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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】水系電解質を含む亜鉛イオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/36 20100101AFI20221111BHJP
【FI】
H01M10/36 A
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018236379
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020047571
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0112762
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0163484
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515294318
【氏名又は名称】世宗大学校産学協力団
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ミョン スンテク
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ゼヒョン
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-021497(JP,A)
【文献】特開昭62-190664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0043442(US,A1)
【文献】米国特許第04377625(US,A)
【文献】MCLARNON, Frank R. et al.,The Secondary Alkaline Zinc Electrode,Journal of The Electrochemical Society,1991年,138(2),645-664
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に配置され、水系溶媒及び金属塩を含有する水系電解質と
を含み、
前記水系電解質のモル濃度は、1M~2Mであり、
前記金属塩の組成は、下記化学式1で表されるものである、亜鉛イオン二次電池:
[化学式1]
A-xZn・yM
前記化学式1で、
Aは、アミノポリカルボキシレート(aminopolycarboxylate)であり、
xは、1~2であり、
yは、0~3であり、
Mは、アルカリ金属である。
【請求項2】
前記水系溶媒は、水である、請求項1に記載の亜鉛イオン二次電池。
【請求項3】
前記アミノポリカルボキシレート(aminopolycarboxylate)は、EDTA(ethylene diamine tetra acetate)、DTPA(diethylene triamine penta acetate)、EGTA(ethylene glycol-bis(β-aminoethyl ether)-N、N,N’,N’-tetra acetate)、IDA(2,2’-azanediyldiacetate)、NTA(2,2’,2”-nitrilotriacetate)、BAPTA(1,2-bis(o-aminophenoxy)ethane-N,N,N’,N’-tetra acetate)、DOTA(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetra acetate)、NOTA、Fura-2、ニコチアナミン、EDDHA(2-[2-[[2-Hydroxy-1-(2-hydroxyphenyl)-2-oxoethyl]amino]ethylamino]-2-(2-hydroxyphenyl)acetate)である、請求項1に記載の亜鉛イオン二次電池。
【請求項4】
前記化学式1で、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである、請求項1に記載の亜鉛イオン二次電池。
【請求項5】
前記金属塩は、EDTA-Zn・2Naである、請求項1に記載の亜鉛イオン二次電池。
【請求項6】
水系溶媒及び金属塩を含有する水系電解質を準備する段階と、
正極、セパレーター、及び負極を順に積層して電極群を形成する段階と、
前記電極群に前記水系電解質を含浸させる段階と
を含み、
前記水系電解質のモル濃度は、1M~2Mであり、
前記金属塩の組成は、下記化学式1で表されるものである、亜鉛イオン二次電池の製造方法:
[化学式1]
A-xZn・yM
前記化学式1で、
Aは、アミノポリカルボキシレート(aminopolycarboxylate)であり、
xは、1~2であり、
yは、0~3であり、
Mは、アルカリ金属である。
【請求項7】
