(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 3/28 20060101AFI20221111BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221111BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20221111BHJP
B41J 3/44 20060101ALI20221111BHJP
B41J 21/16 20060101ALI20221111BHJP
B41J 25/308 20060101ALI20221111BHJP
B64C 19/02 20060101ALI20221111BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20221111BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221111BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
B41J3/28
B41J2/01 307
B41J2/175 117
B41J3/44
B41J21/16
B41J25/308 Z
B64C19/02
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
(21)【出願番号】P 2017165749
(22)【出願日】2017-08-30
【審査請求日】2020-07-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】植野 亮
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274294(US,A1)
【文献】特開2006-150670(JP,A)
【文献】特開2017-185758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209885(US,A1)
【文献】国際公開第2017/094842(WO,A1)
【文献】特開2016-016535(JP,A)
【文献】特開2014-184721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
B41J 2/01-2/215
B41J 3/44
B41J 21/16
B41J 25/308
B64C 19/02
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体と、
前記飛行体に搭載され、前記飛行体が接近した印刷対象に非接触で所望の画像を印刷する印刷ヘッドと、
ホバリングしている飛行体の推進力の方向と平行な方向に延出するように前記飛行体に取り付けられ、画像を印刷する際に前記印刷対象に当接して前記印刷ヘッドと前記印刷対象の距離を所定の値に保持するギャップ調整部と、
を有するプリンタにおいて、
前記飛行体は、本体部と、前記本体部に搭載されて前記本体部を飛行させる駆動部とを有しており、
前記印刷ヘッドは、前記本体部に対して少なくとも異なる2方向について任意に移動できるように取り付けられており、
前記印刷対象に対する前記飛行体の位置を固定しつつ前記印刷ヘッドを移動させながら駆動する制御部をさらに有することを特徴とす
るプリンタ。
【請求項2】
前記印刷ヘッドにインクを供給するインク供給源と、前記印刷ヘッドを駆動するためのヘッド用電源を有することを特徴とする請求項
1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記インク供給源は飛行用の駆動部により独立して飛行可能であり、前記ヘッド用電源は飛行用の駆動部により独立して飛行可能であることを特徴とする請求項
2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記インク供給源と、前記ヘッド用電源が、前記飛行体に対してそれぞれ連結又は分離できることを特徴とする請求項
3記載のプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、印刷しようとする画像を最短の移動経路で印刷するように、前記飛行体と前記印刷ヘッドの少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項6】
印刷対象の画像を取得するカメラと、
印刷対象の模様を検出するイメージセンサと、
をさらに有しており、
前記制御部は、目標となる印刷対象の模様を予め記憶しており、前記カメラにより取得した印刷対象の画像と前記模様を照合して印刷位置を特定し、前記飛行体を前記印刷位置に移動させ、前記イメージセンサによって印刷対象を走査して前記模様を検出した位置で画像を印刷するように、前記飛行体と前記印刷ヘッドを制御することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項7】
飛行体と、
前記飛行体に搭載され、前記飛行体が接近した印刷対象に非接触で所望の画像を印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドにインクを供給するインク供給源と、
前記印刷ヘッドを駆動するためのヘッド用電源とを有し、
前記インク供給源は飛行用の駆動部により独立して飛行可能であり、前記ヘッド用電源は飛行用の駆動部により独立して飛行可能であることを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンと呼ばれる無人の飛行体に印刷ヘッドを搭載してなるプリンタに係り、特に、飛行して印刷対象に接近し、印刷対象に対して非接触の状態で所望の画像を形成することができるプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にはマルチコプターの発明が開示されている。このマルチコプター3は、複数のローター11を備えた自己昇降する構造体1に、真空吸着ユニット2と、清掃装置4を備えたものである。このマルチコプターは、独力で自動的に飛行して対象位置の表面まで到達し、独力で表面上を移動し、また表面から離れることができる飛行性能を備えている。そして、この発明によれば、清掃装置4に代えて印刷装置4を装備することもできるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の記載によれば、このマルチコプターの印刷装置4はローラ状の構造であり、対象に接触して塗料を塗布する塗布ローラと考えられる。従って、このマルチコプターは、移動先の壁面等に吸着装置で吸いついて印刷装置の塗布ローラを壁面に接触させ、その状態でローターを駆動して壁面に沿って移動しながら塗布ローラで当該壁面に印刷を行うものと考えられる。
【0005】
上記特許文献1に開示された発明によれば、印刷対象面に接触して印刷を行うため、印刷対象面の状況によっては印刷が不可能又は困難な場合が考えられる。特に、飛行体に塗布ローラを搭載した印刷装置であるから、遠隔地や、通常は接近が困難な場所まで飛行して印刷作業を行う場合が多いと想定されるが、遠隔または接近困難な現場に到達した後に、印刷対象面が接触印刷に適さない状態であると判明したとしても、適切な対応をとることができない場合が考えられる。また、塗布ローラを印刷対象面に接触させて転動させながら塗料を塗る方法では、予定した大まかな形状に塗料を塗る作業は実行できても、一般的に所望のパターンで画像を印刷することは困難であった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術及びその課題に鑑みてなされたものであり、飛行体に印刷装置を搭載した飛行可能なプリンタであって、飛行して到達した印刷対象面に非接触で所望の画像を印刷できるプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載されたプリンタは、
