(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】果実野菜皮むき装置及び果実野菜皮むき方法
(51)【国際特許分類】
A23N 7/00 20060101AFI20221111BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20221111BHJP
B26D 3/26 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A23N7/00 A
B26D7/26
B26D3/26 605D
B26D3/26 605Z
(21)【出願番号】P 2018145879
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-06-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)開催日:平成30年3月5日 集会名:日本機械学会 北海道学生会 学生員卒業研究発表講演会(第47回) (2)開催日:平成30年3月8日、3月9日 集会名:計測自動制御学会北海道支部学術講演会(第50回) (3)開催日:平成30年6月2日~6月5日 集会名:ロボティクス・メカトロニクス講演会(2018)
(73)【特許権者】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人北海道国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】518275958
【氏名又は名称】大槻理化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【氏名又は名称】吉田 芳春
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】星野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】我妻 直仁
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-158593(JP,A)
【文献】特開昭53-015481(JP,A)
【文献】実開平06-072396(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 7/00
B26D 7/26
B26D 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として回転する果実野菜にピーラを押し当てて皮むきを行う果実野菜皮むき装置であって、
前記ピーラと、前記ピーラを先端部で支持するアームと、前記アームを回動させる駆動手段と、前記駆動手段による前記アームの回動を制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、前記ピーラが前記果実野菜の表面に沿ったなぞり動作で皮むきするように、前記ピーラの前記果実野菜に対する押し込み力がほぼ一定となるように前記駆動手段による前記アームの回動を制御する
ように構成されており、
前記駆動手段は、前記アームを前記回転軸と垂直な軸を中心として回動させる第1の回転手段と、少なくとも前記アームを前記回転軸と平行な軸を中心として回動させる第2の回転手段とを備えている
ことを特徴とする果実野菜皮むき装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ピーラが前記果実野菜に押し込まれかつ前記果実野菜の表面に沿って送られるように前記第1の回転手段及び/又は前記第2の回転手段による前記アームの回転を制御すると共に、前記ピーラの前記果実野菜への押し込み力があらかじめ設定された値を超えた場合に前記第1の回転手段又は前記第2の回転手段による前記アームの回動を逆転することにより、前記ピーラが前記なぞり動作を行うように制御することを特徴とする請求項
1に記載の果実野菜皮むき装置。
【請求項3】
前記ピーラが、皮むき用の刃と、前記刃を支持すると共に前記果実野菜の方向に可動な支持体と、前記支持体を前記果実野菜の方向へ押圧する押しバネと、前記押しバネの押し込み量があらかじめ定めた値を超えた場合に作動するスイッチとを備えており、前記制御手段は、前記スイッチが作動した際に前記第1の回転手段又は前記第2の回転手段による前記アームの回動を逆転するように構成されていることを特徴とする請求項
2に記載の果実野菜皮むき装置。
【請求項4】
前記ピーラが前記果実野菜の表面に常に対向するように、前記ピーラは前記アームに対して回転自在に連結されていることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の果実野菜皮むき装置。
【請求項5】
前記第2の回転手段は、前記第1の回転手段と前記アームとを前記回転軸と平行な軸を中心として回動させるように構成されていることを特徴とする請求項
1から4のいずれか1項に記載の果実野菜皮むき装置。
【請求項6】
前記果実野菜を把持する果実野菜把持部と、前記果実野菜把持部をその回転軸を中心として回転させる第3の回転手段とをさらに備えており、
前記果実野菜把持部は、外周面に螺旋状の鋭利な先端を有するネジ山又は螺旋状の凸条刃を備えた中空の円筒部を同軸に備えていることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の果実野菜皮むき装置。
【請求項7】
前記果実野菜の中心部分を円筒状に穿孔する穿孔部を前記円筒部の先端部に備えていることを特徴とする請求項
6に記載の果実野菜皮むき装置。
【請求項8】
前記果実野菜の食い込みを停止させる止め部材を前記円筒部の付け根部に備えていることを特徴とする請求項
6又は
