(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】地盤改良体
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20221111BHJP
E02D 27/08 20060101ALI20221111BHJP
E02D 27/28 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D27/08
E02D27/28
(21)【出願番号】P 2022001537
(22)【出願日】2022-01-07
【審査請求日】2022-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512171261
【氏名又は名称】株式会社タケウチ建設
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 謹治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002539(JP,A)
【文献】特開2005-146556(JP,A)
【文献】特開2002-061203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 27/08
E02D 27/28
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平板状の上部改良体と格子状の下部改良体とからなる地盤改良体であって、
前記下部改良体の深さを、前記地盤改良体の外周部から前記地盤改良体の中央部に向かって段階的に深くしてなり、
前記下部改良体は、
前記地盤改良体の外周部の柱及びフーチングを支持する外周部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記柱及び前記フーチングよりも前記地盤改良体の中央部に向かって離間した柱及びフーチングを支持する中間部改良体と、
前記地盤改良体の中央部の柱及びフーチングを支持する中央部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングと前記中間部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ外側連結改良体と、
前記中間部改良体が支持する前記フーチングと前記中央部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ内側連結改良体と、
を少なくとも備え、
前記外周部改良体の深さD1、前記中間部改良体の深さD2、前記中央部改良体の深さD3は、
D1<D2<D3で、
前記外側連結改良体の深さD12、前記内側連結改良体の深さD23は、
D12=D1、D23=D3である
、
地盤改良体。
【請求項2】
前記外周部改良体の幅W1、前記中間部改良体の幅W2、前記中央部改良体の幅W3は、
W1<W2<W3で、
前記外側連結改良体の幅W12、前記内側連結改良体の幅W23は、
W12=W2、W23=W3である、
請求項
1に記載の地盤改良体。
【請求項3】
水平板状の上部改良体と格子状の下部改良体とからなる地盤改良体であって、
前記下部改良体の深さを、前記地盤改良体の外周部から前記地盤改良体の中央部に向かって段階的に深くしてなり、
前記下部改良体は、
前記地盤改良体の外周部の柱及びフーチングを支持する外周部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記柱及び前記フーチングよりも前記地盤改良体の中央部に向かって離間した柱及びフーチングを支持する中間部改良体と、
前記地盤改良体の中央部の柱及びフーチングを支持する中央部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングと前記中間部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ外側連結改良体と、
前記中間部改良体が支持する前記フーチングと前記中央部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ内側連結改良体と、
を少なくとも備え、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記外周部改良体の深さD1、前記中間部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中間部改良体の深さD2、前記中央部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中央部改良体の深さD3は、
D1<D2<D3で、
前記外周部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記外周部改良体の深さD10、前記中間部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記中間部改良体の深さD20は、
D10=D1、D20=D2であり、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記外周部改良体の幅W1、前記中間部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中間部改良体の幅W2、前記中央部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中央部改良体の幅W3は、