飛行体と、
前記飛行体に搭載され、前記飛行体が接近した印刷対象に非接触で所望の画像を印刷する印刷ヘッドと、
ホバリングしている飛行体の推進力の方向と平行な方向に延出するように前記飛行体に取り付けられ、画像を印刷する際に前記印刷対象に当接して前記印刷ヘッドと前記印刷対象の距離を所定の値に保持するギャップ調整部と、
を有するプリンタにおいて、
前記飛行体は、本体部と、前記本体部に搭載されて前記本体部を飛行させる駆動部とを有しており、
前記印刷ヘッドは、前記本体部に対して少なくとも異なる2方向について任意に移動できるように取り付けられており、
前記印刷対象に対する前記飛行体の位置を固定しつつ前記印刷ヘッドを移動させながら駆動する制御部をさらに有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載されたプリンタによれば、印刷対象に対する飛行体の位置を固定しつつ、印刷対象の印刷面内において印刷ヘッドを移動させながら駆動することにより、印刷対象に所望の画像を印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のプリンタの基本構成を示す模式図である。
【
図2】実施形態のプリンタに搭載されて印刷対象に印刷を行う印刷ヘッドの構成例を示す模式図である。
【
図3】実施形態のプリンタにおける画像印刷時の作動状態を示す図であって、分図(a)は、印刷ヘッドの位置を固定して飛行体が移動することにより画像を印刷する状態を示す模式図であり、分図(b)は、飛行体の位置を固定して印刷ヘッドが移動することにより画像を印刷する状態を示す模式図である。
【
図4】実施形態のプリンタに搭載された印刷ヘッドが印刷対象に印刷を行う際の移動方向を説明する図であって、各分図は、印刷ヘッドの構成及びその移動方向のバリエーションを示す模式図である。
【
図5】実施形態のプリンタと印刷対象との距離を一定に保持する手段を示す図であって、分図(a)は、飛行体の制御によって距離を保持している状態を示す模式図、分図(b)は、飛行体に設けられたギャップ調整部によって距離を保持している状態を示す模式図である。
【
図6】実施形態のプリンタにおけるギャップ調整部の構成をより具体的に示す図であって、各分図はギャップ調整機構のバリエーションを示している。
【
図7】印刷ヘッドを有する飛行体と、印刷ヘッドにインクを供給するインク供給源と、印刷ヘッドを駆動するヘッド用電源の各部の構成を示す図であって、分図(a)は、各部が同一筐体に納められた構成を示す模式図であり、分図(b)は、各部が互いに独立して飛行できる構成の模式図であり、分図(c)は、各部が互いに連結又は分離できる構成の模式図である。
【
図8】実施形態のプリンタの印刷対象における位置制御を説明するための模式図である。
【
図9】実施形態のプリンタにおける飛行体の構造及び印刷ヘッドの移動機構のバリエーションを示す模式図である。
【
図10】連結又は分離が可能な実施形態のプリンタを示す図であって、分図(a)は、単一のプリンタの模式図であり、分図(b)は、分図(a)に示したプリンタを2機連結した状態を示す模式図である。
【
図11】連結又は分離が可能な実施形態のプリンタで印刷対象に画像を形成する際の印刷経路を示す図であって、分図(a)は、単一のプリンタが有する単一の印刷ヘッドを用いて所定の画像を最短の印刷経路で印刷した例を示す模式図であり、分図(b)は、連結した2機のプリンタの2台の印刷ヘッドで所定の画像を最短の印刷経路で印刷した例を示す模式図であり、分図(c)は、単一のプリンタが有するプリンタを2機使用し、それぞれ独立に同時に駆動することにより所定の図形を最短の印刷経路で印刷した例を示す模式図であり、分図(d)は、連結した3機のプリンタの3台の印刷ヘッドで所定の画像を最短の印刷経路で印刷した例を示す模式図であり、分図(e)は、連結した3機のプリンタを2組み使用し、それぞれ独立に同時に駆動することにより所定の画像を最短の印刷経路で印刷した例を示す模式図であり、
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係るプリンタは、ドローンとも呼ばれる無人の飛行体に印刷ヘッドを搭載した装置である。この飛行可能なプリンタは、遠隔操縦により又は自律的に飛行し、接近した印刷対象に対して非接触で所望の画像を印刷することができる。このようなプリンタについて、その構成又は制御等の要素ごとに項分けし、
図1~
図11を参照して説明する。
【0011】
1.飛行体の基本構成について(
図1)
図1に示すように、実施形態の飛行可能なプリンタ1は、ドローンとも呼ばれる無人の飛行体2と、この飛行体2に搭載された印刷ヘッド5とを備えている。飛行体2は、本体部3と、本体部3に搭載されて本体部3を飛行させる駆動部4を備えている。駆動部4は、単数又は複数のプロペラと、これを駆動するモータ等で構成されるが、プロペラ等以外の移動手段又は推進手段であってもよい。印刷ヘッド5は、本体部3の所定位置、
図1に示す例では本体部3の下面に取り付けられている。
【0012】
なお、プロペラを駆動部4とする飛行体2の場合であっても、必ずしもプロペラを上にした状態でしか飛行できないわけではない。例えば、プロペラを横にして本体部3が横倒しになった状態で飛行しつつ、垂直な壁に印刷ヘッド5で印刷することも可能である。また、プロペラを下に向け、本体部3が逆さまになった状態で飛行しつつ、天井に印刷ヘッド5で印刷することも可能である。プロペラ以外の他の駆動部4を有する飛行体2でも同様である。
【0013】
図1に示すように、本体部3内には、制御部6が収納されている。制御部6は、駆動部4と印刷ヘッド5を制御する他、本体部3に搭載されたその他の機器も統括して制御する。制御部6が駆動部4等を制御して飛行体2を飛行させる場合、その飛行は、遠隔操縦による飛行であってもよいし、自律的な飛行であってもよい。
【0014】
すなわち、遠隔操縦の場合には、操縦者が操縦装置から操縦信号を送信すると、飛行体2では制御部6の制御のもと、操縦信号を受信し、これに含まれる飛行制御情報に基づいた制御信号を生成して駆動部4等を制御し、飛行体2を飛行させる。飛行体2は、印刷位置に接近し、印刷ヘッド5による印刷に適した非接触の状態を維持することができる。なお、制御部6は、操縦信号に含まれる印刷制御情報に基づいて印刷信号を生成し、これによって印刷ヘッド5を制御し、指定された画像を印刷対象に形成することができる。
【0015】
また、自律的な飛行の場合には、自律飛行に必要なプログラムと、必要な飛行制御情報及び印刷制御情報を飛行前に制御部6のメモリに記憶させておく。飛行体2は出発地点から離陸した後、印刷対象に向けて飛行し、印刷位置に接近して非接触の状態を維持しながら、指定された画像を印刷する一連の作業を自律的に行う。
なお、制御部6によるプリンタ1の制御は本項で説明したものだけではなく、本プリンタ1の他の機能に係わる制御については、以下の各項ごとに必要に応じて説明する。
【0016】
図1には示していないが、本体部3内には、インク供給源であるインクタンクと、プロペラのモータとインクタンクのポンプに電源を供給するバッテリーとが設けられている。
【0017】
2.印刷ヘッド5について(
図2)
