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特許7175038イソトレチノイン製剤ならびにその使用および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】イソトレチノイン製剤ならびにその使用および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/203 20060101AFI20221111BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A61K31/203
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61K47/10
A61K47/14
A61P17/00
A61P17/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021084613
(22)【出願日】2021-05-19
(62)【分割の表示】P 2018542677の分割
【原出願日】2016-10-26
(65)【公開番号】P2021121617
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】62/248,760
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/301,759
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519175547
【氏名又は名称】ティンバー ファーマシューティカルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ローム,ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス,チャールズ ロドニー グリーンアウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,マーク バリー
(72)【発明者】
【氏名】カゼルタ,フランチェスコ
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-185925(JP,A)
【文献】特表平07-501536(JP,A)
【文献】Int J Pharm,2008年,Vol.352, No.1-2,p.123-8
【文献】PubMed Abstract PMID 7688204,1993年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/203
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/107
A61K 47/10
A61K 47/14
A61P 17/00
A61P 17/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソトレチノイン、PEG400、PEG3350、PEG1450、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む医薬組成物であって、0% w/wのエタノールおよび0% w/wの水を有し、ゲル、軟膏、ローション、乳剤、またはクリーム剤として製剤化される、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記イソトレチノインの濃度が、約0.01% w/wから約0.6% w/wである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記イソトレチノインの濃度が、約0.01% w/wから約0.2% w/wである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
約67% w/wから約70% w/wのPEG400、約15% w/wのPEG3350、約15% w/wのPEG1450、またはこれらの組み合わせを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記イソトレチノインの濃度が、約0.01% w/w、約0.025% w/w、約0.05% w/w、約0.1% w/w、約0.15% w/w、または約0.2% w/wである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
約0.1% w/wのBHTを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
約69% w/wから約70% w/wのPEG400を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
皮膚障害の治療に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
皮膚障害の治療のための医薬の製造に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記皮膚障害が、角質化の障害により引き起こされる、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
先天性魚鱗癬の治療に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
先天性魚鱗癬の治療のための医薬の製造に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記先天性魚鱗癬が、尋常性魚鱗癬、X連鎖魚鱗癬、層状魚鱗癬、先天性魚鱗癬様紅皮症、表皮融解性魚鱗癬、変異性紅斑角皮症、先天性爪肥厚症、掌蹠角化症、ハーレクイン型魚鱗癬、レフサム病、コンラーディ・ヒューネルマン症候群、CHILD症候群 、紙吹雪状魚鱗癬、表皮融解性母斑、ロリクリン角化症、フォーウィンケル疾患、およびシェーグレン・ラルソン症候群からなる群から選択される、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
皮膚障害の治療のための医薬の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
前記皮膚障害が、角質化の障害により引き起こされる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
先天性魚鱗癬の治療のための医薬の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
前記先天性魚鱗癬が、尋常性魚鱗癬、X連鎖魚鱗癬、層状魚鱗癬、先天性魚鱗癬様紅皮症、表皮融解性魚鱗癬、変異性紅斑角皮症、先天性爪肥厚症、掌蹠角化症、ハーレクイン型魚鱗癬、レフサム病、コンラーディ・ヒューネルマン症候群、CHILD症候群 、紙吹雪状魚鱗癬、表皮融解性母斑、ロリクリン角化症、フォーウィンケル疾患、およびシェーグレン・ラルソン症候群からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT国際出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2015年10月
30日に出願された米国仮特許出願第62/248,760号明細書および2016年3
月1日に出願された米国仮特許出願第62/301,759号明細書の利益および優先権
を主張する。
【0002】
本発明は、新規のイソトレチノイン製剤に関する。より詳細には、本発明は、全身への
浸透が最小限か全身への浸透が全くなく、エタノールを使用せず、または既存のイソトレ
チノインゲル製品と比較して少ないエタノールを使用し、熱力学活性が向上した、イソト
レチノイン薬の増強した標的化経皮送達システム、ならびにそれを使用する魚鱗癬および
他の皮膚状態を処置する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景技術に関する以下の考察は、単に読み手が本発明を理解する一助となるために提供
され、本発明の先行技術を記載または構成することを認めない。本PCT国際出願は、様
々な論文および公表されている製品を参照し、そのような論文および製品からの開示は、
その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
魚鱗癬は、少なくとも28の異種ファミリー、主に遺伝的皮膚疾患であり、ケラチノサ
イト(異常な角質化)の過剰な凝集により生じる、乾燥、肥厚、鱗状または薄片状の皮膚
を特徴とする。魚鱗癬および関連する皮膚型の疾患は、発症(先天性から成人の発症まで
)、病因(遺伝的対後天性)、強度(軽度から重度)、および合併症(皮膚に限定対多系
統)が異なる、幅広い状態を含む。ほとんどの場合、異常な、表皮の成熟/分化のプロセ
ス、角質層の量および質、ならびにケラチノサイト増殖動態により、皮膚のバリア機能が
異常である。米国オステオパシー皮膚科学会は、250人中1人が魚鱗癬のより一般的な
型の1つである尋常性魚鱗癬であると見積もっている。いくつかの型が後天性であり得る
が、魚鱗癬のほとんどの形態が先天性であると考えられる。これらの型としては、限定は
されないが、尋常性魚鱗癬、X連鎖魚鱗癬、層状魚鱗癬、先天性魚鱗癬様紅皮症、表皮融
解性魚鱗癬、変異性紅斑角皮症、先天性爪肥厚症、掌蹠角化症、ハーレクイン型魚鱗癬、
レフサム病、コンラーディ・ヒューネルマン症候群(Conradi-Hunermann-Happle Syndrom
e)、CHILD症候群、紙吹雪状魚鱗癬(ichthyosis en confettis)、表皮融解性母斑
、ロリクリン角化症、フォーウィンケル疾患、およびシェーグレン・ラルソン症候群が挙
げられる。現在の終生治療は、重度の魚鱗癬の処置にはあまり効果がない最も標準的なも
のを含む皮膚軟化剤、およびアルファヒドロキシ酸などの角質溶解剤からなり、特に小児
では灼熱感を生じる。しかしながら、先天性魚鱗癬には、FDAによって認可された治療
法が現在のところ存在しない。
【0005】
イソトレチノインは、レチノイドであり、重度の難治性結節性ニキビの処置のためにF
DAによって認可されている。化学的には、イソトレチノインは13-シス-レチノイン
酸であり、ビタミンAの誘導体である。イソトレチノインは、ニキビの処置のため初めて
開発され1982年に認可された。筋骨格組織および結合組織の炎症、気腫、潰瘍性疾患
、ならびに様々ながんの処置、主にHIV陽性の女性における子宮頚部腫瘍の治療、喫煙
者における肺がんの予防、および皮膚がんの予防のためのイソトレチノインの使用に関す
る多くの進行中の研究がある。神経芽細胞種、再燃性前立腺がん、白血病、高悪性度膠腫
、頭頚部がん、および多発性骨髄腫の処置におけるイソトレチノイン(通常、他の薬物と
併用する)の役割に関して、研究は近年完了したか、あるいは進行中である。イソトレチ
ノインは、グラム陰性毛包炎、難治性酒さ、顔面膿皮症、全身性扁平苔癬、乾癬、皮膚エ
リテマトーデス、閃光状ニキビ(acne fulminans)、および扁平上皮癌などの特定の皮膚状
態の処置に有用であることも分かっている。イソトレチノインは、皮膚の光老化の処置に
も使用される。さらに、イソトレチノインは魚鱗癬患者の治療に使用されているが、この
使用は経口投与による全身送達に限られており、先天性欠損症、流産、高コレステロール
およびトリグリセリド値、皮膚の乾燥またはべたつき、ならびに偽性脳腫瘍を含む、患者
への急性および慢性副作用の問題がある。例えば、John J. DiGiovanna et al., "System
ic Retinoids in the Management of Ichthyoses and Related Skin Types," Dermatol.
