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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】光学部材の梱包物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017247791
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019113743
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】中田 美恵
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】河原 正
【審判官】石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-275722(JP,A)
【文献】特開2009-276755(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の片面又は両面に接着剤層を介して保護フィルムを設けて偏光フィルムを作製する工程A、前記偏光フィルムに少なくとも粘着剤層及び表面保護フィルムを設けて光学部材を作製する工程B、及び前記光学部材を梱包する工程Cを含む光学部材の梱包物の製造方法であって、
前記梱包物は、製造後に開梱されるものであり、
前記梱包物を開梱してから前記光学部材をセル基板に貼り合わせるまでの前記光学部材中の偏光フィルムの平衡水分率をX重量%とするとき、
前記工程Bから前記工程Cまでの間に、前記光学部材中の偏光フィルムの水分率Zが前記平衡水分率X未満にならないように、前記水分率Zを調整する工程Dを含み、
前記工程Cにおいて、前記光学部材中の偏光フィルムの水分率Y重量%が前記平衡水分率X重量%未満にならないように、前記水分率Y重量%を調整することを特徴とする光学部材の梱包物の製造方法。
【請求項2】
前記工程Cにおいて、前記水分率Yと前記平衡水分率Xとの差が0~1重量%になるように、前記水分率Yを調整する請求項1に記載の光学部材の梱包物の製造方法。
【請求項3】
前記工程Cにおいて、前記光学部材を加湿することにより前記水分率Yを調整する請求項1又は2に記載の光学部材の梱包物の製造方法。
【請求項4】
前記工程Dにおいて、前記水分率Zと前記平衡水分率Xとの差が0~1重量%になるように、前記水分率Zを調整する請求項1~3のいずれかに記載の光学部材の梱包物の製造方法。
【請求項5】
前記工程Dにおいて、前記光学部材を加湿することにより前記水分率Zを調整する請求項1~4のいずれかに記載の光学部材の梱包物の製造方法。
【請求項6】
前記梱包物を開梱してから前記光学部材をセル基板に貼り合わせるまでの作業は、クリンルーム内で行われる請求項1~のいずれかに記載の光学部材の梱包物の製造方法。
【請求項7】
前記クリンルームは、15~25℃の温度範囲内のある一定温度かつ45~65%Rhの相対湿度内のある一定湿度に調整されている請求項に記載の光学部材の梱包物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の梱包物の製造方法に関する。前記光学部材は、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置などの画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光フィルムが貼着されている。前記偏光フィルムを液晶セルに貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、偏光フィルムと液晶セルの接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、偏光フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、偏光フィルムの片側に予め粘着剤層として設けられた粘着剤層付偏光フィルムが一般的に用いられる。粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層には、通常、離型フィルムが貼り付けられている。
【0003】
また、加工、搬送時に生じる傷や汚れから前記粘着剤層付偏光フィルムの偏光フィルム側表面を保護するために、通常、前記粘着剤層付偏光フィルムの偏光フィルム側表面には表面保護フィルムが粘着剤を介して貼り付けられている。
【0004】
偏光フィルムに前記粘着剤層及び前記表面保護フィルム等を設けた光学部材は、通常、所定の大きさにカットされ、積層された状態で梱包され、あるいはロール状に巻かれた状態で梱包されてパネルメーカーに配送される。
【0005】
そして、パネルメーカーにおいて、温度及び湿度が一定に管理された雰囲気下で光学部材を液晶セルなどのセル基板に貼り付ける作業が行われるが、その際に、光学部材に不必要なカールや意図しないカール(カールとは反り返る現象をいい、例えば、平板状のものが、どちらか一方の面側に全体的に反り返る現象、平板状のものが全体的に波打つように反り返る現象などをいう。)があると、光学部材の取り扱い性が悪くなったり、光学部材とセル基板の間に気泡を噛み込むなどの不具合が生じるという問題があった。
【0006】
