(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】草刈り機用ハンドル及び草刈り機セット
(51)【国際特許分類】
A01D 34/90 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
A01D34/90 E
A01D34/90 F
(21)【出願番号】P 2020133907
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2022-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510333575
【氏名又は名称】株式会社東北設備
(73)【特許権者】
【識別番号】599164086
【氏名又は名称】富樫 光七
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】富樫 光七
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3223823(JP,U)
【文献】特開平10-150825(JP,A)
【文献】特許第5080697(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0014393(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2687078(EP,A1)
【文献】特許第3001815(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/110303(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0103073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/412 - 3490
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の前後方向に延びるシャフトと、前記シャフトの前端に位置し、前記作業者から見て反時計回りに回転する回転刃とを備え、前記作業者の左に吊り下げられて使用される原動機付きの草刈り機に用いられ、接合部によって前記シャフトに接合される草刈り機用ハンドルであって、
前記作業者の右手に握られる右握り部と、
前記作業者の左手に握られる左握り部と、
前記右握り部と前記左握り部の間に形成され、且つ、前記接合部によって前記シャフトに接合される部分であって、前記シャフトと交差する交差直線部と、を備え、
前記交差直線部は、
前記作業者から見て前記接合部よりも右に位置する右直線部と、
前記作業者から見て前記接合部よりも左に位置する左直線部と、を含み、
前記右直線部は、前記左直線部よりも長く、前記右握り部及び前記左握り部が前記作業者によって握られた時に前記作業者の膝または大腿部の前方に位置
し、
前記作業者から見て前記右直線部の右側に形成され、後方及び上方に湾曲する右湾曲後傾曲部と、
前記右湾曲後傾曲部に続いて形成され、前記作業者の右側において上昇傾斜した後に、前方に屈曲する右前方湾曲部と、
前記作業者から見て前記左直線部の左側に形成され、前方上方に湾曲する左上方曲部と、をさらに備え、
前記右握り部は、前記右前方湾曲部に続いて形成され、
前記左握り部は、前記左上方曲部に続いて形成される、
草刈り機用ハンドル。
【請求項2】
請求項1に記載の草刈り機用ハンドルと、前記草刈り機と、を備える、
草刈り機セット。
【請求項3】
前記作業者に装着され、
前記作業者の左脇下前方に前記草刈り機を吊り下げる肩掛けバンド
をさらに備え、
前記肩掛けバンドには、前記作業者の右脚における膝および大腿部の少なくともいずれかに当てられる当て板を吊り下げ可能である、
請求項2に記載の草刈り
機セット。
【請求項4】
前記回転刃の下面の側に取り付けられ、前記回転刃と共に回転する鍋状のアタッチメントをさらに備え、
前記アタッチメントには、前記アタッチメントの周面から突起する周縁突起が設けられている、
請求項
2又は3に記載の草刈り
機セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機付きの草刈り機に用いられる草刈り機用ハンドル及びこれを備える草刈り機セットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の草刈り機に関しては、本願出願人は、考案名称「肩掛け式膝押草刈り機」として実用新案登録(実登3223823号)を得ている。本願出願人に係る実登3223823号公報に記載の「肩掛け式膝押草刈り機」は、「・・回転するブレード刃を作業者の右又は左の膝を用いて前方に押し出し操作をすることにより、草刈り作業が格段に効率的となることを見出し、肩掛け式膝押草刈り機を提供することを目的とする」等の考案解決課題において(同公報明細書段落番号0008参照)、「先端に回転ブレード刃、後端に駆動源たるエンジン部とを有する肩掛け式草刈り機において、前記回転ブレード刃とエンジン部との間のパイプシャフトのハンドル交差部の左右に配置する長尺ハンドル及び短尺ハンドルと、前記長尺ハンドルの前記ハンドル交差部から5cm~45cmの位置に作業者の膝で肩掛け式草刈り機を前方に押し出す膝押しパッドと、を有する」構成とすることにより(同公報実用新案登録請求の範囲請求項1の記載等参照)、「本来的に力の強い脚力を草刈り作業に利用するようにしたので、その労力が半減する。
【0003】
すなわち、本来的に力のある膝を前方に押し出す力を草刈り作業のエネルギーにプラスすることができ、また、人間の歩くという自然の動きに基づいた動作を利用するので、この面からも効率的な草刈り作業を行うことができることとなる。さらに、ブレード刃の下面取付金具を工夫することにより、前記ブレード刃の回転動力の一部を左方向への直線駆動力に変換して、積極的、能動的に活用することにより、作業者の労力を軽減することをもできる」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0010参照)。
【0004】
図10は、実登3223823号公報に
図2として添付される公報に記載の考案の実施例1に係る肩掛け式膝押草刈り機を用いて草刈り作業の概略を示す図であり、
図10において、符号101は、実登3223823号公報に記載の考案の実施例1に係る肩掛け式膝押草刈り機、102は、エンジン、103は、パイプシャフト、104は、回転ブレード刃、105は、長尺ハンドル、106は、短尺ハンドル、107は、膝押しパッド、108は、ハンドル交差部、109は、エンジンスロットル、110は、飛散防止部材、111は、肩掛け吊りバンドである(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)
【0005】
本願出願人は、鋭意改良を重ね、特に、
図10に示されるように、作業者の右脇下に吊される草刈り機に対して、回転ブレード刃104は、上から見て反時計回りに回転して草の茎を断ち切るので、作業者は右脇下に吊り下げた回転ブレード刃104を当該右脇下を中心に右から左に腕と右膝で前方の回転ブレード刃104を回転移動させながら草刈り作業を行なわなければならなかった。また、、そのときの右膝の力を膝押(パッド)に確実に伝達するためには,右足に左方向への捻りを加えなければならなかった。
【0006】
本願出願人の実登3223823号公報に開示の考案のように、草刈り作業に際し、膝の押し出し力を利用するとしても、最終的には腕の力だけで草刈り機を振り回さなければならないので疲労が溜まり、また、作業の最終段階では刈り取った草を前方左横に積み上げる返し作業のためには左右のハンドル105、106を半回転させて左上方向に切り返す動作などが必要となり腕の動きロスが生じ、効率的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、反時計回りに回転する回転刃を備える草刈り機を右から左に回動させる際にさほどの力を要することなく草刈り機を回動させることができる草刈り機用ハンドルと、これを備える草刈り機セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る草刈り機用ハンドルは、
作業者の前後方向に延びるシャフトと、前記シャフトの前端に位置し、前記作業者から見て反時計回りに回転する回転刃とを備え、前記作業者の左に吊り下げられて使用される原動機付きの草刈り機に用いられ、接合部によって前記シャフトに接合される草刈り機用ハンドルであって、
前記作業者の右手に握られる右握り部と、
前記作業者の左手に握られる左握り部と、
前記右握り部と前記左握り部の間に形成され、且つ、前記接合部によって前記シャフトに接合される部分であって、前記シャフトと交差する交差直線部と、を備え、
前記交差直線部は、
前記作業者から見て前記接合部よりも右に位置する右直線部と、
前記作業者から見て前記接合部よりも左に位置する左直線部と、を含み、
前記右直線部は、前記左直線部よりも長く、前記右握り部及び前記左握り部が前記作業者によって握られた時に前記作業者の膝または大腿部の前方に位置し、