7に記載の果実野菜皮むき装置。
【請求項9】
皮むきすべき果実野菜を果実野菜固定用チャック機構に固定し、
回転軸を中心として前記果実野菜固定用チャック機構を回転させ、
ピーラを先端部で支持するアームを回動させて前記ピーラを前記果実野菜に当接させ、
前記ピーラが前記果実野菜の表面に沿ったなぞり動作で皮むきするべく、前記ピーラの前記果実野菜に対する押し込み力がほぼ一定となるように前記アームの回動を制御する
と共に、前記ピーラが前記果実野菜に押し込まれかつ前記果実野菜の表面に沿って送られるように前記アームの回転を制御すると共に、前記ピーラの前記果実野菜への押し込み力があらかじめ設定された値を超えた場合に前記アームの回動を逆転することにより、前記ピーラが前記なぞり動作を行うように制御することを特徴とする果実野菜皮むき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実野菜の表皮をむくピーラを備える果実野菜皮むき装置、及びこの果実野菜皮むき装置による果実野菜皮むき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的硬質で凹凸が多い表皮を有しかつ偏心率の大きい南瓜等の果実野菜を高速で回転させ、その表皮にピーラの刃を押し当てて皮を切削する工程を有する、従来の果実野菜の皮むき方法において、その表皮を余すことなく、所定の厚みで均一に、なおかつ連続して切削するには、表皮に押し当てるピーラの刃の力を手作業で精確に制御する、熟練した作業員のスキルが必要であった。しかしながら、このようなスキルを有する作業員の確保は次第に難しくなってきており、このようなスキルを必要とせずに、果実野菜の表皮を余すことなく所定の厚みで均一に連続してむくことが可能な果実野菜皮むき装置が求められている。
【0003】
特許文献1には、南瓜等の食用野菜の皮を剥離する皮剥離装置であって、剥離対象物を回転させるための駆動装置部と、剥離対象物を保持するための保持装置部とを有する皮剥離装置において、支持台に装着保持される軸と、ベアリングを介して軸に回転自在に支持されるベアリングケースと、ベアリングケース外周部近傍にジョイントを介して装着されカッター装着部を装着した柄の各々を設けて剥離装置部と、柄の適当箇所にステーを設け、ステーに一定の範囲内において回転自在に保持される取り付け板を設け、柄と取り付け板とはスプリングにて係止され、取り付け板に、一定範囲内にて回転自在な刃を有するカッターを装着してカッター装着部とを設けることにより、一般に使用されている剥離装置と異なり、円板状のベアリングケース外周部近傍に装着された柄に設けられているカッターが軸を回転中心として円運動を行うので、野菜に対して適切な角度が得られ効率よく剥離作業を行うことができるようにした技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、南瓜の芯取り装置において、皮むき用の刃物と、南瓜を回転させる駆動機構と、芯取り刃物がフリーに回転する機構とを設けることにより、南瓜の芯取り工程と皮むき工程を1つの装置で行うことができるようにした技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、野菜類の自動皮むき装置において、回転させた野菜類に可動アーム部材上に取り付けた皮むき刃を当接させ、可動アーム部材の基端を野菜類の中心に直交するアーム移動軸線のまわりに形成した閉曲線を一方向に周回させるようにした皮むき機構を設けることにより、丁寧かつ均一な野菜類の皮むきが可能となるとともに、多種並びに形状寸法にばらつきの多い野菜類の処理に適応可能で、製造コストを抑え、しかも連続稼働の信頼性を向上させた技術が開示されている。
【0006】
特許文献4には、南瓜等の野菜の皮を剥く装置において、中心に穴が形成されたフレームであって、穴は皮を剥く野菜を受け、同野菜を貫通させることができる大きさとしたフレームを備え、所定数のナイフを、穴の中心に向かって放射状にスライド可能なるようにフレームに搭載するとともに、フレーム全周に同様にして配置し、なおかつ、野菜を前記穴に導入し穴を通過させて野菜の皮を剥く際、所定数のナイフが、野菜にわずかに触れる程度に穴の内側に伸びるように、所定数のナイフを前記穴の中心に向かって押すスプリングを備える構成により、円形、長円形又は細長形の野菜の皮を、1回又は最低限の動きで剥くことができるようにした技術が開示されている。
【0007】
特許文献5には、棒状野菜の長手方向の両端を支持する野菜支持機構を連続的に軸回転させる間に、棒状野菜の皮むき機構を、対向する無端のピーラ搬送部を連続的に循環回転させ、皮むき空間内の棒状野菜に対して複数のピーラの刃を両側から圧接した状態で連続的に棒状野菜の長手方向に移動させることにより、皮むき空間内にて棒状野菜を連続的に軸回転させる間に、棒状野菜を螺旋状に続けて皮むきを行って棒状野菜の全周を皮むきすることができ、従来装置の如く棒状野菜が間欠的に回転しながら一対のピーラが往復移動するという動作を繰り返す必要はなく、棒状野菜1個当たりの皮むき時間を大幅に短縮した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平1-225470号公報
【文献】実用新案登録第3186205号公報
【文献】実開平5-53492号公報
【文献】特開2000-201805号公報
【文献】特開2014-97005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~5に示すような従来の果実野菜の表皮の皮むき装置では、果実野菜の外形若しくは果実野菜表面の幾何学形状を特に考慮することなく、果実野菜の表皮の皮むき装置に含まれるピーラの動作機構が設計されているか、又は果実野菜の外形が略球形若しくは略棒状等の特定形状を有していることを想定してこのような特定形状の果実野菜の外形をなぞるようにピーラの動作機構が設計されているため、南瓜のように、比較的硬質で幾何学形状の多い皮を有し、かつ比較的偏心率の大きい、果実野菜の表面に適切に対応させてピーラをなぞらせ、果実野菜の表皮を余すことなく所定の厚みで均一に連続してむくことは困難であった。