Ther., Vol. 26(1): 26-38 (Jan-Feb. 2013)を参照。
【0006】
イソトレチノインは、元々はカプセル剤として認可され、依然として米国ではこの剤形
でのみ入手可能である。ゲルまたはクリーム剤のイソトレチノイン製剤もまた経口投与剤
形の後に開発され、米国外のいくつかの国では入手可能である。さらに、イソトレチノイ
ンおよびエリスロマイシンを含む「イソトレキシン」として公知の製剤は、米国外で市販
されている。しかしながら、多くの局所製剤は、溶媒および浸透促進剤として高濃度のエ
タノールを含む。高濃度のエタノールは、薬物の透過性を補助する一方で、重度の皮膚刺
激および乾燥を引き起こすことがあるため、多くの既存のイソトレチノイン製剤は魚鱗癬
などの皮膚状態の処置での使用に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、イソトレチノインの既存の局所製剤の刺激作用はないが、薬物の標的化投
与を維持している、経皮投与に安全に使用することができるイソトレチノインの新規の局
所送達システムが必要である。さらに、イソトレチノイン投与と関連する全身性副作用の
リスクを減らすためまたは根絶するために、イソトレチノインの新規の局所送達システム
が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エタノールを含まないまたは現在市販されているイソトレチノイン製品より
も顕著に少ない量のエタノールを含むが、表皮および真皮へのイソトレチノインの標的化
局所送達が増強した、イソトレチノインの新規の製剤の驚くべき発見に基づく。さらに、
そのようなイソトレチノインの新規の製剤は、全身への浸透が最小限であるか、または全
くない。
【0009】
一態様では、本発明は、イソトレチノイン、少なくとも1つの浸透促進剤、少なくとも
1つの溶媒、少なくとも1つの粘度調整剤、少なくとも1つの保存剤、および水を含む医
薬組成物を含む。別の態様では、抗酸化剤も含み得る。別の態様では、医薬組成物は、ゲ
ル、軟膏、ローション、乳剤、クリーム剤、フォーム、ムース剤、液剤、スプレー剤、懸
濁剤、分散剤、およびエアロゾルからなる群から選択される。別の態様では、少なくとも
1つの浸透促進剤は、エタノール、トランスキトール、およびプロピレングリコール、ま
たはそれらの組合せからなる群から選択することができ、浸透促進剤の濃度は0% w/
wであるが12.5% w/wを超えない。別の態様では、抗酸化剤は、BHT、N-ア
セチルシステイン(「NAC」)、またはそれらの組合せであり得る。さらなる態様では
、抗酸化剤は0.1%~30% w/wの濃度で存在し得る。別の態様では、粘度調整剤
は、セチルアルコール、グリセロール、ポリエチレングリコール(「PEG」)、または
それらの組合せを含み得る。別の態様では、少なくとも1つの保存剤は、メチルパラベン
、プロピルパラベン、BHT、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。さら
なる態様では、溶媒は、PEG、プロピレングリコール、トランスキトールP、エタノー
ル、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。いくつかの態様では、浸透促進
剤は、0% w/w、2% w/w、5% w/w、もしくは10% w/w、または0
% w/wの範囲内であるが2% w/wを超えない濃度で存在し得る。さらなる態様で
は、イソトレチノインは、0.025% w/w、0.05% w/w、0.10% w
/w、0.15% w/w、および0.2% w/wからなる群から選択される濃度で存
在する。PEGに関して、PEGは、PEG200からPEG400の範囲内のものなど
、当技術分野で公知の様々な分子量の任意のPEGであり得る。さらなる態様では、PE
Gは単一のPEG(例えば、PEG3350;PEG4000)、または複数のPEGの
組合せ(例えば、PEG1450およびPEG3350)であり得る。別の態様では、少
なくとも1つの湿潤剤は、限定はされないが、尿素などを含む。さらなる態様では、少な
くとも1つの湿潤剤は、1%~40% w/wの濃度で存在し得る。別の態様では、抗炎
症化合物も含まれ得る。さらなる態様では、抗炎症化合物は、NAC、ステロイド、非ス
テロイド性抗炎症化合物、またはそれらの組合せであり得る。さらなる態様では、抗炎症
化合物は0.003%~10% w/wの濃度で存在し得る。
【0010】
別の態様では、医薬組成物は、イソトレチノイン、PEG400、水、エタノール、メ
チルパラベン、プロピルパラベン、PEG4000、およびBHTを含む形で提供され、
エタノールの濃度は0% w/wと10% w/wの間である。特定の態様では、イソト
レチノインは、0.025% w/w、0.05% w/w、0.10% w/w、0.
15% w/w、および0.2% w/wの濃度で存在し、好ましい態様では、0.2%
w/wの濃度で存在し得る。
【0011】
さらに別の態様では、医薬組成物は、約0.05% w/wから約0.5% w/wの
イソトレチノイン、約60% w/wから約65% w/wのPEG400、約6% w
/wから約12% w/wの水、約5% w/wから約10% w/wのエタノール、約
0.05% w/wから約0.5% w/wのメチルパラベン、約0.01% w/wか
ら約0.05% w/wのプロピルパラベン、約15% w/wから約20% w/wの
PEG4000、および約0.05% w/wから約0.2% w/wのBHTを含む形
で提供される。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、約0.2% w/wのイソトレチノイン、約63.4%
w/wのPEG400、約9% w/wの水、約10% w/wのエタノール、約0.
2% w/wのメチルパラベン、約0.02% w/wのプロピルパラベン、約17.0
8% w/wのPEG4000、および約0.1% w/wのBHTを含む医薬組成物を
提供する。
【0013】
さらに別の態様では、医薬組成物は、約0.2% w/wのイソトレチノイン、約62
.4% w/wのPEG400、約10% w/wの水、約5% w/wのエタノール、
約5% w/wのトランスキトール、約0.2% w/wのメチルパラベン、約0.02
% w/wのプロピルパラベン、約17.08% w/wのPEG4000、および約0
.1% w/wのBHTを含む形で提供される。
【0014】
別の態様では、本発明は、約0.1% w/wのイソトレチノイン、約62.4% w
/wのPEG400、約10% w/wの水、約5% w/wのエタノール、約5% w
/wのトランスキトール、約0.2% w/wのメチルパラベン、約0.02% w/w
のプロピルパラベン、約17.08% w/wのPEG4000、および約0.1% w
/wのBHTを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、イソトレチノイン、少なくとも1つの浸透促進剤、少なくと
も1つの溶媒、少なくとも1つの保存剤、および水を含み、エタノールの濃度が0% w
/wと10% w/wの間である治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投
与するステップを含む、先天性魚鱗癬を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、
医薬組成物は、抗酸化剤、皮膚軟化剤、粘度調整剤、およびそれらの組合せからなる群か
ら選択される少なくとも1つの成分も含み得る。いくつかの態様では、投与は経皮であり
得る。他の態様では、先天性魚鱗癬は、尋常性魚鱗癬、X連鎖魚鱗癬、層状魚鱗癬、先天
性魚鱗癬様紅皮症、表皮融解性魚鱗癬、変異性紅斑角皮症、先天性爪肥厚症、掌蹠角化症
、ハーレクイン型魚鱗癬、レフサム病、コンラーディ・ヒューネルマン症候群、CHIL
D症候群、紙吹雪状魚鱗癬、表皮融解性母斑、ロリクリン角化症、フォーウィンケル疾患
、およびシェーグレン・ラルソン症候群からなる群から選択される。特定の態様では、医
薬組成物は、約0.01% w/wから約0.5% w/wのイソトレチノイン、約60
% w/wから約65% w/wのPEG400、約6% w/wから約12% w/w
の水、約5% w/wから約12.5% w/wのエタノール、約0.05% w/wか
ら約0.5% w/wのメチルパラベン、約0.01% w/wから約0.05% w/
wのプロピルパラベン、約15% w/wから約20% w/wのPEG4000、およ
び約0.05% w/wから約0.2% w/wのBHTを含む。他の態様では、医薬組
成物は、約0.2% w/wのイソトレチノイン、約63.4% w/wのPEG400
、約9% w/wの水、約10% w/wのエタノール、約0.2% w/wのメチルパ
ラベン、約0.02% w/wのプロピルパラベン、約17.08% w/wのPEG4
000、および約0.1% w/wのBHTを含む。さらに他の態様では、医薬組成物は
、約0.2% w/wのイソトレチノイン、約62.4% w/wのPEG400、約1
0% w/wの水、約5% w/wのエタノール、約5% w/wのトランスキトール、
約0.2% w/wのメチルパラベン、約0.02% w/wのプロピルパラベン、約1
7.08% w/wのPEG4000、および約0.1% w/wのBHTを含む。さら
なる態様では、医薬組成物は、約0.1% w/wのイソトレチノイン、約62.4%
w/wのPEG400、約10% w/wの水、約5% w/wのエタノール、約5%
w/wのトランスキトール、約0.2% w/wのメチルパラベン、約0.02% w/
wのプロピルパラベン、約17.08% w/wのPEG4000、および約0.1%
w/wのBHTを含む。さらなる態様では、対象はヒトである。
【0016】
別の態様では、医薬組成物は、イソトレチノインおよび少なくとも1つの溶媒を含む。
さらなる態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの浸透促進剤をさらに含む。さらなる
態様では、少なくとも1つの浸透促進剤は、エタノール、トランスキトール、プロピレン
グリコール、およびそれらの組合せからなる群から選択される。さらなる態様では、少な
くとも1つの浸透促進剤はエタノールであり、エタノールの濃度は2% w/wを超えな
