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特許7175027血管内カテーテルの配置及び/または神経刺激のためのシステムならびに方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】血管内カテーテルの配置及び/または神経刺激のためのシステムならびに方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020505459
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 US2018043661
(87)【国際公開番号】W WO2019027757
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】15/666,989
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517325113
【氏名又は名称】ラングペーサー メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LUNGPACER MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】タッカー、バイラル
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、ダグラス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ガニ、マシュー ジェイ.
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0165207(US,A1)
【文献】特表2017-503596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激システムであって、
(1)第1信号を受信するように構成される少なくとも1つの位置決め装置、及び(2)第2電気信号を発するように構成される複数の電極を含む、血管内カテーテルと;
前記少なくとも1つの位置決め装置及び前記複数の電極と接続するコントローラであって、前記コントローラが、前記位置決め装置によって受信した前記第1信号に基づき、第2電気信号を発することにより神経を刺激するために、前記複数の電極のうちの少なくとも1つを誘導するように構成される、前記コントローラと;を含み、
前記複数の電極が電気的に分離する電極の少なくとも2つのセットを含み、前記電気的に分離する電極の2つのセットの電極のうちの第1セットが、前記血管内カテーテルの近位端に位置し、前記電気的に分離する電極の2つのセットの電極のうちの第2セットが、前記血管内カテーテルの遠位端に位置し、
前記複数の電極が前記少なくとも1つの位置決め装置の位置決め電極を含み、前記位置決め電極が前記第1信号を受信するように構成される、前記刺激システム。
【請求項2】
前記第1信号が、心臓の活動に関連する信号、ECG信号、インピーダンス、横隔神経の活性に関連する信号、圧力、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記位置決め装置が、電極、光ファイバカメラ、圧力センサ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの位置決め装置が、更に電気信号を発するように構成される電極を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記血管内カテーテルが血管内に配置されるように構成され、前記電極の第1セットが、前記電極の第2セットとは異なる前記血管の半径方向位置にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電極の第1セットが左横隔神経を刺激するように構成されており、前記電極の第2セットが右横隔神経を刺激するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記位置決め電極が第1位置決め電極であり、前記電極の第1セットが前記第1位置決め電極を含み、前記電極の第2セットが前記少なくとも1つの位置決め装置の第2位置決め電極を含み、前記第2位置決め電極が前記第1信号を受信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記神経の前記刺激が呼吸筋の収縮を生じさせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記血管内カテーテルが複数の管腔を更に含み、前記少なくとも1つの位置決め装置が、前記複数の管腔のうちの少なくとも1つの管腔と流体連通する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの位置決め装置が圧力センサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
刺激システムであって、
遠位端から近位端まで延在し、複数の電極を含む、血管内カテーテルであって、各電極が、神経を刺激するために電気信号を発する、電気信号を受信する、またはその両方を行うように構成されている、前記血管内カテーテルと;
前記複数の電極と接続し、電気信号を発する、電気信号を受信する、またはその両方を行うように、前記複数の電極のうちの少なくとも1つを誘導するように構成されている、コントローラと;を含み、
前記コントローラが、前記複数の電極の第1電極と前記複数の電極の第2電極の間のインピーダンスを測定するように構成され、前記測定したインピーダンスが、神経に対する前記血管内カテーテルの近接度を示す、前記刺激システム。
【請求項12】
前記第1電極が前記複数の電極の最も近位の電極であり、前記第2電極が前記複数の電極の最も遠位の電極である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記血管内カテーテルが、前記カテーテルの外部から血管内領域に双方向に流体を運ぶように構成される、少なくとも1つの管腔を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
圧力センサが前記少なくとも1つの管腔と流体連通している、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
刺激システムであって、
(1)インピーダンスを測定するように構成される少なくとも1つの位置決め装置、及び(2)電気信号を発するように構成される複数の電極を含む、血管内カテーテルと;
前記少なくとも1つの位置決め装置及び前記複数の電極と接続する、コントローラと;を含み、
前記コントローラが、前記位置決め装置によって測定したインピーダンスに基づき、電気信号を発することにより神経を刺激するために、前記複数の電極のうちの少なくとも1つの電極を誘導するように構成され
前記インピーダンスが、神経組織に対する第1電極の近接度を示す、刺激システム。
【請求項16】
前記位置決め装置が、前記複数の電極の最も近位の電極、及び前記複数の電極の最も遠位の電極を含み、前記インピーダンスが前記最も近位の電極と前記最も遠位の電極の間にある、請求項15に記載のシステム
【請求項17】
前記インピーダンスが、所定のインピーダンス閾値、インピーダンスプロファイル、またはその両方と比較される、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2017年8月2日出願の米国特許出願第15/666,989号に対する優先権を主張するものであり、本開示全体がその全体を参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、血管内神経刺激カテーテルを配置すること、神経刺激のための電極を選択すること、または神経を刺激することのうちの1つ以上のためのシステム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
神経の電気刺激は、筋肉の活動を制御するため、または感覚を生成するもしくはそれを減弱させるために使用できる。神経及び筋肉の刺激は、神経及び筋肉の中、周囲または近傍に電極を配置することにより、ならびに植え込んだもしくは外部のエネルギー源(例えば、電気)によって電極を作動させることにより行われ得る。
【0004】
横隔膜筋は、ヒトの呼吸に重要な機能を提供する。通常、横隔神経は、呼吸に必要な横隔膜筋の収縮を引き起こす脳からの信号を伝達する。しかし、様々な症状によって横隔神経への適切な信号の伝達が阻害され得る。これらは、脊髄もしくは脳幹に影響を与える永続的もしくは一時的な損傷または疾患;筋萎縮性側索硬化症(ALS);昼間または夜間の換気駆動の減少(例えば、中枢性睡眠時無呼吸、オンディーヌの呪い);ならびに麻酔薬及び/または人工呼吸器の影響下にあるときの換気駆動の減少;を含む。これらの症状は、多くの人々に影響を及ぼしている。