前記作業者から見て前記右直線部の右側に形成され、後方及び上方に湾曲する右湾曲後傾曲部と、
前記右湾曲後傾曲部に続いて形成され、前記作業者の右側において上昇傾斜した後に、前方に屈曲する右前方湾曲部と、
前記作業者から見て前記左直線部の左側に形成され、前方上方に湾曲する左上方曲部と、をさらに備え、
前記右握り部は、前記右前方湾曲部に続いて形成され、
前記左握り部は、前記左上方曲部に続いて形成される。
(2)上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る草刈り機セットは、
前記草刈り機用ハンドルと、前記草刈り機と、を備える。
(3)前記草刈り機セットは、
前記作業者に装着され、前記作業者の左脇下前方に前記草刈り機を吊り下げる肩掛けバンドをさらに備え、
前記肩掛けバンドには、前記作業者の右脚における膝および大腿部の少なくともいずれかに当てられる当て板を吊り下げ可能である、ようにしてもよい。
(4)前記草刈り機セットは、
前記回転刃の下面の側に取り付けられ、前記回転刃と共に回転する鍋状のアタッチメントをさらに備え、
前記アタッチメントには、前記アタッチメントの周面から突起する周縁突起が設けられている、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反時計回りに回転する回転刃を備える草刈り機を右から左に回動させる際にさほどの力を要することなく草刈り機を回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンドの概略を示す図である。
【
図2】
図2は、草刈り作業者が、本実施例1に係る草刈り機肩掛けバンド1を装着し、本実施例1に係る肩掛けバンド1の左脇下前面に草刈り機を吊り下げ,草刈り作業の概略図である。
【
図3】
図3(a)(b)は、実登3223823号公報添付
図9(実登3047749号公報添付
図2)に示す草刈り作業と本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1を使用する草刈り作業を比較するための作業の概要を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1を使用する際に最も効率良く草刈り作業を行うことのできる特異形状のハンドルの概略図である。
【
図5】
図5は、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1の左脇下前方に草刈り機5(
図5では省略)を吊り下げ、作業者Mの右膝に膝当て板2が位置するように吊り下げ配置して草刈り作業をを行う概略を示す図である。
【
図6】
図6は、当該膝当て板2の概略を示す図である。
【
図7】
図7(A)(B)(C)及び
図7(a)(b)(c)は、当該膝当て板2と前記ハンドル6の当接状態の概略を示す図である。
【
図8】
図8は、草刈り機5の回動操作において、膝当て板2とハンドル6の右湾曲後傾曲部6cとの当接状態を示す全体概略図である。
【
図9】
図9は、実施例2に係る刃押さえアタッチメントを下から見た概略図である。
【
図10】
図10は、実登3223823号公報に
図2として添付される公報に記載の考案の実施例1に係る肩掛け式膝押草刈り機を用いて草刈り作業の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る草刈り機の左脇下吊り下げ用肩掛けバンド及びハンドル並びにこれらが装備される草刈り機の一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
(左脇下前方吊り下げ肩掛けバンド)
図1は、本発明の実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンドの概略を示す図である。
図1において、符号1は、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンドであり、2は、膝当て板、3は、草刈り機吊下げ当て板、4は、吊り下げフックである。
図1から明らかなように、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1は、草刈り作業者の左腰下前面に草刈り機(
図1では図示外)を吊り下げるようにしたものである。
【0014】
図2は、草刈り作業者が、本実施例1に係る草刈り機肩掛けバンド1を装着し、本実施例1に係る肩掛けバンド1の左脇下前面に草刈り機を吊り下げ,草刈り作業の概略を示す概略図である。