W1<W2<W3であり、
前記外周部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記外周部改良体の幅W10は、W10<W1で、
前記中間部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記中間部改良体の幅W20は、W20<W2で、
前記外側連結改良体の幅W12は、W12<W1で、
前記内側連結改良体の幅W23は、W23<W2である
、
地盤改良体。
【請求項4】
W10=W20=W12=W23である、
請求項
3に記載の地盤改良体。
【請求項5】
水平板状の上部改良体と格子状の下部改良体とからなる地盤改良体であって、
前記下部改良体は、
前記地盤改良体の外周部の柱及びフーチングを支持する外周部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記柱及び前記フーチングよりも前記地盤改良体の中央部に向かって離間した柱及びフーチングを支持する中間部改良体と、
前記地盤改良体の中央部の柱及びフーチングを支持する中央部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングと前記中間部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ外側連結改良体と、
前記中間部改良体が支持する前記フーチングと前記中央部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ内側連結改良体と、
を少なくとも備え、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記外周部改良体の深さD1、前記中間部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中間部改良体の深さD2、前記中央部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中央部改良体の深さD3は、
D1<D2<D3で、
前記外周部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記外周部改良体の深さD10、前記中間部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記中間部改良体の深さD20は、
D10=D1、D20=D23で、
前記外側連結改良体の深さD12、前記内側連結改良体の深さD23は、
D12=D1、D12<D23<D2であり、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記外周部改良体の幅W1、前記中間部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中間部改良体の幅W2、前記中央部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中央部改良体の幅W3は、
W1<W2<W3であり、
前記外周部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記外周部改良体の幅W10は、W10<W1で、
前記中間部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記中間部改良体の幅W20は、W20<W2で、
前記外側連結改良体の幅W12は、W12<W1で、
前記内側連結改良体の幅W23は、W23<W2である、
地盤改良体。
【請求項6】
W10=W20=W12=W23である、
請求項
5に記載の地盤改良体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎下に構築する地盤改良体に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤上に建築物を建設する場合に、建築物の基礎下に構築する地盤改良体として、水平板状の上部改良体と格子状の下部改良体とからなるものがある(例えば、特許文献1の
図2及び
図3、並びに特許文献2の
図2及び
図3参照)。
【0003】
このような水平板状の上部改良体と格子状の下部改良体とからなる地盤改良体(以下、「格子状改良体を含む地盤改良体」という)は、建築物の基礎下の全体を地盤改良した地盤改良体と比較して、地盤改良体の重量(改良体積)を軽減しながら、不同沈下を抑制できる等の特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-302667号公報
【文献】特許第3608568号公報
【文献】特開平7-229153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定荷重(長期荷重)による柱軸力は、一般的に、外周部で小さく、中央部に行くにしたがって大きくなることが知られている(例えば、特許文献3の
図4参照)。
【0006】
しかしながら、従来の格子状改良体を含む地盤改良体では、中央部で決定された1次改良深さ及び幅を、周辺部にも適用している。
【0007】
したがって、従来の、格子状改良体を含む地盤改良体は、上記特徴を有するものであるが、地盤改良体の沈下量及び改良体積を一層低減するという観点で見ると、改良の余地がある。
【0008】
