(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】脚立
(51)【国際特許分類】
E06C 7/50 20060101AFI20221111BHJP
E06C 1/18 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
E06C7/50
E06C1/18
(21)【出願番号】P 2021122586
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020128010
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393018130
【氏名又は名称】長谷川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】泉 幸治
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ・フレンクラー
(72)【発明者】
【氏名】河邊 旬司
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-41855(JP,A)
【文献】実開平6-73298(JP,U)
【文献】特開2012-219589(JP,A)
【文献】特開2013-119745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06C 1/00- 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の支柱と、前記二本の支柱の間に架け渡される一又は複数の踏桟と、前記二本の支柱の上端部を連結する天板と、を備える一対の梯子体が、互いの上端部で相対回転可能に連結され、前記一対の梯子体が所定間隔に離間した開状態において前記一対の梯子体の相対変位を規制する開き止め機構
と、前記開き止め機構を変位させ規制を解除する規制解除部材と、前記支柱または前記踏桟に組付けられかつ前記規制解除部材を変位可能に支持するブラケットと、を備える脚立であって、
前記開き止め機構は、前記一対の梯子体の両側において、対向して近接離間するそれぞれの前記支柱にアーム体が回動可能に支持されるとともに、前記アーム体の互いの先端部が相対回転可能に連結される、二組のアーム部材と、で構成され、
前記規制解除部材は、前記踏桟又は前記天板の長手方向に沿って配置される操作部と、開状態の際に前記操作部を操作することで前記アーム部材と係合する係合部と、前記係合部と前記操作部とを連係する連係部とを有し、
前記係合部は前記二組のアーム部材を屈曲可能に前記規制解除部材の両端部に設けられ、
前記ブラケットは、クリップ部とブラケット本体部とを有し、
少なくとも前記クリップ部は、前記支柱に対して前記ブラケットを固定する部位を有し、
前記ブラケット本体部は、前記規制解除部材を移動可能に保持することを特徴とする、脚立。
【請求項2】
前記支柱は、背板と、該背板に隣接して互いに対向する二枚の側板と、を備えるとともに、前記背板が前記梯子体の外側に面して設けられ、
前記ブラケットは、前記二枚の側板のうち、前記一対の梯子体が近接する側に位置する前記側板に沿って配置される、請求項1に記載の脚立。
【請求項3】
前記ブラケット本体部と前記クリップ部とで前記支柱における一の前記側板を挟持することにより、前記ブラケットが前記支柱に固定される、請求項2に記載の脚立。
【請求項4】
前記ブラケット本体部は、前記梯子体における内側に面する側が開放した筒形状に形成され、
前記筒形状が前記連係部を収容する、請求項1から3のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項5】
前記ブラケット本体部の内周面には、前記規制解除部材の前記操作部又は前記係合部を支持する支持突起が形成される、請求項4に記載の脚立。
【請求項6】
前記ブラケットは、前記規制解除部材を組付ける際に、前記支持突起の周辺が弾性変形可能とされる、請求項5に記載の脚立。
【請求項7】
前記規制解除部材は、前記ブラケット本体部に形成された複数の突起部により支持される、請求項1から6のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項8】
前記ブラケット本体部には、前記規制解除部材において互いに近接する方向への前記係合部の変位を規制する規制部が形成される、請求項1から7の何れか一項に記載の脚立。
【請求項9】
前記規制部として、前記ブラケット本体部の側面に規制壁が形成される、請求項8に記載の脚立。
【請求項10】
前記規制部として、前記ブラケット本体部の内面に規制突起が形成される、請求項8に記載の脚立。
【請求項11】
前記ブラケット本体部には、前記ブラケットが前記梯子体に組付けられた状態で前記規制解除部材を挿入可能な開口部が形成されている、請求項1から10の何れか一項に記載の脚立。
【請求項12】
前記ブラケット本体部の内面における前記開口部の上側には、前記規制解除部材の前記係合部が互いに近接する方向への変形を規制するガイド突起が形成される、請求項11に記載の脚立。
【請求項13】
前記開口部は、前記ブラケット本体部における前記クリップ部の反対側の面に形成される、請求項11又は12に記載の脚立。
【請求項14】
前記ブラケット本体部の下端部には、前記係合部を支持する底部が形成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項15】
前記ブラケット本体部は、前記支柱に沿い、かつ、前記規制解除部材が前記支柱の長手方向に摺動可能となる姿勢で配置されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項16】
前記係合部は、前記支柱の近傍のうち前記一対の梯子体が近接する側に配置され、
前記係合部は、前記二組のアーム部材を下方から屈曲可能とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項17】
前記規制解除部材は、棒状部材が折り曲げられることにより、前記係合部、前記連係部、及び、前記操作部が一体的に形成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項18】
前記規制解除部材は、前記操作部となる柱状部材と、前記連係部と前記係合部とを有してクランク状に形成された棒状部材と、を組み付けて構成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項19】
前記規制解除部材が下方に位置する際に、前記係合部が前記ブラケットに形成されたカバー部に収容される、請求項1から18の何れか一項に記載の脚立。
【請求項20】
前記ブラケットは、他の部材を前記支柱に固定する固定具により、前記支柱に対して位置決めされる、請求項1から19のいずれか一項に記載の脚立。
【請求項21】
前記一対の梯子体は、互いの上端部で回転金具を介して相対回転可能に連結され、
前記固定具は、前記回転金具を前記支柱に固定するリベットである、請求項20に記載の脚立。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脚立に関し、詳細には、脚立における開き止め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の梯子体の端部を回動可能に連結する構成の脚立が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。このような脚立においては、一対の梯子体を構成する支柱の間に設けられた開き止め機構により、脚立状態における梯子体の相対変位を規制する構成が用いられる。特許文献1に記載の脚立の場合、脚立状態で開き止め機構を操作することにより規制を解除し、脚立を折りたたんだ閉状態とすることができる。
【0003】
一方、脚立を構成する梯子体間に設けられた開き止め機構を操作することにより、脚立を折りたたんだ閉状態とすることのできる脚立が用いられている(例えば、特許文献2を参照)。このような脚立においては、梯子体間の開き止め機構における操作部を使用者が持ち上げることにより、一対の梯子体を互いに近接させて脚立を閉状態とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-33305号公報