【0015】
図2において、符号1は、前述の本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド、5は、エンジンケーシング102、シャフト103,回転刃104などからなる草刈り機、6は、シャフト103に接合されるハンドルである。このように草刈り機5の吊り下げ位置を作業者の左腰下前面に配置することによって草刈り作業効率が飛躍的に向上することになるのである。
【0016】
この草刈り作業効率が向上する点を実登3223823号公報添付
図9(実登3047749号公報添付
図2)に示す実用新案登録第3047749号公報
図2の草刈り作業の模式図との比較において説明すると次のとおりである。
【0017】
図3(a)(b)は、実登3223823号公報添付
図9(実登3047749号公報添付
図2)に示す草刈り作業と本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1を使用する草刈り作業を比較するための作業概要を示す模式図であり、
図3(a)は、実登3223823号公報添付
図9(実登3047749号公報添付
図2)に示される作業者の右脇下前面に草刈り機5が吊り下げられ、右脇下前面の点(O’)を中心に草刈り機5が回動されて草刈り作業が実施される場合を、
図3(b)は、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1を使用して、作業者の左脇下前面に吊り下げられた草刈り機5が、作業者の左脇下前面の点(O)を中心として草刈り作業を実施する場合の概略を示している。
【0018】
図3(a)において、101は、エンジン102,パイプシャフト103、円盤刃(回転刃)104からなる草刈り機、106a、106bは、握り部(ハンドル握り部)、O’は、草刈り機101の草刈り作業における回動中心であり、
図3(b)において、5は、エンジン102,シャフト103,回転刃104からなり、作業者の左脇下前面に吊り下げられる草刈り機である。なお、Mは、作業者を示す。
【0019】
図3(a)に示されるように、従来の草刈り機101は、作業者Mの右脇下前面に吊り下げられて,その吊り下げ位置(O’)を中心に草刈り機101を左から右に回動させて草を刈るのに対し、
図3(b)に示す草刈り作業では、作業者Mの左脇下前面に吊り下げられた草刈り機5を、その吊り下げ位置(O)を中心に草刈り機5を右から左に回動させて草刈り作業を行うことを示している。
図3(b)に示すように、草刈り機5を右から左に回動させて行う草刈り作業が効率的であることを説明すると以下のとおりである。
【0020】
草刈り機5、101の回転刃104は、上から見て左回り(反時計回り)に回転して草を刈り取るので、回転刃104の左側の草を刈る場合(
図3(a)の場合)には、草刈り機101は、回転刃104の回転の反動で作業者Mの保持する草刈り機101が前方に引張られるベクトル方向に力が働くのに対し、回転刃104の右側の草を刈る場合(
図3(b)の場合)には、刃104の回転の反動で作業者Mの保持する草刈り機5が後方に押されるベクトル方向の力が働くことになる。
【0021】
この回転刃104の回転反動による力は、
図3(a)においては、草刈り作業が押し戻され、草刈り作業の効率を妨げる方向に働くのに対し、
図3(b)に示す草刈り作業においては、引っ張り方向に力が働く結果、草刈り作業の効率を助長する方向に働くこととなる。すなわち、前方に引張られる結果、より草刈り作業の効率が向上することとなる。これは、微妙な差とも考えられるが、長時間に渡る草刈り作業においては、疲労蓄積などに現れてくることから経験的に知りうることである。
【0022】
上述するように、回転刃104は、上から見て反時計廻り(左回転)に回転しているので、回転刃104の左から草を切り込むときに一番強い力が加わることとなり、効率的な草刈りが実現できることになる。したがって、この場合、草刈り機101を作業者Mの右腰下前面(O’)ではなく、左腰下前面(O)に吊り下げ、その位置を中心に回動させることが、回転刃104の回転方向と相まって効率良く草刈り作業を実行できることとなる。このことは、力を強く加えることができる利き腕が右腕の場合には、一層の効果を奏することとなる。
【0023】
また、草刈り機5、101を(O)または(O’)を中心に回動させて行う草刈り作業の最終段階では、刈り取った草を左端の特定の場所一箇所に集めるため草刈り機5、101の上下方向に反転させる、いわゆる「返し動作」が必要となる。この草刈りの最終段階の「返し動作」に対しても一層強い腕力を要し、このため実登3223823号公報添付
