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  • 特許-木札及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】木札及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 33/00 20060101AFI20221111BHJP
   B32B 21/14 20060101ALI20221111BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A47G33/00 J
B32B21/14
B32B33/00
A47G33/00 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018130489
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020005962
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000153982
【氏名又は名称】株式会社さん・おいけ
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】尾池 幸治
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-312599(JP,A)
【文献】実開平04-031576(JP,U)
【文献】特開2011-147639(JP,A)
【文献】特開2017-172071(JP,A)
【文献】特開平10-195792(JP,A)
【文献】特開平11-314317(JP,A)
【文献】特開2002-038698(JP,A)
【文献】特開2000-006111(JP,A)
【文献】特開2003-305706(JP,A)
【文献】特開2000-135706(JP,A)
【文献】実公昭48-042713(JP,Y1)
【文献】特開昭52-141783(JP,A)
【文献】特開平03-254710(JP,A)
【文献】特開2010-031136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 33/00
B32B 21/14
B32B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材の少なくとも表面に表示がなされる木札であって、
前記基材が、木材パルプを圧縮して板状に形成した木材パルプのみからなる芯材と、前記芯材の表裏両面に形成された塗工層を有し、
前記塗工層が顔料塗工からなるものであり、前記芯材に接するクリーム色を呈する下層と表面に露出する白色を呈する表面層で構成され、
前記塗工層の上に、前記表示がなされる木目模様の印刷層が形成された
木札。
【請求項2】
板状の基材の少なくとも表面に表示を有する木札であって、
前記基材が、木材パルプを圧縮して板状に形成した木材パルプのみからなる芯材と、前記芯材の表裏両面に形成された塗工層を有し、
前記塗工層が顔料塗工からなるものであり、前記芯材に接するクリーム色を呈する下層と表面に露出する白色を呈する表面層で構成され、
前記塗工層の上に、前記表示と共に木目模様を有する印刷層が形成された
木札。
【請求項3】
前記芯材が、機械パルプ層と、前記機械パルプ層の表裏両面の化学パルプ層で構成された
請求項1または請求項2に記載の木札。
【請求項4】
前記基材の厚さが8mmである
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の木札。
【請求項5】
前記印刷層の木目模様の木目方向が、前記基材の前記木材パルプの流れ方向と同じである
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の木札。
【請求項6】
木材パルプを圧縮して板状に形成した木材パルプのみからなる芯材と、前記芯材の表裏両面に形成され、クリーム色を呈する下層と白色を呈する表面層を有する顔料塗工からなる塗工層を有する板状の基材を用意して、
前記塗工層の上に表示と共に木目模様の印刷層を形成する印刷工程と、
前記印刷層を有する部分をカッティングマシンで木札の形に切り取る切断工程を順に行い、
切断後のカット面に対する加工無しに水引を取り付ける水引取り付け工程を行う