【文献】特開2013-119745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の脚立によれば、一方の梯子体を構成する二本の支柱のそれぞれに開き止め機構が連結されている。このため、脚立の使用者は、脚立状態から閉状態とする際に、両手を用いて二個の開き止め機構を操作するか、片手でそれぞれの開き止め機構を操作する必要があった。このため、使用者が道具を持っている等、両手を使用することが困難な状況では、容易に脚立状態から閉状態とすることができなかった。
【0006】
一方、前記特許文献2に記載の脚立によれば、使用者は片手で操作部を持ち上げるだけで、脚立状態から閉状態とすることができる。しかし、このように一対の梯子体を開き止め機構で連結する構成は、脚立において設ける位置が制限される。即ち、開き止め機構を使用者の手の近傍に配置することになるため、比較的大きなサイズの脚立には採用することが困難な場合があった。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、その大きさに関わらず開き止め機構を設けることができ、容易に脚立状態から閉状態とすることを可能とする、脚立を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
本発明に係る脚立は、二本の支柱と、前記二本の支柱の間に架け渡される一又は複数の踏桟と、前記二本の支柱の上端部を連結する天板と、を備える一対の梯子体が、互いの上端部で相対回転可能に連結され、前記一対の梯子体が所定間隔に離間した開状態において前記一対の梯子体の相対変位を規制する開き止め機構と、前記開き止め機構を変位させ規制を解除する規制解除部材と、前記支柱または前記踏桟に組付けられかつ前記規制解除部材を変位可能に支持するブラケットと、を備える脚立であって、前記開き止め機構は、前記一対の梯子体の両側において、対向して近接離間するそれぞれの前記支柱にアーム体が回動可能に支持されるとともに、前記アーム体の互いの先端部が相対回転可能に連結される、二組のアーム部材と、で構成され、前記規制解除部材は、前記踏桟又は前記天板の長手方向に沿って配置される操作部と、開状態の際に前記操作部を操作することで前記アーム部材と係合する係合部と、前記係合部と前記操作部とを連係する連係部とを有し、前記係合部は前記二組のアーム部材を屈曲可能に前記規制解除部材の両端部に設けられ、前記ブラケットは、クリップ部とブラケット本体部とを有し、少なくとも前記クリップ部は、前記支柱に対して前記ブラケットを固定する部位を有し、前記ブラケット本体部は、前記規制解除部材を移動可能に保持することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る脚立において、前記支柱は、背板と、該背板に隣接して互いに対向する二枚の側板と、を備えるとともに、前記背板が前記梯子体の外側に面して設けられ、前記ブラケットは、前記二枚の側板のうち、前記一対の梯子体が近接する側に位置する前記側板に沿って配置されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケット本体部と前記クリップ部とで前記支柱における一の前記側板を挟持することにより、前記ブラケットが前記支柱に固定されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケット本体部は、前記梯子体における内側に面する側が開放した筒形状に形成され、前記筒形状が前記連係部を収容することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケット本体部の内周面には、前記規制解除部材の前記操作部又は前記係合部を支持する支持突起が形成されることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケットは、前記規制解除部材を組付ける際に、前記支持突起の周辺が弾性変形可能とされることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る脚立において、前記規制解除部材は、前記ブラケット本体部に形成された複数の突起部により支持されることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケット本体部には、前記規制解除部材において互いに近接する方向への前記係合部の変位を規制する規制部が形成されることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る脚立において、前記規制部として、前記ブラケット本体部の側面に規制壁が形成されることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る脚立において、前記規制部として、前記ブラケット本体部の内面に規制突起が形成されることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケット本体部には、前記ブラケットが前記梯子体に組付けられた状態で前記規制解除部材を挿入可能な開口部が形成されていることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケット本体部の内面における前記開口部の上側には、前記規制解除部材の前記係合部が互いに近接する方向への変形を規制するガイド突起が形成されることが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る脚立において、前記開口部は、前記ブラケット本体部における前記クリップ部の反対側の面に形成されることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケット本体部の下端部には、前記係合部を支持する底部が形成されることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケット本体部は、前記支柱に沿い、かつ、前記規制解除部材が前記支柱の長手方向に摺動可能となる姿勢で配置されていることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る脚立において、前記係合部は、前記支柱の近傍のうち前記一対の梯子体が近接する側に配置され、前記係合部は、前記二組のアーム部材を下方から屈曲可能とすることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る脚立において、前記規制解除部材は、棒状部材が折り曲げられることにより、前記係合部、前記連係部、及び、前記操作部が一体的に形成されることが好ましい。
【0026】
また、本発明に係る脚立において、前記規制解除部材は、前記操作部となる柱状部材と、前記連係部と前記係合部とを有してクランク状に形成された棒状部材と、を組み付けて構成されることが好ましい。
【0027】
また、本発明に係る脚立において、前記規制解除部材が下方に位置する際に、前記係合部が前記ブラケットに形成されたカバー部に収容されることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係る脚立において、前記ブラケットは、他の部材を前記支柱に固定する固定具により、前記支柱に対して位置決めされることが好ましい。
【0029】
また、本発明に係る脚立において、前記一対の梯子体は、互いの上端部で回転金具を介して相対回転可能に連結され、前記固定具は、前記回転金具を前記支柱に固定するリベットであることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る脚立によれば、その大きさに関わらず開き止め機構を設けることができ、容易に脚立状態から閉状態とすることが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第一実施形態に係る脚立の脚立状態を示す斜視図。
【
図4】開き止め機構の規制を解除した状態を示す右側面断面図。
【
図9】(a)及び(b)はそれぞれブラケットの側面図及び斜視図。
【
図10】第二実施形態に係る脚立の脚立状態を示す斜視図。
【
図13】開き止め機構の規制を解除した状態を示す右側面断面図。
【
図20】(a)から(c)はそれぞれブラケットを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では
図1から
図9を用いて、本発明の第一実施形態に係る脚立1について説明する。本実施形態においては、
図1中に示す矢印の方向で、後述する開状態(脚立状態)における脚立1の方向を規定する。即ち、
図1に示す回動軸A(