【0005】
挿管及び陽圧人工呼吸(MV)は、集中治療室(ICU)で重症患者の呼吸を助けるために数時間または数日、ときには数週間の期間にわたって使用される場合がある。随意呼吸が回復せず、長期または永続的な人工呼吸を必要とする患者も存在する可能性がある。人工呼吸は初期に救命を行うことができるが、様々な重大な問題及び/または副作用を有している。人工呼吸には、以下の問題がある。
-肺内の流体の蓄積及び感染感受性の増加(人工呼吸器関連肺炎(VAP))をもたらし得る、人工呼吸器誘発性肺損傷(VILI)及び肺胞の損傷を引き起こすことがたびたびある。
-救急挿管された患者の不快感や不安を軽減するために一般的に鎮静剤を必要とする。
-使われない横隔膜筋の急速な萎縮を引き起こす(人工呼吸器誘発性横隔膜機能不全(VIDD))。
-肺が加圧されて、横隔膜が非活動状態にあるため、静脈還流に悪影響を及ぼす可能性がある。
-食べること及び話すことに支障をきたす。
-持ち運びが困難な装置を必要とする。
-患者が正常な呼吸を取り戻すことができずに人工呼吸に依存するようになると、死亡リスクが高くなる。
【0006】
鎮静剤を投与されて人工呼吸器に接続された患者は、横隔膜及び補助呼吸筋への中枢神経駆動が抑制されているため、正常に呼吸することができない。不活動によって、筋肉の廃用性萎縮がもたらされ、全体的な健康状態が損なわれる。横隔膜の筋萎縮は急速に進行し、患者にとって深刻な問題になる場合がある。臓器提供者について発表された研究(非特許文献1)によると、わずか18~69時間の人工呼吸後に、全横隔膜筋線維が平均52~57%萎縮した。筋線維萎縮は筋力低下及び疲労感の増加をもたらす。したがって、人工呼吸により誘発された横隔膜萎縮が、患者の人工呼吸依存をもたらす場合がある。600,000人以上の米国の患者が人工呼吸に依存するようになって、2020年までに長期の人工呼吸を必要とすると推定されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Levine et al.,New England Journal of Medicine,358:1327-1335,2008
【文献】Zilberberg et al.,”Growth in adult prolonged acute mechanical ventilation:implications for healthcare delivery,”Crit Care Med.,2008May,36(5):1451-55
【発明の概要】
【0008】
本開示の実施形態は、とりわけ血管内神経刺激カテーテルを配置すること、神経刺激のための電極を選択すること、または神経を刺激することのうちの1つ以上のためのシステム、装置及び方法に関する。本明細書に開示する実施形態のそれぞれは、開示される他の実施形態のいずれかと関連して記載された1つ以上の特徴を含むことができる。
【0009】
一例にて、血管内カテーテルを配置する方法は、血管内カテーテルを患者の静脈系内に挿入することであって、そこでカテーテルは複数の電極を含み、複数の電極の多極電極は、電気信号を発するように構成されている、前記挿入することと;カテーテルの遠位部を第1位置に配置することと;ECG信号を獲得するために複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用することと;獲得したECG信号に基づいて、カテーテルの遠位部を第1位置とは異なる第2位置に調整することと;複数の電極の少なくとも1つの第1電極を識別して、第1神経を刺激することと;複数の電極の少なくとも1つの第2電極を識別して、第2神経を刺激することと;第1神経及び第2神経のうちの少なくとも1つを刺激して、呼吸筋の収縮を生じさせることと;を含むことができる。
【0010】
本明細書に記載の任意の方法は、付加的にまたは代替的に、以下の特徴または工程のうちの1つ以上を含むことができる。血管内カテーテルを静脈系に挿入することは、血管内カテーテルを1)左鎖骨下静脈、腋窩静脈、橈側皮静脈、心膜周囲静脈、上腕静脈、橈骨静脈、または左頸静脈のうちの少なくとも1つ、及び2)上大静脈内に挿入することを含むことができる。第1位置は患者の心臓の心房に近接してもよく、第2位置は上大静脈中でもよく、ECG信号は第1ECG信号でもよい。方法は、第2ECG信号を獲得するために複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用することを含むことができる。第1ECG信号を獲得するために使用する1つ以上の電極は、カテーテルの近位部に配置されることができ、第1神経を刺激するように構成されることができる。第2ECG信号を獲得するために使用する1つ以上の電極は、カテーテルの遠位部に配置されることができ、第2神経を刺激するように構成されることができる。方法は、第1ECG信号と第2ECG信号を比較することと;比較に基づいて、カテーテルの遠位部を第2位置に調整することと;を更に含むことができる。第2位置は、第1位置より患者の心臓から遠くてもよい。方法は、複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用して、インピーダンスまたは神経活動のうちの少なくとも1つを検知することを更に含むことができる。または、少なくとも1つの第1電極及び少なくとも1つの第2電極のそれぞれは、電極の組み合わせでもよい。
【0011】
別の例で、血管内カテーテルを配置する方法は、血管内カテーテルを1)左鎖骨下静脈または左頸静脈のうちの少なくとも1つ、及び2)上大静脈内に挿入することであって、そこでカテーテルは複数の電極を含み、複数の電極は、左横隔神経に近接して配置される電極の近位セット及び右横隔神経に近接して配置される電極の遠位のセットを含む、前記挿入することと;ECG信号を獲得するために複数の電極のうちの1つ以上の電極を使用することと;ECG信号の変化に基づいて、カテーテルを患者の心臓から引き抜くことと;電極の近位セットのうちの1つ以上の電極を使用して、左横隔神経を刺激することと;電極の遠位セットのうちの1つ以上の電極を使用して、右横隔神経を刺激することと;を含むことができる。
【0012】
本明細書に記載の任意の方法は、付加的にまたは代替的に、以下の特徴または工程のうちの1つ以上を含むことができる。ECG信号の変化はP波の振幅の変化でもよく、変化は、カテーテルの遠位端が心臓の心房に近接する領域に入る際に生じる場合がある。心臓からカテーテルを引き抜く工程は、P波の振幅の変化を引き起こす場合がある。ECG信号は、電極の近位セットのうちの1つ以上の電極によって獲得される第1ECG信号でもよい。方法は、第2ECG信号を獲得するために電極の遠位セットのうちの1つ以上の電極を使用することを更に含むことができる。方法は、第1ECG信号のP波と第2ECG信号のP波の間の差を測定することと;差が所定の値を超えるとき、患者の心臓からカテーテルを引き抜くことと;を更に含むことができる。カテーテルが心臓の心房内を前進するとき、差は所定の値を超える場合がある。カテーテルに連結されて、患者の外部に配置されたハブは、複数の電極のうちの1つ以上の電極と共に使用されて、ECG信号を獲得することができる。または、方法は、カテーテルの遠位端が左鎖骨下静脈または左頸静脈のうちの少なくとも1つ内に挿入されて、上大静脈内を前進する際に、ECG信号を監視することを更に含むことができる。
【0013】
更に別の例で、血管内カテーテルを配置する方法は、血管内カテーテルを患者の静脈系内に挿入することであって、そこでカテーテルは複数の近位電極及び複数の遠位電極を含む、前記挿入することと;第1ECG信号を獲得するために複数の近位電極のうちの1つ以上の電極を使用することと及び第2ECG信号を獲得するために複数の遠位電極のうちの1つ以上の電極を使用することと;第1ECG信号と第2ECG信号を比較することと;第1ECG信号と第2ECG信号の間の比較に基づき、カテーテルの位置を調整することと;複数の近位電極のうちの1つ以上を使用して、第1神経を刺激することと;複数の遠位電極のうちの1つ以上を使用して、第2神経を刺激することと;を含むことができる。
【0014】
本明細書に記載の任意の方法は、付加的にまたは代替的に、以下の特徴または工程のうちの1つ以上を含むことができる。第1神経は左横隔神経でもよく、第2神経は右横隔神経でもよい。第1ECG信号を第2ECG信号と比較することは、第1ECG信号の一部の振幅を第2ECG信号の一部の振幅と比較することを含むことができる。比較する工程は、挿入工程の間、何度も生じる場合がある。カテーテルの位置を調整することは、心臓から離れる方向にカテーテルを移動させることを含むことができる。第1神経を刺激することまたは第2神経を刺激することのうちの少なくとも1つによって、横隔膜の収縮が生じる場合がある。または方法は、近位電極のうちの1つ以上を使用して第1神経の活性を検知することと、遠位電極のうちの1つ以上を使用して第2神経の活性を検知することと、を更に含むことができる。
