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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】脈診断測定の装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20221111BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20221111BHJP
   A61B 5/0225 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A61B5/02 310K
A61B5/022 400A
A61B5/0225 A ZDM
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020175321
(22)【出願日】2020-10-19
(62)【分割の表示】P 2019108791の分割
【原出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2021006291
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】62/683,626
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519211410
【氏名又は名称】當代漢雲企業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】郭 育誠
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-046824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0209868(US,A1)
【文献】特開昭61-199835(JP,A)
【文献】特表平03-502059(JP,A)
【文献】特開2018-042606(JP,A)
【文献】特開平07-095966(JP,A)
【文献】特開2012-029967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈診断測定の方法であって、
脈保持装置を介して生体の脈に圧力を加えるステップと、
感知装置を介して前記生体の血圧波を感知して第1の脈信号を生成するステップと、
前記第1の脈信号の各血圧波の最大値と最小値との間の差を計算するステップと、
前記圧力が最も適切な圧力値を有するときに前記差が増加されなくなるまで前記脈保持装置の前記圧力を調整し続けるステップと、
前記最も適切な圧力値に従って前記血圧波を感知して第2の脈信号を生成するステップと、
を含み、
前記最も適切な圧力値に従って前記血圧波を感知するステップは、
前記脈保持装置の前記圧力を微細調節値に従って調整して前記血圧波のハーモニックを測定するステップであり、前記微細調節値は前記ハーモニックの周波数に対応する、ステップを含む、 方法。
【請求項2】
前記第2の脈信号に従って前記生体の脈診断情報を生成するステップであり、前記脈診断情報は、心拍と収縮期血圧と拡張期血圧と前記血圧波の少なくとも1つのハーモニックとのうち少なくとも1つを含む、ステップ、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脈保持装置の前記圧力を微細調節値に従って調整するステップは、
前記ハーモニックの前記周波数が前記血圧波の基本周波数より小さいとき、前記脈保持装置の前記圧力を前記微細調節値に従って減少させて前記ハーモニックを測定するステップと、
前記ハーモニックの前記周波数が前記血圧波の前記基本周波数より大きいとき、前記脈保持装置の前記圧力を前記微細調節値に従って増加させて前記ハーモニックを測定するステップと、
のうち少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記微細調節値は、前記ハーモニックの少なくとも1つの周期の波形によりカバーされる最大エリアに対応し、あるいは前記ハーモニックの最大振幅に対応する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
生体の血圧波を感知して第1の脈信号を生成する感知装置と、
前記生体の脈に圧力を加える脈保持装置と、
前記第1の脈信号の各血圧波の最大値と最小値との間の差を計算し、前記圧力が最も適切な圧力値を有するときに前記差が増加されなくなるまで前記脈保持装置の前記圧力を調整し続け、且つ前記最も適切な圧力値に従って前記血圧波を感知して第2の脈信号を生成する処理装置と、
を含み、
前記最も適切な圧力値に従って前記血圧波を感知するとき、前記処理装置は、前記脈保持装置の前記圧力を微細調節値に従って調整して前記血圧波のハーモニックを測定し、前記微細調節値は前記ハーモニックの周波数に対応する、 脈診断測定装置。
【請求項6】
前記処理装置は、前記第2の脈信号に従って前記生体の脈診断情報を生成し、前記脈診断情報は、心拍と収縮期血圧と拡張期血圧と前記血圧波の少なくとも1つのハーモニックとのうち少なくとも1つを含む、請求項に記載の脈診断測定装置。
【請求項7】
前記処理装置は、
前記ハーモニックの前記周波数が前記血圧波の基本周波数より小さいとき、前記脈保持装置の前記圧力を前記微細調節値に従って減少させて前記ハーモニックを測定することと、
前記ハーモニックの前記周波数が前記血圧波の前記基本周波数より大きいとき、前記脈保持装置の前記圧力を前記微細調節値に従って増加させて前記ハーモニックを測定することと、
のうち少なくとも1つを実行することにより、前記脈保持装置の前記圧力を前記微細調節値に従って調整する、請求項に記載の脈診断測定装置。
【請求項8】
