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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/08 20060101AFI20221111BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C39/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018106055
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019209776
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳都
(72)【発明者】
【氏名】大野 和則
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 貴之
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123918(JP,A)
【文献】特開2017-035996(JP,A)
【文献】特表2016-523759(JP,A)
【文献】特開2016-043922(JP,A)
【文献】特開2016-211878(JP,A)
【文献】特開2015-117003(JP,A)
【文献】特開2010-052713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に凸状に膨らんだ形状を成し、内側に空間を形成するよう、互いに間隔をあけて対向して配置された1対の殻体と、各殻体の内側で各殻体の中心部を連結し、各殻体の中心部を結ぶ第1の軸を中心として、各殻体を回転可能に設けられた連結部材と、前記連結部材に支持されて各殻体の内側に配置された推進手段とを、それぞれ有する複数の推進体と、
各殻体の間隔を通して各推進体の前記連結部材に接続され、各推進体の前記第1の軸に対してほぼ垂直方向の第2の軸を中心として、各推進体の各殻体を互いに独立に回転可能に設けられた接続体とを、
有することを特徴とする移動体。
【請求項2】
前記連結部材は、連結した各殻体を互いに独立に回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の移動体。
【請求項3】
前記推進手段は、前記連結部材に対して前記第2の軸を中心として回転可能に、前記連結部材を介して前記接続体に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の移動体。
【請求項4】
各推進体の前記推進手段を稼働する稼働手段を有し、各推進体の各殻体の外側で前記接続体に設けられた本体部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項5】
各推進体前記推進手段は、推進方向がほぼ同じ方向になるよう設けられ、
前記本体部は、前記推進方向に対して概ね垂直の方向に移動させるための移動手段を有していることを
特徴とする請求項4記載の移動体。
【請求項6】
各殻体は、外側に凸状に膨らんだ部分が曲面状または多面体状で、少なくとも一部が開放されたフレーム形状を成していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項7】
各推進体の前記推進手段がプロペラから成り、飛行可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害対応やインフラ点検等に利用するため、プロペラ推進装置により飛行や着陸を行うだけでなく、地上等も走行することができる移動体として、マルチコプター等の飛行体と、飛行体のプロペラ等をガードすると共に、地上や壁面、天井等の走行を行うためのフレーム状の受動車輪とを有するものが多く提案されている。このような移動体として、例えば、飛行体を挟むようにして、フレーム状の2つの車輪が設けられたもの(例えば、非特許文献1または2参照)や、円筒形状に形成されたフレームの内部に、飛行体を配置したもの(例えば、非特許文献3または4参照)、球殻状に形成されたフレームの内部に、飛行体を配置したもの(例えば、非特許文献5乃至9、特許文献1または2参照)、互いに間隔をあけて対向して配置された1対の半球状のフレームの内部に、飛行体を配置したもの(例えば、非特許文献10、特許文献3または4参照)がある。これらの移動体では、飛行体がフレームに対して、1~3自由度で回転可能に取り付けられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】”Parrot MINIDRONES -ROLLING SPIDER-“、[online]、Parrot、[2018年3月7日検索]、インターネット〈URL: http://global.parrot.com/au/products/rolling-spider/〉