前記水系溶媒は、水である、請求項に記載の亜鉛イオン二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記アミノポリカルボキシレート(aminopolycarboxylate)は、EDTA(ethylene diamine tetra acetate)、DTPA(diethylene triamine penta acetate)、EGTA(ethylene glycol-bis(β-aminoethyl ether)-N,N,N’,N’-tetra acetate)、IDA(2,2’-azanediyldiacetate)、NTA(2,2’,2”-nitrilotriacetate)、BAPTA(1,2-bis(o-aminophenoxy)ethane-N,N,N’,N’-tetra acetate)、DOTA(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetra acetate)、NOTA、Fura-2、ニコチアナミン、EDDHA(2-[2-[[2-Hydroxy-1-(2-hydroxyphenyl)-2-oxoethyl]amino]ethylamino]-2-(2-hydroxyphenyl)acetate)である、請求項に記載の亜鉛イオン二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記化学式1で、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである、請求項に記載の亜鉛イオン二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記金属塩は、EDTA-Zn・2Naである、請求項に記載の亜鉛イオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛イオン二次電池に関し、具体的には、水系電解質を含む亜鉛イオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池とは、放電だけでなく、充電が可能で、繰り返して使用することができる電池をいう。二次電池のうち代表的なリチウム二次電池は、正極活物質に含まれたリチウムイオンが電解質を経て負極に移動した後、負極活物質の層状構造内に挿入され(充電)、その後、負極活物質の層状構造内に挿入されたリチウムイオンが再び正極に戻る(放電)原理を通じて作動する。このようなリチウム二次電池は、現在商用化されて、携帯電話、ノートパソコン等の小型電源に使用されており、ハイブリッド自動車等の大型電源にも使用可能なものと予測されているので、その需要が増大すると予想される。
【0003】
しかしながら、リチウム二次電池において正極活物質として主に使用される複合金属酸化物は、リチウム等の希少金属元素を含んでいるので、需要増大に応じることができないおそれがある。
【0004】
これに伴い、供給量が豊富でかつ安価なナトリウムを正極活物質に使用するナトリウム二次電池に関する研究が行われた。一例として、特許文献1には、正極活物質としてAMnPOF(A=Li又はNa、0<x≦2)が開示されている。しかしながら、ナトリウム電池システムは、依然として複雑な安定性問題及び環境問題を有している。
【0005】
一方、フレキシブルを越えて最近にウェラブル電子機器に対する多様な技術が開発されるのに伴って、二次電池もやはり、爆発の危険性がなく、安定性が高い物質で作動する二次電池に対する需要が増大している。これにより、亜鉛二次電池は、他の二次電池に比べて高い安定性を有し、親環境的であり、毒性が少なく、他のアルカリ金属に比べて経済的であるという長所を有するので、現在亜鉛を正極活物質として使用する亜鉛二次電池に関する研究が活発に進められている。
【0006】
亜鉛二次電池の場合、有機電解質及び固体電解質だけでなく、ZnSO、Zn(NO又はZn(CFSO塩を用いた水系電解質を用いて商用化しようとする。しかしながら、このような水系電解質を含有する亜鉛イオン二次電池は、電気化学反応により副反応が起こり得る。
【0007】
前記二次電池で発生する副反応の一例として、二次電池の駆動による電位差の発生に起因して、一定以上の電位差の下で、水系溶媒内に含まれた水が電気分解反応を進めることができる。この際、水の電気分解反応に起因して水素ガス、水酸化亜鉛又は酸化亜鉛を発生させることができる。水素ガスと水酸化亜鉛及び酸化亜鉛を発生させる反応は、それぞれ、下記の反応式1、反応式2、及び反応式3の通りである。
【0008】
[反応式1]
【化1】
【0009】
[反応式2]
【化2】
【0010】
[反応式3]
【化3】
【0011】
このように、水系電解質を用いることによって発生する副反応は、二次電池の具現を困難にする要因になり得、二次電池の寿命特性が問題になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国特許公開第2012-0133300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、上記の目的を達成するために、本発明は、亜鉛イオン二次電池の新しい水系電解質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記第1課題を解決するために、本発明の一態様は、亜鉛イオン二次電池を提供する。前記亜鉛イオン二次電池は、亜鉛イオンの挿入及び脱離が可能な正極活物質を含む正極と、亜鉛を含有する負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配置され、水系溶媒及び金属塩を含有する水系電解質とを含み、前記金属塩の組成は、下記化学式1で表されるものである、亜鉛イオン二次電池である。化学式1は、A-xZn・yMであり、前記化学式1で、Aは、アミノポリカルボキシレート(aminopolycarboxylate)であり、xは、1~2であり、yは、0~3であり、Mは、アルカリ金属であってもよい。
【0015】
前記水系溶媒は、水である亜鉛イオン二次電池であってもよい。
