(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】超音波溶着システム
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20221111BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20221111BHJP
B06B 1/02 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
B23K20/10
B29C65/08
B06B1/02 K
(21)【出願番号】P 2018117657
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501410126
【氏名又は名称】ブランソン・ウルトラソニックス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】▲ボウ▼ 俊
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013465(JP,A)
【文献】特開2003-165161(JP,A)
【文献】特開平09-057468(JP,A)
【文献】特開平08-206854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0210003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00 - 20/26
B29C 65/08
B06B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振器からの超音波電気信号を機械的超音波振動に変換するコンバータと、
前記機械的超音波振動の振動方向を変換させる振動方向変換手段とを少なくとも備えた超音波溶着システムにおいて、
前記振動方向変換手段は、立体形状に形成された縦振動体部及び横振動体部からなり、
前記横振動体部は、前記縦振動体部の一端部側で直角方向にかつ前記縦振動体部の側面よりそれぞれ突出させて設けられており、
前記縦振動体部は、その他端部側を超音波振動入力端とし、前記超音波振動入力端から前記縦振動体部と前記横振動体部との境までの長さを第1の長さとし、
前記横振動体部は、前記縦振動体部の側面から前記各横振動体部の端面までの長さを第2及び第3の長さとし、
前記縦振動体部の第1の長さは、前記横振動体部の第2の長さまたは第3の長さより大きいことを特徴とする超音波溶着システム。
【請求項2】
前記振動方向変換手段は、前記横振動体部の端面側であって前記縦振動体部とは反対側の前記横振動体部の一面に振動作用部を設け、
かつ、少なくとも前記コンバータ、前記振動方向変換手段及び前記振動作用部を一体として垂直方向に配置したことを特徴とする請求項1記載の超音波溶着システム。
【請求項3】
前記横振動体部の第2の長さと第3の長さはほぼ同一長さであることを特徴とする請求項1または2記載の超音波溶着システム。
【請求項4】
前記横振動体部の一端面から前記縦振動体部の中心軸を含む前記一端面と平行な面との距離を第4の長さとしたときに、第4の長さは使用超音波振動の波長に対して四分の一波長より小さく設定してなることを特徴とする請求項1、2または3記載の超音波溶着システム。
【請求項5】
前記横振動体部の両端面間の距離を第5の長さとしたときに、前記第5の長さは、少なくとも使用超音波振動の波長に対して二分の一の長さに設定したことを特徴とする請求項1、2、
3または4記載の超音波溶着システム。
【請求項6】
前記縦振動体部の第1の長さは、前記横振動体部の第5の長さより小さく設定したものであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の超音波溶着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動によって被溶着物を溶着する超音波溶着システムに関し、詳しくはコンバータ、ホーン及び振動作用部を一体として垂直方向に配置可能とするとともに被溶着物に横方向の超音波振動を与えることができる構造とした超音波溶着システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の超音波溶着システムは、超音波電気信号を超音波振動に変換するコンバータと、前記コンバータからの超音波振動を増幅するブースタと、前記ブースタからの超音波振動を振動作用部に与えるホーンとを備えたシステムとして知られている。
【0003】
この超音波溶着システムでは、前記ホーンの振動作用部とアンビルとの間に被溶着物を置き、前記コンバータからの超音波振動を前記ブースタで増幅して前記ホーンに与え、ホーンの振動作用部を加圧しつつ前記振動作用部とアンビルとの間に置かれた被溶着物に超音波振動を作用させることにより被溶着物を溶着している。このような超音波溶着においては、被溶着物には、溶着工程を容易にする等の利便性のため、水平方向の超音波振動が与えられている。
【0004】
ところで、上記超音波溶着システムにおいて、前記コンバータから発生する超音波振動は、前記コンバータ、前記ブースタ及び前記ホーンと配列されている方向(縦方向)に振動している。したがって、このような縦方向の超音波振動を、水平方向の超音波振動にするために、従来、次のような装置が提案されていた。
【0005】