偏光フィルム(偏光板)のカールの発生を抑制するために、例えば、特許文献1では、200g/m/24h以下の透湿度を有する第1の透明保護フィルムを偏光子の一方の面に貼り合わせて積層体を形成した後、該積層体を巻き取ることなく、該第1の透明保護フィルムよりも高い透湿度を有する第2の透明保護フィルムを該偏光子の他方の面に貼り合わせる工程を含む、偏光板の製造方法、が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、偏光子の片面に透明保護フィルム(A)、もう一方の片面に透明保護フィルム(B)をそれぞれ接着剤により貼り合せる偏光板の製造方法であって、
偏光子は水分率が15~30重量%であり、
透明保護フィルム(A)および透明保護フィルム(B)は同質材料であって、透明保護フィルム(A)の厚さは透明保護フィルム(B)の厚さよりも厚く、かつ、透明保護フィルム(A)の水分率は透明保護フィルム(B)の水分率よりも大きい、ことを特徴とする偏光板の製造方法、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-309394号公報
【文献】特開2008-122790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、光学部材メーカーにおいてカールのない光学部材を作製したとしても、パネルメーカーにおいて前記光学部材をセル基板に貼り付ける際に、前記光学部材に不必要なカールや意図しないカールが発生するという問題があった。
【0010】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、パネルメーカーにおいて光学部材を液晶セルなどのセル基板に貼り付ける際に、前記光学部材にカールが生じ難い前記光学部材の梱包物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記の光学部材の梱包物の製造方法により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち本発明は、偏光子の片面又は両面に接着剤層を介して保護フィルムを設けて偏光フィルムを作製する工程A、前記偏光フィルムに少なくとも粘着剤層及び表面保護フィルムを設けて光学部材を作製する工程B、及び前記光学部材を梱包する工程Cを含む光学部材の梱包物の製造方法であって、
前記梱包物を開梱してから前記光学部材をセル基板に貼り合わせるまでの前記光学部材中の偏光フィルムの平衡水分率をX重量%とするとき、
前記工程Cにおいて、前記光学部材中の偏光フィルムの水分率Y重量%が前記平衡水分率X重量%未満にならないように、前記水分率Y重量%を調整することを特徴とする光学部材の梱包物の製造方法、に関する。
【0013】
本発明者らは、パネルメーカーにおいて光学部材をセル基板に貼り付ける際に、前記光学部材にカールが生じる原因を検討したところ、光学部材を作製してからセル基板に貼り付けるまでの間に、光学部材中の偏光フィルムの水分率が、当該光学部材をセル基板に貼り合わせる際の雰囲気下における当該光学部材中の偏光フィルムの平衡水分率よりも低くなることが原因であることを見出した。そして、パネルメーカーにおいて光学部材をセル基板に貼り付ける際の雰囲気下における当該光学部材中の偏光フィルムの平衡水分率を事前に知っておき、前記光学部材を梱包する際に、前記光学部材中の偏光フィルムの水分率が前記平衡水分率未満にならないように調整することにより、前記光学部材をセル基板に貼り付ける際に、前記光学部材にカールが生じ難くなることを見出した。
【0014】
作製した光学部材中の偏光フィルムの水分率が、前記光学部材をセル基板に貼り合わせる際の雰囲気下における前記光学部材中の偏光フィルムの平衡水分率よりも低い場合に、前記光学部材にカールが生じる理由は明らかではないが、光学部材をセル基板に貼り合わせる際に偏光フィルムの水分率が上昇することで偏光フィルムが膨潤し、端部にウェーブ状のカール等が発生するためと考えられる。
【0015】
なお、平衡水分率とは、一定温度かつ一定湿度の雰囲気下において、水分率の変化が実質的になくなるまで放置したときの水分の重量分率を意味する。
【0016】
前記工程Cにおいて、前記水分率Yと前記平衡水分率Xとの差が0~1重量%になるように、前記水分率Yを調整することが好ましい。
【0017】
また、前記工程Cにおいて、前記光学部材を加湿することにより前記水分率Yを調整することが好ましい。
【0018】
また、前記工程Bから前記工程Cまでの間に、前記光学部材中の偏光フィルムの水分率Zが前記平衡水分率X未満にならないように、前記水分率Zを調整する工程Dを含むことが好ましい。
【0019】
また、前記工程Dにおいて、前記水分率Zと前記平衡水分率Xとの差が0~1重量%になるように、前記水分率Zを調整することが好ましい。
【0020】
また、前記工程Dにおいて、前記光学部材を加湿することにより前記水分率Zを調整することが好ましい。
【0021】
また、前記梱包物を開梱してから前記光学部材をセル基板に貼り合わせるまでの作業は、クリンルーム内で行われることが好ましい。
【0022】
また、前記クリンルームは、15~25℃の温度範囲内のある一定温度かつ45~65%Rhの相対湿度内のある一定湿度に調整されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光学部材の梱包物の製造方法によれば、パネルメーカーにおいて光学部材を液晶セルなどのセル基板に貼り付ける際にカールが生じ難いため、光学部材の取り扱い性が良好であり、光学部材とセル基板の間に気泡を噛み込むなどの貼り合わせの不具合が生じることもない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の光学部材の梱包物の製造方法は、偏光子の片面又は両面に接着剤層を介して保護フィルムを設けて偏光フィルムを作製する工程A、前記偏光フィルムに少なくとも粘着剤層及び表面保護フィルムを設けて光学部材を作製する工程B、及び前記光学部材を梱包する工程Cを含み、
