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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】自転車のフロントディレイラ作動装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 25/04 20060101AFI20221111BHJP
   B62M 9/131 20100101ALI20221111BHJP
【FI】
B62M25/04 A
B62M9/131
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018138506
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2019038527
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】102017000085704
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ミント・マルコ
(72)【発明者】
【氏名】マランゴン・クリスティアン
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0233112(US,A1)
【文献】特開2000-095174(JP,A)
【文献】実開昭62-054893(JP,U)
【文献】国際公開第96/04167(WO,A1)
【文献】特開2007-039028(JP,A)
【文献】米国特許第08485060(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0200307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 25/04
B62M 9/131
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動チェーンを第1の歯車(201)と当該第1の歯車(201)の径よりも小径である第2の歯車(202)との間で変位させるための、自転車のフロントディレイラ(300)の作動装置(10)であって、
前記フロントディレイラ(300)に対して動作可能に機能し、前記伝動チェーンが前記第2の歯車(202)に係合するときの第1のロー側停止位置(P1)第2のロー側停止位置(P2)および第3のロー側停止位置(P3)を有するインデクサ(13)であって、前記第2のロー側停止位置(P2)は、前記フロントディレイラ(300)を前記第2の歯車(202)上のセンタに配置させるように構成されており、前記第2のロー側停止位置(P2)が、前記第1のロー側停止位置(P1)と前記第3のロー側停止位置(P3)との間に配置されており、当該インデクサ(13)は、前記第1の歯車(201)との前記伝動チェーンの係合に対応する第1のアッパ側停止位置(P4)を備える、インデクサ(13)と、
前記インデクサ(13)を前記第1のロー側停止位置(P1)、前記第2のロー側停止位置(P2)、前記第1のアッパ側停止位置(P4)間で切り替えるように当該インデクサ(13)に対して動作可能に機能する、少なくとも1つの制御レバー(14)と、
を備え、前記制御レバー(14)の単一作動により、前記インデクサ(13)が前記第1のアッパ側停止位置(P4)から前記第2のロー側停止位置(P2)へと切り替えられる、作動装置(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の作動装置(10)において、前記インデクサ(13)は、前記伝動チェーンが前記第1の歯車(201)に係合するときの第2のアッパ側停止位置(P5)を有し、前記第1のアッパ側停止位置(P4)に対して、当該第2のアッパ側停止位置(P5)のほうが前記第2のロー側停止位置(P2)から遠くにあり、前記制御レバー(14)の単一作動が、前記インデクサ(13)を前記第2のアッパ側停止位置(P5)から前記第2のロー側停止位置(P2)へと切り替える、作動装置(10)。
【請求項3】
請求項に記載の作動装置(10)において、前記第1のアッパ側停止位置(P4)は、前記第2のアッパ側停止位置(P5)からのみ到達可能である、作動装置(10)。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の作動装置(10)において、
前記少なくとも1つの制御レバー(14)によって回転軸心(X)回りに、前記インデクサ(13)の第2のアッパ側停止位置(P5)に対応する最後の角度方向位置から前記インデクサ(13)の前記第1のロー側停止位置(P1)に対応する第1の角度方向位置への間で第1の角度方向(A)に、および前記第1の角度方向位置から前記最後の角度方向位置への間で第2の角度方向(B)に、回転するように作動される、ケーブル巻取りブッシュ(16)、
を備え、前記インデクサ(13)が、
前記ケーブル巻取りブッシュ(16)と一体回転し、少なくとも1つのポインタ(18,19)を具備する、ボール保持ディスク(17)、および
前記ポインタ(18,19)が係合する留めトラック(24)が設けられたインデクシングブッシュ(23)であって、前記留めトラック(24)が、前記ボール保持ディスク(17)を一部の前記ロー側及びアッパ側停止位置(P1,P2,P3,P4,P5)に停止させるために、少なくとも一部の前記ロー側及びアッパ側停止位置(P1,P2,P3,P4,P5)を含む、インデクシングブッシュ(23)、
を備える、作動装置(10)。
【請求項5】
請求項に記載の作動装置(10)において、前記留めトラック(24)が、第1の留め経路(25)および第2の留め経路(26)を含み、前記ボール保持ディスク(17)が、前記第1の留め経路(25)に係合する第1のポインタ(18)および前記第2の留め経路(26)に係合する第2のポインタ(19)を具備する、作動装置(10)。
【請求項6】
請求項に記載の作動装置(10)において、前記第2のポインタ(19)のサイズが、前記第1のポインタ(18)よりも小さい、作動装置(10)。
【請求項7】
請求項に従属する場合の請求項からのいずれか一項に記載の作動装置(10)において、前記第1のロー側停止位置(P1)と前記第2のロー側停止位置(P2)、および前記第2のロー側停止位置(P2)と第3のロー側停止位置(P3)が、前記第1のアッパ側停止位置(P4)と前記第2のアッパ側停止位置(P5)とを隔てる角度よりも小さい角度で角度方向に互いに離間している、作動装置(10)。
【請求項8】
請求項に従属する場合の請求項またはに記載の作動装置(10)において、前記第1(P1)、第2(P2)および第3(P3)のロー側停止位置が前記第2の留め経路(26)に形成されており、前記第2のアッパ側停止位置(P5)が前記第1の留め経路(25)に形成されている、作動装置(10)。
【請求項9】
請求項またはに記載の作動装置(10)において、前記第1のアッパ側停止位置(P4)が、前記第1の留め経路(25)の外部に形成されており、かつ、前記第2のアッパ側停止位置(P5)と径方向に揃えられている、作動装置(10)。
【請求項10】
請求項に従属する場合の請求項またはに記載の作動装置(10)において、前記第1の留め経路(25)が、前記第1のポインタ(18)用の自由スライド領域(29)を含み、前記第1のポインタ(18)は、前記第2のポインタ(19)が前記第1、第2または第3のロー側停止位置(P1,P2,P3)にあるときに前記自由スライド領域(29)に係合する、作動装置(10)。
【請求項11】
請求項8、9または10に記載の作動装置(10)において、前記第2の留め経路(26)が、前記第2のポインタ(19)用の自由スライド領域(32b)を含み、前記第2のポインタ(19)は、前記第1のポインタ(18)が前記第1のアッパ側停止位置(P4)または前記第2のアッパ側停止位置(P5)にあるときに前記自由スライド領域(32b)に係合する、作動装置(10)。
【請求項12】