図1中の一点鎖線を参照)の軸方向(踏桟4の架設方向)を脚立1の左右方向とする。また、水平方向において左右方向と直交する方向(梯子体2・2の開閉方向)を脚立1の前後方向とし、左右方向及び前後方向と直交する方向を脚立1の上下方向と規定する。
【0033】
図1に示す如く本実施形態に係る脚立1は、互いに共通の構成を有する一対の梯子体2・2を備える。梯子体2・2は側面視で略ハ字状に下端部が互いに離間して広がるように配置され、それぞれの上端部が回転金具であるヒンジ6・6により回動可能に連結される。
【0034】
図2に示す如く、ヒンジ6は第一ヒンジ部6aと第二ヒンジ部6bとが回動支持部6cで回動可能に連結されている。そして、第一ヒンジ部6aと第二ヒンジ部6bとが、左右方向について同じ側にある(対向して近接離間する)支柱3・3の上端部にそれぞれ固定部材である四個のリベットを介して固定される。これにより、ヒンジ6が対向する支柱3・3を相対的に回動可能に連結する。即ち、梯子体2・2が互いに近接離間する方向(
図1においては脚立1の前後方向)に回動可能とされる。本実施形態において、前側の支柱3に対してヒンジ6を固定する四個のリベットのうち、後下側に位置するリベットR(
図2から
図4を参照)は、後述するブラケット81の位置決め部材として機能する。
【0035】
それぞれの梯子体2は長尺体である一対の支柱3・3を備える。支柱3・3は互いの距離が上側より下側で大きくなるように(正面視で略ハ字状に)配置されている。本実施形態に係る脚立1は4本の支柱3を備えている。各支柱3は、強度の確保等を目的として、長手方向に沿った二箇所で折り曲げられる。そして、支柱3は長手方向と直交する断面の形状が略コ字状になるように、背板3bと背板3bに隣接して互いに対向する二枚の側板3s・3sとを備えて形成される(
図8を参照)。また、それぞれの支柱3の下端部には端具3aが固定される。
【0036】
梯子体2における一対の支柱3・3の間には、所定の間隔を隔てて中空の筒状部材である複数の踏桟4・4・・・が架け渡される。踏桟4は所定の横断面形状をなす直線状の押出し成形品が所定の長さに切断されて形成される。それぞれの踏桟4はリベットにより支柱3において対向する内側面の間に固定されている。本実施形態に係る脚立1において、各支柱3、踏桟4及び天板5はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる軽金属製の部材である。なお、踏桟4をボルト・ナット等の他の締結部品を用いて支柱3に固定することも可能である。
【0037】
それぞれの梯子体2は、上端部に中空の筒状部材である天板5・5が設けられる。天板5は所定の横断面形状をなす直線状の押出し成形品が所定の長さに切断されて形成される。天板5はリベットにより支柱3・3の上端部において対向する内側面の間に固定されている。換言すれば、天板5はそれぞれの梯子体2において、二本の支柱3・3の上端部を連結するように設けられる。なお、天板5をボルト・ナット等の他の締結部品を用いて支柱3に固定することも可能である。
【0038】
脚立1は、一対の梯子体2・2のなす角度(詳細には、梯子体2・2の相対的な回動によって近接離間する支柱3・3が側面視においてなす角度、以下同じ)に応じて、主に以下の開状態又は閉状態とすることができる。
【0039】
開状態は、
図1に示す如く梯子体2・2のなす角度を約30度として、4本の支柱3で脚立1を支える形態である。本明細書においては、以下、開状態を「脚立状態」と記載する。脚立状態における脚立1は、地面や床に自立させた状態で用いられる。閉状態は、梯子体2・2のなす角度を約0度に近接させる形態である。脚立1の閉状態は、主に収納時や搬送時に採用される。
【0040】
脚立1は第三の形態として、梯子体2・2のなす角度を約180度として、一側の2本の支柱3で脚立1を支える梯子状態とすることも可能である。即ち、本実施形態に係る脚立1は梯子兼用脚立として構成されている。なお、本発明は梯子兼用脚立にのみ採用されるものではなく、専用脚立を含めた他の構成の脚立全般に採用することが可能である。
【0041】
脚立1は、脚立状態において、梯子体2・2のなす角度を規定するとともに互いの相対変位(回転)を規制する、開き止め機構7を備える。開き止め機構7は、梯子体2・2の上端部における左右両側に、合計二組設けられている。開き止め機構7は、互いに連結される一対の梯子体2・2において、左右方向について同じ側に配置されて互いに近接離間する支柱3同士を連結する。
【0042】
より詳細には、開き止め機構7は、梯子体2・2において対向して近接離間するそれぞれの支柱3・3の一方(
図2における左側の支柱3)に回動可能に支持される。そして、開き止め機構7は、脚立1が脚立状態において支柱3・3の他方(
図2における右側の支柱3)に係合可能とされる。それぞれの開き止め機構7は同じ構成であるため、本実施形態においては左側の開き止め機構7を中心に説明する。
【0043】
図2に示す如く、開き止め機構7は、第一アーム体7aと第二アーム体7bとが連結されて構成されるアーム部材である。脚立1の左側に設けられた開き止め機構7において、第一アーム体7aは基端部(
図2における左側端部)が後側の支柱3の上部において回動軸7cで回動可能に軸支されている。第二アーム体7bはその先端部が第一アーム体7aの先端部と回転連結部7dで回転可能に連結されている。なお、脚立1の右側に設けられた開き止め機構7において、第一アーム体7aは基端部が前側の支柱3の上部において回動軸7cで回動可能に軸支されている。
【0044】
第二アーム体7bの基端部には、係合端部7eが形成されている。係合端部7eはねじりバネ7hにより付勢された係合部材7fと、係合部材7fの変位によって拡大・縮小が可能な係合孔7gと、を備えている。係合部材7fはねじりバネ7hによって、係合孔7gを縮小する方向(閉じる方向)に付勢されている。脚立1を脚立状態とする場合は
図1に示す如く、梯子体2・2のなす角度を約30度に開いた状態で、係合端部7eを他方の支柱3に形成された第一ロックピンP1に係合させる。この際、係合孔7gに第一ロックピンP1が挿入され、係合部材7fがねじりバネ7hにより付勢されることにより、係合端部7eと第一ロックピンP1との係合状態が維持される。なお、第二アーム体7bに形成する係合端部の構成は、本実施形態に限定されるものではなく、他の構成で第一ロックピンP1(第二ロックピンP2も同様)と係合させることも可能である。
【0045】
このように、脚立1において、第一アーム体7aの基端部は一方の支柱3に回動可能に支持され、第二アーム体7bの先端部は第一アーム体7aの先端部に回転可能に連結されるとともに基端部が他方の支柱3に係合可能とされる。換言すれば、開き止め機構7は、対向して近接離間するそれぞれの支柱3・3に第一アーム体7a及び第二アーム体7bの基端部が回動可能に支持されるとともに、第一アーム体7a及び第二アーム体7bの互いの先端部が相対回転可能に連結される。本実施形態において、一方の支柱3に形成された回動軸7cと、他方の支柱3に形成された第一ロックピンP1とは、同じ上下位置に形成されている。
【0046】
第二アーム体7bは図示しないストッパにより第一アーム体7aに対する角度領域が規制されている。具体的には、第二アーム体7bは、回転連結部7dを中心として第一アーム体7aに近接した状態から反時計回り方向の角度が約185度に開く状態まで回動可能とされている。そして、脚立状態の脚立1において、第一アーム体7a及び第二アーム体7bは自然状態においては自重により回転連結部7dが下方に位置するため、
図2に示す如く相対角度が約185度となる。これにより、回転連結部7dは第一アーム体7a及び第二アーム体7bの両端部(回動軸7c及び第一ロックピンP1)よりも下方に位置するとともに、当該位置よりも下方への変位が規制される。
【0047】
このように、脚立1を脚立状態とする場合は、支柱3・3を開き止め機構7により連結することにより、梯子体2・2のなす角度を約30度で固定する。この際、梯子体2・2に対して、梯子体2・2を近接させる回動方向に力が加わった場合でも、回転連結部7dが第一アーム体7a及び第二アーム体7bの両端部よりも下方に位置するとともに、回転連結部7dの当該位置よりも下方への変位が規制されているため、梯子体2・2は相対回転しない。
【0048】
また、梯子体2・2に対して、梯子体2・2を離間させる回動方向に力が加わった場合も、支柱3・3が開き止め機構7で連結されているため、梯子体2・2は相対回転しない。このため、梯子体2・2のなす角度は約30度のままであり、脚立1は脚立状態を維持する。なお、係合端部7eと第一ロックピンP1との係合状態を解除する際には、使用者が係合部材7fをねじりバネ7hの付勢力に抗して変位させることにより、第一ロックピンP1から係合端部7eを離脱させることができるようになる。
