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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】消臭剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20221111BHJP
   B01J 20/16 20060101ALI20221111BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221111BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A61L9/01 B
A61L9/01 H
B01J20/16
B01J20/24 A
A61K8/73
A61Q15/00
A61K8/26
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018190488
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020058482
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】515266429
【氏名又は名称】株式会社ベネフィット-イオン
(74)【代理人】
【識別番号】100135448
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】上原 幹也
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-214204(JP,A)
【文献】特開2016-222612(JP,A)
【文献】特開2006-028034(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157265(WO,A1)
【文献】特開2010-227736(JP,A)
【文献】特開2002-291857(JP,A)
【文献】登録実用新案第3053730(JP,U)
【文献】特開2008-31225(JP,A)
【文献】特開2006-28034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
B01J 20/00-20/34
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ孔又はメソ孔である細孔が形成された多孔質物質と、
シクロデキストリンと、
乳液と、 を含み、
前記多孔質物質が含硫ケイ酸アルミニウムであり、
前記多孔質物質としての含硫ケイ酸アルミニウムを1質量%以上10質量%以下含有し、
シクロデキストリンを1質量%以上10質量%以下含有する、 消臭剤組成物。
【請求項2】
前記多孔質物質としての含硫ケイ酸アルミニウムを1質量%以上5質量%以下含有し、
シクロデキストリンを1質量%以上5質量%以下含有する、 請求項1に記載の消臭剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、体臭予防及び消臭剤が開示されている。体臭予防及び消臭剤は、シクロデキストリンを有効成分とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-47163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、PATM(「People are Allergic To Me」又は「People Allergic To Me」)と称される症状が知られている。PATMは、自身の周辺にいる第三者がアレルギー症状を引き起こす現象である。前述のアレルギー症状としては、目、鼻若しくは喉の粘膜の違和感、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳き、咳き込み、息切れ、喘鳴、目のしょぼしょぼ感若しくはかゆみ、涙目、頭痛、酔うような感覚、又は吐き気が例示される。
【0005】
発明者は、これまで腋臭又は加齢臭のような体臭に関する研究を行い、これの消臭に関する製品を開発している。発明者は、腋臭又は加齢臭のような体臭及びPATMは、何れも自らの体表面から発散される揮発性物質が原因物質であることを知っている。発明者は、体臭は嗅覚によって知覚可能な揮発性物質が原因物質であるのに対し、PATMは嗅覚によって知覚可能な揮発性物質の他、嗅覚によって知覚されない又は知覚され難い揮発性物質が原因物質となることもあると考える。
【0006】
発明者は、PATMに有効な消臭剤組成物について検討を行った。その際、発明者は、新たな消臭剤組成物が腋臭及び加齢臭のような一般的な体臭にも有効な組成物となる点を考慮した。本開示では、消臭は、広く解釈される。例えば、消臭は、人体表面から揮発性物質が発散することを抑制する機能を含む。
【0007】