このように水平方向の超音波振動を与える従来の超音波溶着システムの一例としては、前記コンバータ、前記ブースタ及び前記ホーンを水平方向に配置し、この配置により縦方向の超音波振動を物理的に水平方向の超音波振動にすることにより、前記ホーンの振動作用部に横方向の超音波振動を与えるようにしたものである(特許文献1)。
【0006】
また、上記従来の超音波溶着システムのような構造に配置することが困難な場合に適用された従来の他の超音波溶着システムの例としては、ホーンに代えて振動方向変換手段を採用し、前記コンバータ、前記ブースタ及び振動方向変換手段を垂直に配置し、この振動方向変換手段で縦振動を横振動に変換し、これらとは別に設けた加圧可能な振動作用部に前記横振動を伝達して被溶着物を溶着できるようにしたものである(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第2984225号公報
【文献】特許第2756433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1記載の従来の超音波溶着システムによれば、次のような問題があった。
【0009】
(1)前記コンバータ、前記ブースタ及び前記ホーンを水平方向に配置することが必須の条件であるため、横方向に使用超音波周波数の波長の1.5波長分以上の長さの空間を必要とし、横方向に大きな空間が必要となる。
(2)前記ブースタの保持構造が複雑である。そのために部品点数が多い。
(3)ホーン先端の振動作用部とホーン保持部との距離が半波長もあり、加圧力によるベンディング量が多い。
【0010】
また、上記特許文献2記載の従来の他の超音波溶着システムによれば、次のような問題があった。
【0011】
(1)縦向きに配置されている前記コンバータ、前記ブースタ及び振動方向変換手段と、振動作用部とが離れており、それがために縦方向の空間を多く必要となる。
(2)前記コンバータ、前記ブースタ及び振動方向変換手段に加えて、振動作用部の加圧系の装置も別途必要であって、部品点数が多く、構造も複雑となる。
【0012】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消し、構造を簡素化するとともに部品点数を少なくし、かつ設置空間を少なくした超音波溶着システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明に係る超音波溶着システムは、
発振器からの超音波電気信号を機械的超音波振動に変換するコンバータと、
前記機械的超音波振動の振動方向を変換させる振動方向変換手段とを少なくとも備えた超音波溶着システムにおいて、
前記振動方向変換手段は、立体形状に形成された縦振動体部及び横振動体部からなり、
前記横振動体部は、前記縦振動体部の一端部側で直角方向にかつ前記縦振動体部の側面よりそれぞれ突出させて設けられており、
前記縦振動体部は、その他端部側を超音波振動入力端とし、前記超音波振動入力端から前記縦振動体部と前記横振動体部との境までの長さを第1の長さとし、
前記横振動体部は、前記縦振動体部の側面から前記各横振動体部の端面までの長さを第2及び第3の長さとし、
前記縦振動体部の第1の長さは、前記横振動体部の第2の長さまたは第3の長さより大きいことを特徴とするものである。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記振動方向変換手段が、前記横振動体部の端面側であって前記縦振動体部とは反対側の前記横振動体部の一面に振動作用部を設け、
かつ、少なくとも前記コンバータ、前記振動方向変換手段及び前記振動作用部を一体として垂直方向に配置したことを特徴とするものである。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の超音波溶着システムにおいて、前記横振動体部の第2の長さと第3の長さはほぼ同一長さであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の超音波溶着システムにおいて、前記横振動体部の一端面から前記縦振動体部の中心軸を含む前記一端面と平行な面との距離を第4の長さとしたときに、第4の長さは使用超音波振動の波長に対して少なくとも四分の一波長より小さく設定してなることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1、2、3または4記載の超音波溶着システムにおいて、前記横振動体部の両端面間の距離を第5の長さとしたときに、前記第5の長さは、少なくとも使用超音波振動の波長に対して二分の一の長さに設定したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1、2、3、4または5記載の超音波溶着システムにおいて、前記縦振動体部の第1の長さは、前記横振動体部の第5の長さより小さく設定したものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前記振動方向変換手段を立体形状の縦振動体部及び横振動体部から構成し、前記横振動体部を前記縦振動体部の一端部側で直角方向にかつ前記縦振動体部の側面よりそれぞれ突出させて設け、縦振動体部の長さと横振動体部の長さとを使用超音波振動の波長に対して一定の関係に設定し、前記横振動体部の一面に振動作用部を設けたので、少なくとも前記コンバータ、前記振動方向変換手段及び前記振動作用部を一体として垂直方向に配置でき、そのため設置空間を著しく小さくできる。
【0020】