【0049】
脚立1を閉状態とする場合は、開き止め機構7の係合端部7eを第一ロックピンP1に係合させた状態で、第一アーム体7a又は第二アーム体7bを、第一アーム体7aと第二アーム体7bとの下側に形成される角度が180度以下となるように回動させる。具体的には、回転連結部7dに対して下方から力を加え、回転連結部7dが上方に変位するように第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる。これにより、梯子体2・2の角度規制が解除され、梯子体2・2のなす角度が約30度よりも小さくなるように梯子体2・2を回動させることができる。そして、梯子体2・2のなす角度を約0度とすることにより、脚立1が閉状態となる。このように、脚立状態の際に回転連結部7dを上方に変位させて、第一アーム体7aと第二アーム体7bとからなるアーム部材を屈曲することにより、脚立1は梯子体2・2が近接した閉状態となる。
【0050】
なお、脚立1を梯子状態とする場合は、開き止め機構7における係合端部7eの第一ロックピンP1への係合を解除し、梯子体2・2のなす角度を約180度に開いた状態で、係合端部7eを支柱3の上端部に形成された第二ロックピンP2に係合させる。このように、支柱3・3を開き止め機構7により連結することにより、梯子体2・2のなす角度を約180度で固定するのである。この際、梯子体2・2に対して、梯子体2・2のなす角度が変わる方向に力が加わった場合でも、回動軸7c、回転連結部7d、及び係合端部7eが一直線上に配置されているため、第一アーム体7aと第二アーム体7bとは相対回転しない。このため、梯子体2・2のなす角度は約180度のままであり、脚立1は梯子状態を維持する。
【0051】
上記の如く、本実施形態に係る脚立1は梯子兼用脚立として構成されているため、開き止め機構7における第二アーム体7bの基端部に係合端部7eを設け、第二アーム体7bを支柱3の第一ロックピンP1及び第二ロックピンP2に対して着脱可能としている。但し、脚立1を専用脚立として構成した場合は、第二アーム体7bの基端部を支柱3における第一ロックピンP1の位置に回動可能かつ着脱不能に連結する構成とすることも可能である。
【0052】
本実施形態に係る脚立1において、開き止め機構7は、脚立1が脚立状態の際に梯子体2・2における相対変位の規制を解除する、規制解除部8を備える。
図2から
図4に示す如く、本実施形態において規制解除部8は前側の梯子体2の上部における後面に設けられる。
【0053】
図5に示す如く、規制解除部8は、前側の梯子体2における左右両側の支柱3・3の後側の側板3sに設けられるブラケット81・81(詳細には、左側の支柱3に設けられる左ブラケット81L、及び、右側の支柱3に設けられる右ブラケット81R)と、左右のブラケット81・81に左右両端部が支持されてブラケット81・81の間に架け渡される棒状の規制解除部材82と、を備える。本実施形態において、左ブラケット81Lと右ブラケット81Rとは左右対称形状に形成されること以外は同一の構成であるため、以下では左ブラケット81Lについて説明し、右ブラケット81Rについては詳細な説明を省略する。
【0054】
規制解除部材82は金属製の棒状部材が折り曲げられることにより、係合部82a・82a、操作部82b、及び、連係部82c・82cが一体的に形成された部材である。規制解除部材82は、両端部に形成された係合部82a・82aが、連係部82c・82cを介して、中央部に形成された操作部82bと連結されて構成される。本実施形態においては規制解除部材82を一体的に構成することにより、簡易な構成で規制解除部8を設けることを可能としている。
【0055】
それぞれの係合部82a・82aは、
図2及び
図3に示す如く、脚立1が脚立状態の際に、梯子体2の左右両側に設けられたそれぞれのアーム部材における第一アーム体7a又は第二アーム体7bの下方に配置される。具体的には
図6に示す如く、脚立1の左側に延出される係合部82aは、左側に設けられた開き止め機構7の第一アーム体7aの下方に配置される。一方、
図6に示す如く、脚立1の右側に延出される係合部82aは、右側に設けられた開き止め機構7の第二アーム体7bの下方に配置される。
【0056】
操作部82bは
図6に示す如く、脚立1が脚立状態の際に、天板5に近接する下側で天板5の長手方向に沿って配置される。連係部82c・82cは、支柱3の長手方向に沿って配置されて、係合部82a・82aと操作部82bとを連係する。
【0057】
規制解除部材82は、前側の梯子体2における両側にそれぞれ設けられた一対のブラケット81・81を介して梯子体2に組付けられている。
図5に示す如く、ブラケット81は支柱3における側板3sに沿って設けられる長尺の部材である。
【0058】
図9(a)に示す如く、ブラケット81は、規制解除部材82の連係部82cを収容するブラケット本体部81aと、クリップ部81bと、を備える。ブラケット本体部81aとクリップ部81bとの間にはスリット81jが形成されている。そして、
図8に示す如く、支柱3における後側の側板3sをスリット81jに挿入し、ブラケット本体部81aとクリップ部81bとで側板3sを挟持することにより、ブラケット81が支柱3に固定される。
【0059】
具体的には、一対のブラケット81・81のブラケット本体部81aは、互いに対向する側(梯子体2における内側)、及び、下側が開放した筒形状に形成されている。ブラケット本体部81aにおけるスリット81jに面する側には、複数の挿入突起81kが突出して形成されている。
【0060】
また、クリップ部81bには、スリット81jの側に向けて突出するクリップ81cが形成されている。スリット81jに支柱3の側板3sが挿入された際には、側板3sに形成された凹部に挿入突起81kが挿入されるとともに、クリップ81cが側板3sをブラケット本体部81aの側に押圧することにより、側板3sがブラケット本体部81aとクリップ部81bとにより挟持される。
【0061】
クリップ部81bの先端には、略直角方向に折り曲げられた鍔部81dがブラケット81の長手方向に沿って形成されている。鍔部81dの長手方向における中央部には、位置決め部81eが切り欠かれた形状に形成される。ブラケット81を支柱3に組付ける際に、位置決め部81eにヒンジ6を固定するリベットRが挿入される(
図3及び
図4を参照)。これにより、梯子体2に対するブラケット81の位置決めがなされる。このように、本実施形態においては、別途位置決め部材を必要とせずにブラケット81の位置決めを容易に行うことができるように構成されている。なお、ブラケット81の位置決めに際しては、ヒンジ6とは異なる部材を支柱3に固定する固定具(例えば、踏桟4を支柱3に固定するリベット、又は、開き止め機構7を支柱3に回動支持する軸部材等)により、支柱3に対して位置決めされる構成とすることも可能である。
【0062】
ブラケット本体部81aにおいて、梯子体2の左右方向の外側に向かう面の上下方向中途部には壁体81fが形成され、外部からブラケット本体部81aの内側が視認されないように被覆している。即ち、
図2に示す如く、脚立1の外側からは規制解除部材82がブラケット81の壁体81fにより視認されないように構成されている。
図9(a)に示す如く、ブラケット81において、壁体81fの上側には孔部81gが形成されており、孔部81gによりブラケット81を貫通する上部間隙V1(
図9(a)中の上側の網掛け部分)が形成される。また、壁体81fの下側にはブラケット81を貫通する下部間隙V2(
図9(a)中の下側の網掛け部分)が形成される。
【0063】
ブラケット本体部81aの内周面において、孔部81gが形成されている部分には、ブラケット81が規制解除部材82を支持する際に、
図9(a)に示す如く規制解除部材82の操作部82bを支持する支持突起81hが形成されている。本実施形態における支持突起81hは、上側に水平面、下側に傾斜面が形成されている。なお、支持突起をブラケット本体部81aの下側に形成することにより、規制解除部材82の係合部82aを支持する構成とすることも可能である。
【0064】
ブラケット本体部81aの下部には、ブラケット81が規制解除部材82を下方で支持する際に、係合部82aを収容するカバー部81iが形成される(
図2を参照)。これにより、規制解除部材82が操作されないときは、外部から規制解除部材82が視認されないようにしている。また、カバー部81iに係合部82aを収容することにより、係合部82aの先端が作業者の衣服や持ち物に引っ掛かったり、係合部82aの先端が直接的に作業者の身体に触れたりすることを防止している。