前記微細調節値は、前記ハーモニックの少なくとも1つの周期の波形によりカバーされる最大エリアに対応し、あるいは前記ハーモニックの最大振幅に対応する、請求項に記載の脈診断測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈診断測定の装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脈診断装置又は電子血圧モニタが生体(例えば、人間又は他の動物)の血圧波を測定するため又は脈診断を行うために使用されるとき、生体の生理学的条件を理解するよう測定を行うために止血帯が脈の位置に触れられる。しかしながら、特に高い正確度で血圧波のハーモニックを測定することが必要とされるとき、測定の正確度は止血帯による影響を受ける。止血帯の品質は主要なインパクトを有する。ゆえに、適切な止血帯の設計は解決されるべき重要な問題である。
【0003】
従来技術において、止血帯の圧力は、圧力が動脈の血流をブロックするよう収縮期血圧より大きくなるまで増加され、止血帯の圧力は、コロトコフ音(例えば、電子血圧モニタにおけるコロトコフ音の対応サンプル)が存在するまで減少され、それにより、収縮期血圧及び拡張期血圧が取得できる。動脈の血流がブロックされ動脈が影響を受けることに起因して、測定を完了するのにより多くの時間が必要とされるだけでなく、測定の正確度も低減される。ゆえに、適切な脈診断を行うことも解決されるべき重要な問題である。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明は、生体の脈診断を向上させて前述の問題を解決するための脈診断測定の方法及び関連装置を提供する。
【0005】
このことは、ここでの以下の独立請求項に従う脈診断測定の方法及び脈診断測定装置により達成される。従属請求項は、対応するさらなる発展及び向上に関する。
【0006】
以下に続く詳細な説明からより明らかにわかるように、脈診断測定のための請求される方法は、脈保持装置を介して生体の脈に圧力を加えるステップと、感知装置を介して生体の血圧波を感知して第1の脈信号を生成するステップと、第1の脈信号の各血圧波の最大値と最小値との間の差を計算するステップと、圧力が最も適切な圧力値を有するときに差が増加されなくなるまで脈保持装置の圧力を調整し続けるステップと、最も適切な圧力値に従って血圧波を感知して第2の脈信号を生成するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一例による脈診断測定装置の概略図である。
図2】本発明の一例による周波数のハーモニックと人間の経絡との対応表である。
図3】本発明の一例によるハーモニックの周波数と圧力ひずみ率との対応表である。
図4】本発明の一例によるハーモニックの周波数と圧力ひずみ率との対応表である。
図5】本発明の一例による脈診断測定装置の概略図である。
図6】本発明の一例による脈診断測定方法のフローチャートである。
図7】本発明の一例によるハーモニックの周波数f(1/2)と時間間隔Tとの対応表である。
図8】本発明の一例による脈診断解析方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一例による脈診断測定装置の概略図である。図1において、脈診断測定装置100は、脈診断装置、電子血圧モニタ、指診断装置、又は他の血圧波測定装置であってよい。図1に示されるように、脈診断測定装置100は、生体(例えば、人間又は他の動物)の血圧波を感知して脈信号を生成する感知装置110を含む。脈診断測定装置100は、生体の脈に圧力を加えて感知装置110が血圧波を感知するのを容易にする脈保持(pulse-holding)装置120をさらに含む。例えば、脈保持装置120は止血帯(tourniquet)である。脈の位置が手首、腕、指、又は首であるとき、止血帯は脈を囲んで圧力を加えることができる。例えば、脈保持装置120は、脈を締めつけることにより測定を行うクリップ、例えば指診断装置として設計されてよく、これは、指先を締めつけることにより測定を行うことができる。例えば、脈保持装置120は、弾性布地などの弾性材料を含んでよく、弾性ウェアラブル装置、例えば、指サック、腕時計、ブレスレット、リストバンド、アームバンド、足首リング、ヘッドスカーフ、又は襟(collar)として製作され、身体の異なる部分で脈を感知する。一例において、感知装置110は、圧電要素などの圧力センサであって圧力を感知し、感知された圧力は電気信号に変換できる。感知装置110は脈の位置に接触することができ、脈保持装置120は感知装置110の上に圧力を加え、それにより、感知装置110は脈の拍動を正確に感知することができる。別の例において、感知装置110は圧力センサであり、脈保持装置120は膨張可能カフ又はバッグである。感知装置110は、脈への圧力を調整するために膨張され、あるいは収縮されてよい。感知装置110は脈保持装置120に結合され、脈の拍動により引き起こされる脈保持装置120の内部空気圧の変化を感知する。このタイプの脈保持装置120の動作は当業者に知られており、本明細書で繰り返されない。別の例において、感知装置110は、発光ダイオード(LED)及び光検出器を含む光電式容積脈波記録法(photoplethysmography、PPG)モジュールである(図示せず)。脈の拍動が生じたとき光電手段を介して血量の変化が検出されて、血圧波を測定することができる。脈保持装置120はPPGモジュールを脈の位置に固定し、脈との共振(resonance)の効果を提供する。
【0009】