木札製造方法。
【請求項7】
板状の基材の少なくとも表面に表示がなされる木札であって、
重量感が木材からなる木札と同様の前記基材が、木材パルプを圧縮して板状に形成した木材パルプのみからなる芯材と、前記芯材の表裏両面に形成された塗工層で構成されるとともに、
前記芯材が機械パルプ層と前記機械パルプ層の表裏両面の化学パルプ層で構成され、
前記塗工層が顔料塗工からなるものであり、前記芯材に接するクリーム色を呈する下層と表面に露出する白色を呈する表面層で構成され、
前記塗工層の上に、前記表示がなされる木目模様の印刷層が形成された
木札。
【請求項8】
板状の基材の少なくとも表面に表示がなされる木札であって、
重量感が木材からなる木札と同様の前記基材が、木材パルプを圧縮して板状に形成した木材パルプのみからなる芯材と、前記芯材の表裏両面に形成された塗工層で構成されるとともに、
前記芯材が機械パルプ層と前記機械パルプ層の表裏両面の化学パルプ層で構成され、
前記塗工層が顔料塗工からなるものであり、前記芯材に接するクリーム色を呈する下層と表面に露出する白色を呈する表面層で構成され、
前記塗工層の上に、前記表示と共に木目模様を有する印刷層が形成された
木札。
【請求項9】
前記基材の厚さが8mmである
請求項7または請求項8に記載の木札。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば御神札、御祈祷札などとして用いられるような木札に関する。
【背景技術】
【0002】
木札は本来、木を板状に製材して得られるものであるが、森林の伐採や環境保全の点から、良質な材料の確保が困難になりつつある。
【0003】
このため従来、製材された板を用いない木札が提案されてきた(例えば下記特許文献1~5)。
【0004】
特許文献1~3の木札は、複数枚の板紙を重ね合わせて木札の芯材を構成するものであり、特許文献4では古紙再生紙を圧縮固着成形して、特許文献5ではチップ材を凝固させて、芯材を構成している。芯材の表面には木材らしさを表現するため、特許文献2~5には木目模様を印刷した紙を芯材の表裏両面に貼り付けることが、特許文献1には、芯材の表裏両面に印刷を施すことが開示されている。
【0005】
しかし、これらの構成では、木製の板らしさが得られない。
【0006】
芯材が板紙の貼り合わせで構成された場合には、板紙が積層された状態であるので、外面全体を木の板らしく装えば板のような外観は得られるが、紙であるため軽いうえに、端面には紙の屑が露出したり板紙の層が見えたりする。そのうえ、強度はなく、例えば塔婆のように長尺の木札とした場合には、特に折れやすい。
【0007】
芯材を古紙再生紙の圧縮固着成形で構成した場合には、層構造ではないものの、厚い板紙と同様の構造であって、木製の板のような強度がない点も露出する端面が見苦しい点も、板紙を貼り合わせて構成した場合と同様である。
【0008】
芯材をチップ材の凝固で構成した場合は、チップ材、つまり小片を固めたものであるので、古紙再生紙を圧縮固着して芯材を構成した場合と同様に、木製の板のような強度がないばかりか、別途に加工をしない限り露出する端面をきれいにすることはできない。
【0009】
木札の表裏両面については、木目模様を印刷した紙を芯材に貼り合わせた構成では、板紙を貼り合わせて構成した芯材と同様、湿気を吸ったりして剥離などが起こりやすい。また、紙を貼り合わせても凹凸を吸収することは困難であるので、芯材の表裏両面が平滑でない場合には、滑らかな面は得られない。
【0010】
木目模様を板紙からなる芯材に印刷する構成では、板紙の色が印刷に影響を与えるので、木肌に酷似した美麗な色彩や模様は得にくい。しかも、板紙の面の凹凸、ザラザラ感があればそれがそのまま表れるので、製材された板からなる木製の木札のような平滑面は得られない。
【0011】
また、そもそも木製の木札は、多少なりとも大きさや品質にばらつきがある。そのうえ経時変化によって膨らんだり反ったり痩せたりする変形や割れなどが起こる。このため、木札に包み紙をかけたり水引を取り付けたりする加工を行う場合には、個々に臨機応変な対応が必要となり、一律の作業では済まなかった。つまり、加工を不良なく迅速に行うことは容易ではなかった。
【0012】
この点、特許文献1~5の木札は木製ではないので、このような問題が生じないようにも思える。しかしながら、特に芯材が紙からなる構成の木札では、木製の木札のような強度がないので、端部や角の潰れ等によって形が崩れたり欠けたりしやすい。このため、加工のし難さは、特許文献1~5の木札でも依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】登録実用新案第3107129号公報