【0065】
図5に示す如く、規制解除部8を構成するブラケット81及び規制解除部材82を梯子体2に組付ける際は、まず、二個のブラケット81・81(左ブラケット81L及び右ブラケット81R)をそれぞれ左右両側の支柱3の側板3sに内側から固定する。そして、ブラケット81・81の下方からそれぞれのブラケット本体部81aの内部に規制解除部材82を挿入する。この際、支持突起81hの周辺が弾性変形して規制解除部材82が支持突起81hの上側に挿入される。
【0066】
本実施形態においては、支持突起81hの周囲に孔部81gを形成することにより、支持突起81hの周辺が弾性変形しやすいように構成されている。これにより、支持突起81hが規制解除部材82の操作部82bと係合し、ブラケット81により規制解除部材82が支持される。この際、係合部82a・82aは左右方向外側に延出され、その先端部がアーム部材(第一アーム体7a及び第二アーム体7b)の下方に配置される。
【0067】
上記の如く、本実施形態に係る脚立1においては、ブラケット81・81を作業者が工具等を用いることなくワンタッチで梯子体2に組付けることができるように構成されている。これにより、脚立1の組立工程を簡素化するとともに、脚立1の組立に必要な部品点数を削減して製造コストを抑制している。
【0068】
また、脚立1においては、ブラケット81におけるブラケット本体部81aに形成した支持突起81hにより規制解除部材82を支持する構成としている。これにより、規制解除部材82を作業者が工具等を用いることなくワンタッチでブラケット81・81に組付けることができる。また、規制解除部材82を組付ける際に、支持突起81hの周辺を弾性変形させることにより、規制解除部材82の組付性を向上させるとともに、規制解除部材82が容易にブラケット81・81から離脱しないように構成している。
【0069】
なお、規制解除部材82がブラケット81・81に支持された状態において、ブラケット81の内側への変位は規制解除部材82により規制されている。また、ブラケット81の上下方向への変位は位置決め部81eに挿入されたリベットRにより規制されている。このため、規制解除部材82が組付けられた状態において、ブラケット81・81は梯子体2から容易に離脱しないように構成されている。
【0070】
なお、本実施形態に係る脚立1においては、ブラケット81において筒状に形成したブラケット本体部81aの内部に規制解除部材82の連係部82cを挿入する構成としているが、ブラケット本体部81aを他の形状とすることも可能である。例えば、ブラケット本体部に複数の突起部を形成し、この複数の突起部により規制解除部材82を支持する構成とすることも可能である。
【0071】
本実施形態に係る脚立1においては、脚立状態において規制解除部材82を操作することにより、脚立1を閉状態とすることができる。具体的には
図4に示す如く、使用者が天板5の下方に手を差し入れて、規制解除部材82の操作部82bを上方に変位させる。これにより、連係部82c・82c及び係合部82a・82aが上方に変位する。そして、係合部82a・82aが第一アーム体7a及び第二アーム体7bを上方に回動させてアーム部材を屈曲させる。
【0072】
即ち、係合部82aを上方に変位させることにより、回転連結部7dが上方に変位するように第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる。これにより、梯子体2・2の角度規制が解除され、梯子体2・2のなす角度が約30度よりも小さくなるように梯子体2・2を回動させることができる。そして、使用者が天板5を下から支えることにより、梯子体2・2は自重により互いに近接してその相対角度が約0度となり、脚立1が閉状態となる。
【0073】
このように、脚立1が脚立状態の際に使用者が操作部82bを操作する動作を行うことにより、脚立1を閉状態とすることができる。また、使用者は操作部82bを上方に操作する動作に連続して天板5を持ち上げることができる。即ち、脚立1の使用者は脚立状態から閉状態にする動作と、閉状態の脚立1を持ち上げる動作とをほぼ同時にワンタッチで行うことが可能となる。
【0074】
なお、脚立1が脚立状態の際に、規制解除部材における操作部を操作して連係部を回動変位させ、第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる構成とすることもできる。この構成によっても、梯子体2・2の角度規制が解除され、脚立1を閉状態とすることができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る脚立1において、規制解除部8が設けられた梯子体2が上側となる梯子状態とした場合に、規制解除部材82が自重で下方に位置する。このため、操作部82bは、近接する天板5の上端面よりも下側に位置する(
図4において天地を逆にした状態)。これにより、使用者が脚立1を梯子状態で使用する場合でも、操作部82bが天板5における裏面5Rの上側で使用の障害とならないように構成している。
【0076】
一方、脚立1を、規制解除部8が設けられた梯子体2が下側となる梯子状態とした場合は、操作部82bは
図3に示す如く近接する天板5よりも下側に位置する。即ち、この場合でも、操作部82bが天板5の使用の障害となることはない。
【0077】
上記の如く、本実施形態に係る脚立1において、開き止め機構7が備える規制解除部材82は、脚立1が脚立状態の際に梯子体2・2における相対変位の規制を解除する。これにより、使用者が片手で規制解除部材82を操作するだけで、脚立1を脚立状態から閉状態に変形することが可能となる。即ち、使用者が道具を持っている等、両手を使用することが困難な状況でも、脚立1を容易に脚立状態から閉状態に変形することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、規制解除部8の操作部82bを天板5の近傍に配置する構成としたが、ブラケット81及び連係部82cの形状等を変更することにより、操作部82bを踏桟4の近傍に配置する構成とすることも可能である。この場合、踏桟4の近傍で操作部82bを操作することができるため、脚立1が比較的長く天板5の位置が高くなる場合でも操作性を損なうことがない。
【0079】
また、規制解除部材82に複数の操作部及び連係部を設けること(例えば、係合部から複数の連結部を枝分かれさせ、それぞれに操作部を設ける等)により、複数の踏桟4又は天板5に沿って操作部を設ける構成とすることも可能である。また、梯子体2・2の両方に規制解除部8を設け、それぞれの梯子体2・2における複数の踏桟4又は天板5に沿って操作部を設ける構成とすることも可能である。この場合、双方の梯子体2・2における複数の踏桟4又は天板5の近傍で操作部82bを操作することができるため、脚立1の大きさや形状を問わず、高い操作性を実現することができる。
【0080】
このように、本実施形態に係る脚立1においては、規制解除部材82の形状を変更することにより、操作部82bの配置の自由度を高めることができる。即ち、比較的大きなサイズの脚立1において、開き止め機構7が使用者の手の届きにくい高さにある場合でも、操作部82bを使用者の手の近傍に配置することができる。即ち、本実施形態に係る脚立1によれば、脚立1の大きさに関わらず、開き止め機構7及び規制解除部8を設けることが可能となる。
【0081】
なお、規制解除部材82の係合部82aは、第一アーム体7a又は第二アーム体7bの何れの下方に配置する構成とすることも可能である。即ち、係合部82aが上方に変位してアーム部材を屈曲させる構成であれば、第一アーム体7a又は第二アーム体7bの何れの下方に係合部82aを配置する構成でも差し支えない。
【0082】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、規制解除部材82において、連係部82c・82cは操作部82bの両端に設けられ、係合部82a・82aは二組のアーム部材を屈曲可能に規制解除部材82の両端部に設けられる。これにより、脚立1の使用者は操作部82bを一回操作するだけで、左右両側の開き止め機構7の規制を解除することができる。即ち、使用者が片手で規制解除部材82を操作するだけで脚立状態から閉状態とすることができるため、脚立1をより容易に脚立状態から閉状態とすることができる。
【0083】
なお、脚立1において、規制解除部材を左右の開き止め機構7のそれぞれに別々に設ける構成としても良い。この場合、それぞれの規制解除部材を操作することにより、脚立1を脚立状態から閉状態とすることができる。