前記梱包物を開梱してから前記光学部材をセル基板に貼り合わせるまでの前記光学部材中の偏光フィルムの平衡水分率をX重量%とするとき、
前記工程Cにおいて、前記光学部材中の偏光フィルムの水分率Y重量%が前記平衡水分率X重量%未満にならないように、前記水分率Y重量%を調整することを特徴とする。
【0025】
(工程A)
工程Aは、偏光子の片面又は両面に接着剤層を介して保護フィルムを設けて偏光フィルムを作製する工程であり、公知の方法を採用することができる。
【0026】
偏光子は特に制限されず、通常、ポリビニルアルコール系樹脂を用いたものが使用される。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。偏光子の厚さは特に制限されず、通常は5~300μm、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~100μmである。
【0027】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0028】
保護フィルムを構成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または上記ポリマーのブレンド物なども上記保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。
【0029】
なお、保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0030】
前記保護フィルムとしては、位相差フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルム等も用いることができる。位相差フィルムとしては、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有するものが挙げられる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが偏光子保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0031】
位相差フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムが挙げられる。上記延伸の温度、延伸倍率等は、位相差値、フィルムの材料、厚みにより適宜に設定される。
【0032】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1~500μm程度である。特に1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましく、さらには、5~150μm、特に、20~100μmの薄型の場合に特に好適である。
【0033】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0034】
前記保護フィルムと偏光子は、接着剤層を介して積層される。
【0035】
接着剤層は接着剤により形成される。接着剤の種類は特に制限されず、種々のものを用いることができる。前記接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されず、接着剤としては、水系、溶剤系、ホットメルト系、活性エネルギー線硬化型等の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。
【0036】
水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5~60重量%の固形分を含有してなる。
【0037】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線、紫外線(ラジカル硬化型、カチオン硬化型)等の活性エネルギー線により硬化が進行する接着剤であり、例えば、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、光ラジカル硬化型接着剤を用いることができる。光ラジカル硬化型の活性エネルギー線硬化型接着剤を、紫外線硬化型として用いる場合には、当該接着剤は、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含有する。
【0038】
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0039】
また、前記接着剤の塗工は、水系接着剤等を用いる場合には、最終的に形成される接着剤層の厚みが30~300nmになるように行うのが好ましい。前記接着剤層の厚さは、さらに好ましくは60~250nmである。一方、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合には、前記接着剤層の厚みは、0.1~200μmになるよう行うのが好ましい。より好ましくは、0.5~50μm、さらに好ましくは0.5~10μmである。
【0040】