請求項3から11のいずれか一項に記載の作動装置(10)において、当該作動装置(10)が、前記ケーブル巻取りブッシュ(16)を前記第1の角度方向(A)に回転させる第1の制御レバー(14)、および前記ケーブル巻取りブッシュ(16)を前記第2の角度方向(B)に回転させる第2の制御レバー(15)を備え、前記第1の制御レバー(14)は、前記ボール保持ディスク(17)に対して直接的に動作する、作動装置(10)。
【請求項13】
請求項12に記載の作動装置(10)において、前記ボール保持ディスク(17)が、前記第1の制御レバー(14)の歯部(34)により係合可能である複数の突出部(38a,38b,38c)を具備しており、前記ボール保持ディスク(17)は、前記第1の角度方向(A)への前記第1の制御レバー(14)の作動時に前記歯部(34)が前記突出部(38a,38b,38c)のうちの一つに係合することによって前記第1の角度方向(A)に回転する、作動装置(10)。
【請求項14】
請求項13に記載の作動装置(10)において、前記第1の制御レバー(14)が、前記回転軸心(X)回りにアッパ側エンドストッパ(35)とロー側エンドストッパ(36)との間で回転可能であり、前記アッパ側エンドストッパ(35)と前記ロー側エンドストッパ(36)とを隔てる角度方向距離が、前記第2のアッパ側停止位置(P5)と前記第2のロー側停止位置(P2)との間の角度方向距離に等しい、作動装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のハンドルバーに取り付けられるように構成された、自転車のフロントディレイラを作動させる装置に関する。好ましくは、前記自転車は、競走用自転車である。
【背景技術】
【0002】
自転車には、通常、相異なる径及び歯数を有して後輪のハブに連結されている一連の同軸歯車(スプロケット)で構成されたスプロケットアセンブリに対して動作する、リアディレイラが設けられている。
自転車には、さらに、相異なる径及び歯数を有していて且つ一対のペダルにより回転されるボトムブラケットセットのピンに結合されている一連の歯車(クラウンギヤ)で構成されたクランクセットに対応付けられる、フロントディレイラが設けられていることがある。
通常、上記クランクセットのクラウンギヤの数は2つ又は3つであり、自転車のフレームに最も近いクラウンギヤから径が増加していく。
【0003】
上記ディレイラは(フロントディレイラ及びリアディレイラのいずれにしろ)、上記スプロケットアセンブリと上記クランクセットとの間で閉ループ状に延在している伝動チェーンに係合しており、当該伝動チェーンを相異なる径及び歯数を有する歯車上において変位させることで様々なギヤ比を実現する。
具体的に述べると、ダウンシフト動作とは、上記チェーンが大径側の歯車から小径側の歯車に移行するときを言い、アップシフト動作とは、上記チェーンが小径側の歯車から大径側の歯車に移動するときを言う。なお、これに関してフロントディレイラを基準とすると、ダウンシフト動作はより低いギヤ比への移行に相当し、アップシフト動作はより高いギヤ比への移行に相当する。
【0004】
フロントディレイラのこのような二方向の変位は、ハンドルバーにおいて運転者が操作し易いように装着されている作動装置により実現される。
具体的に述べると、機械式のギアシフト装置でのフロントディレイラは、上記クランクセットのクラウンギヤ間で、通常はシースが付いている非伸長性の制御ケーブル(一般的には、ボーデンケーブルと称される)により加えられる牽引動作によって第1の方向(アップシフト方向)に、さらには、このケーブルの牽引の解除と当該ディレイラ自体に設けられたばねの弾性復帰動作とによって反対の第2の方向(ダウンシフト方向)に動かされる。
【0005】
フロントディレイラは、チェーンガイドを作動させるリンク機構によって作動される。上記チェーンガイドは、上記チェーンを上記クラウンギヤに対しての相異なる係合位置間で物理的に変位させるように構成されている。
上記チェーンガイドは、互いに略平行で且つ上記クラウンギヤが延在する平面とも略平行である内側プレート及び外側プレートを有する。上記内側プレートは上記外側プレートから離間しており、上記制御ケーブルの牽引又は解除により、双方が同時に一体並進させられる。
【0006】
ダウンシフト動作時には上記ディレイラのうちの上記外側プレートが上記チェーンに触れて、係合していたクラウンギヤから当該チェーンを外し、上記フレームのより近くに配置された小径側のクラウンギヤへと当該チェーンを落下させる。
アップシフト動作時には上記ディレイラのうちの上記内側プレートが上記チェーンに触れて、当該チェーンに随伴しながら当該チェーンを、上記フレームからより遠くに配置された大径側のクラウンギヤに向かって変位させる。
【0007】
上記作動装置内では、上記制御ケーブルが、回転体エレメント(一般的には、ケーブル巻取りブッシュと称される)上での巻取りや巻出しによって牽引作動又は解除作動される。上記回転体エレメントの回転は、運転者により単一の適切な制御レバー又は2つの制御レバー(アップシフト動作用の第1のレバーおよびダウンシフト動作用の第2のレバー)を用いて作動される。
【0008】
いずれにせよ、上記作動装置は上記ケーブル巻取りブッシュを、所定のインデクシング角度で角度方向に互いに離間している複数の所定の角度方向位置にて、回転停止状態で保持されるようにする必要がある。この機能は、上記ケーブル巻取りブッシュと上記装置のうちの固定側部材であるケーシングとの間で可変動作する、いわゆるインデクサによって実現される。数多くの種類のインデクサが従来技術において知られている。
【0009】
通常、インデクサは例えば特許文献1、特許文献2等に示されているように、フロントディレイラをクランクセットのうちの最小径のクラウンギヤに配置するための停止位置を複数有している。
これにより、運転者は、チェーンをクランクセットのうちの最小径のクラウンギヤに配させるときに、カセットのうちの当該チェーンが係合している歯車に基づいた最も適切な停止位置に係合するように、制御レバーを作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第8485060号明細書
【文献】米国特許第7285064号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願人は、クランクセットのうちの最大径のクラウンギヤからのダウンシフト動作時に、当該最大径のクラウンギヤと最小径のクラウンギヤとの間で伝動チェーンの正確な移行が確実に行われるようにすることが重要であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、第1の歯車と当該第1の歯車の径よりも小径である第2の歯車との間で伝動チェーンを変位させるために自転車のフロントディレイラを作動させる装置であって、
前記フロントディレイラに対して動作可能に機能し、前記伝動チェーンが前記第2の歯車に係合するときの第1のロー側停止位置及び第2のロー側停止位置を有するインデクサであって、前記第2のロー側停止位置は、前記フロントディレイラを前記第2の歯車上のセンタに配置させるように構成されており、当該インデクサは、前記第1の歯車との前記伝動チェーンの係合に対応する第1のアッパ側停止位置を有する、インデクサと、
前記インデクサを前記第1のロー側停止位置、前記第2のロー側停止位置および前記第1のアッパ側停止位置との間で切り替えるように当該インデクサに対して動作可能に機能する、少なくとも1つの制御レバーと、
を備え、前記制御レバーの単一作動(single actuation)により、前記インデクサが前記第1のアッパ側停止位置から前記第2のロー側停止位置へと切り替えられる、装置に関する。
【0013】
前記制御レバーの「単一作動」とは、当該制御レバーの、第1の位置と第2の位置との間での一方向に沿った連続的なストロークのことを意味する。
上記の構成によれば、運転者が前記第1のクラウンギヤ(大径側のクラウンギヤ)から前記第2の歯車(小径側の歯車)への前記ディレイラの変位を指令したときに、当該フロントディレイラは常にその第2の歯車上のセンタに配置されることになる。
本出願人は、これにより、カセットにおいて前記伝動チェーンがどの歯車に係合しているのかにかかわらず、常に効率的なダウンシフト動作が可能になることを見出した。
【0014】