本発明は、人体表面からの揮発性物質の発散を抑制することができる消臭剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、マイクロ孔又はメソ孔である細孔が形成された多孔質物質と、シクロデキストリンと、乳液と、を含み、前記多孔質物質が含硫ケイ酸アルミニウムであり、前記多孔質物質としての含硫ケイ酸アルミニウムを1質量%以上10質量%以下含有し、シクロデキストリンを1質量%以上10質量%以下含有する、消臭剤組成物である
【0009】
この消臭剤組成物によれば、人体表面(肌)で、人体表面からの揮発性物質を吸着することができる。揮発性物質による臭気及び刺激感の一方又は両方を除去又は軽減することができる。揮発性物質の吸着について、優れた特性が得られる。人体表面で、人体表面からの揮発性物質を包接することができる。人体表面からの揮発性物質の吸着及び包接について、優れた特性が得られる。例えば、PATM反応、腋臭及び加齢臭に対する消臭効果を得ることができる。更に、消臭効果の即効性及び持続性を発揮することができる。人体表面への塗布が容易となる。
【0010】
ここで、多孔質物質の濃度が10質量%より高くなると、消臭剤組成物の外観が悪くなる。更に、粉体(微粒子)である多孔質物質が沈降する等して安定性が低下する。シクロデキストリンの濃度が10質量%より高くなると、消臭剤組成物を肌(人体表面)に塗布した後のべたつきが解消され難くなる。
【0011】
消臭剤組成物では、前記多孔質物質としての含硫ケイ酸アルミニウムを1質量%以上5質量%以下含有し、シクロデキストリンを1質量%以上5質量%以下含有する、ようにしてもよい
【0012】
の構成によれば、多孔質物質の濃度を5質量%以下とすることで、消臭剤組成物の外観が悪くなり、更に、粉体(微粒子)である多孔質物質が沈降する等して安定性が低下する、といった現象を改善することができる。シクロデキストリンの濃度を5質量%以下とすることで、消臭剤組成物を肌(人体表面)に塗布した後のべたつきが解消され難くなる、といった現象を改善することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、人体表面からの揮発性物質の発散を抑制することができる消臭剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための実施形態について説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。
【0015】
<消臭剤組成物>
消臭剤組成物について説明する。消臭剤組成物は、多孔質物質を含む。多孔質物質には、細孔が形成される。前述の細孔は、マイクロ孔及びメソ孔の一方又は両方とされる。マイクロ孔は、直径が2nm以下の孔である。メソ孔は、直径が2~50nmの孔である。消臭剤組成物では、多孔質物質は、人体表面から発散される揮発性物質を物理吸着する。
【0016】
消臭剤組成物では、多孔質物質として、平均粒子径が10μm以下の物質を採用する。但し、前述の平均粒子径は、例示である。多孔質物質の平均粒子径は、消臭能力等の諸条件を考慮して適宜決定される。多孔質物質としては、二酸化ケイ素、含硫ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、シリカ、ライスシリカ、アルミナ、活性炭、活性白土、珪藻土、カオリン、モレキュラーシーブ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、モンモリロナイト、サボー石、ベントナイト、ヒドロキシアパタイト又はキトサン微粒子が例示される。
【0017】
発明者は、消臭剤組成物における多孔質物質としては、前述の各物質のうち、含硫ケイ酸アルミニウムが好ましいと考える。更に、消臭剤組成物は、シクロデキストリンを含むようにするとよい。このような消臭剤組成物では、含硫ケイ酸アルミニウムの濃度(含有率)を1質量%以上とし、シクロデキストリンの濃度(含有率)を1質量%以上とするとよい。
【0018】
シクロデキストリンは、複数のブドウ糖が環状に連なったオリゴ糖である。シクロデキストリンは、環状オリゴ糖とも称される。シクロデキストリンは、揮発性物質を内部に包接することができる。シクロデキストリンでは、空洞の内径は、ブドウ糖の数によって変わるが、1nm以下である。
【0019】
<実施例>
発明者は、上述の消臭剤組成物を完成させるに当たり、各種の検討を行った。この検討では、先ず、発明者は、実験1で、PATMの原因物質と考えられる揮発性物質を特定し、実験2,3で、PATMに対して有効な消臭剤組成物を特定した。即ち、発明者は、実験2で、PATMに対して有効な消臭剤組成物の含有物(成分)を特定し、実験3で、実験2で特定された含有物の濃度を特定した。その後、発明者は、実験4で、PATMを対象として、実験2,3で特定された消臭剤組成物の有効性を確認した。また、発明者は、実験5で、腋臭及び加齢臭を対象として、実験2,3で特定された消臭剤組成物の有効性を確認した。
【0020】