脈診断測定装置100は、感知装置110により生成された脈信号にフーリエ変換などの信号処理を実行して脈診断情報を生成する処理装置130をさらに含む。フーリエ解析又はフーリエ変換の理論によれば、時間ドメインにおけるいかなる周期波も周波数ドメインにおけるハーモニック(harmonics)(又はハーモニック成分)に変換できる。血圧波は周期波とみなせるため、処理装置130は、血圧波を感知する感知装置110により取得された脈信号にフーリエ変換を実行して、血圧波のハーモニックを生成することができる。脈診断測定装置100は、血圧波を測定することにより特定ハーモニックの正確な情報を取得するよう設計される。すなわち、脈診断測定装置100は、血圧波の1つ又はいくつかの特定ハーモニックを正確に測定することができる。特定ハーモニックを正確に測定するために、脈保持装置120は、特定ハーモニックと共振する特定物理条件を有するべきである。具体的に、血圧波を測定するとき、脈保持装置120(止血帯など)は脈の拍動で振動し(例えば、揺れ)得る。ゆえに、脈保持装置120は、脈の弛緩及び収縮に充分整合するよう振動するための適切な弾性係数を有するべきである。弾性係数が小さすぎるか又は大きすぎる場合、脈保持装置120は柔らかすぎるか又は硬すぎる可能性があり、これは、データが生成されないか又は減衰が高すぎるという結果をもたらす。結果として、不正確な測定結果が取得される。例えば、圧力センサを使用する脈診断測定装置は、脈診断測定装置の不適切な弾性係数に起因して、圧力の変動を正確に測定することができない。PPG手法を使用する脈診断測定装置は、脈診断測定装置の不適切な弾性係数に起因して、血管の弛緩及び収縮により引き起こされる光量変動を正確に測定することができない。さらに、より高い周波数のハーモニックは、共振を達成するのにより大きい弾性係数を必要とし、正確なハーモニック情報を取得する。逆に、より低い周波数のハーモニックは、共振を達成するのにより小さい弾性係数を必要とする。換言すると、脈保持装置120の弾性係数は、測定されるべきハーモニックの周波数との間に特定の対応を有する。さらに、脈保持装置120の弾性係数は、測定されるべきハーモニックの周波数に従って選択され又は決定されると言える。例えば、脈保持装置120は、血圧波の第1のハーモニックの第1の周波数に対応する第1の弾性係数を有する。処理装置130は、測定された脈信号(そのフーリエ変換を含む)を処理して、第1のハーモニックの脈診断情報を生成することができる。第1のハーモニックは、第1の整数ハーモニック又は第1の分数ハーモニックであってよい。本明細書において、第1のハーモニック及び第2のハーモニックは、ハーモニックについて互いを区別するための単に一般的用語であり、信号解析理論において第1のハーモニック及び第2のハーモニックを具体的に参照されないことに留意すべきである。一般に、血圧波の整数ハーモニックの振幅は、整数ハーモニックの周波数が増加するとき、減少する。ゆえに、高い周波数の整数ハーモニックを正確に測定することは困難である。さらに、低い周波数の分数ハーモニックを測定することは困難である。したがって、測定が困難なハーモニックについて脈保持装置120の弾性係数を決定することは極めて重要である。
【0010】
一例において、脈保持装置120の弾性係数は調整可能又は切り替え可能である。例えば、脈保持装置120は、第1の弾性係数と異なる第2の弾性係数を有するよう切り替えできる。第2の弾性係数は、血圧波の第2のハーモニックの第2の周波数に対応してよい。第2のハーモニックは、第2の整数ハーモニック又は第2の分数ハーモニックであってよい。処理装置130は、測定された脈信号を処理して第2のハーモニックの脈診断情報を生成する。換言すると、脈保持装置120の弾性係数は、測定されるべきハーモニックの周波数に応じて調整できる。具体的に、第2のハーモニックの第2の周波数が第1のハーモニックの第1の周波数より大きいとき、第2の弾性係数は第1の弾性係数より大きい。弾性係数とハーモニックの周波数との間の対応は1対1でなくてよく、弾性係数は周波数帯域に対応してよいことに留意すべきである。換言すると、同じ弾性係数の脈保持装置120が、特定周波数帯域のハーモニックを測定するのに適する可能性がある。したがって、脈保持装置120の弾性係数が調整される必要があるかどうかは、測定されるべきハーモニックの周波数が、弾性係数が測定を実行するのに適する周波数帯域内に入るかどうかに依存する。一例において、脈保持装置120は、弾性係数を調整し又は切り替えるために複数の止血帯を含む。例えば、止血帯は、止血帯が異なる弾性係数を有するとき別個に使用でき、あるいは、いくつかの止血帯が直列又は並列に接続されて異なる弾性係数を生じることができる。
【0011】
一例において、第1のハーモニックが第1の整数ハーモニックであるとき、第1のハーモニックの第1の周波数は血圧波の基本周波数(すなわち、心拍)のn倍であり、ここで、nは整数であり、1≦n≦10である。この例において、第1の弾性係数は圧力ひずみ率(pressure-strain modulus)Epに対応する。血圧波の基本周波数がf Hzであり、0.8≦f≦1.5であるとき、第1の弾性係数は3.5*10dyn/cm以上であり、あるいは第1の弾性係数は3.5*10dyn/cm以上且つ9.82*10dyn/cm以下である。
【0012】
血行力学において、圧力ひずみ率Epは血管の弾性係数を表すために使用され、これは、Ep=ΔP*R/ΔRとして定義される。ここで、Epはdyn/cmの単位であり、Rは血管の半径であり、ΔRはRと比較した長さ差であり、ΔPは圧力の変化量である。上式はEp=ΔP/(ΔR/R)と書き換えでき、ΔR/Rは単位半径方向長さあたりの長さ差である。ゆえに、Epは血管の半径方向弾性係数とみなせる。さらに、血圧波がハーモニックに分解される場合、ΔPはハーモニックにより加えられる圧力であり、ΔRは圧力により引き起こされる半径方向長さの変化である。換言すると、各ハーモニックはその対応する圧力ひずみ率Epを有する。したがって、脈保持装置120の第1の弾性係数が各ハーモニックの圧力ひずみ率Epに整合できる場合、血管とのより良好な共振が得られ、より正確な測定結果が取得できる。換言すると、この例において、脈保持装置120の第1の弾性係数は、半径方向ストレスと半径方向ひずみとの間の関係を測定するために使用される。例えば、脈保持装置120が脈位置(例えば、手首、腕、指等)を囲んで円形又は弧形を形成する止血帯であるとき、半径方向弾性係数が算出できる。脈保持装置120が指サック、腕時計、ブレスレット、リストバンド、アームバンド、足リング、ヘッドスカーフ、又は襟などのウェアラブル装置へ製作された場合、脈保持装置120が装着されたとき円形又は弧形が形成され、半径方向弾性係数が算出できる。別の例では、脈保持装置120がクリップであるとき、生体に接触するクリップの二端の部分が弧形とみなせ、半径方向弾性係数が同様に算出できる。ゆえに、上述された第1の弾性係数の数値範囲は、n次整数ハーモニック(1≦n≦10)を測定するのに適した半径方向弾性係数の数値範囲を含む。