事実、本出願人は、前記伝動チェーンを前記第1の歯車から前記第1のロー側停止位置(前記フロントディレイラのストローク終了位置に最も近い停止位置)に移動させるダウンシフト動作では、前記伝動チェーンが前記第2の歯車を越えて移動する結果、前記伝動チェーンが当該第2の歯車から脱落する可能性があることを見出した。
【0015】
自転車のフロントディレイラを作動させる本発明にかかる装置は、少なくとも1つの下記の好適な構成を、単独で又は複数の組合せとして備えることができる。
好ましくは、前記インデクサは、前記伝動チェーンが前記第2の歯車に係合するときの第3のロー側停止位置を有し、前記第2のロー側停止位置が、前記第1のロー側停止位置と前記第3のロー側停止位置との間に位置している。
【0016】
本出願人は、前記第1の歯車から前記第2の歯車へと移行するダウンシフト動作において、前記フロントディレイラが前記伝動チェーンを当該第2の歯車上の最初の利用可能位置(前記第3のロー側停止位置)に配置させた場合、このダウンシフト動作が(特に、前記伝動チェーンがカセットのうちの小径側のスプロケットに係合していると)失敗し得ること、すなわち、ダウンシフト動作が発生しない場合があることを見出した。
【0017】
好ましくは、前記インデクサは、前記伝動チェーンが前記第1の歯車に係合するときの第2のアッパ側停止位置を有し、当該第2のアッパ側停止位置のほうが前記第1のアッパ側停止位置よりも、前記第2のロー側停止位置から遠くにあり、前記制御レバーの単一作動が、前記インデクサを前記第2のアッパ側停止位置から前記第2のロー側停止位置へと切り替える。
【0018】
停止位置に言及するときの「近い」や「遠い」という用語は、当該停止位置同士を隔てる距離を指している。このような距離は、前記フロントディレイラが2つの停止位置間を移行するのに行わなければならない移動量、または2つの停止位置間を隔てる角度方向距離もしくは(後で明らかにするような)直線距離のことを指し得る。
【0019】
前記第2のアッパ側停止位置は、前記伝動チェーンを、前記第1の歯車上の、前記フロントディレイラのアッパ側エンドストッパのより近くの位置に配置させることができるので、当該伝動チェーンがリアカセットのうちの小径側の歯車に係合することを、当該伝動チェーンが前記フロントディレイラのチェーンガイドの外側プレートにスライドすることなく可能にする。
好ましくは、前記第1のアッパ側停止位置は、前記第2のアッパ側停止位置からのみ到達可能である。
【0020】
本出願人は、アップシフト動作時には前記フロントディレイラのうちの内側プレートが前記伝動チェーンに随伴して当該伝動チェーンを、当該伝動チェーンが大径側の歯車に係合するまで連れて行かなければならないことに注目した。
前記第2のアッパ側停止位置により、カセットのうちのどの歯車に当該伝動チェーンが係合しているのかにかかわらず前記伝動チェーンを前記第1の歯車へと確実に効果的に連れて行くことができる。
好ましくは、前記第2の歯車から前記第1の歯車へのアップシフト動作時には、前記伝動チェーンが常に前記第2のアッパ側停止位置に到達する。
これにより、前記伝動チェーンを前記第2の歯車から前記第1の歯車へと移動させるアップシフト動作が、常に高速かつ効果的になる。
【0021】
好ましくは、ケーブル巻取りブッシュであって、前記制御レバーによって回転軸心回りに、前記インデクサの前記第2のアッパ側停止位置に対応する最後の角度方向位置から前記インデクサの前記第1のロー側停止位置に対応する第1の角度方向位置への間で第1の角度方向に、さらには、前記第1の角度方向位置から前記最後の角度方向位置への間で第2の角度方向に回転するように作動される、ケーブル巻取りブッシュが設けられており、
前記インデクサが、
前記ケーブル巻取りブッシュと一体回転し、少なくとも1つのポインタを具備する、ボール保持ディスク、ならびに
前記ポインタが係合する留めトラックが設けられたインデクシングブッシュであって、前記留めトラックが、前記ボール保持ディスクを一部の前記ロー側及びアッパ側停止位置に停止させるために、少なくとも一部の前記ロー側及びアッパ側停止位置を含む、インデクシングブッシュ、を含む。
【0022】
前記ケーブル巻取りブッシュの、前記第1の角度方向への回転がダウンシフト動作に相当し、前記ケーブル巻取りブッシュの、前記第2の角度方向への回転がアップシフト動作に相当する。
前記ポインタがスライドする前記留めトラックに沿って前記ロー側及びアッパ側停止位置が設けられていることにより、前記ポインタ(したがって、前記ケーブル巻取りブッシュ)は、クランクセットの歯車上でギアシフト動作を実行するのに利用可能な前記フロントディレイラの位置に対応する角度方向位置に到達することができ、好ましくは、前記伝動チェーンがクランクセットのうちの最小径のクラウンギヤに係合するときの前記フロントディレイラの位置を複数設けることが可能となる。
前記ポインタの及び前記ケーブル巻取りブッシュのこれらの角度方向位置は、ギアシフト動作(例えば、アップシフト動作等)時に運転者が前記制御レバーを作動させたときに順次到達することができる。
【0023】
好ましくは、前記留めトラックは、第1の留め経路および第2の留め経路を含み、前記ボール保持ディスクが、前記第1の留め経路に係合する第1のポインタおよび前記第2の留め経路に係合する第2のポインタを具備する。
これにより、前記ディレイラが前記第2の歯車(最小径の歯車)上に配置されるときの前記ロー側停止位置用のポインタと、前記ディレイラが前記第1の歯車(最大径の歯車)上に配置されるときの少なくとも1つの前記アッパ側停止位置用のポインタとを設けることが可能になる。
これにより、前記第2の歯車の停止位置用に特化して構成された留め経路と、前記第1の歯車の停止位置用に特化して構成された留め経路とを設けることが可能になり得る。
【0024】
事実、本出願人は、前記フロントディレイラのばねの、(当該フロントディレイラをロー側エンドストッパへと戻す傾向がある)復帰力が、前記インデクサが前記フロントディレイラを前記第1の歯車に配置させたときには大きくなり、前記インデクサが前記フロントディレイラを前記第2の歯車に配置させたときには小さくなることを見出した。
本出願人は、前記ディレイラが前記第2の歯車にあるときに前記インデクサが受けなければならない力の対(pair of forces)が、前記ディレイラが前記第1の歯車にあるときに前記インデクサが受けなければならない力の対よりも小さいことを見出した。
【0025】
本出願人は、前記ロー側停止位置、前記アッパ側停止位置および前記ポインタのサイズ設定が、当該ロー側停止位置と当該アッパ側停止位置と各々の当該ポインタとで異ならせられることを見出した。
好ましくは、前記第2のポインタのサイズが、前記第1のポインタよりも小さい。
これにより、前記第2のポインタが係合する前記ロー側停止位置のサイズを、前記第1のポインタが係合する前記アッパ側停止位置よりも小さくすることができる。
本出願人は、これにより、前記第2のポインタが係合するロー側停止位置同士を、前記第1のポインタが係合する前記アッパ側停止位置同士に比べて互いに近接したものにできることを見出した。
好ましくは、前記第1のロー側停止位置と前記第2のロー側停止位置、および前記第2のロー側停止位置と第3のロー側停止位置が、前記第1のアッパ側停止位置と前記第2のアッパ側停止位置とを隔てる角度よりも小さい角度で角度方向に互いに離間している。
これにより、前記第2の歯車での前記フロントディレイラの安定位置同士を、前記第1の歯車での前記フロントディレイラの安定位置同士に比べて互いに近接したものにでき、前記第2の歯車での前記フロントディレイラの微調節が可能となる。
さらに、前記フロントディレイラの総移動量は同じでも、当該フロントディレイラの安定位置を増やし(すなわち、前記インデクサの停止位置を増やし)、当該ディレイラの多用性を確実に向上させることができる。
【0026】
好ましくは、前記第1、第2および第3のロー側停止位置が前記第2の留め経路に形成されており、前記第2のアッパ側停止位置が前記第1の留め経路に形成されている。
好ましくは、前記第1のアッパ側停止位置は、前記第1の留め経路の外部に形成されており、かつ、前記第2のアッパ側停止位置と径方向に揃えられている。
【0027】