【0016】
前記アミノポリカルボキシレートは、EDTA(ethylene diamine tetra acetate)、DTPA(diethylene triamine penta acetate)、EGTA(ethylene glycol-bis(β-aminoethyl ether)-N、N,N’,N’-tetra acetate)、IDA(2,2’-azanediyldiacetate)、NTA(2,2’,2”-nitrilotriacetate)、BAPTA(1,2-bis(o-aminophenoxy)ethane-N,N,N’,N’-tetra acetate)、DOTA(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetra acetate)、NOTA、Fura-2、ニコチアナミン、EDDHA(2-[2-[[2-Hydroxy-1-(2-hydroxyphenyl)-2-oxoethyl]amino]ethylamino]-2-(2-hydroxyphenyl)acetate)であってもよい。
【0017】
前記化学式1で、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである亜鉛イオン二次電池であってもよい。
【0018】
前記金属塩は、EDTA-Zn・2Naである亜鉛イオン二次電池であってもよい。
【0019】
前記水系電解質のモル濃度は、0.1M~2Mである亜鉛イオン二次電池であってもよい。
【0020】
前記第2課題を解決するために、本発明の他の態様は、亜鉛イオン二次電池の製造方法を提供する。前記亜鉛イオン二次電池の製造方法は、水系溶媒及び金属塩を含有する水系電解質を準備する段階と、正極、セパレーター、及び負極を順に積層して、電極群を形成する段階と、前記電極群に前記水系電解質を含浸させる段階とを含み、前記金属塩の組成は、下記化学式1で表されるものである。化学式1は、A-xZn・yMであり、前記化学式1で、Aは、アミノポリカルボキシレート(aminopolycarboxylate)であり、xは、1~2であり、yは、0~3であり、Mは、アルカリ金属であってもよい。
【0021】
前記水系溶媒は、水である亜鉛イオン二次電池の製造方法であってもよい。
【0022】
前記アミノポリカルボキシレートは、EDTA(ethylene diamine tetra acetate)、DTPA(diethylene triamine penta acetate)、EGTA(ethylene glycol-bis(β-aminoethyl ether)-N,N,N’,N’-tetra acetate)、IDA(2,2’-azanediyldiacetate)、NTA(2,2’,2”-nitrilotriacetate)、BAPTA(1,2-bis(o-aminophenoxy)ethane-N,N,N’,N’-tetra acetate)、DOTA(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetra acetate)、NOTA、Fura-2、ニコチアナミン、EDDHA(2-[2-[[2-Hydroxy-1-(2-hydroxyphenyl)-2-oxoethyl]amino]ethylamino]-2-(2-hydroxyphenyl)acetate)であってもよい。
【0023】
前記化学式1で、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである亜鉛イオン二次電池の製造方法であってもよい。
【0024】
前記金属塩は、EDTA-Zn・2Naである亜鉛イオン二次電池の製造方法であってもよい。
【0025】
前記水系電解質のモル濃度は、0.1M~2Mである亜鉛イオン二次電池の製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明が提供する水系電解質を用いる場合、有機電解質を含む亜鉛イオン二次電池に比べて安定性に優れており、イオン伝導度が高く現れ、水系電解質を用いることによって発生する副反応を抑制することができるので、前記水系電解質を含む亜鉛イオン二次電池では長期間寿命特性が優れて現れる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の一実施例による二次電池を示す概略図である。
図2図2Aは、本発明の製造例1にて使用された水系電解液の粒子形状についてのSEM写真を示すものであり、図2Bは、本発明の製造例1による水系電解液の粒子形状及び元素分布についてのEDX分析結果を示すものである。
図3図3A及び図3Bは、製造例1、比較例1-1、及び比較例1-2で得られた亜鉛イオン半電池の充放電特性及びサイクル回数による放電容量をそれぞれ示すグラフである。
図4図4は、製造例1~製造例4で得られた亜鉛イオン半電池の充放電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をより具体的に説明するために、本発明による好ましい実施例を添付の図面を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、ここで説明される実施例に限定されずに、他の形態に具体化されることもできる。
【0029】
図1は、本発明の一実施例による二次電池を示す概略図である。
【0030】