図9(実登3047749号公報添付
図2)(すなわち、
図3(a))の場合には、ハンドルの右側の握り部106bからシャフト寄り握り部107aに握り直すなどして、この返し動作に対応せしめんとするものと理解される。これは、草刈り機101が作業者Mの右脇下前方に吊り下げされているので、草刈り機101が作業者Mの左端に回動されたときには、一層強い力を加えるためシャフト寄り握り部107aに握り直すことを意味し、この一層強い力を加える作業の積み重ねが疲労の蓄積の原因ともなっていた。
【0024】
これに対し、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1を使用する場合には、草刈り機5が作業者Mの左脇下前方に吊り下げられているので、回転刃104の左側で草を刈り取り、その最終段階での左端での上述する返し作業が行われるので、後述する実施例1に係る特異形状の草刈り機のハンドルと相まって、容易に返し作業を行うことができ、この点でも作業効率が良く,疲労蓄積の弊が軽減することとなる。
【0025】
そして、これらの草刈り作業は、後述するように、左腰下前方の点Oを中心に回動させる際に回動力を強く加えることのできる本実施例1に係る草刈り機のハンドルの使用と相まって一層効率良く草刈り作業ができることとなる。
【0026】
次に、左腰下前方の(O)を中心に回動させる際に回動力を強くすることのできる本実施例1に係る草刈り機のハンドルについて説明する。
図4は、本実施例1に係る草刈り機の特異形状のハンドルの概略図であり、
図4(A)は、シャフト103に接合した際にハンドルを上から見た図であり、
図4(B)は、ハンドルを真横から見た図、
図4(C)は、エンジン(ケーシング)102から先端の回転刃104方向に見た図である。
【0027】
図4(A)(B)(C)において、符号6は、ハンドル、6a~6gは、ハンドル6の各部を示し、6aは、シャフト接合部、6bは、直線部、6cは、右湾曲後傾曲部、6dは、右前方湾曲部、6eは、右握り部、6fは、左上方曲部、6gは、左握り部である。102は、エンジン、103は、シャフト、104は回転刃である。
【0028】
図4(A)(B)(C)から明らかなように、本実施例1に係る草刈り機のハンドル6は、左側に比し右側が長い複雑な三次元的の特異形状であり、シャフト103に直角にシャフト接合部6aで接続されるハンドル6は、
図4(A)(B)(C)では必ずしも明らかではないが、
図4(C)の視点から前方の回転刃104に対し、左側を上にして若干傾斜して接合される。具体的には、前方の水平に対して10~15度程度の左上傾斜で接合される。
【0029】
また、直角に、かつ、左上傾斜でシャフトに接合されたハンドル6のシャフト接合部6aの右側は、所定長の直線部6bに続いて、右側で後方向に湾曲しつつ上方に緩やかに湾曲する右湾曲後傾曲部6cに連なり、さらに、右湾曲後傾曲部6cが作業者Mの右横で前方向に上昇しつつ傾斜し、しかる後、前方にさらに大きく屈曲する右前方湾曲部6dとなり、右前方湾曲部6dの前端は、右握り部6eに連なる。そして、前方に対し左上傾斜のハンドル6のシャフト接合部6aの左側は、僅かな直線に続き前方上方に緩やかに湾曲する左上方曲部6f、続いて左握り部6gに連なる。
【0030】
すなわち、本実施例1に係る草刈り機のハンドルは、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1に草刈り作業者の左脇下前方に原動機付き草刈り機を吊り下げる当該草刈り機のハンドル6であって、草刈り機5のシャフト103に作業者から見て左上傾斜で直角に左側に比し右側が長く接合され、同ハンドル6は、シャフト接合部6aの右側の所定長の直線部6bと、直線部6bの右側で作業者Mの後方向及び上方に湾曲する右湾曲後傾曲部6cと、右湾曲後傾曲部6cにつづいて作業者の右横で上昇傾斜し、しかる後、前方に大きく屈曲する右前方湾曲部6d及びこれに続く前端右握り部6dと、シャフト接合部6aの左側が僅かな直線に続き前方上方に緩やかに湾曲する左上方曲部6f及びこれに続く左握り部6gとからなる形状である。
【0031】
そして、作業者Mが草刈り態勢に入る際には、回転刃104が作業者Mの前方にあるときの右握り部6eと左握り部6gは、草刈り作業開始の自然の立状態でそれぞれ作業者Mが右肘及び左肘を若干曲げて広げた左右の腰前方付近に位置する配置の形状となる。すなわち、