なお、偏光子と保護フィルムの積層にあたって、保護フィルムと接着剤層の間には、易接着層を設けることができる。易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
【0041】
易接着層は、通常、保護フィルムに予め設けておき、当該保護フィルムの易接着層側と偏光子とを接着剤層により積層する。易接着層の形成は、易接着層の形成材を保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常調整される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01~5μm、さらに好ましくは0.02~2μm、さらに好ましくは0.05~1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
【0042】
(工程B)
工程Bは、前記偏光フィルムに少なくとも粘着剤層及び表面保護フィルムを設けて光学部材を作製する工程であり、公知の方法を採用することができる。
【0043】
偏光子の両面に保護フィルムを設けた両保護偏光フィルムの場合、両保護偏光フィルムの一方の面に直接又は他の層を介して表面保護フィルムを設け、両保護偏光フィルムの他方の面に直接又は他の層を介して粘着剤層を設ける。
【0044】
偏光子の片面にのみ保護フィルムを設けた片保護偏光フィルムの場合、片保護偏光フィルムの保護フィルム側に直接又は他の層を介して表面保護フィルムを設け、片保護偏光フィルムの偏光子側に直接又は他の層を介して粘着剤層を設ける。
【0045】
前記他の層は特に制限されず、偏光フィルムに設けられる公知の機能層や光学層などが挙げられる。光学層としては、例えば、反射板、半透過板、位相差板(1/2や1/4などの波長板を含む)、視角補償フィルム、及び輝度向上フィルムなどが挙げられる。前記他の層は、1層設けられていてもよく、2層以上設けられていてもよい。
【0046】
前記粘着剤層は、偏光フィルムを液晶セル等のセル基板に貼り合わせるために偏光フィルムの片面に設けられる。
【0047】
前記粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば、1~100μm程度であり、好ましくは2~50μm、より好ましくは2~40μm、さらに好ましくは5~35μmである。
【0048】
前記粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0049】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0050】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に、偏光フィルムに転写する方法、または前記粘着剤を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を偏光フィルムに形成する方法などが挙げられる。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0051】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0052】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0053】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0054】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0055】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0056】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0057】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは5~100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0058】
前記表面保護フィルムは、通常、基材フィルムおよび粘着剤層を有し、当該粘着剤層を介して偏光フィルムを保護する。
【0059】
前記表面保護フィルムの基材フィルムとしては、検査性や管理性などの観点から、等方性を有する又は等方性に近いフィルム材料が選択される。そのフィルム材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーがあげられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。基材フィルムは、1種または2種以上のフィルム材料のラミネート体として用いることもでき、また前記フィルムの延伸物を用いることもできる。基材フィルムの厚さは、一般的には、500μm以下、好ましくは10~200μmである。
【0060】
前記表面保護フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1~100μm程度、好ましくは5~50μmである。
【0061】
なお、表面保護フィルムには、基材フィルムにおける粘着剤層を設けた面の反対面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。
【0062】
工程Bにおいて、前記偏光フィルムに前記粘着剤層及び前記表面保護フィルムを設ける順序は特に制限されず、前記粘着剤層を設けた後に前記表面保護フィルムを設けてもよく、前記表面保護フィルムを設けた後に前記粘着剤層を設けてもよい。