図1を参照すると、二次電池100は、負極活物質を含有する負極活物質層120と、正極活物質を含有する正極活物質層140と、これらの間に介在されるセパレーター130とを含む。負極活物質層120とセパレーター130との間及び正極活物質層140とセパレーター130との間には、電解質160が配置又は充填され得る。負極活物質層120は、負極集電体110上に配置され、正極活物質層140は、正極集電体150上に配置され得る。
【0031】
<電解質>
本発明の一実施例によれば、亜鉛イオン二次電池用の水系電解質は、水系溶媒及び金属塩を含有することができる。
【0032】
水系電解質を使用することによって、これを含む二次電池は、高いイオン伝導性を有し得る。また、安定性の面で有利であり、工程における製造コストもやはり低い。
【0033】
また、前記水系溶媒は、水を使用することによって、水に金属塩を添加し、これを撹拌して水系電解質として用いることによって、これを含む二次電池は、優れた安定性を有し得る。
【0034】
前記金属塩の組成は、下記化学式1で表されるものであってもよい。
[化学式1]
A-xZn・yM
【0035】
前記化学式1で、Aは、アミノポリカルボキシレートであってもよい。アミノポリカルボキシレートは、1つの分子内に1つ以上の窒素原子と、2つ以上のカルボキシル基及び前記窒素原子とカルボキシル基を炭素原子が連結する構造を有するものであってもよい。
【0036】
アミノポリカルボキシレートは、2つ以上のカルボキシル基を有することによって、キレートの役割をすることができる。好ましくは、アミノポリカルボキシレートは、2~5個のカルボキシル基を含むものであってもよい。これにより、アミノポリカルボキシレート-亜鉛(A-xZn)塩は、水系溶媒に溶解してイオン化し、Znとペアを組まないカルボキシル基は、アニオンとして存在し得るので、アミノポリカルボキシレートは、負の酸化数を有し得る。この際、ペアを組まないカルボキシル基は、亜鉛イオン二次電池内の電気化学的反応により発生するHイオンと結合することができる。その結果、亜鉛イオン二次電池内での副反応により発生するもので、水素ガスの形成を防止することができる。
【0037】
アミノポリカルボキシレートの一例として、EDTA(ethylene diamine tetra acetate)、DTPA(diethylene triamine penta acetate)、EGTA(ethylene glycol-bis(β-aminoethyl ether)-N,N,N’,N’-tetra acetate)、IDA(2,2’-azanediyldiacetate)、NTA(2,2’,2”-nitrilotriacetate)、BAPTA(1,2-bis(o-aminophenoxy)ethane-N,N,N’,N’-tetra acetate)、DOTA(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetra acetate)、NOTA、Fura-2、ニコチアナミン、EDDHA(2-[2-[[2-Hydroxy-1-(2-hydroxyphenyl)-2-oxoethyl]amino]ethylamino]-2-(2-hydroxyphenyl)acetate)等があるが、これらに制限されるものではない。
【0038】
下記表1に、アミノポリカルボキシレート又はその共役酸を纏めて示す。
【0039】
【表1】
【表2】
【0040】
xの範囲は、1~2であってもよい。yの範囲は、0~3であってもよい。x及びyは、それぞれの成分の相対的な組成比を示すものであり、それぞれの数値を満たす範囲内でそれぞれ独立していてもよい。
【0041】
また、前記化学式1で、Mは、金属であってもよい。特に、Mは、アルカリ金属であってもよい。一例として、Mは、Li、Na、K、Rb、及びCsよりなる群から選ばれるものであってもよい。詳しくは、前記金属塩は、EDTA-Zn・2Naであってもよい。EDTA-Zn・2Naは、下記化学式2で表される。
【0042】
[化学式2]
【化4】
【0043】
前記化学式2のように、金属塩がEDTA-Zn・2Naである場合、EDTAは、4個のカルボキシル基を有しているので、このうち2つのカルボキシル基は、Znイオンとキレートを形成することができ、ペアを組まない2つのカルボキシル基は、アニオンとして存在し得る。したがって、前記ペアを組まないカルボキシル基が水素イオンと反応し得るようになる。その結果、水素ガスの生成を抑制することができる。
【0044】
すなわち、本発明の一実施例による金属塩は、金属を供給する役割をすると同時に、キレート剤として作用することができる。したがって、本反応の一実施例による、化学式1の金属塩と水系溶媒を含有する水系電解質を用いて製造された亜鉛イオン二次電池は、優れた長期間寿命特性を有し、優れた安定性を示すことができる。
【0045】
<正極>
正極活物質、導電材、及び結合剤を混合して、正極材料を得ることができる。
【0046】
前記導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素材料であってもよい。前記結合剤は、熱可塑性樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン、フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン等のフッ素樹脂、及び/又は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を含むことができる。
【0047】
