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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】メタン発酵システム及びメタン発酵方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/65 20220101AFI20221111BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
B09B3/65 ZAB
C02F11/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016250071
(22)【出願日】2016-12-22
(65)【公開番号】P2018103079
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-10-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 繁人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 謙三
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-142594(JP,A)
【文献】特開2008-30008(JP,A)
【文献】特開2004-82017(JP,A)
【文献】特開2009-248041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
C02F11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを生成するためのメタン発酵システムであって、
前記有機性廃棄物をメタン菌によってメタン発酵させるための第1の発酵槽と、
前記第1の発酵槽と異なる温度帯で運転され、前記第1の発酵槽で用いられたメタン菌によって、前記第1の発酵槽中の残渣をさらにメタン発酵させるための第2の発酵槽とを備え、
前記第1の発酵槽内の温度は、中温発酵の温度域である30~40℃の範囲であり、
前記第2の発酵槽内の温度は、前記第1の発酵槽内の温度より高く、かつ中温発酵の温度域である40~45℃の範囲であり、
前記メタン菌は、前記第1の発酵槽および前記第2の発酵槽内で生存可能であることを特徴とする、メタン発酵システム。
【請求項2】
前記第2の発酵槽での発酵後における廃棄物の一定量を、固液分離するための固液分離槽をさらに備える、請求項1に記載のメタン発酵システム。
【請求項3】
有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを生成するためのメタン発酵方法であって、
前記有機性廃棄物を、第1の発酵槽へ投入する工程と、
メタン菌を第1の発酵槽へ投入する工程と、
前記第1の発酵槽での前記有機性廃棄物の所定日数の発酵によって生成されたバイオガスを回収する工程と、
前記第1の発酵槽中の残渣の一定量を、前記第1の発酵槽と異なる温度帯で運転される第2の発酵槽へ投入する工程と、
前記第2の発酵槽へ投入された前記残渣を、前記第1の発酵槽へ投入したメタン菌を用いて前記第2の発酵槽内でさらに発酵させることで生成されたバイオガスを回収する工程とを備え、
前記第1の発酵槽内の温度は、中温発酵の温度域である30~40℃の範囲であり、
前記第2の発酵槽内の温度は、前記第1の発酵槽内の温度より高く、かつ中温発酵の温度域である40~45℃の範囲であることを特徴とする、メタン発酵方法。
【請求項4】
前記第2の発酵槽での発酵後における廃棄物の一定量を、固液分離する工程をさらに備える、請求項3に記載のメタン発酵方法。
【請求項5】
前記第1の発酵槽中の残渣の一定量を第2の発酵槽へ投入する工程の後、
前記第2の発酵槽へ投入した前記残渣と同量の有機性廃棄物を、前記第1の発酵槽に投入する工程をさらに備える、請求項3又は4に記載のメタン発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物等のバイオマス原料から、メタン等のバイオガスを生成させるメタン発酵システム及びメタン発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機性廃棄物等のバイオマス原料(生物資源)から、種々の発酵技術によって、バイオガスを生成させることが広く行われている。例えば、有機性廃棄物等のバイオマス原料から種々の発酵技術によって、メタンを生成させる場合、二相四段階の発酵プロセス、すなわち、酸生成相(液化、加水分解及び酸生成)と、メタン生成相(水素生成、酢酸生成及びメタン生成)とによって、メタン発酵が行われる。