本発明は、従来の格子状改良体を含む地盤改良体と比較して、沈下量及び改良体積を一層低減できる地盤改良体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
〔1〕
水平板状の上部改良体と格子状の下部改良体とからなる地盤改良体であって、
前記下部改良体の深さを、前記地盤改良体の外周部から前記地盤改良体の中央部に向かって段階的に深くしてなり、
前記下部改良体は、
前記地盤改良体の外周部の柱及びフーチングを支持する外周部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記柱及び前記フーチングよりも前記地盤改良体の中央部に向かって離間した柱及びフーチングを支持する中間部改良体と、
前記地盤改良体の中央部の柱及びフーチングを支持する中央部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングと前記中間部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ外側連結改良体と、
前記中間部改良体が支持する前記フーチングと前記中央部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ内側連結改良体と、
を少なくとも備え、
前記外周部改良体の深さD1、前記中間部改良体の深さD2、前記中央部改良体の深さD3は、
D1<D2<D3で、
前記外側連結改良体の深さD12、前記内側連結改良体の深さD23は、
D12=D1、D23=D3である、
地盤改良体。
【0013】
〔2〕
前記外周部改良体の幅W1、前記中間部改良体の幅W2、前記中央部改良体の幅W3は、
W1<W2<W3で、
前記外側連結改良体の幅W12、前記内側連結改良体の幅W23は、
W12=W2、W23=W3である、
〔1〕に記載の地盤改良体。
【0014】
〔3〕
水平板状の上部改良体と格子状の下部改良体とからなる地盤改良体であって、
前記下部改良体の深さを、前記地盤改良体の外周部から前記地盤改良体の中央部に向かって段階的に深くしてなり、
前記下部改良体は、
前記地盤改良体の外周部の柱及びフーチングを支持する外周部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記柱及び前記フーチングよりも前記地盤改良体の中央部に向かって離間した柱及びフーチングを支持する中間部改良体と、
前記地盤改良体の中央部の柱及びフーチングを支持する中央部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングと前記中間部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ外側連結改良体と、
前記中間部改良体が支持する前記フーチングと前記中央部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ内側連結改良体と、
を少なくとも備え、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記外周部改良体の深さD1、前記中間部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中間部改良体の深さD2、前記中央部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中央部改良体の深さD3は、
D1<D2<D3で、
前記外周部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記外周部改良体の深さD10、前記中間部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記中間部改良体の深さD20は、
D10=D1、D20=D2であり、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記外周部改良体の幅W1、前記中間部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中間部改良体の幅W2、前記中央部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中央部改良体の幅W3は、
W1<W2<W3であり、
前記外周部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記外周部改良体の幅W10は、W10<W1で、
前記中間部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記中間部改良体の幅W20は、W20<W2で、
前記外側連結改良体の幅W12は、W12<W1で、
前記内側連結改良体の幅W23は、W23<W2である、
地盤改良体。
【0015】
〔4〕
W10=W20=W12=W23である、
〔3〕に記載の地盤改良体。
【0016】
〔5〕
水平板状の上部改良体と格子状の下部改良体とからなる地盤改良体であって、
前記下部改良体は、
前記地盤改良体の外周部の柱及びフーチングを支持する外周部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記柱及び前記フーチングよりも前記地盤改良体の中央部に向かって離間した柱及びフーチングを支持する中間部改良体と、