い。さらなる態様では、医薬組成物は、0% w/wのエタノールおよび/または0%
w/wの水をさらに含む。さらなる態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの保存剤を
さらに含む。さらなる態様では、少なくとも1つの保存剤は、メチルパラベン、プロピル
パラベン、BHT、およびそれらの組合せからなる群から選択される。さらなる態様では
、少なくとも1つの溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール
、およびそれらの組合せからなる群から選択される。さらなる態様では、医薬組成物は、
ゲル、軟膏、ローション、乳剤、クリーム剤、フォーム、ムース剤、液剤、スプレー剤、
懸濁剤、分散剤、またはエアロゾルとして製剤化される。
【0017】
さらなる態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含む。少なくと
も1つの抗酸化剤は、NAC、BHT、またはそれらの組合せであり得る。さらなる態様
では、NACの濃度は少なくとも0.1% w/wであるが、30% w/wを超えない
。さらなる態様では、抗炎症化合物も含まれ、抗炎症化合物は、NAC、ステロイド、非
ステロイド性抗炎症化合物、またはそれらの組合せであり得る。さらなる態様では、抗炎
症化合物は0.003%~10% w/wの濃度で存在し得る。
【0018】
さらなる態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの湿潤剤をさらに含む。少なくとも
1つの湿潤剤は尿素であり、尿素の濃度は、少なくとも1% w/wであり得るが、40
% w/wを超えない。さらなる態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの粘度調整剤
をさらに含む。少なくとも1つの粘度調整剤は、グリセロール、PEG,またはそれらの
組合せであり得る。
【0019】
別の態様では、医薬組成物は、イソトレチノイン、PEG400、PEG3350、お
よびBHTを含む。さらなる態様では、医薬組成物は、メチルパラベンおよび/またはプ
ロピルパラベンをさらに含む。さらなる態様では、イソトレチノインは約0.01%から
約0.2% w/wの濃度で存在する。さらなる態様では、イソトレチノインは約0.0
25%から約0.2% w/wの濃度で存在する。さらなる態様では、医薬組成物は、エ
タノールをさらに含み、エタノールの濃度は2% w/wを超えない。代わりに、さらな
る態様では、医薬組成物は、0% w/wのエタノールを含有する。さらなる態様では、
医薬組成物はNACをさらに含む。
【0020】
別の態様では、医薬組成物は、イソトレチノイン、PEG400、PEG3350、P
EG1450、およびBHTを含む。さらなる態様では、医薬組成物は、メチルパラベン
および/またはプロピルパラベンをさらに含む。さらなる態様では、イソトレチノインは
、約0.01%から約0.2% w/wの濃度で存在する。さらなる態様では、イソトレ
チノインは、約0.025%から約0.2% w/wの濃度で存在する。さらなる態様で
は、医薬組成物は、エタノールをさらに含み、エタノールの濃度は2% w/wを超えな
い。代わりに、さらなる態様では、医薬組成物は0% w/wのエタノールを含有する。
さらなる態様では、医薬組成物はNACをさらに含む。
【0021】
別の態様では、医薬組成物は、約0.01% w/wから約0.6% w/wのイソト
レチノイン、約67% w/wから約70% w/wのPEG400、0% w/wから
約2% w/wのエタノール、約0.2% w/wのメチルパラベン、約0.02% w
/wのプロピルパラベン、約14% w/wから約30% w/wのPEG3350、約
0% w/wから約15% w/wのPEG1450、および約0.1% w/wのBH
Tを含む。さらなる態様では、イソトレチノインの量は約0.025%から約0.6%で
ある。
【0022】
別の態様では、医薬組成物は、約0.01% w/wから約0.6% w/wのイソト
レチノイン、約67% w/wから約70% w/wのPEG400、0% w/wから
約2% w/wのエタノール、約14% w/wから約30% w/wのPEG3350
、約0%から約15% w/wのPEG1450、および約0.1% w/wのBHTを
含む。さらなる態様では、イソトレチノインの量は約0.025%から約0.6%である
【0023】
別の態様では、先天性魚鱗癬を治療する方法は、イソトレチノインおよび少なくとも1
つの溶媒を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを
含む。さらなる態様では、少なくとも1つの溶媒は0% w/wであるが、2% w/w
を超えないエタノールおよび/またはPEGである。さらなる態様では、医薬組成物は、
少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含み、少なくとも1つの抗酸化剤はBHT,NAC、
またはそれらの組合せである。さらなる態様では、投与は経皮である。さらなる態様では
、先天性魚鱗癬は、尋常性魚鱗癬、X連鎖魚鱗癬、層状魚鱗癬、先天性魚鱗癬様紅皮症、
表皮融解性魚鱗癬、変異性紅斑角皮症、先天性爪肥厚症、掌蹠角化症、ハーレクイン型魚
鱗癬、レフサム病、コンラーディ・ヒューネルマン症候群、CHILD症候群、紙吹雪状
魚鱗癬、表皮融解性母斑、ロリクリン角化症、フォーウィンケル疾患、およびシェーグレ
ン・ラルソン症候群からなる群から選択される。さらなる態様では、対象はヒトである。
【0024】
別の態様では、先天性魚鱗癬を治療する方法は、約0.01% w/wから約0.6%
w/wのイソトレチノイン、約67% w/wから約70% w/wのPEG400、
約0% w/wから約2% w/wのエタノール、約0.2% w/wのメチルパラベン
、約0.02% w/wのプロピルパラベン、約14% w/wから約30% w/wの
PEG3350、約0%から約15% w/wのPEG1450、および約0.1% w
/wのBHTを含む、治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステ
ップを含む。さらなる態様では、イソトレチノインの量は約0.025%から約0.6%
である。さらなる態様では、イソトレチノインの量は約0.025%から約0.2%であ
る。さらなる態様では、対象はヒトである。
【0025】
本明細書で使用する場合、「経皮的」投与は、全身循環へと導入するために皮膚を通る
、または経由する薬剤の輸送を意味する。
【0026】
本明細書で使用する場合、「経皮」投与は、薬剤の局所、非全身投与に感応する局所的
な皮膚疾患(先天性魚鱗癬など)の処置のための角質層を通る、ならびに真皮および/ま
たは表皮への薬剤の輸送を意味する。経皮治療向けのいくつかの薬剤は経皮的に投与され
得るが、典型的には治療に十分な量ではないことが理解される。
【0027】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」は、疾患もしくは状態(先天性魚鱗癬など)
と関連する症状を予防または軽減する、および/または疾患もしくは状態の重度を緩和す
るのに十分なイソトレチノインの量を意味する。治療有効量は、治療される状態に応じる
ものであると理解され、実際の有効量は当業者によって容易に判断される。
【0028】
本明細書で使用する場合、「イソトレチノイン」は、遊離酸の形態にあるイソトレチノ
インまたはアルカリ金属塩など、その薬学的に許容される塩を指す。イソトレチノインは
、13-シス-レチノイン酸である。トレチノイン(全トランス型レチノイン酸)および
イソトレチノインは幾何異性体であり、in vivoで可逆的相互変換を示す。1つの
異性体の投与が別のものを生じさせ得る。4-オキソ-イソトレチノインなど、イソトレ
チノインの他の主な代謝物およびその幾何異性体、4-オキソ-トレチノインも用語「イ
ソトレチノイン」と考える。
【0029】
本明細書で使用する場合、「透過率」は、皮膚を通る薬物の移行率を意味する。透過率
は、経時的なcmあたりに透過した薬物の蓄積量の直線部の傾きとして算出される。
【0030】
本明細書で使用する場合、「輸送率」は、拡散のフィックの法則により決定されるよう
に、ヒトの皮膚を通る受動薬物の輸送率を指す。物質輸送の方程式は、J=1/A(dM
/dt)=PΔC dtとして表され、Jは流束(μg cm/時間)、Aは皮膚膜の
断面積(cm)、Pは見掛け透過定数(cm 時間)、ΔCは膜を通る濃度勾配、およ
び(dM/dt)は物質輸送率である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本明細書に記載のin vitroでの薬物輸送実験において使用する、ドナー部分、レセプター部分、および採取用側枝を含むフランツセルを示す概略図である。
図2図2は、2から8時間の間にシリコーン膜を通る、イソトレックスゲル0.05%(バッチ:F1311およびF0892)と比較した本請求の組成物(「PATPO3 AN」)から送達されるイソトレチノインの平均蓄積量(μg/cm)を示すグラフである(時間は√時間として表す、平均±SE、5≦n≦6)。
図3図3は、2から8時間の間にシリコーン膜を通る、PATPO3 ANおよび比較製品イソトレックスゲル0.05%(バッチ:F1311およびF0892)から送達されるイソトレチノインの投与量の割合を示すグラフである(時間は√時間として表す、平均±SE、5≦n≦6)。
図4図4は、最終採取点(48時間)の後に、PATPO3 ANおよび比較製品イソトレックスゲル0.05%(バッチ:F0892)の適用後、皮膚層(角質層、表皮、真皮)およびレシーバー液から回収したイソトレチノインの投与量の割合を示す棒グラフである(平均±SE、n=12)。
図5図5は、イソトレックスゲル0.05%の2つのバッチからの結果と比較して、0.10%のイソトレチノインを含むPEG軟膏およびゲルからシリコーン膜を通る、24時間の実験期間に渡る単位面積あたりに送達されるイソトレチノインの平均蓄積量(μg/cm)を示すグラフである(平均±SE、n≧5)。
図6図6は、イソトレックスゲル0.05%の2つのバッチからの結果と比較して、1から8時間(時間は√時間として表す)の間にシリコーン膜を通る、0.10%のイソトレチノインを含むPEG軟膏およびゲルから送達されるイソトレチノインの単位面積あたりの平均蓄積量(μg/cm)を示すグラフである(平均±SE、n≧5)。