【0063】
作製した光学部材は、所定の大きさにカットしてもよい。
【0064】
(工程D)
本発明においては、前記工程Bから下記工程Cまでの間に、作製した光学部材中の偏光フィルムの水分率Z(重量%)が前記平衡水分率X(重量%)未満にならないように、前記水分率Z(重量%)を調整する工程Dを含むことが好ましい。
【0065】
前記水分率Z(重量%)を調整する方法は特に制限されないが、加湿処理をすることが好ましく、加湿処理の方法としては、例えば、(1)作製した光学部材をロールに巻き取る際に、光学部材に加湿空気を吹き付ける方法、(2)作製した光学部材を加湿雰囲気内でロールに巻き取る方法、(3)カットした光学部材に加湿空気を吹き付ける方法、(4)カットした光学部材を加湿雰囲気内で保存する方法などが挙げられる。なお、前記水分率Zが前記平衡水分率Xに比べて大きすぎる場合には、前記水分率Zと前記平衡水分率Xとの差を小さくするために除湿処理を行ってもよい。
【0066】
前記工程Dにおいて、前記水分率Zと前記平衡水分率Xとの差が0~1重量%になるように前記水分率Zを調整することが好ましく、前記水分率Zと前記平衡水分率Xとの差が0~0.5重量%になるように前記水分率Zを調整することがより好ましい。
【0067】
加湿処理時の温度及び相対湿度は、前記平衡水分率Xに基づいて適宜調整する必要があるが、通常、温度は15~25℃程度であり、相対湿度は45~65%Rh程度である。なお、光学部材の搬送速度は、通常、1~40m/分程度である。
【0068】
(工程C)
工程Cは、前記光学部材を梱包する工程である。前記工程Cにおいて、前記光学部材中の偏光フィルムの水分率Y(重量%)が前記平衡水分率X(重量%)未満にならないように、前記水分率Y(重量%)を調整する。前記水分率Y(重量%)を調整する方法としては、加湿雰囲気下で前記光学部材を梱包する方法が挙げられる。
【0069】
前記光学部材を梱包は、前記水分率Yと前記平衡水分率Xとの差が0~1重量%になるように、調温調湿された雰囲気下で行うことが好ましく、前記水分率Yと前記平衡水分率Xとの差が0~0.5重量%になるように、調温調湿された雰囲気下で行うことがより好ましい。
【0070】
梱包時の温度及び相対湿度は、前記平衡水分率Xに基づいて適宜調整する必要があるが、通常、温度は15~25℃程度であり、相対湿度は45~65%Rh程度である。
【0071】
パネルメーカーにおいて、梱包物から前記光学部材が取り出され、温度及び湿度が一定に管理された雰囲気下で前記光学部材をセル基板に貼り付ける作業が行われる。梱包物を開梱してから前記光学部材をセル基板に貼り合わせるまでの作業は、クリンルーム内で行われることが好ましい。また、前記クリンルームは、15~25℃の温度範囲内のある一定温度かつ45~65%Rhの相対湿度内のある一定湿度に調整されていることが好ましい。
【実施例
【0072】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0073】
(紫外線硬化型接着剤の作製)
N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
【0074】
実施例1
<平衡水分率を測定するための偏光フィルムの作製>
厚み40μmのラクトン環構造を有するアクリル樹脂フィルムの易接着処理面にコロナ処理を施した保護フィルムと位相差フィルム(ゼオン社製、商品名:ZB12-50135、厚み:52μm)の貼合面に、上記紫外線硬化型接着剤を、硬化後の厚みが0.7μmになるように塗布し、偏光子(クラレ社製、商品名:PS4500、厚み:45μm)の両面にロール機で貼り合わせた。その後、紫外線を照射して接着剤を硬化させて偏光フィルムを作製した。そして、作製した偏光フィルムの平衡水分率を下記の方法で測定したところ、温度20℃かつ相対湿度55%Rhの雰囲気下における平衡水分率Xは、2.5重量%であった。
【0075】
(偏光フィルムの平衡水分率Xの測定)
作製した偏光フィルム(TD幅1200mm)のTD幅方向における中央部及び両端部(端から6.5cm内側から)から10cm×10cmの大きさのサンプルを3枚切り取った。当該サンプルを温度20℃かつ相対湿度55%Rhの雰囲気下に24時間放置し、その後、サンプルの重量W1を測定した。次にサンプルを120℃で5時間乾燥させて、乾燥後のサンプルの重量W0を測定した。温度20℃かつ相対湿度55%Rhの雰囲気下におけるサンプル(偏光フィルム)の平衡水分率は、下記式にて算出した。なお、3枚のサンプル(偏光フィルム)の平衡水分率の平均値を平衡水分率Xとした。
偏光フィルムの平衡水分率X(重量%)={(W1-W0)/W1}×100
【0076】
<偏光フィルムの作製>
前記と同様の方法で偏光フィルムを作製した。作製した偏光フィルムの水分率Pを下記の方法で測定したところ2.9重量%であった。
【0077】
(偏光フィルムの水分率Pの測定)
作製した偏光フィルム(TD幅1200mm)のTD幅方向における中央部及び両端部(端から6.5cm内側から)から10cm×10cmの大きさのサンプルを3枚切り取った。当該サンプルの乾燥前の重量W2を測定した。また、サンプルを120℃で5時間乾燥させて、乾燥後のサンプルの重量W0を測定した。作製したサンプル(偏光フィルム)の水分率は、下記式にて算出した。なお、3枚のサンプル(偏光フィルム)の水分率の平均値を水分率Pとした。
偏光フィルムの水分率P(重量%)={(W2-W0)/W2}×100