【0013】
一例において、第1のハーモニックが第1の分数ハーモニックであるとき、第1のハーモニックの第1の周波数は血圧波の基本周波数のn倍であり、ここで、nは分数であり、0<n<1である。この例において、第1の弾性係数は圧力ひずみ率Epに対応する。血圧波の基本周波数がfヘルツであり、0.8≦f≦1.5であるとき、第1の弾性係数は0.16*10dyn/cm以上であり3.5*10dyn/cm以下である。この例は、より低い周波数の整数ハーモニックだけでなく分数ハーモニックもその半径方向弾性係数の適用可能範囲を有することを示す。
【0014】
一例において、脈診断測定装置100は、人体の血圧波の基本周波数のハーモニックと、基本周波数のn倍の周波数のハーモニック(合計10個の整数ハーモニックが存在し、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、n=1は基本周波数のハーモニックである)と、1/2次(1/2m-th)ハーモニックとして表せ、m=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である、基本周波数を下回る周波数の10個の分数ハーモニック(すなわち、基本周波数の1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、1/64、1/128、1/256、1/512、1/1024倍)とを測定するために使用される。20個のハーモニックは、図2に示されるように、中国医学の理論に記載される12個の標準経絡(standard meridians)及び8個の特別経絡(extraordinary meridians)にそれぞれ対応する。図2は対応表20及び22を含む。対応表20は、基本周波数を上回る(含む)10個の整数ハーモニックに対応する経絡を示す。対応表22は、10個の1/2次ハーモニックに対応する経絡を示す。各ハーモニックは、対応する経絡のエネルギー状態を表示することができ、これは、生理学的意義及び病理学的意義を有する。ゆえに、脈診断測定装置100は、人体のこれらハーモニックを測定することにより中国医学の解析及び診断に大きく役立つ。図3は、20個のハーモニックと脈保持装置120の弾性係数との対応表30であり、弾性係数の単位はdyn/cmである。測定されるべきハーモニックの周波数に属される周波数範囲(すなわち、ハーモニックの周波数グループ)を決定した後、脈保持装置120は、対応表30に従って対応する弾性係数に切り替えられ、測定を実行することができる。止血帯部分に必要とされる弾性係数が考慮されない従来の測定装置と比較して、この方法は測定の正確度を向上させることができる。図4は、20個のハーモニックと脈保持装置120の弾性係数との別の対応表40であり、弾性係数の単位は同様にdyn/cmである。対応表30と比較し、対応表40はハーモニックの周波数のグループ数を簡素化しており、これは脈保持装置120の設計を簡素化する。図3及び図4における対応表は本発明を単に例示するものであり、本発明の範囲はこれに限定されないことに留意すべきである。
【0015】
別の例において、異なる生体は異なる経絡数を有するため、上記で説明されたn及びmの値は、測定されるべき生体に従って、生体のn個の整数ハーモニック及びm個の分数ハーモニックを測定するように調整されてよい。これらのハーモニックに対応する脈保持装置120の弾性係数について、当業者は、本発明の例に従って生体の血管の圧力ひずみ率Epを参照することにより弾性係数を評価及び選択することができる。
【0016】
弾性係数が様々な要因に起因してわずかに変化し得るという事実を当業者はよく知っていることに留意すべきである。したがって、本発明の範囲は上述の弾性係数の特定範囲に限定されず、調整余地を含む。例えば、値の範囲の上限及び下限が10%から20%まで調整されてよい。さらに、上述された血圧波の基本周波数の範囲が、実際の状況に従って調整余地を有し得る。例えば、周波数範囲の上限及び下限が10%乃至20%の調整を可能にしてよい。
【0017】
本発明は、脈保持装置120を設計する方法をさらに提供する。上記説明によれば、血圧波の異なる周波数のハーモニックを正確に測定するために、脈保持装置120は整合共振条件を有する必要があり、脈保持装置120の整合弾性係数は最も重要なものである。弾性係数を決定する主要因の1つは、脈保持装置120、特に、生体(脈及びその周囲エリアなど)に接触される部分に使用される材料である。ゆえに、一例において、適切な脈保持材料は、血圧波のフーリエ解析の結果に基づいて決定される。具体的に、血圧波は、特定の材料で製作された脈保持装置120を使用することにより測定され、血圧波のハーモニックの振幅がフーリエ解析を使用することにより取得され、記録される。次いで、様々な材料(又は混合された材料)で製作された脈保持装置120が上記で説明された処理を繰り返し、ハーモニックを測定するときの材料の性能が比較できる。特定ハーモニックについて、振幅がより大きいほど、材料の弾性係数が脈保持装置120にハーモニックとのより大きい共振を生成させることになり、ゆえにハーモニックを測定するのにより適する。ゆえに、特定ハーモニックについて、ハーモニックの最大振幅を生成できる材料が脈保持装置120を製作するために選択されてよい。別の例において、ハーモニックの最大エリア(maximum area)が、適切な脈保持材料を選択するために使用できる。ハーモニックのエリアはここで、ハーモニックの1つ以上の周期の波形によりカバーされる(covered)エリアを参照する。ゆえに、ハーモニックの最大エリアは参照標準として使用される。すなわち、測定処理において、異なる脈保持材料下で異なる周波数のハーモニックにより生成できる最大エリアが、特定周波数/帯域におけるハーモニックの最大エリアを生成できる脈保持材料を選択するために比較される。
【0018】