【0003】
有機性廃棄物等のバイオマス原料には、糖質、タンパク質、脂肪等が含まれており、これらを液化、加水分解等によって低分子化、酸生成し、低級脂肪酸及びアルコールを生成させる。そして、水素生成、酢酸生成によって、水素+二酸化炭素、又は酢酸を、細菌(メタン菌)を用いて発酵させることで、メタンが生成される。このようにして生成されたバイオガス(メタン)及び熱を、回収するようになっている。
【0004】
通常のバイオガス発電設備では、バイオマス原料を、36℃程度の中温、或いは55℃程度の高温で発酵させている場合が多い。
【0005】
有機性廃棄物等のバイオマス原料が、複合資材から形成されている場合、バイオマス原料に適合して発酵させる細菌の条件を、明確に選択できない。このような場合、複合資材から形成されたバイオマス原料(例えば、生ごみ、糞尿等)を、36℃程度の中温で発酵させるようにしている。
【0006】
36℃程度の中温で発酵させると、発酵中の安定性が維持されるとともに、細菌の管理がしやすく、発酵反応が安定的に進むという利点がある。その反面、36℃程度の中温で発酵させると、分解速度が遅い、ガス発生速度が遅い、未発酵の残渣が残る、滞留時間が長い等の問題がある。
【0007】
そこで、例えば、複数の食品廃棄物を、別々の温度の調整槽で予め可溶化し、中温発酵温度で発酵させるものとして、例えば、特開2009‐248040号公報(特許文献1)が知られている。
【0008】
特許文献1においては、脂質含有率が高い高脂質含有食品廃棄物と、該高脂質含有食品廃棄物を除く他の食品廃棄物と、を同一のメタン発酵槽内にて、中温発酵温度でメタン発酵処理する、食品廃棄物のメタン発酵処理方法が開示されている。
【0009】
特許文献1に記載のメタン発酵処理方法では、高脂質含有食品廃棄物と他の食品廃棄物とを、夫々別個の前処理設備にて破砕、選別した後、高脂質含有食品廃棄物を第1調整槽で加温して可溶化するとともに、他の食品廃棄物を第2調整槽で加温して可溶化する。そして、第1調整槽及び第2調整槽から排出される液状廃棄物を、夫々メタン発酵槽に供給し、30℃以上40℃未満の中温発酵温度で発酵するようにしている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載のメタン発酵処理方法では、複数の食品廃棄物を、中温発酵温度で発酵させることはできるものの、複数の食品廃棄物を、別々の温度の調整槽で予め可溶化しなければならず、作業が煩雑であるという問題があった。
【0011】
また、例えば、ホテルや食品工場の食品廃棄物等において、バイオマス原料が、比較的明確である場合、バイオマス原料に適合して発酵させる細菌の条件がはっきりしている。このような場合、バイオマス原料(例えば、食品廃棄物等)を、55℃程度の高温で発酵させるようにしている。
【0012】
55℃程度の高温で発酵させると、反応速度が速いという利点を有する。しかしながら、55℃程度まで加温するためのエネルギー損失が大きく、また、発酵中の安定性が悪く、かつ細菌の管理が難しいという問題がある。また、発酵を阻害する物質(重金属やアンモニア等)が発生することや、揮発性脂肪酸の蓄積によるpHの低下等により、運転が不安定であるという問題がある。さらに、バイオマス原料が、複合資材から形成されている場合、複合資材のそれぞれに適合する細菌の選択が難しい。
【0013】
上述のように、従来のメタン発酵システムでは、中温発酵には、分解速度やガス発生速度、未発酵の残渣等の問題があり、また、高温発酵には、加温のためのエネルギー損失や安定的な運転が困難である等の問題がある。
【0014】
そこで、2つの発酵を設け、有機性廃棄物を、温度の異なる発酵槽で発酵させる二段階発酵システムが提案されている。二段階発酵システムとして、例えば、特開平4‐62800号公報(特許文献2)及び特開2006‐224090号公報(特許文献3)が知られている。
【0015】
特許文献2においては、家畜糞尿等のメタン発酵原料を、メタン菌によりメタン発酵処理槽で発酵処理して、メタンガスを得るメタン発酵方法が開示されている。
【0016】
特許文献2に記載のメタン発酵方法では、メタン発酵処理槽を、中温メタン菌を含む第1の処理槽(通常の中温温度)と、低温メタン菌を含む第2の処理槽(20℃~25℃)とによって構成し、低温メタン菌を別途培養して、第2の処理槽内に補充供給することにより、低温メタン菌によるメタン発酵処理の実用化と、運転制御の容易化とを図るようにしている。
【0017】
特許文献3においては、易分解性及び難分解性の有機性廃棄物をメタン発酵処理してバイオガスを得るメタン発酵システムが開示されている。
【0018】