図4(A)(B)(C)に示す特異形状のハンドル6を本実施例1に係る肩掛けバンド1を使用する場合には、左吊り下げとして作業者Mの左側を中心として草刈り機5を回動をすることになり、このためハンドル6は、右側が左より長く、かつ、ハンドル6の右側が前方の回転刃104に対し、作業者Mを回り込むように後に湾曲すると共に上方に傾斜し、その後、外側に若干開きながら前方に大きく屈曲するハンドル6としたので、先端の回転刃104を右から左に回動させる際にさほどの力を要することなく回動させることができることとなる。
【0032】
また、ハンドル6は、全体として左を上にし若干の傾斜をもってャフト103に接合され、かつ、右側が左側より長いので、右から左に草刈り機5を回動させて草を刈り込む際はもとより、最終段階での左端に刈り取った草を一箇所に集める、いわゆる返し作業を行う際にも、大きな力を要することなく容易に返し作業を行うことができることとなる。
【0033】
次に、当該特異な三次元形状のハンドル6を使用する際に、前述した本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1の膝当て板2との相乗操作によって、さらに草刈り効率が向上することの概略を説明する。
図5は、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1の左脇下前方に草刈り機5(
図5では省略)を吊り下げ、作業者Mの右膝に膝当て板2が位置するように吊り下げ配置して草刈り作業をを行う概略を示す図であり、
図6は、当該膝当て板2の概略を示す図である。
【0034】
図5、
図6において、1は、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド、2は、膝当て板、2aは、吊り下げベルト穴、2b、2cは、膝固定ベルト、2d1~2d4は、通気口、6は、ハンドル、7は、スロットル、103はシャフトである。
図6に示すように、膝当て板2は、作業者Mの右膝頭で押し込むことのできる表側が湾曲した縦長の膝当て板2であり、本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1に作業者Mの右膝位置になるよう吊り下げ配置される。
【0035】
そして、作業者Mが草刈り作業において、右膝の押し出す力をも利用して効率良く草刈り作業が行えるようにしたものであり、より詳しくは、この膝当て板2で前述の特異形状のハンドル6の右湾曲後傾曲部6cを前方に押し出しつつ、ハンドル6が作業者Mの右から左上方向に回動するに伴って,当接場所が順次移動して、右膝の押し出し力が草刈り機5の大きな回動力になると共に、さらに、いわゆる返し作業にも貢献する力となるようにしたものである。
【0036】
本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1を使用する草刈り機5に上述した特異三次元形状のハンドル6を取り付け、膝当て板2を右膝で押し出し草刈り作業を行う際のハンドル6と膝当て板2との当接状態を説明して、作業者Mの右膝の押し出し力が効率良くハンドル6に伝達される様子を図面に基づいて説明する。
【0037】
図7(A)(B)(C)及び
図7(a)(b)(c)は、当該膝当て板2と前記ハンドル6の当接状態の概略を示す図であり、
図7(A)(B)(C)は、当接状態を作業者M側の上から見た図、
図7(a)(b)(c)は、膝当て板2の正面から見た膝当て板2とハンドル6の当接状態の概略を示す図である。
【0038】
図7(A)(B)(C)及び
図7(a)(b)(c)において、符号2は、膝当て板、6は、ハンドル、6aは、前述のシャフト接合部、6bは、同直線部、6cは、同右湾曲後傾曲部、6dは、同右前方湾曲部、6eは、同右握り部である。
【0039】
図7(A)(B)(C)及び
図7(a)(b)(c)から明らかなように、草刈り作業の当初においては、膝当て板2は、ハンドル6のシャフト接合部6aから若干離れた直線部6bを前方方向に直角に押し出すことから始まる(
図7(A))。次に、作業者Mの右膝が前方に押し出されることによって、ハンドル6及びシャフト103が左方向に回動するに従って膝当て板2がハンドル6の右湾曲後傾曲部6cの屈曲部6bから右湾曲後傾曲部6cに移動してさらに前方(ハンドル全体としては、右斜め方向)に押し出し力が加えられることとなる(
図7(B))。
【0040】
そして、最終段階でシャフト103が左端いっぱいに触れる直前には、膝当て板2は前方に押し出されるのであるが、これをハンドル6との当接で見れば、膝当て板2は、ハンドル6の右湾曲後傾曲部6cを外側方向に押し出す方向に押し出し力が加わることになり、草刈りの最終段階の返し作業へも右膝の押し出し力を加えることができることとなる(図(C))。
