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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】無線通信システム、送信局及び受信局
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0456 20170101AFI20221111BHJP
   H04B 7/0417 20170101ALI20221111BHJP
【FI】
H04B7/0456 120
H04B7/0417 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018044922
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019161423
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省、「次世代映像素材伝送の実現に向けた高効率周波数利用技術に関する研究開発」に係わる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】星 大樹
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
(72)【発明者】
【氏名】光山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 史人
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 史貴
(72)【発明者】
【氏名】居相 直彦
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 知弘
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-278672(JP,A)
【文献】国際公開第2007/091317(WO,A1)
【文献】特開2014-195144(JP,A)
【文献】特開2004-214913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0456
H04B 7/0417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のアンテナを有する送信局と、1以上のアンテナを有する受信局とを備えた無線通信システムにおいて、
前記受信局は、
前記送信局からの受信信号に基づいて、前記送信局の各アンテナと前記受信局の各アンテナの組み合わせ毎にチャネル推定値を算出するチャネル推定手段と、
前記チャネル推定値に基づいて、前記送信局の各アンテナのウェイトを表す送信アンテナウェイト情報を算出するウェイト算出手段と、
前記送信アンテナウェイト情報を位相回転してベクトル毎に特定の成分の虚数を0にする位相回転手段と、
位相回転後の前記送信アンテナウェイト情報から0にした虚数成分を除いたものを、前記送信局に適用させる送信アンテナウェイト情報として前記送信局に送信するフィードバック送信手段と、
位相回転後の前記送信アンテナウェイト情報と前記チャネル推定値を用いて、前記受信信号に対する受信アンテナウェイト情報を算出し、前記受信アンテナウェイト情報を用いて、前記受信信号に対する受信アンテナウェイト処理を行う受信アンテナウェイト処理手段と、を備え、
前記送信局は、
前記受信局から送信された前記送信アンテナウェイト情報を受信するフィードバック受信手段と、
前記受信局から受信した前記送信アンテナウェイト情報を用いて、前記送信局への送信信号に対する送信アンテナウェイト処理を行う送信アンテナウェイト処理手段と、
送信アンテナウェイト処理後の前記送信信号を前記受信局に送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
送信局が有する1以上のアンテナから送信される信号を1以上のアンテナで受信する受信局において、
前記送信局からの受信信号に基づいて、前記送信局の各アンテナと前記受信局の各アンテナの組み合わせ毎にチャネル推定値を算出するチャネル推定手段と、
前記チャネル推定値に基づいて、前記送信局の各アンテナのウェイトを表す送信アンテナウェイト情報を算出するウェイト算出手段と、
前記送信アンテナウェイト情報を位相回転してベクトル毎に特定の成分の虚数を0にする位相回転手段と、
位相回転後の前記送信アンテナウェイト情報から0にした虚数成分を除いたものを、前記送信局に適用させる送信アンテナウェイト情報として前記送信局に送信するフィードバック送信手段と、
位相回転後の前記送信アンテナウェイト情報と前記チャネル推定値を用いて、前記受信信号に対する受信アンテナウェイト情報を算出し、前記受信アンテナウェイト情報を用いて、前記受信信号に対する受信アンテナウェイト処理を行う受信アンテナウェイト処理手段と、を備えたことを特徴とする受信局。
【請求項3】
1以上のアンテナを有する受信局に対して1以上のアンテナから信号を送信する送信局において、
前記送信局の各アンテナのウェイトを表す送信アンテナウェイト情報であって、ベクトル毎に特定の成分の虚数を0にする位相回転が施された前記送信アンテナウェイト情報から0にした虚数成分が除かれたものを前記受信局から受信するフィードバック受信手段と、