前記地盤改良体の中央部の柱及びフーチングを支持する中央部改良体と、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングと前記中間部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ外側連結改良体と、
前記中間部改良体が支持する前記フーチングと前記中央部改良体が支持する前記フーチングとの間を繋ぐ内側連結改良体と、
を少なくとも備え、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記外周部改良体の深さD1、前記中間部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中間部改良体の深さD2、前記中央部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中央部改良体の深さD3は、
D1<D2<D3で、
前記外周部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記外周部改良体の深さD10、前記中間部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記中間部改良体の深さD20は、
D10=D1、D20=D23で、
前記外側連結改良体の深さD12、前記内側連結改良体の深さD23は、
D12=D1、D12<D23<D2であり、
前記外周部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記外周部改良体の幅W1、前記中間部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中間部改良体の幅W2、前記中央部改良体が支持する前記フーチングまわりの前記中央部改良体の幅W3は、
W1<W2<W3であり、
前記外周部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記外周部改良体の幅W10は、W10<W1で、
前記中間部改良体が支持する隣り合う前記フーチングの間の前記中間部改良体の幅W20は、W20<W2で、
前記外側連結改良体の幅W12は、W12<W1で、
前記内側連結改良体の幅W23は、W23<W2である、
地盤改良体。
【0017】
〔6〕
W10=W20=W12=W23である、
〔5〕に記載の地盤改良体。
【発明の効果】
【0018】
本発明の地盤改良体によれば、地盤改良体の接地圧を外周部と中央部とで均衡させることにより、従来の格子状改良体を含む地盤改良体と比較して、絶対沈下量を抑制できるとともに、相対沈下量が小さくなるので不同沈下を緩和できる。その上、地盤改良体の体積を小さくできるので、施工コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る第1実施例の地盤改良体を含む建築物の基礎構造の例を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る第2実施例の地盤改良体を含む建築物の基礎構造の例を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る第3実施例の地盤改良体を含む建築物の基礎構造の例を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る第4実施例の地盤改良体を含む建築物の基礎構造の例を示す平面図である。
【
図9】比較例の地盤改良体を含む建築物の基礎構造の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1の平面図、及び
図2Aないし
図2Eの断面図を代表させて参照し、地盤改良体1の構造、及び施工方法について説明する。
【0022】
<地盤改良体の構造>
地盤改良体1は、水平板状の上部改良体2と格子状の下部改良体3とからなる。
【0023】
<地盤改良体の施工方法>
(掘下げ工程)
先ず、地表面GLから下側の表層地盤Gを、例えばバックホウによる鋤取り等により所要形状に掘り下げる。
【0024】
(一次改良工程)
次に、下部改良体3の形状に、アタッチメントとしてミキシングフォークを装着したバックホウ等により掘削し、セメント系固化材等の固化材を添加混合しながら混合攪拌し、重機及びローラー等により締め固めて下部改良体3を形成する。
【0025】
(二次改良工程)
次に、前記掘下げ工程により掘り下げた土を、バックホウ等により下部改良体3の上側に埋め戻し、アタッチメントとしてミキシングフォークを装着したバックホウ等により、表層地盤Gを地表面GLから上部改良体2の形状に掘削し、固化材を添加混合しながら混合攪拌し、重機及びローラー等により締め固めて上部改良体2を形成する。
【0026】
<柱、フーチング等の構築>
地盤改良体1を施工後、フーチング(柱下のコンクリート基礎)、柱等を構築する。すなわち、
図1の平面図に示す格子状の下部改良体3の交点の上方の上部改良体2の上部を所要形状に掘削し、フーチングF1,F2,F3を打設し、柱C1,C2,C3を設置し、土間コンクリートEを打設する。
【0027】
<実施の形態の説明>
以下に示す実施の形態において、第1実施例ないし第3実施例は、下部改良体3の深さを、地盤改良体1の外周部Bから地盤改良体1の中央部Cに向かって段階的に深くしている。以下に示す第4実施例は、全体として、下部改良体3の深さを、地盤改良体1の外周部Bから地盤改良体1の中央部Cに向かって段階的に深くする傾向を有するが、一部の地盤改良体(中間部改良体A2が支持する隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2、及び内側連結改良体A23)の深さを小さくしている。