本出願人は、前記第1のアッパ側停止位置を前記第1の留め経路の外部に配置する、したがって、前記第1のアッパ側停止位置を前記第1の留め経路での前記第1のポインタの通常スライド中に到達できないものとすることにより、前記ケーブル巻取りブッシュの角度方向位置として、前記第1の留め経路を辿るアップシフト動作が行われたときに直接到達できない角度方向位置(したがって、前記フロントディレイラの位置)が得られることを見出した。
【0028】
このようにして、前記第1のアッパ側停止位置(当該第1のアッパ側停止位置は、前記第2の角度方向において前記第2のアッパ側停止位置よりも先に存在する)は、ダウンシフト動作を引き起こすには十分でない量、ただし、カセットの歯車上での前記伝動チェーンの種々の位置を補償するために大径側のクラウンギヤにて前記ディレイラを配置し直すのに十分、フロントディレイラを動かすのに利用され得る。
これにより、前記伝動チェーンがクランクセットの最大径のクラウンギヤ上にあるときでもカセット全体を利用できるという可能性を犠牲にすることなく、前記フロントディレイラの寸法(特には、2つのチェーンガイドプレート間の距離)を小さくすることができる。
【0029】
好ましくは、前記第1の留め経路は、前記第1のポインタ用の自由スライド領域を含み、前記第1のポインタは、前記第2のポインタが前記第1、第2または第3のロー側停止位置にあるときに前記自由スライド領域に係合する。
これにより、前記インデクサが前記ロー側停止位置にあるときには、前記第1のポインタが前記ボール保持ディスクの回転を拘束(停止)不能となって前記アッパ側停止位置との係合から解かれた状態に維持されるので、前記第2のポインタが前記ロー側停止位置間で移動することができる。
【0030】
好ましくは、前記第2の留め経路は、前記第2のポインタ用の自由スライド領域を含み、前記第2のポインタは、前記第1のポインタが前記第1のアッパ側停止位置または前記第2のアッパ側停止位置にあるときに前記自由スライド領域に係合する。
これにより、前記インデクサが前記アッパ側停止位置にあるときには、前記第2のポインタが前記ボール保持ディスクの回転を拘束(停止)不能となって前記ロー側停止位置との係合から解かれた状態に維持されるので、前記第1のポインタが前記アッパ側停止位置間で移動することができる。
【0031】
好ましくは、前記ケーブル巻取りブッシュを前記第1の角度方向に回転させる第1の制御レバーが設けられており、前記ケーブル巻取りブッシュを前記第2の角度方向に回転させる第2の制御レバーが設けられており、前記第1の制御レバーは、前記ボール保持ディスクに対して直接的に動作する。
【0032】
好ましくは、前記ボール保持ディスクは、前記第1の制御レバーの歯部により係合可能である複数の突出部を具備しており、前記ボール保持ディスクは、前記第1の角度方向への前記第1の制御レバーの作動時に前記歯部が前記突出部のうちの一つに係合することによって前記第1の角度方向に回転する。
【0033】
好ましくは、前記第1の制御レバーは、前記回転軸心回りにアッパ側エンドストッパとロー側エンドストッパとの間で回転可能であり、前記アッパ側エンドストッパと前記ロー側エンドストッパとを隔てる角度方向距離が、前記第2のアッパ側停止位置と前記第2のロー側停止位置との間の角度方向距離に等しい。
このようにして、前記第1の制御レバーの全ストローク、すなわち、前記第1の制御レバーの途切れのない連続的なストロークが、前記インデクサの、前記第2のアッパ側停止位置から前記第2のロー側停止位置への移行に相当する。
【0034】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、本発明の好適な実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】自転車のフロントディレイラを作動させる本発明にかかる装置の分解斜視図である。
図2】ある動作状態での、図1の装置を示す背面図であって、一部の部品を強調図示するために他の部品が省略されている図である。
図3】異なる動作状態での、図1の装置を示す背面図であって、一部の部品を強調図示するために他の部品が省略されている図である。
図4】異なる動作状態での、図1の装置を示す背面図であって、一部の部品を強調図示するために他の部品が省略されている図である。
図5】異なる動作状態での、図1の装置を示す背面図であって、一部の部品を強調図示するために他の部品が省略されている図である。
図6】異なる動作状態での、図1の装置を示す背面図であって、一部の部品を強調図示するために他の部品が省略されている図である。
図7図1の装置の細部を示す概略平面図である。
図8図1の装置の他の細部を示す概略平面図である。
図9】本発明にかかる装置により作動されるフロントディレイラの位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
添付の図面を参照する。図面には、自転車のフロントディレイラを作動させる本発明にかかる装置の好適な一実施形態が描かれている。当該作動装置の全体に符号10を付す。
好ましくは、作動装置10は、図1に示すように自転車のブレーキ-ギアシフト装置の統合型の作動装置100に含まれている。
【0037】
添付の図面には、自転車のフロントディレイラ300を用いてクランクセット200についてのギヤ比を変更するのに使用される、作動装置10が描かれている。
装置10は、自転車のハンドルバーに例えばストラップ(図示せず)等によって従来からの様式で固定されるケーシング11(図1)を備える。好ましくは、ストラップは、ブレーキレバー101(図1)を前記ハンドルバーに拘束する。
【0038】
ケーシング11内には、当該ケーシング11内部で回転軸心X回りに回転可能であるセンタピン12が設けられている。回転軸心Xを、装置10の一部をなす構成要素についての主要な基準軸心とする。例えば「軸方向」、「径方向」、「周方向」、「直径方向」等の方向などを示唆する全ての文言は、これを基準とする。同じく、径方向についての「外側」、「内側」の文言は、その回転軸心Xから離れること、その回転軸心Xに近付くことをそれぞれ意味するものと解釈されたい。回転軸心X回りに、第1の角度方向Aと第2の角度方向Bとの2つの相対する角度方向がそれぞれ定義される。
【0039】
装置10は、インデクサ13を備える。インデクサ13はフロントディレイラ300を、クランクセット200のうちの第1の歯車201上での及び第2の歯車202上での伝動チェーン(図示せず)の位置に対応する、複数の動作位置間で駆動するように構成されている。
フロントディレイラ300が取り得る動作位置は、インデクサ13における停止位置P1,P2,P3,P4,P5により決まる。
第1の歯車201は、自転車のフレームを基準として第2の歯車202よりも外側に位置することになる。
第1の歯車201は、第2の歯車202よりも径が大きく、歯数が多い。
【0040】
図9に模式的に示すように、インデクサ13は、第2の歯車202でのフロントディレイラ300の位置にそれぞれ対応する、第1のロー側停止位置(lower stop position)P1、第2のロー側停止位置P2および第3のロー側停止位置P3を有している。
【0041】
具体的に述べると、第1のロー側停止位置P1は、前記ディレイラのロー側エンドストッパ301に略近接する、当該ディレイラ300の位置に対応しており、第3のロー側停止位置P3は、ロー側エンドストッパ301から遠くにある、ディレイラ300の位置に対応しており、第2のロー側停止位置P2は、第1のロー側停止位置P1と第3のロー側停止位置P3との間にある、ディレイラ300の位置に対応している。
好ましくは、第2のロー側停止位置P2は、図9に模式的に示すように前記伝動チェーンを第2の歯車202上に完全にセンタに配置させるような停止位置である。
【0042】
インデクサ13は、さらに、ディレイラ300が第1の歯車201に配置されるときの少なくとも1つの第1のアッパ側停止位置(upper stop position)P4を有している。
具体的に述べると、第1のアッパ側停止位置P4は、前記伝動チェーンがカセットのうちの大径側のスプロケットに係合しているときにもディレイラ300の正確な使用を可能にする、当該ディレイラ300の位置に対応している。
【0043】