図2に示すように、実施形態のプリンタ1に搭載する印刷ヘッド5(インクジェットヘッド、IJヘッドとも称する。)としては、シリアルヘッド5aとラインヘッド5bがある。いずれの印刷ヘッド5も、各種原理によりインクを液滴状にして吐出するインク滴生成機構を備えている。インク滴生成機構としては、公知のサーマル方式やピエゾ方式が知られているが、特に限定するものではない。
【0018】
図2(a)に示すシリアルヘッド5aは、インクを吐出するノズルの数が後述するラインヘッド5bに比べて相対的に少ない。シリアルヘッド5aを、通常のインクジェット印刷装置で使用する場合には、
図2(a)の印刷対象7に相当する用紙の表面沿いに奥行き方向の一方向に移動しながら印字を行う。一行の印字が完了すると、図中の印刷対象7に相当する用紙を図中左右方向の一方向に所定ピッチだけ移動させ、再度、シリアルヘッド5aを同図において奥行き方向の他方向に移動しながら印字を行う。この走査を繰り返して印刷用紙の全面に画像を形成する。また、シリアルヘッド5aによる印字は、上述のように印刷用紙の移動を伴う方法の他、印刷用紙の移動を伴わない次のような方法もある。すなわち、
図2(a)において奥行き方向の一方向に移動しながら印字を行い、一行の印字が完了すると、図中左右方向の一方向に所定ピッチだけシリアルヘッド5aを移動させ、再度、シリアルヘッド5aを同図において奥行き方向の他方向に移動しながら印字を行う。このような走査を繰り返して印刷用紙の全面に画像を形成することもできる。
【0019】
図2(b)に示すラインヘッド5bは、インクを吐出するノズルの数が前述したシリアルヘッド5aに比べて相対的に多い。ラインヘッド5bを、通常のインクジェット印刷装置において使用する場合には、
図2(b)の印刷対象7に相当する用紙の奥行き方向を用紙の幅方向とすると、ラインヘッド5bのノズル列の長さは、用紙の幅方向の印字領域を越える長さとなっている。図中の印刷対象7に相当する用紙を図中左右方向の一方向に移動しながら、ラインヘッド5bを駆動することにより、印刷用紙の全面に画像を形成する。また、ラインヘッド5bによる印字は、上述のように印刷用紙の移動を伴う方法の他、印刷用紙を移動させる代わりに、印刷用紙を停止させておき、ラインヘッド5bを、その長手方向と直交する方向に移動しながら行うことも考えられる。
【0020】
3.印刷時の飛行体2又は印刷ヘッド5の移動方向について(
図3)
印刷時の飛行体2又は印刷ヘッド5の移動方向について説明する。
シリアルヘッド5a又はラインヘッド5bによって通常のインクジェット印刷装置で用紙に画像を印刷する場合には、上述したように印刷ヘッド5自体の移動のみでも行えるが、印刷ヘッド5と用紙の両方を移動させることでも可能であった。これに対し、本実施形態では、印刷ヘッド5は飛行体2によって移動可能であるが、印刷対象7は、印刷用紙だけでなく、地面や通常は移動できない建造物その他の重量物等の外面等も含む。そして、これらの印刷対象7に画像を形成する場合には、飛行体2を移動させるとともに印刷ヘッド5も移動させて印刷する場合と、飛行体2は位置を固定して印刷ヘッド5自体の移動のみで印刷を行う場合とが考えられる。
【0021】
図3は、実施形態のプリンタ1aの構造と、画像印刷時の作動状態を示す図である。
図3(a)、(b)のいずれの分図においても、
図1に示した模式構造図の飛行体2とは構造が異なっている。すなわち、
図3に示した飛行体2aの構造例では、環状フレーム3aを本体部3としている。この環状フレーム3aには、半径方向に沿って外方向に突出した4本のアーム8が、環状フレーム3aの中心角度に関して90度の等間隔で設けられている。各アーム8の先端には、駆動部4であるプロペラ4aが設けられており、プロペラ4aは図示しないモータ等で駆動される。環状フレーム3aの内側には、印刷ヘッド5が設けられているが、その搭載の機構が
図3(a)と
図3(b)で異なっている。
【0022】
図3(a)に示す例では、環状フレーム3aの内側の中心に、印刷ヘッド5が図示しない固定構造で取り付けられており、印刷ヘッド5は環状フレーム3aに対して移動しない。印刷ヘッド5のノズルの開口面は、環状フレーム3aの下面よりもやや下方に突出しており、環状フレーム3aを含む平面と平行になっている。
【0023】
このプリンタ1aで印刷対象7に画像を形成するには、飛行体2a又は印刷ヘッド5と、印刷対象7との距離を所定の値に保持しつつ、印刷対象7の印刷面内において飛行体2aを移動させながら印刷ヘッド5を駆動することにより、印刷対象7に所望の画像を印刷する。すなわち、印刷時には、制御部6が飛行体2aを必要な方向に移動させながら印刷ヘッド5を駆動して印刷対象7に画像を形成する。
図3(a)中に直交する2本の双方向の矢印で示すように、環状フレーム3aの平面内で少なくとも異なる2方向に飛行体2を移動させることにより、飛行体2は同平面内において必要な位置取りをすることができる。
図3(a)では、印刷ヘッド5が固定であるものとしたが、印刷ヘッド5が次に説明する
図3(b)のように移動できる場合であっても、印刷ヘッド5を移動させずに、飛行体2を移動させることで同様の効果を得ることができる。
【0024】
図3(b)に示す例では、環状フレーム3aの内側の中心に、印刷ヘッド5が図示しない移動機構で取り付けられており、印刷ヘッド5は、環状フレーム3aを含む平面内において、図中の直交する矢印で示す2方向について任意に移動することができる。印刷ヘッド5のノズルの開口面は、環状フレーム3aの下面よりもやや下方に突出しており、環状フレーム3aを含む平面と平行になっている。
【0025】
このプリンタ1aで印刷対象7に画像を形成するには、飛行体2a又は印刷ヘッド5と、印刷対象7との距離を所定の値に保持しつつ、飛行体2aの水平面内での位置も固定する。すなわち、印刷対象7に対して飛行体2aの位置を固定した状態でホバリングする。この状態で印刷ヘッド5を駆動することにより、印刷対象7に所望の画像を印刷する。すなわち、印刷時には、制御部6が、飛行体2aを所定の位置に浮かせた状態を維持しながら印刷ヘッド5を駆動し、印刷対象7に画像を形成する。
図3(b)中に環状フレーム3aの平面内で直交する2本の双方向の矢印で示すように、少なくとも異なる2方向に印刷ヘッド5を移動させることにより、少なくとも印刷ヘッド5の移動可能な範囲内において画像を形成することができる。
図3(b)では、飛行体2を所定位置に停止させた状態で印刷ヘッド5を2方向に移動させて画像形成を行ったが、一カ所で画像形成を行った後、隣の位置に飛行体2を移動させて同様に印刷を行えば、前の画像と連続したより大きな画像を形成することもできる。
【0026】
なお、印刷対象7に対する飛行体2aの距離を所定の値に保つように飛行体2をホバリングさせるものとしたが、前記距離を所定の値に保つ着陸脚で印刷対象7の上に着陸して静止し、そこで印刷ヘッド5を移動しながら印刷を行ってもよい。なお、印刷ヘッド5と印刷対象7の前記「距離」については、後に「ギャップ」として説明し、また前記「着陸脚」については、後に「ギャップ調整部」として説明する。
【0027】
4.印刷ヘッド5が印刷対象7に印刷を行う際の移動方向について(
図4)
図4の分図(a)~(f)は、プリンタ1,1aに搭載された印刷ヘッド5の構成と、その移動方向のバリエーションを示す模式図である。なお、各分図中、印刷対象7は板状の部材のように表しているが、これは模式的な表現であって、実際の印刷対象7は、例えば地面、建造物等の一部や印刷用紙等である。前述した通り、印刷ヘッド5は、印刷対象7の表面から所定の距離を保持した状態で印刷を行う。また、各図中の矢印は印刷ヘッド5の移動方向を示しており、平面内で直交する2方向の場合、印刷用紙に印刷する場合の例に倣って、この2方向を主走査方向(図中奥行き方向)及び副走査方向(図中左右方向)と称しているが、主・副の用語間に技術的に本質的な差異があるわけではない。