【0010】
従って本発明の目的は、比較的硬質で凹凸の多い幾何学形状の表皮を有し、かつ比較的偏心率の大きい南瓜等の果実野菜であっても、果実野菜の表皮を余すことなく所定の厚みで均一に連続してむくことが可能な果実野菜皮むき装置及び果実野菜皮むき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、回転軸を中心として回転する果実野菜にピーラを押し当てて皮むきを行う果実野菜皮むき装置は、ピーラと、ピーラを先端部で支持するアームと、アームを回動させる駆動手段と、駆動手段によるアームの回動を制御する制御手段とを備えている。制御手段は、ピーラが果実野菜の表面に沿ったなぞり動作を行って皮むきするように、ピーラの果実野菜に対する押し込み力がほぼ一定となるように駆動手段によるアームの回転を制御する。
【0012】
制御手段により、ピーラの果実野菜に対する押し込み力がほぼ一定となるようにアームの回転が制御されるので、ピーラが果実野菜の表面に沿ったなぞり動作を行って皮むきが行われる。その結果、南瓜等の、比較的硬質で凹凸の多い幾何学形状の表皮を有し、かつ比較的偏心率の大きい果実野菜についても、その表皮に沿ってピーラがなぞり動作を行うので、その表皮を余すことなく所定の厚みで均一に連続してむくことができる。
【0013】
駆動手段は、アームを前述の回転軸と垂直な軸を中心として回動させる第1の回転手段と、少なくともアームを回転軸と平行な軸を中心として回動させる第2の回転手段とを備えていることが好ましい。
【0014】
制御手段は、ピーラが果実野菜に押し込まれかつ果実野菜の表面に沿って送られるように第1の回転手段及び/又は第2の回転手段によるアームの回転を制御すると共に、ピーラの果実野菜への押し込み力があらかじめ設定された値を超えた場合に第1の回転手段又は第2の回転手段によるアームの回動を逆転することにより、ピーラがなぞり動作を行うように制御することが好ましい。
【0015】
この場合、ピーラが、皮むき用の刃と、この刃を支持すると共に果実野菜の方向に可動な支持体と、この支持体を果実野菜の方向へ押圧する押しバネと、押しバネの押し込み量があらかじめ定めた値を超えた場合に作動するスイッチとを備えており、制御手段は、スイッチが作動した際に第1の回転手段又は第2の回転手段によるアームの回動を逆転するように構成されていることがより好ましい。
【0016】
ピーラが果実野菜の表面に常に対向するように、ピーラはアームに対して回転自在に連結されていることも好ましい。
【0017】
第2の回転手段は、第1の回転手段とアームとを回転軸と平行な軸を中心として回動させるように構成されていることも好ましい。
【0018】
果実野菜を把持する果実野菜把持部と、果実野菜把持部をその回転軸を中心として回転させる第3の回転手段とをさらに備えており、この果実野菜把持部は、外周面に螺旋状の鋭利な先端を有するネジ山又は螺旋状の凸条刃を備えた中空の円筒部を同軸に備えていることも好ましい。
【0019】
この場合、果実野菜の中心部分を円筒状に穿孔する穿孔部を円筒部の先端部に備えていることがより好ましい。
【0020】
果実野菜の食い込みを停止させる止め部材を円筒部の付け根部に備えていることも好ましい。
【0021】
本発明によれば、さらに、果実野菜皮むき方法は、皮むきすべき果実野菜を果実野菜固定用チャック機構に固定し、回転軸を中心として果実野菜固定用チャック機構を回転させ、ピーラを先端部で支持するアームを回動させてピーラを果実野菜に当接させ、ピーラが果実野菜の表面に沿ったなぞり動作で皮むきするべく、ピーラの果実野菜に対する押し込み力がほぼ一定となるようにアームの回動を制御する。
【0022】
ピーラの果実野菜に対する押し込み力がほぼ一定となるようにアームの回転が制御されるので、ピーラが果実野菜の表面に沿ったなぞり動作を行って皮むきが行われる。その結果、南瓜等の、比較的硬質で凹凸の多い幾何学形状の表皮を有し、かつ比較的偏心率の大きい果実野菜についても、その表皮に沿ってピーラがなぞり動作を行うので、その表皮を余すことなく所定の厚みで均一に連続してむくことができる。
【0023】
ピーラが果実野菜に押し込まれかつ果実野菜の表面に沿って送られるようにアームの回転を制御すると共に、ピーラの果実野菜への押し込み力があらかじめ設定された値を超えた場合にアームの回動を逆転することにより、ピーラがなぞり動作を行うように制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、南瓜等の、比較的硬質で凹凸の多い幾何学形状の表皮を有し、かつ比較的偏心率の大きい果実野菜についても、その表皮に沿ってピーラがなぞり動作を行うので、その表皮を余すことなく所定の厚みで均一に連続してむくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る果実野菜皮むき装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の実施形態の果実野菜皮むき装置におけるピーラの要部を示す正面図であって、(A)はピーラが果実野菜表面から押圧されずスイッチがオフ状態の場合を示し、(B)はピーラが果実野菜表面から押圧されてスイッチがオン状態の場合を示している。
【
図3】
図1の実施形態の果実野菜皮むき装置における果実野菜固定用チャック機構の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図1の実施形態の果実野菜皮むき装置における制御動作を説明するフローチャートである。