実施形態では、PATMでの次のようなアレルギー症状を総称して「PATM反応」という。前述のアレルギー症状(PATM反応)としては、目、鼻若しくは喉の粘膜の違和感、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳き、咳き込み、息切れ、喘鳴、目のしょぼしょぼ感若しくはかゆみ、涙目、頭痛、酔うような感覚、又は吐き気が例示される。また、周辺にいる第三者のPATM反応に悩む者を「PATM原因者」といい、PATMによるアレルギー症状を引き起こす前述の第三者を「PATM反応者」という。更に、PATM反応の原因物質を「PATM原因物質」という。
【0021】
本開示では、「臭気」は、人が感知できる「臭い」及び「匂い」全般を意味する。但し、実施形態の消臭剤組成物は、一般的には、人が感知できる「臭い」及び「匂い」のうち、「臭い(悪臭)」を対象とすることが多いと考えられる。また、「刺激感」は、上述した臭気の有無を問わず、人に所定の症状を引き起こさせる刺激を与える、を意味する。従って、臭気を有する揮発性物質が刺激感を有することもあれば、臭気のない揮発性物質(無臭の揮発性物質)であっても、刺激感を有することがある。なお、前述した所定の症状としては、PATM反応として示す上述の症状と同じ症状が例示される。
【0022】
上述した通り、本開示では、消臭は、人体表面から揮発性物質が発散することを抑制する機能を含む。従って、消臭は、人体表面から臭気及び刺激感の一方又は両方のある揮発性物質が発散することを抑制する機能を含む。また、消臭は、人体表面から臭気及び刺激感の一方又は両方のある揮発性物質を除去し又は減少させる機能を含む。
【0023】
<実験1>
実験1を次に示す実験方法によって実施し、実験1によって以下に示す実験結果を得た。
【0024】
<実験方法>
(1)実験1では、日本人の被験者1000人を対象とし、被験者の上半身から分泌し、揮発性物質となる物質を採取した。1000人の被験者は、何れも自らの体臭(PATMを含む)に問題があると考え、第三者の反応を気にしている者である。なお、出願人は、個人の体臭を分析し、その個人専用の洗濯用洗剤を製造・販売している。従って、出願人は、個人の体臭に関するデータを多数有し、且つ新たなデータを取得するルート及び能力を有している。
【0025】
(2)実験1では、次に示す第一手順~第三手順を全被験者分繰り返して実施した。第一手順では、被験者が着用するTシャツは、新品の状態から洗浄を3回繰り返し、完全に乾燥させたものとした。洗浄時の温度は、60℃とした。乾燥後のTシャツは、次の状態であった。前述の状態は、ガスクロマトグラフ質量分析で、最終的に今回の実験1で特定されたPATM原因物質が何ら検出されない状態である。第三手順では、ヘッドスペースサンプラ付きのガスクロマトグラフ質量分析計(アジレント・テクノロジー株式会社製 7890GC/5977MSD)を使用した。また、第三手順では、加熱温度を110℃に設定した。
[実験手順(被験者1人分)]
第一手順:被験者は、被験者の体型に合わせたTシャツを直接上半身(肌)に触れる状態で24時間着用する。被験者は、着用後のTシャツをパッケージに密封する。出願人は、前述のパッケージを回収する。
【0026】
第二手順:回収後のTシャツのうち、臭気又は刺激感を最も感知する生地部分を2片切り取り、バイアル(アジレント・テクノロジー株式会社製)に密閉する。1片の生地部分のサイズは、4×8cmとした。
【0027】
第三手順:第二手順のバイアル内の気体を試料として、ガスクロマトグラフ分析を実施し、前述の気体に含まれる揮発性物質の成分及び各成分の量を特定する。
【0028】
(3)実験1では、1000人の被験者を次の第一種被験者及び第二種被験者に分類した。
[被験者]
第一種被験者:実生活で周囲の者(PATM反応者)のPATM反応に悩んでいる者(自身がPATM原因者であると考えている者を含む)、及び上記第二手順で回収後のTシャツから刺激感が感知された者の一方又は両方に該当する者
第二種被験者:第一種被験者に属さない者
<実験結果>
発明者は、上述の第三手順で、第一種被験者に属する被験者のTシャツの生地部分からの揮発性物質から特定された成分と、第二種被験者に属する被験者のTシャツの生地部分からの揮発性物質から特定された成分を比較した。そして、発明者は、前述の比較に基づき、第二種被験者における前述の揮発性物質からは特定されず、第一種被験者における前述の揮発性物質から特定された成分を含む物質をPATM原因物質として特定した。特定されたPATM原因物質は、第一種原因物質~第五種原因物質である。
【0029】
第一種原因物質は、高級アルコール~2級アルコールを含むアルコール類である。第一種原因物質には、例えば、次に示す物質が含まれる。第二種原因物質は、不飽和アルデヒドを含むアルデヒド類である。第二種原因物質には、例えば、次に示す物質が含まれる。第三種原因物質は、エノンを含むケトン類である。第三種原因物質には、例えば、次に示す物質が含まれる。第四種原因物質は、シクロアルカン類及びシクロヘキセン類である。第四種原因物質には、例えば、次に示す物質が含まれる。第五種原因物質は、芳香族炭化水素を含む炭化水素類である。第五種原因物質には、例えば、次に示す物質が含まれる。第一種原因物質~第五種原因物質を区別しない場合、又はこれらを総称する場合、PATM原因物質という。この場合、PATM原因物質は、第一種原因物質~第五種原因物質として例示の各物質のうちの何れか1つの物質に対応し、又は前述の各物質のうちの複数(全部を含む)の物質に対応する。