図7図7は、イソトレックスゲル0.05%の2つのバッチからの結果と比較して、0.20%のイソトレチノインを含むPEG軟膏およびゲルからシリコーン膜を通る、24時間の実験期間に渡る単位面積あたりに送達されるイソトレチノインの平均蓄積量(μg/cm)を示すグラフである(平均±SE、n≧5)。
図8図8は、イソトレックスゲル0.05%の2つのバッチからの結果と比較して、1から8時間(時間は√時間として表す)の間にシリコーン膜を通る、0.20%のイソトレチノインを含むPEG軟膏およびゲルから送達されるイソトレチノインの単位面積あたりの平均蓄積量(μg/cm)を示すグラフである(平均±SE、n≧5)。
図9図9は、特定の試験製剤および比較製品イソトレックスゲル0.05%の適用後、レシーバー液へと皮膚を透過したイソトレチノインの平均蓄積量(μg/cm)を示す棒グラフである(平均±SE、10≦n≦12)。
図10図10は、最終採取点(48時間)の後に、特定の試験製剤および比較製品イソトレックスゲル0.05%の適用後、皮膚層(角質層、表皮、真皮)およびレシーバー液からのイソトレチノインの回収(μg)をハイライトする棒グラフである(平均±SE、10≦n≦12)。SCは角質層を意味する。
図11A図11Aは、2から17分の間、40℃での保存後、t=0週目において、PATPO3 ANプラセボとオーバーレイした0.2% w/wのイソトレチノインを含有するイソトレチノイン製剤PATPO3 ANの安定性を示すクロマトグラムである。
図11B図11Bは、2から17分の間、40℃での保存後、t=0週目において、PATPO3 ANプラセボとオーバーレイした0.2% w/wのイソトレチノインを含有するイソトレチノイン製剤PATPO3 ANの安定性を示すクロマトグラムである。
図12A図12Aは、2から17分の間、40℃での保存後、t=4週目において、PATPO3 ANプラセボとオーバーレイした0.2% w/wのイソトレチノインを含有するイソトレチノイン製剤PATPO3 ANの安定性を示すクロマトグラムである。
図12B図12Bは、2から17分の間、40℃での保存後、t=4週目において、PATPO3 ANプラセボとオーバーレイした0.2% w/wのイソトレチノインを含有するイソトレチノイン製剤PATPO3 ANの安定性を示すクロマトグラムである。
図13図13は、最終採取点(48時間)の後に、特定の試験製剤および比較製品イソトレックスゲル0.05%の適用後、表面(製剤の残渣)、皮膚層(角質層、表皮、真皮)およびレシーバー液からのイソトレチノイン(μg)の回収を示す棒グラフである(平均±SE、10≦n≦12)。SCは角質層を意味する。
図14図14は、最終採取点(24時間)の後に、特定の試験製剤および比較製品イソトレックスゲル0.05%の適用後、レシーバー液へと皮膚を透過したイソトレチノインの蓄積量(μg/cm)を示す棒グラフである(平均±SE、10≦n≦12)。
図15図15は、最終採取点(48時間)の後に、特定の試験製剤および比較製品イソトレックスゲル0.05%の適用後、表面(製剤の残渣)、皮膚層(角質層、表皮、真皮)およびレシーバー液からの皮膚を通って浸透したイソトレチノインの量(μg)を示す棒グラフである(平均±SE、10≦n≦12)。SCは角質層を意味する。
図16図16は、最終採取点(48時間)の後に、特定の試験製剤および比較製品イソトレックスゲル0.05%の適用後、皮膚層(角質層、表皮、真皮)およびレシーバー液からの皮膚を通って浸透したイソトレチノインの量(μg)を、表面を除いて示す棒グラフである(平均±SE、10≦n≦12)。SCは角質層を意味する。
図17図17は、最終採取点(48時間)の後に、それぞれ全てのPATPO3 AN(0.2%)(左から1回目および2回目のデータセット)およびイソトレックスゲル0.05%(左から3回目および4回目のデータセット)の適用後、皮膚層(角質層、表皮、真皮)およびレシーバー液からの皮膚を通って浸透したイソトレチノインの量(μg)を示す棒グラフである(平均±SE、10≦n≦12)。SCは角質層を意味する。左から1回目(PATPO3 AN)および3回目(イソトレックス(0.05%))のデータセットは4番目の皮膚ドナーに基づくが、2回目(PATPO3 AN)および4回目(イソトレックス FO892(0.05%))のデータセットは最初の3人の皮膚ドナーに基づく。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、現在市販されている製品と比較して、全身への浸透が最小限か全くなく、エ
タノール濃度を増加させずに(またはエタノールを完全に除去して)真皮層への浸透の増
加をもたらすイソトレチノインの新規の標的化製剤、およびそれを使用する魚鱗癬の処置
方法を目的とする。
【0033】
薬物の経皮送達は多くの利点をもたらし、主に、そのような送達手段は薬物投与の快適
、便利、および非侵襲的な方法である。経口処置に見られる吸収および代謝の率の変動が
避けられ、他の固有の不便さ、例えば胃腸刺激等も同様に除かれる。さらに、他の領域(
例えば、皮下もしくは外皮(extradermal)構造および/または真皮以外の組織)への送
達と関連する重大な副作用が避けられる。
【0034】
しかしながら、皮膚は、構造的に複雑な膜である。周囲から無傷な皮膚へと移動し、通
過する分子は、まず角質層およびその表面上の任意の物質に浸透しなければならない。次
いでそれらは、生表皮、真皮乳頭層、および毛細血管壁を浸透して血流およびリンパ管に
達する。このように吸収されるには、分子は各型の組織における浸透に対する異なる抵抗
性を克服しなければならない。皮膚膜を通る輸送は、したがって、複雑な現象である。し
かしながら、局所組成物または経皮的に投与された薬物の吸収に対する最初のバリア機能
を示すのは、角質層の細胞である。角質層は、身体のほとんどを覆うおよそ10~15ミ
クロンの厚さの密な、高度に角質化された細胞の薄い層である。多くの薬物に関して、皮
膚の透過性を増強するいくつかの手段を使用しない場合、皮膚を通る透過率は極度に低い
【0035】
薬物が皮膚を通って浸透する割合を増加する手段として、多くの化学薬剤が研究されて
いる。当業者によって理解されるように、化学的促進剤は、角質層の透過性を増加するた
めに薬物と共に投与される(またはいくつかの場合、皮膚は化学的促進剤によって前処理
され得る)化合物であり、それにより皮膚を通る薬物の浸透を増強する。理想的には、そ
のような化学的浸透促進剤、またはこれらの化合物が本明細書においてそう称される「透
過促進剤」は、無害であり、単に角質層を通る薬物の拡散を促進するだけの化合物である
。多様な物理化学的特性をもつ多くの治療剤の透過性は、これらの化学的増強手段を使用
して増強され得る。しかしながら、エタノールなど、高レベルの特定の促進剤と関連する
皮膚の刺激、乾燥、および感作の問題がある。
【0036】
本明細書の新規の製剤は、刺激となるエタノール剤がないまたは刺激となるエタノール
剤を減少させたが、驚くべきことに、現在入手可能なイソトレチノイン局所ゲル製剤に対
して熱力学活性が改善したことが本明細書において示された。典型的には、薬物の透過性
に対するエタノールの影響は濃度依存的であり、経皮吸収は50% w/wのエタノール
よりも高いレベルで最適化される。実際に、既存のイソトレックスゲル製品は95% w
/wを超えるエタノールを有する。しかし、イソトレチノイン軟膏製剤の態様では、以下
の表1に示す3つの代表的な製剤は、それぞれ10% w/wより少ないエタノールを含
む。したがって、これらの新規の製剤は、イソトレチノインの表皮および真皮への送達を
増強し、皮膚の刺激および乾燥を引き起こすことはほとんどない。
【0037】
【表1】
【0038】
本明細書に記載の新規の調製物は、いくつかの態様では、ゲル、軟膏、ローション、乳
剤、クリーム剤、フォーム、ムース剤、液剤、スプレー剤、懸濁剤、分散剤もしくはエア
ロゾル、または当業者に公知の任意の他の媒体として製剤化される。好ましい態様では、
調製物はゲル、軟膏、フォーム、またはクリーム剤として製剤化される。
【0039】
ローションは、懸濁剤および分散剤の使用によって分散媒体に不溶性である細かく粉砕
した物質を含有し得る。代わりに、ローションは媒体と非混和性であり、乳化剤または他
の好適な安定化剤によって通常分散される分散相の液体物質を有し得る。いくつかの態様
では、ローションは100から1000センチストークスの間の粘度を有する乳剤の形態
である。ローションの流動性により幅広い表面領域に渡り素早く均一に適用することが可
能である。ローションは典型的には、皮膚表面にその医薬成分の薄い被覆を残して皮膚上
で乾燥することを意図している。
【0040】
クリーム剤は乳化剤および/または他の安定化剤を含有し得る。一態様では、製剤は、
1000センチストークスより大きな粘度を有するクリーム剤の形態であり、典型的には
20,000~50,000センチストークスの範囲内である。
【0041】
クリーム剤とローションの間の基本的な違いは粘度であり、それは様々なオイルの量/
使用、および製剤を調製するのに使用される水の割合によって決まる。クリーム剤は典型
的にはローションよりも濃く、様々な用途があり、皮膚に与える所望の効果に応じて、よ
り多様なオイル/バターを使用することが多い。クリーム製剤では、水性の割合は全体の
約60~75%、油性の割合は全体の約20~30%であり、全部で100%になるため
に他の割合は乳化剤、保存剤、および添加剤である。
【0042】
好適な軟膏基材の例としては、炭化水素基材(例えば、ワセリン、白色ワセリン、黄色
軟膏、および鉱油);吸収性基材(親水ワセリン、脱水ラノリン、ラノリン、およびコー
ルドクリーム);水剥離性基材(例えば、親水軟膏)、および水溶性基材(例えばPEG
軟膏)が挙げられる。ペースト剤は、典型的には固体の割合が多い軟膏とは異なる。ペー
スト剤は、典型的には、同じ成分によって調製された軟膏よりも吸収性であり、同じ成分
によって調製された軟膏ほどグリース状ではない。
【0043】
いくつかの乳剤は、ゲルであるかまたはそうでなければゲル成分を含み得る。しかしな
がら、いくつかのゲルは、非混和性成分を均質化した混合物を含有しないため乳剤ではな
い。好適なゲル化剤としては、限定はされないが、ヒドロキシプロピルセルロースおよび