【0028】
図4(a)では、印刷ヘッド5としてラインヘッド5bを使用する。ラインヘッド5bのノズルの並び方向(長手方向)を主走査方向Mとした場合、これと直交する副走査方向Sに印刷ヘッド5を移動させることにより所望の画像が印刷できる。この副走査方向Sへのラインヘッド5bの移動は、飛行体2,2aが所定位置に静止した状態でラインヘッド5bを同方向に移動させて行ってもよいし、ラインヘッド5bは静止した状態で飛行体2,2aを相対的に同方向に移動させることで行ってもよい。
【0029】
図4(b)では、印刷ヘッド5としてシリアルヘッド5aを使用する。印刷時には、シリアルヘッド5aを主走査方向Mに移動させる。印刷対象7に対するシリアルヘッド5aの副走査方向Sへの移動は、飛行体2,2aが所定位置に静止した状態でシリアルヘッド5aを実際に副走査方向Sに移動させることで行ってもよいし、シリアルヘッド5aは静止した状態で飛行体2,2aを副走査方向Sに移動させることで行ってもよい。
【0030】
図4(c)では、印刷ヘッド5としてシリアルヘッド5aを使用する。印刷時には、シリアルヘッド5aを主走査方向Mと副走査方向Sに移動させる。飛行体2が所定位置に静止した状態でシリアルヘッド5aを主走査方向M及び副走査方向Sに移動させることで、シリアルヘッド5aの移動できる範囲内で所望の画像を印刷することができる。その印刷後、前記範囲に隣接する隣の領域に飛行体2,2aを移動させて印刷を行えば、一回の印刷でカバーできる範囲を越えた連続した一連の画像を複数回に分けて印刷することができる。
なお、以上説明した
図4の分図(a)、(b)、(c)における各印刷ヘッド5の直線的な移動は、公知の案内機構及び移動機構を用いて行うことができる。
【0031】
図4(d)では、印刷ヘッド5としてラインヘッド5bを使用する。ラインヘッド5bの一端部は、飛行体2の本体部3に取り付けられた回転移動機構としての回転軸9に固定されている。印刷時には、回転軸9を駆動することによりラインヘッド5bを回転方向θに関する所望の角度の位置に設定することができる。
【0032】
従って、ラインヘッド5bを回動させながら駆動すれば、ラインヘッド5bの回動範囲である円形の範囲について所望の画像を印刷することができる。
なお、この場合、ラインヘッド5bの各ノズルは、回転軸9について外周側にあるものほど速度が大きいため、吐出するインク滴のドットピッチ間隔とドロップ数を調整することが必要である。そして、印刷後、飛行体2を駆動して隣接する隣の領域に飛行体2を移動させて印刷を行えば、一回の印刷でカバーできる範囲を越えた一連の画像を複数回に分けて印刷することができる。
【0033】
図4(e)では、印刷ヘッド5としてシリアルヘッド5aを使用する。シリアルヘッド5aは、飛行体2の本体部3に取り付けられた回転及び直線移動のための機構に取りつけられている。この機構は、角度(ラジアン)が調整できるように回動自在に本体部3に取り付けられた回転軸9と、回転軸9に取り付けられて回転軸の半径方向Rについて任意に伸縮できる直動機構10とを備えている。シリアルヘッド5aは直動機構10の先端に取り付けられている。このような機構によれば、回転軸9を駆動することにより直動機構10を回転方向θに関する所望の角度の位置に設定できるとともに、直動機構10の伸縮により直動機構10の先端にあるシリアルヘッド5aを半径方向Rに関する所望の位置に設定できる。
【0034】
従って、印刷時には、シリアルヘッド5aを駆動しつつ、回転軸8と直動機構10を駆動することにより、シリアルヘッド5aの回動範囲である円形の範囲について所望の画像を印刷することができる。この印刷後、飛行体2,2aを駆動して隣接する隣の領域に飛行体2,2aを移動させて印刷を行えば、一回の印刷でカバーできる範囲を越えた一連の画像を複数回に分けて印刷することができる。
【0035】
なお、以上説明した
図4の分図(a)~(e)では、印刷対象7の印刷面は平面であることを前提としているが、次に説明する分図(f)は凹曲面の印刷面に対応するものである。
【0036】
図4(f)では、印刷ヘッド5としてシリアルヘッド5aを使用する。シリアルヘッド5aは、飛行体2の本体部3に設けられた自在継手としての機能を有する立体角移動機構に取りつけられている。この機構は、本体部3に取り付けられた円筒形の基台11と、基台11の先端部に設けられた開口に、立体角度(ステラジアン)が調整自在となるように回動自在に取り付けられた球形のジョイント部12と、球形のジョイント部12の周面に取り付けられてジョイント部12の半径方向Rについて任意に往復移動できる直動機構13とを備えている。シリアルヘッド5aは直動機構13の先端に取り付けられている。この機構によれば、ジョイント部12を調整可能な立体角度の範囲内で回動させて立体角度方向SRに関する所望の位置に直動機構13を設定できるとともに、直動機構13の伸縮により直動機構13の先端にあるシリアルヘッド5aを半径方向Rに関する所望の位置に設定できる。
【0037】
従って、印刷時には、シリアルヘッド5aを駆動しつつ、ジョイント部12と直動機構13を必要に応じて駆動することにより、印刷対象7に設けられた凹部の内面、例えばドームのような建造物の内面等に所望の画像を印刷することができる。
【0038】
本実施形態における印刷ヘッド5の構成及び移動方向としては、
図4(a)~(f)を参照して説明したバリエーションの他にも、次の2つのような構造が考えられる。
例えば、2機の飛行体2,2をシャフトで連結し、印刷ヘッド5を搭載したキャリッジをこのシャフトに挿通した状態で装架する。これによって、キャリッジはシャフトに沿って直動し、またシャフトに沿って回動することができる。この構造によれば、印刷ヘッド5を、直線方向と回転方向の2方向に任意に移動させることができる。
【0039】
また、例えば、印刷ヘッド5を第1シャフトに挿通された状態で環状の第1フレームの内部に装架する。そして、第1フレームを、第1シャフトと直交する向きの第2シャフトに軸支された状態で、第1フレームより大きい環状の第2フレームの内部に装架する。印刷ヘッド5は第1シャフトの回転方向と、第2シャフトの回転方向の2方向に回動することができる。
【0040】
5.プリンタ1と印刷対象7との距離を保持する手段について(
図5及び
図6)
項目2で説明したように、実施形態のプリンタ1は、印刷対象7に対して非接触の状態で駆動され、インク滴をノズルから吐出して画像を形成する印刷ヘッド5を使用する。このため、印刷ヘッド5のノズル面と印刷対象7の印刷面との隙間(ギャップGと称する。)は可及的一定に維持する必要がある。
【0041】
図5は、前記ギャップGを一定に保持するための手段を説明する図である。
図5(a)は、飛行体2の制御によって距離を保持する非接触式のギャップ調整を示す模式図である。制御部6による駆動部4等の制御により、ギャップGを必要な所定の値に維持し、印刷ヘッド5から吐出されるインク滴を印刷対象7に適切な状態で移行させ、所期の精細度の画像を形成できるようにしている。ギャップGを必要な所定の値に維持するための高さ制御については、後述する項目7でも説明する。
【0042】
図5(b)は、飛行体2に設けられたギャップ調整部15によってギャップGを保持する接触式のギャップ調整を示す模式図である。ギャップ調整部15は、必要なギャップGと同一の長さに設定された棒状の部材であり、飛行体2の本体部3の印刷ヘッド5が設けられている面に、印刷ヘッド5を囲むように少なくとも3本が互いに平行に設けられている(
図5(b)では2本が現れている。)。ギャップ調整部15を印刷対象7に当接させることにより、ギャップGを必要な値に保持することができる。