【
図5】
図1の実施形態の果実野菜皮むき装置におけるピーラの動きを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態における果実野菜皮むき装置10は、
図1に示すように、皮むき機構Aと、果実野菜200を固定して回転させる果実野菜固定用チャック機構Bとを備えている。これら皮むき機構A及び果実野菜固定用チャック機構Bは、図示されていない基台上に、位置合わせして固着されている。なお、本実施形態では、果実野菜200として南瓜を想定している。もちろん、本発明は、南瓜以外の種々の果実や野菜の皮むきに適用することが可能である。
【0027】
果実野菜皮むき装置10の皮むき機構Aは、静止位置に固定されている支持台100と、支持台100に支持されており、Z軸(
図1参照)と平行な回転軸を中心とする方向(ヨー方向)の回転を行うためのヨー軸モータ101(本発明の第2の回転手段に対応する)と、回転台102に支持されており、X軸(
図1参照)と平行な回転軸を中心とする方向(ロール方向)の回転を行うためのロール軸モータ103(本発明の第1の回転手段に対応する)と、ロール軸モータ103の回転軸を中心にして回動を行うアーム104と、アーム104の横方向部材104bの先端部に取り付けられたピーラ105とを備えている。アーム104は、縦方向部材104aとこの縦方向部材104aの先端に設けられている横方向部材104bとからなるT字形状をなしており、ロール軸モータ103の回転軸にアーム104の縦方向部材104aの基部が固着されている。ロール軸モータ103は、アーム104及びその先端部のピーラ105をロール方向に回動するように構成されており、ヨー軸モータ101は、回転台102、アーム104及びピーラ105をヨー方向に回動するように構成されている。
【0028】
皮むき機構Aのヨー軸モータ101及びロール軸モータ103は、サーボモータで構成されている。これらサーボモータとしては、例えば、株式会社安川電機製のACサーボモータ(1/11減速機付き、Σ-V、200W、SGMAV型)を使用している。これらサーボモータ101及び103は、モータドライバ301及び302で駆動されるように構成されている。モータドライバ301及び302としては、例えば、株式会社安川電機製のΣ-V用サーボパック(登録商標)、SGDV-2R1F01を使用している。モータドライバ301及び302は、プログラム制御されるコンピュータ304に接続されており、その指示に応じてサーボモータ101及び103を駆動するように構成されている。このコンピュータ304としては、例えば、ルネサスエレクトロニクス株式会社の16ビットマイクロコンピュータH8/3052Fを使用している。コンピュータ304には、スイッチパネル305に設けられた、チャック回転スイッチ306、皮むき開始スイッチ307及び緊急停止スイッチ308が接続されている。なお、これらチャック回転スイッチ306、皮むき開始スイッチ307及び緊急停止スイッチ308を操作者の足で操作するように構成することも可能であり、これにより操作性を向上する。
【0029】
皮むき機構Aのピーラ105は、
図2(A)及び(B)にも示すように、L字状の支持部材106によって支持されており、この支持部材106は、アーム104の横方向部材104bと同軸の枢支軸107を介してこの横方向部材104bに回転自在に連結され支持されている。ピーラ105自体は、皮むき用の刃108と、この刃108を支持する刃支持体109と、ピーラ支持体110とを備えている。刃支持体109は、枢支軸111を介してピーラ支持体110に回転自在に連結されている。支持部材106とピーラ支持体110との間には1対の押しバネ112が設けられており、この押しバネ112によってピーラ105は果実野菜200方向に押圧されるように構成されている。ピーラ支持体110と支持部材106とは、リンク部材113によって連結されている。このリンク部材113は枢支軸114を介してピーラ支持体110に回転自在に連結されており、枢支軸115を介して支持部材106に回転自在に連結されている。従って、ピーラ105は、支持部材106に近付く方向及び遠ざかる方向(
図2において上下の方向)へ移動することができるように構成されている。支持部材106には、リンク部材113の一端部の当接及び押し込みによってオンオフ駆動されるリミットスイッチであるタッチスイッチ116が設けられている。
【0030】
ピーラ105の押しバネ112としては、本実施形態においては、コストが安価であることや設計の容易性からコイルバネが用いられている。もちろん、コイルバネに代えて、この技術分野で公知の種々の弾性部材を用いることができる。
【0031】
ピーラ105のタッチスイッチ116は、ピーラ105が果実野菜200の表面に当接していないか又は当接してもその押し込み量が小さい場合は、
図2(A)に示すようにオフ状態にあり、ピーラ105が果実野菜200の表面に当接し押しバネ112の押圧力に抗して所定量以上押し込まれた場合は、
図2(B)に示すように、オン状態にある。タッチスイッチ116のオンオフ状態を示す信号はコンピュータ304へ送られる。
【0032】
皮むき機構Aには、図示されていないが、アーム104従ってピーラ105のヨー方向角度の初期位置でオン状態に作動するヨー軸原点スイッチと、アーム104従ってピーラ105のロール方向の角度の初期位置でオン状態に作動するロール軸原点スイッチとが設けられている。これら初期位置は、ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103のあらかじめ設定された原点位置であり、装置の初期状態においては、ヨー軸及びロール軸はこれらヨー軸原点スイッチ及びロール軸原点スイッチがオンとなった位置で待機している。ヨー軸原点スイッチ及びロール軸原点スイッチのオン状態及びオフ状態を示す信号はコンピュータ304へ送られる。