一例において、血圧波が、動脈に優しく押しつけられている脈保持装置120により測定される場合、脈保持材料は、ハーモニックの最大振幅に従って選択される。この状況において、ハーモニックが最も大きい振幅を有するとき、最も適切な測定状態が達成され、この時、脈保持装置120の圧力は拡張期血圧である。別の例において、血圧波が、動脈に押しつけられている膨張可能タイプの脈保持装置120により測定される場合、脈保持材料は、ハーモニックの最大エリアに従って選択される。この状況において、ハーモニックが最も大きいエリアを有するとき、最も適切な測定状態が達成され、この時、脈保持装置120の圧力は拡張期血圧である。
【0019】
上記で説明された脈保持材料に追加で、脈保持装置120の弾性係数を決定する要因は脈保持装置120の外形を含んでもよい。例えば、脈保持装置120が止血帯である場合、同じ材料を有してでさえ、1つの円形を囲む止血帯の弾性係数は、2つの円形を囲む止血帯の弾性係数と異なる(2つの円形を囲むことは、同じ材料を有する2つの止血帯を並列に接続することと同等である)。別の例では、メッシュへ製作された止血帯の弾性係数は、同じ材料での固形の止血帯の弾性係数と異なる。しかしながら、本発明の主特徴の1つ、すなわち脈保持装置を設計するとき、(異なるハーモニックの周波数で変動する)血管の圧力ひずみ率に対応する整合半径方向弾性係数を生成することが可能である。換言すると、測定されるべきハーモニックの周波数と脈保持装置の弾性係数との間に適切な対応が存在するべきである。たとえどの材料又はどの外形が脈保持装置により使用されるとしても、対応が無視される場合、高い周波数の整数ハーモニック又は低い周波数の分数ハーモニックなどの特定のハーモニックを測定するとき問題が生じる。ゆえに、当業者が主特徴を保つ限り、整合弾性係数を有する脈保持装置が、上記で説明された材料及び外形に限定されることなく実際の適用に従って設計できる。例えば、実際の適用では、体内の脈の異なる深さに起因して、生体の異なる測定部分が異なる減衰を有することがある。指又は手首などの浅部からの脈はより低い減衰を有し、一方、腕などの生体のより厚い組織により覆われた脈はより高い減衰を有する。ゆえに、より高い減衰を有する部分を測定するとき、減衰を低減するためにより軽い材料が選択できる。さらに、より長い波長に起因して、低周波数ハーモニックは生体の組織による影響を容易に受けない。ゆえに、測定されるべきハーモニックの周波数に従って適切な測定部分が選択できる。
【0020】
血圧波及びその異なる周波数のハーモニックを正確に測定するために、脈保持装置は適切な共振条件を有する必要があり得る。上記で説明された最も重要な整合弾性係数に追加で、共振条件は、脈保持装置により脈に加えられる適切な圧力をさらに含む。ハーモニックは、以下の状況のうち1つが発生した場合、正確に測定されるのが困難である:圧力が共振を形成するのに小さすぎる、及び、圧力が大きすぎて拡張期血圧より大きい。ゆえに、本発明は別の脈診断測定装置の例を提供し、これは、脈保持装置の圧力を動的に調整して測定処理中の共振条件を変更し、血圧波とその測定されるべきハーモニックとを整合させ、より良い測定結果を達成し得る。図5は、本発明の例による脈診断測定装置の概略図である。図5において、脈診断測定装置500は脈診断装置、電子血圧モニタ、指診断装置、又は他の血圧波測定装置であってよい。図5に示されるように、脈診断測定装置500は、生体の血圧波を感知して第1の脈信号を生成する感知装置510を含む。脈診断測定装置500は、生体の脈に圧力を加える脈保持装置520をさらに含む。脈診断測定装置500は、第1の脈信号に従って脈圧を計算し、且つ脈保持装置520の圧力が最も適切な圧力値を有するときに脈圧が増加されなくなるまで脈保持装置520の圧力を調整し続ける、処理装置530をさらに含む。処理装置530は、最も適切な圧力値に従って血圧波をさらに感知して第2の脈信号を生成する。脈保持装置520の圧力を動的に調整するための様々な方法が存在する。例えば、脈保持装置520はエアバッグを含んでよく、脈保持装置520の圧力はエアバッグへ膨張する空気の量を制御することにより調整されてよい。
【0021】
上記例において、脈圧の大きさは適切な測定状態を決定するために使用される。脈圧は、収縮期血圧と拡張期血圧との間の差として定義されてよい。測定処理中、処理装置530は脈保持装置520の圧力を連続的に増加させ、センサ装置510により測定された第1の脈信号の各血圧波の最大値及び最小値を検出する。次いで、処理装置530は、最大値及び最小値を減算して脈圧を取得する。脈保持装置520の圧力が増加され、脈圧が増加されないとき、適切な測定状態が達成される。ゆえに、最大脈圧に対して脈保持装置520により加えられる圧力値は適切な圧力値であり、これは血圧波の適切な共振条件を表し、それにより、脈診断測定装置500は適切な測定状態を達成する。この時、生成された第2の脈信号の脈診断情報は、適切な測定状態が達成される前に生成される第1の脈信号の脈診断情報より正確である。ゆえに、一例において、処理装置530は、第2の脈信号に従って生体の脈診断情報をさらに生成し、脈診断情報は、以下の情報のうち少なくとも1つを含む:心拍、収縮期血圧、拡張期血圧、及び血圧波の少なくとも1つのハーモニック。例えば、上記で説明された最も適切な圧力値は拡張期血圧であり、その時、収縮期血圧は拡張期血圧と脈圧との和である。
【0022】
従来技術において、血圧波を測定するとき、止血帯の圧力は、圧力が動脈の血流をブロックするよう収縮期血圧より大きくなるまで連続的に増加され、止血帯の圧力は、コロトコフ音(電子血圧モニタにおけるコロトコフ音の対応するサンプル)が存在するまで減少され、それにより、収縮期血圧及び拡張期血圧が取得できる。動脈の血流がブロックされ動脈が影響を受けることに起因して、測定を完了するのにより多くの時間が必要とされるだけでなく、測定の正確度も低減される。比較すると、本発明の例によれば、測定を完了するのにより少ない時間が必要とされるだけでなく、動脈への影響も低減される。ゆえに、血圧波及びそのハーモニックが正確に測定され、これはさらなる解析を容易にする。
【0023】
