特許 7175103 プロテクタの取付構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-11-10

(45)【発行日】2022-11-18

(54)【発明の名称】プロテクタの取付構造

(51)【国際特許分類】

   B62D 25/20 20060101AFI20221111BHJP

   B60R 19/56 20060101ALI20221111BHJP

   F16B 5/10 20060101ALI20221111BHJP

【ＦＩ】

B62D25/20 N

B60R19/56

F16B5/10 K

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2018101588

(22)【出願日】2018-05-28

(65)【公開番号】P2019206212

(43)【公開日】2019-12-05

【審査請求日】2021-04-15

(73)【特許権者】

【識別番号】000100791

【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100114074

【弁理士】

【氏名又は名称】大谷 嘉一

(72)【発明者】

【氏名】五之治 巧

(72)【発明者】

【氏名】川口 聡

【審査官】結城 健太郎

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１６－９７８５１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００３－２７６５３５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭６１－１１２８１０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平９－１６４８４０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１３－１２１７９９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－９４９６１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６２Ｄ ２５／２０，

Ｂ６０Ｒ １９／５６，

Ｆ１６Ｂ ５／１０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

角パイプ状の中空断面形状からなるプロテクタと、
前記プロテクタを車両側に取り付けるためのプレート状のブラケットとを備え、
前記プロテクタは前記中空断面形状の１の側面を切り欠いて切欠部を形成することで、前記ブラケットの裏面側を保持する保持部と差込凹部とを有し、前記プレート状のブラケットは裏面側に挿入部を形成するように段差部を介して、前記プロテクタの差込凹部に向けて延在させた差込部を有し、
前記ブラケットの差込部を前記プロテクタの差込凹部に差し込むと、前記切欠部側の上壁が前記挿入部に差し込み挿入され、前記ブラケットの裏面側が前記保持部に保持された状態で、前記プロテクタと前記ブラケットとが連結されていることを特徴とするプロテクタの取付構造。

【請求項2】

前記プロテクタの中空断面形状は、前記ブラケットの車両側取付面と交差する方向の斜面部を有していることを特徴とする請求項１記載のプロテクタの取付構造。

【請求項3】

前記ブラケットは前記プロテクタの両側の端部側に対向させてそれぞれ配設してあることを特徴とする請求項１又は２に記載のプロテクタの取付構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、車両に搭載した搭載物や車体を保護するためのプロテクタの取付構造に関する。

【背景技術】

【0002】

車両に搭載した各種搭載物、例えば駆動用の電池モジュール（二次電池）やそれを制御するための高電圧部品を外部からの入力に対して保護するために、プロテクタが設けられている。
また、車両が外部から受ける衝撃等の入力に対して、車体やそれらの部品を保護する必要がある。

【0003】

例えば、特許文献１には、アンダランプロテクタ本体をブラケットにて車体側ステーに取り付ける構造として、ブラケットにハット状の傾斜面部を形成し、アンダランプロテクタをこの傾斜面部を介して取り付けたものとなっている。
これにより、両側の傾斜面部がアンダランプロテクタ本体に沿って両側に開くようにスライド変形し、衝撃を吸収することができる。
しかし、同公報に開示する連結構造にあっては、ブラケットの傾斜面部が開く方向に変形する一方向のみしか衝撃吸収できない技術的課題がある。
また、ブラケットとプロテクタ本体との締結部を保持したままスライドするようにしなければならない設計上の問題もある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２０１７－９４９６１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明は、簡単な構造で保護効果の高いプロテクタの取付構造の提供を目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明に係るプロテクタの取付構造は、プロテクタと、前記プロテクタを車両側に取り付けるためのブラケットとを備え、前記プロテクタは差込凹部を有し、前記ブラケットは差込凸部を有し、前記ブラケットの差込凸部を前記プロテクタの差込凹部に差し込んだ状態で前記プロテクタと前記ブラケットとを連結することを特徴とする。

【0007】

ここでプロテクタは、車両の搭載物や車体等を外部入力から保護するためのものである。
ブラケットは、このプロテクタを車体側に取り付けるためのものであり、ブラケットと車体側との取付構造に制限はなく、ボルト締結，溶接等が例として挙げられる。

【0008】

本発明は、プロテクタに設けた差込凹部にブラケット側の差込凸部を差し込んだ状態で、このプロテクタとブラケットを連結した点に特徴があり、この差込状態にてプロテクタとブラケットは、ボルト締結や溶接接合される。

【0009】

本発明において、前記差込構造には各種態様を適用することができる。
例えば、プロテクタは中空断面形状からなり、当該中空部が前記差込凹部として機能している態様が挙げられる。
プロテクタを中空断面形状にすることで、その断面変形によりエネルギー吸収量を大きくすることができるとともに、プロテクタの中空部に差し込んだブラケットの差込凸部を介して、プロテクタに対して垂直方向に加わる入力のみならず、斜めや水平方向の外部入力に対してもブラケットを介して車体側に伝わり、保護効果が高い。
また、例えばプロテクタとブラケットをボルト締結した場合にあっては、この差込連結部を有することで、外力が上記ボルト締結部に集中するのを防ぐことができる。