特許文献3に記載のメタン発酵システムでは、易分解性有機性廃棄物を、第一メタン発酵槽で、中温(38℃)又は高温(55℃)でメタン発酵する一方で、難分解性有機性廃棄物を、第二メタン発酵槽で、高温(55℃±2℃)でメタン発酵し、各々のメタン発酵槽を、メタン発酵に最適な設計とするのを可能とするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特開2009‐248040号公報
【文献】特開平4‐62800号公報
【文献】特開2006‐224090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記特許文献1では、上述のように、複数の食品廃棄物を、中温発酵温度で発酵させることはできるものの、複数の食品廃棄物を、別々の温度の調整槽で予め可溶化しなければならず、作業が煩雑であるという問題があった。
【0021】
また、上記特許文献2では、中温で発酵させた後、低温(20℃~25℃)で発酵させるようにしている。上述のように、中温で発酵させると、分解速度やガス発生速度、未発酵の残渣、滞留時間が長い等の問題がある。また、中温より低い温度で発酵させると、中温で発酵させるのに適合する細菌が活躍できず、十分な発酵が行われないため、別の細菌の選択して、使用することが必要になる。
【0022】
上記特許文献3では、中温(38℃)又は高温(55℃)で発酵させた後、高温(55℃±2℃)で発酵させるようにしている。上述のように、中温で発酵させると、分解速度が遅い、ガス発生速度が遅い、未発酵の残渣が残る、滞留時間が長い等の問題がある。また、高温で発酵させると、加温のためのエネルギー損失や安定的な運転が困難である等の問題がある。また、高温で生育できない細菌が死滅してしまう。
【0023】
したがって、中温発酵の利点を維持しつつ、中温発酵及び高温発酵における上記問題を解決することのできるメタン発酵システムの開発が望まれる。
【0024】
そこで、発明者らは、斯かる実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、中温発酵の利点をより向上させることができ、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを効率的に生成することができる、メタン発酵システム及びメタン発酵方法に関する新たな知見を得た。
【0025】
本発明は、有機性廃棄物を発酵させて、メタンを含むバイオガスを効率的に生成することのできる、メタン発酵システム及びメタン発酵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のメタン発酵システムは、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを生成するためのメタン発酵システムであって、有機性廃棄物を発酵させるための第1の発酵槽と、第1の発酵槽と異なる温度帯で運転され、前記第1の発酵槽中の残渣をさらに発酵させるための第2の発酵槽と、を備え、第1の発酵槽内の温度は、30~40℃の範囲であり、第2の発酵槽内の温度は、前記第1の発酵槽内の前記温度より高い温度から45℃までの範囲である、ことを特徴とする。
【0027】
上記構成のメタン発酵システムによれば、第1の発酵槽内の温度は、30~40℃の範囲であり、第2の発酵槽内の温度は、第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲であるため、第1の発酵槽において、中温発酵の温度域(30~40℃の範囲の)で、有機性廃棄物を発酵するとともに、第2の発酵槽において、中温発酵の温度域(第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲)で発酵することで、第1の発酵槽中で発酵しきれなかった未発酵の残渣をさらに発酵することができる。
【0028】
これにより、第1の発酵槽と第2の発酵槽とで、発酵におけるエネルギー条件を変えることなく、中温発酵の異なる温度域で、それぞれの温度域において活躍できる細菌によって、有機性廃棄物を二段階で発酵させることにより、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを、効率的に生成することができる。
【0029】
また、有機性廃棄物を段階的に発酵させることで、未発酵の残渣の生成量を少なくすることができる。さらに、有機性廃棄物が複合資材から形成されている場合でも、より効率的に発酵させることができる。また、高温発酵に比し、加温に必要なエネルギーが小さく、かつ運転管理が容易である。
【0030】