前記受信局から受信した前記送信アンテナウェイト情報を用いて、前記受信局への送信信号に対する送信アンテナウェイト処理を行う送信アンテナウェイト処理手段と、
送信アンテナウェイト処理後の前記送信信号を前記受信局に送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする送信局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、送信局及び受信局に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ伝送であった無線伝送装置や伝送システムは、デジタル変調された信号を伝送する技術であるデジタル伝送システムの普及に伴い、より多くの情報量を伝送することが可能となった。
【0003】
近年、所要伝送レートの増加に伴い、受信局と送信局に複数のアンテナを用いて伝送レートを向上させる信号処理技術として、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)がある(例えば、特許文献1参照)。
MIMOは、送信データ(ストリーム)を複数の信号(サブストリーム)に分割し、サブストリームを複数のアンテナから同時に送信させ、複数の受信アンテナに受信させている。各アンテナで受信された信号は、それぞれの送信アンテナからのサブストリームが互いに干渉しているが、サブストリームを分離検出することで伝送レートの増加を実現している。
【0004】
送信局と受信局間のMIMO無線通信の実現方法の一つとして、通信の信頼性を高めつつ伝送容量を拡大する固有モード伝送が知られている。これは、送信局と受信局間のチャネル推定値やチャネル推定値から算出された固有値に基づく送信アンテナウェイト情報や各サブストリームに配分する送信電力や変調方式などの制御情報を受信局が送信局にFB(フィードバック)送信し、送信局の送信信号に適応させることにより、各サブストリームを空間上で直交させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-30057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固有モード伝送では、特に移動伝送の場合、チャネル応答が時々刻々と変動するため、FB伝送による遅延が増大するとFB遅延による固有モードの直交性の劣化が生じるという問題がある。送信アンテナウェイト情報を直接FB送信する場合、送信局のアンテナ数をN、受信局のアンテナ数をMとすると、N×M行列のIQ成分に関する情報量を送る必要があるため情報量が多く、全ての情報を伝送するためには必然的に伝送時間も長くなり、FB遅延への影響が大きい。従って、伝送性能の劣化を抑圧しつつ送信アンテナウェイト情報の削減を図る必要がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、送信局にFB伝送する送信アンテナウェイト情報を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記目的を達成するために無線通信システムを以下のように構成した。
すなわち、本発明に係る無線通信システムは、1以上のアンテナを有する送信局と、1以上のアンテナを有する受信局とを備える。
前記受信局では、チャネル推定手段により、前記送信局からの受信信号に基づいて、前記送信局の各アンテナと前記受信局の各アンテナの組み合わせ毎にチャネル推定値を算出し、ウェイト算出手段により、前記チャネル推定値に基づいて、前記送信局の各アンテナのウェイトを表す送信アンテナウェイト情報と前記受信局の各アンテナのウェイトを表す受信アンテナウェイト情報を算出し、受信アンテナウェイト処理手段により、前記受信アンテナウェイト情報を用いて、前記受信信号に対する受信アンテナウェイト処理を行い、位相回転手段により、前記送信アンテナウェイト情報を位相回転してベクトル毎に特定の成分の虚数を0にし、フィードバック送信手段により、位相回転後の前記送信アンテナウェイト情報を前記送信局に送信する。
前記送信局では、フィードバック受信手段により、前記受信局から送信された位相回転後の前記送信アンテナウェイト情報を受信し、送信アンテナウェイト処理手段により、前記受信局から受信した位相回転後の前記送信アンテナウェイト情報を用いて、前記送信局への送信信号に対する送信アンテナウェイト処理を行い、送信手段により、送信アンテナウェイト処理後の前記送信信号を前記受信局に送信する。
【0009】
このように、本発明では、送信アンテナウェイトをベクトル毎に任意の成分の虚数を0にするように位相回転を施すことで、送信アンテナウェイトの情報量を削減することができる。したがって、FB伝送に要する遅延時間を削減することが可能となり、固有モード伝送システム全体の信号品質や伝送レートを高めることが可能である。
【0010】
ここで、一構成例として、前記受信アンテナウェイト処理手段は、前記受信アンテナウェイト情報に代えて、位相回転後の前記送信アンテナウェイト情報と前記チャネル推定値を用いて、前記受信信号に対する受信アンテナウェイト処理を行うようにしてもよい。
【0011】