【0010】

本発明において、プロテクタの中空断面形状は、前記ブラケットの車両側取付面と交差する方向の斜面部を有するようにすることもできる。
このような斜面部をプロテクタに形成することで、斜面部に向けて入力した外力は、水平方向，垂直方向等、いろいろな方向に分散させることができる。

【0011】

また、本発明において、プロテクタの差込凹部は対向配置した一対のレール部からなる態様が例として挙げられる。
このようにすると、ブラケットに設けた差込凸部の両側をプロテクタ側の一対のレール部で支えるように連結することができる。
また、ブラケットは前記プロテクタの両側の端部側に対向させてそれぞれ配設してあってもよい。
対向配設した一対のブラケットにてプロテクタを取り付けると、上下，左右，前後のいずれの方向からの外力に対しても保護効果が生じる。

【発明の効果】

【0012】

本発明に係るプロテクタの取付構造にあっては、プロテクタとブラケットとを相互に差込連結した状態で、このプロテクタとブラケットを締結したので、締結部に荷重が集中するのを防止することができる。
また、想定外の大入力により、締結部が破断した場合にあっては、差込連結部にてプロテクタの保持ができ、プロテクタの脱落を防止できる。
外部からのプロテクタへの入力が差込連結部を介してブラケットに伝わり、それが車体に伝わることになり、プロテクタに加わる外力の入力方向に制限がなく、効果的であることから、軽量化，コンパクト化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】本発明に係るプロテクタの取付構造を示す。（ａ）はプロテクタとブラケットの斜視図、（ｂ）は連結状態を示す。（ｃ）はＡ－Ａ線断面図に相当するとともにプロテクタをブラケットを介して車体に取り付けた状態を示す。

【図2】図１のＢ－Ｂ線断面図を示す。

【図3】（ａ）はブラケットをプロテクタに差し込む前、（ｂ）は差込後の斜視図を示す。

【図4】プロテクタの断面形状に斜面部を設けた例を示し、（ａ）は斜視図、（ｂ）はＣ－Ｃ線断面図の部分拡大図を示す。

【図5】プロテクタに一対のレール部を設けた例を示し、（Ａ）はプロテクタにブラケットを差し込む前、（ｂ）はブラケットをプロテクタの両端付近に連結した状態を示す。

【図6】図５の部分拡大図を示し、（ａ）は連結前、（ｂ）は連結後、（ｃ）はＤ－Ｄ線断面図を示す。

【図7】プロテクタに設けた差込凹部の他の実施例を示す。（ａ）は差込連結前、（ｂ）はその連結後を示し、（ｃ）はブラケットの差込凸部側から見た斜視図を示す。

【発明を実施するための形態】

【0014】

本発明は、車両に電池モジュール等を搭載する際にその外側等に配設して、これらの搭載物を外部入力から保護するためのものであって、プロテクタやそれを車体側に取り付けるブラケットの形状に制限はない。
以下、角パイプ状のプロテクタを例にして説明する。

【0015】

図１は、中空断面形状のプロテクタ１０とプレート状のブラケット２０との連結例を示す。
図１（ａ）は、プロテクタ１０にブラケット２０を連結する前、図１（ｂ）はその連結後の状態を示す。
図３は、プロテクタ１０の端部付近とブラケット２０との斜視図を示す。
図１（ｃ）は、プロテクタ１０とブラケット２０とを連結し、これを車体の取付部１，１に取り付けた状態であって、図１（ｂ）のＡ－Ａ線断面図に対応する状態を示し、図２に図１のＢ－Ｂ線断面図に対応したプロテクタ１０とブラケット２０との連結状態を示す。
プロテクタ１０は、中空部１１を有する中空断面形状の１の側面を切り欠いて、ブラケット２０の保持部１３と差込凹部１２を形成してある。
ブラケット２０は、図２，３に示すように裏面側に、プロテクタ１０側に向けて突設した差込凸部２１を有する。
差込凸部２１は、ブラケット２０のベース部２０ａの裏面との接合部２１ａと、この接合部２１ａから段差部（垂下壁）２１ｂを介して、プロテクタ１０側に向けて延在させた差込部２１ｃを形成してある。
これにより、ブラケット２０のベース部２０ａと差込部２１ｃとの間に、プロテクタ１０の切欠部側の上壁１０ａの挿入部２１ｄが形成される。