【0015】
別の例で、血管内カテーテルを配置する方法は、血管内カテーテルを1)左鎖骨下静脈または左頸静脈のうちの少なくとも1つ、及び2)上大静脈内に挿入することであって、そこでカテーテルは、左横隔神経に近接して配置される複数の近位電極及び右横隔神経に近接して配置される複数の遠位電極を含む、前記挿入することと;挿入工程の間、カテーテルの複数の位置で、第1ECG信号を獲得するために複数の近位電極のうちの1つ以上の電極を使用することと及び第2ECG信号を獲得するために複数の遠位電極のうちの1つ以上の電極を使用することと;複数位置のうちのいくつかで第1ECG信号と第2ECG信号を比較することと;第1ECG信号と第2ECG信号の比較に基づき、神経刺激のためのカテーテルの所望の位置を決定することと;複数の近位電極のうちの1つ以上を使用して、左横隔神経を刺激することと;複数の遠位電極のうちの1つ以上を使用して、右横隔神経を刺激することと;を含むことができる。
【0016】
本明細書に記載の任意の方法は、付加的にまたは代替的に、以下の特徴または工程のうちの1つ以上を含むことができる。方法は、心臓の心房に近接する領域にカテーテルの遠位端を前進させることを更に含むことができる。複数の位置のうちの1つは、カテーテルの遠位端が心臓の心房に近接している位置でもよく、その位置で比較は、所定の値を超える第1ECG信号の振幅と第2ECG信号の振幅の差を示すことができる。方法は、心臓から離れる方向にカテーテルを移動させることを更に含むことができる。左横隔神経を刺激することは横隔膜の収縮を引き起こす場合があり、右横隔神経を刺激することは横隔膜の収縮を引き起こす場合がある。第1ECG信号を獲得するために使用する近位電極は左横隔神経を刺激するように構成されることができ、第2ECG信号を獲得するために使用する遠位電極は右横隔神経を刺激するように構成されることができる。
【0017】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は例示に過ぎず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではないことが理解され得る。本明細書で使用する場合、「含む」「含んでいる」またはそれに類する語が非排他的包含も含むことが意図されており、その結果、構成要素の一覧を含むプロセス、方法、物品または装置は、その構成要素のみを含むのではなく、明確には列挙されていない他の要素、またはそのようなプロセス、方法、物品または装置に固有な要素も含むことができる。「例示的」という用語は、「理想」ではなく「例」の意味で使用される。
【0018】
本明細書に組み込まれると共に本明細書の一部である添付の図面は、本開示の例示的実施形態を示すものであり、説明と共に本開示の原理を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】例示的実施形態による、患者内に配置される血管内カテーテルを有する、神経刺激システムを示す。
図2】例示的実施形態による、携帯式制御装置を有する、神経刺激システムを示す。
図3】例示的実施形態による、神経刺激システムの無線構成を示す。
図4】例示的実施形態による、螺旋部を有する血管内カテーテルを示す。
図5】例示的実施形態による、光ファイバカメラを有する血管内カテーテルを示す。
図6】例示的実施形態による、超音波振動子を有する血管内カテーテルを示す。
図7】例示的実施形態による、血管内カテーテル及び制御装置を有する、神経刺激システムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
神経または筋肉を電気的に刺激するとき、様々な目的を想到できる。第1に、横隔神経に近接して電極を配置することが望ましい場合がある。第2に、これらの身体構造の電気刺激が不整脈を引き起こし得るので、洞房(SA)結節、房室(AV)結節または心臓組織に位置するヒス・プルキンエ系のすぐ近くに電極を配置することを回避することが望ましい場合がある。第3に、多極電極を含む装置を使用するとき、神経のすぐ近くにある特定の電極を識別することが望ましい場合がある。適切な電極を識別することは、効果的に神経を刺激するために必要な電荷を最小化できる。最後に、任意の医療処置と同様に、患者への損傷の危険性は医療処置の長さ及び複雑さによって増加する。
したがって、神経または筋肉を電気的に刺激する任意の処置の長さを最小化することが望ましい場合がある。
【0021】
上述の目的のうちの1つ以上を対象にして、神経が標的神経かどうか決定することと、呼吸を刺激することと、治療(例えば、薬物)を送達することと、身体からの電気信号(例えば、ECG)を検知することと、内部血管の血圧、心拍数及び電気インピーダンスを検知することと、試験を実行することと(例えば、呼吸数及び血液ガス濃度(例えば、CO、O)を検知すること)、を含む、様々な機能のうちの1つ以上を含むことができる、費用効果が高く、実用的で、外科的に単純かつ低侵襲性の装置及び方法が必要とされている。患者が人工呼吸をやめて、自然に呼吸できる能力を回復するのに役立つ装置及び方法の必要性もある。
【0022】
したがって、本開示は、神経刺激のために血管内カテーテルを配置すること、神経刺激のための電極を選択すること、及び神経を刺激することのうちの1つ以上のためのシステム、装置及び方法に関する。特に、本開示の実施形態は、種々の位置決め機能を使用して、血管内神経刺激カテーテルを配置するのに有用な情報を得ることができる、またはセンサによって収集した情報を使用して、神経刺激のための電極及びパラメータを選択することができる。
【0023】
全体システムの概要
図1は、血管内神経刺激カテーテル12及び制御装置14を含む、システム10を示す。カテーテル12は、複数の電極34を含むことができる。カテーテル12は、制御装置14に操作可能に接続(例えば、有線、無線など)できる。制御装置14は、システム10に関連して本明細書に記載の機能のいずれかを実行するようにプログラムされることができる。いくつかの実施形態では、制御装置14は、患者または医療従事者が制御装置14から離れて、制御装置14の操作を制御するのを可能にする、遠隔コントローラ16を含むことができる。コントローラ16は、図1で示すように携帯端末を含むことができる。いくつかの例で、コントローラ16は、フットスイッチ/ペダル、音声起動式、タッチ起動式もしくは圧力起動式スイッチ、または遠隔作動装置の他の任意の形を含むことができる。制御装置14は、タッチスクリーン18を含むことができ、それはカート20によって支持されることができる。
【0024】
使用中、カテーテル12の近位部は左鎖骨下静脈22に置かれることができて、カテーテル12の遠位部は上大静脈24に置かれることができる。このような配置で、カテーテル12の近位部の電極34は左横隔神経26に近接して配置されてもよく、カテーテル12の遠位部の電極34は右横隔神経28に近接して配置されてもよい。左右の横隔神経26、28は、横隔膜30に神経を分布できる。したがって、カテーテル12は、左右の横隔神経26、28の一方または両方を電気的に刺激して、横隔膜筋30の収縮を引き起こし、患者の呼吸を開始もしくは補助することができる。他の実施形態で、カテーテル12の近位部は左頸静脈32に置かれることができて、カテーテル12の遠位部は上大静脈24に置かれることができる。
【0025】
更なる例にて、カテーテル12は、標的神経(複数可)(例えば、横隔神経)に隣接する位置へのアクセスを提供する他の血管(例えば、頸静脈、腋窩静脈、橈側皮静脈、心膜周囲静脈、上腕静脈または橈骨静脈)内に置かれて、前進することができる。そのうえ、カテーテル12は、刺激エネルギーの他の形態(例えば、超音波)を使用して、標的神経を活性化することができる。いくつかの例で、システム10は、横隔膜30に加えてまたはその代わりに他の呼吸筋(例えば、肋間)も標的とすることができる。エネルギーは、経皮管的、皮下、神経カフ、経皮的刺激または当分野で既知の他の技術を含む、1つ以上の方法を介して供給されることができる。
【0026】
図2は、制御装置14’が携帯式であるシステム10の代替例を示す。携帯式制御装置14’は、図1の制御装置14のすべての機能を含むことができるが、それは、患者または他のユーザによって運ばれて、患者に多くの可動性を提供することができる。携帯式制御装置14’を運ぶことに加えて、患者は、例えば、制御装置14’をベルトに、他の衣料品上に、または彼(彼女)の頸部の周りに着けることができる。他の例で、制御装置14’は、患者のベッドに載置されて、患者周囲の領域のシステム10のフットプリントを最小化できる、または寝たきりの患者が別の場所へ輸送もしくは移動されなければならない事象で移動可能な筋肉刺激を提供できる。