また、本発明によれば、少なくとも前記コンバータ、前記振動方向変換手段及び前記振動作用部を一体的に構成したので、構造が簡単で部品点数が著しく少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る超音波溶着システムの要部を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る超音波溶着システムにおいて振動方向変換手段の構成例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る超音波溶着システムにおいて振動方向変換手段の振動方向を説明するために示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る超音波溶着システムの要部を示す正面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る超音波溶着システムにおいて振動方向変換手段の振動方向を説明するために示す図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施の形態に係る超音波溶着システムの要部を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る超音波溶着システムにおいて振動方向変換手段の縦振動体部及び横振動体部の長さと使用超音波振動周波数と振動方向との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1ないし
図3は本発明の実施の形態に係る超音波溶着システムの要部を説明するための図である。
【0023】
これらの図において、本発明の実施形態に係る超音波溶着システム1は、発振器3と、コンバータ5と、ブースタ7と、振動方向変換手段(方向変換ホーン)9と、振動作用部11と、アンビル13と、図示しない加圧装置とを備えている。
【0024】
前記ブースタ7には、加圧保持部71が設けられている。この加圧保持部71を介して、前記コンバータ5、前記ブースタ7及び前記方向変換ホーン9は、例えば図示しない加圧装置に固定されている。よって、前記コンバータ5、前記ブースタ7、前記方向変換ホーン9及び前記振動作用部11は、一体として垂直方向に配置されることができる。そして、前記方向変換ホーン9及び振動作用部11等を含む全体を加圧装置によって
図1に示す加圧方向Pへ加圧できるような構成となっている。
【0025】
前記振動方向変換手段(方向変換ホーン)9は、
図1ないし
図3に示すように、立体形状に形成された縦振動体部91及び横振動体部92から構成されている。前記横振動体部92は、前記縦振動体部91の一端部91a側において前記縦振動体部91に対して直角方向にかつ前記縦振動体部91の側面91b,91cよりそれぞれ突出させて設けられており、所定側面から見て
図3に示すように逆T字状の形状をしている。
【0026】
前記振動作用部11は、前記横振動体部92の端面92a,92b側であって前記縦振動体部91とは反対側の前記横振動体部92の一面92cに設けられている。この振動作用部11に対向する位置には、アンビル13が配置されている。前記振動作用部11と前記アンビル13との間には、被溶着物(接合対象(ワーク))20が置かれている。
【0027】
前記縦振動体部91では、その他端部側を超音波振動入力端91dとしている。前記縦振動体部91において、前記超音波振動入力端91dから、前記縦振動体部91と前記横振動体部92との境(一端部91a)までの長さを第1の長さL1とする。
【0028】
前記横振動体部92では、前記縦振動体部91の側面91bから前記横振動体部92の端面92aまでの長さを第2の長さL2とし、前記縦振動体部91の側面91cから前記横振動体部92の端面92bまでの長さを第3の長さL3とする。
【0029】
また、本発明の実施の形態に係る超音波溶着システムにおいては、前記第1の長さL1と前記第2の長さL2または第3の長さL3とは、使用超音波振動の波長に対して一定の関係に設定されている。
【0030】
ここにおいて、前記縦振動体部91の第1の長さL1は、前記横振動体部92の第2の長さL2または第3の長さL3より大きいことが望ましい。
また、前記横振動体部92の第2の長さL2と、前記横振動体部92の第3の長さL3はほぼ同一長さであることが望ましい。
【0031】
さらは、前記横振動体部92の一端面92a(92b)から前記縦振動体部91の中心軸Oを含む前記一端面92a(92b)に平行な面との距離を第4の長さL4としたときに、第4の長さL4は使用超音波振動の波長λに対して四分の一波長(λ/4)より小さく設定することが望ましい。
【0032】
前記横振動体部92の両端面92a,92b間の距離を第5の長さL5としたときに、前記第5の長さL5は、少なくとも使用超音波振動の波長λに対して二分の一の長さ(λ/2)に設定することが望ましい。
【0033】
さらに、前記縦振動体部91の第1の長さL1は、前記横振動体部92の第5の長さL5より小さく設定することが望ましい。
【0034】
このような実施の形態に係る超音波溶着システムでは次のように動作する。
【0035】
前記発振器3は、所定の周波数の超音波電気信号を発振し、前記コンバータ5に与える。前記コンバータ5は、前記発振器3からの超音波電気信号を機械的超音波振動に変換する。前記コンバータ5から出力された機械的超音波振動は、前記ブースタ7によって増幅されて方向変換ホーン9の縦振動体部91の超音波振動入力端91dに与えられる。
【0036】
前記方向変換ホーン9の超音波振動入力端91dに与えられた機械的超音波振動は、縦振動体部91を介して横振動体部92に伝達される。このとき、縦振動体部91を伝達している縦振動の超音波振動は、
図3に示すように、横振動体部92において横振動に変換されて前記横振動体部92の両端面92a,92bで最大振幅となる(