ヒドロキシエチルセルロースなどの変性セルロース、カーボポールホモポリマーおよびコ
ポリマー、ならびにそれらの組合せが挙げられる。液体媒体中の好適な溶媒としては、限
定はされないが、ジグリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールなどのアルキ
レングリコール、ジメチルイソソルビド、イソプロピルアルコールおよびエタノールなど
のアルコールが挙げられる。溶媒は、典型的には薬物を溶解するそれらの能力のために選
択される。皮膚感触および/または製剤のエモリエント性を改善する他の添加剤も組み込
むことができる。そのような添加剤の例としては、限定はされないが、ミリスチン酸イソ
プロピル、酢酸エチル、C12~C15安息香酸アルキル、鉱油、スクアラン、シクロメ
チコン、カプリン酸、カプリル酸トリグリセリド、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0044】
フォームは、ガス状噴射剤と組み合わせて乳剤を含み得る。ガス状噴射剤は、主にヒド
ロフルオロアルカン(HFA)を含み得る。好適な噴射剤としては、1,1,1,2-テ
トラフルオロエタン(HFA 134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフ
ルオロプロパン(HFA 227)などのHFAが挙げられるが、これらの混合物および
混和剤ならびに現在認可されているまたは医学的用途に認可され得る他のHFAが好適で
ある。噴射剤は、好ましくは噴霧中に可燃性蒸気または爆発性蒸気を産生し得る炭化水素
噴射剤ガスではない。さらに、組成物は、好ましくは使用中に可燃性蒸気または爆発性蒸
気を産生し得る揮発性アルコールを含有しない。
【0045】
新規の調製物は、特に好ましい態様では、軟膏として製剤化される。軟膏は、典型的に
はワセリンまたは他のワセリン誘導体に基づく半固体の調製物である。当業者によって理
解されるように、使用される特定の軟膏ファンデーションは最適な薬物送達をもたらすも
のであり、好ましくは、例えばエモリエント性など他の所望の特性も同様にもたらす。他
の担体または媒体と同様に、軟膏ファンデーションは不活性、安定、非刺激性、および非
感作性であるべきである。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20thedi
tion (Lippincott Williams & Wilkins, 2000)において説明されるように、軟膏ファンデ
ーションは4つのクラス:油性、乳化性、乳剤、および水溶性にグループ分けされ得る。
油性の軟膏ファンデーションとしては、例えば、植物油、動物から得られた脂肪、および
ワセリンから得られた半固体の炭化水素が挙げられる。吸収性の軟膏ファンデーションと
しても公知の乳化性の軟膏ファンデーションは、少量の水を含有するまたは水を含有せず
、例えばヒドロキシステアリン硫酸塩、脱水ラノリン、および親水ワセリンが挙げられる
。乳剤軟膏ファンデーションは、油中水型(W/O)乳剤または水中油型(O/W)乳剤
のいずれかであり、例えばセチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリン、
およびステアリン酸が挙げられる。好ましい水溶性軟膏ファンデーションは、様々な分子
量のPEGから調製される。
【0046】
当業者に公知の様々な添加剤が、いくつかの態様では、軟膏に含まれ得る。例えば、比
較的少量のアルコールを含む溶媒が、特定の薬物物質を溶解するために使用され得る。他
の任意の添加剤としては、乳白剤、抗酸化剤、芳香剤、着色剤、ゲル化剤、増粘剤、安定
化剤、界面活性剤などが挙げられる。保存時に腐敗を防ぐ、すなわち、イースト菌および
かびなどの微生物の増殖を防ぐために、抗菌剤など他の薬剤も添加され得る。好適な抗菌
剤は、典型的にはp-ヒドロキシ安息香酸(すなわちメチルおよびプロピルパラベン)の
メチルおよびプロピルエステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、および
それらの組合せからなる群から選択される。
【0047】
いくつかの態様では、軟膏は浸透促進剤も含み得る。促進剤のクラスの例としては、限
定はされないが、飽和および不飽和の両方の脂肪酸;脂肪アルコール;胆汁酸;脂肪酸の
エステル、1価アルコール、ジオール、およびポリオールの脂肪(長鎖アルキルまたはア
ルケニル)エステル、脂肪酸によってエステル化され、ポリオキシアルキレン、ポリオキ
シアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪エーテル、ポリオキシアルキレ
ン脂肪エーテル、およびポリグリセリル脂肪酸エステルによって置換されたジオールおよ
びポリオールを含む非イオン性界面活性剤;アミン;アミド;N-アルキル-アザシクロ
アルカノンおよびN-アルキル-アザシクロアルケノン;炭化水素溶媒;テルペン;低級
アルキルエステル;シクロデキストリン促進剤;含窒素複素環;スルホキシド;ならびに
尿素およびその誘導体が挙げられる。
【0048】
好適な促進剤の特定の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Tra
nscutol(登録商標)、Gattefosse SAとして市販されている)およ
びジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル;ラウリン酸ナトリウム、ラ
ウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ポ
ロキサマー(231、182、184)、Tween(20、40、60、80)および
レシチンなどの界面活性剤;エタノール、プロパノール、オクタノール、ベンジルアルコ
ールなどのアルコール;ラウリン酸、オレイン酸、および吉草酸などの脂肪酸;イソプロ
ピルミリスチン酸、イソプロピルパルミチン酸、メチルプロピオン酸、およびオレイン酸
エチルなどの脂肪酸エステル;PEGおよびポリエチレングリコールモノラウリン酸など
のポリオールおよびそのエステル;尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド
、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミ
ン、およびトリエタノールアミンなどのアミドおよび他の窒素化合物;テルペン;アルカ
ノン;および有機酸、特にクエン酸およびスクシン酸が挙げられる。Azone(登録商
標)ならびにジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシドなどのスルホキシド
も使用され得るが、あまり好ましくない。Percutaneous Penetration Enhancers, eds. S
mith et al. (CRC Press, 1995)は、当分野の優れた概要および本発明と併せて使用が可
能な第二の促進剤に関するさらなる情報を提供する。
【実施例
【0049】
したがって、一般的に記載される本発明は、例示の目的によって提供され、本明細書に
記載される例示的な製剤および方法を限定することを意図しない以下の実施例を参照する
ことによって容易に理解されるであろう。
【実施例1】
【0050】
in vitro薬物輸送アセスメント
表1に記載のものを含む特定の製剤からのイソトレチノインの輸送プロファイルを評価
するため、in vitro薬物輸送研究を、合成膜を通して実施した。選択した製剤か
らの薬物の輸送は、FDAのSUPAC-SSガイドライン[FDA (CDER), 1997, Guidan
ce for industry - SUPAC-SS Non-sterile Semisolid Dosage Form, Scale-up and post
approval changes: Chemistry, manufacturing and controls; in vitro drug transport
testing and in vivo bioequivalence documentation]の原理に基づく方法を使用して
比較した。
【0051】
5つの濃度のイソトレチノイン(0.025、0.05、0.10、0.15、および
0.20% w/w)のそれぞれにおいて、合計6つの製剤を本明細書において評価し(
それぞれn=6)、比較製品イソトレックスゲル0.05%の結果と比較した。イソトレ
ックスゲルの合計2つのバッチを本実験において使用し、両方とも6回試験した。さらに
、イソトレックスゲル0.05%の1つのバッチをラン-ツー-ラン法の変動性を評価す
るための対照として細胞のサブセット(n=3)と共に試験した。以下のパラメーターを
用いた:レシーバー液:20%エタノール中2% Bruj:0.01% BHAを含む
80% PBS;合成膜:シリコーン;時点:t=0,1,2,3,4,6,7,8,お
よび24時間;投与:0.3gより多い。
【0052】
図5および図7は、イソトレックスゲル0.05%(F0892およびF1311の両
方のバッチ)からの結果と比較して、様々な濃度のイソトレチノインの請求項の製剤から
の薬物の輸送を示す。シリコーン膜を通るイソトレチノインの定常状態での輸送は、評価
した全ての製剤に関して投与1時間後から見られた。図6および図8は、イソトレックス
ゲル0.05%からの結果と比較して、様々な濃度のイソトレチノインの試験した原型製
剤からの1から8時間の間の定常状態での薬物の輸送をハイライトした(SUPACガイ
ドラインにおいて推奨されるように、√時間として表した)。シリコーンを通る全ての製
剤からのイソトレチノインの算出された輸送率(μg/cm/√h)を表2および表3
に報告する。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
これらの結果の統計分析は、全ての原型ゲル製剤が、SSA37(0.025%)を除
いて、イソトレックスゲル0.05%と比較してイソトレチノインの驚くべき、有意な(
p≦0.05)輸送率の増加をもたらしたことを示している。0.1、0.15、および
0.2%のイソトレチノインを含むPEG軟膏に関して、薬物の輸送は、イソトレックス
ゲル0.05%を使用する場合に測定された結果と同様(p>0.05)であることが観