【0027】
図1と同様に、図2のシステムは、携帯式コントローラ16として示すコントローラ16を含むことができる。携帯式コントローラ16は、呼吸パターンを制御するために患者または他のユーザにより押されることができる、ボタン17、19を含み得る。一例にて、ボタン17、19の1つを押すことは「呼気」呼吸を開始でき、それによって、前の呼吸を上回る空気を患者の肺に入れることができる。カテーテル12の電極34が、通常の呼吸より高いレベルで横隔神経26、28のうちの1つ以上を刺激するように指示されるとき(例えば、長期間の刺激を有する、またはより高い振幅、パルス幅もしくは周波数を備えるパルスを有する刺激列)、呼気呼吸は生じ得る。高振幅の刺激パルスは、追加の神経線維を動員でき、それにより、追加の筋線維を係合して、より強い及び/またはより深い筋収縮を生じさせることができる。刺激列の伸びたパルス幅または伸びた期間は、より長い期間にわたって刺激を送達して、筋収縮の持続期間を延長できる。横隔膜筋を刺激する場合、長いパルス幅は、肺の外側周囲に大きいまたは広範囲の陰圧を印加することによって、下肺葉を拡大するのを助ける可能性を有する。このような陰圧には、無気肺として知られている低圧肺損傷の形を防止する、または緩和するのを助ける可能性がある。1つ以上の横隔神経26、28の増大した刺激は、横隔膜30のより強力な収縮をもたらして、患者により大量の空気を吸入させ、それにより、大量の酸素を患者に提供することができる。呼気呼吸は、患者の快適さを増加させることができる。
【0028】
他の例で、ボタン17、19によって、患者または他のユーザが、刺激療法を開始して、それを停止させる、または刺激量(振幅×パルス幅)、刺激列のパルス数または呼吸数を含む、刺激パラメータを増減するのが可能になる。コントローラのLEDインジケータまたは小さなLCD画面(図示せず)は、刺激パラメータに関してオペレータを案内するまたはそれに知らせる他の情報、システムセンサからのフィードバック、または患者の状態を提供できる。
【0029】
図3は、カテーテル12に加えて、制御装置14”が患者に植え込まれるシステム10の別の例を示す。システム10は、制御装置14”と無線で接続する、遠隔コントローラ16及びプログラマー98を更に含むことができる。この実施形態で、プログラマー98、制御装置14”及び遠隔コントローラ16のそれぞれは、無線トランシーバ92、94、96をそれぞれ含むことができ、その結果、3つの構成要素のそれぞれは互いに無線で通信できる。制御装置14”は、本明細書に記載の機能を実行するのに必要なすべての電子機器、ソフトウェア及び機能ロジックを含むことができる。図3で示すように制御装置14”を植え込むことにより、カテーテル12が永久呼吸ペースメーカとして機能するのが可能になる。プログラマー98により、患者または医療従事者が神経刺激または検知パラメータを修正する、またはプログラムするのが可能になる。遠隔コントローラ16は、図1及び図2に関連して記載されているように使用されることができる。他の例で、遠隔コントローラ18は、スマートフォン、タブレット、腕時計または他の装着型装置の形であり得る。
【0030】
カテーテルの特徴
図1図3を参照すると、カテーテル12は、複数の電極34または他のエネルギー送達要素を備える、刺激アレイを含むことができる。一例で、電極34は、カテーテル12の外壁に位置する表面電極でもよい。別の例で、電極34は、カテーテル12の外壁に対して半径方向に内向きに配置されることができる(例えば、外壁の開口部または窓を通って露出する)。更に別の例で、電極34は、米国特許第9,242,088号に記載されているように、印刷した電極を含むことができ、それは本明細書に参照により組み込まれる。
【0031】
電極34は、カテーテル12の周囲に部分的に延在することができる。この「部分的」電極構成によって、電極34が刺激のための所望の神経を標的化することが可能になり、その一方で、患者の解剖学的構造の望ましくない領域(例えば、他の神経または心臓)への電荷の適用を最小化する。図1に示されているように、カテーテル12は、左横隔神経26付近に配置されて、それを刺激するように構成される電極34の近位セット35と、右横隔神経28付近に配置されて、それを刺激するように構成される電極34の遠位セット37と、を含むことができる。図5に示すように、電極34は、カテーテル12の長さに沿って延在する列に配置されることができる。一例にて、近位セット35は2列を含むことができ、遠位セット37は2列を含むことができる。
【0032】
更に、本明細書に記載のカテーテルは、米国特許第8,571,662号(2013年10月29日発行の表題”Transvascular Nerve Stimulation Apparatus and Methods”);米国特許第9,242,088号(2016年1月26日発行の表題”Apparatus and Methods for Assisted Breathing by Transvascular Nerve Stimulation”);米国特許第9,333,363号(2016年5月10日発行の、表題”Systems and Related Methods for Optimization of Multi-Electrode Nerve Pacing”);米国特許出願第14/383,285号(2014年9月5日出願の表題”Transvascular Nerve Stimulation Apparatus and Methods”);または米国特許出願第14/410,022号(2014年12月19日出願の表題”Transvascular Diaphragm Pacing Systems and Methods of Use”);の文書に記載されている神経刺激装置の任意の特徴を含むことができ、その全体がすべて本明細書に参照により組み込まれる。そのうえ、本明細書に記載の制御装置は、上述した特許文献に記載の制御装置の機能のいずれかを有することができる(例えば、本明細書に記載の制御装置は、組み込まれた文書に記載されている神経刺激の方法を実施できる)。
【0033】
神経刺激の間、1つ以上の電極34は、左横隔神経26の刺激のために近位セット35から選択されることができて、1つ以上の電極34は、右横隔神経28の刺激のために遠位セット37から選択されることができる。カテーテル12は、単極、両極、または三極電極の組み合わせを使用して、または電極34の任意の他の好適な組み合わせを使用して、神経を刺激できる。いくつかの例で、第2または第3刺激アレイは、他の呼吸筋を刺激するために使用することができる。複数の神経または筋肉が刺激されるとき、本明細書に記載のコントローラ及びセンサは、刺激を協調して、所望の筋肉の活性化、呼吸または呼吸補助のレベルを得るために使用できる。
【0034】
カテーテル12は、1つ以上の管腔を更に含むことができる。各管腔は、カテーテル12の近位端からカテーテル12の遠位端に、またはカテーテル12の遠位端に近接する位置に延在できる。管腔は、医療装置(例えば、ガイドワイヤまたは光ファイバカメラ)を含有することができる。更に、1つ以上の管腔は、任意の好適な目的(例えば、血液試料を採取する、または患者に薬物を送達するための経路を提供する)のためにも使用できる。いくつかの例で、管腔は、センサ(例えば、血液ガスセンサまたは圧力センサ)を含有することができる、またはそれと流体連通することができる。
【0035】
本開示で、カテーテル12を示している図は、異なる特徴及び異なる特徴の組み合わせをそれぞれ示すことができる。しかし、カテーテル12は、本明細書に記載の特徴の任意の組み合わせを含むことができる。したがって、カテーテル12の特徴は、様々な図に示す特定の組み合わせに限定されない。
【0036】
図2に関連して、ハブ36はカテーテル12の近位端に接続することができる。ハブ36は導電面を含んでもよく、それは単極刺激または検知の間の基準電極として作用できる。いくつかの実施形態で、ハブ36は、患者の皮膚に縫合されることができる。更にハブ36は、ECG電極として使用されることができる。
【0037】
図4は、左頸静脈32及び上大静脈24内に挿入されるカテーテル12を示す。上述のとおり、カテーテル12は複数の電極34を含み、そこで、近位電極34は左横隔神経26の近くに配置され、遠位電極34は右横隔神経28の近くに配置される。カテーテル12は、ハブ36から近位に延在する拡張管腔38、40、42と連結することができる、3つの管腔(図示せず)を更に含むことができる。カテーテル12の遠位部は、患者内に配置されるとき、螺旋形状44を呈するように構成されることができる。螺旋形状44は、血管壁にカテーテル12を固定するのを助けて、神経刺激の間、カテーテル12を安定させることができる。更に、螺旋形状44により、電極34が容器内の異なる半径方向位置に配置されることが可能になり、それは神経刺激のために電極を選択するときに有用であり得る。例えば、特定の例では、神経に近い電極34で神経を刺激することが望ましい場合があり(例えば、強力な横隔膜の反応を得るために)、他の例では、神経から離れている電極34で神経を刺激することが望ましい場合がある(例えば、弱い横隔膜の反応を得る、または迷走神経の刺激を防ぐために)。