[PATM原因物質]
第一種原因物質:2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール
第二種原因物質:ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、2エチルブチルバレルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、メタクロレイン
第三種原因物質:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ペンタノン、2-シクロヘキサノン、メチルビニルケトン
第四種原因物質:シクロヘキセン、シクロヘキサン
第五種原因物質:o-キシレン、p-キシレン、m-キシレン、スチレン、トルエン、1,2,3-トリメチルベンゼン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン
<実験2>
実験2を次に示す実験方法によって実施し、実験2によって以下に示す実験結果を得た。
【0030】
<実験方法>
(1)実験2では、実験1で特定された第一種原因物質~第五種原因物質のそれぞれから、PATM原因物質を1つ又は2つずつ選定し、選定された各PATM原因物質を第一種原因物質~第五種原因物質の代表物質とした。第一種原因物質~第五種原因物質で、代表物質として選定したPATM原因物質は、次の通りである。
[選定したPATM原因物質(代表物質)]
第一種原因物質:2-エチルヘキサノール
第二種原因物質:プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド
第三種原因物質:アセトン
第四種原因物質:シクロヘキセン
第五種原因物質:トルエン
続けて、選定したPATM原因物質を含む試料液として、試料液A~Gを生成した。その際、PATM原因物質を希釈媒体によって希釈することで、PATM原因物質の揮発状態を人体表面からの揮発状態に近づけることとした。希釈媒体としては、プロピレングリコールを用いた。生成した試料液A~Gの成分及び濃度(質量%)は、次の通りである。
[試料液]
試料液A:2-エチルヘキサノール(5質量%)、プロピレングリコール(残部)
試料液B:プロピオンアルデヒド(5質量ppm)、プロピレングリコール(残部)
試料液C:イソブチルアルデヒド(5質量ppm)、プロピレングリコール(残部)
試料液D:アセトン(10質量%)、プロピレングリコール(残部)
試料液E:シクロヘキセン(50質量ppm)、プロピレングリコール(残部)
試料液F:トルエン(5質量%)、プロピレングリコール(残部)
試料液G:等量の試料液A~Gの混合液
試料液Aにおける2-エチルヘキサノール、試料液Bにおけるプロピオンアルデヒド、試料液Cにおけるイソブチルアルデヒド、試料液Dにおけるアセトン、試料液Eにおけるシクロヘキセン、及び試料液Fにおけるトルエンの各濃度は、次のように決定した。即ち、試料液A~Gの各試料液で、次に示す刺激感の評価基準に従った3人の評価者による官能評価の評価値が全て「3」となった下限の濃度を、前述の各濃度として決定した。その際、評価開始の濃度は、試料液A~Gの各試料液で、全て0.5質量ppmとし、0.5質量ppmから評価者全員の評価値が「3」となるまで漸次増加させた。
[刺激感の評価基準]
0:全く刺激感がない
1:僅かな刺激感がある
2:刺激感がある
3:強い刺激感がある
(2)実験2では、消臭剤組成物に含有させる含有物として、次の第一基準及び第二基準に基づき、含硫ケイ酸アルミニウム(タナクラクレイ)、無水ケイ酸(鉱物由来シリカ)、軽質炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト及びシクロデキストリンを選定し、評価対象の消臭剤組成物として、次の消臭試料1~5を生成した。前述の含有物は、粉末状である。前述の含有物のうち、シクロデキストリンを除く、含硫ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、軽質炭酸カルシウム及びヒドロキシアパタイトは、多孔質物質である。第一基準は、人の肌に直接塗布可能であることである。第二基準は、入手が容易で且つ安価であることである。
[消臭試料]
消臭試料1:含硫ケイ酸アルミニウム(2質量%)、乳液(残部)
消臭試料2:無水ケイ酸(2質量%)、乳液(残部)
消臭試料3:軽質炭酸カルシウム(2質量%)、乳液(残部)
消臭試料4:ヒドロキシアパタイト(2質量%)、乳液(残部)
消臭試料5:シクロデキストリン(2質量%)、乳液(残部)