本発明の一態様として、前記第2の発酵槽での発酵後における廃棄物の一定量を、固液分離するための固液分離をさらに備える、のが好ましい。
【0031】
上記構成のメタン発酵システムによれば、第2の発酵槽での発酵後における廃棄物の一定量を、固液分離するための固液分離をさらに備えるため、固液分離によって、廃棄物の一定量をたとえば汚泥を含む固形物と消化液を含む液体とに分離することができる。
【0032】
本発明のメタン発酵方法は、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを生成するためのメタン発酵方法であって、前記有機性廃棄物を、第1の発酵槽へ投入する工程と、前記第1の発酵槽での前記有機性廃棄物の所定日数の発酵によって生成されたバイオガスを回収する工程と、前記第1の発酵槽中の残渣の一定量を、前記第1の発酵槽と異なる温度帯で運転される第2の発酵槽へ投入する工程と、前記第2の発酵槽での前記発酵物の所定日数の発酵によって生成されたバイオガスをさらに回収する工程と、を備え、前記第1の発酵槽内の温度は、30~40℃の範囲であり、前記第2の発酵槽内の温度は、前記第1の発酵槽内の前記温度より高い温度から45℃までの範囲である、ことを特徴とする。
【0033】
上記メタン発酵方法によれば、第1の発酵槽内の温度は、30~40℃の範囲であり、第2の発酵槽内の温度は、第1の発酵槽内の前記温度より高い温度から45℃までの範囲であるため、第1の発酵槽において、中温発酵の温度域(30~40℃の範囲の)で、有機性廃棄物を発酵するとともに、第2の発酵槽において、中温発酵の温度域(第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲)で発酵することで、第1の発酵槽中で発酵しきれなかった未発酵の残渣をさらに発酵することができる。
【0034】
これにより、第1の発酵槽と第2の発酵槽とで、発酵におけるエネルギー条件を変えることなく、中温発酵の異なる温度域で、それぞれの温度域で活躍できる細菌によって、有機性廃棄物を二段階で発酵させることにより、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを効率的に生成することができる。
【0035】
また、有機性廃棄物を段階的に発酵させることで、未発酵の残渣の生成量を少なくすることができる。さらに、有機性廃棄物が複合資材から形成されている場合でも、より効率的に発酵させることができる。また、高温発酵に比し、加温に必要なエネルギーが小さく、かつ運転管理が容易である。
【0036】
本発明のさらに他の態様として、前記第2の発酵槽での発酵後における廃棄物の一定量を、固液分離する工程をさらに備える、のが好ましい。上記メタン発酵方法によれば、第2の発酵槽での発酵後における廃棄物の一定量を、固液分離する工程をさらに備えるため、固液分離によって、廃棄物の一定量をたとえば汚泥を含む固形物と消化液を含む液体とに、容易に分離することができる。
【0037】
本発明の別の態様として、前記第2の発酵槽へ投入された発酵後における前記廃棄物と同量の原料を、前記第1の発酵槽に投入して、メタン発酵させる、のが好ましい。上記メタン発酵方法によれば、第2の発酵槽へ投入された発酵後における廃棄物と同量の原料を、第1の発酵槽に投入して、メタン発酵させるため、発酵しきれなかった廃棄物を、さらにより効率的に発酵させることができる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明によれば、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを効率的に生成することのできるメタン発酵システム及びメタン発酵方法を提供することができる、といった優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態に係るメタン発酵システムを利用したメタン発酵方法において、異なる温度帯における、バイオガスの経時的な発酵量を示す曲線グラフである。
図2図1に示す曲線グラフを、棒グラフにした図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態に係るメタン発酵システムについて、詳細に説明する。
【0041】
発明者らは、上述のように、中温発酵の利点をより向上させることができ、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを効率的に生成することができるメタン発酵システム及びメタン発酵方法に関する新たな知見を得た。本実施形態に係るメタン発酵システムは、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを生成するためのメタン発酵システムである。