【0028】
第1実施例(
図1、
図2Aないし
図2E)は、下部改良体3の深さを中央部Cに向かって段階的に深くする例である。
【0029】
第2実施例(
図3、
図4Aないし
図4E)は、第1実施例に対して、下部改良体3の幅を、外周部Bを小さくし中央部Cを大きくするように、中央部Cに向かって段階的に大きくする例である。
【0030】
第3実施例(
図5、
図6Aないし
図6E)は、第2実施例に対して、外周部改良体A1が支持する隣り合うフーチングF1,F1の間の外周部改良体A1の幅W10を、外周部改良体A1が支持するフーチングF1まわりの外周部改良体A1の幅W1よりも小さくし(W10<W1)、中間部改良体A2が支持する隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2の幅W20を、中間部改良体A2が支持するフーチングF2まわりの中間部改良体A2の幅W2よりも小さくし(W20<W2)、外側連結改良体A12の幅W12を、幅W1よりも小さくし(W12<W1)、内側連結改良体A23の幅W23を、幅W2よりも小さくする(W23<W2)例である。
【0031】
第4実施例(
図7、
図8Aないし
図8E)は、第3実施例に対して、中間部改良体A2が支持する隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2の深さD20、及び内側連結改良体A23の深さD23を、所定値以下にする例、例えば、中間部改良体A2の深さD2よりも小さくする(D20<D2、D23<D2)例である。
【0032】
以下に示す
図1、
図3、
図5、及び
図7の平面図の例において、地盤改良体1は、地盤改良体1の中央部Cにある柱C3まわりに90°回転すると重なる、4回対称の回転対称であるが、地盤改良体1はこのような構造に限定されない。
【0033】
(第1実施例)
図1の平面図、及び
図2Aないし
図2Eの断面図に示す第1実施例において、下部改良体3は、外周部改良体A1、中間部改良体A2、及び中央部改良体A3、並びに、外側連結改良体A12、及び内側連結改良体A23を備える。
【0034】
外周部改良体A1は、地盤改良体1の外周部Bの柱C1及びフーチングF1を支持する。中間部改良体A2は、外周部改良体A1が支持する柱C1及びフーチングF1よりも地盤改良体1の中央部Cに向かって離間した柱C2及びフーチングF2を支持する。中央部改良体A3は、地盤改良体1の中央部Cの柱C3及びフーチングF3を支持する。
【0035】
外側連結改良体A12は、外周部改良体A1が支持するフーチングF1と中間部改良体A2が支持するフーチングF2との間を繋ぐ。内側連結改良体A23は、中間部改良体A2が支持するフーチングF2と中央部改良体A3が支持するフーチングF3との間を繋ぐ。
【0036】
外周部改良体A1の深さD1、中間部改良体A2の深さD2、中央部改良体A3の深さD3は、D1<D2<D3である。外側連結改良体A12の深さD12、内側連結改良体A23の深さD23は、D12=D1、D23=D3である。
【0037】
外周部改良体A1の幅W1、中間部改良体A2の幅W2、中央部改良体A3の幅W3、外側連結改良体A12の幅W12、及び内側連結改良体A23の幅W23は等しい。すなわち、W1=W2=W3=W12=W23である。
【0038】
(第2実施例)
図3の平面図、及び
図4Aないし
図4Eの断面図に示す第2実施例における下部改良体3は、前記のとおり、第1実施例に対して、下部改良体3の幅を、外周部Bを小さくし中央部Cを大きくするように、中央部Cに向かって段階的に大きくしている点が、第1実施例と異なる。
【0039】
すなわち、外周部改良体A1の幅W1、中間部改良体A2の幅W2、中央部改良体A3の幅W3は、W1<W2<W3であり、外側連結改良体A12の幅W12、内側連結改良体A23の幅W23は、W12=W2、W23=W3である。
【0040】
(第3実施例)
図5の平面図、及び
図6Aないし
図6Eの断面図に示す第3実施例における下部改良体3は、前記のとおり、第2実施例に対して、外周部改良体A1が支持する隣り合うフーチングF1,F1の間の外周部改良体A1の幅W10、中間部改良体A2が支持する隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2の幅W20、外側連結改良体A12の幅W12、内側連結改良体A23の幅W23を小さくしている点が、第2実施例と異なる。
【0041】
すなわち、外周部改良体A1が支持するフーチングF1まわりの外周部改良体A1の幅W1、中間部改良体A2が支持するフーチングF2まわりの中間部改良体A2の幅W2、中央部改良体A3が支持するフーチングA3まわりの中央部改良体A3の幅W3は、W1<W2<W3であり、W10<W1、W20<W2、W12<W1、W23<W2である。
図5に示す例では、W10=W20=W12=W23としている。
【0042】
また、
図6Aないし
図6Eに示すように、外周部改良体A1が支持するフーチングF1まわりの外周部改良体の深さD1、中間部改良体A2が支持するフーチングF2まわりの中間部改良体A2の深さD2、中央部改良体A3が支持するフーチングF3まわりの中央部改良体A3の深さD3は、D1<D2<D3であり、外周部改良体A1が支持する隣り合うフーチングF1,F1の間の外周部改良体A1の深さD10、中間部改良体A2が支持する隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2の深さD20は、D10=D1、D20=D2である。