本発明の好適な実施形態では、前記インデクサが、第2のアッパ側停止位置P5を備えている。第2のアッパ側停止位置P5は、ディレイラ300のアッパ側エンドストッパ302に略近接する、当該ディレイラ300の位置に対応している。
なお、第2のアッパ側停止位置P5のほうが第1のアッパ側停止位置P4よりも、第1のロー側停止位置P1、第2のロー側停止位置P2および第3のロー側停止位置P3から遠くにある。
【0044】
インデクサ13の、停止位置P1,P2,P3,P4,P5間の切替えは、少なくとも1つの制御レバー14により作動される。
好ましくは、第1の制御レバー14が、ダウンシフト動作時に、すなわち、第2のアッパ側停止位置P5側から第1のロー側停止位置P1側へとインデクサ13を作動させるのに設けられており、かつ、第2の制御レバー15が、アップシフト動作時に、すなわち、第1のロー側停止位置P1側から第2のアッパ側停止位置P5側へとインデクサ13を作動させるのに設けられている。
【0045】
図9に模式的に描かれているように、第1の歯車201からのダウンシフト動作時には、インデクサ13が常に第2のロー側停止位置P2へと切り替えられる。
具体的に述べると、第1のアッパ側停止位置P4からのダウンシフト動作時のインデクサ13は、前記ディレイラを第2のロー側停止位置P2へと移動させて、前記伝動チェーンを第2の歯車202上のセンタに配置させる。
【0046】
また、前記伝動チェーンを第2のアッパ側停止位置P5から第2の歯車202へと移動させるダウンシフト動作を作動させるのにも、インデクサ13が常に前記ディレイラを第2のロー側停止位置P2へと移動させて、前記伝動チェーンを第2の歯車202上のセンタに配置させる。
すなわち、第1の歯車201からのダウンシフト動作時のインデクサ13は、第3のロー側停止位置P3を経由するものの、当該第3のロー側停止位置P3には安定に係合しない。
第1のアッパ側停止位置P4又は第2のアッパ側停止位置P5から第2のロー側停止位置P2への移行は、第1の制御レバー14の単一作動により、すなわち、第1の制御レバー14の単一の連続的な運動により行われる。
【0047】
ディレイラ300がこのようにして第2のロー側停止位置P2に配置されてからインデクサ13は、第2の歯車202上での第1のロー側停止位置P1又は第3のロー側停止位置P3に到達するように作動されることが可能である。
第1のロー側停止位置P1に到達するには、第1の制御レバー14を操作することによってダウンシフト動作を実行する必要があり、第3のロー側停止位置P3に到達するには、第2の制御レバー15を操作することによってアップシフト動作を実行する必要がある。
【0048】
図9に模式的に描かれているように、第2の歯車202上の任意のロー側停止位置P1,P2,P3から第1の歯車201へと到達するためのアップシフト動作時には、インデクサ13が常に第2のアッパ側停止位置P5に到達させられる。
第2のアッパ側停止位置P5からは、第1の制御レバー14を操作する(当該第1の制御レバー14に、第2のアッパ側停止位置P5から第2のロー側停止位置P2へと移行させるのに必要となるストロークよりも短いストロークを実行させる)ことにより、インデクサ13が第1のアッパ側停止位置P4へと切り替えられることが可能である。
【0049】
装置10は、上述したような運動(およびフロントディレイラ300のその他のさらなる又は異なる運動)を作動するために、ケーブル巻取りブッシュ16を備える。ケーブル巻取りブッシュ16には制御ケーブルが固定されており、かつ、当該ケーブル巻取りブッシュ16にこの制御ケーブルが巻き取られている。
ケーブル巻取りブッシュ16は、ケーシング11内において制御ピン12に固定的に連結されており、かつ、回転軸心X回りに第1の角度方向Aへと及び第2の角度方向Bへと角度方向回転可能である。
ケーブル巻取りブッシュ16は、前記制御ケーブルの巻取りが最小となる第1の角度方向位置から前記制御ケーブルの巻取りが最大となる最後の角度方向位置への間で、さらには、当該最後の角度方向位置から前記第1の角度方向位置への間で回転することが可能である。
【0050】
ケーブル巻取りブッシュ16の前記第1の角度方向位置と前記最後の角度方向位置との間には、互いに異なり且つ角度方向にインデクシング角度ぶん離間した、さらなる角度方向位置が介在している。これらのインデクシング角度は、全てが同一であるわけではない。ケーブル巻取りブッシュ16の各角度方向位置は、クランクセット200のクラウンギヤ201,202に対するフロントディレイラ300の位置にそれぞれ対応している。
具体的に述べると、第1の角度方向Aへの回転はダウンシフト動作に相当し、第2の角度方向Bへの回転はアップシフト動作に相当する。
【0051】
ケーブル巻取りブッシュ16の前記第1の角度方向位置は、インデクサ13の第1のロー側停止位置P1に対応しており、ケーブル巻取りブッシュ16の前記最後の角度方向位置は、インデクサ13の第2のアッパ側停止位置P5に対応している。
インデクサ13の第2のロー側停止位置P2、第3のロー側停止位置P3および第1のアッパ側停止位置P4は、ケーブル巻取りブッシュ16の、相互に隣接して介在している角度方向位置に対応している。
【0052】
インデクサ13は、ボール保持ディスク17を含む。ボール保持ディスク17は、ケーシング11内において回転可能に取り付けられており、かつ、制御ピン12に固定的に連結されている。ケーブル巻取りブッシュ16の各回転は、ボール保持ディスク17の同量の回転に対応付けられており、その逆も然りである。
【0053】
ボール保持ディスク17は略円筒状であり、第1のポインタ18及び第2のポインタ19(図7)が設けられている。好ましくは、これら2種類のポインタ18,19は球状体であり、ポインタともボールとも(区別することなく)称される。
本発明の好適な実施形態では、第1のポインタ18が2つ、さらには、第2のポインタ19が2つ設けられている。
【0054】
2つの第1のポインタ18に関して、ボール保持ディスク17には、直径方向に対向する2つの同一の径方向溝20が形成されている。径方向溝20は、外側に向かって閉じられている。それぞれの径方向溝20には、各々のボール18が移動可能に収容されている。これら2つのボール18は溝20内において、当該溝20に装着されたそれぞれのばね21によって外方へと弾性的に付勢されている。溝20は、ボール保持ディスク17が占める軸方向空間からボール18が部分的に露出するように、当該ボール保持ディスク17のうちの一方の側で軸方向に開口していて、ポインタが軸方向に突き出るようにしている。
【0055】
2つの第2のポインタ19は、ボール保持ディスク17に形成された、径方向に対向する収容部22内に配置されている。収容部22は、ボール保持ディスク17が占める軸方向空間からボール19が部分的に露出するように、当該ボール保持ディスク17のうちの一方の側で軸方向に開口していて、ポインタが軸方向に突き出るようにしている。
【0056】
第1のボール18はそれぞれ、第2のボール19から角度方向に約30°~約150°の角度ぶん離間している。
好ましくは、第1のボール18はそれぞれ、4つのポインタ18,19が角度方向に互いに等間隔で離間するように、第2のボール19から角度方向に90°の角度ぶん離間している。
第2のポインタ19は、第1のポインタ18と径方向に揃えられている。
【0057】
図7に示すように、第1のポインタ18のサイズは第2のポインタ19よりも大きく、すなわち、第1のポインタ18の直径は第2のポインタ19よりも大きい。
好ましくは、第1のポインタ18の直径は、第2のポインタ19の直径の1.1~2倍であり、より好ましくは、第1のポインタ18の直径が、第2のポインタ19の直径の約1.4倍である。例えば、第1のポインタ18の直径は約2.0mmであり、前記第2のポインタの直径は約1.5mmである。
【0058】
インデクサ13は、さらに、インデクシングブッシュ23を含む。インデクシングブッシュ23は、ケーシング11内に配置されていて、当該ケーシング11に固定されており、制御ピン12に対して相対回転可能に取り付けられている。
インデクシングブッシュ23は、(図8に分かり易く描かれているように)第1のポインタ18及び第2のポインタ19が係合する留めトラック24を有している。
【0059】