さらに、より正確な測定結果を得るために、異なる周波数のハーモニックに必要とされる脈保持装置120の圧力値はわずかに異なる。一般に、高い周波数ハーモニックはより高い圧力値を必要とし、低い周波数ハーモニックはより低い圧力値を必要とする。一例において、処理装置530が最適な圧力値に従って血圧波を感知したとき、脈保持装置520の圧力は、血圧波の特定ハーモニック(例えば、分数ハーモニック)を測定するために微細調節値に従ってさらに調整される。微細調節値は特定ハーモニックの周波数に対応する。例えば、ハーモニックの周波数が血圧波の基本周波数より低いとき、脈保持装置520の圧力は、ハーモニックを測定するために微細調節値に従って低減される。例えば、ハーモニックの周波数が血圧波の基本周波数より高いとき、脈保持装置520の圧力は、ハーモニックを測定するために微細調節値に従って増加される。脈保持装置520の圧力が微細に調整された後、脈保持装置520のハーモニックとの共振が向上され、より良い測定結果が取得される。例えば、測定された血圧波にフーリエ変換を実行したとき、特定ハーモニックの振幅がより大きくなること、又は特定ハーモニックの少なくとも1サイクルの波形によりカバーされるエリアがより大きくなることが観察される。一例において、上述の微細調節値は、血圧波に対するフーリエ解析の結果に従って決定され、あるいは動的に調整されてよい。例えば、微細調節値は、特定ハーモニックの振幅又は特定ハーモニックの波形によりカバーされるエリアがより大きくなるように選択され(あるいは動的に調整され)てよい。具体的に、特定ハーモニックHの振幅は、血圧波に対するフーリエ解析の結果から取得できる。脈保持装置520の圧力をわずかに増加又は減少させることにより、測定状態は、ハーモニックHの振幅が最大化されるとき最も適切な測定状態である。この時、脈保持装置520の圧力は、ハーモニックHを測定するための最も適切な圧力値を有する。この圧力値を上述の最も適切な圧力値と比較し、ハーモニックHに対応する微細調節値が取得できる。ハーモニックの最大振幅に従って微細調節値を決定する上記方法は、ハーモニックの最大エリアに従って実行されてもよい(すなわち、少なくとも1つの周期の波形によりカバーされるエリアが最大化される)。
【0024】
上記例は図6として要約でき、図6は、本発明の例による処理60のフローチャートである。処理60は、脈診断測定装置500により実行される脈診断測定方法を示し、以下のステップを含む。
ステップ600:開始。
ステップ602:脈保持装置520が生体の脈に圧力を加える。
ステップ604:感知装置510が生体の血圧波を感知して第1の脈信号を生成する。
ステップ606:処理装置530が第1の脈信号に従って脈圧を計算する。
ステップ608:処理装置530が、圧力が最も適切な圧力値を有するときに脈圧が増加されなくなるまで脈保持装置520の圧力を調整し続ける。
ステップ610:感知装置510が最も適切な圧力値に従って血圧波を感知して第2の脈信号を生成する。
ステップ612:終了。
【0025】
本発明は脈診断解析方法をさらに提供し、これは、脈診断測定装置100及び脈診断測定装置500、又は脈計器、電子血圧モニタ、指診断装置、他の血液波測定装置等などの他の脈診断装置に適用できる。該方法が脈診断測定装置100(又は脈診断測定装置500)に適用される場合、血圧波の測定が感知装置110(又は感知装置510)及び脈保持装置120(又は脈保持装置520)により実行される。処理装置130(又は処理装置530)は測定結果に従って後続のデータ解析及び処理を実行する。脈診断解析方法の一例において、心拍HRが、t秒間(tの好適値は6である)安定し且つ十分に測定された血圧波の波長(例えば、カバーされたサンプルの数)とサンプリングレートとに従って取得される。次いで、フーリエ解析が血圧波に実行され、基本周波数f1を上回る(含む)10個の整数ハーモニック(fn、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)のハーモニック振幅An及びハーモニック位相差θnが取得される。一例において、「安定且つ良好な測定」は、心臓の早期収縮が血圧波からフィルタ除外されることを意味する。
【0026】
次いで、心拍HR、ハーモニック振幅An、及びハーモニック位相差θnがそれぞれ平均されて、平均及び標準偏差(SD)を取得する。SDは平均で除算されて、心拍変動係数HRCVとハーモニック振幅の変動係数HCVnとハーモニック位相差の変動係数HPCVnとを含む変動係数を取得する。HCVn及びHPCVnはHRCVでそれぞれ除算されて、ハーモニック振幅及びハーモニック位相差の不全指数(failure indices)を取得する。ハーモニック振幅の不全指数FIAnは気相(gas phase)の病理学的条件を表し、ハーモニック位相差の不全指数FIPnは血液相(blood phase)の病理学的条件を表す。不全指数FIAn及びFIPnのより高い値は、測定された生体(例えば、患者)のより危険なコンディションを意味する。不全指数FIAn及びFIPnの値が生体への対処又は治療を用いることにより低減された場合、それは対処又は治療が有効であることを意味する。
【0027】
理解を容易にするため、上記パラメータの算出が以下のように編成される。ハーモニック振幅Anの不全指数FIAn及びハーモニック位相差θnの不全指数FIPnは以下のように表される。
FIAn=HCVn/HRCV ここでn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 (式1)
FIPn=HPCVn/HRCV ここでn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 (式2)
【0028】
心拍の平均HRM及び心拍の標準偏差HRVに関するいくつかのパラメータが以下のように表される。
HRCV=HRV/HRM (式3)
HRVM=HRV*HRM (式4)
【0029】
ハーモニック振幅の変動係数HCVn及びハーモニック位相差の変動係数HPCVnは以下のように表される。