【0033】
果実野菜固定用チャック機構Bは、果実野菜200を把持する果実野菜把持部201と、この果実野菜把持部201をその回転軸を中心にして回転させるチャック回転用モータ202(本発明の第3の回転手段に対応する)とから主として構成されている。果実野菜把持部201は、
図4に詳細に示すように、外周面に螺旋状の鋭利な先端を有するネジ山又は螺旋状の凸条刃203を備えた中空の円筒部204と、円筒部204の先端部に設けられ、果実野菜200の中心部を含む部分を円筒状に穿孔する穿孔部205と、円筒部204の付け根部に設けられ、果実野菜200の食い込みを停止させる止め板206とを備えている。穿孔部205は、円筒部205の先端に周方向に沿って形成された鋸歯状の刃を備えている。鋸歯状の刃は、縦引き刃であっても横引き刃であっても良い。止め板206は、果実野菜200の大きさに合わせてその面積を調節可能とするように構成してもよい。
【0034】
果実野菜固定用チャック機構Bのチャック回転用モータ202は、サーボモータで構成されている。このサーボモータとしては、例えば、株式会社安川電機製のACサーボモータ(1/33減速機付き、Σ-V、200W、SGMJV型)を使用している。このサーボモータ202は、モータドライバ303で駆動されるように構成されている。モータドライバ303としては、例えば、株式会社安川電機製のΣ-V用サーボパック(登録商標)、SGDV-2R1F01を使用している。モータドライバ303は、前述のコンピュータ304に接続されており、その指示に応じてサーボモータ202を駆動するように構成されている。
【0035】
本実施形態では、果実野菜把持部201に把持された果実野菜200をチャック回転用モータ202で所定方向に回転させ、ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103によってアーム104を適切に回動させることによって、この回転する果実野菜200の表面にピーラ105の刃108を押し当てて果実野菜200の表皮を除去する。ピーラ105が回転する果実野菜200に当接した際に、ピーラ105の支持部材106がアーム104の横方向部材104bと同軸の枢支軸107を介してこの横方向部材104bに回転自在に連結されているため、ピーラ105はその刃108が果実野菜200の表面に常に対向するように調整される。また、ピーラ105が回転する果実野菜200に当接し押し込まれた際に、ピーラ105の押し込み量がタッチスイッチ116の作動によって制御される。即ち、タッチスイッチ116がオフの場合は、ピーラ105が果実野菜200の表面に押し当たる方向に変位するようにヨー軸モータ101及び/又はロール軸モータ103が制御され、タッチスイッチ116がオンとなった場合は、ピーラ105が果実野菜200の表面から離れる方向に変位するようにヨー軸モータ101及び/又はロール軸モータ103が制御される。これにより、果実野菜200の種類、その表面の凹凸の状態や幾何学形状をなぞるようにピーラ105の変位が制御され、その結果、ピーラ105の刃108を表面形状に忠実に追従させて果実樹脂200の良好な皮むきを行うことが可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態では、果実野菜固定用チャック機構Bの果実野菜把持部201が中空の円筒部204を備えているため、南瓜等の果実野菜200を穿孔する際、ヘタや種子等のワタを円筒部204の内部を通して外部に比較的容易に排出することができる。また、円筒部204の外周面に螺旋状の鋭利な先端を有するネジ山又は螺旋状の凸条刃203を設けているため、果実野菜200の底部を穿孔部205に押し当てた状態で、果実野菜把持部201を順方向(
図1及び
図3の上方から見て反時計方向)に回転させることにより、円筒部204の外周面の螺旋状のネジ山又は螺旋状の凸条刃203が果実野菜200に螺旋状に食い込んでこの果実野菜200は果実野菜把持部201に固定される。また、果実野菜把持部201の下端部に止め板206が設けられているため、食い込んだ果実野菜200の先端が円筒部204の付け根部まで到達して止め板206に当接し、果実野菜200の食い込みが停止する。これにより、果実野菜200は安定かつ確実に固定される。止め板206の高さを調整可能に構成することにより、果実野菜把持部201が果実野菜200の頂部から飛び出さないように設定することができ、果実野菜200の頂部から側面を経て底部に至るまで、確実に皮むきすることができる。
【0037】
以下、本実施形態における果実野菜皮むき装置10の動作を説明する。この果実野菜皮むき装置10は、動作開始が指示されるとコンピュータ304があらかじめ定めたプログラムを起動し、利用者がコンピュータ304に接続された皮むき開始スイッチ306及びチャック回転スイッチ307を操作することによって、チャック回転用モータ202、ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103を制御して動作する。コンピュータ304のこの制御には、タッチスイッチ116、ヨー軸原点スイッチ及びロール軸原点スイッチからの信号も使用される。また、緊急停止スイッチ308の操作によって、全ての動作が停止するように構成しても良い。
【0038】
動作開始が指示されると、コンピュータ304は、
図4に示す処理を実行する。まず、果実野菜200を取り付ける果実野菜取り付けモードが実行される(ステップS1)。この果実野菜取り付けモードにおいて、コンピュータ304は、チャック回転用モータ202を順方向(
図1及び