察された。対照的に、イソトレックスゲルは0.025および0.05%のイソトレチノ
インを含有するPEG軟膏に関して輸送の増加をもたらすことが見出された。これはその
蒸発が薬物の熱力学活性、つまり流束を実験の期間に渡り増加させるエタノールをイソト
レックスゲルが主に含むことを考慮すると驚くことではない。
【実施例2】
【0056】
in vitro透過および浸透アセスメント
輸送実験の終了後、皮膚および皮膚層の表面上のイソトレチノインの定量を以下に記載
したように実施した:
【0057】
一般に、in vitro皮膚透過実験は、in situでの皮膚の生理学的な状態
および解剖学的な状態を模倣するように設計された拡散セルの使用を含む。この実験で使
用したモデルは、図1に記載したようにフランツの拡散セルである(ここでは、合成膜は
ヒトのデルマトーム処理した皮膚に置き換えた)。皮下脂肪は機械的に取り除き、皮膚は
Nouvag TCM 3000カッターを使用して400±100μmの厚さにデルマ
トーム処理した。ヒトのデルマトーム処理した皮膚を、角質層側を上にしてフランツセル
のドナー部分およびレセプター部分の間に置いた(図1)。各活性製剤に関して、皮膚ド
ナー(3人のドナー)あたり製剤につき4回まで反復したが、プラセボ製剤に関しては単
回のみ実施した(n=1)。
【0058】
表4は、最初の透過試験のために選択されたそれぞれの可能な浸透促進剤オプションに
関してPEG軟膏製剤を列挙する。% w/wで表されるPEG軟膏の浸透促進剤組成物
は、in vitro透過および浸透実験のために選択されたものを示す円によって示す
【0059】
【表4】
【0060】
in vitro皮膚透過実験のため、以下のパラメーターを用いた。
・レシーバー液:20%エタノール中2% Brij:0.01% BHAを含む80
% PBS
・時点:t=0,6,24,および48時間
・膜:400±100μmの厚さにデルマトーム処理したヒトの皮膚(3人の異なるド
ナー由来)
・投与量:約10mg/cm
【0061】
以下の手順を用いた:平均表面積およそ0.6cmおよび体積およそ2.0mLのフ
ランツの拡散セルを用いた。第一に、投与前に、皮膚の完全性を以下のように評価した:
(a)デルマトーム処理した皮膚(3人のドナー由来)をドナー部分とレシーバー部分の
間に乗せ、セルをパラフィルム(登録商標)およびクリップを使用して一緒に密封した。
(b)ドナーチャンバーおよびレシーバーチャンバーをPBS溶液で満たし、小型磁気従
動部をレシーバー部分に置いた。(c)32℃の膜温度を確実にするため、セルを水浴中
で30分間平衡化した(水浴温度37℃)。(d)各フランツセル内の皮膚の耐性を、L
CR 6401 Databridge(SOP 3118)を使用して測定した。(e
)電極を、採取用枝を通してレシーバー部分に、およびドナーチャンバーに置いた。(f
)LCRを100Hzに設定し、耐性については「R」に設定した。(g)許容限界を下
回る耐性のセルは捨て、再び乗せた。許容限界はデルマトーム処理した皮膚での対照の測
定に従って定義し、ここで皮膚は意図的に撹乱させた。対照の2倍より大きな耐性(KΩ
)を有するセルは許容可能と見なし、フランツセルの透過実験のために選択した。
【0062】
第二に、皮膚の完全性試験後、PBS溶液を各部分から除去し、許容可能なセルのレシ
ーバー部分をレシーバー液(20%エタノール中2% Brij:0.01% BHAを
含む80% PBS)で満たした。次いで、各セルを表面温度32℃(外側の皮膚表面温
度)に確実にするため、投与前少なくとも30分間平衡化した(水浴温度37℃)。第三
に、容積式ピペットを使用して製剤(約8mg)を1mLシリンジのプランジャーに入れ
た。製剤(6~7mg)を皮膚表面に適用し、プランジャーを使用して拡散領域に塗った
。適用前および適用後に、プランジャーの重量を記録し、セルあたりの量を算出した。第
四に、レシーバー液(200μL)を以下の時点t=0,6,24,および48時間で除
去し、HPLCを使用する分析のためHPLCバイアルに移した。第五に、新しいあらか
じめ温めたレシーバー液(200μL)を使用して、各時点で除去されるレシーバー液と
置換した。第六に、最終時点(48時間)後、フランツセルを解体し、薬物を皮膚から回
収した。
【0063】
イソトレチノインを以下のように皮膚の表面から回収した:(i)フランツセルからド
ナーチャンバーを解体後、1つの乾燥綿棒を使用して皮膚の表面から残りの製剤を除去し
、綿棒を7mLバイアルに入れた;(ii)第二の綿棒を抽出希釈液中(90:10-エ
タノール:水)に浸し、皮膚の表面を拭き取るために使用した:この綿棒は、次いで最初
の綿棒を含有するバイアルに入れた;(iii)最後の綿棒を乾燥状態で使用して皮膚の
表面を拭き取り、次いで2本の他の綿棒を含有するガラスバイアル中に入れた;(iv)
皮膚の表面からの最初のテープストリップ(D-Squame(登録商標)を使用)も、
綿棒と共に入れ、2mLの抽出希釈液(90:10 エタノール:水)を添加した;(v
)次いで、抽出を促進するため抽出溶媒中に周囲温度で少なくとも16~20時間、各バ
イアルをオービタルシェイカー上で振盪した;(vi)抽出手順後、抽出希釈液をバイア
ルから除去し、13,000rpmで10分間遠心分離して全ての溶解しなかった物質お
よび粒子を除去した;(vii)次いで、各試料からの上澄み液をHPLCバイアルに移
し、HPLCを使用して分析した。
【0064】
次いで、以下の手順を使用して角質層からイソトレチノインを回収した:(i)皮膚の
表面から全部で5つのさらなるテープストリップ(D-Squame(登録商標)を使用
)を取り、ガラスバイアル中に入れ、2mLの抽出希釈液(90:10-エタノール:水
)をそれに添加した;(ii)ステップ(i)からのバイアルを周囲の研究室温度で16
~20時間、オービタルシェイカー上で振盪した;(iii)抽出手順(ステップ(ii
))後、抽出溶液をバイアルから除去し、13,000rpmで10分間遠心分離して全
ての溶解しなかった物質および粒子を除去した;(iv)上澄み液を、HPLCによる分
析のためバイアルに入れた。
【0065】
以下により詳細に記載するように、残りの表皮および真皮を以下のように処理した:(
i)残りの表皮(5回のテープストリップの使用により角質層を除去後)を摂氏60度で
2分間、乾燥加熱によって真皮から熱分離した;(ii)表皮層および真皮層を個々のガ
ラスバイアルに入れ、2mLの抽出溶媒(90:10-エタノール:水)をこれらのバイ
アルに添加した;(iii)ステップ(ii)からのバイアルを周囲の研究室温度で16
~20時間、オービタルシェイカー上で振盪した;(iv)抽出手順(ステップ(iii
))後、抽出溶液をバイアルから除去し、13,000rpmで10分間遠心分離して全
ての溶解しなかった物質および粒子を除去した;(v)上澄み液を、HPLCによる分析
のためバイアルに入れた。
【0066】
データは以下のように解釈した:(i)データは手作業によりエクセルシートに記載し
た。レシーバー液および皮膚の角質層において検出されたイソトレチノインのレベルを、
それぞれの較正標準から算出した;(ii)試料化容積あたりのイソトレチノインの総量
(μg)を算出した(総量/試料化容積=μg/mL×試料化容積);(iii)各時点
で回収したイソトレチノインの総量(μg)を算出した(総量=μg/mL×各フランツ
セルの総容積);(iv)イソトレチノインの蓄積量(μg)を、それぞれの先の時点(
ステップ(ii))から取り除いた総量(μg)と共に、各時点での総量(μg、ステッ
プ(iii))を添加することによって算出した;(v)イソトレチノインの単位面積あ
たりの蓄積量(μg/cm)は、蓄積量(μg、ステップ(iv))を拡散面積で割っ
て算出した(μg/cm=蓄積量(μg)/拡散面積);(vi)内部手続きによって
異常値は拒否した;(vii)試験した全ての製剤からシリコーン膜を通るイソトレチノ
インの輸送率は、プロファイル「cmあたりの透過した薬物の透過した蓄積量対√t」
の直線部の傾きとして算出した(SUPACガイドラインに推奨されるように);(vi
ii)それぞれの皮膚マトリックスにおけるイソトレチノインの総量(μg)を算出した
(総量=μg/mL×抽出希釈)。
【0067】
社会科学のための統計パッケージ(SPSS)バージョン19.0(SPSS Inc
.,USA)を使用して、データの統計分析を実施した。そのような分析は、各試験製剤
および比較製品から放出されるイソトレチノインの量における有意な差を測定するために
行った。さらに、統計分析は、イソトレックスゲル0.05%と比較したそれぞれの試験
製剤からの、48時間目に、表面、角質層、表皮および真皮、ならびにレシーバー液から
回収した薬物のレベルにおける有意な差を同定するために行った。
【0068】
透過および浸透分析のため、比較製品(イソトレックスゲル0.05%)に加えて、全
部で15個の製剤を選択した。図9は、T=0時間において皮膚の表面に全ての製剤を適
用後、6、24、および48時間でのレシーバー液へ皮膚を通って透過した薬物の量を示
す。図13は、イソトレックスゲル0.05%(バッチF0892)からの結果と比較し
て、イソトレチノインの5つの濃度それぞれにおいて、調査した全ての原型製剤からの薬
物の浸透プロファイルを示す(3人のドナー由来のヒトの皮膚を使用)。図10は、皮膚
の表面から回収された薬物の量(残渣製剤)を除いて皮膚層およびレシーバー液へと浸透
したイソトレチノインの量をハイライトする。透過データの分析により、6および24時
間において試験したほとんどの製剤に関して、レシーバー液において回収された薬物の量
はLOQを下回ったことが示された。この傾向の例外は、薬物がPATPO3 AF 0
.025%、PATPO3 h 0.10%、PATPO5 0.15%、PATPO3
AG 0.15%、PATPO3 AO 0.20%、SSA36 0.05%、SS
A31 0.15%およびSSA24 0.20%として製剤化された場合に確認され、
ここでイソトレチノインは、LOQを上回るレベルでレシーバー液に検出された(図9
。全ての製剤の適用後、PATPO3 N 0.05%、PATPO3 AI 0.10
%を除いて、薬物は48時間目にレシーバー液中で回収された。
【0069】
浸透データの分析により、一般的な傾向として、イソトレチノインの最高量は全ての試
験製剤の適用後に皮膚の表面から回収され、回収されたイソトレチノインの最高量は4.