消臭試料1~5の生成に用いた乳液は、市販の乳液(株式会社ジョリーブ製)とした。この乳液は、水、エタノール、グリセリン、ブチレングリコール、PEG-60水添ひまし油、クエン酸ナトリウム及びフェノキシエタノールを含有する。消臭試料1~5の各消臭剤組成物では、含有物は、乳液中に分散する。
【0031】
消臭試料1~5では、含有物の濃度を2質量%で一定としている。これは、含有物の濃度の相違により、吸着能力又は包接能力といった消臭能力に差が生じることを防ぐためである。例えば、同一の消臭能力を有する含有物を対象とした場合、消臭剤組成物は、その含有物の濃度が高くなるに従い高い消臭能力を有すると考えられる。また、含有物の濃度としての2質量%は、消臭剤組成物を製品化した場合の使用感が不快とならない点を考慮した。ここで、使用感が不快である場合として、肌に塗布した際のべたつき又は伸び不足が例示される。但し、含有物の濃度の2質量%は、発明者が上述した5種類の含有物の何れに対しても好適であると考えた暫定値である。好ましい濃度については、後述する。
【0032】
(3)実験2では、試料液A~Gをそれぞれ滴下した布片に、消臭試料1~5をそれぞれ塗布し、各布片を対象として、塗布直後、塗布から10分後及び6時間後の3回、布片に残存する刺激感を、上述した刺激感の評価基準に従い官能評価した。1枚の布片のサイズは、2×2cmとした。1枚の布片に対して滴下した試料液及び塗布した消臭試料は、各1種類である。従って、消臭試料1~5及び試料液A~Gの組み合わせは、合計35種類(消臭試料×試料液=5×7)となる。
【0033】
1枚の布片に対する試料液A~Jの滴下量と消臭試料1~5の塗布量は、「滴下量:塗布量=1:5」とした。具体的な量としては、臭気試料の滴下量20μlに対して、消臭試料の塗布量を100μlとした。
【0034】
上述した官能評価は、3人の評価者によって実施した。従って、官能評価は、消臭試料及び試料液の組み合わせ1種類に対して、合計3回行った。塗布直後の官能評価を実施した後及び塗布から10分後の官能評価を実施した後、布片を直ちにガラス瓶に密封し、次のタイミングまでの間に、PATM原因物質の漏出が一切起こらない状態で保管した。塗布直後、塗布から10分後及び6時間後の各タイミングにおける評価値は、各タイミングでの3回の平均値を、有効桁数を1桁とした1桁の整数となるように切り上げた値である。例えば、消臭試料及び試料液の所定の組み合わせにおける塗布直後の評価値が、3回のうち2回が0で、残りの1回が1であったとする。この場合、平均値は、0.33(1/3)であるが、小数点以下を切り上げて「評価値:1」とした。「評価値:0」は、3回の評価全てが「評価値:0」であったことを示す。
【0035】
官能評価の実施タイミングについて、消臭効果の即効性及び持続性を考慮し、塗布直後、塗布から10分後及び6時間後を設定した。なお、消臭剤組成物が所定の容器に充填され消臭剤製品として商品化されたと仮定する。この場合、塗布から10分程度経過した時点であれば、使用者は、消臭剤組成物を塗布したことを意識しており、この時点における消臭効果を当然のように期待する。また、塗布から6時間程度経過した時点であれば、使用者は、消臭剤組成物を塗布したことを意識していないことも想定されるが、この時点まで消臭効果が持続するといった点は、商品価値の向上に繋がる。
【0036】
<実験結果>
実験2の実験結果を表1に示す。表1の各枠内に並んで示す3つの評価値は、「塗布直後」、「塗布から10分後」及び「塗布から6時間後」の各評価値である。
【0037】
表1に示す結果から明らかな通り、試料液A~Gの全てに対し、消臭効果の即効性及び持続性が得られる消臭試料は、消臭試料1~5の中には存在していない。しかしながら、消臭試料1では、試料液B,C,Gに対し、消臭効果の即効性は認められないが、時間の経過に伴い消臭効果が得られ、その消臭効果は持続する。これに対して、消臭試料5では、試料液B,C,Gに対し、消臭効果の持続性は認められないが、消臭効果の即効性は認められる。また、消臭試料1では、試料液Fに対し、消臭効果の即効性及び持続性は認められないが、消臭試料5では、試料液Fに対し、消臭効果の即効性及び持続性が認められる。つまり、実験2によって、消臭試料1の含硫ケイ酸アルミニウム及び消臭試料5のシクロデキストリンを組み合わせることで、試料液A~Gの全てに対し、消臭効果の即効性及び持続性を得られることが明らかになった。
【表1】
【0038】
<実験3>
実験3を次に示す実験方法によって実施し、実験3によって以下に示す実験結果を得た。
【0039】
<実験方法>
実験3では、消臭試料1の含硫ケイ酸アルミニウム及び消臭試料5のシクロデキストリンの各濃度を変更した次の消臭試料6~19を生成した。消臭試料6~19の生成には、実験2と同様、株式会社ジョリーブ製の乳液を用いた。消臭試料6~19の濃度として示す2個の値及び残部に関し、1番目の値は、含硫ケイ酸アルミニウムの濃度を示し、2番目の値は、シクロデキストリンの濃度を示し、3番目の残部は、残りが乳液であることを示す。
[消臭試料]
消臭試料6:0.1質量%、2質量%、残部
消臭試料7:0.5質量%、2質量%、残部
消臭試料8:1質量%、2質量%、残部
消臭試料9:1.5質量%、2質量%、残部