図3の上方から見て反時計方向)にゆっくり回転させ、果実野菜把持部201をこの順方向にゆっくり回転させる。操作者は、皮むきすべき果実野菜200の底面の中心近傍を果実野菜固定用チャック機構Bにおける果実野菜把持部201の穿孔部205に接触させた状態でこの果実野菜200を保持する。これにより、果実野菜把持部201の螺旋状のネジ山又は螺旋状の凸条刃203が果実野菜200に螺旋状に食い込んでこの果実野菜200内に入り込む。
【0039】
次いで、コンピュータ304は、皮むき開始スイッチ306がオンとなったか否かを判断し(ステップS2)、オフの場合(NOの場合)は、このチャッキングモードを継続する。
【0040】
操作者は、果実野菜200が、果実野菜固定用チャック機構Bにおける果実野菜把持部201に固定されたと判断すると、皮むき開始スイッチ306をオンにする。コンピュータ304は、皮むき開始スイッチ306がオンとなったと判断すると、果実野菜の表皮除去動作を開始する。
【0041】
コンピュータ304は、まず、チャック回転用モータ202をチャッキングモード時より速い速度で順方向に回転させ、果実野菜把持部201を順方向に回転させる(ステップS3)。この場合の果実野菜把持部201の回転速度は、果実野菜取り付け動作の場合より数倍速い速度に設定される。
【0042】
次いで、コンピュータ304は、ピーラ105が果実野菜把持部201の上方に移動するように、初期位置にあるヨー軸モータ101及びロール軸モータ103を駆動してアーム104を回動させる(ステップ4)。ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103は、ヨー軸原点スイッチ及びロール軸原点スイッチがオンとなった初期位置で停止しており待機しているが、ステップS4において、ロール軸モータ103は、この初期位置からアーム104を上昇させる方向(果実野菜把持部201側からロール軸を見て時計回り)に回転し、ヨー軸モータ101はピーラ105の位置が果実野菜把持部201の回転軸に近づくよう(
図1の果実野菜把持部201を上方から見て反時計回り)に同時に回転する。本実施形態においては、ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103の回転は独立制御となっており、ヨー軸及びロール軸のそれぞれに目標角度がプログラムで与えられており、ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103は目標角度に到達したところで独立に作動して回転を停止し、これにより、ヨー軸及びロール軸の角度が両方とも目標角度に到達する。
図5は本実施形態の果実野菜皮むき装置10におけるピーラ105の動きを説明している。ステップS4の処理により、
図5(A)に示すように、ピーラ105が果実野菜把持部201の上方へ移動する。
【0043】
ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103に関してプログラム上で用意しているモータ制御関数として、ヨー軸及びロール軸共に、モータの回転角速度のパラメータ及び原点から何度の回転角まで回転するかを指定する関数を構築して用いており、指定された回転角まで到達したところで停止して待機する機能の関数を用いている。また、ヨー軸及びロール軸は独立して制御可能である。なお、本実施形態において、ピーラ105は、各軸から見て円弧を描いて移動しているが、両軸の回転角速度を細かく連動して制御することでピーラ105を直線的に移動させその移動軌道を直線に近づけることができ、これによって無駄のない動作を行うことが可能となる。
【0044】
次いで、コンピュータ304は、ピーラ105が果実野菜把持部201の上面に当接しさらに強く押圧するように、ロール軸モータ103を駆動してアーム104を回動させる(ステップS5)。即ち、ステップS5においては、ヨー軸モータ101は回転させず(角速度0で制御し)、ロール軸モータ103のみをアーム105が降下する方向(果実野菜把持部201側からロール軸を見て反時計回り)に一定角速度で回転させる。この時のロール軸の目標角度は、想定される最小の果実野菜200の上面にピーラ105が接触しその後もさらに押し込まれる程度の角度が与えられる。従って、取り付けた果実野菜200の高さによって剥きはじめの中心軸からの位置が変化する。ステップS5の処理により、
図5(B)に示すように、ピーラ105が果実野菜把持部201の上面に当接し押し込みが行われる。
【0045】
ピーラ105が回転する果実野菜200に当接することでピーラ105の刃108によって皮むきが行われる。その後もロール軸モータ103の回転が継続してアーム104が回動し、ピーラ105がその押しバネ112に抗して果実野菜200にさらに押し込まれると、タッチスイッチ116がオンとなる。コンピュータ304は、タッチスイッチ116がオンとなったか否かを判断しており(ステップS6)、オフの場合(NOの場合)は、このステップS5~S6の処理を繰り返す。即ち、ピーラ105が回転する果実野菜200を押圧して皮むきが行われる。コンピュータ304は、タッチスイッチ116がオンとなったと判断した場合(YESの場合)、次のヨーフィードモード(ステップS7)に移行する。本実施形態の変更態様においては、ステップS5におけるピーラ105の当接及び押し込みのときに、ヨー軸及びロール軸の回転角速度を細かく連動して制御することでピーラ105を果実野菜把持部201の回転軸と平行に直線的に降下させ、これによって果実野菜の大きさが変化してもむき残し部分の半径を一定にすることができる。
【0046】
ステップS7のヨーフィードモードに移行した直後においては、ピーラ105の押しバネ112が押し込まれてタッチスイッチ116はオン状態となっている。この状態でヨーフィードモードに入ると、ヨー軸モータ101が一定角速度で回転する。回転方向は、アーム104が果実野菜把持部201から離れる方向(