HCVn=n次(n-th)ハーモニック振幅の標準偏差/n次ハーモニック振幅の平均 ここでn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 (式5)
HPCVn=n次ハーモニック位相差の標準偏差/n次ハーモニック位相差の平均 ここでn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 (式6)
【0030】
上記パラメータに関し、式(式3)及び(式4)におけるHRCV及びHRVMは脳死に関連する。基本周波数(n=1)及び第4ハーモニック(n=4)は心不全に関連する。ゆえに、基本周波数及び第4ハーモニックのハーモニック振幅の不全指数(すなわち、HCV1及びHCV4)、並びに基本周波数及び第4ハーモニックのハーモニック位相差の不全指数(すなわち、HPCV1及びHPCV4)は、診断及び処置を支援するために使用できる。
【0031】
一例において、前述のパラメータに従い、病理学的行列が以下のように定義される。
[平均[An]/P 平均[θn] HCVn HPCVn FIAn FIPn] (式7)
ここでn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である。平均[An]及び平均[θn]は、それぞれ、ハーモニック振幅An及びハーモニック位相差θnの平均値である。Pは内臓のエネルギーであり(5つの臓器は心臓、肝臓、腎臓、脾臓、及び肺臓であり、6つの臓器は胃、胆嚢、大腸、小腸、膀胱、及び三焦である)、以下のように定義される。
【数1】
【0032】
次いで、時間間隔T(例えば、その範囲内で血圧が測定される)において、各々のt連続秒(tの好適値は6である)に測定された複数の血圧波シーケンスに対してフーリエ解析が実行される。したがって、基本周波数f1を下回る10個の分数ハーモニックf(1/2)(n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)のハーモニック振幅A(1/2)及びハーモニック位相差θ(1/2)が取得される。心拍HR、ハーモニック振幅A(1/2)、及びハーモニック位相差θ(1/2)はそれぞれ平均されて、平均及び偏差を取得する。偏差は平均で除算されて、心拍変動係数HRCVとハーモニック振幅の変動係数HCV(1/2)とハーモニック位相差の変動係数HPCV(1/2)とを含む変動係数を取得する。HCV(1/2)及びHPCV(1/2)はHRCVでそれぞれ除算されて、ハーモニック振幅及びハーモニック位相差の不全指数を取得する。ハーモニック振幅の不全指数FIA(1/2)は気相の病理学的条件を表し、ハーモニック位相差の不全指数FIP(1/2)は血液相の病理学的条件を表す。不全指数FIA(1/2)及びFIP(1/2)のより高い値は、測定された生体(例えば、患者)のより危険なコンディションを意味する。不全指数FIA(1/2)及びFIP(1/2)の値が生体への対処又は治療を用いることにより低減された場合、それは対処又は治療が有効であることを意味する。
【0033】
一例において、上述のパラメータに従い、低周波数の病理学的行列が以下のように定義される。
[平均[A(1/2)]/Q 平均[θ(1/2)] HCV(1/2) HPCV(1/2) FIA(1/2) FIP(1/2)] (式9)
ここでn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である。平均[A(1/2)]及び平均[θ(1/2)]は、それぞれ、ハーモニック振幅A(1/2)及びハーモニック位相差θ(1/2)の平均値である。Qは心臓及び大動脈のエネルギーであり、以下のように定義される。
【数2】
【0034】
次いで、時間間隔T(例えば、その範囲内で血圧が測定される)において、各々のt連続秒(tの好適値は6である)における低周波数の病理学的行列が平均され、平均された低周波数の病理学的行列、平均[低f病理学的行列]が取得される。時間間隔Tはハーモニックの周波数に従って決定されてよい(すなわち、nで変動する)。例えば、nがより大きいとき、必要とされる時間間隔Tはより大きい。図7は、本発明の一例によるハーモニックの周波数f(1/2)と時間間隔Tとの対応表である。対応表70は、各ハーモニック周波数f(1/2)に対応する時間間隔Tを示す。
【0035】
病理学的行列及び低周波数の病理学的行列は、生体の生理、病理、薬理、及び心理の基本条件及び変動を解析するために組み合わせられてよい。上記例は人工知能を介して解析されてよく、ヒューマンインターフェースプラットフォーム(human interface platform)の基礎として役立てられる。
【0036】
一例において、脈診断に関連した2つのパラメータが以下のように定義される。
【数3】
【0037】
上記例は図8として要約でき、図8は、本発明の例による処理80のフローチャートである。処理80は脈診断測定方法を示し、以下の処理ステップを含む。
ステップ800:開始。
ステップ802:ある時間間隔における生体の血圧波を測定して血圧波の波長及びサンプリング周波数を取得する。
ステップ804:波長及びサンプリング周波数に従って生体の心拍を取得する。
ステップ806:血圧波に対してフーリエ解析を実行して血圧波の少なくとも1つのハーモニックのハーモニック振幅及びハーモニック位相差を取得する。
ステップ808:心拍、ハーモニック振幅、及びハーモニック位相差に従って、心拍の変動係数、少なくとも1つのハーモニックのハーモニック振幅の変動係数、及びハーモニック位相差の変動係数を取得する。
ステップ810:ハーモニック振幅の変動係数及び心拍の変動係数に従って少なくとも1つのハーモニックの第1の不全指数を取得する。
ステップ812:ハーモニック位相差の変動係数及び心拍の変動係数に従って少なくとも1つのハーモニックの第2の不全指数を取得する。
ステップ814:終了。
【0038】