【0016】

これにより、図１，図３に示すように、ブラケット２０のベース部２０ａをプロテクタ１０の切欠部の両側に形成された側壁部からなる一対の保持部１３に沿ってスライドさせると、ブラケット２０に設けた差込凸部２１がプロテクタ１０の中空部からなる差込凹部１２にスライド挿入される。
この際に、プロテクタ１０の切欠部側の上壁１０ａは、端部がベース部２０ａと差込２１ｃとの間の挿入部２１ｄに差し込み挿入される。
その状態を図２，図３（ｂ）に示すように、ブラケット２０とプロテクタ１０とが差込連結される。
このようにして、差込連結されたプロテクタ１０とブラケット２０とは、次のように連結される。
例えば、図１（ａ），図３に示すように、プロテクタ１０の上壁１０ａに設けた貫通孔からなる連結部（連結孔）１４と、それに対応させて設けたブラケット２０の差込凸部側の貫通孔からなる連結部（連結孔）２２とをボルト３０，ナット３０ａにて連結する。
または、溶接等の接合であってもよい。

【0017】

上記のように、プロテクタ１０とブラケット２０とを連結したものを例として、図１（ｃ）に示すように、車体側の取付部１にブラケットに設けた貫通孔からなる取付部（取付孔）２３を介して、ボルト３１，ナット３１ａ等を用いて取り付ける。
プロテクタの上壁１０ａがブラケット２０の挿入部２１ｄに挿入されているので、プロテクタ１０の脱落が防止される。

【0018】

図４は、プロテクタ１１０の断面形状を示す。
本実施例は、図４（ｂ）のＣ－Ｃ線断面図に示すように、プロテクタ１１０の中空断面形状をブラケット２０と重ね合せる側の上壁１１０ａ、それに対向する下壁１１０ｃ，左右の側壁１１０ｂ，１１０ｄを有し、図４（ｂ）では左側の側壁１１０ｄの途中と下壁１１０ｃの途中とを斜めの斜面部１１０ｅにて、連結した例になっている。
このように、プロテクタ１１０にブラケットの連結面とは交差する方向の斜面部１１０ｅを形成すると、図４（ｂ）に矢印ｆで示した方向から外部入力が加わると、斜面部１１０ｅを介して、それぞれの側壁にその力が分散されながら、外力がブラケット２０を介して車体側に伝わる。

【0019】

図５，図６は、プロテクタ２１０に一対のレール部２１０ａ，２１０ｂを設けた例を示す。
本実施例は、ブラケット２０の側辺から差込片２４を突設し、ブラケット２０のベース部２０ａをプロテクタ２１０の上壁２１０ｃに載置させつつ、この差込片２４を対向配置した一対の断面Ｌ時形状のレール部２１０ａ，２１０ｂの間に差込連結する例である。
なお、本実施例では、中空部の上壁２１０ｃに切欠部を形成することで、ブラケット２０のベース部２０ａを両側の保持部１３ｃに保持させつつ、図１と同様に差込凸部２１をプロテクタ２１０側の差込凹部１２に差込連結する構造と組み合せた例になっている。
本実施例のＤ－Ｄ線断面図を図６（ｃ）に示すように、プロテクタ２１０の上壁を差込凸部２１と差込片２４にて挟み込むように連結されているので、プロテクタに加わる外力がブラケット２０全体に伝わり、プロテクタ，ブラケットとを締結したボルト３０，ナット３０ａとの締結部に外力が集中するのを抑える。
なお、本実施例にてブラケット２０の差込片２４と一対のレール部２１０ａ，２１０ｂのみの差込連結であってもよい。

【0020】

図１は、中空断面形状のプロテクタの端部（上壁端部）を切り欠いて、差込凹部１２を形成した例を示したが、図７にプロテクタ１０の１の側面（図７では上壁）に角孔を形成して差込凹部１２を形成した例を示す。
また、図１に示したブラケット２０は、ベース部２０ａの裏面側に差込凸部２１を接合した例を示したが、図７にはブラケット２０のベース部２０ａの側辺部に一体的に折り返した差込凸部２１を形成した例を示す。
このように、本発明はプロテクタとブラケットとを差込連結できれば、プロテクタに設ける差込凹部の構造やブラケットに設ける差込凸部の構造に制限はない。
また、図７に示した実施例では、ブラケット２０に差込凸部２１とともに、ブラケット２０の取付面から水平方向に延在させた突片部２１ｅを一体的に成形した例を示す。
これにより、差込凸部２１と突片部２１ｅとの間にプロテクタ１０の差込凹部側の端部を挿入するための挿入部２１ｄを有する例になっている。

【符号の説明】

【0021】

１０ プロテクタ
１１ 中空部
１２ 差込凹部
１３ 保持部
１４ 連結部
２０ ブラケット
２１ 差込凸部
２１ｅ 突片部
２２ 連結部
２３ 取付部
２４ 差込片

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】