【文献】Nana Takahashi, Shuhei Yamashita, Yurina Sato, Kutsuna Yuta, Manabu Yamada, “All-round two-wheeled quadrotor helicopters with protect-frames for air - land - sea vehicle (controller design and automatic charging equipment)”, Asvanced Robotics, 2015, Volume 29, p.69-87
【文献】Arash Kalantari, Matthew Spenko, “Design and experimental validation of HyTAQ, a Hybrid Terrestrial and Aerial Quadrotor”, Robotics and Automation (ICRA), 2013 IEEE International Conference
【文献】Moyuru Yamada, Manabu Nakao, Yoshiro Hada, “Development and field test of novel two-wheeled UAV for bridge inspections”, Unmanned Aircraft Systems (ICUAS), 2017 International Conference
【文献】Adrien Briod, Przemyslaw Kornatowski, Jean-Christophe Zufferey, Dario Floreano, “A Collision-resilient Flying Robot”, Journal of Field Robotics, 26 DEC 2013, Volume 31, Issue 4, Version of Record online
【文献】Carl John O. Salaan, Yoshito Okada, Shouma Mizutani, Takuma Ishii, Keishi Koura, Kazunori Ohno, Satoshi Tasokoro, “Close visual bridge inspection using a UAV with a passiverotating spherical shell”, Journal of Field Robotics Early View, 27 FEB 2018, Version of Record online
【文献】A. Kalantari, M. Spenko, “Design and Experimental Validation of HyTAQ, a Hybrid Terrestrial and Aerial Quadrotor”, IEEE International Conference on Robotics and Automation, 2013, p.4430-4435
【文献】A. Briod, P. Kornatowski, J.-C. Zufferey, and D. Floreano, “A Collision Resilient Flying Robot”', J. Field Robotics, doi:10.1002/rob.21495, 2014
【文献】水谷将馬、大野和則、柳村一成、岡田佳都、竹内栄二朗、田所諭、「錯雑した構造体中での飛行が可能な回転球殻を有するクアッドロータ」、日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 Robomech 2014、2A1-E04
【文献】Carl John O. Salaan,Kenjiro Tadakuma,Yoshito Okada,Eri Takane,Kazunori Ohno, Satoshi Tadokoro, “UAV with Two Passive Rotating Hemispherical Shells for Physical Interaction and Power Tethering in a Complex Environment”, The 2017 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA2017)
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-52713号公報
【文献】国際公開WO2014/198774号
【文献】特開2015-117003号公報