また、一構成例として、前記位相回転手段は、前記送信アンテナウェイト情報のユークリッドノルムが最大となる成分を検出し、その成分が固定値になるようなベクトル変換を前記送信アンテナウェイト情報に更に施し、前記フィードバック送信手段は、ベクトル変換後の前記送信アンテナウェイト情報と前記検出された成分を前記送信局に送信し、前記送信局は、前記受信局から受信した前記検出された成分に基づいて、前記受信局から受信したベクトル変換後の前記送信アンテナウェイト情報をベクトル変換前の状態に戻す復元手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送信アンテナウェイトの情報量を削減できるので、FB伝送に要する遅延時間を削減することが可能となり、固有モード伝送システム全体の信号品質や伝送レートを高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの送信局の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの受信局の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施例)
第1実施例について、図1図2を用いて説明する。図1は、送信局の構成を示すブロック図である。図2は、受信局の構成を示すブロック図である。
【0015】
第1実施例に係るMIMO伝送システムは、送信局と受信局共に2系統以上の送信制御部と受信制御部を備え、双方向に無線通信を行う。以下、送信局と受信局共にN個の系統の送信制御部と受信制御部を備え、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式)変調された信号を送受信するMIMO伝送システムを例にして説明を行うが、シングルキャリア変調においても適用可能である。
【0016】
図1に示す送信局は、N本のアンテナ104-1~Nを有しており、各アンテナがスイッチ(SW)103-1~Nに接続されている。本実施例において、添え字の1やNは、それぞれ系統1や系統Nであることを示している。SW103は、TDD(Time Division Duplex:時分割複信)方式を採用する伝送システムにおいて、受信局が送信を行う際には送信回路とアンテナを接続し、受信を行う際には受信回路とアンテナを接続するように切り替える。以下、TDD方式において説明を行うが、FDD(Frequency Division Duplex:周波数分割複信)方式でも適応可能であり、FDD方式の場合はSWの代わりに帯域フィルタが使われる。
【0017】
送信局は、送信制御部として、N系統に共通なMIMO送信処理部100および送信アンテナウェイト処理部101と、系統別にある送信RF(Radio Frequency)部102-1~Nを備えている。
また、送信局は、受信制御部として、N系統に共通なMIMO受信処理部106およびFBフレーム復号部107と、系統別にある受信RF部105-1~Nを備えている。
【0018】
図2に示す受信局は、N本のアンテナ108-1~Nを有しており、各アンテナがスイッチ(SW)109-1~Nに接続されている。SW109は、受信局が受信を行う際には受信回路とアンテナを接続し、送信を行う際には送信回路とアンテナを接続するように切り替える。
受信局は、受信制御部として、N系統に共通なチャネル推定部111、受信アンテナウェイト処理部114およびMIMO受信処理部115と、系統別にある受信RF部110-1~Nを備えている。
また、移動局は、送信制御部として、N系統に共通なFBフレーム生成部116およびMIMO送信処理部117と、系統別にある送信RF部118-1~Nを備えている。
【0019】
本例の無線通信システムにおいて行われる動作の一例を示す。
本例の無線通信システムは、送信局と受信局がFBループを成して互いに通信を行なう固有モード無線通信システムである。送信局は、受信局で算出したチャネル推定結果から得られる送信アンテナウェイト情報に関するFBデータを受信し、その送信アンテナウェイト情報を用いて送信を行ない、受信局は、チャネル推定結果より得られる受信アンテナウェイト情報を用いて受信を行う。
【0020】
送信局内の送信制御部では、MIMO送信処理部100は、情報ビットに対して符号化や変調処理を行い、送信信号ベクトルx' =[x12 … xNT を送信アンテナウェイト処理部101へ出力する。[ ]T は転置を示している。
送信アンテナウェイト処理部101では、受信局からの送信アンテナウェイト情報のFBデータの復号結果に基づいた送信アンテナウェイト情報Vを用いて、送信アンテナウェイトを送信信号ベクトルx' に乗算する。
【0021】
例えば、N=4の場合の送信アンテナウェイト処理後の送信信号ベクトルxは、(式1)で表される。以下、アンテナ数N=4で説明するがアンテナ数が変わっても基本的動作は同じである。
【数1】
【0022】
送信アンテナウェイト処理部101は、送信アンテナウェイト乗算後の送信信号ベクトルxを送信RF部102へ出力する。送信RF部102は、送信アンテナウェイト処理部101から入力された信号に対して、D/A(Digital to Analog)変換、搬送波周波数帯への変換等を行って、その送信信号をSW103へ出力する。SW103によってアンテナ104と送信回路が接続され、送信RF部102から入力された信号がアンテナ104より送信信号として出力される。
