(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】農業用ネット及び農業用ハウスの内張りカーテン
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20221111BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20221111BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A01G9/14 S
A01G9/24 H
A01G13/02 B
(21)【出願番号】P 2018214780
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】392002918
【氏名又は名称】日本ワイドクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】廣橋 寿祥
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-014947(JP,U)
【文献】特開2001-009996(JP,A)
【文献】実開昭56-146539(JP,U)
【文献】特開2001-136843(JP,A)
【文献】実開昭59-090355(JP,U)
【文献】登録実用新案第3186590(JP,U)
【文献】実開平04-024436(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 - 9/26
A01G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状体で構成された網状の農業用ネットであって、
所望の幅に形成された遮光性を有する遮光テープが、複数本並列に配置されるとともに、
前記遮光テープの少なくとも片面側に、前記遮光テープよりも熱反射率の高い熱反射部が備えられ
、
透光性を有するナイロン製のフィルムが、前記遮光テープ同士の間のうち少なくとも一部に配置された
農業用ネット。
【請求項2】
前記糸状体のうち少なくとも一部が透光性を備えた透光性糸状体で構成された
請求項1に記載の農業用ネット。
【請求項3】
前記糸状体のうち少なくとも一部が紡績糸で構成され、
前記紡績糸のうち少なくとも一部が栽培作物側に配置された
請求項1または請求項2に記載の農業用ネット。
【請求項4】
前記熱反射部が、前記遮光テープの少なくとも片面に成膜された金属皮膜によって構成された
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の農業用ネット。
【請求項5】
前記糸状体を編むまたは織ることで網状に形成され、
前記遮光テープと前記フィルムのうち少なくとも一方が、網目によって保持された
請求項
1乃至請求項4のうちいずれかに記載の農業用ネット。
【請求項6】
被覆材で被覆された栽培施設の内部において、前記被覆材に沿って配置された農業用ハウスの内張りカーテンであって、
請求項1乃至請求項
5のうちのいずれかに記載の農業用ネットで構成され、
前記熱反射部が栽培作物側となる向きで配置された
農業用ハウスの内張りカーテン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮熱性を有する農業用ネット及び当該農業用ネットにより構成された農業用ハウスの内張りカーテンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、栽培作物の収穫の安定化や周年栽培のために、被覆材を栽培作物に被覆するハウス栽培やトンネル栽培等の施設栽培が盛んに行われている。このような施設栽培では、施設内部の栽培作物に適した明るさを確保するとともに、生育適温を維持する必要がある。
【0003】
しかし、施設栽培では、日中には、太陽や気温等の影響で施設内部が栽培作物の生育適温を超える場合があり、特に高温期においては、太陽光や高温を原因とする焼けや病害等が栽培作物に発生するおそれが高まる。
逆に夜間には、施設内部が栽培作物の生育適温を下回る場合があり、特に低温期においては、凍害、霜害、または病害等が栽培作物に発生するおそれが高まるといった問題があった。
【0004】
そこで、栽培作物に被覆することで施設内部の栽培作物に適した明るさを確保するとともに、生育適温を維持することができる様々な農業用ネットが提案されている。
例えば、特許文献1には、帯状の遮光性テープと帯状の吸湿性テープとを並列に配置して経糸とするとともに、合成繊維を緯糸として織った織物である農業用ネットを農業用ハウスの内側に展張することで、栽培作物の生育適温を維持することができる農業用ハウスの内張りカーテン(以下において単に「内張りカーテン」という。)が開示されている。
【0005】
この特許文献1に記載の農業用ネットは、長繊維フィラメントを蓄積接合した不織布を帯状に形成した遮光性テープと、ポリビニルアルコール等の親水性素材を帯状に形成した吸湿性テープとを栽培作物に適した配列で並列配置して経糸とするとともに、モノフィラメント等の合成繊維を緯糸として所望の織密度で織ることによって構成されている。
【0006】
このような農業用ネットを農業用ハウス内に展張した内張りカーテンは、農業用ネットの遮光性、遮熱性及び気密性によって、内張りカーテンの内側で栽培される栽培作物に適した明るさ、生育適温を維持することができるとされている。
【0007】
詳述すると、特許文献1に記載の内張りカーテンは、日中においては、遮光性と遮熱性を有する遮光性テープを適宜の間隔で配置しているため、農業用ハウス内の栽培作物に適した明るさを確保できるとともに、日光を取り入れることで生じる過度な昇温を抑制することができ、内張りカーテンの内側を栽培作物の生育適温に維持することができるとされている。
【0008】
しかしながら、夜間においては、特許文献1に記載の内張りカーテンを構成する農業用ネットは、所望の織密度で織られ、通気が抑制されることで農業用ハウス内から熱が拡散することを防止しているものの、農業用ハウス内の降温を防止することはできない。
【0009】
つまり、特許文献1に記載の内張りカーテンでは、日中においては、農業用ハウス内の過度な昇温を防止し、生育適温を維持することができても、夜間においては、農業用ハウス内が過度に降温し生育適温を下回ってしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上述した問題を鑑み、栽培作物に被覆することで生育適温を維持することができる農業用ネット及び農業用ハウスの内張りカーテンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、糸状体で構成された網状の農業用ネットであって、所望の幅に形成された遮光性を有する遮光テープが、複数本並列に配置されるとともに、前記遮光テープの少なくとも片面側に、前記遮光テープよりも熱反射率の高い熱反射部が備えられ、透光性を有するナイロン製のフィルムが、前記遮光テープ同士の間のうち少なくとも一部に配置されたことを特徴とする。