図1の果実野菜把持部201を上方から見て時計回り)に回動する方向(逆転する方向)である。この時のヨー軸モータ101の目標回転角度は、想定される最小の果実野菜200を取り付けた場合に果実野菜200の上面から側面に移行する程度の角度である。ヨーフィードモードにおいて、タッチスイッチ116がオフであれば、ピーラ105は果実野菜200に向かう方向(押しバネ112の押し込み量が大きくなる方向)に付勢され、タッチスイッチ116がオンであれば、ピーラ105は果実野菜200から離れる方向(押しバネ112の押し込み量が小さくなる方向)に付勢される。
【0047】
次いで、コンピュータ304は、ヨーフィードモードが終了か否かを判断する(ステップS8)。ヨーフィードモード終了か否かの判断は、ヨー軸モータ101の回転角度が目標角度に到達したか否かを判断して行う。到達しておらず、ヨーフィードモード終了ではないと判断した場合(NOの場合)、ステップS7~S8の処理を繰り返す、即ち、ヨーフィードモードを実行する。ステップS7の処理により、
図5(C)に示すように、ピーラ105による果実野菜200の上面から側面へ向けての皮むきが行われる。
【0048】
このヨーフィードモードにおいて、ロール軸モータ103は、ピーラ105の押しバネ112が強く押し込まれてタッチスイッチ116がオンとなるとピーラ105を果実野菜200から引き離す方向(果実野菜把持部201側からロール軸を見て時計回り、逆転方向)に回転し、タッチスイッチ116がオフ状態(ただし、ピーラ105の押しバネ112はまだ押し込まれている状態)となるまで回転して押しバネ112の押し込み量を小さくさせる。タッチスイッチ116がオフ状態となると、ロール軸モータ103は、ピーラ105を下降させてピーラ105の押しバネ112を押し込む方向(果実野菜把持部201側からロール軸を見て反時計回り、順回転方向)に回転し、押しバネ112がさらに押し込まれてタッチスイッチ116がオンとなるまでピーラ105を降下させる。ロール軸モータ103及びタッチスイッチ116による以上の動作が繰り返されることで、タッチスイッチ116が押されるか押されないかの境界の高さでピーラ105が保持されることとなり、この状態でヨー軸モータ101の送りにより、ピーラ105が果実野菜200の上面をなぞるような動作が実現し、皮むきが行われる。
【0049】
ステップS8において、ヨー軸モータ101の回転角度が目標角度に到達し、ヨーフィードモード終了と判断した場合(YESの場合)、次のロールフィードモード(ステップS9)に移行する。
【0050】
なお、ヨーフィードモードからロールフィードモードへ移行する切り替えタイミングは、本実施形態では、ヨー軸モータ101の回転角度が目標角度に到達したタイミングとしているが、ヨーフィードモード時のタッチスイッチ116のオンオフの頻度が少なくなったタイミングとするなど、果実野菜200の大きさに応じてより適応的に動作させることも可能である。
【0051】
ロールフィードモードにおいては、ヨーフィードモード時の動作に対して、ロール軸の動作とヨー軸の動作とを入れ替え、ロール軸モータ103は、ピーラ105が降下する方向(果実野菜把持部201側からロール軸を見て反時計回り)に一定角速度で回転して送り動作を実現する。一方、ヨー軸モータ101は、タッチスイッチ116がオフの状態で、ピーラ105が果実野菜200に押し込まれる方向(
図1の果実野菜把持部201を上方から見て反時計回り、順回転方向)に回転し、押しバネ112が押し込まれてタッチスイッチ116がオンとなるまで回転する。タッチスイッチ116が作動してオンの状態では、ヨー軸モータ101は、ピーラ105を果実野菜200から引き離す方向(果実野菜把持部201を上方から見て時計回り、逆転方向)に回転する(ただし、ピーラ105が果実野菜200に接触している状態は維持しているが押しバネ112の押し込み量は減少する)。この回転は、タッチスイッチ116がオフ状態となるまで継続する。即ち、ロールフィードモードにおいても、タッチスイッチ116がオフであれば、ピーラ105は果実野菜200に向かう方向(押しバネ112の押し込み量が大きくなる方向)に付勢され、タッチスイッチ116がオンであれば、ピーラ105は果実野菜200から離れる方向(押しバネ112の押し込み量が小さくなる方向)に付勢される。ヨー軸モータ101及びタッチスイッチ116による以上の動作が繰り返されることで、タッチスイッチ116が押されるか押されないかの境界の高さでピーラ105が保持されることとなり、この状態でロール軸モータ103の送りにより、ピーラ105が果実野菜200の側面をなぞるような動作が実現し、皮むきが行われる。ステップS9の処理により、
図5(D)に示すように、ピーラ105による果実野菜200の側面の皮むきが行われる。
【0052】
果実野菜200の下面の表皮除去については、ピーラ105が果実野菜把持部201に近づけすぎると、このピーラ105が果実野菜把持部201に接触して破損する恐れがあるため、この部分まで皮むき動作を行うことはできない。このため、基本的には上述したロールフィードモードの状態でピーラ105が表面に追従できる果実野菜200の範囲(ただし、ヨー軸モータ101によるピーラ105の押し込み動作時の角速度によって異なる)で皮むき動作を行う。具体的には、ピーラ105が果実野菜把持部201に接触しない範囲のヨー軸回転角及びロール軸回転角の範囲に多少の安全側に余裕のある角度を設けてロール軸及び/又はヨー軸が到達した時点でロールフィードモードを終了する。ヨー軸及びロール軸のどちらが先に所定の角度範囲に到達するかは、果実野菜200の大きさにより異なるため、具体的な角度を示すことはできない。本実施形態では、ロール軸のみでロールフィードモードの終了を判断している。即ち、ロールフィードモードは原点から見て上方の25度より大きい角度(ヨーフィードモード終了時の角度)からピーラ105を下方にアプローチしていく動作となっており、ロール軸が原点から見て(果実野菜把持部201側からロール軸を見て時計回りに)25度の角度に到達した時点でロールフィードモードを終了している。この処理により、