図3の矢印M)。
【0037】
このような状態の横振動の機械的超音波振動は、振動作用部11に供給される。また、振動作用部11は、加圧保持部71から図示しない加圧装置によって加圧されて、振動作用部11とアンビル13との間に置かれた被溶着物(接合対象(ワーク))20に加えられる。
【0038】
前記被溶着物(接合対象(ワーク))20には、振動作用部11の横方向の機械的超音波振動と、図示しない加圧装置からの圧力が振動作用部11を介して加えられることになる。これにより、前記被溶着物(接合対象(ワーク))20は溶着されることになる。
【0039】
このような本発明の実施の形態に係る超音波溶着システム1によれば、前記方向変換ホーン9を縦振動体部91及び横振動体部92から構成し、前記横振動体部92を前記縦振動体部91の一端部91a側において直
角方向にかつ前記縦振動体部91の側面91b,91cよりそれぞれ突出させて設け、縦振動体部91の長さL1と横振動体部92の長さL2,L3とを使用超音波振動の波長に対して一定の関係に設定し、横振動体部92のブースタ7、前記方向変換ホーン9及び前記振動作用部11を一体として垂直方向に配置でき、そのため設置空間を著しく小さくできる。
【0040】
また、本発明の実施形態に係る超音波溶着システム1よれば、前記コンバータ5、前記ブースタ7、前記方向変換ホーン9及び前記振動作用部11を一体的に構成したので、構造が簡単で部品点数を著しく少なくすることができる。
【0041】
さらに、本発明の実施形態に係る超音波溶着システム1によれば、前記コンバータ5から前記振動作用部11までの各部品が垂直方向に一体的に配置されているので、従来装置の構造と比較すると従来装置よりは加圧方向のベンディング量を少なくすることが期待できる。
【0042】
加えて、本発明の実施形態に係る超音波溶着システム1によれば、前記コンバータ5から前記振動作用部11までの各部品が垂直方向に一体的に配置されているので、縦方向に所定の空間があれば設置できるため、汎用性が高くなる。
【0043】
図4及び
図5は、本発明の他の実施形態に係る超音波溶着システムの要部を説明するための図である。これらの図において、本発明の他の実施形態に係る超音波溶着システム1Aが、本発明の実施形態に係る超音波溶着システム1と異なるところは、前記方向変換ホーン9の横振動体部92の両端側92a,92bにそれぞれ振動作用部11a,11bを設けたものであって、これらに合わせてアンビル13a,13bを設けたものであり、他の構成は本発明の実施形態に係る超音波溶着システム1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
本発明の他の実施形態に係る超音波溶着システムによれば、本発明の実施の形態と同様な作用効果を奏するほか、振動作用部11a,11bにより二つ同時に溶着を行うことができる。
【0045】
図6は、本発明のさらに他の実施形態に係る超音波溶着システムの要部を説明するための図である。これらの図において、本発明の他の実施形態に係る超音波溶着システム1Bが、上記各超音波溶着システム1,1Bと異なるところは、前記ブースタ7を省略した点にあり、他の構成には変更がないので、同一部材には同一の符号を付して説明する。
【0046】
すなわち、本超音波溶着システム1Bは、発振器3、コンバータ5、方向変換ホーン9及び振動作用部11から構成したものである。なお、加圧保持部は図示せず。
【0047】
また、本超音波溶着システム1Bであっても、上記各超音波溶着システム1,1Aと同様に動作し、かつ上記超音波溶着システム1,1Aと同様な利点を持つことになる。
【0048】
すなわち、本超音波溶着システム1Bによっても、設置空間を著しく小さくできること、部品点数を著しく少なくすることができることという利点を有することになる。
【実施例】
【0049】
図7は、本発明の実施形態に係る超音波溶着システムにおいて振動方向変換手段の縦振動体部及び横振動体部の長さと使用超音波振動周波数と振動方向との関係を示す説明図である。
【0050】
図7に示す説明図では、前記方向変換ホーン9の縦振動体部91の超音波振動入力端91dに入力された機械的超音波振動の振動方向(入力縦振動)と、前記方向変換ホーン9の横振動体部92から出力される機械的超音波の振動方向(出力横振動)とを矢印で示している。
【0051】
この入力縦振動と出力横振動とは、二つの態様を示すことが分かっている。
【0052】
態様Aは、方向変換ホーン9の縦振動体部91の超音波振動入力端91dにおける入力縦振動と、方向変換ホーン9の横振動体部92の端側92a,92bの出力横振動が同時に内側または外側に向く態様である。
【0053】
態様Bは、超音波振動入力端91dにおける入力縦振動と、横振動体部92の端側92a,92bの出力横振動が互い違いに向く態様である。
【0054】
まず、態様Aについて説明する。
態様Aでは、Dimentionとして、[L1=2×L2]、[L1=1.75×L2] 、[L1=1.5×L2]、[L1=1.25×L2]、[L1=1×L2]の関係を選択するものとする。このようなDimentionにおいて、それぞれ超音波周波数(Frequency)を変化させたときに、方向変換ホーン9の縦振動体部91及び横振動体部92上で振動ベクトルがどのように変化するかが、Vibration Vectorとして表示されている。
【0055】
まず、[L1=2×L2]において超音波振動周波数40099[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが生じ、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bにも同時に外側を向くベクトルが前記両端92a,92bの全てに大きく発生している。