留めトラック24は、ボール保持ディスク17に直接向かい合っている。留めトラック24の深さは、ポインタ18,19のうちのボール保持ディスク17から軸方向に露出している部分を収容するような深さである。
留めトラック24は、停止位置P1,P2,P3,P4,P5のうちの少なくとも一部を含む。具体的に述べると、留めトラック24は、第1のロー側停止位置P1、第2のロー側停止位置P2、第3のロー側停止位置P3および第2のアッパ側停止位置P5を含む。留めトラック24は、ボール保持ディスク17のポインタ18,19と係合する。
留めトラック24は、2つの第1のポインタ18のうちの1つのポインタ18が係合する第1の留め経路25、および2つの第2のポインタ19のうちの1つのポインタ19が係合する第2の留め経路26を含む。
【0060】
本発明の好適な実施形態では、第1の留め経路25が2つ設けられていて、それぞれの当該第1の留め経路25に1つの第1のポインタ18が係合しており、かつ、第2の留め経路26が2つ設けられていて、それぞれの当該第2の留め経路26に1つの第2のポインタ19が係合している。
2つの第1の留め経路25は、(図8に示す例のように)物理的に繋がっているか、あるいは、別体であり得る。
いずれにせよ、2つの第1の留め経路25は、図8に模式的に描かれているように一点一点比較して互いに同一であり且つ角度方向に180°ずれている。
同様に、2つの第2の留め経路26も、一点一点比較して互いに同一であり且つ角度方向に180°ずれている。
【0061】
以下の説明では、一方の第1又は第2の留め経路25,26のみについて言及するが、他方の第1又は第2の留め経路についても説明が当てはまるものと解釈されたい。
第2のアッパ側停止位置P5は、第1の留め経路25に形成されている。第2のアッパ側停止位置P5は、第1の留め経路25のうちの曲線部27(好ましくは、当該曲線部27は、約90°の曲率半径を有する)により形成されている。
第1のアッパ側停止位置P4は、第1の留め経路25の外部の、曲線部27から角度方向に離間していて且つ当該曲線部27と径方向に揃えられている凹所28に形成されている。
【0062】
第1の留め経路25は凹所28の径方向内側を通ってループを描き、当該ループの内側に凹所28が位置している。
第1のアッパ側停止位置P4は、第1の留め経路25に沿って進むことによっては到達できない。
第1の留め経路25は、さらに、第1のポインタ18がスライド可能に係合することができる自由スライド領域29を含む。自由スライド領域29は、第2のアッパ側停止位置P5と及び第1のアッパ側停止位置P4と径方向に揃えられている。
図8に示すように、第1のアッパ側停止位置P4は、第2のアッパ側停止位置P5と自由スライド領域29との間の周方向に位置している。
【0063】
第2の留め経路26は、第1の凹所30、第2の凹所31および扇形状部(circular sector)32から構成されており、これら第1の凹所30、第2の凹所31および扇形状部32は、互いに径方向に揃えられていると共に、第1のアッパ側停止位置P4を形成する凹所28とも径方向に揃えられている。
【0064】
第1の凹所30が第1のロー側停止位置P1を形成しており、第2の凹所31が第2のロー側停止位置P2を形成している。
扇形状部32のうちの、第2の凹所31に周方向に最も近接している第1の部位32aが、第3のロー側停止位置P3を形成している。
扇形状部32の第2の部位32bが、第2の留め経路26のうちの自由スライド領域を形成している。
【0065】
第1の凹所30と第2の凹所31とを隔てる角度方向距離および第2の凹所31と扇形状部32の第1の部位32aとを隔てる角度方向距離は、第1の留め経路25の曲線部27と第1のアッパ側停止位置P4を形成する凹所28とを隔てる角度方向距離よりも短い。
好ましくは、第1の凹所30と第2の凹所31とを隔てる角度方向距離および第2の凹所31と扇形状部32の第1の部位32aとを隔てる角度方向距離が、さらに、(第1のアッパ側停止位置P4を形成する)凹所28と第1のポインタ18用の自由スライド領域29とを隔てる角度方向距離よりも短い。
【0066】
なお、第1の凹所30、第2の凹所31、扇形状部32、第1のアッパ側停止位置P4を形成する凹所28、曲線部27、および第1のポインタ18用の自由スライド領域29が径方向に揃えられていない場合(図示せず)には、上述したような角度方向距離が、当該距離の算出対象となる2つの構成要素間を通る直線に沿った距離であると解釈されたい。
【0067】
既述したように、第1の角度方向Aへのケーブル巻取りブッシュ16の角度方向回転はフロントディレイラ300のダウンシフト動作に相当し、第2の角度方向Bへのケーブル巻取りブッシュ16の回転はフロントディレイラ300のアップシフト動作に相当する。
これに関して述べると、第2の制御レバー15は、休止位置から動作位置への間で回転軸心X回りの第2の角度方向Bに角度方向運動可能であり、かつ、当該動作位置から当該休止位置への間で回転軸心X回りの第1の角度方向Aに角度方向運動可能である。
【0068】
第2の制御レバー15は、前記休止位置から前記動作位置への移行ではケーブル巻取りブッシュ16と一体回転し、前記動作位置から前記休止位置への移行では、クラッチリンク機構(本質的に従来からのもの且つ既知のものなので図示せず)の存在によりケーブル巻取りブッシュ16に対して自由回転可能である。
第1の制御レバー14は、ボール保持ディスク17がケーブル巻取りブッシュ16と共に回転軸心X回りに第1の角度方向Aへと回転できるように当該ボール保持ディスク17に対して動作することにより、ダウンシフト動作を実現する。
第1の制御レバー14は、制御ピン12上で自由回転するようにディスク33(図1)に取り付けられており、かつ、回転軸心Xに向かって径方向に突設された歯部34を具備する。
ディスク33は、ケーシング11の窓部37(当該窓部37から、第1の制御レバー14が径方向に露出している)に形成されたアッパ側エンドストッパ35とロー側エンドストッパ36との間で、制御ピン12に対して相対回転することが可能である。
【0069】
ボール保持ディスク17は、径方向外表面に設けられた複数の突出部38a,38b,38cを具備する。複数の突出部38a,38b,38cは、第1の制御レバー14の歯部34により係合可能である。
歯部34は、ディスク33が第1の角度方向Aに回転することによって突出部38a,38b,38cに係合するように、かつ、ディスク33が第2の角度方向Bに回転することによって突出部38a,38b,38cから脱離するように、当該ディスク33に回転可能に取り付けられている。
好ましくは、3つの突出部38a,38b,38c(具体的には、第1の突出部38a、第2の突出部38bおよび第3の突出部38c)が存在している。
第1の制御レバー14を作動させることにより、歯部34がボール保持ディスク17を第1の角度方向Aに回転させる。ダウンシフト動作が行われると、第1の制御レバー14は例えばトーションスプリング(図示せず)等の弾性部材の作用によって初期位置に戻る。
【0070】
以下では、装置10の好適な動作について説明する。
第1のロー側停止位置P1(図2に示す状態)からのアップシフト動作時には、第2の制御レバー15を作動させることにより、ボール保持ディスク17が第2の角度方向Bへとインデクシングブッシュ23に対して回転する。
第2の制御レバー15を作動させる前の第2のポインタ19はそれぞれ、第2の留め経路26の第1のロー側停止位置P1に係合している。第1のポインタ18は、第1の留め経路25の自由スライド領域29に係合している(図2)。
この形態では、第1のロー側停止位置P1における第2のポインタ19の係合により、ケーブル巻取りブッシュ16が前記第1の角度方向位置に保持されている。
【0071】
第2の制御レバー15を作動させることにより、第2のポインタ19がそれぞれ第2のロー側停止位置P2に配置されて、ケーブル巻取りブッシュ16を新たな角度方向位置にロックさせる。第1のポインタ18は、第1の留め経路25の自由スライド領域29をスライドする(図3)。
第2の制御レバー15をさらに作動させることにより、第2のポインタ19がそれぞれ第3のロー側停止位置P3に配置されて、ケーブル巻取りブッシュ16を新たな角度方向位置にロックさせる。第1のポインタ18はそれぞれ、第1の留め経路25の自由スライド領域29をスライドする(図4)。