【0043】
(第4実施例)
図7の平面図、及び
図8Aないし
図8Eの断面図に示す第4実施例における下部改良体3は、前記のとおり、第3実施例に対して、中間部改良体A2が支持する隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2の深さD20、及び内側連結改良体A23の深さD23を小さくしている点が、第3実施例と異なる。
【0044】
すなわち、外周部改良体A1が支持するフーチングF1まわりの外周部改良体の深さD1、中間部改良体A2が支持するフーチングF2まわりの中間部改良体F2の深さD2、中央部改良体A3が支持するフーチングF3まわりの中央部改良体A3の深さD3は、D1<D2<D3であり、外周部改良体A1が支持する隣り合うフーチングF1,F1の間の外周部改良体A1の深さD10、中間部改良体A2が支持する隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2の深さD20は、D10=D1、D20=D23で、外側連結改良体の深さD12、内側連結改良体の深さD23は、D12=D1、D12<D23<D2である。
【0045】
本発明の地盤改良体1は、例えば、設計の際に中央部Cで決定された下部改良体3の深さ及び幅(1次改良深さ及び幅)に対し、周辺部Bに行くにしたがって、下部改良体3の深さ、又は深さ及び幅を小さくし、地盤改良体の接地圧を中央部Cと外周部Bで均衡させることができる。それにより、従来の格子状改良体を含む地盤改良体と比較して、絶対沈下量を抑制できるとともに、相対沈下量が小さくなるので不同沈下を緩和できる。その上、地盤改良体の体積を小さくできるので、施工コストを低減できる。
【0046】
<数値解析>
次に、本発明の効果確認のために行った数値解析について説明する。
【0047】
(解析方法)
表層地盤Gを深さ20mの粘土層とし、地盤FEM(Finite Element Method)解析ソフトウェア(PLAXIS)を用いて数値解析を行う。評価項目は、「下部改良体3下の接地圧」、「最大絶対沈下量」、「最大相対沈下量」、「地盤改良体1の体積」とする。
【0048】
「絶対沈下量」とは、建物やフーチングなど、すべての荷重が載荷される前の状態の沈下量を0とした時の、荷重による沈下量である。「最大絶対沈下量」は、敷地内の絶対沈下量の最大の値である。
【0049】
「相対沈下量」とは、荷重による沈下後、敷地内の点のうち、一番小さい絶対沈下量を0とした時の、他の点の沈下量である。「最大相対沈下量」は、敷地内の相対沈下量の最大の値である。
【0050】
(実施例及び比較例)
実施例は、第1実施例ないし第4実施例とする。比較例は、
図9の平面図、及び
図10Aないし
図10Eの断面図に示す例とする。すなわち、比較例では、格子状の下部改良体3の幅が等しく(W1=W2=W3=W12=W23)、下部改良体3の厚みが等しい(D1=D2=D3=D12=D23)。
【0051】
地盤改良体1の大きさは、例えば
図1に示す符号Hである隣り合う柱間の距離を10m、上部改良体2の厚みを1mとし、下部改良体3の厚み及び幅を、実施例及び比較例について以下の(1)ないし(5)のとおりとする。また、土間コンクリートEの厚みは0.2mとする。
【0052】
(1)第1実施例(
図1、
図2Aないし
図2E)
D1=D12=1m、D2=2m、D3=D23=3m
W1=W2=W3=W12=W23=4.6m
【0053】
(2)第2実施例(
図3、
図4Aないし
図4E)
D1=D12=1m、D2=2m、D3=D23=3m
W1=4m、W2=W12=5.4m、W3=W23=6.4m
【0054】
(3)第3実施例(
図5、
図6Aないし
図6E)
D1=D10=D12=1m、D2=D20=2m、D3=D23=3m
W1=4m、W2=5.4m、W3=6.4m
W10=W20=W12=W23=3m
【0055】
(4)第4実施例(
図7、
図8Aないし
図8E)
D1=D10=D12=1m、D2=2m、D3=3m
D20=D23=1.5m
【0056】
(5)比較例(
図9、
図10Aないし
図10E)
D1=D2=D3=D12=D23=1.5m
W1=W2=W3=W12=W23=4.6m
【0057】
(荷重条件)
地盤改良体3下の接地圧は、集中荷重(=柱軸力:建物の自重+2階以上の積載荷重)による接地圧と面荷重(1階の積載荷重+土間自重+フーチング自重+地盤改良体の自重)による接地圧に分けることができる。
【0058】
地盤改良体3下の集中荷重による接地圧は、その直下において集中するため大きなものになり沈下への影響が大きい。一方、面荷重は、用地全体に均等に載荷され、単位面積の接地圧は柱荷重に比べて小さくかつ均等化するため、不同沈下への影響は柱荷重に比べて小さい。
【0059】
「下部改良体3下の接地圧」を求める解析における荷重は、不同沈下への影響が大きい集中荷重による接地圧の違いを明示するため、前記「集中荷重」のみとしている。解析における集中荷重は、実際に作用する、外周部Bから中央部Cに行くにしたがって大きくなる固定荷重(長期荷重)を模して、地盤改良体1の外周部Bの16本の柱C1に掛かる集中荷重を、それぞれ200kNとし、中央部C及び中間部の9本の柱C3、C2に掛かる集中荷重を、それぞれ400kNとする。
【0060】