【文献】特開2017-35996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような移動体では、災害対応やインフラ点検等で効果的に活用するために、できるだけ小さいサイズで、狭い場所でも入り込める狭所適用性、プロペラ等の推進機能を保護する保護性能、空中だけでなく、地上でも全方向に移動できる地上移動性に優れていることが求められる。非特許文献1および2に記載の、飛行体を2つの車輪で挟んだものは、車輪が存在する側面以外で、プロペラ等の推進機能が剥き出しになっているため、保護性能が不十分である。また、地上においては、2つの車輪では1方向への移動とその場での回転しかできず、全方向への移動は可能ではあるが困難であり、地上移動性にもやや劣っている。
【0006】
また、非特許文献3および4に記載の、円筒状フレームの内部に飛行体を配置したものは、地上では、円筒の周方向への回転による1方向にしか移動することができず、地上移動性に劣っている。また、非特許文献5乃至9、特許文献1および2に記載の、球殻フレームの内部に飛行体を配置したもの、並びに、非特許文献10、特許文献3および4に記載の、1対の半球状フレームの内部に飛行体を配置したものは、飛行体全体を、球殻フレームや1対の半球状フレームの内部に収納するため、球殻フレームや1対の半球状フレームのサイズが大きくなってしまい、狭所適用性にやや劣っている。
【0007】
このように、従来の移動体では、狭所適用性、保護性能、および地上移動性のいずれかが劣っており、これらの特性の全てで優れているものは存在していないという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、狭所適用性、保護性能、および地上移動性に優れた移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る移動体は、外側に凸状に膨らんだ形状を成し、内側に空間を形成するよう、互いに間隔をあけて対向して配置された1対の殻体と、各殻体の内側で各殻体の中心部を連結し、各殻体の中心部を結ぶ第1の軸を中心として、各殻体を回転可能に設けられた連結部材と、前記連結部材に支持されて各殻体の内側に配置された推進手段とを、それぞれ有する複数の推進体と、各殻体の間隔を通して各推進体の前記連結部材に接続され、各推進体の前記第1の軸に対してほぼ垂直方向の第2の軸を中心として、各推進体の各殻体を互いに独立に回転可能に設けられた接続体とを、有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る移動体は、各推進体の各殻体の内側に配置された推進手段により、自身で移動可能である。推進手段は、移動可能であればいかなるものであってもよく、例えば、プロペラや浮遊体、脚や車輪、無限軌道、エンジン、モーター等を有したものから成っている。このような推進手段により、本発明に係る移動体は、空中を飛行したり、水上や水中を移動したり、地表を移動したり走行したりすることができる。地表を走行する場合には、地面に対して各殻体が回転して走行することが好ましい。
【0011】
本発明に係る移動体は、各推進体が、(A)第1の軸を中心とした各殻体の回転と、(B)第1の軸に対してほぼ垂直方向の第2の軸を中心とした各殻体の回転とを有している。本発明に係る移動体は、複数の推進体の各殻体がそれぞれ独立に、(A)の回転と(B)の回転とを行うことにより、地上や壁、天井などに接地したとき、任意の方向に移動可能になっている。このため、本発明に係る移動体は、各殻体が被衝突物と衝突しても、その衝撃を効率的に逃がすことができ、移動体自身や被衝突物を傷つけたり破損したりするのを防ぐことができる。
【0012】
また、本発明に係る移動体は、衝突などによりどの方向の回転が加わっても、各推進体の推進手段に対して各殻体が(A)および(B)の回転で回転することにより、全体が回転するのを防ぐことができる。本発明に係る移動体は、各推進体の各殻体の(A)および(B)の回転を利用することにより、離陸時や移動開始時に、可動性の高い姿勢に変換することができ、離陸や移動を始めやすくすることができる。
【0013】
本発明に係る移動体は、各推進手段を各殻体で覆って保護することができる。また、各殻体を、1つの推進手段のみを覆う大きさまで小さくすることができる。このため、複数の推進手段の全てを一つの球殻等で覆う場合と比べて、全体を小型化することができ、より狭い場所に入り込むことができる。このように、本発明に係る移動体は、狭所適用性、保護性能、および地上移動性に優れている。
【0014】