【0041】
そして、これらの一連の膝当て板2とハンドル6の当接状態を膝当て板2の正面から見ると、当初は若干左傾斜のハンドル6が膝当て板2の下方に当接されて膝当て板2が前方方向に押し出される(
図7(a))。しかる後、シャフト103が左方向に触れて膝当て板2がハンドル6の右湾曲後傾曲部6cの屈曲部をさらに前方に押し出すことにより、ハンドル6は回動中心(O)を中心として右側が上方向に上がり、これに伴ってハンドル6の右湾曲後傾曲部6cと膝当て板2との当接は上方向に移動してハンドル6の右湾曲後傾曲部6が斜めに膝当て板2に当接することとなる(
図7(b))。そして、最終段階でシャフト103が左端いっぱいに触れる際には、ハンドル6の右湾曲後傾曲部6cと膝当て板2との当接は、さらに上方向に移動して膝当て板2の上部でハンドル6と膝当て板2に当接することとなる(
図7(c))。
【0042】
図7(A)(B)(C)及び
図7(a)(b)(c)から明らかなように、表側が湾曲した縦長の膝当て板2として、ハンドル6の右湾曲後傾曲部6cの湾曲面に沿って力が掛けられる方向が変わり、かつ、当接が膝当て板2の上下に移動するハンドル6の各部との当接を可能としたので、右膝の押し出し力が無駄なくハンドル6に伝わり、この伝達される力により、草刈り機5の大きな回動力及び返し動作に大きく寄与することとなり、これらの左脇下吊り下げによる左への回動、右側が長く、三次元湾曲を有する特異三次元形状のハンドル6を使用し、回動力を効率良く生み出すことができること、さらにはハンドル6の湾曲面と膝当て板2との当接箇所が移動することによる作業者Mの右膝の押し出し力を効率良くハンドル6に伝達することができることとなる。
【0043】
そして、これらの相乗効果により、作業者Mの左腰下前面に草刈り機5を吊り下げ可能とした本実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド1を使用し、右側からの回動力を効率良く伝達できる特異形状のハンドル6の使用し、さらには、当該ハンドル6と膝当て板2との当接方向ないしは当接域の移動等を可能とした草刈り機とすることにより,草刈り効率が向上することとなり、作業者は疲労蓄積等の弊から解放されることとなるのである。
【0044】
これらの概略を図面に基づいて説明する。
図8は、草刈り機5の回動操作において、膝当て板2とハンドル6の右湾曲後傾曲部6cとの当接状態を示す全体概略図である。
図8において、符号は
図1-
図7に使用した同じ部材は同じ符号で示している。
図8から明らかなように、作業者Mの右膝が膝当て板2を前方に押し出すことにより、当接域が順次変わり、押し出し力が効率良く伝達できることが知りうる。
【実施例2】
【0045】
本実施例1に係る草刈り機の左脇下吊り下げ用肩掛けバンド1及びハンドル6においては、腕の力はほとんど使わないが、利き腕が右腕である作業者特有の効果を奏する事情かも知れず、作業者の利き腕が左腕の場合には、左右対称となる肩掛けバンド1’及びハンドル6’としても良いことは当然である(詳しい図示は省略する)。この場合、作業者の右脇下前方に吊り下げるバンドは従来のバンド(
図10の符号111)及び左側が右側に比し長いハンドル6’は変わらないが、この場合の左右対称のハンドル6’は、シャフト接合部6a’の左側の直線部6b’に続いて、左側で後方向に湾曲しつつ上方に緩やかに湾曲する左湾曲後傾曲部6c’、さらに、左湾曲後傾曲部6c’が作業者Mの左横で前方向に上昇しつつ傾斜し、しかる後、前方にさらに大きく屈曲する左前方湾曲部6d’、そして左握り部6e’となる。ハンドル6’の右側は、シャフト接合部6a’の右側に僅かな直線に続き前方上方に緩やかに湾曲する左上方曲部6f’、続いて右握り部6g’となる。
右脇下吊り下げ肩掛けバンド1’の場合は、当然に右膝位置の膝当て板2’を左膝の押し出しにより作業することとなる。
【実施例3】
【0046】
なお、本願発明者は、回転刃104の刃押さえアタッチメントにも改良を加え、効率良く草刈り作業を行えうることを知り得た。
図9は、実施例2に係る刃押さえアタッチメントを下から見た概略図である。
図9において、符号10は、刃押さえアタッチメント、11a~11dは、刃押さえアタッチメント10の周湾曲面に配置された周縁突起であり、本実施例2に係る刃押さえアタッチメント10は、底面が偏平な鍋状の形状であり、本実施例2に係る刃押さえアタッチメント10においては、側面の周面にボルト頭形状の突起を4個を配置した。なお、104は、回転刃である。
【0047】
