ上下辺を結合(選択図参照),特殊なリング状にして壁面に設置し,誘引剤をリングの下側外部位置に配置して害虫の捕獲数を調べた.その結果,誘引剤がトラップから離れて下側にある場合,ノシメマダラメイガ,タバコシバンムシの両種成虫がトラップの左右の開口部から侵入し,多数捕獲されることがわかった.
設置39日間の捕獲結果
北室南壁: ノシメマダラメイガ240匹,タバコシバンムシ18匹
南室北壁: ノシメマダラメイガ 74匹,タバコシバンムシ 48匹
【実施例2】
【0012】
上記の半幅の粘着紙の折り曲げ設置で同様の試験を行ったところ.10月3日~18日(15日間)設置の結果,粘着紙面全体に捕獲がみられた.
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1
図2】粘着面が露出せず,本体二重構造の内側にある場合の側面図(縦の破線は壁面) a)誘引剤が粘着面の下辺に接する位置にある.b)c)誘引剤が本体トラップ最下部にあり,粘着面に接しない位置にある.d)誘引剤がトラップの本体を離れて下方に位置するが,その下辺は粘着面下辺より70cm以内に位置する.e)誘引剤をd)の位置に安定させるために,本体下部を延長させるか,紙,プラスチック,木片,紐,針金などで,本体に連結させる.
図3】選択図 a)粘着面が露出せず,本体二重構造の内側にある一例(見取り図).b)上記a)の側面図(断面図).c)粘着面が露出せず,本体二重構造の内側にある一例(見取り図).
図1
図2
図3