消臭試料10:2質量%、1.5質量%、残部
消臭試料11:2質量%、1質量%、残部
消臭試料12:2質量%、0.5質量%、残部
消臭試料13:2質量%、0.1質量%、残部
消臭試料14:0.5質量%、1質量%、残部
消臭試料15:0.8質量%、1質量%、残部
消臭試料16:1質量%、1質量%、残部
消臭試料17:1質量%、0.8質量%、残部
消臭試料18:1質量%、0.5質量%、残部
消臭試料19:0.8質量%、0.8質量%、残部
実験3では、PATM原因物質を含む試料液として、実験2の試料液Gを用いた。試料液Gは、選定された第一種原因物質~第五種原因物質(合計6種類)の全てを含む。従って、PATM原因物質に対する消臭能力について、包括的な評価を行うことができる。
【0040】
(2)実験3では、実験2と同様、試料液Gを滴下した布片(サイズ:2×2cm)に、消臭試料6~19をそれぞれ塗布し、各布片を対象として、塗布直後、塗布から10分後及び6時間後の3回、布片に残存する刺激感を、上述した刺激感の評価基準に従い官能評価した。試料液Gを滴下した1枚の布片に塗布した消臭試料は、1種類である。従って、消臭試料6~19及び試料液Gの組み合わせは、合計14種類(消臭試料×試料液=14×1)となる。1枚の布片に対する試料液Gの滴下量と消臭試料6~19の塗布量、3人の評価者による官能評価の手法、及び評価値の算出法等、この他の実験方法も、実験2と同様とした。従って、実験3の実験方法に関するこの他の説明は、省略する。
【0041】
<実験結果>
実験3の実験結果を表2に示す。表2に示す消臭試料6~19及び試料液Gの各組み合わせにおいて、並んで示す3個の評価値は、「塗布直後」、「塗布から10分後」及び「塗布から6時間後」の各評価値である。
【0042】
表2に示す結果から明らかな通り、消臭試料8~11,16では、塗布直後、塗布から10分後及び6時間後の何れについても官能評価の評価値が「0」であった。つまり、実験3によって、含硫ケイ酸アルミニウム及びシクロデキストリンの組み合わせにおいて、各含有物の濃度は、共に1質量%以上とすることで、消臭効果の即効性及び持続性を得られることが明らかになった。換言すれば、消臭剤組成物で、消臭効果の即効性及び持続性を得ることができる含硫ケイ酸アルミニウム及びシクロデキストリンの各濃度の下限値は、共に1質量%であることが明らかになった(「消臭試料16」参照)。
【表2】
【0043】
<実験4>
実験4を次に示す実験方法によって実施し、実験4によって以下に示す実験結果を得た。
【0044】
<実験方法>
(1)実験4では、消臭剤組成物として、実験3の消臭試料16を採用した。被験者は、実験1で分類された第一種被験者のうち、同居人の中に自身に対するPATM反応者がいる3人の被験者X1~X3とした。被験者X1には、同居人に激しいPATM反応を示す2人のPATM反応者がいる。被験者X2には、同居人に1人のPATM反応者がいる。被験者X3には、同居人に1人のPATM反応者がいる。実験4は、被験者X1及び同居人Y1の組み合わせ、被験者X2及び同居人Y2の組み合わせ、及び被験者X3及び同居人Y3の組み合わせで個別に実施した。同居人Y1は、被験者X1に対する2人のPATM反応者のうちの1人である。同居人Y2は、被験者X2に対する前述のPATM反応者である。同居人Y3は、被験者X3に対する前述のPATM反応者である。
【0045】
実験4の説明では、被験者X1~X3を区別しない場合、又はこれらを総称する場合、「被験者X」といい、同居人Y1~Y3を区別しない場合、又はこれらを総称する場合、「同居人Y」という。但し、被験者X及び同居人Yの組み合わせは、上述した通りである。
【0046】
(2)実験4では、消臭試料16を被験者X1~X3の次に示す範囲に次に示す総量だけ塗布した。塗布範囲は、実験1の実験手順における第二手順の実施時、被験者X1~X3の各Tシャツから臭気又は刺激感が感知された部分に対応した範囲とした。消臭試料16を被験者Xに塗布した後、次の3回のタイミングで、同一組の被験者X及び同居人Yが2人で検査室に入り、静止した状態で10分間待機した。検査室は、密室とした。そして、被験者X及び同居人Yは、10分経過後の時点における自身の感覚を以下に示す評価基準に従い官能評価した。即ち、被験者Xは、以下に示すPATM原因者側評価基準に従い前述した自身の感覚を官能評価し、同居人Yは、以下に示すPATM反応者側評価基準に従い前述した自身の感覚を官能評価した。前述の3回のタイミングは、塗布直後、塗布から3時間後及び6時間後である。被験者X及び同居人Yは、10分経過した後、検査室から退出した。被験者X及び同居人Yが退室した後、検査室は、次回のタイミングまで閉じた状態とし、その間、検査室内を空気清浄した。
[塗布範囲・総塗布量]
被験者X1
塗布範囲:腹部を除く上半身全体
総塗布量:10ml
被験者X2
塗布範囲:首回り及び脊椎に沿った背中部分
総塗布量:5ml
被験者X3
塗布範囲:両脇の下、首回り及び肩甲骨周辺
総塗布量:10ml
[PATM原因者側評価基準]