78±0.66μg(SSA24、0.20%)であった。表皮層(薬物の作用部位)へ
のイソトレチノインの最高送達は、PATPO5 0.15%(0.29±0.10μg
)、PATPO6 0.20%(0.29±0.09μg)およびPATPO3 AN
0.20%(0.28±0.10μg)の適用により観察され、イソトレックスゲル0.
05%によって観察された結果(0.03±0.01μg)と比較しておよそ10倍およ
び有意に高い(p≦0.05)イソトレチノインレベルをもたらした。
【0070】
真皮から回収されたイソトレチノインの量に関するデータの分析により、この皮膚層へ
最高レベルの薬物をもたらす製剤は、PATPO3 AN 0.20%(0.54±0.
15μg)およびPATPO3 AO 0.20%(0.47±0.12μg)であり、
イソトレックスゲル0.05%によって達成された結果(0.05±0.01μg)と比
較しておよそ10倍高く、かつ有意に高い(p≦0.05)ことが再び見出された。角質
層から回収された最高レベルのイソトレチノインは、比較製品イソトレックスゲルの適用
後に観察され(0.64±0.25μg)、続いてSSA24(0.58±0.09μg
)およびPATPO6 0.20%(0.44±0.10μg)で観察された。
【0071】
興味深いことに、実施例1に記載したように、PATPO3 ANおよびイソトレック
スゲルからのシリコーンを通るイソトレチノインの輸送における差(図3)は、図4に示
すように皮膚への送達に同様の関係性を示さず、PATPO3 ANの適用後、皮膚の角
質(表皮および真皮)に浸透するイソトレチノインの割合の2~3倍の増加が観察された
(投与量の%として表した場合)。データを皮膚へとおよび皮膚を通って透過した薬物の
蓄積量(μg/cm)として表した場合、PATPO3 ANからのイソトレチノイン
の表皮層および真皮層への送達における増強は、イソトレックスゲルと比較しておよそ1
0倍であると測定された。PATPO3 ANの薬物送達プロファイルは、送達が角質層
へと集中するより典型的なプロファイルを有するイソトレックスゲルとは違い(図3)、
(低レベルのエタノールにもかかわらず)薬物の送達が病理学的な部位(表皮/真皮)へ
と標的化されているようであるという点において特有に見える。したがって、PATPO
3 ANは、全身送達には抵抗性であるが、特有の標的化真皮送達システムを提供する。
【実施例3】
【0072】
安定性アセスメント
透過/浸透実験の完了後、以下の表5に記載したように、0.025%および0.2%
w/wのイソトレチノインを含有するPATPO3 AN製剤において安定性試験を促
進した。X=イソトレチノインアッセイおよび関連物質、外観、顕微鏡観察、および見掛
けのpH;ならびにA=バックアップ。
【0073】
【表5】
【0074】
密封容器内の0.2% w/wのイソトレチノインを含有するPATPO3 ANの代
表的なバッチは、2~8℃(この温度でのイソトレチノインの安定性は4週目のみ試験し
た)、25℃および40℃で4週間保存し、ついでt=2週間および4週間でn=3回反
復し、HPLCを使用して試験した。PATPO3 ANプラセボをベースライン比較の
ために試験した。結果は図11および12に示し、プラセボとの比較として、それぞれt
=0およびt=4週間で、2から17分の間の0.2% w/wのイソトレチノインを含
有するPATPO3 ANの代表的なクロマトグラムを提供する。
【0075】
さらに、物理的安定性実験(例えば、アセスメント前、製造(2回の凍結融解サイクル
-2~8℃の間および25℃)後5週間までの間25℃で保存;遠心分離の2~16分の
範囲で遠心分離試験)に基づき、0%から2% w/wのエタノールを有する製剤は、エ
タノール含量が多い等価な製剤に対して遠心分離試験の間、驚くほど改善した物理的安定
性(離水への感受性が減少した)を示す。また、PEG3350を有する製剤は、PEG
4000により調製した等価な製剤に対して改善した物理的安定性(離水への感受性が減
少した)を示す。
【0076】
グリセロールは物理的安定性を改善するようであり、プロピレングリコールを有する製
剤の離水が15%グリセロール製剤に対して8%グリセロール製剤において多く生じる。
ここで、12~15分間の遠心分離後、非常に小さな液滴のみが観察され、製剤の表面で
のガラスピペットの仕分けにより主要な製剤から区別され得る。
【実施例4】
【0077】
in vivoアセスメント
本明細書の製剤の毒性を評価するため、PATPO3 ANの3つの濃度を90日間、
ミニブタ(イノシシ(Sus scrofa))へ局所軟膏として毎日投与し、続いて28日間の回
復期間をとった。さらに、PATPO3 ANの毒物動態学(「TK」)特性を評価した
【0078】
48匹のHanfordミニブタを5つの群に割り当て、メインコホート(main cohor
t)において群あたり性別につき4匹、およびリカバリーコホート(recovery cohort)の
媒体および高用量群における群あたり性別につきさらに2匹とした。群1から5はそれぞ
れ、偽、媒体、低用量群(0.1mg/kg)、中用量群(0.2mg/kg)、および
高(0.4mg/kg)用量群である。0.2g/kgの用量は、各動物の1つの部位に
適用され、PATPO3 ANの薄い層により体表面積の全10%を均一に被覆するのに
適していた。部位のサイズ(各動物につき、全体表面積のおよそ10%)は以下の式:
10%全体表面積(cm)=9.5×[BW(グラム)]2/3×0.10
に基づいた。
【0079】
各性別の平均体表面積は、各試験動物のおよそ10%体表面を決定するために使用した
。投与部位は、3日前と1日前の間に電気バリカン(ブレードno.40またはより細か
い)によって刈り込み、投与部位の少なくとも角は油性マーカーによってマークした。投
与部位は、必要に応じて試験期間中再び刈り込み、マークした。投与部位のサイズは、必
要に応じて試験中に調整した。各用量の投与前に、投与部位は水を浸したガーゼによって
洗浄し、次いで乾燥ガーゼによって乾燥した。日ごとの用量投与前に、その日に使用した
試験物および媒体を含有するチューブは、少なくとも5回振盪した。動物は、毎日適切な
媒体または試験物を投与され(重量によって)、24時間±2時間置いたままにした。
【0080】
動物は、90日間1日あたり1回局所的に処置され、続いて28日間の回復期間をとっ
た。指定した時点において、毒物動態学(「TK」)分析のために血液試料を採取した。
91日目に、メインコホートの動物は剖検して組織採取し、続いて118日目にリカバリ
ーコホートの動物を剖検して組織回収した。
【0081】
動物は、身体検査、臨床観察、体重、体重変化、投与部位のドレイズスコア、臨床病理
学(血液学、凝固、血液生化学検査、および検尿)、心電図検査、眼科、肉眼所見、臓器
重量、および組織病理学によって、毒性の兆候を評価した。毒物動態学特性を、試験1日
目および90日目に評価した。
【0082】
試験デザイン、評価パラメーター、およびTK試料採取スキームを、それぞれ表6、表
7、および表8に示す。
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
血液試料は、抗凝血剤としてK-EDTAを含有するチューブに採取した。血漿試料
は、約4℃にておよそ15分間、約3000rpmで遠心分離することによって調製した
。全ての血漿試料を1つの容器に入れ、ドライアイス上で凍結した。血漿試料は、分析の
ため分析実験室へとドライアイス上で送るまで、およそ-70℃の冷凍庫内で保存した。
全ての動物からの全ての試料は、表8に従って、1日目と90日目に採取した。群1およ
び群2は、1日目と90日目にイソトレチノインおよびトレチノインに関して分析した投
与2時間後の試料のみを有した。群3~5は、1日目と90日目にイソトレチノインおよ
びトレチノインに関して分析した全ての試料を有した。
【0087】
このアセスメントのために使用した動物、飼育および環境条件は表9に見出される。
【0088】
【表9】
【0089】
馴化中、1~90日目の投与前に1回、次いでその後91~118日目に毎日、詳細な
臨床観察を行った。馴化中、1~7日目の各投与前に1回、次いでその後試験終了まで毎
週投与部位を観察し、皮膚刺激をスコア化した。改変ドレイズスコアシステム(表10)
を使用して、投与部位における局所所見をスコア化し、炎症の程度を測定した(紅斑およ
び浮腫)。
【0090】
【表10】
【0091】
馴化中(メインおよびリカバリーコホート)、メインコホート終了前、リカバリーコホ
ート終了前に、眼科検査を実施した。委員会認定獣医眼科専門医が全ての眼の検査を実施
した。検査としては、限定はされないが、結膜、角膜、前眼房、虹彩、水晶体、硝子体液