【0023】
送信局から送信された無線信号は、受信局内のアンテナ108で受信される。SW109によってアンテナ108と受信回路が接続されて、アンテナ108による受信信号が受信制御部内の受信RF部110へ出力される。受信RF部110は、受信信号に対して、ベースバンド帯へのダウンコンバージョン、A/D(Analog to Digital)変換などの処理を施し、その受信信号をチャネル推定部111へ出力する。チャネル推定部111は、受信RF部110からの入力信号に対してチャネル推定を行い、受信信号ベクトルy' =[y12 … yNT やチャネル推定により得られるN×Nチャネル行列Hを、受信アンテナウェイト処理部114及び固有値分解部112へ出力する。
【0024】
チャネル推定部で得られるチャネル行列Hは(式2)で表される。
【数2】
ijはi番目の受信アンテナとj番目の送信アンテナ間のチャネル応答の推定値を示す。
【0025】
固有値分解部112は、チャネル行列Hから固有値を算出する方法として、一般にSVD(Singular Value Decomposion:特異値分解)演算を施す。チャネル行列HのSVD演算は(式3)で表される。
【数3】
行列Sは成分が全て正の実数となる対角行列であり、Sの対角成分λk はk番目のサブストリームの固有値を示している。行列U、Vはユニタリ行列であり、VH は行列Vのエルミート転置を表す。固有モード伝送において、行列UH は受信アンテナウェイト、行列Vは送信アンテナウェイトとして用いられる。固有値分解部112は、得られた送信アンテナウェイトVを位相回転部113、受信アンテナウェイトUH を受信アンテナウェイト処理部114へ出力する。
【0026】
位相回転部113は、送信アンテナウェイトVに対して、位相回転を施すことでベクトル毎に特定の成分の虚数を0にする。送信アンテナウェイトVを極座標表現に置き換えると(式4)で表される。
【数4】
送信アンテナウェイトVの振幅成分や位相成分を算出する方法としては、一般にCORDIC(COordinate otational DIgital omputer)などが知られている。
【0027】
送信アンテナウェイトVに対して位相回転を施すための行列Rは(式5)で表される。
【数5】
【0028】
位相回転後の送信アンテナウェイトV' は(式6)で表される。
【数6】
【0029】
このとき、例えばφ11=-θ11、φ22=-θ12、φ33=-θ13、φ44=-θ14とすれば、V' の一行目が実数のみで表現でき、例えばφ11=-θ11、φ22=-θ22、φ33=-θ33、φ44=-θ44とすれば、V' の対角成分が実数のみで表現できるようになる。これにより、送信アンテナウェイト情報の各成分の量子化ビット数をQとすると、位相回転前は送信アンテナウェイト情報に2N2 Qビット必要だったが、虚数成分を0としたことにより、虚数成分をFB伝送する必要がなくなり、位相回転後は2N2 Q-NQビットに削減される。
【0030】
位相回転部113は、位相回転後の送信アンテナウェイト情報V' をFBフレーム生成部116に出力する。FBフレーム生成部116は、送信局と事前に取り決めた送信方式で送信アンテナウェイト情報V' をFBフレームに格納し、MIMO送信処理部117へ出力する。MIMO送信処理部117は、FB情報データに対して符号化、プリアンブル挿入などの信号処理を行い、送信RF部118へ出力する。送信RF部118は、MIMO送信処理部118から入力された信号に対して、D/A変換、搬送波周波数帯への変換等を行ってSW109へ出力する。SW109によって送信回路とアンテナ108が接続され、送信RF部118から入力された信号がアンテナ108より送信信号として出力される。
【0031】
従って、送信局では、送信アンテナウェイト処理部101において、受信局からの送信アンテナウェイト情報のFBデータの復号結果に基づいた送信アンテナウェイト情報V' を用いて、送信アンテナウェイトを送信信号ベクトルx' に乗算する。N=4の場合の送信アンテナウェイト処理後の送信信号ベクトルxは(式7)で表される。
【数7】
【0032】
送信アンテナウェイト処理部101は、送信アンテナウェイト乗算後の送信信号ベクトルxを送信RF部102へ出力する。送信RF部102は、送信アンテナウェイト処理部101から入力された信号に対して、D/A変換、搬送波周波数帯への変換等を行って、その送信信号をSW103へ出力する。SW103によってアンテナ104と送信回路が接続され、送信RF部102から入力された信号がアンテナ104より送信信号として出力される。
【0033】
受信アンテナウェイト処理部114は、前記算出した受信アンテナウェイト情報UH を受信信号ベクトルyに対して乗算する。このとき、乗算後の受信信号ベクトルy' は(式8)で表せる。
【数8】
ここで、nは雑音成分を表す。ユニタリ行列はエルミート共役が逆行列と等しくなるという性質よりUH U=I、VH V=I、RH R=Iを満たす。ここで、Iは単位行列である。
【0034】
従って、y' は(式9)で表せる。
【数9】
【0035】