0:PATM反応者から全くPATM反応が観察されない(PATM反応者にPATM反応が全くないことが確認できる)
1:PATM反応者から僅かなPATM反応が観察できる
2:PATM反応者からかなりのPATM反応が観察できる
3:PATM反応者から激しいPATM反応が観察できる
[PATM反応者側評価基準]
0:刺激感が全く感じられない
1:刺激感を僅かに感じ、PATM反応していることが自認できる
2:刺激感を感じ、PATM反応していることが明らかである
3:強い刺激感を感じ、強いPATM反応がある
<実験結果>
実験4の実験結果を表3に示す。被験者X1及び同居人Y1では、被験者X1は、同居人Y1との実生活でPATM原因者側評価基準の評価値「3」の認識を有し、同居人Y1は、被験者X1との実生活でPATM反応者側評価基準の評価値「3」の認識を有している。これに対して、実験4では、被験者X1及び同居人Y1共に、3回の全てのタイミングで評価値に改善が認められた。
【0047】
被験者X2及び同居人Y2では、被験者X2は、同居人Y2との実生活でPATM原因者側評価基準の評価値「2」の認識を有し、同居人Y2は、被験者X2との実生活でPATM反応者側評価基準の評価値「1」の認識を有している。これに対して、実験4では、被験者X2及び同居人Y2共に、3回の全てのタイミングで評価値に改善が認められた。
【0048】
被験者X3及び同居人Y3では、被験者X3は、同居人Y3との実生活でPATM原因者側評価基準の評価値「3」の認識を有し、同居人Y3は、被験者X3との実生活でPATM反応者側評価基準の評価値「2」の認識を有している。これに対して、実験4では、被験者X3及び同居人Y3共に、3回の全てのタイミングで評価値に改善が認められた。
【0049】
つまり、実験4によって、消臭試料16が3人の被験者Xに対して消臭効果の即効性及び持続性を有することが確認された。
【表3】
【0050】
<実験5>
実験5を次に示す実験方法によって実施し、実験5によって以下に示す実験結果を得た。
【0051】
ところで、PATM原因物質には、腋臭の原因物質が含まれる。例えば、第五種原因物質として例示した2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタンといった炭化水素類は、腋臭の原因物質でもある。即ち、炭化水素類のうち、埃っぽい臭い及び刺激感を持つ物質は、腋臭の埃っぽさと共通し、腋臭の症状を有することが明らかな者の分泌物に含まれる。また、第二種原因物質として例示したイソブチルアルデヒドも、腋臭の原因物質である。イソブチルアルデヒドは、焦げたような臭いを有する。塩素に近い臭いも腋臭に特有の臭いである。この他、加齢臭の原因物質としては、青臭さのあるアルデヒド類又は油臭を特徴とするアルデヒド類が例示されるが、上述した通り、アルデヒド類は、第二種原因物質としてPATM原因物質に含まれる。なお、青臭さのあるアルデヒド類としては、2-ノネナール又は2-ドデセナールが例示される。油臭を特徴とするアルデヒド類としては、ノナナール又はオクタナールが例示される。
【0052】
<実験方法>
(1)実験5では、消臭剤組成物として、実験3の消臭試料16を採用した。被験者は、腋臭を自覚する2人の被験者X4,X5と、加齢臭を自覚する2人の被験者X6,X7とした。被験者X4は、30代男性であり、被験者X5は、20代女性である。被験者X6は、50代女性であり、被験者X7は、40代男性である。実験5では、実験4と同様、被験者X4~X7の同居人Y4~Y7の協力を得えた。そして、実験5は、被験者X4及び同居人Y4の組み合わせ、被験者X5及び同居人Y5の組み合わせ、被験者X6及び同居人Y6の組み合わせ、及び被験者X7及び同居人Y7の組み合わせで個別に実施した。同居人Y4は、20代女性で、被験者X4の妻である。同居人Y5は、50代女性で、被験者X5の母親である。同居人Y6は、20代女性で、被験者X6の娘である。同居人Y7は、40代女性で、被験者X7の妻である。
【0053】
実験5の説明では、被験者X4~X7を区別しない場合、又はこれらを総称する場合、「被験者X」といい、同居人Y4~Y7を区別しない場合、又はこれらを総称する場合、「同居人Y」という。但し、被験者X及び同居人Yの組み合わせは、上述した通りである。
【0054】
(2)実験5では、消臭試料16を被験者X4~X7の次に示す範囲に次に示す総量だけ塗布した。消臭試料16を被験者X4~X7に塗布した後、被験者X及び同居人Yは、次の3回のタイミングで、被験者Xを6段階臭気強度表示法及び9段階臭気快不快度表示法に従い官能評価した。前述の3回のタイミングは、塗布直後、塗布から3時間後及び6時間後である。
[塗布範囲・総塗布量]
被験者X4
塗布範囲:両脇の下、副乳、乳首周辺
総塗布量:5ml
被験者X5
塗布範囲:両脇の下
総塗布量:3ml
被験者X6
塗布範囲:首回り、背中全体のうち肩甲骨内側の部分
総塗布量:5ml
被験者X7
塗布範囲:首回り、背中上部、両脇の下
総塗布量:10ml
[6段階臭気強度表示法]
0:無臭
1:やっと感知できる臭い
2:何の臭いか判る弱い臭い