【0084】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、一方の梯子体2にのみ規制解除部8を設ける構成としたが、梯子体2・2の両方に規制解除部8を設けることも可能である。この場合、前側と後側の何れの天板5の近傍においても操作部82bを操作することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、規制解除部材82を操作せずに、使用者が直接的に開き止め機構7を操作して、脚立1を脚立状態から閉状態とすることも可能である。具体的には、使用者が自らの手で回転連結部7dに対して下方から力を加え、回転連結部7dが上方に変位するように第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる。これにより、梯子体2・2の角度規制が解除され、梯子体2・2のなす角度が約30度よりも小さくなるように梯子体2・2を回動させることができ、脚立1が閉状態となる。このように、本実施形態に係る脚立1の使用者は、規制解除部材82と開き止め機構7との何れを操作した場合でも、脚立1を脚立状態から閉状態へと変形させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る脚立1によれば、規制解除部8の操作部82bは天板5に沿って同じ高さで形成されているが、操作部を屈曲させて形成することにより、天板5の下端面との高さ方向の相対位置を、長手方向位置によって変えることもできる。具体的には、操作部に低位置の変位許容部と、高位置の変位不能部と、を形成する。そして、脚立状態の際に、変位許容部を近接する天板5(又は踏桟4)の下端面よりも下側に位置させて、使用者による下方からの操作で上方に変位させることを可能とする。一方、変位不能部を近接する天板5(又は踏桟4)の下端面よりも上側に位置することにより、使用者による下方からの操作で上方に変位させることを不能とする。
【0087】
これにより、使用者が天板5において変位不能部に相当する部分を持った際は、脚立1を脚立状態のまま持ち上げることができる。即ち、本構成によれば、短い距離で脚立状態の脚立1を移動させる場合に、脚立1をその度に閉状態に変形することなく、天板5を支持して脚立1を持ち上げることが可能となる。
【0088】
次に、
図10から
図20を用いて、本発明の第二実施形態に係る脚立1Aについて説明する。本実施形態においては、
図10中に示す矢印の方向で、後述する開状態(脚立状態)における脚立1Aの方向を規定する。即ち、
図10に示す回動軸A(
図10中の一点鎖線を参照)の軸方向(踏桟4の架設方向)を脚立1Aの左右方向とする。また、水平方向において左右方向と直交する方向(梯子体2・2の開閉方向)を脚立1Aの前後方向とし、左右方向及び前後方向と直交する方向を脚立1Aの上下方向と規定する。
【0089】
本実施形態に係る脚立1Aにおいては、前記第一実施形態に係る脚立1における規制解除部8に代えて、規制解除部9が設けられている。このため、以下では、規制解除部9の構成を中心に説明し、他の構成については詳細な説明を省略する。
【0090】
本実施形態に係る脚立1Aにおいて、開き止め機構7は、脚立1Aが脚立状態の際に梯子体2・2における相対変位の規制を解除する、規制解除部9を備える。
図11から
図13に示す如く、本実施形態において規制解除部9は前側の梯子体2の上部における後面に設けられる。
【0091】
図14に示す如く、規制解除部9は、前側の梯子体2における左右両側の支柱3・3の後側の側板3sに設けられるブラケット91・91(詳細には、左側の支柱3に設けられる左ブラケット91L、及び、右側の支柱3に設けられる右ブラケット91R(
図14及び
図15を参照))と、左右のブラケット91・91に左右両端部が支持されてブラケット91・91の間に架け渡される棒状の規制解除部材92と、を備える。本実施形態において、左ブラケット91Lと右ブラケット91Rとは左右対称形状に形成されること以外は同一の構成であるため、以下では左ブラケット91Lについて説明し、右ブラケット91Rについては詳細な説明を省略する。
【0092】
本実施形態において、規制解除部材92は複数(本実施形態においては三個)の部材が組み合わせて形成される。具体的には
図19に示す如く、規制解除部材92は、クランク状に折り曲げられた二本の金属製の棒状部材を、樹脂製の柱状部材に組付けることにより構成される。なお、柱状部材をアルミニウム合金等の金属製とすることも可能である。
【0093】
金属製の棒状部材は外側端部が係合部92aとして形成され、内側端部が挿入部92dとして形成される。係合部92aと挿入部92dとの間には、係合部92a及び挿入部92dとに対して略直交する連係部92cが形成される。柱状部材は長手方向に直交する断面視で等脚台形状に形成された柱状部材であり、操作部92bとして形成される。
【0094】
操作部92bの両端部には孔部92eが形成されている。
図19に示す如く、それぞれの孔部92eに挿入部92dを挿入することにより、棒状部材と柱状部材とが組み合わされた規制解除部材92が構成される。このように、規制解除部材92は、その両端部において係合部92aと連係部92cとが一体的に構成された一対の棒状部材と、中央部に設けられた操作部92bと、が組み合わされて形成される。
【0095】
規制解除部材92において、操作部92bに形成された孔部92eは挿入部92dよりも少し大きな径で形成されている。このため、規制解除部材92を形成する際には、挿入部92dは孔部92eに遊嵌される(
図16及び
図18を参照)。これにより、操作部92bと、係合部92a及び連係部92cを構成する棒状部材とは、操作部92bの長手方向に向けた軸心回りに相対回転可能、かつ、同じく軸心方向に相対変位可能とされる。
【0096】
図18に示す如く、規制解除部材92において、操作部92bの前面(等脚台形の底辺に相当する面)には摺接面92fが形成されている。また、規制解除部材92において、操作部92bの下面(等脚台形の下側側辺に相当する面)には操作面92gが形成されている。
【0097】
規制解除部材92におけるそれぞれの係合部92a・92aは、
図11及び
図12に示す如く、脚立1Aが脚立状態の際に、梯子体2の左右両側に設けられたそれぞれのアーム部材における第一アーム体7a又は第二アーム体7bの下方に配置される。具体的には
図15に示す如く、脚立1Aの左側に延出される係合部92aは、左側に設けられた開き止め機構7の第一アーム体7aの下方に配置される。一方、
図15に示す如く、脚立1Aの右側に延出される係合部92aは、右側に設けられた開き止め機構7の第二アーム体7bの下方に配置される。
【0098】
操作部92bは
図12及び
図15に示す如く、脚立1Aが脚立状態の際に、天板5に近接する下側で天板5の長手方向に沿って配置される。連係部92c・92cは、支柱3の長手方向に沿って配置されて、係合部92a・92aと操作部92bとを連係する。
【0099】
規制解除部材92は、前側の梯子体2における両側にそれぞれ設けられた一対のブラケット91・91を介して梯子体2に組付けられている。
図14及び
図15に示す如く、ブラケット91は支柱3における側板3sに沿って設けられる長尺の部材である。
【0100】
図20(a)から(c)に示す如く、ブラケット91は、規制解除部材92の連係部92cを収容するブラケット本体部91aと、クリップ部91bと、を備える。ブラケット本体部91aの後面下部には水平方向に開口する開口部91cが形成されている。開口部91cは、梯子体2に組付けられた状態のブラケット91に対して規制解除部材92を挿入するための挿入口である(
図14を参照)。
【0101】
図20に示す如く、ブラケット本体部91aの前側内周面における上側には被摺接部91hが形成される。ブラケット本体部91aの側面には、規制解除部材92の係合部92aが互いに近接する方向に変位することを規制する規制部として、規制壁91fが形成される。ブラケット本体部91aの下端部には、規制解除部材92の係合部92aを支持する底部91iが形成される。ブラケット本体部91aの後側内周面における開口部91cの上側近傍には、ブラケット本体部91aの内側に向かって突出するガイド突起91gが形成される。
【0102】
ブラケット本体部91aとクリップ部91bとの間にはスリット91jが形成されている。そして、
図17に示す如く、支柱3における後側の側板3sをスリット91jに挿入し、ブラケット本体部91aとクリップ部91bとで側板3sを挟持することにより、ブラケット91が支柱3に固定される。