【0013】
前記糸状体は、モノフィラメントや紡績糸などで構成されていてもよく、フィラメント糸や複合糸などでもよい。
前記農業用ネットは、前記糸状体を網状に編んだ編物や織った織物で構成してもよいし、前記糸状体を溶着することで網状に構成してもよい。また、前記糸状体によって構成された糸や紐等と前記糸状体とのうち少なくとも一方で編んだ編物、または織った織物であってもよい。
【0014】
前記遮光テープは、不織布、編物、または織物等で形成されていてもよいし、例えば、繊維を熱と圧力によって結合した不織布や、エアジェット法やローラー法により形成された不織布等でもよい。また、前記遮光テープが遮熱性を有していてもよい。
【0015】
また、前記遮光テープは、編み込まれる、織り込まれる、または挟まれることで前記農業用ネットに直接保持されてもよいし、前記農業用ネットに前記遮光テープが貼り付けられてもよく、前記農業用ネットとは別の部材で構成されたテープ保持部によって前記遮光テープが保持されるように構成してもよい。
【0016】
また、前記フィルムは、編み込まれる、織り込まれるまたは挟まれることで前記農業用ネットに直接保持されてもよいし、前記農業用ネットに前記フィルムが張り付けられてもよく、前記農業用ネットとは別の部材で構成されたフィルム保持部によって前記フィルムが保持されるように構成してもよい。
【0017】
前述の複数本並列に配置されとは、所定の間隔を隔てて配置してもよいし、密着させて配置してもよい。また、所定の間隔を隔てて前記遮光テープを配置している領域、密着させて配置している領域、及び前記遮光テープを配置しない領域のうち少なくとも一つの領域があってもよい。
さらに、前記遮光テープの配列に規則性があってもよいし、ランダムであってもよい。
【0018】
前記熱反射部は、前記遮光テープより熱反射率が高ければよく、金属皮膜や金属テープ等で構成されてもよい。また、前記遮光テープの全部または一部に対して一体に設けられてもよく、前記遮光テープに対して別部材で備えられてもよい。
前述の少なくとも片面側にとは、前記遮光テープの片面側、もしくは両面の少なくとも一部に前記熱反射部が備えられる場合をいう。
【0019】
この発明により、前記農業用ネットを、栽培作物に被覆することで生育適温を維持することができる。
詳述すると、日中には、前記農業用ネットで栽培作物を被覆することで、前記農業用ネットの遮光性及び遮熱性によって、栽培作物に適した明るさを確保するとともに生育適温を維持し、栽培作物の焼けや病害等を防止することができる。
【0020】
しかし、外気温が低下する夜間には、日中に暖められた栽培作物や土壌の表面等が外気温より高温となり放射冷却を起こすため、生育適温を下回るおそれがある。
この放射冷却とは、相対的に高温の物体が、周囲に電磁波、特に赤外線として熱エネルギーを放射し冷却される現象のことである。熱エネルギーは熱反射を起こす部材によって反射することができるため、放射冷却により放射される熱エネルギーも反射することができる。
【0021】
そこで、栽培作物を被覆する前記農業用ネットに、前記遮光テープよりも熱反射率の高い前記熱反射部を備えることで、夜間において、外気温より高温となる栽培作物や土壌の表面等が放射冷却により放射する熱エネルギーを、前記農業用ネットが効率よく栽培作物側に向かって反射することができ、前記農業用ネット外部への熱の拡散を抑制し、生育適温を下回ることを防止することができる。
このため、前記農業用ネットは、外気温の高い日中のみならず外気温が低下する夜間においても栽培作物に被覆することで生育適温を維持することができる。
【0022】
また、栽培作物を被覆する前記農業用ネットの網目のうち少なくとも一部が前記フィルムによって覆われることで通気が抑制され、栽培作物に適した通気性を有するとともに、生育適温に維持された空気が網目を通じて、前記農業用ネットの栽培作物側から外側に向かって移動することによる降温を防止することができ、より高い保温効果を有することができる。
【0023】
詳述すると、前記農業用ネットの網目のうち少なくとも一部を前記フィルムによって覆うことで、前記農業用ネットが栽培作物に適した通気性を有することができる。しかし、前記農業用ネットの前記遮光テープ同士の間を全て前記フィルムで覆う場合における前記農業用ネットの通気性は、例えば、一枚の面状の前記フィルムに、前記遮光テープを張り付ける場合と同等となる。
【0024】
もっとも、一枚の面状の前記フィルムに、前記遮光テープを張り付けた場合には、前記遮光テープ同士の間を全て前記フィルムで覆う場合と同等の通気性を有するように構成できたとしても、栽培作物に適した通気性に設定することはできず、また前記糸状体を網状に形成することで有する柔軟性、及び耐久性が無い。
【0025】
そのため、前記農業用ネットに配置された前記遮光テープ同士の間のうち少なくとも一部を前記フィルムで覆うことによって、前記農業用ネットが栽培作物に適した通気性を有するとともに、より高い保温効果を有するのみならず、高い柔軟性、及び耐久性をも有することができる。
【0026】
また、前記フィルムを形成するナイロンは吸湿性を有するので、前記農業用ネットを被覆する栽培作物に適した湿度を超えることをより確実に防止することができ、栽培作物の多湿による病害の発生や落滴をより確実に防止することができる。
【0027】
この発明の態様として、前記糸状体のうち少なくとも一部が透光性を備えた透光性糸状体で構成されてもよい。
この発明により、前記農業用ネットの有する遮光性を栽培作物に適したものにするために、前記農業用ネットにより多くの前記遮光テープを配置することで、前記農業用ネットがより多くの前記熱反射部を備えることができ、前記農業用ネットを栽培作物に被覆することでより確実に生育適温を下回ることを防止することができる。
【0028】
詳述すると、前記農業用ネットの遮光性は、前記農業用ネットを構成する前記糸状体と前記遮光テープとのそれぞれの遮光性によって決定される。
したがって、栽培作物に適した遮光性を有する前記農業用ネットを構成するためには、不透光性の糸状体で構成した前記農業用ネットよりも、前記透光性糸状体で構成した前記農業用ネットのほうが前記農業用ネット自体の遮光性が向上するため、より多くの前記遮光テープを配置することとなる。
【0029】
より多くの前記遮光テープが配置されたことにともなって、前記遮光テープに備えられた前記熱反射部の面積も増大することができ、夜間において低下する外気温よりも高温となる栽培作物や土壌の表面等が放射する熱エネルギーをより作物側に反射することができる。
【0030】
したがって、栽培作物に被覆する前記農業用ネットにおける前記熱反射部の面積が増加することで、栽培作物や土壌の表面等が放射する熱エネルギーを、より効率的に栽培作物側に反射することができ、前記農業用ネットを被覆することでより確実に育成適温を下回ることを防止することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記糸状体のうち少なくとも一部が紡績糸で構成され、前記紡績糸のうち少なくとも一部が栽培作物側に配置されてもよい。