本発明に係る移動体で、第1の軸と第2の軸とは、完全に垂直でなくとも、ほぼ垂直を成していればよく、約80度~90度の角度であればよい。また、各殻体は、連結部材に対して右回りにも左回りにも回転可能であることが好ましい。前記連結部材は、連結した各殻体を互いに独立に回転可能に設けられていることが好ましい。これらの場合、地上移動性をさらに向上させることができる。また、各推進体の推進手段は、各殻体の重心位置またはその近傍に配置されていることが好ましい。また、各殻体は、外側から衝撃が加わったときに、その衝撃をある程度吸収可能な弾性や柔軟性等を有する素材から成っていることが好ましい。また、各殻体と連結部材との接続部や、連結部材と推進手段との接触部も、衝撃を吸収可能に構成されていることが好ましい。これらの場合、衝突時の、被衝突物や移動体自身の破損防止効果を高めることができる。
【0015】
本発明に係る移動体で、前記推進手段は、前記連結部材に対して前記第2の軸を中心として回転可能に、前記連結部材を介して前記接続体に取り付けられていることが好ましい。この場合、各殻体の(A)および(B)の回転の影響を各推進手段まで及ぼさないようにすることができる。このため、各推進手段の体勢を維持することができ、各推進手段により姿勢を制御可能である。また、各推進手段に錘など取り付けることにより、各推進手段を自動的に同じ体勢に維持することができる。これにより、移動開始(離陸)、移動、停止(着陸)といった一連の動作を、安定して行うことができる。
【0016】
本発明に係る移動体は、各推進体の前記推進手段を稼働する稼働手段を有し、各推進体の各殻体の外側で前記接続体に設けられた本体部を有することが好ましい。この場合、各推進体の各殻体の間隔を通して、各推進手段に本体部の稼働手段から配線し、電力を供給することができる。これにより、移動したり各殻体が回転したりしても、配線が巻き付いたり絡まったりしない。また、1つの稼働手段で、全ての推進体の推進手段を稼働することができる。稼働手段は、各推進体の推進手段をそれぞれ独立して稼働可能であることが好ましい。
【0017】
また、この本体部を有する場合、カメラや計測装置などの各種機器が、本体部に搭載されていてもよい。このとき、各種機器が各殻体の外部に配置されるため、各殻体が邪魔にならずに、撮影や計測などを行うことができる。また、移動中でも稼働手段や各種機器に、有線で電力を供給することができるため、バッテリー駆動の場合と比べて、長時間駆動が可能である。また、バッテリー駆動の場合でも、有線によるバッテリーへの充電が容易である。また、稼働手段や各種機器へのアクセスが容易であり、部品やバッテリーの交換、修理等のメンテナンスが容易である。また、本体部を囲うよう、各推進体を配置することにより、外部の物質との衝突を各殻体で防ぐと共に、その衝突による衝撃を、各殻体の回転で逃がすことができ、稼働手段や各種機器が破損するのを防ぐことができる。
【0018】
また、この本体部を有する場合、各推進体前記推進手段は、推進方向がほぼ同じ方向になるよう設けられ、前記本体部は、前記推進方向に対して概ね垂直の方向に移動させるための移動手段を有していてもよい。また、移動手段を有さず、各推進体の推進手段の推進方向が斜交するよう設けられていてもよい。このとき、移動手段や、推進方向が斜交した各推進手段により、各推進手段による推進方向に対して垂直の方向にも移動可能となり、移動範囲を拡大することができる。例えば、各推進手段がプロペラから成り、地面から垂直方向に推進するとき、移動手段や、推進方向が斜交した各推進手段により、接地面に沿って移動することができる。また、稼働手段や移動手段、各種機器を無線または有線で制御可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る移動体で、各殻体は、外側に凸状に膨らんだ部分が曲面状または多面体状で、少なくとも一部が開放されたフレーム形状を成していることが好ましい。曲面状の場合には、多面体状の場合と比べて、地面を転がったときなどに、振動が発生しにくく、推進手段や各種機器などが破損したり故障したりするのを防ぐことができる。曲面状の場合の曲面としては、半球に限らず、例えば、球や楕円体の一部の曲面であってもよい。多面体状の場合には、製造しやすく、製造コストを抑えることができる。また、各殻体がフレーム形状を成しているため、各殻体の内側を視認しやすく、推進手段の管理が容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、狭所適用性、保護性能、および地上移動性に優れた移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態の移動体を示す斜視図である。
図2図1に示す移動体の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
図3図1に示す移動体の(a)殻体を示す斜視図、(b)連結部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は、本発明の実施の形態の移動体を示している。
図1および図2に示すように、移動体10は、複数の推進体11と接続体12と本体部13とを有している。
【0023】