【文献】特開平3-254710号公報
【文献】登録実用新案第3163313号公報
【文献】実開平4-101680号公報
【文献】実開平4-31576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明は、外観ばかりではなく実質的にも木製の木札に酷似させることができるとともに、水引の取付けなどの加工をしやすくすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのための手段は、板状の基材の少なくとも表面に表示がなされる木札であって、前記基材が、木材パルプを圧縮して板状に形成した木材パルプのみからなる芯材と、前記芯材の表裏両面に形成された塗工層を有し、前記塗工層が顔料塗工からなるものであり、前記芯材に接するクリーム色を呈する下層と表面に露出する白色を呈する表面層で構成され、前記塗工層の上に、前記表示がなされる木目模様の印刷層が形成された木札である。
【0016】
この構成では、表示は、印刷層の上に別途なされるほか、印刷層の形成に際して木目模様と共に表される。木材パルプからなる芯材は、製材した板ではないものの木材のような質感や重量感を有するとともに、高い形態安定性と強度を有し、外周に表れる端面を木材に似た外観にする。塗工層は、高い一体性をもって芯材を被覆するとともに、塗工された芯材の少なくとも表面の凹凸を吸収して平滑にし、印刷層を美麗に形成可能にする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、見た目にも手に持った感じでも木製の木札に酷似している模造木札を得ることができる。そのうえ、芯材は木材パルプを圧縮して板状に形成されたものであって、表面には一体の塗工層が形成されているので、端部や角を含めて木製の板と同様の強度を有する。このため、木材と異なり大きさや品質のばらつきをなくして経時変化による変形等も抑制できることと相まって、水引を取り付けたりする加工が一様に行え、加工がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】木札の正面図。
図2】水引等を取り付けた木札の正面図。
図3図1のA-A切断部の部分拡大図。
図4】製造工程を示す説明図。
図5】印刷層の印刷方向を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0020】
図1に木札11の正面図を示す。木札11は、板状の基材12の少なくとも表面に木札11に必要な表示13がなされるものであって、図示例の木札11では、縦長の略短冊形状に形成されており、「商売繁盛」の文字13aと、出所を示す印13bが表示されている。
【0021】
基材12は、木を製材して得たものではないが、触感も重量感も既存の木材からなる木札と同様であり、この基材12の表面に、前述の表示13を形成する部位としての印刷層14が形成されている。印刷層14は、木札の外観を呈するように木の色彩と木目模様14aを有している。前述の表示13、つまり文字13aと印13bも、木の色彩や木目模様14aと共に印刷層14に存在する。
【0022】
図2は、製品としての木札11の正面図である。つまり、図1に示した木札11に対して、一例として紅白の包み紙15を部分的に被せるとともに、包み紙15の上から紅白の水引16を取り付けた状態である。
【0023】
このような木札11の基材12は、図3に示したように木材パルプからなる芯材21と、芯材21の少なくとも表面、図示例では表裏両面に形成された塗工層22で構成されている。図3は、図1のA-A断面の一部拡大図であり、正目の外観を有する木目模様14aの木目方向に沿って切断した状態を示している。基材12の厚さは、例えば8mmなど、所望の木札11に合わせて適宜設定される。
【0024】
芯材21は、機械パルプ層21aと、機械パルプ層21aの表裏両面の化学パルプ層21bで構成されている。機械パルプ層21aも化学パルプ層21bも、木材から直接つくられたバージンパルプを100%使用して形成される。機械パルプ層21aには明るい色の木質バルプが使用され、化学パルプ層21bには、漂白済みの又は無漂白の化学パルプが使用される。
【0025】