前記紡績糸は、一種類の短繊維を紡いで構成してもよいし、複数の種類の短繊維を紡いで構成してもよい。また、前記紡績糸を構成する短繊維は、合成繊維であってもよいが、動物性繊維や植物性繊維等の吸湿性のよい繊維であるとより望ましい。
【0032】
この発明により、前記農業用ネットを被覆することで、前記紡績糸の吸湿性によって栽培作物の多湿による病害や落滴を防止することができる。
詳述すると、短繊維を紡いで糸状となるように構成した前記紡績糸は、糸状の内部に空間を有するともに、外表面が凹凸状に形成されているため、大気中の水分を吸収し保持することができる。つまり、前記紡績糸は吸湿性を有する。
【0033】
このため、前記紡績糸が配置された栽培作物側の湿度が高くなると、前記紡績糸が吸湿し、栽培作物に適した湿度を超えないようにすることができる、また、多湿による病害や前記農業用ネットに付着した水滴が栽培作物に落下する落滴によって、栽培作物が損傷等することを防止することができる。
また、例えば、吸湿性のよい繊維を紡いで前記紡績糸を形成する場合は吸湿性が向上するため、より確実に多湿による病害や落滴を防止することができる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記熱反射部が、前記遮光テープの少なくとも片面に成膜された金属皮膜によって構成されてもよい。
前記金属皮膜は、蒸着またはスパッタリング等によって形成されてもよく、金属または半金属の皮膜、金属または半金属の酸化物の皮膜、あるいは金属または半金属の窒化物の皮膜等で構成されてもよい。
【0035】
この発明により、前記遮光テープに対して熱反射率の高い金属皮膜を設けることで、別部材により熱反射部を設ける必要がなくなるとともに、前記遮光テープの耐久性を向上することができ、さらに金属皮膜により構成された高い熱反射率を有する前記熱反射部が、夜間において低下する外気温よりも高温となる栽培作物や地表などが放射する熱エネルギーを効率よく反射することで、前記農業用ネット外部への熱の拡散をさらに抑制することができる。
このため、前記熱反射部を備えた前記遮光テープの製作に必要なコストが低下するとともに、前記遮光テープの耐久性を向上し、より確実に生育適温を下回ることを防止することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記糸状体を編むまたは織ることで網状に形成され、前記遮光テープと前記フィルムのうち少なくとも一方が、網目によって保持されてもよい。
前述の前記糸状体を編むまたは織ることで網状に形成されとは、前記農業用ネットが前記糸状体によって網状に形成されていればよく、前記糸状体によって構成された糸や紐等と前記糸状体とのうち少なくとも一方で編んだ編物、または織った織物が網状に構成されていてもよい。
【0037】
なお、前記遮光テープまたは前記フィルムのうち少なくとも一方と前記糸状体とで編物または織物を形成してもよい。
【0038】
前記編むとは、例えば経編や緯編、詳しくは鎖編、ラッセル、またはトリコット等でもよく、前記織るとは、例えば平織、綾織、繻子織、絡み織等であってもよい。
【0039】
また、織ることで網状に形成される場合には、前記遮光テープと前記フィルムのうち少なくとも一方を経糸のうち少なくとも一本として織る場合も含み、前記遮光テープまたは前記フィルムのうち少なくとも一方を、経糸のうち少なくとも一本として織ることによって緯糸で保持する場合も含む。
【0040】
この発明により、前記農業用ネットを、前記糸状体を編んだ編物または織った織物によって網状に構成することで、前記糸状体同士が固着することなく網状を構成できるため、柔軟性及び耐久性に優れた前記農業用ネットを構成できる。
【0041】
また、前記遮光テープと前記フィルムのうち少なくとも一方を編物または織物で構成された前記農業用ネットの網目によって保持することができるため、前記遮光テープと前記フィルムのうち少なくとも一方を保持するための他の構成を必要とせず、前記農業用ネットの製作に必要なコストを低下することができる。
【0042】
またこの発明は、栽培作物を被覆材で被覆する栽培施設の内部に配置された内張りカーテンであって、上述の農業用ネットで構成されるとともに、前記熱反射部が栽培作物側となる向きで配置されたことを特徴とする。
前述の栽培施設の内部に配置されたとは、栽培作物を覆うように上述の農業用ネットが配置されていることをいう。
【0043】
この発明によって、前記内張りカーテンは栽培作物の生育適温を維持することができる。
詳述すると、日中には、前記栽培施設の内部において、前記農業用ネットで構成された前記内張りカーテンが前記被覆材に沿って配置されることで、前記遮光テープの遮光性及び遮熱性によって、前記栽培施設内部の栽培作物に適した明るさを確保するとともに生育適温を維持し、栽培作物の焼けや病害を防止することができる。
【0044】
逆に夜間には、前記栽培施設の内部に配置されるとともに、栽培作物を覆うように配置される前記内張りカーテンに備えられた前記熱反射部が、外気温より高温となる栽培作物や土壌の表面等が放射する熱エネルギーを、効率よく栽培作物側に向かって反射することで、前記内張りカーテン外部への熱の拡散を抑制することができ、生育適温を下回ることを防止することができる。
このように、前記内張りカーテンは、栽培作物の生育適温を維持することができる。
【発明の効果】
【0045】
栽培作物に被覆することで生育適温を維持することができる農業用ネット及び農業用ハウスの内張りカーテンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図4】内張りカーテンを展張した農業用ハウスの概略斜視図。
【
図6】他の実施形態における農業用ネットの説明図。
【
図7】他の実施形態の遮熱テープ近傍における組織の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
図1は、農業用ネット1の一部の概略平面図を示し、
図2は、農業用ネットの構成について説明する説明図を示し、
図3は、農業用ネット1における遮光テープ11近傍の組織について説明する説明図を示し、
図4は、内張りカーテン2を展張した農業用ハウス3の概略斜視図を示し、
図5は、内張りカーテン2として展張した農業用ネット1の説明図を示す。
【0048】
詳述すると、
図2(a)は、農業用ネット1の編地6の概略拡大平面図を示し、
図2(b)は、遮光テープ11の概略構造の斜視図を示している。
また、
図3(a)は、農業用ネット1における遮光テープ11及びフィルム12が編み込まれている部分の拡大平面図を示し、
図3(b)は、農業用ネット1の網目20に保持される遮光テープ11及びフィルム12について説明すべく、
図3(a)におけるA-A矢視断面図を示し、