【0043】
インク滴を吐出して描画を行う印刷ヘッド5(IJヘッド)の印刷精度は通常はμmレベルである。本実施形態のプリンタ1において、このレベルの印刷精度を達成しようとするならば、前記ギャップGを必要な値に保持する必要がある。しかしながら、従来のドローンの飛行制御による位置設定精度は通常cmレベルである。このため、
図5(a)に示したように、飛行体2の精密な制御によって距離を保持するギャップ調整を行うか、又は機械的にギャップGを所定の値に維持する
図5(b)に示したギャップ調整を行う必要がある。
【0044】
なお、印刷ヘッド5(IJヘッド)を使用せず、塗料を噴霧するスプレーを飛行体2に搭載して印刷を行う場合には、画像の印刷精度が低いため、
図5を参照して説明したような精密なギャップ調整手段は必要なく、従来のドローンのように位置設定精度がcmレベルである通常の飛行制御で問題ない。
【0045】
図6は、前記ギャップ調整部の構成をより具体的に示すバリエーションの図である。
図6(a)に示すギャップ調整部15aは、
図5(b)に示したギャップ調整部15と同様の棒体であるが、その先端には回転可能な球体16が取りつけられている。印刷時、ギャップ調整部15aの球体16を印刷対象7に当接させた状態で、飛行体2を印刷対象7の表面に沿って移動するように制御すれば、ギャップGを一定に維持したまま印刷ヘッド5を円滑に移動させることができる。
【0046】
図6(b)は、飛行体2において本体部3の印刷対象7と接する面に取りつけられたギャップ調整部15bである。このギャップ調整部15bは、本体部3に軸17を介して偏心して取りつけられた3個以上のカム18を備えている(
図6(b)では2個のカム18が現れている。)。各カム18の偏心の状態及び回動の方向は同一であり、図示しない駆動手段によりカム18を回動させることで前記ギャップGを所望の値に設定できる。また、印刷時、カム18は印刷対象7に対して周縁部で接するため、この状態で飛行体2を印刷対象7に平行に移動させれば、カム18と印刷対象7の間に働く摩擦力は大きくはなく、ギャップGを一定に維持したままプリンタ1を円滑に移動させることができる。
【0047】
図6(c)に示すギャップ調整部15cは、飛行体2の本体部3を貫通し、先端部が印刷対象7に向けて突出するように設けられたギャップ調整機構である。このギャップ調整部15cは、印刷ヘッド5を囲んで3箇所以上に設けられている(
図6(c)では1個のギャップ調整部15cを示す。)。各ギャップ調整部15cは、本体部3の壁体に設けられためねじ部19と、めねじ部19に噛み合うねじ軸20とを備えている。ねじ軸20の先端には、
図6(a)のギャップ調整部15aと同様に球体16を設けてもよい。図示しないアクチュエータでねじ軸20を回転させれば、ねじ軸20を直動させて本体部3から印刷対象7へ突出する長さを調整することができ、前記ギャップGを所望の値に設定できる。
【0048】
なお、印刷ヘッド5(IJヘッド)を使用して画像を印刷する場合には、印刷ヘッド5と印刷面のギャップGはなるべく小さい方がよく、ギャップGを小さくするだけ得られる画像の精細度も向上する。ところが、印刷対象7が地面や建造物の表面である場合には、その表面の粗さのためにギャップGを小さく設定できない場合がある。そのような場合であっても、
図6(b)及び
図6(c)に示したギャップ調整部のように、ギャップGが一定の値でなく、所定の範囲内で任意に設定できるのであれば、印刷対象7の表面の状態に応じてギャップGを適当な値に設定することができる。印刷対象7の表面の状態が予想できるのであれば、予めギャップ調整部15b、15cが必要なギャップGを設定できるように制御部6に指示を与えておけばよい。又は、プリンタ1が実際に印刷対象7の近傍に接近してから、カメラ等で印刷対象7の表面を観察し、その結果に応じてギャップ調整部15b、15cが必要なギャップGを設定するようにしてもよい。
【0049】
6.インクタンクとヘッド用電源の構成について(
図7)
実施形態のプリンタ1,1aは、印刷ヘッド5を搭載した飛行体2,2aを飛行させて印刷対象7に接近させ、印刷対象7の所定位置に所望の画像を印刷するための装置であるが、高所、遠所にある印刷対象7に飛行体2,2aを送って接近させることや、印刷対象7の比較的広い面積に画像を形成することも想定している。そのためには、印刷ヘッド5にインクを供給するインク供給源や、印刷ヘッド5を駆動するためのヘッド用電源には相応の容量を持たせることが好ましい。そうすると、インク供給源やヘッド用電源の重量は大きくなるため、インク供給源及びヘッド用電源と、印刷ヘッド5を搭載した飛行体2,2a(すなわちプリンタ1,1a)との構造的な関係をどのように設定するかが課題となる。以下に、
図7(a)~(c)に示した3つの解決手段とその作用効果について説明する。
【0050】
図7(a)は、インク供給源としてのインクタンク21と、印刷ヘッド5を駆動するためのヘッド用電源22を、プリンタ1の本体部3内に納めた一体型の構成を示す模式図である。
【0051】
図7(a)に示す一体型のプリンタ1によれば、後述する独立型(
図7(b))や分離連結型(
図7(c))に比べて構成が簡単で製造コストが低廉となる。その反面、全体として大きく、重くなる。このため、飛行の制御によって前記ギャップGを一定に保つことや、
図3(a)を参照して説明したようにプリンタ自体が移動して画像を印刷することはより難しくなる。従って、
図5を参照して説明したギャップ調整の手法としては、非接触式(
図5(a))ではなく接触式(
図5(b))が好ましいものとなり、ギャップ調整の手法に関する選択の余地は狭くなる。
【0052】
図7(a)に示す一体型のプリンタ1によれば、印刷ヘッド5にインクを供給するインクタンク21と、印刷ヘッド5を駆動するためのヘッド用電源22を備えているので、印刷ヘッド5を長時間にわたって駆動し、貯蔵した大量のインクを印刷ヘッド5に供給することができるため、印刷対象7に面積の大きな画像を印刷することができる。
【0053】
図7(b)は、インクタンク21と、印刷ヘッド5を駆動するためのヘッド用電源22を、プリンタ1とは別体とし、それぞれに飛行用の駆動部4を設け、独立して飛行可能とした構成の模式図である。
【0054】
図7(b)に示す独立型のプリンタ1によれば、インクタンク21と飛行体2の印刷ヘッド5は、チューブ等で予め接続しておくか、又は印刷対象7に接近してから、インクタンク21又は飛行体2の側からチューブ等を伸ばして相手方に接続し、インクタンク21から印刷ヘッド5にインクを供給する。また、ヘッド用電源22は、有線又はワイヤレスで印刷ヘッド5に電源を供給する。従って、プリンタ1から独立したインクタンク21とヘッド用電源22は、プリンタ1の近傍でホバリングしていればよい。すなわち、インクタンク21とヘッド用電源22は、印刷ヘッド5で印刷を行っているプリンタ1のように高精度な位置制御を行う必要がない。
【0055】
また、印刷しようとする画像のサイズに対応するプリンタ1の移動範囲が狭く、インクや電源の供給に支障がない場合には、インクタンク21とヘッド用電源22は飛行体2の近傍で着陸していてもよい。その場合には、インクタンク21とヘッド用電源22は停止しており、位置制御の必要がない。
【0056】
また、プリンタ1は、インクタンク21とヘッド用電源22を内臓している場合に比べれば、小さく軽く構成することができるため、画像形成のための飛行体2の高精度な位置制御は、機体が重く大きい場合に比べればより容易に行うことができる。
【0057】
図7(c)は、インクタンク21とヘッド用電源22を、プリンタ1とは別体とし、いずれも飛行用の駆動部4を備えて独立して飛行可能にするとともに、さらに飛行体2に対してそれぞれ連結又は分離できるようにした構成の模式図である。