【0103】
具体的には、一対のブラケット91・91のブラケット本体部91aは、互いに対向する側(梯子体2における内側)が開放した筒形状に形成されている。ブラケット本体部91aにおけるスリット91jに面する側には、複数の挿入突起91kが突出して形成されている。スリット91jに支柱3の側板3sが挿入された際には、側板3sに形成された凹部に挿入突起91kが挿入されて、側板3sがブラケット本体部91aとクリップ部91bとにより挟持される。
【0104】
クリップ部91bの先端には、略直角方向に折り曲げられた鍔部91dがブラケット91の長手方向に沿って形成されている。鍔部91dの長手方向における中途部には、二箇所の位置決め部91e・91eが切り欠かれた形状に形成される。ブラケット91を支柱3に組付ける際に、それぞれの位置決め部91eにヒンジ6を固定するリベットRが挿入される(
図12及び
図13を参照)。これにより、梯子体2に対するブラケット91の位置決めがなされる。
【0105】
このように、本実施形態においては、別途位置決め部材を必要とせずにブラケット91の位置決めを容易に行うことができるように構成されている。なお、ブラケット91の位置決めに際しては、ヒンジ6とは異なる部材を支柱3に固定する固定具(例えば、踏桟4を支柱3に固定するリベット、又は、開き止め機構7を支柱3に回動支持する軸部材等)により、支柱3に対して位置決めされる構成とすることも可能である。
【0106】
規制解除部9を構成するブラケット91及び規制解除部材92を梯子体2に組付ける際は、まず
図14に示す如く二個のブラケット91・91(左ブラケット91L及び右ブラケット91R)をそれぞれ左右両側の支柱3の側板3sに内側から固定する。そして、ブラケット91・91の開口部91c・91cから規制解除部材92を挿入する。この際、ブラケット本体部91aの後面における開口部91cの上側は規制解除部材92によって弾性変形する。
【0107】
規制解除部材92の係合部92aが開口部91cを通過すると、
図15に示す如く規制解除部材92の係合部92a及び連係部92cはブラケット91の内部に収容される。ブラケット91の内部で、規制解除部材92はブラケット91の底部91iに支持される。
【0108】
上記の如く規制解除部材92がブラケット91・91に組付けられた際には、
図18に示す如く操作部92bの摺接面92fと、ブラケット本体部91aの内周面である被摺接部91hとが摺接する。これにより、ブラケット91に対する操作部92bの回転が規制される。そして、操作部92bは、脚立1Aが開状態の際に操作面92gが下方に向けて水平となる姿勢で配置される。
【0109】
なお、本実施形態における規制解除部に、前記第一実施形態に係る規制解除部材82を適用することも可能である。即ち、ブラケット91・91には、開口部91c・91cを介して第一実施形態に係る規制解除部材82を挿入することも可能である。
【0110】
本実施形態に係る脚立1Aにおいては、脚立状態において規制解除部材92を操作することにより、脚立1Aを閉状態とすることができる。具体的には
図13に示す如く、使用者が天板5の下方に手を差し入れて、規制解除部材92の操作面92gを押し上げて、操作部92bを上方に変位させる。これにより、連係部92c・92c及び係合部92a・92aが上方に変位する。そして、係合部92a・92aが第一アーム体7a及び第二アーム体7bを上方に回動させてアーム部材を屈曲させる。
【0111】
即ち、係合部92aを上方に変位させることにより、回転連結部7dが上方に変位するように第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる。これにより、梯子体2・2の角度規制が解除され、梯子体2・2のなす角度が約30度よりも小さくなるように梯子体2・2を回動させることができる。そして、使用者が天板5を下から支えることにより、梯子体2・2は自重により互いに近接してその相対角度が約0度となり、脚立1Aが閉状態となる。
【0112】
本実施形態においては、操作部92bにおける操作面92gの少なくとも一部の上下方向位置が、規制解除部材92の直上に位置する天板5の下面と近接した際に、係合部92a・92aが第一アーム体7aと第二アーム体7bとからなるアーム部材を屈曲させるように構成している。これにより、使用者が操作面92gの左右何れかの端部を上方に押し上げた場合でも、脚立1Aを開状態から閉状態に変形させることを可能としている。
【0113】
このように、脚立1Aが脚立状態の際に使用者が操作部92bを操作する動作を行うことにより、脚立1Aを閉状態とすることができる。また、使用者は操作部92bを上方に操作する動作に連続して天板5を持ち上げることができる。即ち、脚立1Aの使用者は脚立状態から閉状態にする動作と、閉状態の脚立1Aを持ち上げる動作とをほぼ同時にワンタッチで行うことが可能となる。
【0114】
本実施形態においては、操作部92bを樹脂製の柱状部材で形成することにより、操作部92bの長手方向の剛性を高めている。このため、使用者が操作部92bを操作する動作に連続して天板5を持ち上げた場合でも、操作部92bが折れ曲がったり変形したりすることを抑制できる。
【0115】
なお、脚立1Aが脚立状態の際に、規制解除部材における操作部を操作して連係部を回動変位させ、第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる構成とすることもできる。この構成によっても、梯子体2・2の角度規制が解除され、脚立1Aを閉状態とすることができる。
【0116】
なお、本実施形態に係る脚立1Aにおいて、規制解除部9が設けられた梯子体2が上側となる梯子状態とした場合に、規制解除部材92が自重で下方に位置する。このため、操作部92bは、近接する天板5の上端面よりも下側に位置する(
図13において天地を逆にした状態)。これにより、使用者が脚立1Aを梯子状態で使用する場合でも、操作部92bが天板5における裏面5Rの上側で使用の障害とならないように構成している。
【0117】
一方、脚立1Aを、規制解除部9が設けられた梯子体2が下側となる梯子状態とした場合は、操作部92bは
図12に示す如く近接する天板5よりも下側に位置する。即ち、この場合でも、操作部92bが天板5の使用の障害となることはない。
【0118】
上記の如く、本実施形態に係る脚立1Aにおいて、開き止め機構7が備える規制解除部材92は、脚立1Aが脚立状態の際に梯子体2・2における相対変位の規制を解除する。これにより、使用者が片手で規制解除部材92を操作するだけで、脚立1Aを脚立状態から閉状態に変形することが可能となる。即ち、使用者が道具を持っている等、両手を使用することが困難な状況でも、脚立1Aを容易に脚立状態から閉状態に変形することができる。
【0119】
また、本実施形態に係る脚立1Aによれば、規制解除部9の操作部92bを天板5の近傍に配置する構成としたが、ブラケット91及び連係部92cの形状等を変更することにより、操作部92bを踏桟4の近傍に配置する構成とすることも可能である。この場合、踏桟4の近傍で操作部92bを操作することができるため、脚立1Aが比較的長く天板5の位置が高くなる場合でも操作性を損なうことがない。
【0120】
上記の如く、操作部92bを踏桟4の近傍に配置した場合は、操作部92bにおける操作面92gの少なくとも一部の上下方向位置が、規制解除部材92の直上に位置する踏桟4の下面と近接した際に、係合部92a・92aが第一アーム体7aと第二アーム体7bとからなるアーム部材を屈曲させるように構成される。これにより、使用者が操作面92gの左右何れかの端部を上方に押し上げた場合でも、脚立1Aを開状態から閉状態に変形させることが可能となる。
【0121】
このように、本実施形態に係る脚立1Aにおいては、規制解除部材92の形状を変更することにより、操作部92bの配置の自由度を高めることができる。即ち、比較的大きなサイズの脚立1Aにおいて、開き止め機構7が使用者の手の届きにくい高さにある場合でも、操作部92bを使用者の手の近傍に配置することができる。即ち、本実施形態に係る脚立1Aによれば、脚立1Aの大きさに関わらず、開き止め機構7及び規制解除部9を設けることが可能となる。
【0122】
なお、規制解除部材92の係合部92aは、第一アーム体7a又は第二アーム体7bの何れの下方に配置する構成とすることも可能である。即ち、係合部92aが上方に変位してアーム部材を屈曲させる構成であれば、第一アーム体7a又は第二アーム体7bの何れの下方に係合部92aを配置する構成でも差し支えない。