図3(c)は、農業用ネット1の網目20に保持される遮光テープについて説明すべく、
図3(a)におけるB-B矢視断面図を示している。
【0049】
そしてまた、
図5(a)は、農業用ネット1を内張りカーテン2として展張した状態における農業用ハウス3の概略縦断面図を示し、
図5(b)は、栽培作物4に対して内張りカーテン2として展張した農業用ネット1の作用を説明する、農業用ハウス3の概略拡大縦断面図である。
【0050】
なお、
図1に示すように、農業用ネット1を広げた際の緯方向を緯方向xとし、経方向を経方向yとする。また、
図3に示すように、農業用ネット1の厚さ方向を厚さ方向zとする。また、
図4に示すように、農業用ハウス3における幅方向を幅方向Xとし、奥行方向を奥行方向Yとし、高さ方向を高さ方向Zとする。
【0051】
図1に示すように、農業用ネット1は、略菱形形状の網目20を有する網状に形成した編物である編地6に、遮光テープ11とフィルム12とを配置することで構成している。
【0052】
なお、
図1、
図2、及び
図3におい、網目20の構成を理解しやすくするために、破線で囲って示している。また、本実施形態では、網目20の目合は4mm程度に形成しているが、これに限定されない。
【0053】
図2(a)に示すように、網状の編地6は、糸状体5を編込んで網目20を有する網状に形成した編物であり、糸状体5を鎖編することで形成した鎖編糸50の編目10に、糸状体5である挿入糸51を挿入することで網状の編地6を構成している。
この鎖編糸50は、糸状体5を巻回して、編目10を形成しながら経方向yに伸び、経方向yに所定の間隔を隔てて複数の編目10を形成している。
【0054】
そして、所定の間隔を隔て緯方向xに向かって等間隔かつ並列に配置する鎖編糸50を、複数本の挿入糸51によって掛止することで略菱形形状の網目20を形成するとともに、編地6を編成している。
【0055】
具体的には、並列に配置された鎖編糸50を掛止する複数本の挿入糸51は、隣に配置される鎖編糸50における経方向yに5mm程度の間隔を隔てた編目10に、交互に挿入して折り返すことで各々が波状に屈曲している。
【0056】
挿入するとともに波状に屈曲する挿入糸51は、網状の編地6の表側に配置される表側挿入糸510と裏側に配置される裏側挿入糸511とがあり、表側挿入糸510と裏側挿入糸511とが、平面視において、経方向yに連なる略菱形形状の網目20を形成するように、各々の波形を互い違いに配置している。なお、本実施形態では、農業用ネット1の裏側を、農業用ネット1で被覆する栽培作物4の側としている。(
図5(b)参照)
なお、本実施形態において、鎖編糸50の編目10を隔てる間隔は5mm程度に設定し、鎖編糸50を並列に配置する間隔は5mm程度に設定しているが、これに限定されない。
【0057】
糸状体5のうち、鎖編糸50と表側挿入糸510とは耐久性に優れたモノフィラメント500によって形成され、裏側挿入糸511は吸湿性のある紡績糸501によって形成されている。
鎖編糸50と表側挿入糸510を形成するモノフィラメント500は、透光性を有するポリエチレン繊維によって直径0.1mm程度に形成され、裏側挿入糸511を形成する紡績糸501は、吸湿性の有る繊維を紡いで直径0.1mm程度に形成されている。なお、本実施形態では、モノフィラメント500、及び紡績糸501は直径0.1mm程度に形成されているが、これに限定されない。
【0058】
編地6と後述するフィルム12とともに農業用ネット1を構成する遮光テープ11は、
図2(b)に示すように白色の不織布110と熱反射部111とを積層して構成している。
遮光テープ11を構成する不織布110は、0.5μm~10μm程度のポリエチレンの極細長繊維に対して熱と圧力を加えて結合された厚さ0.2mm程度の白色の不織布で構成されている。このような不織布には、デュポン社の「タイベック(登録商標)」を用いてもよい。
【0059】
また、熱反射部111は、不織布110の片面に蒸着したアルミニウムの金属皮膜によって、不織布110よりも薄く形成している。
編地6と遮光テープ11とともに農業用ネット1を構成するフィルム12は、吸湿性と保温性と透光性とを有するナイロンフィルムによって構成されており、フィルム12は遮光テープ11と略同程度の厚さで形成している。なお、遮光テープ11を構成する不織布110、及び熱反射部111、並びにフィルム12の厚さは、これに限定されない。
【0060】
このように構成された農業用ネット1は、
図3に示すように、緯方向xに所定の間隔を隔てて並列に配置した鎖編糸50同士の間に遮光テープ11、及びフィルム12を交互に配置するとともに、鎖編糸50と挿入糸51とで形成される略菱形形状の網目20によって遮光テープ11、及びフィルム12を保持している。
【0061】
詳述すると、
図3(a)、及び
図3(b)に示すように、遮光テープ11とフィルム12とを、鎖編糸50を並列に配置する間隔と略同程度である5mm程度の幅で帯状に形成するとともに、鎖編糸50同士の間に配置している。
【0062】
また、
図3(b)、及び
図3(c)に示すように、鎖編糸50同士の間に配置される遮光テープ11とフィルム12とを厚さ方向zから挟むように、表側挿入糸510と裏側挿入糸511とを農業用ネット1の表側と裏側にそれぞれ配置している。
【0063】
上述のように、農業用ネット1は、遮光テープ11とフィルム12とが、緯方向xに並列に配置された鎖編糸50同士の間に交互に配置されるとともに、表側挿入糸510と裏側挿入糸511とによって挟まれるように配置されている。
【0064】
このように遮光テープ11とフィルム12とを配置することで、鎖編糸50と挿入糸51とによって形成される網目20によって、遮光テープ11とフィルム12とが挟み込まれて動きを規制され、農業用ネット1から外れたり、捻じれたりするなどによって破損等することを防止することができる。
【0065】
また、農業用ネット1を編成する表側挿入糸510を耐久性に優れたモノフィラメント500で構成し、裏側挿入糸511を吸湿性のある紡績糸501で構成することで、優れた耐久性を有するとともに吸湿性を有する農業用ネット1を構成することができる。
【0066】
詳述すると、農業用ネット1の裏側に配置される裏側挿入糸511を吸湿性のある紡績糸501で構成することで、湿度が高くなった場合に、吸湿性を有する裏側挿入糸511によって吸湿され、多湿による病害や落適を抑制することができる。
【0067】
また、農業用ネット1を構成する編地6の挿入糸51を全て紡績糸501で構成すると、紡いで形成した紡績糸501が解れて千切れる等のおそれがあり、耐久性が低下するおそれがある。
そのため、農業用ネット1の表側に配置される表側挿入糸510を耐久性の優れたモノフィラメント500で構成することで、例えば、紡績糸501が解れたとしても農業用ネット1がばらけることのない優れた耐久性を有することができ、
優れた耐久性を有するとともに、吸湿性を有する農業用ネット1を構成することができる。
【0068】