【0038】
一例にて、螺旋形状44は、拡張管腔38、40または42を介してカテーテル12の管腔内に挿入される補強ワイヤを使用することにより得られることができる。補強ワイヤは、螺旋形状に曲がる形状記憶材料(例えば、ニチノール)、ステンレス鋼または他の任意の好適な材料を含むことができる。螺旋形状44を呈するように構成されるカテーテル12の一部は、カテーテル12の他の部分より低い剛性を有する材料を含むことができる。例えば、螺旋形状44を伴う材料は、カテーテル12の残りの長さの材料より薄くてもよい、またはより可撓性でもよい。別の例で、カテーテル12は、その長さの一部で温度活性形状記憶材料(例えば、ニチノール)を含むことができ、その結果、カテーテル12の形状記憶材料は、室温で実質的にまっすぐな形状を有することができ、患者の身体内で加熱されるとき、螺旋形状を呈することができる。
【0039】
いくつかの例で、カテーテル12の近位部は、付加的にまたは代替的に、カテーテル12の遠位部と同様の特徴を有することができ、左頸静脈32(または、左鎖骨下静脈22)内に配置されるとき、それが螺旋形状を呈することが可能になる。任意の近位の螺旋形状は、螺旋形状44に関連して記載されている特徴のいずれかから得られることができる、または生じることができる。患者内に配置されるときにカテーテル12の近位部及び遠位部が螺旋形状を呈する場合、近位電極及び遠位電極34は、左右の横隔神経26、28に対してそれぞれ固定できる。患者が呼吸するまたは移動するとき、身体の動きに対応するために、カテーテル12は、カテーテル12の中心部に沿って螺旋形状を更に含むことができる。一例にて、中心部の拡張された螺旋形状の直径は血管壁の直径より小さくてもよく、その結果、中心の螺旋形状は血管壁に対して固定されない。したがって、身体の動きが近位の螺旋と遠位の螺旋(血管壁に対して固定できる)の間の距離を変化させるので、中心螺旋部により、カテーテル12が血管内で長さを自由に伸縮するのを可能にし得る。中心の螺旋形状は、螺旋形状44に関連して記載されている特徴のいずれかから得られることができる、または生じることができる。
【0040】
図5を参照すると、拡張管腔38、40及び42は、最も近位のポート38a、40a及び42aをそれぞれ末端にすることができる。更に、カテーテル12内部の管腔は、1つ以上の遠位ポートを末端にすることができる。一例にて、管腔38、40及び42と接続する内腔は、遠位ポート48、中間ポート50及び近位ポート52をそれぞれ末端にする。管腔38、40、42及びそれらの対応する内腔は、患者へ及び患者から流体を輸送する(例えば、薬物を送達する、または血液または他の体液を引き出す)ために使用できる。他の例で、これらの管腔は、ガイドワイヤ、補強ワイヤ、光ファイバカメラ、センサまたは他の医療装置を保持するために使用できる。例えば、図5は、管腔38に挿入される光ファイバカメラ46を示し、対応する内腔を通って延在して、遠位ポート48から出る。
【0041】
図6は、カテーテル12の別の例を示す。カテーテル12は図5のカテーテルと類似しており、ただし、電極34は、米国特許第9,242,088号(本明細書に参照により組み込まれる)に記載のように、カテーテル12の表面上に印刷される導電性インク(例えば、銀、金、グラフェン、またはポリマーもしくは他の媒体中に浮遊する炭素フレーク)により形成されることができる。これらの導電性インクは、カテーテル12に直接載置されて接着され、露出した電極34を除いて、外側ポリウレタンまたは他の可撓性かつ絶縁性を有するフィルムによって封止される。露出した電極34は、電気的特性(例えば、導電性や表面積)の向上、耐食性の付与、有毒となり得る銀酸化物形成の可能性の低減などの1つ以上の目的のために被覆される(例えば、窒化チタンで被覆される)。図6に示すように、遠位電極の導電性インクトレースは、カテーテル12に沿ってより近位の電極34を越えて近位側に進むことができる。図6は、以下で詳述する、カテーテル12の遠位端に超音波振動子54を有するカテーテル12を更に示す。
【0042】
詳細なシステムの構成要素
図7は、システム10の種々の構成要素のブロック図を示す。電極34a~34j、ハブ36及び管腔38、40、42、58及び60は、本明細書に記載のカテーテル12の一部であり得る。カテーテル12は、任意の数の電極及び任意の数の管腔を有し得る。5つの管腔が図7に示されるが、異なる例で、カテーテルは1、2、3、4つまたは5つ以上の管腔を含むことができる。一例で、カテーテル12は3つの管腔(例えば、拡張管腔38、40、42及び対応する内部管腔)を有することができ、そこで、それぞれは、ガイドワイヤまたは光ファイバカメラのうちの1つ以上を保持することができる、または流体送達または血液試料抽出のために使用され得る(囲み43)。別の例で、カテーテル12は4つの管腔を含むことができ、そこで1つの管腔58は圧力センサ90を保持している、またはそれと流体連通して、1つの管腔60は血液ガスセンサ62を保持している、またはそれと流体連通して、他の2つの管腔は、ガイドワイヤまたは光ファイバカメラを保持する、及び/または流体送達もしくは血液試料の抽出のために使用される。システム10の任意の管腔は、本明細書に記載の装置(例えば、センサ、ガイドワイヤ、光ファイバカメラ)のいずれかを含むことができる、またはそれと流体連通していることができる、及び/または本明細書に記載の機能(例えば、流体送達、血液試料の抽出)のいずれかのために使用され得る、ことを理解すべきである。
【0043】
システム10はコントローラ64を含むことができ、それは、本明細書に記載の制御装置のいずれかの一部であり得る。システム10の構成要素のそれぞれはコントローラ64に操作可能に連結することができ、コントローラ64は、神経刺激の間、電極34の動作を管理することができ、種々のセンサ及び電極34による情報の収集を制御することができ、流体送達または抽出を制御できる。本明細書に記載の種々のモジュールがコンピュータシステムの一部でもよく、例示目的のためだけに図7で切り離されており、モジュールが物理的に分離されている必要はないことを理解すべきである。
【0044】
電極34a~34jはスイッチング電子機器56に電子的に連結でき、それはコントローラ64と通信可能に連結できる。図7に示すように、電極34の一部は遠位電極34a~34dでもよく、電極34の一部は近位電極34g~34jでもよい。他の電極34(例えば、電極34e及び電極34f)は、近位電極と遠位電極の間に配置されることができ、カテーテル12の配置に応じて、左右の横隔神経26、28のいずれかを刺激するために使用され得る。ハブ36も、スイッチング電子機器56に接続することができ、電極として使用され得る。
【0045】
電極34a~34jは、電気的に神経を刺激することと、生理学的情報を収集することと、の両方のために使用できる。神経刺激のために使用されるとき、第1の電極の組み合わせ(例えば、1、2、3つ以上の電極)は、第1神経(例えば、右横隔神経)の刺激のための第1刺激モジュールチャネル70に電気的に連結されることができ、第2の電極の組み合わせ(例えば、1、2、3つ以上の電極)は、第2神経(例えば、迷走神経)の刺激のための第2刺激モジュールチャネル72に電気的に連結されることができる。電気信号は、電極に神経を刺激させるために、第1及び第2刺激モジュールチャネル70、72から電極の組み合わせまで送られることができる。他の例で、2つ超の電極の組み合わせ(例えば、3つ、4つ以上)は、1つ以上の標的神経を刺激するために使用でき、システム10は2つ超の刺激モジュールチャネルを含むことができる。
【0046】
電極34a~34fは、更に後述するように、患者からの生理学的情報(例えば神経活動、ECGまたは電気インピーダンス)を検知するように更に構成されることができる。検知のために使用されるとき、1つ以上の電極34a~34fは信号獲得モジュール68に電子的に連結できる。信号取得モジュール68は、電極34から信号を受け取ることができる。
【0047】
スイッチング電子機器56は、電極34を、第1刺激モジュールチャネル70、第2刺激モジュールチャネル72または信号獲得モジュール68に選択的に連結できる。例えば、電極34(例えば、電極34a)が信号(例えば、ECG信号)を獲得するために使用される場合、その電極34は、スイッチング電子機器56を介して信号取得モジュール68に連結されることができる。同様に、一対の電極(例えば、電極34b及び電極34d)が右横隔神経28を刺激するために使用される場合、それらの電極は、スイッチング電子機器56を介して第1刺激モジュールチャネル70に連結されることができる。最後に、一対の電極(例えば、電極34g及び電極34h)が左横隔神経26を刺激するために使用される場合、それらの電極は、スイッチング電子機器56を介して第2刺激モジュールチャネル72に連結されることができる。スイッチング電子機器56は、どの電極34を刺激のために使用するか、どれを任意の所定時間に検知のために使用するかを変えることができる。一例にて、任意の電極34を神経刺激のために使用でき、任意の電極34を本明細書に記載の検知機能のために使用できる。すなわち、各電極34は神経を刺激するように構成されることができ、各電極34は生理学的情報を検知するように構成されることができる。