本発明の脈診断測定装置、脈診断測定方法、及び脈診断解析方法に対して様々な用途が存在する。例えば、このことに応じて医療クラウドが実現されてよい。詳細には、脈診断測定装置100又は脈診断測定装置500が、患者の脈診断データを取得するためにユーザエンドで使用され得る。脈診断データは医療クラウドにアップロードされ、本発明における脈診断解析方法に従って解析され、診断される。次いで、解析及び診断の結果に従って処方箋が生成され、ユーザエンドに提供されて医療手順が完了する。解析及び診断の結果並びに処方箋は連帯的に提供されてもよく、あるいは処方箋のみが提供される。一例において、本発明はコンディション監視に適用できる。例えば、コンディション監視システム(例えば、脈診断測定装置100又は脈診断測定装置500を含む)が患者の脈診断データを生成するよう設計されて、コンディション監視を実行する。異常データが検出され、例えば、特定ハーモニックの変動係数又は不全指数が異常であるとき、アラートが発行される。
【0039】
当業者は上述の説明及び例に対して組み合わせ、修正、及び/又は変更を容易に行うであろう。示唆されたステップを含む上述の説明、ステップ、及び/又は処理は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア(ハードウェアデバイスと該ハードウェアデバイス上の読取専用ソフトウェアとして存在するコンピュータ命令及びデータとの組み合わせとして知られる)、電子システム、又はこれらの組み合わせであり得る手段により実現できる。
【0040】
上記の実施形態につき以下の付記を残しておく。
[付記1]
生体の血圧波を感知して脈信号を生成する感知装置と、
前記生体の脈に圧力を加える脈保持装置であり、前記脈保持装置は第1の弾性係数を有し、前記第1の弾性係数は前記血圧波の第1のハーモニックの第1の周波数に対応し、前記第1のハーモニックは第1の整数ハーモニック又は第1の分数ハーモニックである、脈保持装置と、
前記脈信号に従って前記第1のハーモニックの脈診断情報を生成する処理装置と、
を含む脈診断測定装置。
[付記2]
前記脈保持装置は、前記第1の弾性係数と異なる第2の弾性係数を有するように切り替え、前記第2の弾性係数は、前記血圧波の第2のハーモニックの第2の周波数に対応し、前記第2のハーモニックは第2の整数ハーモニック又は第2の分数ハーモニックである、付記1に記載の脈診断測定装置。
[付記3]
前記第2のハーモニックの前記第2の周波数は前記第1のハーモニックの前記第1の周波数より大きく、前記第2の弾性係数は前記第1の弾性係数より大きい、付記2に記載の脈診断測定装置。
[付記4]
前記第1の弾性係数は、前記生体の血管の圧力ひずみ率に対応する半径方向弾性係数である、付記1に記載の脈診断測定装置。
[付記5]
前記第1のハーモニックの前記第1の周波数は前記血圧波の基本周波数のn倍であり、nは分数であり0<n<1であり、前記第1のハーモニックは前記第1の分数ハーモニックである、付記4に記載の脈診断測定装置。
[付記6]
前記第1のハーモニックが前記第1の分数ハーモニックであり、前記基本周波数がf Hzであり0.8≦f≦1.5であるとき、
前記第1の弾性係数は0.16*10dyn/cm以上であり3.5*10dyn/cm以下である、付記5に記載の脈診断測定装置。
[付記7]
前記第1の弾性係数は、前記第1のハーモニックの少なくとも1つの周期の波形によりカバーされるエリアに対応し、あるいは前記第1のハーモニックの振幅に対応する、付記1に記載の脈診断測定装置。
[付記8]
脈診断測定の方法であって、
脈保持装置を介して生体の脈に圧力を加えるステップと、
感知装置を介して前記生体の血圧波を感知して第1の脈信号を生成するステップと、
前記第1の脈信号に従って脈圧を計算するステップと、
前記圧力が最も適切な圧力値を有するときに前記脈圧が増加されなくなるまで前記脈保持装置の前記圧力を調整し続けるステップと、
前記最も適切な圧力値に従って前記血圧波を感知して第2の脈信号を生成するステップと、
を含む方法。
[付記9]
前記第2の脈信号に従って前記生体の脈診断情報を生成するステップであり、前記脈診断情報は、心拍と収縮期血圧と拡張期血圧と前記血圧波の少なくとも1つのハーモニックとのうち少なくとも1つを含む、付記8に記載の方法。
[付記10]
前記最も適切な圧力値に従って前記血圧波を感知するステップは、
前記脈保持装置の前記圧力を微細調節値に従って調整して前記血圧波のハーモニックを測定するステップであり、前記微細調節値は前記ハーモニックの周波数に対応する、ステップ
を含む、付記8に記載の方法。
[付記11]
前記脈保持装置の前記圧力を微細調節値に従って調整するステップは、
前記ハーモニックの前記周波数が前記血圧波の基本周波数より小さいとき、前記脈保持装置の前記圧力を前記微細調節値に従って減少させて前記ハーモニックを測定するステップと、
前記ハーモニックの前記周波数が前記血圧波の前記基本周波数より大きいとき、前記脈保持装置の前記圧力を前記微細調節値に従って増加させて前記ハーモニックを測定するステップと、
のうち少なくとも1つを含む、付記10に記載の方法。
[付記12]
前記微細調節値は、前記ハーモニックの少なくとも1つの周期の波形によりカバーされるエリアに対応し、あるいは前記ハーモニックの振幅に対応する、付記10に記載の方法。
[付記13]
生体の血圧波を感知して第1の脈信号を生成する感知装置と、
前記生体の脈に圧力を加える脈保持装置と、
前記第1の脈信号に従って脈圧を算出し、前記圧力が最も適切な圧力値を有するときに前記脈圧が増加されなくなるまで前記脈保持装置の前記圧力を調整し続け、且つ前記最も適切な圧力値に従って前記血圧波を感知して第2の脈信号を生成する処理装置と、
を含む脈診断測定装置。
[付記14]
前記最も適切な圧力値に従って前記血圧波を感知するとき、前記処理装置は、前記脈保持装置の前記圧力を微細調節値に従って調整して前記血圧波のハーモニックを測定し、前記微細調節値は前記ハーモニックの周波数に対応する、付記13に記載の脈診断測定装置。
[付記15]
前記微細調節値は、前記ハーモニックの少なくとも1つの周期の波形によりカバーされるエリアに対応し、あるいは前記ハーモニックの振幅に対応する、付記14に記載の脈診断測定装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8