【0058】
図7(c)に示す分離連結方型のプリンタ1によれば、プリンタ1と、インクタンク21と、ヘッド用電源22を、必要に応じて互いに任意に連結し、また分離することができる。このため、印刷しようとする画像のデザインや大きさ等に応じて、プリンタ1の数、種類及び組合せを任意に定めることができる。例えば、プリンタ1を必要な数だけ一列に組み合わせてラインヘッド状の構成とし、1回の動作で印刷できる面積を大きくすることができる。また、吐出するインクの色彩が異なる印刷ヘッド5を搭載した複数のプリンタ1を任意に組み合わせ、多色の印刷を1回の動作で行えるようにすることもできる。
【0059】
また、印刷ヘッド5に供給するインクや、印刷ヘッド5を駆動する電源が印刷中になくなった場合には、使用済みのインクタンク21とヘッド用電源22をプリンタ1から切り離して出発地点に帰還させる。プリンタ1は印刷対象7の近傍に待機させておく。そして、満タンのインクタンク21と充電済みのヘッド用電源22を出発地点から印刷対象7の近傍に新たに派遣し、印刷対象7の近傍に待機させておいたプリンタ1に連結させる。これで、印刷を続行することができる。印刷の中断を避けるため、インクタンク21のインクとヘッド用電源22の電源が消費し尽くされるタイミングを図って、満タンのインクタンク21と充電済みのヘッド用電源22を印刷対象7の近傍に待機させておいてもよい。
【0060】
なお、
図7に示した各構成例では、図示はしないが、インクタンク21にはインクを送り出すためのポンプが設けられている。このポンプを駆動するためにヘッド用電源22を使用してもよいし、ポンプ専用の電源をインクタンク21に設けるものとしてもよい。
【0061】
7.プリンタ1の位置制御について(
図8)
実施形態のプリンタ1は、出発地点から離陸して目的地まで飛行し、印刷対象7を確認して必要な距離まで接近し、印刷対象7との間に前記ギャップGを保持した状態で印刷ヘッド5を駆動して指定された画像を印刷対象7に印刷する。ここで、目的地までの飛行制御と、目的地の上空において印刷対象7に接近するための飛行制御は、次に説明するように行う。
【0062】
1)目的地までの飛行制御
出発位置から印刷対象7まで移動する際の位置制御は、高度位置及び平面位置の制御を含み、GPSを利用した制御により行うことができる。
【0063】
2)印刷対象7の目標地点に接近するための飛行制御(1)
目的地の上空に到達した後、印刷対象7の目標地点にプリンタ1を着陸させ、プリンタ1を移動させることなく、印刷ヘッド5の移動のみで画像を印刷する場合には、プリンタ1の位置制御としてはGPSを利用して行う目的地までの飛行制御だけでよい。
しかしながら、目的地の上空に到達した後、印刷対象7の中の特定地点を検出してプリンタ1を接近させ、プリンタ1を移動させながら特定地点に印刷ヘッド5で画像を印刷する際の位置制御は、プリンタ1に搭載したカメラ23が取得した画像情報に基づいて行う。この位置制御は主として印刷対象7のエリアにおける平面位置の制御である。なお、ここでは、印刷対象7を地表面として説明を行う。
【0064】
図8(a)に示すように、印刷対象7である目的地の上空に到達したプリンタ1は、カメラ23によって地表面を撮影し、所定領域の画像データを取得する。プリンタ1は、印刷目標となる地表面上の特徴的な模様に関するデータを予め前記制御部6に記憶している。
【0065】
図8(b)に示すように、プリンタ1の制御部6は、
図8(a)で示す範囲について取得した画像データを、1又は複数の画素を単位としたグリッドで構成される座標系を介して認識する。そして、予め与えられている前記模様と画像データを照合し、画像データ中に前記模様が存在するか否かを検索する。画像データ中に前記模様と一致する模様が認識された場合には、画像データの座標系の中で前記模様が認識されたグリッドを囲む複数のグリッドを特定する。
図8(b)では、太線で囲んだ9個のグリッドが特定された(これを特定グリッド群と称する。)。
、
【0066】
プリンタ1は、カメラ23の拡大率を上げるか、又は飛行体2を下降させて、カメラ23が捉える画像の範囲を
図8(b)の状態から
図8(c)の状態にまで拡大し、印刷目標である前記模様の位置を絞り込んでいく。便宜上、特定グリッド群の各グリッドには1から9までの数字を付しており、前記模様が認識されたグリッドを数字5で示す。
【0067】
プリンタ1は、
図8(c)に示す特定グリッド群の位置に下降し、
図8(d)に示すように、特定グリッド群の一方の縁部から他方の縁部へ向かう矢印の方向に沿って、飛行体2に搭載した画像取得用デバイスとしてのCIS24(Contact Image Sensor、密着イメージセンサ)により、印刷対象7の地表面を走査する。そして、印刷目標である前記模様の位置(5番のグリッド)で前記模様を検出すると、印刷ヘッド5を駆動して前記模様の位置(5番のグリッド)に指定された画像を印刷する。なお、画像取得用デバイスとしては、前記CISに限らず、CCD、CMOSなどでもよく、技術的に種類を限定する必要はない。
【0068】
また、以上の制御において、プリンタ1の高度位置の制御を行う際には、前記カメラ23の他にもう一台のカメラを搭載しておき、デュアルカメラとして高度を測定できるようにしてもよい。さらにまた、レーザー測定や超音波測定で高度を測定するようにしてもよい。
【0069】
なお、
図8を参照して説明したプリンタ1の位置制御では、カメラ23で取得した画像を、画素を構成単位とした座標系を介して認識し、前記模様と同一のパターンを検索し、これが存在するグリッドを画像中から抽出していた。しかしながら、カメラ23で取得した画像中に目標である前記模様を検出して位置を特定することができるのであれば、画像を座標化することは課題を解決するための一手段に過ぎないから、前記模様の位置の特定は座標化以外の他の手法で行ってもかまわない。例えば、上空に浮遊しているプリンタ1のカメラ23で地表面の比較的広い範囲を撮影した全体画像を取得し、その中で前記模様が検出された比較的狭い部分に接近、降下して当該部分を撮影した部分画像を取得し、全体画像と部分画像の前記模様を照合すれば、前記模様が全体画像中の何れの位置にあるかを示す印刷位置の位置情報を取得することができる。
【0070】
3)印刷対象7の目標地点に接近するための飛行制御(2)
プリンタ1とは別に、カメラを備えた撮影用の飛行体を用意する。この撮影用の飛行体でプリンタ1を撮影することによって、プリンタ1を印刷対象7の目標地点に接近させる飛行制御を行うことができる。すなわち、上方に配置した撮影用の飛行体で、下方にあるプリンタ1を撮影すれば、印刷対象7である地表面の画像の上にプリンタ1が重なって見える画像が得られるので、プリンタ1が目標地点に向かうように撮影用の飛行体2からプリンタ1に位置制御情報を送ればよい。または、撮影用の飛行体が撮影した画像データをプリンタ1に送り、プリンタ1の制御部6が位置制御情報を自ら生成して目標地点に向かってもよい。
【0071】
以上説明したように、実施形態のプリンタ1の位置制御によれば、カメラで撮影した印刷対象の画像と、記憶している印刷対象の模様を照合して印刷位置を特定し、その印刷位置に移動し、イメージセンサで当該模様を実際に検出したところで画像を形成するので、発進地点から離れた位置にある印刷対象に設定した目標位置に対しても、正確な位置精度で画像を印刷することができる。
【0072】
8.飛行体の他の形状例について(
図9)
以上説明した実施形態におけるプリンタの飛行体のうち、
図1に示したものは、矩形の箱体の上面に単一のプロペラが設けられた構造として模式的に示した。また、より具体的な