【0048】
信号獲得モジュール68は、患者から生理学的情報を収集するように構成される1つ以上のセンサに更に連結できる。例えば、システム10は、血液ガスセンサ62または圧力センサ90のうちの1つ以上を含むことができる。これらのセンサは、カテーテル12の管腔中に、管腔と流体連通して患者の外側に、カテーテル12の外面上に、または他の任意の好適な位置に置かれることができる。一例にて、血液ガスセンサ62は、管腔60中に収納される、またはそれと流体連通することができ、一方で圧力センサ90は管腔58中に収納される、またはそれと流体連通することができる。血液ガスセンサ62は、患者の血液中のOまたはCOの量を計測できる。圧力センサ90は、患者の中心静脈圧(CVP)を測定できる。
【0049】
信号獲得モジュール68は、電極34、血液ガスセンサ62及び/または圧力センサ90のうちの1つ以上から受信される信号を、システム10の適切な処理フィルタリングモジュールに送ることができる。例えば、圧力センサ90からの信号は、中心静脈圧信号処理/フィルタリングモジュール84に送られることができ、そこで信号は、CVP情報の解釈に役立つように処理されて、フィルタリングされる。同様に、血液ガスセンサ62からの信号は、血液ガス濃度を決定する処理及びフィルタリングのために、血液ガス信号処理/フィルタリングモジュール86に送られることができる。検知のために使用されるとき、電極34からの信号は、必要に応じて、神経信号処理/フィルタリングモジュール80、ECG信号処理/フィルタリングモジュール82またはインピーダンス信号処理/フィルタリングモジュール88に送られることができる。電極34または他のセンサからの信号は増幅モジュール78に送られて、必要に応じて、適切な処理/フィルタリングモジュールに送られる前に信号を増幅できる。
【0050】
コントローラ64は更にディスプレイ74と接続することができ、それはユーザインタフェースとして機能することができ、タッチスクリーン18を有することができる(図1を参照)。システム10はソフトウェア/ファームウェア76を更に含むことができ、それは本明細書に記載の種々の機能を実行するために必要な指示を含むことができる。最後にシステム10は、カテーテル12の動作を検知する間に収集した情報を格納するための及び/または本明細書に記載の機能のいずれかを実行するためのモジュールまたは指示のいずれかの動作に関連した指示を格納するためのデータ記憶装置79を含むことができる。カテーテル12は固有の識別機能(例えば、RFID)を含有することができ、及び本明細書に記載のシステム10(例えば、コントローラ/プログラマー14、14’、14”、98、64のうちの1つ以上を有する)が同時に複数の患者を処置するために使用される場合、カテーテルの識別機能により、システム10が独自に各患者を識別して、患者の格納した患者データにアクセスするのが可能になり得る。
【0051】
カテーテルの配置
カテーテル12は、患者内にカテーテル12を配置するユーザを助けることができる、様々な位置決め機能を含むことができる。いくつかの位置決め機能は、視覚化補助(例えば、図5に示す光ファイバカメラ46または図6に示す超音波振動子54)であり得る。他の位置決め機能は、生理学的パラメータを検知するセンサでもよい(例えば、圧力センサ90)。電極34(神経を刺激するために使用できる)も、カテーテル12を配置するためにその後に使用できる、情報を収集するセンサとして使用され得る。例えば電極34は、神経活動(例えば、左右の横隔神経)、ECG信号及び/またはインピーダンスに関連した情報を収集できる。したがって、検知電極34は、位置決め機能と考えられ得る。位置決め機能のそれぞれ及びそれらがカテーテル12の配置を助けるためにどのように使用されるかを、更に下で詳述する。
【0052】
カテーテル12は、様々な種類の情報を検知できる1つ以上の視覚化補助、センサ(例えば、圧力)または電極を含む、位置決め機能の任意の組み合わせを含むことができる。同様に、本明細書に記載の制御装置は、カート上、患者への装着型または無線かどうかにかかわらず、本明細書に記載の種々の位置決め機能(例えば、視覚化補助、センサ及び電極)によって収集した情報を処理するように、及び本明細書に記載の種々のコンピュータ化された機能を実行するように、構成されることができる。
【0053】
図5に戻って、光ファイバカメラ46は、一時的に拡張管腔38及びカテーテル12内のその対応する内腔内に、またはカテーテル12に一体化された永続的な構成要素として配置されることができる。光ファイバカメラ46が拡張管腔38、40、42及び内腔のいずれか内に挿入されることができ、ポート48、50、52のいずれかを出ることができることを理解すべきである。光ファイバカメラ46は、患者内のカテーテル12の位置決めの補助するために使用することができる。例えば光ファイバカメラ46からの画像は、処置の間、医療従事者または他のユーザにリアルタイムで送信されることができ、その人は、患者の血管を通してカテーテル12を誘導する及び/または血管内のカテーテルの位置を調整するために画像に頼ることができる。
【0054】
図6に戻って、超音波振動子54は、患者内でのカテーテル12の位置決めに有用な情報を得るために、光ファイバカメラ46に加えてまたはそれの代わりに使用することができる。超音波振動子54は、図6に示すように一時的にもしくは永久にカテーテル12の外側に固定されることができる、またはカテーテル12の内腔内に一時的もしくは永久に配置されることができる(例えば、カテーテル12の管腔の遠位端から延在するように配置される)。カテーテル12の遠位先端の近くに超音波振動子54を配置することにより、ユーザが血管の内部を見るのを可能にし得て、更にカテーテル12の先端が望ましくない位置に(例えば、心臓の心房内に)配置されないことを確実にするのを可能にし得る。例えば、超音波振動子54は心臓弁の視覚化を可能にすることができ、それはカテーテル12が心房に入り、引っ込める必要があり得ることを示すことができる。
【0055】
ユーザが患者の血管の内部を見るのを可能にすることに加えて、超音波画像は、血管の直径及び/または血管内の血流に関する(例えば、計算したまたは視覚的)情報を提供できる。それからユーザは、所望の位置にカテーテル12を配置するために、血管の直径情報、血流及び患者の血管のリアルタイム画像を使用できる。
圧力センサ90からのCVP測定値は、患者内へのカテーテル12の配置を更に補助することができる。正常値は、4~12cmHOの間を変化できる。CVPの波形は、患者の心臓に対する圧力センサ90と接続するポート(例えば、46、48または50)の位置に基づいて変化し得る。一例にて、CVP測定値は、関連するポートが患者の心臓に接近するにつれて減少し得る。ユーザは、患者の心臓に対して所望の位置へカテーテル12を配置するのを助けるために、変化するCVPの波形を読むことができる。
【0056】
CVPの波形は、いくつかの要素を有する。(a)波は右心房収縮に対応して、ECG上のP波と相関する。(c)波は、右心室が収縮し始める際、心房を通って後方に突出する三尖弁尖に対応する。(c)波は、ECGのQRS複合の端と相関する。(x)谷は右心室の動きに対応し、それが収縮する際に下降する。下降する動きは、右心房の圧力を低下させる。この段階で、心房の拡張期弛緩もあり、それは右心房圧を更に減少させる。(x)谷は、ECG上のT波の前に生じる。血液が右心房を満たして、三尖弁に達すると、(v)波が生じて、背圧波を引き起こす。(v)波は、ECGのT波の後生じる。(y)谷は、心室拡張期の初めの三尖弁開放によって生じる血圧低下であり、ECGのP波の前に生じる。a、c、x、v、yの振幅は、心臓に対するカテーテルの位置に応じて変化し得る。CVP波形の著しい変化は、カテーテル12の配置でガイドになる。
【0057】
一例にて、血管内カテーテル12を配置する方法は、カテーテル12を患者の静脈系の第1位置に配置することであって、そこでカテーテル12は、複数の電極34、及びカテーテル12の近位端からカテーテル12の遠位端まで延在する少なくとも1つの管腔を含み、複数の電極34のうちの各電極34は、神経を刺激するために、電気信号を発するように構成されている、前記配置することと;少なくとも1つの管腔に流体連通している圧力センサ90を使用して、患者の中心静脈圧を測定することと;中心静脈圧に基づいて、カテーテル12を第1位置とは異なる第2位置に調整することと;を含むことができる。