図4に示すように、上述の農業用ネット1は、農業用ハウス3内の上部にカーテンのように展張して使用する内張りカーテン2として利用することができる。
詳述すると、農業用ハウス3は、ハウス本体30と内張りカーテン2とで構成され、内張りカーテン2はハウス本体30の内側に沿って設けられている。
【0069】
ハウス本体30は、金属製のフレーム31と、複数配置されたフレーム31を連結する連結部材32と、透光性を有しフレーム31を被覆する外張りビニール(図示せず)とで構成される。
フレーム31は、ハウス本体30の上部に配置される湾曲した弓状の弓状部310と、弓状部310の両端から高さ方向Zに向かって接地面まで伸びる垂直部311とで略逆U字状に構成され、奥行方向Yに所定の間隔を隔て複数本並列に配置されている。
【0070】
弓状部310は、幅方向Xにおける中央近傍が高くなるように高さ方向Zの上方が凸となる半円形状に形成されており、これに伴って農業用ハウス3の屋根も半円状に形成されている。なお、農業用ハウス3の屋根を三角形状や平坦等に形成してもよい。
【0071】
連結部材32は、奥行方向Yに伸びるとともに、略逆U字状に形成され所定の間隔を隔て複数本並列に配置されたフレーム31における各弓状部310及び各垂直部311を連結する。そして、連結部材32がフレーム31を一体に連結することでハウス本体30が設けられている。なお、フレーム31及び連結部材32は樹脂や木材等で構成してもよい。また、連結部材32は一つの部材で構成されていても複数の部材から構成されていてもよい。
【0072】
連結部材32は、複数本並列に配置された垂直部311のうち、幅方向Xにおいて同じ側に配置されるもの同士の上端側を連結する二本の上端連結部320と、各弓状部310の頂部同士を連結する棟部321との合計三本が設けられている。なお、フレーム31を連結する連結部材32が三本設けられているが、一本または複数本でもよい。
【0073】
図示省略する外張りビニールは、透光性を備えるとともに雨風を防ぐ保温効果のあるビニールシートで形成されている。なお、外張りビニールは、樹脂やガラス等透光性があり保温効果のある素材で形成していればよく、通気性を確保するために一部を網状の別部材で形成してもよい。
【0074】
奥行方向Yに所定の間隔を隔て複数本並列に配置されるフレーム31のうち奥行方向Yの両端に配置されるフレーム31には、幅方向Xに伸びるとともに弓状部310を補強する梁312が、高さ方向Zに適宜の間隔を隔て二本設けられている。また、梁312と直交するとともに、一番下側に配置される梁312と弓状部310とを接続する補強部材313が幅方向Xに所定の間隔を隔て複数本配置されている。なお、梁312の本数は一本でも複数本でもよい。
【0075】
このように構成されたハウス本体30には、カーテンを支持する三本のカーテン支持部33が設けられ、カーテン支持部33によって農業用ネット1がハウス本体30に沿うように展張され、内張りカーテン2として機能することができる。
【0076】
カーテン支持部33は、棟部321の近傍と両方の上端連結部320の近傍とにそれぞれ一本ずつの合計三本が、幅方向Xにおいて略等間隔になるように配置されるとともに、棟部321近傍のものほど高さ方向Zにおける上方となるように配置することで、カーテン支持部33に支持される農業用ネット1が農業用ハウス3に沿うように配置している。
【0077】
棟部321の近傍に配置されるカーテン支持部33は、棟部321に設けられたカーテン支持部33を保持する保持部330と補強部材313とによって保持されている。
また、上端連結部320の近傍に配置されるカーテン支持部33は、補強部材313と梁312とによって保持されている。
【0078】
なお、本実施形態においてカーテン支持部33は三本設けているが、一本または複数本を設けてもよい。
また、カーテン支持部33を配置する幅方向Xにおける間隔は等間隔でなくともよく、カーテン支持部33を梁312と補強部材313と棟部321とのうち少なくともひとつで保持するように構成してもよい。そして、上端連結部320の近傍に配置されるカーテン支持部33を保持する保持部330を、上端連結部320に設けてもよい。
【0079】
さらにまた、カーテン支持部33は複数の別部材により構成しているが、連結部材32によって内張りカーテン2を保持できるように構成してもよいし、カーテン支持部33及び連結部材32のうち少なくとも一方で内張りカーテン2を保持できるように構成してもよい。
【0080】
各カーテン支持部33には、農業用ネット1を保持するネット保持部331が、奥行方向Yに所定の間隔を隔てるとともに複数個備えられており、備えられたネット保持部331によって農業用ネット1を保持している。
【0081】
このように構成された農業用ハウス3は、
図5(a)に示すように、農業用ハウス3の内側に沿って、農業用ネット1を内張りカーテン2として展張することで、農業用ネット1によって栽培作物4を被覆することができる。
【0082】
詳述すると、
図5(b)に示すように、農業用ネット1に設けられた熱反射部111を栽培作物4の側に向けて配置し展張しているため、栽培作物4や土壌の表面等から農業用ハウス外に向けて放たれる熱エネルギーHEを農業用ハウス内に向かって反射することができる。
【0083】
このように構成された農業用ネット1は、糸状体5を網状に編成することで構成され、所望の幅に形成された遮光テープ11が、複数本並列に配置されるとともに、遮光テープ11の少なくとも片面側に、遮光テープ11よりも熱反射率の高い熱反射部111が備えられているため、農業用ネット1を、栽培作物4に被覆することで生育適温を維持することができる。
【0084】
詳述すると、日中には、農業用ネット1で栽培作物4を被覆することで、農業用ネット1の遮光性及び遮熱性によって、栽培作物4に適した明るさを確保するとともに生育適温を維持し、栽培作物4の焼けや病害を防止することができる。
【0085】
しかし夜間には、栽培作物4を被覆する農業用ネット1に、遮光テープ11よりも熱反射率の高い熱反射部111を備えることで、外気温より高温となる栽培作物4や土壌の表面等が放射する熱エネルギーHEを、農業用ネット1が効率よく栽培作物4の側に向かって反射することができ、農業用ネット1の外部への熱の拡散を抑制し、生育適温を下回ることを防止することができる。
このため、農業用ネット1を、栽培作物4に被覆することで生育適温を維持することができる。
【0086】
また、糸状体5である鎖編糸50、及び表側挿入糸510が透光性を備えることで、農業用ネット1がより多くの熱反射部111を備えることができ、農業用ネット1を栽培作物4に被覆することでより確実に生育適温を下回ることを防止することができる。
【0087】
詳述すると、農業用ネット1の遮光性は、農業用ネット1を構成する糸状体5と遮光テープ11とのそれぞれの遮光性によって決定される。