図3においては、環状フレーム3aに4つのプロペラが設けられた構造を示した。これらのような構造であっても、先に説明したように、機体の姿勢を適宜制御することにより、地表面だけでなく、構造体の下面や側面、凹面内にも印刷を行うことはできる。
【0073】
しかしながら、構造体の下面や側面、凹面内等に無理なく印刷を行うための飛行体2bを
図9に示す。この飛行体2bは、複数本の環状のフレーム25を組み合わせた球状の本体部26を備えている。本体部26の内部には図示しないプロペラがあり、飛行することができる。さらに本体部26の内部には、プロペラの他、制御部、タンク、電源、カメラ等が設けられている。各フレーム25には、少なくともフレーム25とフレーム25の連結部分以外の部分に、印刷ヘッド5が移動可能に設けられている。この印刷ヘッド5のノズル面は、飛行体2が印刷対象7に接した場合にも前記ギャップGを保持できるように構成されている。各印刷ヘッド5はフレーム25に沿って約180度の角度範囲内で任意の位置に移動でき、さらに飛行体2bは任意に回転して姿勢を制御できるため、本体部26の外側の全ての方向について360度の範囲で印刷を行える。
【0074】
この球形のプリンタ1bによれば、筒の中やドーム天井の内面(下面)に無理なく所望の画像を印刷することができる。
【0075】
9.連結式のプリンタ1で画像を形成する際の印刷経路について(
図10及び
図11)
図10(a)に示すプリンタ1は、
図1に示したプリンタ1と概ね同一の構成であるが、
図10(b)に示すように、印刷ヘッド5の長手方向に沿って2台を並べて連結することができる。図示はしないが、同様に3台以上を連結することもできる。連結された複数台のプリンタ1は、制御部6の制御により、単一のプリンタ1のように飛行することができる。また、連結した場合、複数台のプリンタ1の各印刷ヘッド5は、印刷手段として一体となる。すなわち、複数の印刷ヘッド5を連結して単一のプリンタ1の場合よりも長い印刷ヘッドを構成できる。印刷ヘッド5,5の連結の継ぎ目では、ノズル配列の状態は他の部分と同じになり、ノズルの配列パターン乃至ノズルピッチは全体として一定となる。なお、この例では、各プリンタ1の印刷ヘッド5は、シリアルヘッド5aでもよいし、ラインヘッド5bであってもよい。
【0076】
図11は、連結又は分離が可能な実施形態のプリンタ1で印刷対象7に画像を形成する際の印刷経路を示す図である。同図において、印刷対象7に印刷する画像を文字「A」及び「B」で示し、印刷ヘッド5が移動する軌跡、すなわち印刷経路を実線の矢印で示す。
【0077】
以下に
図11を参照して説明するように、このプリンタ1は、単独で、または複数台を連結した状態で、印刷対象7との間に前記ギャップGを保ちつつ、最短の移動経路で移動しながら印刷ヘッド5を駆動して画像を印刷することができる。または、このプリンタ1は、単独で、または複数台を連結した状態で印刷対象7の上に前記ギャップGを保った状態で停止し、印刷ヘッド5を最短の移動経路で移動させて画像を印刷することができる。プリンタ1自体が移動するか、プリンタ1は静止して印刷ヘッド5が移動するか、何れを選択するかは、印刷する画像の大きさと、プリンタ1により印刷可能な範囲との相対的な比較により決めることができる。
【0078】
図11(a)は、
図10(a)に示す単一のプリンタ1が備える単一の印刷ヘッド5で文字「A」及び「B」を最短の印刷経路で印刷した例を示す。
【0079】
図11(b)は、
図10(a)のプリンタ1を2機連結した
図10(b)のプリンタ1を使用し、一体となった2台の印刷ヘッド5で文字「A」及び「B」を最短の印刷経路で印刷した例を示す。
【0080】
図11(c)は、
図10(a)に示す単一のプリンタ1を2機使用し、各印刷ヘッド5をそれぞれ独立に同時に駆動することにより、文字「A」及び「B」をそれぞれ最短の印刷経路で同時に印刷した例を示す。
【0081】
図11(d)は、
図10(a)に示す単一のプリンタ1を3機連結したプリンタ1を使用し、一体となった3台の印刷ヘッド5で文字「A」及び「B」を最短の印刷経路で印刷した例を示す。
【0082】
図11(e)は、連結した3機のプリンタ1を2組み使用し、各組の一体となった3台の印刷ヘッド5をそれぞれ独立に同時に駆動し、文字「A」及び「B」をそれぞれ最短の印刷経路で同時に印刷した例を示す。
【0083】
上述した最短の印刷経路は、印刷ヘッド5の数及び組合せと、印刷しようとする画像に応じて、以下のような条件を満たすように決定する。
すなわち、文字「A」の印刷面積をA、文字「B」の印刷面積をBとすると、必要印刷面積S1は、S1=A+Bとなる。
また、印刷ヘッド5の幅をW、印刷ヘッド5が幅方向と直交する方向に移動する距離をLとすると、印刷ヘッド5によって印刷可能な範囲の面積S2は、S2=W×Lとなる。
従って、印刷ヘッド5が最短の印刷経路をたどって文字「A」及び「B」を印刷する場合、次のような2つの条件(1)(2)が成立する。
S1<S2…(1)
L≪MIN…(2) (Lを最小に設定すること)
制御部6は、上記2つの条件を満足するような飛行体2の移動経路または印刷ヘッド5の移動経路を算出し、飛行体2の移動または印刷ヘッド5の移動を制御する。
【0084】
このように、印刷しようとする画像の大きさ、配置等に合わせて、飛行体2または印刷ヘッド5を上述のように最短経路で移動させれば、印刷時間を可及的に短くすることができる。また、印刷内容に応じてプリンタ1の連結数を適宜に設定することによっても、印刷時間を可及的に短くすることができる。
【0085】
以上説明した実施形態では、印刷ヘッドでインクの液滴を吐出して印刷対象面に画像を印刷する例を説明したが、印刷ヘッドから吐出する液体はインクには限らない。例えば、銀ペーストを吐出して回路パターンを印刷することができる。また、樹脂を吐出して積み重ねることにより立体構造を形成する3Dプリンタのように使用することができる。また、接着剤を吐出することもできる。また、食品の表面にエディブルペーストを吐出して必要な印刷を行うことができる。さらにまた、補修材を吐出して構造物の亀裂の補修を行うこともできる。
【0086】
以上説明した実施形態では、プリンタ1,1a(または印刷ヘッド5)と、印刷対象7とのギャップGを一定に保持して印刷することで、高精細な画像を印刷できると説明してきたが、屋外での印刷の場合には風の影響によって吐出したインク滴が流れて高精細な画像を形成できない場合も考えられる。このような風の影響を防ぐために、プリンタ1,1aの本体部の印刷対象側に風除けの壁を設けてもよい。この壁のサイズは、印刷ヘッド5の周囲を囲み、前記ギャップGを概ね塞ぐが、印刷対象には接触しない程度とすることが好ましい。
【0087】
10.実施形態における各態様のプリンタの構成とその効果について
第1の態様のプリンタは、
飛行体と、
前記飛行体に搭載され、前記飛行体が接近した印刷対象に非接触で所望の画像を印刷する印刷ヘッドと、
ホバリングしている飛行体の推進力の方向と平行な方向に延出するように前記飛行体に取り付けられ、画像を印刷する際に前記印刷対象に当接して前記印刷ヘッドと前記印刷対象の距離を所定の値に保持するギャップ調整部と、
を有するプリンタにおいて、
前記飛行体は、本体部と、前記本体部に搭載されて前記本体部を飛行させる駆動部とを有しており、
前記印刷ヘッドは、前記本体部に対して少なくとも異なる2方向について任意に移動できるように取り付けられており、
前記印刷対象に対する前記飛行体の位置を固定しつつ前記印刷ヘッドを移動させながら駆動する制御部をさらに有することを特徴としている。
【0092】