正極材料を正極集電体上に塗布して正極を形成することができる。正極集電体は、Al、Ni、ステンレス等の導電体であってもよい。正極材料を正極集電体上に塗布する際には、加圧成形、又は有機溶媒等を使用してペーストを作った後、このペーストを集電体上に塗布し、プレスして、固着化する方法を使用することができる。有機溶媒は、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系;メチルエチルケトン等のケトン系;酢酸メチル等のエステル系;ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等であってもよい。ペーストを正極集電体上に塗布する際には、例えば、グラビアコーティング法、スリットダイコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法を使用することができる。
【0048】
<負極>
負極活物質は、金属イオンを脱挿入したり、変換(conversion)反応を起こすことができる金属、金属合金、金属酸化物、金属フッ化物、金属硫化物、及び天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素材料等を使用して形成することもできる。
【0049】
負極活物質、導電材、及び結合剤を混合して、負極材料を得ることができる。この際、導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素材料であってもよい。結合剤は、熱可塑性樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン、フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン等のフッ素樹脂、及び/又は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を含むことができる。
【0050】
負極材料を正極集電体上に塗布して正極を形成することができる。正極集電体は、Al、Ni、ステンレス等の導電体であってもよい。負極材料を正極集電体上に塗布する際には、加圧成形、又は有機溶媒等を使用してペーストを作った後、このペーストを集電体上に塗布し、プレスして、固着化する方法を使用することができる。有機溶媒は、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系;メチルエチルケトン等のケトン系;酢酸メチル等のエステル系;ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等であってもよい。ペーストを負極集電体上に塗布する際には、例えば、グラビアコーティング法、スリットダイコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法を使用することができる。
【0051】
<セパレーター>
正極と負極との間にセパレーターが配置され得る。このようなセパレーターは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、窒素含有芳香族重合体等の材質からなる多孔質フィルム、不織布、織布等の形態を有する材料であってもよい。セパレーターの厚さは、電池の体積エネルギー密度が高くなり、内部抵抗が小さくなるという点から、機械的強度が維持される限り、薄いほど好ましい。セパレーターの厚さは、一般的に5~200μm程度であってもよく、より具体的には、5~40μmであってもよい。
【0052】
<亜鉛イオン二次電池の製造方法>
前記本発明の一実施例による水系電解液を準備する。次に、正極、セパレーター、及び負極を順に積層して、電極群を形成した後、必要に応じて電極群を巻いて電池カンに収納し、電極群に水系電解液を含浸させることによって、亜鉛イオン二次電池を製造することができる。
【実施例
【0053】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実験例(example)を提示する。ただし、下記の実験例は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明が下記の実験例により限定されるものではない。
【0054】
[実験例;Examples]
(製造例1:1MのEDTA-Zn・2Naを使用した有機電解質を具備した亜鉛イオン半電池の製造)
KV粉末、導電材(カーボンブラック)及び結合剤(ポリフッ化ビニリデン;PVDF)を、それぞれ8:1:1の重量比で、有機溶媒(N-メチル-2-ピロリドン;NMP)中で混合してスラリーを形成した。その後、このスラリーをステンレススチールメッシュ集電体上にコーティングした後、真空状態にて80℃で一晩乾燥させて、正極を形成した。
【0055】
前記正極、負極として亜鉛金属板、分離膜としてガラスフィルター、及び1MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液を使用して、亜鉛イオン半電池を2032型コインセルに製造した。
【0056】
(比較例1-1:ZnSOを使用した有機電解質を具備した亜鉛イオン半電池の製造)
製造例1における1MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液の代わりに、1MのZnSOの水系電解液を使用したことを除いて、製造例1と同じ方法を使用して亜鉛イオン半電池をコインセルに製造した。
【0057】
(比較例1-2:Zn(CFSOを使用した有機電解質を具備した亜鉛イオン半電池の製造)