図5(E)に示すように、ピーラ105による果実野菜200の下面の皮むきが行われる。
【0053】
本実施形態の変更態様においては、ロール軸回転角及びヨー軸回転角からピーラ105と果実野菜把持部201の回転軸との距離を計算し、安全率を見込んだ上でピーラ105が果実野菜把持部201に接近したところでロールフィードモードを終了するように構成しても良い。
【0054】
次いで、コンピュータ304は、ロールフィードモードが終了か否かを判断する(ステップS10)。ロールフィードモード終了ではないと判断した場合(NOの場合)、ステップS9~S10の処理を繰り返す、即ち、ロールフィードモードを実行する。
【0055】
ステップS10において、ロールフィードモード終了と判断した場合(YESの場合)、次の原点復帰モード(ステップS11)に移行する。
【0056】
ステップS11の原点復帰モードにおいて、コンピュータ304は、ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103を回転させてピーラ105を原点に移動させる。この原点復帰の判定には、図示されていないヨー軸原点スイッチ及びロール軸原点スイッチが用いられる。ピーラ105、従ってアーム104の原点復帰の軌道は、最初にヨー軸原点スイッチがオンとなるように設定されており、ヨー軸原点スイッチがオンとなるとヨー軸モータ101が停止し、ロール軸原点スイッチがオンとなるまでロール軸モータ103の回転が継続する。ロール軸原点スイッチがオンとなるとロール軸モータ103が停止する。その後、これらヨー軸モータ101及びロール軸モータ103の角度に関する内部変数が初期化され、原点復帰モードが終了する。
【0057】
次いで、果実野菜200を取り外す果実野菜取り外しモードに移行する(ステップS12)。この果実野菜取り外しモードでは、コンピュータ304は、チャック回転用モータ202を逆方向に回転させ、果実野菜把持部201を逆方向(
図1及び
図3の上方から見て時計方向)に回転させる。これにより、操作者の保持する果実野菜200が、果実野菜把持部201から取り外される。
【0058】
次いで、コンピュータ304は、チャック回転スイッチ307がオンとなったか否かを判断し(ステップS13)、操作者が次の果実野菜200の皮むきを行うためにこのスイッチをオンとした場合(YESの場合)は、ステップS1~S13の処理を繰り返す。チャック回転スイッチ307がオンではないと判断した場合(NOの場合)、ステップS12~S13の処理を繰り返す。
【0059】
以上説明したように、ピーラ105は、ヨー軸モータ101及びロール軸モータ103によって、果実野菜200の表面への押し込み動作及び表面に沿った送り動作が行われる。この場合、ピーラ105の押し込み動作を行うモータ(ヨー軸モータ101又はロール軸モータ103)は、タッチスイッチ116がオフであれば押し込み動作を行うように回転するが、タッチスイッチ116がオンとなると、押し込み動作を停止して押し込みとは逆の離れる方向に回転する。従って、押しバネ112がどれぐらい押し込まれたときにタッチスイッチ116がオンとなるかを調整することによって、果実野菜200へのピーラ105の押し込み力が適切に調整されることとなる。即ち、タッチスイッチ116が反応するかしないかの状態に押しバネ112の押し込み量が維持されるため、(バネ定数)×(制御されたバネ押し込み量)=(押し込み力(ピーラ押し当て力))となり、ピーラ105の押し込み力、即ちバネ押し込み量(ピーラ押し当て力とほぼ等価)がほぼ一定の状態に維持される。このピーラ105の押し込み力又はバネ押し込み量の維持動作と、送り動作とが同時に行われることにより、ピーラ105の果実野菜200の表面に沿ったなぞり動作が実現されることとなる。
【0060】
その結果、比較的硬質で凹凸が多くかつ偏心率の大きい幾何学形状の表皮を有する南瓜等の果実野菜200に対して、ピーラ105の刃108を常に所定の力で押し当てて、表皮の皮むきを、所定の厚さで均一に自動的に行うことが可能となる。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、果実野菜の表皮の皮むきを行うピーラを、果実野菜の表皮の幾何学形状に応じて、ヨー方向及びロール方向に制御して変位させ、かつピーラの刃を常に所定の力で押し当てて皮むきを行うように構成したので、野菜果実が比較的硬質で幾何学形状の多い皮を有し、しかも偏心率が比較的大きく大きさが不揃いなものであっても、所定の厚さで均一に表皮の皮むきを行うことができる。
【0062】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0063】
10 果実野菜皮むき装置
100 支持台
101 ヨー軸モータ
102 回転台
103 ロール軸モータ
104 アーム
104a 縦方向部材
104b 横方向部材
105 ピーラ
106 支持部材
107、111、114、115 枢支軸
108 刃
109 刃支持体
110 ピーラ支持体
112 押しバネ
113 リンク部材
116 タッチスイッチ
200 果実野菜
201 果実野菜把持部
202 チャック回転用モータ
203 ネジ山又は凸条刃
204 円筒部
205 穿孔部
206 止め板
301、302、303 モータドライバ
304 コンピュータ
305 スイッチパネル
306 皮むき開始スイッチ
307 チャック回転スイッチ
308 緊急停止スイッチ
A 皮むき機構
B 果実野菜固定用チャック機構