推進体11は、4つから成り、それぞれ1対の殻体21と、連結部材22と、プロペラから成る推進手段23とを有している。図3(a)に示すように、各殻体21は、外側に凸状に膨らんだ半球殻状を成している。各殻体21は、球における経線、緯線および極部21aに相当する弾性を有する部品により、フレーム形状に構成されている。経線および緯線を成す部品は、楕円形の断面形状を有している。各殻体21は、各部品の接触位置をピンで仮止めした後、接着剤を使用して各部品を固定して形成されている。各殻体21は、外側から衝撃が加わったときに、その衝撃をある程度吸収可能になっている。図1および図2に示すように、各殻体21は、内側に概ね球状の空間を形成するよう、互いに極部21aを外側にして間隔をあけて対向して配置されている。
【0024】
図3(b)に示すように、連結部材22は、細長く、楕円形の断面形状を有する部材から成り、ほぼ半円形状を成している。図1および図2に示すように、連結部材22は、各殻体21の内側に配置され、両端部22aが各殻体21の極部21aに取り付けられ、間隔をあけた状態で各殻体21を連結している。連結部材22は、各殻体21の極部21aを結ぶ第1の軸15を中心として、連結した各殻体21を互いに独立に、右回りにも左回りにも回転可能に設けられている。また、連結部材22は、各殻体21の間の間隔に対応する中心位置に、各殻体21で囲われた概ね球状の空間の中心方向に向いた貫通孔22bを有している。
【0025】
図1および図2に示すように、接続体12は、胴体部24と2本のシャフト25とを有している。胴体部24は、角柱形の筒状を成している。2本のシャフト25は、互いに平行を成すよう、それぞれ胴体部24の両端に、胴体部24に対して垂直に伸びるよう取り付けられている。各シャフト25は、両端が胴体部24から同じ距離だけ離れるよう取り付けられている。接続体12は、各推進体11の各殻体21が互いに接触しないよう、各シャフト25の両端部に1つずつ推進体11が取り付けられている。
【0026】
各推進体11は、それぞれ対応するシャフト25の端部を、各殻体21の間の間隔から、連結部材22の貫通孔22bに通すことより、接続体12に取り付けられている。各推進体11は、それぞれ対応するシャフト25の先端が、各殻体21で囲われた概ね球状の空間のほぼ中心に配置されるよう取り付けられている。各推進体11は、それぞれの連結部材22が、貫通孔22bを通るシャフト25の中心軸に沿った第2の軸16を中心として回転可能に取り付けられている。これにより、各推進体11は、それぞれの第1の軸15に対してほぼ垂直方向の第2の軸16を中心として、各殻体21が回転可能に設けられている。移動体10は、各推進体11の各殻体21を1つの球殻としたとき、各球殻が互いに独立に回転可能になっている。なお、各推進体11は、それぞれの第1の軸15が完全に平行を成しておらず、それぞれ第2の軸16に対して約80度~90度の角度を成すよう取り付けられている。
【0027】
各推進体11の推進手段23は、それぞれ対応するシャフト25の先端に取り付けられており、各殻体21および連結部材22に対して第2の軸16を中心として回転可能になっている。各推進手段23は、シャフト25を介して連結部材22に支持されており、各殻体21の内側のほぼ重心位置に配置されている。各推進手段23は、推進方向がほぼ同じ方向になるよう、各推進体11の第1の軸15に対して0~10度以内の角度を成す軸を中心として回転するよう設けられている。各推進手段23は、各殻体21および連結部材22に接触しないで回転するよう取り付けられている。
【0028】
図2に示すように、本体部13は、各推進体11の各殻体21の外側で、各推進体11に囲われた接続体12の胴体部24に取り付けられている。本体部13は、各推進手段23を稼働する稼働手段26を有している。稼働手段26は、胴体部24から各シャフト25を通して、各推進手段23にケーブルで接続されており、各推進手段23に電力を供給可能になっている。稼働手段26は、各推進手段23をそれぞれ独立して稼働可能、かつ、各推進手段23の稼働状態を無線または有線で制御可能に構成されている。
【0029】
次に、作用について説明する。
移動体10は、非特許文献10や特許文献4に記載された、回転に対して2自由度を有する移動体10を参考にして構成されている。移動体10は、各推進体11の各殻体21の内側に配置された推進手段23により、自身で空中を移動可能である。移動体10は、各推進体11が、(A)第1の軸15を中心とした各殻体21の回転と、(B)第1の軸15に対してほぼ垂直方向の第2の軸16を中心とした各殻体21の回転とを有している。移動体10は、複数の推進体11の各殻体21がそれぞれ独立に、(A)の回転と(B)の回転とを行うことにより、地上や壁、天井などに接地したとき、任意の方向に移動可能になっている。このため、移動体10は、各殻体21が被衝突物と衝突しても、その衝撃を効率的に逃がすことができ、移動体10自身や被衝突物を傷つけたり破損したりするのを防ぐことができる。