【0042】
本実施形態に係るメタン発酵システムは、有機性廃棄物を発酵させるための第1の発酵槽と、第1の発酵槽と異なる温度帯で運転され、第1の発酵槽中の残渣をさらに発酵させるための第2の発酵槽と、を備える。なお、バイオガスは、第1の発酵槽で、既に一度回収しているため、第2の発酵槽の容積は、第1の発酵槽の容積より少なくてもよい。
【0043】
第1の発酵槽内の温度は、中温発酵に適した中温度帯温度であり、本実施形態においては、30~40℃の範囲であり、好ましくは、36℃である。
【0044】
また、第2の発酵槽内の温度は、中温発酵に適した温度であり、本実施形態においては、第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲であり、好ましくは、40℃~45℃の範囲であり、より好ましくは、42℃である。
【0045】
本実施形態においては、異なる中温度帯の温度で、二段階に発酵させるようにしている。通常の中温度帯の温度(30~40℃の範囲)では、活躍できる菌が多く、有機性廃棄物を発酵させて、メタンを含むバイオガスを効率的に生成することができる。
【0046】
また、第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲における中温度帯の温度で、熱に強く活躍できる菌があり、第1の発酵槽内と、発酵におけるエネルギー条件を変えることなく、発酵時の運転管理もあまり変わらない。
【0047】
次に、本発明の一実施形態に係るメタン発酵方法について、詳細に説明する。本実施形態に係るメタン発酵方法は、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを生成するためのメタン発酵方法である。
【0048】
本実施形態に係るメタン発酵方法は、有機性廃棄物を、第1の発酵槽へ投入する工程と、第1の発酵槽での前記有機性廃棄物の所定日数の発酵によって生成されたバイオガスを回収する工程と、第1の発酵槽中の残渣の一定量を、第1の発酵槽と異なる温度帯で運転される第2の発酵槽へ投入する工程と、第2の発酵槽での発酵物の所定日数の発酵によって生成されたバイオガスをさらに回収する工程と、を備える。なお、バイオガスは、第1の発酵槽で、既に一度回収しているため、第2の発酵槽の容積は、第1の発酵槽の容積より少なくてもよい。
【0049】
第1の発酵槽内の温度は、中温発酵に適した中温度帯温度であり、本実施形態においては、30~40℃の範囲であり、好ましくは、36℃である。
【0050】
また、第2の発酵槽内の温度は、中温発酵に適した温度であり、本実施形態においては、第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲であり、好ましくは、40℃~45℃の範囲であり、より好ましくは、42℃である。
【実施例
【0051】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(メタン発酵システムを利用したメタン発酵方法)
発明者らは、本発明の一実施形態に係るメタン発酵システムを利用して、以下のようにメタン発酵を行った。
【0053】
まず、有機性廃棄物を、第1の発酵槽へ投入し、36~38℃の範囲の中温度帯で、40日間置いた。そして、第1の発酵槽での発酵によって生成されたバイオガスを、回収した。
【0054】
次に、第1の発酵槽中の発酵しきれなかった未発酵の残渣の一定量を、第2の発酵槽へ投入し、42℃の中温度帯で、所要日数、具体的には、10日間置いた。
【0055】
そして、第2の発酵槽での未発酵の残渣の発酵によって生成されたバイオガスを、さらに回収した。結果を、以下の図1及び図2に示す。なお、図1において、横軸は、発酵日数を示し、縦軸は、1ml当りのバイオガスの総数を示す。
【0056】
(試験結果)
図1及び図2の結果から、第1の発酵槽での発酵によって、バイオガスが、経時的に生成され、生成量が一旦飽和に達した。36~38℃の範囲の中温度帯での発酵で、バイオガスを、効率的に回収することができることが確認された。
【0057】
そして、第2の発酵槽での発酵によって、第1の発酵槽での発酵で発酵しきれなかった未発酵の残渣から、バイオガスが、経時的かつ連続的にさらに生成され、42℃の中温度帯での発酵で、有機性廃棄物の利用率が向上され、バイオガスを、さらにより効率的に回収することができることが確認された。
【0058】