「最大絶対沈下量」及び「最大相対沈下量」を求める解析における荷重は、上記「集中荷重」に加え、面荷重(土間コンクリートEによる自重と積載荷重に基づく荷重として、土間コンクリートEの範囲に面荷重14.8kN/m2、フーチングF1,F2,F3の自重24kN/m3、地盤改良体1の自重17kN/m3)を作用させる。
【0061】
(解析結果及び考察)
解析結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
表1の「下部改良体3下の接地圧」を見ると、第1実施例ないし第4実施例は、比較例に対して、外周部Bと中央部Cの接地圧が均衡又は逆転している。沈下量は接地圧にほぼ比例するので、表1の「沈下量」のように、第1実施例ないし第4実施例は、比較例よりも、絶対沈下量を抑制することができるとともに、相対沈下量が小さくなるので不同沈下を緩和できる。
【0064】
表1の「地盤改良体1の体積」を見ると、比較例に対して、第1実施例では4%、第2実施例では1%、第3実施例では15%、第4実施例では18%、地盤改良体1の体積が小さくなっている。それにより、施工コストを低減できる。
【0065】
特に、第3実施例及び第4実施例のように、外周部改良体A1が支持する隣り合うフーチングF1,F1の間の外周部改良体A1の幅W10、中間部改良体A2が支持する隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2の幅W20、外側連結改良体A12の幅W12、内側連結改良体A23の幅W23を小さくすることにより、不同沈下を緩和しながら、地盤改良体1の体積(重量)を大幅に低減できるので、施工コストを低減する効果が大きくなることが分かる。
【0066】
フーチングF1,F2,F3の大きさは、建物からの応力と、地盤改良及び原地盤が持つ地盤強度で決定されるため、フーチングF1まわりの外周部改良体A1の幅W1、フーチングF2まわりの中間部改良体A2の幅W2、フーチングA3まわりの中央部改良体A3の幅W3には制限があり、それらは所要の大きさ以下にすることができない。したがって、特に、第3実施例及び第4実施例のように、隣り合うフーチングF1,F1の間の外周部改良体A1の幅W10、隣り合うフーチングF2,F2の間の中間部改良体A2の幅W20、外側連結改良体A12の幅W12、内側連結改良体A23の幅W23を小さくすること(W10<W1、W20<W2、W12<W1、W23<W2<W3)により、不同沈下を緩和しながら、地盤改良体1の体積(重量)を大幅に低減することを実現できる。
【0067】
従来の設計施工では、中央部作用力による地盤接地圧<地盤強度(許容値)を基準とし、上記基準を満たす範囲で地盤接地圧を最大にすることで、フーチング、地盤改良体積を最小化していた。それに対して本発明では、中央部作用力による地盤接地圧≦外周部作用力による地盤接地圧<地盤強度(許容値)を基準として適用し、不同沈下の抑制を優先に設計施工するものである。すなわち、本発明の趣旨は、中央部においては、不同沈下の抑制が達成するまで、フーチングおよび地盤改良を大きくする点にある。しかし中央部の改良体積が増えるため、全体コストが上がる。そこで、本願の発明者は、基礎―基礎間の改良体積を小さくすることで、不同沈下の抑制効果は維持したまま、コストの上昇を相殺する、又は、よりコストを引き下げる効果を期待し、前記効果を本解析で証明した。
【0068】
本発明の地盤改良体は、上記作用効果を奏することから、特に、工場、ショッピングセンター、倉庫、住宅等の低層で建築面積の大きい建物の基礎下に構築する地盤改良体として好適なものである。
【0069】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 地盤改良体
2 上部改良体
3 下部改良体
A1 外周部改良体
A2 中間部改良体
A3 中央部改良体
A12 外側連結改良体
A23 内側連結改良体
B 地盤改良体の外周部
C 地盤改良体の中央部
C1,C2,C3 柱
D1 外周部改良体の深さ
D2 中間部改良体の深さ
D3 中央部改良体の深さ
D10 外周部改良体が支持する隣り合うフーチングの間の外周部改良体の深さ
D12 外側連結改良体の深さ
D20 中間部改良体が支持する隣り合うフーチングの間の中間部改良体の深さ
D23 内側連結改良体の深さ
E 土間コンクリート
F1,F2,F3 フーチング
G 表層地盤
GL 地表面
H 隣り合う柱間の距離
W1 外周部改良体の幅、外周部改良体が支持するフーチングまわりの外周部改良体の幅
W2 中間部改良体の幅、中間部改良体が支持するフーチングまわりの中間部改良体の幅
W3 中央部改良体の幅、中央部改良体が支持するフーチングまわりの中央部改良体の幅
W10 外周部改良体が支持する隣り合うフーチングの間の外周部改良体の幅
W12 外側連結改良体の幅
W20 中間部改良体が支持する隣り合うフーチングの間の中間部改良体の幅
W23 内側連結改良体の幅
【要約】
【課題】従来の格子状改良体を含む地盤改良体と比較して、沈下量及び改良体積を一層低減できる地盤改良体を提供する。
【解決手段】地盤改良体1は、水平板状の上部改良体2と格子状の下部改良体3とからなる。下部改良体3の深さを、地盤改良体1の外周部から地盤改良体2の中央部に向かって段階的に深くする。それにより、地盤改良体1の接地圧を外周部と中央部とで均衡させる。従来の格子状改良体を含む地盤改良体と比較して、絶対沈下量を抑制できるとともに、相対沈下量が小さくなるので不同沈下を緩和できる。その上、地盤改良体1の体積を小さくできるので、施工コストを低減できる。
【選択図】
図2B