芯材21は、木材パルプと水を合わせた原料を脱水しながら圧縮して板状に形成される。このとき、絡み合う木材パルプの方向性は揃えられており、木材パルプの流れ方向、換言すれば、芯材21の目、あるいは木材パルプの延びる方向は一定になる。図3の断面図において、実線の波線は、木材パルプを模式的に表したものである。
【0026】
塗工層22は、芯材21の面の性状を改質し、所望の外観や触感、機械的特性、印刷性などを得るためものものであって、例えば砥の粉などのような適宜の塗工材が選択されて塗布される。
【0027】
この例において塗工層22は、顔料塗工で構成される。具体的には塗工層22は、2層からなり、いずれの塗工材も顔料と結合剤で構成されている。芯材21に接する下層22aには、クリーム色を呈する塗工材が、表面に露出する表面層22bには白色を呈する塗工材が使用される。下層22aは、芯材21の凹凸を吸収して芯材21と一体となるとともに、芯材21の色を隠ぺいするか、目立たなくする。表面層22bは、下層22aと一体となって、面の平滑化と、印刷層14を形成したときに印刷に与える影響の排除を行う。
【0028】
印刷層14は、前述のように木の色彩と木目模様14a、それに文字13aと印13bを有しており、これらは基材12の表面の塗工層22に対する印刷で同時に、又は複数回に分けて重ねて形成される。印刷には、例えばUVインクジェットプリンタなど、塗工層22の性状に合わせて適宜の印刷機が用いられる。
【0029】
この印刷層14における木目模様14aの木目方向(図1参照)は、基材12の木材パルプの流れ方向(図3参照)と同じ方向に設定されている。
【0030】
印刷層14は基材12の表面の塗工層22のほかに、裏面の塗工層22にも形成してもよく、その印刷内容は木目模様14aの有無を含めて適宜決定され得る。
【0031】
以上のような構成の木札11は、前述の基材12を用意して、塗工層22の上に木目模様14aの印刷層14を形成する印刷工程と、印刷層14を有する部分を木札11の形に切り取る切断工程を順に行って製造される。
【0032】
すなわち、木札製造方法は、図4に示したように、所望する木札11の大きさよりも大きく表裏両面が白い基材12を用意したのち(図4の(a))、その基材12の表面に適宜の印刷機を用いて印刷層14を形成する(図4の(b))。
【0033】
印刷層14は、前述した木の色彩、木目模様14a、文字13a及び印13bからなる1枚の木札11の表面像を表すものであって、複数配設される。つまり印刷工程で複数枚の木札11の印刷が行われる。木の色彩と木目模様14aは、木札11の表面像の全体にわたって表現されている。複数の表面像の内容や外形は同一のものであっても異種のものであってもよい。また、表面像の大きさも同一のものであっても異なるものであってもよい。いずれも、歩留まり良く印刷層14を配置するとよい。基材12の裏面にも印刷層が必要な場合には、裏面に対しても印刷を行う。このとき、裏面に形成する印刷層が表面の印刷層14と対応するように留意する。
【0034】
印刷層14の形成に際して、木目模様14aの印刷の向きは図5に示したように設定される。すなわち、印刷工程で形成される印刷層14の木目模様14aの木目方向を、基材12の木材パルプの流れ方向と同じにするとよい。
【0035】
図5中、実線で表した破線状の線は、木材パルプを示しており、破線状の線が延びる方向が木材パルプの流れ方向である。図5の(a)は、所定の大きさの基材12を得るときに短辺に平行してパルプ目が流れている横目の流れ目であって、図5の(b)は、基材12の長辺に平行してパルプ目が流れている縦目の流れ目である。
【0036】
つまり、木札11の形状が図1に示したように縦長形状の場合には、印刷層14の木目模様14aにおける木目方向と基材12の木材パルプの流れ方向とが同じになるように、横目の場合には、基材12の短辺と平行に木札11の縦方向を並べて複数の印刷層14が形成される(図5の(a))。一方、縦目の場合には、基材12の長辺と平行に木札11の縦方向を並べて複数の印刷層14が形成される(図5の(b))。
【0037】
木札11が一般的な絵馬のように横長形状の場合には逆に、横目のときは、基材12の短辺と平行に木札11の横方向を並べて複数の印刷層14が形成され、縦目のときには、基材12の長辺と平行に木札11の横方向を並べて複数の印刷層14が形成される。
【0038】