したがって、栽培作物4に適した遮光性を有する農業用ネット1を構成するためには、不透光性の糸状体で構成した農業用ネットより1も、透光性糸状体で構成した農業用ネット1のほうが、農業用ネット1自体の透光性は向上するため、より多くの遮光テープ11を配置することとなる。
【0088】
より多くの遮光テープ11が配置されたことにともなって、遮光テープ11に備えられた熱反射部111の面積も増大することができ、夜間において低下する外気温よりも高温となる栽培作物4や土壌の表面等が放射する熱エネルギーHEをより作物側に反射することができる。
【0089】
したがって、栽培作物4に被覆する農業用ネット1における熱反射部111の面積が増加することで、栽培作物4や土壌の表面等が放射する熱エネルギーHEを、より効率的に栽培作物4の側に反射することができ、農業用ネット1を被覆することでより確実に育成適温を下回ることを防止することができる。
【0090】
また、糸状体5である裏側挿入糸511が紡績糸501で構成され、紡績糸501のうち少なくとも一部が栽培作物4の側に配置されているため、紡績糸501の吸湿性によって栽培作物の多湿による病害や落滴を防止することができる。
【0091】
詳述すると、短繊維を紡いで糸状となるように構成した紡績糸501は、糸状の内部に空間を有するともに、外表面が凹凸状に形成されているため、大気中の水分を吸収し保持することができる。つまり、紡績糸501は吸湿性を有する。
【0092】
このため、紡績糸501が配置された栽培作物4の側の湿度が高くなると、紡績糸501が吸湿し、栽培作物に適した湿度を超えないようにすることができる。また、多湿による病害や農業用ネット1に付着した水滴が栽培作物に落下する落滴によって、栽培作物4が損傷等することを防止することができる。
【0093】
また、熱反射部111が、遮光テープ11の片面にアルミ蒸着によるアルミ皮膜によって設けられているため、別部材により熱反射部111を設ける必要がなくなるとともに、遮光テープ11の耐久性を向上することができ、さらにアルミ皮膜により構成された高い熱反射率を有する熱反射部111が、夜間において外気温より高温となる栽培作物や土壌の表面等が放射する熱エネルギーHEを効率よく反射することで、農業用ネット1の外部への熱の拡散をさらに抑制することができる。
このため、熱反射部111を備えた遮光テープ11の製作に必要なコストを低下するとともに、遮光テープ11の耐久性を向上し、さらに確実に生育適温を下回ることを防止することができる。
【0094】
また、透光性を有するナイロン製のフィルム12が、遮光テープ11同士の間に配置されているため、栽培作物4を被覆する農業用ネット1の網目20が、フィルム12によって覆われることで通気を抑制され、生育適温に維持された空気が網目20を通じて、農業用ネット1における栽培作物4の側から外側に向かって移動することによる降温を防止することができ、より高い保温効果を有することができる。
【0095】
詳述すると、農業用ネット1の網目20のうち少なくとも一部をフィルム12によって覆うことで、農業用ネット1が栽培作物4に適した通気性を有することができる。しかし、農業用ネット1の遮光テープ11同士の間を全てフィルム12で覆う場合における農業用ネット1の通気性は、例えば、一枚の面状のフィルム12に、遮光テープ11を張り付ける場合と同等となる。
【0096】
もっとも、一枚の面状のフィルム12に、遮光テープ11を張り付けた場合には、遮光テープ11同士の間を全てフィルム12で覆う場合と同等の通気性を有するように構成できたとしても、栽培作物4に適した通気性に設定することはできず、また糸状体5を網状に形成することで有する柔軟性、及び耐久性が無い。
【0097】
そのため、前記農業用ネットに配置された前記遮光テープ同士の間のうち少なくとも一部を前記フィルムで覆うことによって、前記農業用ネットが栽培作物4に適した通気性を有するとともに、より高い保温効果を有するのみならず、高い柔軟性、及び耐久性をも有することができる。
【0098】
また、フィルム12が吸湿性を有するナイロンによって形成されているため、フィルム12が吸湿し、農業用ネット1を被覆する栽培作物4に適した湿度を超えることをより確実に防止する。このため、栽培作物4の多湿による病害の発生や落滴をより確実に防止することができる。
【0099】
また、糸状体5を編むことで農業用ネット1が網状に形成され、遮光テープ11とフィルム12が、網目20によって保持されているため、農業用ネット1が柔軟性及び耐久性に優れるとともに、遮光テープ11とフィルム12とを保持するための他の構成を必要とせず、農業用ネット1の製作に必要なコストを低下することができる。
【0100】
詳述すると農業用ネット1を、糸状体5を編んだ編物によって網状に構成することで、糸状体5同士が固着することなく網状を構成できるため、柔軟性及び耐久性に優れた農業用ネット1を構成できる。
【0101】
また、遮光テープ11と前記フィルム12とを編物で構成された農業用ネット1の網目20によって保持することができるため、遮光テープ11と前記フィルム12を保持するための他の構成を必要とせず、農業用ネット1の製作に必要なコストを低下することができる。
【0102】
また、外張りビニールで被覆された農業用ハウス3の内部において、外張りビニールに沿って配置された内張りカーテン2として、上述の農業用ネット1を熱反射部111が栽培作物4の側となる向きで展張することで、内張りカーテン2は、栽培作物4の生育適温を維持することができる。
【0103】
詳述すると、日中には、農業用ハウス3の内部において、農業用ネット1で構成された内張りカーテン2が被覆材に沿って配置されることで、遮光テープ11の遮光性及び遮熱性によって、農業用ハウス3の内部の栽培作物4に適した明るさを確保するとともに生育適温を維持し、栽培作物の焼けや病害を防止することができる。
【0104】
逆に夜間には、農業用ハウス3の内部に配置されるとともに、栽培作物4を被覆する内張りカーテン2に備えられた熱反射部111が、外気温より高温となる栽培作物4や土壌の表面等が放射する熱エネルギーHEを、効率よく栽培作物4の側に向かって反射することで、内張りカーテン2外部への熱の拡散を抑制することができ、生育適温を下回ることを防止することができる。
このように、内張りカーテン2は、栽培作物4の生育適温を維持することができる。
【0105】
この発明の構成と上述の実施形態の対応において、
この発明の金属皮膜は、熱反射部に対応し、
栽培施設は、農業用ハウスに対応し、
被覆材は、外張りビニールに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0106】
また、上述の説明において、遮光テープ11は、ポリエチレンの極細長繊維に対して熱と圧力を加えて結合された白色の不織布110により構成されているが、遮光性を有していればよく、エアジェット法やローラー法等により形成された不織布でもよいし、編物や織物で形成されていてもよく、遮光性を有するビニルテープによって形成されていてもよい。
【0107】