【0123】
また、本実施形態に係る脚立1Aによれば、規制解除部材92において、連係部92c・92cは操作部92bの両端に設けられ、係合部92a・92aは二組のアーム部材を屈曲可能に規制解除部材92の両端部に設けられる。これにより、脚立1Aの使用者は操作部92bを一回操作するだけで、左右両側の開き止め機構7の規制を解除することができる。即ち、使用者が片手で規制解除部材92を操作するだけで脚立状態から閉状態とすることができるため、脚立1Aをより容易に脚立状態から閉状態とすることができる。
【0124】
また、本実施形態に係る脚立1Aによれば、一方の梯子体2にのみ規制解除部9を設ける構成としたが、梯子体2・2の両方に規制解除部9を設けることも可能である。この場合、前側と後側の何れの天板5の近傍においても操作部92bを操作することができる。
【0125】
また、本実施形態に係る脚立1Aによれば、規制解除部材92を操作せずに、使用者が直接的に開き止め機構7を操作して、脚立1Aを脚立状態から閉状態とすることも可能である。具体的には、使用者が自らの手で回転連結部7dに対して下方から力を加え、回転連結部7dが上方に変位するように第一アーム体7aと第二アーム体7bとを相対回転させる。これにより、梯子体2・2の角度規制が解除され、梯子体2・2のなす角度が約30度よりも小さくなるように梯子体2・2を回動させることができ、脚立1Aが閉状態となる。このように、本実施形態に係る脚立1Aの使用者は、規制解除部材92と開き止め機構7との何れを操作した場合でも、脚立1Aを脚立状態から閉状態へと変形させることができる。
【0126】
上記の如く、本実施形態に係る脚立1Aにおいては、クランク状に折り曲げられて係合部92a及び連係部92cを構成する二本の棒状部材と、操作部92bを構成する柱状部材と、を組み合わせて規制解除部材92を形成している。これにより、規制解除部材92を形成する際に、棒状部材と柱状部材との位置合わせなどの形状の調整を容易に行うことができる。このため、規制解除部材を一部材で形成する場合(例えば一本の棒状部材を折り曲げることにより形成する場合)と比較して、部品ごとの寸法精度を低く設定することができる。即ち、規制解除部材92を簡易な構成で精度良く形成することが可能となる。
【0127】
また、本実施形態における規制解除部材92は、係合部92a及び連係部92cを構成する棒状部材の一端(挿入部92d)が操作部92bの両端部に形成された孔部92eに遊嵌されることにより形成される。これにより、規制解除部材92に外部からの力が加わって、係合部92aや連係部92cが操作部92bに対して変形した場合でも、棒状部材と柱状部材との相対変位が許容されているため、規制解除部材92が再び元の形状に戻ることができる。即ち、規制解除部材92の形状の自由度を高めることができるため、規制解除部材92が変形した状態が維持されてブラケット91の内部で引っ掛かって上下に変位し難くなることを防止できる。
【0128】
また、本実施形態における規制解除部材92は、係合部92a及び連係部92cを構成する棒状部材と操作部92bとは、操作部92bの長手方向(左右方向)に向けた軸心回りに相対回転可能、かつ、軸心方向に相対変位可能とされる。これにより、規制解除部材92の形状の自由度をより高めることができるため、規制解除部材92がブラケット91の内部でよりスムーズに変位することが可能となる。
【0129】
また、本実施形態における規制解除部材92において、操作部92bには摺接面92fが形成されている。そして、規制解除部材92がブラケット91に組付けられた際に、摺接面92fとブラケット本体部91aの内周面である被摺接部91hとが摺接することにより、ブラケット91に対する操作部92bの回転が規制される。これにより、ブラケット91に対する操作部92bの姿勢を常に一定にして、操作部92bを安定的に配置することが可能となる。
【0130】
また、本実施形態における規制解除部材92において、操作部92bには操作面92gが形成され、操作部92bは、
図18に示す如く開状態の際に操作面92gが下方に向けて水平となるように設けられている。これにより、使用者が操作部92bを操作する際に、常に操作面92gが手に触れることになるため、使用者の操作感を向上させることが可能となる。
【0131】
また、本実施形態に係る脚立1Aにおいて、ブラケット91におけるブラケット本体部91aには、ブラケット91が梯子体2に組付けられた状態で規制解除部材92を挿入可能な開口部91cが形成されている。このように、本実施形態においては、ブラケット91と規制解除部材92とを同時に梯子体2に組付ける必要がなく、ブラケット91と規制解除部材92とを段階的に梯子体2に組付けることができる。即ち、規制解除部9を容易に梯子体2に組付けることが可能となるため、脚立1Aの組立を簡易に行うことができる。
【0132】
また、本実施形態に係る脚立1Aにおいて、ブラケット本体部91aに形成される開口部91cは、ブラケット本体部91aにおけるクリップ部91bの反対側の面(本実施形態においては後面)に形成される。これにより、クリップ部91bを介してブラケット91を梯子体2に組付けた状態で、開口部91cから規制解除部材92を挿入することが可能となる。
【0133】
また、本実施形態に係る脚立1Aにおいて、ブラケット本体部91aの下端部には、規制解除部材92の係合部92aを支持する底部91iが形成される。この底部91iで係合部92aを支持することにより、ブラケット91が規制解除部材92を安定的に保持することを可能としている。
【0134】
また、本実施形態に係る脚立1Aにおいて、ブラケット本体部91aには、規制解除部材92がブラケット91の内部の下方に位置する際に、係合部92aが互いに近接する内側方向への変位を規制する規制部として規制壁91fが形成される。これにより、係合部92aが内側に変位することによって係合部92aと第一アーム体7a及び第二アーム体7bとの係合が不充分となりアーム部材が屈曲しなくなることを防止している。
【0135】
本実施形態においては、ブラケット本体部91aの規制壁91fは、開口部91cの下側に形成されている。これにより、開口部91cに規制解除部材92を挿入する際にブラケット本体部91aにおける開口部91cの上側の弾性変形を許容している。
【0136】
なお、規制解除部材92の係合部92aが互いに近接する内側方向への変位を規制する規制部として、ブラケット本体部91aの内側面に規制突起を形成する構成とすることも可能である。
【0137】
また、本実施形態に係る脚立1Aにおいては
図17、
図18、及び
図20に示す如く、ブラケット本体部91aの内面における開口部91cの上側には、規制解除部材92の係合部92a・92aが互いに近接する方向への変形を規制するガイド突起91gが形成される。これにより、規制解除部材92を開口部91cに挿入する際に、ガイド突起91gが規制解除部材92の連係部92cと係合する。このため、ブラケット本体部91aの弾性力によって係合部92aが近接するように規制解除部材92が変形することを防止でき、規制解除部材92を円滑にブラケット91の内部に収容することが可能となる。
【符号の説明】
【0138】
1 脚立(第一実施形態)
1A 脚立(第二実施形態)
2 梯子体 3 支柱
3a 端具 3b 背板
3s 側板 4 踏桟
5 天板 6 ヒンジ(回転金具)
6a 第一ヒンジ部 6b 第二ヒンジ部
6c 回動支持部 7 開き止め機構
7a 第一アーム体 7b 第二アーム体
7c 回動軸 7d 回転連結部
7e 係合端部 7f 係合部材
7g 係合孔 7h ねじりバネ
8 規制解除部(第一実施形態)
9 規制解除部(第二実施形態)
81 ブラケット 81L 左ブラケット
81R 右ブラケット 81a ブラケット本体部
81b クリップ部 81c クリップ
81d 鍔部 81e 位置決め部
81f 壁体 81g 孔部
81h 支持突起 81i カバー部
81j スリット 81k 挿入突起
82 規制解除部材 82a 係合部
82b 操作部 82c 連係部
91 ブラケット 91L 左ブラケット
91R 右ブラケット 91a ブラケット本体部
91b クリップ部 91c 開口部
91d 鍔部 91e 位置決め部
91f 規制壁(規制部) 91g ガイド突起
91h 被摺接部 91i 底部
91j スリット 91k 挿入突起
92 規制解除部材 92a 係合部
92b 操作部 92c 連係部
92d 挿入部 92e 孔部
92f 摺接面 92g 操作面
A 回動軸 P1 第一ロックピン
P2 第二ロックピン R リベット
V1 上部間隙 V2 下部間隙