【0058】
電極34によって獲得された神経信号は、患者内のカテーテル12の位置決めを補助するためにも使用することができる。神経からの電気信号は、増幅モジュール78により増幅されることができ、神経信号処理/フィルタリングモジュール80により処理されることができる。それから、1つ以上の電極34からの増幅及びフィルタ処理された信号は、標的神経(例えば、左右の横隔膜神経)からの予想信号と比較されて、標的神経のすぐ近くにある電極34を識別して、神経刺激のために最適な1つ以上の電極を識別することができる。例えば、より強力及び/またはより高品質な信号を戻す電極34は、標的神経の近くに位置できる。
【0059】
更に具体的には、横隔神経の活性は、双極または単極電極を使用して記録されることができる。横隔神経放電は増幅されて、フィルタ処理されることができ(例えば、100Hz~5kHz)、移動平均は、時定数20または50ミリ秒による三次Paynterフィルタを使用して得ることができる。横隔神経放電は、スペクトル組成の解析のために10Hz~5kHzでフィルタ処理されることもできる。1~10kHzのサンプリング速度は、神経活性を獲得するために使用できる。
【0060】
神経活動の検知中に得られるパラメータは、信号が横隔神経からかまたは別の神経からかを検知するために使用できる。検知したパラメータは、多くの生理学的パラメータ(例えば、振幅、吸気期間及び/または呼吸数)を含むことができる。例えば、検知した振幅が神経に対する電極34の近接度を示し、神経が横隔神経である場合、列のパルスの期間は検知した吸気期間に整合しなければならず、列の周波数は検知した呼吸数に整合しなければならない。更に、神経からの検知信号は、神経信号が所望の神経からであることを確認するために、周知の神経シグネチャ(例えば、横隔神経の)と比較されることができる。
【0061】
電極34(例えば、2つまたは3つ)は、ECG信号を獲得するために使用することができ、そこでハブ36は任意で基準電極として使用される。ECG信号(例えば、形態、振幅及びスペクトル成分)は、患者の心臓に対する、信号を測定するために使用する電極の位置に応じて変化し得る。カテーテル12が配置される際にECG信号の変化を監視することは、所望のまたは望ましくない配置を識別するのを助けることができる。例えば、カテーテル12が患者の心臓の心房に置かれることは望ましくない場合がある。
【0062】
一例にて、カテーテル12上の遠位電極34のうちの1つは、プローブとして示されることができる。カテーテル12の長さに沿った、場合によっては患者の皮膚と接触する他の電極は、ECG信号を検知するために使用することができ、それは所望によりスクリーン18を介して制御装置14に表示されることができる。カテーテル12は、上大静脈24を通って心臓に向かって前進できる。カテーテル12が右心房に近接する領域に入る、または右心房に入る際、ECGのP波部は上昇して、増大したピーク状P波を生じさせることができ、カテーテル12の先端が右心房中にある、またはそれに非常に近いことを示す。オペレータはP波の変化を観察できる、または制御装置14は、変化を検知して、映像、音声または他の信号をオペレータに提供するためのアルゴリズムを利用できる。例えば、カテーテルハブ36、制御装置14または遠隔コントローラ16のLEDは、P波の変化がカテーテル12が接近して、そうして右心房内に配置されることを示すように、緑色から黄色に、そして赤色に変化できる。それからカテーテル12は、P波が減少し始めるまで、ゆっくり引き出されることができる。そうしてカテーテル12は、更に1~2cm引き出されることができ、それによりカテーテルの先端を上大静脈24の遠位部に配置する。
【0063】
この例で、P波の陽性動揺は電流が探査電極に流れるときに生じ、陰性動揺は流れ出るときに生じる。P波は、上大静脈24の電極34から離れて、SA結節から右心房に下りて減極し、したがって陰性である。P波の振幅は逆二乗則に関連しており、それによって、振幅は電流源からの距離の二乗に反比例する。したがって、カテーテル12が心房に接近するにつれて、P波は陰性振幅が著しく増加する。先端が心房に入るとき、それはSA結節をわずかに越えており、P波の第1部分はその方向に減極する。これにより、わずかに小さな陽性動揺の後に、すぐに深い陰性動揺が続く。
【0064】
あるいは、電極34の遠位の組み合わせ(例えば、遠位の一対)及び電極34の近位の組み合わせ(例えば、近位の一対)は、P波を有する遠位及び近位ECG信号をそれぞれ得るために使用できる。P波は標準信号処理技術を使用して比較することができ、デルタ値は、カテーテル12が血管(例えば、上大静脈24)を通って心臓に向かって前進する際に測定できる。カテーテル12が心房のすぐ近くに、またはその中に前進すると、デルタ値は著しく変化して、所定の値を超える。システム10は、以前に記載されているように指標をオペレータに提供することができ、カテーテル12は1~2cm引っ込められることができる。この方法は、カテーテルの長さに沿って位置する、または患者の身体に外部から配置される1つ以上の基準電極34も利用できる。
【0065】
電極34はインピーダンスを測定するためにも使用でき、それは、カテーテル12の位置決めに関連する情報を提供できる。インピーダンスは、カテーテル12の任意の2つの電極34の間で測定され得る。しかし一例で、インピーダンスは、a)最も近位の電極34またはハブ36のいずれかとb)最も遠位の電極の間で測定されることができる。
【0066】
流された電流に提示されるインピーダンスは、一対の検知電極34の間の局部領域の流体または隣接組織の伝導率に依存し得る。伝導率は、送信電極34の部位の血管の断面積に更に依存し得る。電極34のインピーダンスは、それが載置されている媒体によって変化し得る。例えば、比較的大量の導電性流体の領域に置かれる電極34は、血管壁に載置されているものより低いインピーダンスを有することができる。したがって電極34のインピーダンスは、それが血管壁と隣接しているか、または大量の導電性流体中にあるかを判断するために使用できる。
【0067】
一例にて、カテーテル12が患者内に挿入されるとき、カテーテル12の近位部が血管の流体に置かれるのではなく挿入部位近くの組織(例えば、脂肪質)に配置され得るので、カテーテル12の近位部にある電極34は他の電極34より高いインピーダンスを有することができる。血管の直径が大きくなる(例えば、血管が上大静脈24に近づく)場合、カテーテル12の中心部に向かってカテーテル12の軸を下がる電極34は、徐々に低いインピーダンスを有し得る。上大静脈24の流体に浮いているカテーテル12の一部上の電極34は、低いインピーダンスを有する場合がある。カテーテル12の先端のまたはその近くのカテーテル12の遠位部の電極34は、血管壁と直接接触している場合があり、したがってより高いインピーダンスを有し得る。インピーダンスがカテーテル12の各先端で高くなり得て、カテーテル12の中心部に向かって低くなり得る場合、この例の電極34のすべてのインピーダンスのグラフはU字型の湾曲を有することができる。患者の血管を通って前進する際の電極34のインピーダンスの変化は、その電極34の位置に関する情報を提供できる。更に、カテーテル12の長さに沿った電極34のインピーダンスの違いは、カテーテル12の配置に関する情報を提供できる。
【0068】
一例にて、カテーテル12は直径が異なる血管に置かれることができ、そこで遠位電極34は所望の血管に(例えば、上大静脈24に)置かれている。より近位の異なる電極のインピーダンスは、静脈系のそれらの位置に応じて変化すると予想される。一例にて、カテーテル12は、所望の位置に置かれるとき、1)電極34が血管(例えば、上大静脈24)の壁に接近する際、インピーダンスが低下する電極34、及び2)所望の形状を有するインピーダンスプロファイルを有する電極34を含むと予想される。一例にて、測定したインピーダンスは、1つ以上の電極34が適切に配置されているかを判断するために、データ記憶装置79に格納されるインピーダンス閾値またはプロファイルと比較されることができる。
【0069】
別の例で、カテーテル12が上大静脈24を通って心房に向かって前進する際、遠位電極のインピーダンスは近位電極のインピーダンスと比較されることができる。遠位電極が心房に入る際、遠位と近位インピーダンス測定値の間の差は、オペレータへ表示を提供するのをシステム10に許可する、所定の閾値を超える場合がある。それからカテーテル12は、所望の位置に引き出されることができる(または、用途に応じて前進することができる)。当技術分野で公知の信号フィルタリング、処理及び解析技術は、リアルタイムでインピーダンス測定値を評価するために使用できる。
【0070】