第2の制御レバー15をなおいっそう作動させると、第2のポインタ19が、図5に示すように第2の留め経路26の自由スライド領域32bへと移動する。
【0072】
第1のポインタ18はそれぞれ、第1の留め経路25をフォローし、第1のアッパ側停止位置P4を通り過ぎるループに沿って進んで第2のアッパ側停止位置P5に到達する(図5)。ケーブル巻取りブッシュ16は、前記最後の角度方向位置に到達し、第2のアッパ側停止位置P5への第1のポインタ18の係合によってこのような位置に保持される。
この位置からは、第1のアッパ側停止位置P4または第2のロー側停止位置P2に到達させることが可能である。
【0073】
第1のアッパ側停止位置P4(図6に示す状態)に到達させたい場合には、第1の制御レバー14が第1の角度方向Aへと作動される。
歯部34がボール保持ディスク17の第1の突出部38aに触れて(図5)、当該ボール保持ディスク17を第1の角度方向Aに回転させる。
第2のポインタ19はそれぞれ、第2の留め経路26の自由スライド領域32b内でスライドする。
【0074】
第1の角度方向Aへのボール保持ディスク17のこのような回転時に第1のポインタ18は、当該ポインタのスライドを妨げる、(第2のアッパ側停止位置P5を形成する)曲線部27により与えられるショルダー部27aに遭遇するので、第1の留め経路25を辿ることができない。第1のポインタ18はケーブル巻取りブッシュ16の動作により、強制的にショルダー部27aを乗り越えることで、当該ケーブル巻取りブッシュ16により加えられる回転に追従する。第1の留め経路25からの第1のポインタ18の脱離は、ボール保持ディスク17をインデクシングブッシュ23へと軸方向に押し付ける弾性部材(図示せず)により加えられる弾性力に抗して発生する。
【0075】
このような乗り越えにより、第1のポインタ18は、ボール保持ディスク17の溝20内の径方向外側位置に配されると共に、ケーブル巻取りブッシュ16が第1の角度方向Aに沿って回転することで周方向の軌道に沿って移動する。これにより、第1のポインタ18が第1のアッパ側停止位置P4に到達して、到達した角度方向位置にケーブル巻取りブッシュ16をロックさせる。
なお、第1の制御レバー14によりボール保持ディスク17に加えられる上記の回転は、第1のポインタ18が第1のアッパ側停止位置P4に到達するまで作動されて、そこで中断される。この加えられる回転のあいだ、第1の制御レバー14の歯部34は常にボール保持ディスク17の第1の突出部38aに当接している。
第1の制御レバー14が解放されると、当該第1の制御レバー14は(ボール保持ディスク17が、到達した角度方向位置にロックされたまま)第2の角度方向Bに回転する。
【0076】
図6に示すように、ボール保持ディスク17の第1の突出部38aと第2の突出部38bとを隔てる角度方向距離は、第1のポインタ18を第2のアッパ側停止位置P5から第1のアッパ側停止位置P4へと移動させるのに第1の制御レバー14が第2の角度方向Bに行う角度方向可動域よりも大きい。
言い換えれば、第2のアッパ側停止位置P5と第1のアッパ側停止位置P4とを隔てる(第1の角度方向Aに沿って測られる)角度方向距離は、ボール保持ディスク17の第2の突出部38bと第1の突出部38aとを隔てる(同じ方向の)角度方向距離よりも短い。
【0077】
第2のアッパ側停止位置P5から第2のロー側停止位置P2(図3に示す状態)に到達させたい場合にも、第1の制御レバー14が第1の角度方向Aへと作動される。
歯部34がボール保持ディスク17の第1の突出部38aに触れて(図5)、当該ボール保持ディスク17を第1の角度方向Aに回転させる。
前述したように、第2のポインタ19はそれぞれ、第2の留め経路26の自由スライド領域32b内でスライドする。
第1のポインタ18は、ショルダー部27aを乗り越えることでケーブル巻取りブッシュ16により加えられる回転に追従し、第1のアッパ側停止位置P4に到達する。
【0078】
第1の制御レバー14に対する作動を(当該第1の制御レバー14の歯部34がボール保持ディスク17の第1の突出部38aに係合したまま)続行することにより、第2のポインタ19が第3のロー側停止位置P3への到達を経て当該第3のロー側停止位置P3を通り越えて第2のロー側停止位置P2に到達し、当該第2のロー側停止位置P2にて第2のポインタ19がケーブル巻取りブッシュ16の回転をロックさせる(停止させる)(図3)。
これと同時に第1のポインタ18がそれぞれ、第1のアッパ側停止位置P4を形成する凹所28から脱出して第1の留め経路25の自由スライド領域29に進入する。
【0079】
第2のアッパ側停止位置P5から第2のロー側停止位置P2への移行時の、第1の制御レバー14によりボール保持ディスク17に加えられる回転は、当該制御レバー14がケーシング11に設けられたロー側エンドストッパ36に達するまで作動される。
第1の制御レバー14が解放されると、当該第1の制御レバー14は(ボール保持ディスク17が、到達した角度方向位置にロックされたまま)第2の角度方向Bに回転する。
図3に示すように、第2の角度方向Bへの第1の制御レバー14のこのような回転(当該回転は、第1の制御レバー14がアッパ側エンドストッパ35に達するまで続く)が、歯部34をボール保持ディスク17の第3の突出部38cに移動させる。
【0080】
ボール保持ディスク17の第1の突出部38aと第3の突出部38cとを隔てる角度方向距離は、アッパ側エンドストッパ35とロー側エンドストッパ36との間で第1の制御レバー14が行う角度方向運動量に略等しい。
言い換えれば、第2のアッパ側停止位置P5と第2のロー側停止位置P2とを隔てる(第1の角度方向Aに沿った)角度方向距離は、ボール保持ディスク17の第3の突出部38cと第1の突出部38aとを隔てる(同じ方向の)角度方向距離に略等しい。
【0081】
第2のロー側停止位置P2からは、第1の制御レバー14を第1の角度方向Aに作動させることにより、第1のロー側停止位置P1に到達することが可能である。第1の制御レバー14の歯部34が、ボール保持ディスク17の第3の突出部38cに係合させられる(図3)。これにより、ボール保持ディスク17が第1の角度方向Aに回転し、第1のロー側停止位置P1に到達する(図2)。
【0082】
なお、第1のロー側停止位置P1に到達した後の第1の制御レバー14の作動は、フロントディレイラ300のロー側エンドストッパ301(当該ロー側エンドストッパ301は、前記ディレイラ、したがって、制御装置10の、第1の角度方向Aへのそれ以上の変位を阻止する)により妨げられる。
なお、第1のアッパ側停止位置P4(図6)からの第1の制御レバー14の作動も、ボール保持ディスク17を第2のロー側停止位置P2(図3)へと移動させる。事実、第1の制御レバー14は、ボール保持ディスク17のどの突出部にも係合せずに、つまり、ボール保持ディスク17を回転させることなく第1の角度方向Aへの第1の運動量(excursion)を実施する。ボール保持ディスク17の回転は、(第2のアッパ側停止位置P5から第2のロー側停止位置P2への移行について既述した内容と同じく)歯部34がボール保持ディスク17の第1の突出部38aに触れることで始まる。
【0083】
当然ながら、当業者であれば、その時々の要件や偶発的な要件を満足するために、前述した本発明に、例えば前記第1の留め経路の曲線部にさらなる停止位置を設ける等のような様々な変更や変形を施すことが可能であり、いずれにせよこれら変更や変形の全ては添付の特許請求の範囲により定まる本発明の保護範囲に含まれる。
以下、本発明に含まれる態様を記す。
〔態様1〕伝動チェーンを第1の歯車(201)と当該第1の歯車(201)の径よりも小径である第2の歯車(202)との間で変位させるための、自転車のフロントディレイラ(300)の作動装置(10)であって、
前記フロントディレイラ(300)に対して動作可能に機能し、前記伝動チェーンが前記第2の歯車(202)に係合するときの第1のロー側停止位置(P1)及び第2のロー側停止位置(P2)を有するインデクサ(13)であって、前記第2のロー側停止位置(P2)は、前記フロントディレイラ(300)を前記第2の歯車(202)上のセンタに配置させるように構成されており、当該インデクサ(13)は、前記第1の歯車(201)との前記伝動チェーンの係合に対応する第1のアッパ側停止位置(P4)を備える、インデクサ(13)と、