製造例1における1MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液の代わりに、1MのZn(CFSOの水系電解液を使用したことを除いて、製造例1と同じ方法を使用して亜鉛イオン半電池をコインセルに製造した。
【0058】
図2Aは、本発明の製造例1にて使用された水系電解液の粒子形状についてのSEM写真を示すものであり、図2Bは、本発明の製造例1による水系電解液の粒子形状及び元素分布についてのEDX分析結果を示すものである。
【0059】
図2のSEM(Scanning Electron Microscope)写真及びEDX分析結果を見ると、製造例1にて製造されたEDTA-Zn・2Na塩は、O、N、及びZn元素で構成されていることが分かる。また、前記O、N、及びZn元素は、製造例1による塩粒子内にそれぞれ均一に分布していることが分かる。
【0060】
(製造例2:0.1MのEDTA-Zn・2Naを使用した有機電解質を具備した亜鉛イオン半電池の製造)
製造例1における1MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液の代わりに、0.1MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液を使用したことを除いて、製造例1と同じ方法を使用して亜鉛イオン半電池をコインセルに製造した。
【0061】
(製造例3:0.5MのEDTA-Zn・2Naを使用した有機電解質を具備した亜鉛イオン半電池の製造)
製造例1における1MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液の代わりに、0.5MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液を使用したことを除いて、製造例1と同じ方法を使用して亜鉛イオン半電池をコインセルに製造した。
【0062】
(製造例4:3MのEDTA-Zn・2Naを使用した有機電解質を具備した亜鉛イオン半電池の製造)
製造例1における1MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液の代わりに、3MのEDTA-Zn・2Naの水系電解液を使用したことを除いて、製造例1と同じ方法を使用して亜鉛イオン半電池をコインセルに製造した。
【0063】
(評価例1:亜鉛イオン半電池特性の評価)
図3A及び図3Bは、製造例1、比較例1-1、及び比較例1-2で得られた亜鉛イオン半電池の充放電特性及びサイクル回数による放電容量をそれぞれ示すグラフである。
【0064】
図3Aを参照すると、比較例1-1及び比較例1-2にて製造された亜鉛イオン半電池は、サイクル回数が増加するにつれて容量が減少することを確認することができる。しかしながら、製造例1にて製造された亜鉛イオン半電池は、サイクル回数が増加するにつれて容量が増加することを確認することができる。
【0065】
図3Bを参照すると、比較例1-1及び比較例1-2にて製造されたZnSO、Zn(CFSOを使用した有機電解質を具備した亜鉛イオン半電池の場合には、初期10サイクル前後でいずれも短絡が発生することが分かる。また、添付の写真を通じて、短絡した半電池は、電池が爆発したり、副反応によりガスが生成されることによって、電池が膨張して安定性が非常に劣ることを確認することができる。
【0066】
これに対して、製造例1の場合、20サイクル以後にも短絡が発生しないことを確認することができる。したがって、EDTA-Zn・2Naを使用した有機電解質を具備した亜鉛イオン半電池の場合、長期間寿命特性に優れた性能を示すことが分かる。これは、水系電解質としてEDTA-Zn・2Naを用いることによって、EDTA-Zn・2Naは、キレート剤として作用して、EDTAのペアを組まないカルボキシレート基がHと結合するに伴って、亜鉛イオン二次電池で発生する副反応であるHガスの形成が抑制されて、製造例1における二次電池の安定性が向上したものと考えられる。
【0067】
図4は、製造例1~製造例4で得られた亜鉛イオン半電池の充放電特性を示すグラフである。
【0068】
図4を参照すると、EDTA-Zn・2Naのモル濃度によって放電容量が変わることが分かる。EDTA-Zn・2Na電解質のモル濃度が0.1M、0.5M、1M、及び3Mであるとき、放電容量は、それぞれ、36.79mAh/g、49.58mAh/g、125.88mAh/g、及び133.47mAh/gである。
【0069】
すなわち、EDTA-Zn・2Na電解質のモル濃度は、0.5M~3Mが好適であり、好ましくは、EDTA-Zn・2Na電解質のモル濃度は、1M~2Mであってもよい。前記範囲内で、経済的でありながらも、水系電解質内のイオン化した亜鉛イオンによるイオン伝導度が高く現れるに伴って、電気化学的特性に優れた亜鉛イオン二次電池を提供することができる。
【0070】
以上、本発明を好ましい実施例を用いて詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されず、本発明の技術的思想及び範囲内で当該分野における通常の知識を有する者によって、様々な変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
100 二次電池
110 負極集電体
120 負極活物質層
130 セパレーター
140 正極活物質層
150 正極集電体
160 電解質
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4