過小挿入のカテーテル12は所望の血管(例えば、上大静脈24)中に置かれる電極34をほとんどまたはまったく有していない場合があり、それは、所望の形状とは異なる形状を有する電極インピーダンスプロファイルをもたらす。更に、過剰挿入のカテーテル12は心房の近くにまたはそれと接触する1つ以上の電極34を有する場合があり、それも、所望の形状とは異なる形状を有するインピーダンスプロファイルになり得る。一例にて、カテーテル12が患者内に挿入されて、電極34が患者の静脈系を通って移動する際、1つ以上の電極34のインピーダンスは監視される。インピーダンスプロファイルの変化は、挿入を実施する医療従事者に表示されることができ、インピーダンスプロファイルはカテーテル12の適切な設置を確認するために使用できる。
【0071】
一例にて、血管内カテーテル12を配置する方法は、カテーテル12を患者の静脈系の第1位置に配置することであって、そこでカテーテルは複数の電極34を含み、複数の電極34のうちの各電極34は、横隔神経を刺激するために電気信号を発するように構成されている、前記配置することと;複数の電極34の第1電極34と第2電極の間のインピーダンスを測定することと、測定したインピーダンスに基づいて、カテーテル12を第1位置とは異なる第2位置に調整することと;を含むことができる。
【0072】
他の例にて、カテーテル12は、歪み計及び/または加速度計(図示せず)を含むことができる。歪み計または加速度計は、管腔の1つ中のカテーテル12の遠位端にまたはその近くに配置されることができる。歪み計はカテーテル12の遠位部の屈曲を検知することができ、加速度計はカテーテル12の遠位部の移動/加速を検知できる。歪み計及び/または加速度計からの情報は、カテーテル12の遠位端が心房中にあるかどうかを判定するために使用できる(例えば、鼓動によって、カテーテル12の遠位端の移動が生じる場合がある)。歪み計または加速度計は、カテーテル12の一体化した永続的部分であり得る、またはカテーテル12の位置決めの間、一時的にカテーテル12の管腔に配置されることができる。
【0073】
電極の選択及び刺激パラメータの決定
電極34を検知することにより得られる神経信号は、神経刺激のための電極34を選択するために使用できる。標的神経に近い電極34はより高い振幅を有する神経活性を検知でき、一方で、標的神経から遠い電極34は低い振幅を有する神経活性を検知できる。強力な横隔膜の反応が求められる場合、神経に近い電極34は、受信した神経活性信号に基づいて決定されるように、神経刺激のために選択されることができる。また、弱い横隔膜の反応が求められる場合、神経から遠い電極34は、受信した神経活性信号に基づいて決定されるように、神経刺激のために選択されることができる。
【0074】
例えば横隔神経のための通常の神経信号は、異なる特徴(例えば、スペクトル特性及び経時的な変調)を有するパターンに従う。神経刺激用の電極34を選択するために、異なる電極34から検知した神経信号は、そのスペクトル及び時間的特性について解析されることができる。通常の横隔神経活性に整合する検知した信号パターンを有する電極34のうち、最適な電極34は、信号の振幅及び信号が典型的なパターンにどのくらい強力に相関しているかに基づいて選択されることができる。一例にて、高速フーリエ変換は、準リアルタイムで基準信号に相関する因子を提供するために使用できる。他の例では、検知信号は、横隔神経信号の典型的特徴に基づいて、目的の周波数範囲に周波数フィルタ処理して、目的の周波数範囲の活性の期間またはバーストを観察するために経時的に解析される周波数であり得る。
【0075】
一例にて、神経刺激のために1つ以上の電極を選択する方法は、a)左鎖骨下静脈22または左頸静脈32のうちの少なくとも1つ、及びb)上大静脈24内に血管内カテーテル12を挿入することであって、そこでカテーテル12は複数の電極34を含み、複数の電極34のうちの各電極34は、神経を刺激するために電気信号を発するように構成されている、前記挿入することと;神経から発せられたECG信号を獲得するために複数の電極34のうちの1つ以上の電極34を使用することと;獲得した電気信号に基づいて、神経刺激のための電極34または電極の組み合わせを選択することと;選択した電極34または電極の組み合わせを使用して、神経を刺激することと;を含むことができる。
【0076】
処理した神経活性波は更に、神経刺激のパラメータを決定するために使用できる。処理した波形は、固有の呼吸数(例えば、患者が自分自身で呼吸することを試みる場合)及び神経信号振幅に関する情報を提供できる。刺激パラメータは、以前に刺激した呼吸の呼吸数(例えば、検知電極により検知される際に呼吸を増減するために)、及び以前の呼吸の間に刺激から生じた神経活性(例えば、刺激の強さを増減するために)に基づいて調整されることができる。調整され得る種々のパラメータは、刺激パルス振幅、刺激パルス幅、刺激パルス周波数、刺激期間、及び刺激/パルス列の間の間隔(例えば、刺激された呼吸数)を含む。したがって、検知した神経活性信号は、閉ループシステムで神経刺激パラメータを決定して、調整するために使用できる。
【0077】
インピーダンス情報は、神経刺激パラメータ(例えば、刺激パルス振幅、刺激パルス幅、刺激パルス周波数、刺激期間、及び刺激/パルス列の間の間隔(例えば、刺激された呼吸数))を調整するために、患者の呼吸数を決定するために使用できる。肺組織の電気インピーダンスは、空気含有量に応じて変化する。したがって、胸郭の電気インピーダンスは、吸気及び呼気の間で変化する。胸郭は、2つの要素、比較的一定値及び変化値を含む電気インピーダンスを示す。インピーダンスの変化は、吸気の間、以下の2つの影響から生じる場合がある。1)液量に関連する胸部のガス量の増加があり、それは伝導率の減少をもたらす場合がある。2)肺が膨らむとき、電気伝導路の長さ(例えば、2つの電極の間)は増加する。これらの影響は、吸気の間、インピーダンスを増加させる場合がある。インピーダンス変化と人工呼吸した空気量の間にはほぼ線形の相関がある。インピーダンス(すなわち、人工呼吸インピーダンス)の様々な成分は、電流が注入されるとき(例えば、電極34によって)様々な電圧成分を生成する。それからこの様々な電圧成分は、ヒトの呼吸数を判定するために使用することができる。
【0078】
血液ガスセンサ62からの情報は、刺激パラメータを調整するために、医療従事者によって、またはコントローラ64によって使用されることができる。例えば、血液O濃度が低い(または、血液CO濃度が高い)場合、コントローラ64は電極34に信号を送って、より高い電荷(振幅×パルス幅)または周波数を有する刺激信号を発することができ、呼気呼吸を刺激できる。反対に、血液O濃度が高い(または、血液CO濃度が低い)場合、コントローラ64は、電極34に低電荷または周波数を有する刺激信号を発させる場合がある。血液ガスセンサ62からの情報に基づいて、以下のパラメータ、刺激パルス振幅、刺激パルス幅、刺激パルス周波数、刺激期間、及び刺激/パルス列の間の間隔(例えば、刺激された呼吸数)を調整できる。
【0079】
本明細書に記載のパラメータのいずれかを調整するために、刺激パルス振幅、幅及び/または周波数を増加させることは、刺激された呼吸の間、肺気量を増加させることができる。刺激期間を増加させることは、肺気量を増加させることができ、及び/または刺激した呼吸の間、空気が肺に残るときの量を増加させることができ、延長したガス交換期間を可能にする。刺激した呼吸数を増加させることは、特定の期間にわたる追加のガス交換期間を可能にすることができ、それはガス交換の量及び/または速度を増大することができる。
【0080】
本明細書に記載のシステム10及びカテーテル12は、検知機能の任意の組み合わせを含むことができる。例えば、カテーテル12はECG、インピーダンス、神経活性、血液ガス濃度及びCVPを検知するように構成されることができ、システム10は、カテーテル12を配置する、刺激のための電極34を選択する、センサまたは電極34によって受信した1つ以上の種類の情報に基づいて刺激パラメータを選択するように構成されることができる。
【0081】
したがって、システム10の種々の視覚化及び検知機能は、経血管カテーテルを配置すること、神経刺激のための最適な電極を選択すること、または神経刺激のためのパラメータを選択するもしくは調整することのうちの1つ以上でユーザを助けることができる。
【0082】
本開示の趣旨が、特定の出願の例示の実施形態に関連して本明細書で記載されると共に、前記開示がそれらに限定されないことを理解すべきである。当技術分野で周知の技術及び本明細書で提供する教示へのアクセスを有する者であれば、追加の変更、用途、実施形態及び等価物の置換のすべてが本明細書に記載の実施形態の範囲内にあることを理解するであろう。したがって本発明は、上述の説明によって制限されるとみなされるべきではない。
図1
図2
図3
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図7