回転刃104の水平に対し、周面の斜め下に突出する周縁突起11a~11dを設けたので、従来は、腰高の位置にあった草刈り機の吊り位置が、
図9に示すものでは、膝上あたりまで下がることになる。それに伴って、地面と平行に設定されていたノコ歯面が作業者手前側に傾く。と同時に、ノコ歯下面に取りつけた刃押さえアタッチメント10の回転中心軸も少し手前側に傾くことにより、地面と接する接触位置が手前側にアンバランスすることになり、そこに左方向への移動力が発生する。
また、そのノコ刃押さえアタッチメント10の外周に取りつけた突起部分と刈り草との接触抵抗にもアンバランスが発生することになり、ここにもまた左方向への移動力が生まれ、作業者の労力軽減に役立つ。この面からも草刈り効率が一層高まることとなる。
(付記)
(付記1)
草刈り作業者の左脇下前方に原動機付き草刈り機を吊り下げる肩掛けバンドと、
草刈り機のシャフトに作業者から見て左上傾斜で直角に接合され、左側に比し右側が長い草刈り機のハンドルであって、
同ハンドルは、
シャフト接合部の右側の直線部と、
直線部の右側で作業者の後方向及び上方に湾曲する右湾曲後傾曲部と、
右湾曲後傾曲部につづいて作業者の右横で上昇傾斜し、しかる後、前方に大きく屈曲する右前方湾曲部及びこれに続く前端右握り部と、
シャフト接合部の左側が僅かな直線に続き前方上方に緩やかに湾曲する左上方曲部及びこれに続く左握り部と、
を有することを特徴とする草刈り機の左脇下吊り下げ用肩掛けバンド及びハンドル。
(付記2)
前記右握り部および左握り部は、草刈り機の左脇下吊り下げ用肩掛けバンドに草刈り機を吊り下げて草刈り作業開始の自然の立状態でそれぞれ作業者の右肘及び左肘を若干曲げて広げた左右の腰前方付近に位置する配置形状であることを特徴とする付記1に記載の草刈り機の左脇下吊り下げ用肩掛けバンド及びハンドル。
(付記3)
肩掛けバンドに吊り下げられ、作業者の右膝位置に固定される膝当て板と草刈り機の前記ハンドルとが、押し出し開始時にはシャフト接合部の右側の直線部の前方方向直角の当接状態、ハンドル及びシャフトが左方向に回動するに従ってハンドル直線部から右湾曲後傾曲部に移動してハンドル全体としては右斜め方向に押し出し力が加わる当接状態、ハンドル及びシャフトが左端いっぱいに触れる直前にはハンドルの右湾曲後傾曲部を外側方向に押し出す各当接状態を有することを特徴とする草刈り機の左脇下吊り下げ用肩掛けバンド及びハンドルが装備される草刈り機。
(付記4)
草刈り機の回転刃の下面に周面の斜め下に突出する周縁突起が設けられたことを特徴とする付記3に記載の草刈り機。
(付記の発明の目的)
本願発明者は、反時計回りの回転ブレード刃を右から左に回転移動させるに際し、作業者の左脇下前方を中心にした草刈り機の回動を可能とし、また、その際に右膝の押し出し力を効率的にハンドルに伝達できる草刈り機の肩掛けバンドおよびハンドル並びにこれらを装備する草刈り機を案出するに至り、これを提供することを目的とする。
(付記の発明の効果)
草刈り機を作業者の左吊り下げとしたので、草刈り機は作業者Mの左側を中心として回動をすることになり、さらに、草刈り機ハンドルを右側が左より長く、かつ、前方に対し、作業者Mを回り込むように後に湾曲すると共に上方に傾斜し、その後、外側に若干開きながら前方に大きく屈曲するハンドルとしたので、先端の回転刃を右から左に回動させる際にさほどの力を要することなく草刈り機を回動させることができ、また、上記の特異な形状のハンドルは、左上傾斜で、かつ、右側が左側より長いので、草刈り作業の最終段階での左端に刈り取った草を一箇所に集める、いわゆる返し作業を行う際にも、大きな力を要することなく容易に返し作業を行うことができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、後端の動力機構によって前端の円盤状ブレード刃を回動させて草刈りを行う肩掛け式草刈り機の左脇下吊り下げ用肩掛けバンド及びハンドル並びにこれらが装備される草刈り機に利用される。
【符号の説明】
【0049】
1 実施例1に係る草刈り機の肩掛けバンド
2 膝当て板
3 草刈り機吊り下げ当て板
4 吊り下げフック
5 草刈り機
6 ハンドル
6a シャフト接合部
6b 直線部
6c 右湾曲後傾曲部
6d 右前方湾曲部
6e 右握り部
6f 左上方曲部
6g 左握り部
10 刃押さえアタッチメント
11a~11d 周縁突起
101 草刈り機
102 エンジン
103 ケーシング
104 回転刃
105 ハンドル
106a 106b 握り部(ハンドル握り部)
107a シャフト寄り握り部
M 作業者
O、O’ 草刈り機の回動中心