第1の態様のプリンタによれば、印刷対象に対する飛行体の位置を固定しつつ、印刷対象の印刷面内において印刷ヘッドを移動させながら駆動することにより、印刷対象に所望の画像を印刷することができる。
【0097】
第2の態様のプリンタは、第1の態様のプリンタにおいて、
前記印刷ヘッドにインクを供給するインク供給源と、前記印刷ヘッドを駆動するためのヘッド用電源を有することを特徴としている。
【0098】
第2の態様のプリンタによれば、印刷ヘッドにインクを供給するインク供給源と、印刷ヘッドを駆動するためのヘッド用電源を備えているので、大量のインクを印刷ヘッドに供給することができるとともに、印刷ヘッドを長時間にわたって駆動できるため、印刷対象に面積の大きな画像を印刷することができる。
【0099】
第3の態様のプリンタは、第2の態様のプリンタにおいて、
前記インク供給源が飛行用の駆動部により独立して飛行可能であり、前記ヘッド用電源が飛行用の駆動部により独立して飛行可能であることを特徴としている。
【0100】
第3の態様のプリンタによれば、インク供給源とヘッド用電源は、印刷ヘッドを搭載した飛行体から独立しているが、インクについてはチューブ等で印刷ヘッドに供給でき、また電源については有線又はワイヤレスで印刷ヘッドに供給できる。このため、飛行体から独立したインク供給源とヘッド用電源は、飛行体の近傍でホバリングしていればよい。すなわち、インク供給源とヘッド用電源は、印刷ヘッドで印刷を行っている飛行体のように高精度な位置制御を行う必要がない。さらに、印刷しようとする画像の大きさ又はその大きさに対応する飛行体の移動範囲がある程度狭く、インクや電源の供給に支障がない場合には、インク供給源とヘッド用電源は飛行体の近傍で着陸していてもよい。その場合には、インク供給源とヘッド用電源は停止しており、位置制御の必要がなくなる。また、印刷ヘッドを搭載した飛行体は、インク供給源とヘッド用電源を内臓している場合に比べれば、小さく軽く構成することができる。このため、画像形成のための飛行体の高精度な位置制御は、機体が重く大きい場合に比べればより容易に行うことができる。
【0101】
第4の態様のプリンタは、第3の態様のプリンタにおいて、
前記インク供給源と、前記ヘッド用電源が、前記飛行体に対してそれぞれ連結又は分離できることを特徴としている。
【0102】
第4の態様のプリンタによれば、印刷ヘッドを搭載した飛行体と、インク供給源と、ヘッド用電源を互いに任意に連結し、また分離することができるため、印刷しようとする画像のデザインや大きさ等に応じて、印刷ヘッドを搭載した飛行体の数と組合せを任意に定めることができる。例えば、飛行体を必要な数だけ一列に組み合わせてラインヘッド状の構成として1回の動作で印刷できる面積を大きくすることができる。また、吐出するインクの色彩が異なる印刷ヘッドを搭載した複数の飛行体を任意に組み合わせ、多色の印刷を1回の動作で行えるようにすることもできる。
【0103】
また、印刷ヘッドに供給するインクや、印刷ヘッドを駆動する電源が印刷中になくなった場合には、使用済みのインク供給源とヘッド用電源を飛行体から切り離して出発地点に帰還させる。飛行体は印刷対象の近傍に待機させておく。そして、満タンのインク供給源とフルに充電済みのヘッド用電源を出発地点から印刷対象の近傍に新たに派遣し、印刷対象の近傍に待機させておいた飛行体に連結させる。これで、印刷を続行することができる。印刷の中断を避けるため、インク供給源のインクとヘッド用電源の電源が消費し尽くされるタイミングを図って、満タンのインク供給源とフルに充電済みのヘッド用電源を印刷対象の近傍に待機させておいてもよい。
【0104】
第5の態様のプリンタは、第1の態様から第4の態様の中の一つの態様のプリンタにおいて、
前記制御部が、印刷しようとする画像を最短の移動経路で印刷するように前記飛行体と前記印刷ヘッドの少なくとも一方を制御することを特徴としている。
【0105】
第5の態様のプリンタによれば、印刷時に、印刷する画像に応じて、飛行体または印刷ヘッドを最短経路で移動させることにより、印刷時間を可及的に短くすることができる。また、印刷する画像に応じて、プリンタの連結数を適宜に設定することによっても、印刷時間を可及的に短くすることができる。
【0106】
第6の態様のプリンタは、第1の態様から第5の態様の中の一つの態様のプリンタにおいて、
印刷対象の画像を取得するカメラと、
印刷対象の模様を検出するイメージセンサと、
をさらに有しており、
前記制御部は、目標となる印刷対象の模様を予め記憶しており、前記カメラにより取得した印刷対象の画像と前記模様を照合して印刷位置を特定し、前記飛行体を前記印刷位置に移動させ、前記イメージセンサによって印刷対象を走査して前記模様を検出した位置で画像を印刷するように、前記飛行体と前記印刷ヘッドを制御することを特徴としている。
【0107】
第6の態様のプリンタによれば、
カメラで撮影した印刷対象の画像と、記憶している印刷対象の模様を照合して印刷位置を特定し、その印刷位置に移動してイメージセンサで当該模様を実際に検出したところで画像を形成するので、発進地点から離れた位置にある印刷対象に設定した目標位置に対して正確な位置精度で画像を印刷することができる。
第7の態様のプリンタは、
飛行体と、
前記飛行体に搭載され、前記飛行体が接近した印刷対象に非接触で所望の画像を印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドにインクを供給するインク供給源と、
前記印刷ヘッドを駆動するためのヘッド用電源とを有し、
前記インク供給源は飛行用の駆動部により独立して飛行可能であり、前記ヘッド用電源は飛行用の駆動部により独立して飛行可能であることを特徴としている。
第7の態様のプリンタによれば、飛行体を出発地点から印刷対象の近傍まで飛行させ、印刷対象に対して印刷ヘッドを非接触の状態としながら駆動することにより、印刷対象に所望の画像を印刷することができる。
また、印刷ヘッドにインクを供給するインク供給源と、印刷ヘッドを駆動するためのヘッド用電源を備えているので、大量のインクを印刷ヘッドに供給することができるとともに、印刷ヘッドを長時間にわたって駆動できるため、印刷対象に面積の大きな画像を印刷することができる。
また、インク供給源とヘッド用電源は、印刷ヘッドを搭載した飛行体から独立しているが、インクについてはチューブ等で印刷ヘッドに供給でき、また電源については有線又はワイヤレスで印刷ヘッドに供給できる。このため、飛行体から独立したインク供給源とヘッド用電源は、飛行体の近傍でホバリングしていればよい。すなわち、インク供給源とヘッド用電源は、印刷ヘッドで印刷を行っている飛行体のように高精度な位置制御を行う必要がない。さらに、印刷しようとする画像の大きさ又はその大きさに対応する飛行体の移動範囲がある程度狭く、インクや電源の供給に支障がない場合には、インク供給源とヘッド用電源は飛行体の近傍で着陸していてもよい。その場合には、インク供給源とヘッド用電源は停止しており、位置制御の必要がなくなる。また、印刷ヘッドを搭載した飛行体は、インク供給源とヘッド用電源を内臓している場合に比べれば、小さく軽く構成することができる。このため、画像形成のための飛行体の高精度な位置制御は、機体が重く大きい場合に比べればより容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0108】
1,1a…プリンタ
2,2a,2b…飛行体
3,26…本体部
3a…本体部としての環状フレーム
4…駆動部
4a…駆動部としてのプロペラ
5…印刷ヘッド
5a…印刷ヘッドとしてのシリアルヘッド
5b…印刷ヘッドとしてのラインヘッド
6…制御部
15,15a,15b,15c…ギャップ調整部
21…インク供給源としてのインクタンク
22…ヘッド用電源