【0056】
同様に、[L1=1.75×L2]において超音波振動周波数40738[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが生じ、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bにも同時に外側を向くベクトルが前記両端92a,92bの下側に大きく発生している。
【0057】
同様に、[L1=1.5×L2]において超音波振動周波数42671[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが生じ、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bにも同時に外側を向くベクトルが前記両端92a,92bに発生している。
【0058】
同様に、[L1=1.25×L2]において超音波振動周波数46219[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが生じるが、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bにも同時に外側を向くベクトルが前記両端92a,92bに発生しているが、大きなベクトルとはならない。
【0059】
同様に、[L1=1×L2]において超音波振動周波数50740[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが小さく生じるが、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bにも同時に外側を向くベクトルが前記両端92a,92bに発生しているが、大きなベクトルとはならない。
【0060】
以上のことから、態様Aの場合にあっては、[L1=2×L2]~[L1=1.5×L2]程度に選択することが望ましいことがわかる。
【0061】
次に、態様Bについて説明する。
態様Bでも、Dimentionとして、[L1=2×L2]、[L1=1.75×L2] 、[L1=1.5×L2]、[L1=1.25×L2]、[L1=1×L2]の関係を選択するものとする。このようなDimentionにおいて、
それぞれ超音波周波数(Frequency)を変化させたときに、方向変換ホーン9の縦振動体部91及び横振動体部92上で振動ベクトルがどのように変化するかが、Mode2(Vibration Vector)として表示されている。
【0062】
まず、[L1=2×L2]において超音波振動周波数34861[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが生じているが、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bには内側を向くベクトルが前記両端92a,92bに発生している。
【0063】
同様に、[L1=1.75×L2]において超音波振動周波数37016[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが生じているが、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bには内側を向くベクトルが前記両端92a,92bに小さく発生していることがわかる。
【0064】
同様に、[L1=1.5×L2]において超音波振動周波数38476[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが生じているが、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bには内側を向くベクトルが前記両端92a,92bの図示上側に若干大きく発生している。
【0065】
同様に、[L1=1.25×L2]において超音波振動周波数39017[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが生じているが、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bには内側を向くベクトルが前記両端92a,92bに大きく発生している。
【0066】
同様に、[L1=1×L2]において超音波振動周波数39229[Hz]の超音波を方向変換ホーン9に加えたときに、縦振動体部91の超音波振動入力端91dでは外側を向くベクトルが小さく生じるが、方向変換ホーン9の横振動体部92の両端92a,92bには内側を向くベクトルが前記両端92a,92bに大きく発生していることがわかる。
【0067】
以上のことから、態様Bの場合にあっては、[L1=1.5×L2]~[L1=1×L2]程度に選択することが望ましいことがわかる。
【0068】
よって、態様A及び態様Bの結果から、使用超音波周波数において、縦振動体部91の長さL1は、横振動体部92の長さL2または長さL3より大きく選択することが望ましいことがわかる。また、L1とL2は、使用超音波振動の波長に対して一定の関係を持たせる必要があることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B 超音波溶着システム
3 発振器
5 コンバータ
7 ブースタ
9 方向変換ホーン(振動方向変換手段)
11 振動作用部
13 アンビル
71 加圧保持部
91 縦振動体部
92 横振動体部