そしてまた、遮光テープ11が遮熱性を有していてもよいし、何色に染色されていてもよい。なお、遮光テープ11が遮熱性を有する、または遮光テープ11を白色に近い色で構成する場合には、遮光テープ11の熱吸収率が低くなる。このため、遮光テープ11が蓄熱することで遮光テープ11の近傍が過度に昇温し生育適温を超えたり、遮光テープ11が損傷したりするというようなおそれが減少するため望ましい。
【0108】
また、上述の説明において、遮光テープ11が農業用ネット1の網目20によって直接保持されているが、農業用ネット1に遮光テープ11が貼り付けられてもよく、前記農業用ネットとは別の部材で構成されたテープ保持部によって前記遮光テープが保持されるように構成してもよい。
【0109】
また、上述の説明において、熱反射部111が遮光テープ11と一体に設けられているが、遮光テープ11に対して別部材によって熱反射部111が備えられてもよく、例えば、熱反射率の高い素材を遮光テープ11と同形状に形成した熱反射テープを遮光テープ11の裏表のうち少なくとも一方側に沿って配置し、遮光テープとともに農業用ネット1の網目20に保持されるように構成してもよい。
【0110】
また、上述の説明において、紡績糸501は、吸湿性のある一種類の短繊維を紡いで構成しているが、複数の種類の短繊維を紡いで構成してもよく、合成繊維を紡いで構成してもよいし、動物性繊維や植物性繊維等の繊維を紡いで構成してもよい。
【0111】
また、上述の説明において、熱反射部111が、遮光テープ11の片面に設けられているが、遮光テープ11の両面に設けられてもよい。これにより、遮光テープ11よりも熱反射率の高い熱反射部111によって、栽培作物4に被覆する農業用ネット1が、農業用ネット1の外側からの熱を反射することで、農業用ネット1の栽培作物4の側の昇温を防止することができる。
【0112】
そして、熱反射部111は、アルミニウムを蒸着することによって形成されているが、スパッタリング等によって形成されてもよく、その他の金属または半金属、金属または半金属の酸化物、あるいは金属または半金属の窒化物等で形成されてもよい。
【0113】
また、上述の説明において、遮光テープ11とフィルム12との幅を、鎖編糸50を配置する間隔である5mmに形成しているが、遮光テープ11とフィルム12との幅は鎖編糸50同士の間に配置可能であればよい。
【0114】
そして、鎖編糸50を配置する間隔とは同程度に設定することが望ましく、鎖編糸50を配置する間隔は2mm以上10mm以下に設定することが望ましい。さらに、遮光テープ11とフィルム12との幅を略同程度に形成するとなお望ましい。
【0115】
詳述すると、遮光テープ11とフィルム12との幅を、鎖編糸50を配置する間隔と同程度に設定することで、網状の編地6の鎖編糸50同士の間に遮光テープ11とフィルム12とを配置した場合に生じる、遮光テープ11、及びフィルム12と鎖編糸50との間に生じる隙間を減少させることができる。このため、農業用ネット1の通気がさらに抑制され、農業用ネット1がさらに高い保温効果を有することができる。
【0116】
また、鎖編糸50を配置する間隔が2mm未満の場合には、鎖編糸50同士の間に配置される遮光テープ11、及びフィルム12の幅も2mm未満となり、細くなりすぎることで遮光テープ11、及びフィルム12が捻じれたり千切れたりする等によって破損する等といったおそれがあり、前記遮光テープの耐久性が低下するおそれがある。
【0117】
そして、鎖編糸50を配置する間隔が、10mmを超える場合には、並列に配置される鎖編糸50が離れることで、農業用ネット1の耐久性が低下するおそれがある。
したがって、遮光テープ11とフィルム12との幅は、鎖編糸50を配置する間隔と同程度に設定することで、農業用ネット1がより高い保温効果を有することができるため望ましく、鎖編糸50を配置する間隔は、2mm以上10mm以下に設定することで農業用ネット1が耐久性を有するため望ましい。
【0118】
さらに、遮光テープ11とフィルム12との幅を同程度に形成することで、農業用ネット1が栽培作物4に適した遮光性を有するように、遮光テープ11とフィルム12とを所望の配列で容易に編むことができる。
【0119】
詳述すると、遮光テープ11とフィルム12との幅を同程度に形成することで、鎖編糸50同士の間に配置される遮光テープ11とフィルム12との配列を変更する場合において、遮光テープ11の幅とフィルム12の幅とに合わせて鎖編糸50を配置する間隔を変更する必要がなく、遮光テープ11とフィルム12との配列毎に異なった編み方をする必要がない。
【0120】
このため、農業用ネット1が所望の遮光性を有するために、遮光テープ11とフィルム12との配列を変更しても同様に農業用ネット1を編むことができ、利便性が向上することができるため、なお望ましい。
【0121】
また、上述の説明において、挿入糸51は、隣に配置される鎖編糸50の編目10に交互に挿入し掛止しているが、隣に配置していない鎖編糸50の編目10に挿入糸51を挿入し掛止してもよく、二本以上の鎖編糸50にわたって挿入糸51を編目10に挿入し掛止していればよい。
さらにまた、挿入糸51を挿入し掛止する編目10を有する鎖編糸50のパターンに規則性があってもよいし、ランダムでもよい。
【0122】
なお、上述の説明において、遮光テープ11は間隔を隔てて配置しているが、遮光テープ11同士を隣接して配置してもよい。また、遮光テープ11を離して配置している領域と隣接して配置している領域とがあってもよいし、遮光テープ11の配列に規則性があってもよいし、ランダムであってもよい。
【0123】
また、上述の説明において、遮光テープ11とフィルム12とが交互に配置されているが、遮光テープ11は農業用ネット1が栽培作物4に適した遮光性を有するように配置していればよく、鎖編糸50同士の間に、遮光テープ11のみを配置してもよい。
また、遮光テープ11とフィルム12の配置されるパターンに規則性があってもよいし、ランダムであってもよい。
【0124】
なお、鎖編糸50同士の間における遮光テープ11の配置されない部分に、吸湿性を有するフィルム12を配置することで、多湿による病害や落滴による栽培作物4の損傷等を抑制することができ、さらに農業用ネット1の通気が抑制され、農業用ネット1がより高い保温効果を有する。
【0125】
また、上述の説明において、フィルム12は、編み込まれることで網目20によって農業用ネット1に直接保持されているが、農業用ネット1にフィルム12を張り付けてもよく、農業用ネット1に別部材によって構成されたフィルム12を保持するフィルム保持部を設け、フィルム12が保持されるように構成してもよい。
【0126】
また、上述の説明において、鎖編糸50と挿入糸51とを経編することで編地6を編成し、編地6に遮光テープ11とフィルム12とを配置することで農業用ネット1を構成しているが、緯編によって編成してもよく、詳しくは鎖編、ラッセル、またはトリコット等でもよい。
【0127】
また、農業用ネット1を編むことで形成しているが、織ることで形成してもよく、平織、綾織、繻子織、絡み織等で形成してもよい。例えば、後述の