なお、第1の発酵槽での発酵によって、バイオガスが、経時的に生成され、生成量が一旦飽和に達したが、第1の発酵槽での36~38℃の範囲の中温度帯で、発酵に適する細菌の種類と、第2の発酵槽での42℃の中温度帯で、発酵に適する細菌の種類と、が異なるためであると思われる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係るメタン発酵システムによれば、第1の発酵槽において、中温発酵の温度域(30~40℃の範囲の)で、有機性廃棄物を発酵するとともに、第2の発酵槽において、中温発酵の温度域(第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲)で発酵することで、第1の発酵槽中で発酵しきれなかった未発酵の残渣をさらに発酵することができる。
【0060】
これにより、第1の発酵槽と第2の発酵槽とで、発酵におけるエネルギー条件を変えることなく、中温発酵の異なる温度域で、それぞれの温度域において活躍できる細菌によって、有機性廃棄物を二段階で発酵させることにより、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを効率的に生成することができる。
【0061】
また、有機性廃棄物を段階的に発酵させることで、未発酵の残渣の生成量を少なくすることができる。さらに、有機性廃棄物が複合資材から形成されている場合でも、より効率的に発酵させることができる。また、高温発酵に比し、加温に必要なエネルギーが小さく、かつ運転管理が容易である。
【0062】
また、メタン発酵方法によって、第1の発酵槽において、中温発酵の温度域(30~40℃の範囲の)で、有機性廃棄物を発酵するとともに、第2の発酵槽において、中温発酵の温度域(第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲)で発酵することで、第1の発酵槽中で発酵しきれなかった未発酵の残渣をさらに発酵することができる。
【0063】
これにより、第1の発酵槽と第2の発酵槽とで、発酵におけるエネルギー条件を変えることなく、中温発酵の異なる温度域で、それぞれの温度域で活躍できる細菌によって、有機性廃棄物を二段階で発酵させることにより、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを効率的に生成することができる。
【0064】
また、有機性廃棄物を段階的に発酵させることで、未発酵の残渣の生成量を少なくすることができる。さらに、有機性廃棄物が複合資材から形成されている場合でも、より効率的に発酵させることができる。また、高温発酵に比し、加温に必要なエネルギーが小さく、かつ運転管理が容易である。
【0065】
なお、本発明のメタン発酵システム及びメタン発酵方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更し得ることは勿論のことである。
【0066】
上記実施形態において、第1の発酵槽内の温度は、30~40℃の範囲であり、第2の発酵槽内の温度は、第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲であるが、これに限定されるものではない。
【0067】
第1の発酵槽での発酵によって、バイオガスが、中温度帯での発酵で経時的に生成され、回収されることができ、第2の発酵槽での発酵によって、第1の発酵槽での発酵によって発酵しきれなかった未発酵の残渣から、バイオガスを、さらに効率的に生成され、回収されることができるような温度帯であればよい。
【0068】
なお、上記実施形態において、第2の発酵槽内の温度は、第1の発酵槽内の温度より高い温度から45℃までの範囲である。第1の発酵槽内の温度が、第2の発酵槽内の温度より高い温度の場合、第1の発酵槽内の高い温度により、第2の発酵槽で活躍できる細菌が死滅するため、発酵が不十分となる。そのため、第2の発酵槽内の温度は、第1の発酵槽内の温度より高い温度である必要がある。
【0069】
本実施形態に係るメタン発酵システム及びメタン発酵方法において、第2の発酵槽での発酵後における廃棄物の一定量を、固液分離するための固液分離をさらに備えるようにしてもよい。そうすることで、廃棄物の一定量をたとえば汚泥を含む固形物と消化液を含む液体とに分離することができる。
【0070】
本実施形態に係るメタン発酵方法において、第2の発酵槽へ投入された第1の発酵槽の発酵後における残渣と同量の有機性廃棄物を、第1の発酵槽に投入して、メタン発酵させるようにしてもよい。そうすることで、発酵しきれなかった廃棄物を、さらにより効率的に発酵させることができる。

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のメタン発酵システム及びメタン発酵方法は、有機性廃棄物を発酵させてメタンを含むバイオガスを効率的に生成することのできるメタン発酵設備等に有効に利用される。
図1
図2