、網膜、および眼底が挙げられる。適切な散瞳薬を、検査の前に投与した。
【0092】
馴化中(メインおよびリカバリーコホート)、メインコホート終了前、リカバリーコホ
ート終了前に、全ての試験動物について心電図検査(ECG)を実施した。電極を装着す
る部位の動物の毛は、設置前に刈り込み、ゲルによって湿らせた。従来の獣医の手順と一
貫した設定による心電図測定装置の製造業者の説明書に従って適切な電極を装着した。標
準的なリード線I、II、およびIIIの記録を、各記録の3つの複雑さを最小限に抑え
て25mm/秒および50mm/秒の速さで用紙に収集した。ECG記録時間は、不整脈
を評価する25mm/秒で20から60秒間、およびP-QRS-T波形の測定を容易に
するため、50mm/秒での短時間トレースであった。ECGデータを、定性的パラメー
ター(すなわち、リズム、伝導等における異常)、および限定はされないが、HR、RR
、PR、QRS、QT、およびQTc間隔を含む定量的データの解釈のため委員会認定の
獣医循環器専門医に提出した。
【0093】
臨床病理のため、馴化中(メインおよびリカバリーコホート)、メインコホート終了前
(メインおよびリカバリーコホート)、およびリカバリーコホート終了前に臨床病理学試
験のための試験動物から血液試料を採取した。
【0094】
抗凝固剤としてK-EDTAを含有するチューブに、血液試料(約2mL/動物)を
採取した。試料は、分析まで湿った氷上または約4℃の冷蔵庫に保存した。血液学的分析
は以下を含む:
【0095】
【表11】
【0096】
クエン酸ナトリウム(3.2%)を含有するチューブに、血液試料(約1.8mL/動
物)を採取した。約4℃、約3000rpmで約15分間の遠心分離によって血漿を調製
した。血漿は、分析まで湿った氷上または4℃の冷蔵庫に一時的に保管した。凝固分析は
以下を含む:
【0097】
【表12】
【0098】
血液生化学検査に関して、抗凝固剤を含まないチューブに、血液試料(約2mL/動物
)を各動物から採取した。血液は、約4℃、約3000rpmで約15分間の遠心分離前
に凝固させ、血清をポリプロピレン冷結保存バイアルに回収した。血清は、分析まで湿っ
た氷上または4℃の冷蔵庫に一時的に保存した。血液生化学検査は以下を含む:
【0099】
【表13】
【0100】
室温で終夜、代謝ケージを使用して尿(可能な場合、約2mL)を採取した。試料は、
抗凝固剤を含まない無菌の赤いふたのチューブに入れ、分析まで湿った氷上または約4℃
の冷蔵庫に保存した。試料は以下のパラメーターに関して分析した:
【0101】
【表14】
【0102】
計画的な屠殺時に、以下の臓器(存在する場合)を計量し、対の臓器は一緒に計量した
。相対的な臓器重量(臓器対体重および臓器対脳重量)比を算出した:
【0103】
【表15】
【0104】
全ての動物由来の以下の組織(存在する場合)を、10%中性緩衝ホルマリン中で保存
した(記載したもの以外):
【0105】
【表16】
【0106】
全ての保存した組織は、組織科学研究所(「HSRL」)に提出した。メインおよびリ
カバリーコホートの動物は、パラフィン中に包埋した組織を保存し、切片化し、ヘマトキ
シリンおよびエオシンによって染色し、委員会認定の獣医病理専門医によって顕微鏡で調
べた。肉眼的病変を顕微鏡で調べた。組織病理学評価の後、全ての調製したスライド、残
りの湿組織、塊、および生データは、記録保管所に戻した。
【0107】
PATPO3 ANを、最大0.4mg/kg/日で90日間、ミニブタの全体表の1
0%に1日1回局所(経皮)適用しても、死亡率/瀕死、非経皮の臨床観察、体重増加、
眼科もしくは心電図検査、血液学、血液生化学検査もしくは尿分析パラメーター、または
臓器重量に対して毒物学的に有意な効果はもたらさなかった。いずれの動物についても、
予定外の死または著しい瀕死はなかった。観察された真皮への効果は、局所的に適用した
レチノイドの周知の特性と一致した。
【0108】
血漿イソトレチノイン/トレチノインパラメーターの分析により、イソトレチノインよ
り大きなトレチノイン暴露を伴う単回のPATPO3 AN適用後、最小限のイソトレチ
ノインの全身暴露を示した。PATPO3 ANの経皮投与を繰り返すことにより、イソ
トレチノイン暴露は、中程度の投与レベル(0.2mg/kg)で定常に達した。イソト
レチノインの蓄積は明らかであるが、トレチノイン暴露における関連する増加はみられな
かった。全身の無有害作用量(「NOAEL」)、0.4mg/kg/日が同定された(
90日目のイソトレチノインAUC値 44.3時間ng.mLと関連する)。
【実施例5】
【0109】
さらなる製剤
表11は、本明細書で評価し、比較製品イソトレックスゲル0.05%の結果と比較し
た0.2% w/wのイソトレチノインの4つの製剤および0.6% w/wのイソトレ
チノインの2つの製剤を列挙した。95%を超えるエタノールを含むイソトレックスゲル
とは違い、6つの製剤はそれぞれエタノールを含まないまたはずっと少ない濃度(例えば
、2%)であった。さらに、6つの製剤のうち5つは水を含まなかった(EtOH 2%
/PEG3350;PATPO3 PEGのみと1450-b;PATPO3 f-d、
5%グリセロール、PEG3350;EtOH 2%/PEG3350;およびPATP
O3 PEGのみと1450-b)。
【0110】
【表17】
【0111】
図14および図15は、同じin vitro皮膚透過および浸透実験パラメーター、
手順、および上記の実施例2で述べたデータ算出を使用して、比較製品イソトレックスゲ
ル0.05%に対して表11に列挙した6つの製剤を使用する結果を示す。しかしながら
、これらの実験に使用したデルマトーム処理した皮膚は4番目のドナー由来である。図1
4に示すように、試験したいずれの製剤においてもt=0および6時間の時点で、イソト
レチノインはレシーバー液中に見出されなかった。しかしながら、24時間後、イソトレ
ックスおよびPATPO3 ANを含む試験した製剤において、イソトレチノインは最少
量でレシーバー液中に見出された。これらの結果は、図9の結果と比較した場合より高い
透過性を示し、レシーバー液中にはイソトレチノインが48時間まで現れなかったことを
示す。このことは、先に述べた事前のアセスメント中に使用した3人のドナーよりも4番
目のドナー由来のより高い透過性により得る。それぞれPATPO3 AN(0.2%)
およびイソトレックス(0.05%)の2つの皮膚浸透データセットの比較を示し、両方
とも4番目のドナーに基づく左から1番目および3番目のデータセットが両方とも先の3
人のドナーに基づく左から2番目と4番目のデータセットよりも高い透過性を示す図17
も参照されたい。
【0112】
図16は、以下の製剤が、イソトレックスゲルよりも、表皮および真皮への予期しない
優れたイソトレチノインの送達を実証したことを示す:PATPO3 AN;EtOH
2%/PEG3350;PATPO3 PEGのみと1450-b;およびPATPO3
f-d,5%グリセロール,PEG3350。また、これらの製剤は、はるかに少ない
濃度のエタノールを含むかエタノールを全く含まず、これはイソトレックスゲル中の95
%を超えるエタノールとは全く対照的である。0.6% w/wで調製した製剤は、0.
2% w/wで調製した製剤よりも、イソトレチノインを送達するわけではないようであ
る。したがって、本明細書に開示する新規の製剤は、表皮および真皮への予期しない優れ
たイソトレチノインの送達効率を示し、そのような送達効率は、製剤中のイソトレチノイ
ンの量を単に増加した結果ではない。確かに、図15では、0.6% w/wのイソトレ
チノイン製剤に関して皮膚表面に大量のイソトレチノインが残ったことを確認している(
例えば、図15:EtOH 2% PEG3350(0.6%)およびPATPO3 P
EGのみ+PEG1450b(0.6%)を参照)。
【0113】
上記の本発明の様々な態様を組合せ、本発明のさらなる態様を提供することができる。
本出願において参照した全ての参照および製品は、その全体が参照により本明細書に組み
込まれる。本発明の態様は、必要であれば改変し、本出願において参照した参照および/
または製品の概念を用いることができる。
【0114】
一般に、以下の特許請求の範囲において、使用した用語は、特許請求の範囲を明細書お
よび特許請求の範囲において開示した特定の態様に制限するものとして解釈されるべきで
はないが、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の完全な範囲と共に全ての可
能な態様を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって
制限される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17