【0078】
<粘着剤層付偏光フィルムの作製>
(粘着剤組成物の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量140万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
前記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、エチルメチルピロリジニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業製)0.2部およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成社製)1部を配合し、さらに、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学社製:タケネートD110N)0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイド0.3部と、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-403)0.075部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0079】
(粘着剤層の形成)
前記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
【0080】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
ロールから前記偏光フィルムを送り出しながら、前記偏光フィルムの位相差フィルムに、前記セパレータフィルムの剥離処理面に形成した粘着剤層を貼り合わせて、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。作製した粘着剤層付偏光フィルム(TD幅1200mm)のTD幅方向における中央部及び両端部(端から6.5cm内側から)から10cm×10cmの大きさのフィルム片を3枚切り取った。当該フィルム片から粘着剤層及びセパレータフィルムを除去して、水分率Qを測定するためのサンプル(偏光フィルム)を得た。当該サンプル(偏光フィルム)の水分率Qを下記方法で測定したところ2.6重量%であった。
【0081】
(偏光フィルムの水分率Qの測定)
サンプル(偏光フィルム)の乾燥前の重量W3を測定した。また、サンプル(偏光フィルム)を120℃で5時間乾燥させて、乾燥後のサンプル(偏光フィルム)の重量W0を測定した。サンプル(偏光フィルム)の水分率Qは、下記式にて算出した。なお、3枚のサンプル(偏光フィルム)の水分率の平均値を水分率Qとした。
偏光フィルムの水分率Q(重量%)={(W3-W0)/W3}×100
【0082】
<粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルム(光学部材)の作製、及び偏光フィルムの水分率Z1の調整>
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルム(厚み:38μm)上にアクリル系粘着剤層(厚み:23μm)を形成して表面保護フィルムを作製した。
(粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルムの作製)
ロールから前記粘着剤層付偏光フィルムを送り出しながら、前記粘着剤層付偏光フィルムの保護フィルムに、前記表面保護フィルムの粘着剤層を貼り合わせて、粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルムを作製した。
(偏光フィルムの水分率Z1の調整)
作製した粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルムをロールに巻き取る際に、粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルムに温度23℃かつ相対湿度65%Rhの加湿空気を500mL/hで吹き付けながらロールに巻き取った。そして24時間後に、粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルムをロールから巻き戻し、そして、粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルム(TD幅1200mm)のTD幅方向における中央部及び両端部(端から6.5cm内側から)から10cm×10cmの大きさのフィルム片を3枚切り取った。当該フィルム片から粘着剤層、セパレータフィルム、及び表面保護フィルムを除去して、水分率Z1を測定するためのサンプル(偏光フィルム)を得た。当該サンプル(偏光フィルム)の水分率Z1を下記方法で測定したところ2.5重量%であった。
【0083】
(偏光フィルムの水分率Z1の測定)
サンプル(偏光フィルム)の乾燥前の重量W4を測定した。また、サンプル(偏光フィルム)を120℃で5時間乾燥させて、乾燥後のサンプル(偏光フィルム)の重量W0を測定した。サンプル(偏光フィルム)の水分率Z1は、下記式にて算出した。なお、3枚のサンプル(偏光フィルム)の水分率の平均値を水分率Z1とした。
偏光フィルムの水分率Z1(重量%)={(W4-W0)/W4}×100
【0084】
<粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルムのカット工程、及び偏光フィルムの水分率Z2の調整>