図6、及び
図7に示す農業用ネット1xのように、モノフィラメント500を平織することで形成してもよい。
【0128】
以下、
図6、及び
図7に基づいて、モノフィラメント500を織ることで構成した農業用ネット1xについて簡単に説明する。
なお、以下で説明する農業用ネット1xの構成のうち、上述の農業用ネット1と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0129】
ここで、
図6は、他の実施形態における農業用ネット1xの概略平面図を示し、
図7は、他の実施形態の遮光テープ近傍における組織の説明図を示す。
詳述すると、
図7(a)は、農業用ネット1xにおける遮光テープ11及びフィルム12が織り込まれている部分の拡大平面図を示し、
図7(b)は、農業用ネット1xの網目20xに保持される遮光テープ11及びフィルム12について説明すべく、
図7(a)におけるA-A矢視断面図を示し、
図7(c)は、農業用ネット1xの網目20xに保持される遮光テープについて説明すべく、
図7(a)におけるB-B矢視断面図を示している。
【0130】
農業用ネット1に対応する農業用ネット1xは、網目20に対応する網目20xが設けられた網状の編地6に対応する織物である織地6xに、遮光テープ11、及びフィルム12を配置することで構成している。
また、網状の織物である織地6xは、鎖編糸50に対応する経糸50xと挿入糸51に対応する緯糸51xを織ることで網状に形成した織物である。
【0131】
図6に示すように、農業用ネット1xは、糸状体5を平織することで略四角形形状の網目20xを有する網状に織成される織地6xに、遮光テープ11とフィルム12とを配置することで構成している。
なお、
図6、及び
図7において符号20で指し示す網目20xは破線で囲い支持している。
【0132】
網状の織地6xを織成する糸状体5は、経糸50xと緯糸51xとがあり、各々を緯方向x、及び経方向yに1mm程度の間隔を隔てて等間隔かつ並列に配置するように平織することで織地6xを織成している。
また、経糸50x、及び緯糸51xはモノフィラメント500によって形成されている。
【0133】
モノフィラメント500が形成する経糸50x、及び51xを1mm程度の距離を隔てて等間隔かつ並列に配置するように平織しているため、織地6xに目合1mm程度の網目20xが形成されている。なお、本実施形態では、経糸50x、及び緯糸51xを1mmの間隔を隔てて配置して平織にすることで網目20xの目合いを1mm程度に形成しているが、これに限定されない。
【0134】
編地6に配置される遮光テープ11とフィルム12とは、経糸50xに沿うとともに、緯方向xへ5mm程度の間隔を隔てて交互に配置している。
また、遮光テープ11とフィルム12を配置する場所においては、経糸50xとして平織されるモノフィラメント500を配置せず、遮光テープ11とフィルム12とを経糸50xとして平織することで、農業用ネット1xを形成している。
【0135】
このため、遮光テープ11とフィルム12とが配置される場所における経糸50xを構成するモノフィラメント500は、遮光テープ11、及びフィルム12の幅よりも広く8mm程度の間隔を緯方向xに隔てて配置している。
【0136】
このように、遮光テープ11、及びフィルム12並びにモノフィラメント500を配置することで、遮光テープ11とフィルム12とを配置する場所における網目20xの目合は、緯方向xの長さが遮光テープ11とフィルム12との幅よりも広く8mm程度に形成している。
【0137】
このように構成された農業用ネット1xは、経糸50xを構成するモノフィラメント500の間に、遮光テープ11、及びフィルム12を交互に配置するとともに、経糸50xと緯糸51xとを構成するモノフィラメント500によって略四角形形状の網目20によって、遮光テープ11、及びフィルム12を保持している。
【0138】
詳述すると、
図7(a)に示すように、遮光テープ11とフィルム12とを、5mm程度の幅の帯状に形成するとともに、経糸50xを構成するモノフィラメント500を、遮光テープ11とフィルム12との緯方向xにおけるそれぞれの両側に沿うように配置している。
【0139】
このように、遮光テープ11、フィルム12、及びモノフィラメント500を配置することで、遮光テープ11とフィルム12とが、モノフィラメント500によって緯方向xから挟まれることとなり、緯方向xへの動きが規制され、緯方向xにずれることを防止することができる。
【0140】
また、
図7(b)、及び
図7(c)に示すように、モノフィラメント500の間に配置される遮光テープ11とフィルム12とを、厚さ方向zから挟むように網目20xによって保持している。
【0141】
詳述すると、
図7(b)に示すように、緯糸51xを構成するモノフィラメント500は波状に屈曲し、経糸50xを構成する遮光テープ11、フィルム12、及びモノフィラメント500の間を縫うように配置されている。
【0142】
また、緯糸51xを構成するモノフィラメント500と、経方向yに1mm程度の間隔を隔て配置される両隣のモノフィラメント500とを、互い違いとなって経糸50xの間を縫うように配置することで、
図7(c)に示すように、緯糸51xを構成するモノフィラメント500が、経糸50xを構成する遮光テープ11を挟み込んでいる。
同様に、緯糸51xを構成するモノフィラメント500が、経糸50xを構成するモノフィラメント500、及びフィルム12を厚さ方向zから挟み込んでいる。(図示せず。)
【0143】
農業用ネット1における、緯方向xの端には補強糸(図示せず)を織り込むことで、強度の高い適宜幅の耳部(図示せず)が形成されている。
なお、上述の説明において、緯糸51xをすべてモノフィラメント500によって形成しているが、緯糸51xの少なくとも一本をモノフィラメント500によって形成していればよく、例えば、緯糸51xのうち少なくとも一本を紡績糸501によって形成し、緯糸51xを、モノフィラメント500と紡績糸501とを交互に並列に配置することで構成してもよい。
【0144】
緯糸51xをモノフィラメント500、及び紡績糸501とで構成し、モノフィラメント500と紡績糸501とを経方向yに交互に並列に配置し、網状の織地6xを形成することによって、農業用ネット1xで被覆する栽培作物4に適した湿度を超えないようにすることができ、多湿による病害や前記農業用ネットに付着した水滴が栽培作物に落下する落滴によって、栽培作物が損傷等することを防止することができる。
【0145】
このように構成された農業用ネット1x及び、農業用ネット1xを利用した農業用ハウスの内張りカーテン2は、農業用ネット1及び内張りカーテン2と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0146】
1,1x…農業用ネット
2…内張りカーテン
3…農業用ハウス
4…栽培作物
100…糸状体
13…遮光テープ
14…フィルム
20,20x…網目