【0030】
また、移動体10は、衝突などによりどの方向の回転が加わっても、各推進体11の推進手段23に対して各殻体21が(A)および(B)の回転で回転することにより、全体が回転するのを防ぐことができる。移動体10は、各推進体11の各殻体21の(A)および(B)の回転を利用することにより、離陸時や移動開始時に、可動性の高い姿勢に変換することができ、離陸や移動を始めやすくすることができる。
【0031】
移動体10は、各推進手段23を各殻体21で覆って保護することができる。また、各殻体21を、1つの推進手段23のみを覆う大きさまで小さくすることができる。このため、複数の推進手段23の全てを一つの球殻等で覆う場合と比べて、全体を小型化することができ、より狭い場所に入り込むことができる。このように、移動体10は、狭所適用性、保護性能、および地上移動性に優れている。
【0032】
移動体10は、各推進手段23が、各殻体21の(A)および(B)の回転の影響を受けないため、各推進手段23の体勢を維持することができ、各推進手段23により姿勢を制御可能である。また、各推進手段23に錘など取り付けることにより、各推進手段23を自動的に同じ体勢に維持することができる。これにより、移動開始(離陸)、移動、停止(着陸)といった一連の動作を、安定して行うことができる。
【0033】
移動体10は、各殻体21が曲面状を成しているため、各殻体21が地面を転がったときなどに、振動が発生しにくく、各推進手段23などが破損したり故障したりするのを防ぐことができる。移動体10は、各殻体21がフレーム形状を成しているため、軽量で、各殻体21の内側を視認しやすく、各推進手段23の管理が容易である。また、移動体10は、各殻体21がフレーム形状を成し、各殻体21の各部品および連結部材22が楕円形の断面形状を有しているため、プロペラから成る各推進手段23からの風を妨げにくい。
【0034】
移動体10は、本体部13に、稼働手段26の他に、カメラや計測装置などの各種機器を搭載することができる。これにより、各種機器が各殻体21の外部に配置されるため、各殻体21が邪魔にならずに、撮影や計測などを行うことができる。また、移動体10は、移動中でも稼働手段26や各種機器に、有線で電力を供給することができるため、バッテリー駆動の場合と比べて、長時間駆動が可能である。また、バッテリー駆動の場合でも、有線によるバッテリーへの充電が容易である。また、移動体10は、稼働手段26や各種機器へのアクセスが容易であり、部品やバッテリーの交換、修理等のメンテナンスが容易である。また、移動体10は、本体部13を囲うよう、各推進体11が配置されているため、外部の物質との衝突を各殻体21で防ぐと共に、その衝突による衝撃を、各殻体21の回転で逃がすことができ、稼働手段26や各種機器が破損するのを防ぐことができる。
【0035】
なお、移動体10は、本体部13に、各推進手段23の推進方向に対して概ね垂直の方向に移動させるための移動手段を有していてもよく、各推進体11の推進手段23の推進方向が斜交するよう設けられていてもよい。これらの場合、移動手段または各推進手段23により、接地面に沿って移動することができる。また、各推進体11の各殻体21の(A)および(B)の回転方向と回転量や、移動手段の稼働状態を、無線または有線でそれぞれ独立に制御可能に構成されていてもよい。この場合、能動的に任意の動きを行うことができ、使用用途を広げることができる。また、各種機器も無線または有線で制御可能に構成されていてもよい。
【0036】
移動体10は、各推進手段23がプロペラから成るものに限らず、浮遊体、脚や車輪、無限軌道、エンジン、モーター等から成っていてもよい。このような推進手段23により、移動体10は、空中を飛行したり、水上や水中を移動したり、地表を移動したり走行したりすることができる。移動体10は、適切な推進手段23を使用することにより、所望の場所に自由に移動することができる。例えば、狭隘空間などへの出入りや、狭隘空間内での移動も自由に行うことができる。このため、様々な探査活動等を効率的に行うことができる。移動体10は、橋梁やトンネルなどの社会インフラの点検や、災害現場の探査などに利用することができる。移動体10は、飛行体や車輪、脚式移動体、水中推進機構、クローラ、その他の複合移動機構など、移動可能なものであればいかなるものから成っていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 移動体
11 推進体
21 殻体
21a 極部
22 連結部材
22a 端部
22b 貫通孔
23 推進手段
12 接続体
24 胴体部
25 シャフト
13 本体部
26 稼働手段
15 第1の軸
16 第2の軸
図1
図2
図3