前記インデクサ(13)を前記第1のロー側停止位置(P1)、前記第2のロー側停止位置(P2)、前記第1のアッパ側停止位置(P4)間で切り替えるように当該インデクサ(13)に対して動作可能に機能する、少なくとも1つの制御レバー(14)と、
を備え、前記制御レバー(14)の単一作動により、前記インデクサ(13)が前記第1のアッパ側停止位置(P4)から前記第2のロー側停止位置(P2)へと切り替えられる、作動装置(10)。
〔態様2〕態様1に記載の作動装置(10)において、前記インデクサ(13)は、前記伝動チェーンが前記第2の歯車(202)に係合するときの第3のロー側停止位置(P3)を備えており、前記第2のロー側停止位置(P2)が、前記第1のロー側停止位置(P1)と前記第3のロー側停止位置(P3)との間に配置されている、作動装置(10)。
〔態様3〕態様1または2に記載の作動装置(10)において、前記インデクサ(13)は、前記伝動チェーンが前記第1の歯車(201)に係合するときの第2のアッパ側停止位置(P5)を有し、前記第1のアッパ側停止位置(P4)に対して、当該第2のアッパ側停止位置(P5)のほうが前記第2のロー側停止位置(P2)から遠くにあり、前記制御レバー(14)の単一作動が、前記インデクサ(13)を前記第2のアッパ側停止位置(P5)から前記第2のロー側停止位置(P2)へと切り替える、作動装置(10)。
〔態様4〕態様2に従属する場合の態様3に記載の作動装置(10)において、前記第1のアッパ側停止位置(P4)は、前記第2のアッパ側停止位置(P5)からのみ到達可能である、作動装置(10)。
〔態様5〕態様1から4のいずれか一態様に記載の作動装置(10)において、前記少なくとも1つの制御レバー(14)によって回転軸心(X)回りに、前記インデクサ(13)の第2のアッパ側停止位置(P5)に対応する最後の角度方向位置から前記インデクサ(13)の前記第1のロー側停止位置(P1)に対応する第1の角度方向位置への間で第1の角度方向(A)に、および前記第1の角度方向位置から前記最後の角度方向位置への間で第2の角度方向(B)に、回転するように作動される、ケーブル巻取りブッシュ(16)、
を備え、前記インデクサ(13)が、
前記ケーブル巻取りブッシュ(16)と一体回転し、少なくとも1つのポインタ(18,19)を具備する、ボール保持ディスク(17)、および
前記ポインタ(18,19)が係合する留めトラック(24)が設けられたインデクシングブッシュ(23)であって、前記留めトラック(24)が、前記ボール保持ディスク(17)を一部の前記ロー側及びアッパ側停止位置(P1,P2,P3,P4,P5)に停止させるために、少なくとも一部の前記ロー側及びアッパ側停止位置(P1,P2,P3,P4,P5)を含む、インデクシングブッシュ(23)、を備える、作動装置(10)。
〔態様6〕態様5に記載の作動装置(10)において、前記留めトラック(24)が、第1の留め経路(25)および第2の留め経路(26)を含み、前記ボール保持ディスク(17)が、前記第1の留め経路(25)に係合する第1のポインタ(18)および前記第2の留め経路(26)に係合する第2のポインタ(19)を具備する、作動装置(10)。
〔態様7〕態様6に記載の作動装置(10)において、前記第2のポインタ(19)のサイズが、前記第1のポインタ(18)よりも小さい、作動装置(10)。
〔態様8〕態様3に従属する場合の態様5から7のいずれか一態様に記載の作動装置(10)において、前記第1のロー側停止位置(P1)と前記第2のロー側停止位置(P2)、および前記第2のロー側停止位置(P2)と第3のロー側停止位置(P3)が、前記第1のアッパ側停止位置(P4)と前記第2のアッパ側停止位置(P5)とを隔てる角度よりも小さい角度で角度方向に互いに離間している、作動装置(10)。
〔態様9〕態様3に従属する場合の態様6または7に記載の作動装置(10)において、前記第1(P1)、第2(P2)および第3(P3)のロー側停止位置が前記第2の留め経路(26)に形成されており、前記第2のアッパ側停止位置(P5)が前記第1の留め経路(25)に形成されている、作動装置(10)。
〔態様10〕態様6または7に記載の作動装置(10)において、前記第1のアッパ側停止位置(P4)が、前記第1の留め経路(25)の外部に形成されており、かつ、前記第2のアッパ側停止位置(P5)と径方向に揃えられている、作動装置(10)。
〔態様11〕態様3に従属する場合の態様9または10に記載の作動装置(10)において、前記第1の留め経路(25)が、前記第1のポインタ(18)用の自由スライド領域(29)を含み、前記第1のポインタ(18)は、前記第2のポインタ(19)が前記第1、第2または第3のロー側停止位置(P1,P2,P3)にあるときに前記自由スライド領域(29)に係合する、作動装置(10)。
〔態様12〕態様9、10または11に記載の作動装置(10)において、前記第2の留め経路(26)が、前記第2のポインタ(19)用の自由スライド領域(32b)を含み、前記第2のポインタ(19)は、前記第1のポインタ(18)が前記第1のアッパ側停止位置(P4)または前記第2のアッパ側停止位置(P5)にあるときに前記自由スライド領域(32b)に係合する、作動装置(10)。
〔態様13〕態様4から12のいずれか一態様に記載の作動装置(10)において、当該作動装置(10)が、前記ケーブル巻取りブッシュ(16)を前記第1の角度方向(A)に回転させる第1の制御レバー(14)、および前記ケーブル巻取りブッシュ(16)を前記第2の角度方向(B)に回転させる第2の制御レバー(15)を備え、前記第1の制御レバー(14)は、前記ボール保持ディスク(17)に対して直接的に動作する、作動装置(10)。
〔態様14〕態様13に記載の作動装置(10)において、前記ボール保持ディスク(17)が、前記第1の制御レバー(14)の歯部(34)により係合可能である複数の突出部(38a,38b,38c)を具備しており、前記ボール保持ディスク(17)は、前記第1の角度方向(A)への前記第1の制御レバー(14)の作動時に前記歯部(34)が前記突出部(38a,38b,38c)のうちの一つに係合することによって前記第1の角度方向(A)に回転する、作動装置(10)。
〔態様15〕態様14に記載の作動装置(10)において、前記第1の制御レバー(14)が、前記回転軸心(X)回りにアッパ側エンドストッパ(35)とロー側エンドストッパ(36)との間で回転可能であり、前記アッパ側エンドストッパ(35)と前記ロー側エンドストッパ(36)とを隔てる角度方向距離が、前記第2のアッパ側停止位置(P5)と前記第2のロー側停止位置(P2)との間の角度方向距離に等しい、作動装置(10)。
【符号の説明】
【0084】
10 作動装置
11 ケーシング
12 センタピン
13 インデクサ
14 第1の制御レバー
15 第2の制御レバー
16 ケーブル巻取ブッシュ
17 ボール保持ディスク
18 第1のポインタ
19 第2のポインタ
20 径方向溝
21 ばね
22 収容部
23 インデクシングブッシュ
24 留めトラック
25 第1の留め経路
26 第2の留め経路
27 曲線部
27a ショルダー部
28 凹所
29 自由スライド領域
30 第1の凹所
31 第2の凹所
32 扇型形状部
32a 扇型形状部の第1の部位
32b 扇型形状部の第2の部位
33 ディスク
34 歯部
35 アッパ側エンドストッパ
36 ロー側エンドストッパ
37 ケーシングの窓部
38a 突出部
38b 突出部
38c 突出部
100 作動装置
101 ブレーキレバー
200 クランクセット
201 第1の歯車
202 第2の歯車
300 フロントディレイラ
301 ロー側エンドストッパ
302 アッパ側エンドストッパ
P1 第1のロー側停止位置
P2 第2のロー側停止位置
P3 第3のロー側停止位置
P4 第1のアッパ側停止位置
P5 第2のアッパ側停止位置
A 第1の角度方向
B 第2の角度方向
X 回転軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9