(カット工程)
ロールから前記粘着剤層及び表面保護フィルム付偏光フィルムを送り出しながら、MD長さ400mm×TD幅1200mmの大きさにカットして、光学部材を得た。
(偏光フィルムの水分率Z2の調整)
カットして得られた光学部材を搬送しながら、当該光学部材に温度23℃かつ相対湿度65%Rhの加湿空気を500mL/hで吹き付けた。その後、光学部材(TD幅1200mm)のTD幅方向における中央部及び両端部(端から6.5cm内側から)から10cm×10cmの大きさのフィルム片を3枚切り取った。当該フィルム片から粘着剤層、セパレータフィルム、及び表面保護フィルムを除去して、水分率Z2を測定するためのサンプル(偏光フィルム)を得た。当該サンプル(偏光フィルム)の水分率Z2を下記方法で測定したところ2.5重量%であった。
【0085】
(偏光フィルムの水分率Z2の測定)
サンプル(偏光フィルム)の乾燥前の重量W5を測定した。また、サンプル(偏光フィルム)を120℃で5時間乾燥させて、乾燥後のサンプル(偏光フィルム)の重量W0を測定した。サンプル(偏光フィルム)の水分率Z2は、下記式にて算出した。なお、3枚のサンプル(偏光フィルム)の水分率の平均値を水分率Z2とした。
偏光フィルムの水分率Z2(重量%)={(W5-W0)/W5}×100
【0086】
<光学部材の梱包>
前記光学部材を温度23℃かつ相対湿度65%Rhの加湿雰囲気内で、加湿空気と一緒に梱包した。その後、光学部材を梱包袋から取り出し、当該光学部材(TD幅1200mm)のTD幅方向における中央部及び両端部(端から6.5cm内側から)から10cm×10cmの大きさのフィルム片を3枚切り取った。当該フィルム片から粘着剤層、セパレータフィルム、及び表面保護フィルムを除去して、水分率Yを測定するためのサンプル(偏光フィルム)を得た。当該サンプル(偏光フィルム)の水分率Yを前記と同様の方法で測定したところ2.5重量%であった。なお、3枚のサンプル(偏光フィルム)の水分率の平均値を水分率Yとした。梱包された光学部材中の偏光フィルムの水分率Yは、前記平衡水分率Xと同じであった。
【0087】
実施例2~5、比較例1~2
実施例1において、保護フィルムの種類及び厚み、位相差フィルムの種類及び厚み、及び加湿処理の有無を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学部材を作製し、梱包した。また、実施例1と同様にして、各偏光フィルムの水分率を測定した。
【0088】
なお、実施例2のコーティング層は、以下の方法で形成した。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「UV1700B」、固形分100%)50重量部、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)50重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:3.0μm、屈折率:1.520)を2重量部、チキソトロピー付与剤として有機粘土である合成スメクタイト(コープケミカル(株)製、商品名「ルーセンタイトSAN」)を1.5重量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「PC4100」、固形分10%)を0.2部混合した。なお、前記有機粘土は、トルエンで固形分が6.0%になるよう希釈して用いた。この混合物を、固形分濃度が40重量%となるように、トルエン/MIBK(メチルイソブチルケトン)混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、塗工液を調製した。塗工液を、コンマコータを用いて偏光フィルムの保護フィルム上に塗布して塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成されたフィルムを、約30°の角度で傾斜させながら乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、100℃で2分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み7.5μmのコーティング層を形成した。
【0089】
上記実施例および比較例で得られた光学部材について下記評価を行った。結果を表1に示す。
(カール量の評価方法)
作製した光学部材から一辺150mmの正方形のサンプルを、下図のように1つの角部をMD方向に先頭にして、両端(端から6.5cm内側から)及び中央の3ヵ所から切り出した。当該サンプルをカールによって下に凸になるように水平な測定台の上に置き、MD・TD方向の各角部(4点)の測定台からの高さを測定し、その最大値をカール量(mm)とした。なお、セパレータ側にカールした場合(表面保護フィルム側に凸の状態)をマイナスとし、その逆の場合をプラスとした。
【0090】
【表1】
【0091】
表1中のフィルムは以下のとおりである。
アクリル樹脂フィルム:実施例1で用いたアクリル樹脂フィルム
TG60UL:富士フィルム社製
コスモファンクション:東洋紡社製
ZB12-50135:ゼオン社製
KC4DR-1:コニカ社製
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の光学部材は、これ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置などの画像表示装置に用いられる。