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
[9段階快不快度表示法]
-4:極端に不快
-3:非常に不快
-2:不快
-1:やや不快
0:快でも不快でもない
1:やや快
2:快
3:非常に快
4:極端に快
<実験結果>
(1)実験5の実験結果を表4に示す。表4の各枠内に並んで示す2つの評価値について、括弧外の値は6段階臭気強度表示法による評価値を示し、括弧内の値は、9段階快不快度表示法による評価値を示す。被験者X4及び同居人Y4では、被験者X4は、同居人Y4との実生活で6段階臭気強度表示法の評価値「5」及び9段階快不快度表示法の評価値「-4」の認識を有し、同居人Y4は、被験者X4との実生活で6段階臭気強度表示法の評価値「3」及び9段階快不快度表示法の評価値「-2」の認識を有している。これに対して、実験5では、被験者X4及び同居人Y4共に、3回の全てのタイミングで評価値に改善が認められた。
【0055】
被験者X5及び同居人Y5では、被験者X5は、同居人Y5との実生活で6段階臭気強度表示法の評価値「4」及び9段階快不快度表示法の評価値「-3」の認識を有し、同居人Y5は、被験者X5との実生活で6段階臭気強度表示法の評価値「2」及び9段階快不快度表示法の評価値「0」の認識を有している。これに対して、実験5では、被験者X5及び同居人Y5共に、3回の全てのタイミングで評価値に改善が認められた。
【0056】
被験者X6及び同居人Y6では、被験者X6は、同居人Y6との実生活で6段階臭気強度表示法の評価値「3」及び9段階快不快度表示法の評価値「-4」の認識を有し、同居人Y6は、被験者X6との実生活で6段階臭気強度表示法の評価値「2」及び9段階快不快度表示法の評価値「-1」の認識を有している。これに対して、実験5では、被験者X6及び同居人Y6共に、3回の全てのタイミングで評価値に改善が認められた。
【0057】
被験者X7及び同居人Y7では、被験者X7は、同居人Y7との実生活で6段階臭気強度表示法の評価値「3」及び9段階快不快度表示法の評価値「-2」の認識を有し、同居人Y7は、被験者X7との実生活で6段階臭気強度表示法の評価値「4」及び9段階快不快度表示法の評価値「-3」の認識を有している。これに対して、実験5では、被験者X7及び同居人Y7共に、3回の全てのタイミングで評価値に改善が認められた。
【0058】
つまり、実験5によって、消臭試料16が腋臭及び加齢臭の何れかを自覚する被験者Xに対して消臭効果の即効性及び持続性を有することが確認された。
【表4】
【0059】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0060】
(1)消臭剤組成物は、多孔質物質を含む。多孔質物質には、細孔が形成される。細孔は、マイクロ孔又はメソ孔である。消臭剤組成物は、シクロデキストリンを含む。更に、消臭剤組成物は、乳液を含む。そのため、人体表面(肌)への塗布が容易となる。人体表面で、人体表面からの揮発性物質を吸着し、人体表面からの揮発性物質を包接することができる。人体表面からの揮発性物質の発散を抑制することができる。揮発性物質による臭気及び刺激感の一方又は両方を除去又は軽減することができる。
【0061】
(2)消臭剤組成物は、多孔質物質として、含硫ケイ酸アルミニウムを含む。消臭剤組成物は、多孔質物質である含硫ケイ酸アルミニウムを1質量%以上含有し、シクロデキストリンを1質量%以上含有する。そのため、人体表面からの揮発性物質の吸着及び包接について、優れた特性が得られる。例えば、PATM反応、腋臭及び加齢臭に対する消臭効果を得ることができる。更に、消臭効果の即効性及び持続性を発揮することができる。
【0062】
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は、適宜省略する。
【0063】
(1)消臭剤組成物は、多孔質物質として、含硫ケイ酸アルミニウムを含む。消臭剤組成物では、多孔質物質は、含硫ケイ酸アルミニウムとは異なる物質としてもよい。但し、消臭剤組成物では、含硫ケイ酸アルミニウムと同等の吸着能力を有する多孔質物質を採用するとよい。
【0064】
(2)消臭剤組成物では、多孔質物質の濃度は、10質量%以下とするとよい。多孔質物質の濃度が10質量%より高くなると、消臭剤組成物の外観が悪くなる。更に、粉体(微粒子)である多孔質物質が沈降する等して安定性が低下する。このような現象を改善するため、多孔質物質の濃度は、5質量%以下とするとよい。
【0065】
また、消臭剤組成物では、シクロデキストリンの濃度は、10質量%以下とするとよい。シクロデキストリンの濃度が10質量%より高くなると、消臭剤組成物を肌(人体表面)に塗布した後のべたつきが解消され難くなる。このような現象を改善するため、シクロデキストリンの濃度は、5質量%以下とするとよい。
【0066】
(3)実施例では、乳液として、株式会社ジョリーブ製の乳液を用いた。消臭剤組成物では、これとは異なる乳液を採用することもできる。消臭剤組成物では、諸条件を考慮して適切な乳液が適宜決定される。消臭剤組成物は、液体状又はクリーム状の何れであってもよい。