ユニタリ行列の性質により、(式9)の最後の雑音項nでは雑音の大きさが全く変化せず、Sが対角行列であることを考えると、受信信号ベクトルy' は送信信号ベクトルx' に特異値を乗算した信号が分離して得られることになる。受信アンテナウェイト処理部114は、得られた受信信号ベクトルy' をMIMO受信処理部115へ出力する。MIMO受信処理部115は、全系統の受信信号に対して復調処理を施し、各系統から送信された信号をそれぞれ得ることが可能となる。
【0036】
上記の説明では、受信局から送信局へのFB送信に関してMIMO伝送を前提に説明したが、SISO(Single Input Single Output)伝送、SIMO(Single Input Multiple Output)伝送やMISO(Multiple Input Single Output)伝送を用いてもよい。
【0037】
第1実施例によれば、送信アンテナウェイトの情報量を削減することでFB伝送に要する遅延時間を削減することが可能となり、固有モード伝送システム全体の信号品質や伝送レートを高めることが可能である。
【0038】
(第2実施例)
第2実施例では、第1実施例で説明した受信局とは異なり、送信アンテナウェイト情報V' を用いて受信アンテナウェイト処理を施す機能を備えていることを特徴とする。なお、第1実施例とは異なる処理について主に説明し、第1実施例と同様な部分については説明を省略する。
【0039】
位相回転部113は、図2に破線矢印で示すように、算出した送信アンテナウェイト情報V' を受信アンテナウェイト処理部114へ出力する。受信アンテナウェイト処理部114は、チャネル行列Hに対して送信アンテナウェイト情報V' を乗算する。乗算後のチャネル行列H' は(式10)で表せる。
【数10】
【0040】
受信アンテナウェイト処理部114は、乗算後のチャネル行列H' を用いて受信アンテナウェイト処理を施す。受信アンテナウェイト処理として、ZF(Zero Forcing)やMMSE(Minimum Mean Square Error)が一般に知られている。以下、本実施例ではMMSEを用いて説明を行う。
【0041】
フィードバック遅延による固有モードの直交性の劣化に伴うストリーム間の干渉が生じ、性能劣化に繋がるが受信アンテナウェイトUH の代わりにMMSEウェイトWを用いることでロバストになることが一般に知られている。総送信電力をPs =N 、雑音電力をσ2 としたとき、MMSEウェイトWは(式11)で表せる。
【数11】
【0042】
前記算出したMMSEウェイトWを受信信号ベクトルyに対して乗算することでサブストリーム毎に空間分離される。空間分離後の受信信号ベクトルy' は(式12)で表せる。
【数12】
受信アンテナウェイト処理部114は、空間分離後の受信信号ベクトルy' をMIMO受信処理部115へ出力する。MIMO受信処理部115は、全系統の受信信号に対して復調処理を施し、各系統から送信された信号をそれぞれ得ることが可能となる。
【0043】
第2実施例によれば、第1実施例の効果に加え、送信アンテナウェイトの一部の虚数値が0に置換されるため、MMSEウェイトWを算出する際の演算回数が少なくなるという利点がある。
例えば、(式10)の演算は、位相回転前の送信アンテナウェイト情報Vを用いて算出する場合、乗算器が192個必要であるが、位相回転後の送信アンテナウェイト情報V' を用いて算出する場合、乗算器を176個に削減できる。ここでは、複素乗算に必要な乗算器数は3個とした。
【0049】
ここで、上記の各実施例では、チャネル推定部111が本発明に係るチャネル推定手段に対応し、固有値分解部112が本発明に係るウェイト算出手段に対応し、受信アンテナウェイト処理114が本発明に係る受信アンテナウェイト処理手段に対応し、位相回転部113が本発明に係る位相回転手段に対応し、送信RF部118やアンテナ108等が本発明に係るフィードバック送信手段に対応し、アンテナ104や受信RF部105等が本発明に係るフィードバック受信手段に対応し、送信アンテナウェイト処理部101が本発明に係る送信アンテナウェイト処理手段に対応し、送信RF部102やアンテナ104等が本発明に係る送信手段に対応し、FBフレーム復号部107が本発明に係る復元手段に対応している。
【0050】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、上記以外の無線通信システムに広く適用することができることは言うまでもない。また、本発明は、上記のような無線通信システムを構成する送信局や受信局として把握することもできる。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、送信局と受信局の間で無線通信を行う無線通信システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100:送信局のMIMO送信処理部、 101:送信局の送信アンテナウェイト処理部、 102:送信局の送信RF部、 103:送信局のSW、 104:送信局のアンテナ、 105:送信局の受信RF部、 106:送信局のMIMO受信処理部、 107:FBフレーム復号部、 108:受信局のアンテナ、 109:受信局のSW、 110:受信局の受信RF部、 111:チャネル推定部、 112:固有値分解部、 113:位相回転部、 114:受信アンテナウェイト処理部、 115:MIMO受信処理部、 116:FBフレーム生成部、 117:受信局のMIMO送信処理部、 118:受信局の送信RF部
図1
図2