印刷工程のあとは、図4の(c)に示したように、印刷層14を有する部分を厚さ方向全体にわたって木札11の形に、つまり前述の表面像の外形に沿って切り取る。この切り取りには、適宜のカッティングマシンが用いられる。基材12は木材パルプからなり、しかもバージンパルプからなるので、切断工程で形成されたカット面は製材した木製の板のように美麗であり、カット面に対する加工は不要である。
【0039】
切断工程を経た木札11に対しては、必要に応じて、得られた木札11に必要な包み紙15や水引16を取り付ける(図2参照)。木札11は、所定の形状に切断され、木目模様14a等も印刷で一様に形成されるので、サイズや外観などのばらつきや不良の発生を防止できる。そのうえ、木材パルプからなり木製の板と同様に強度を有するので、角が潰れたり折れたりすることも抑制できる。このため、包み紙15で包んだり水引16を取り付けたりする作業が一律に行え、加工は容易であり、精度も高く、不良の発生を抑えられる。
【0040】
以上のようにして製造された木札11では、基材12を芯材21と塗工層22で構成し、芯材21が方向性を揃えた木材パルプで構成されているので、質感や重量感や強度を木製の木札に酷似された模造の木札11を得られる。そのうえ、木目模様14aの印刷層14は、芯材21に一体で表面の平滑性も得られる塗工層22の上に形成されるので、触感も外観上も木製の木札に酷似した木札11となる。
【0041】
印刷層14は木札に必要な表示13も木目模様14aと共に有するので、製造工程を省くことができる。
【0042】
芯材21は、機械パルプ層21aと化学パルプ層21bを組み合わせて構成されているので、強度を更に向上でき、例えば撓らせても折れない強度を有するものとすることができる。この点でも木製の木札と酷似したものとなる。
【0043】
塗工層22は、顔料塗工からなり、2層で構成されて、表面を白色としているので、芯材21の色が透けて見えたりすることもなく、印刷データを忠実に反映した美麗な印刷層14を得られる。この点からも木製の木札に酷似した外観を得られる。
【0044】
印刷層14の木目模様14aの木目方向と芯材21の木材パルプの流れ方向が同じであるので、外観の方向性を構造上の方向に合わせることができる。このため、木札11を例えば塔婆のような長尺状のものとした場合でも、必然的に強度を発揮させることができる。
【0045】
また、製造においては、所定厚の基材12に印刷層14を形成したあとで切離すので、精度の高い木札11を得られる。しかも、木製の木札のように経時変化して変形などを起こすこともない。そして前述のように木札11に接した際の感覚が木製の木札を思わせるものである上に、芯材21と一体の塗工層22を有しており、端部や角も木製の木札のような強度を有するので、端部や角が不測につぶれたり欠けたりすることも抑制できる。このため、包み紙15をかけたり水引16を取り付けたりする加工が、どの木札11に対しても同じように一律の作業で行える。つまり、加工は簡易迅速に行え、不良の発生を抑えられる。
この結果、特に御神札や御祈祷札、絵馬など、日本の伝統的な宗教文化の維持に大いに貢献することができる。
【0046】
さらに、基材12に印刷して切離して製造するので、必要に応じてさまざまな種類の木札11を即座に得られ、在庫管理の必要性をなくすことができ、管理や製造の負担を大幅に軽減できる。製造時間の短縮や、大量生産、注文に応じた柔軟な生産もできる。
【0047】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成に限定されるものではなく、その他の構成を採用することかできる。
【0048】
例えば、木札11の表面になされる表示13は、後から書いたり印刷したりしてもよい。つまり、印刷層14には木の色彩と木目模様14aのみを表して木札11を構成してもよい。
【0049】
また、塗工層22の表面の色が木肌の色を有するものであれば、木目模様14aのみの印刷層14としてもよい。
芯材21の木材パルプは、木材パルプの流れ方向が一定のものではなくてもよい。
【0050】
木札11には、前述した御神札、御祈祷札、塔婆、絵馬のほかに、たとえば祝いの花などに添える木札、置物や展示品などの表示のための木札、飲食店などで壁面に並べるメニューのための木札、道場などで壁面に掲示する名札としての木札など、様々な用途がある。
【符号の説明】
【0051】
11…木札
12…基材
13…表示
14…印刷層
14a…木目模様
21…芯材
22…塗工層
図1
図2
図3
図4
図5