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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】梱包方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/05 20060101AFI20221111BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20221111BHJP
   B65D 81/15 20060101ALI20221111BHJP
   B65D 81/09 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
B65D81/05
B33Y40/00
B65D81/15
B65D81/09
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018142824
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2019055819
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2017178834
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】514287708
【氏名又は名称】株式会社グラフィッククリエーション
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】八角 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】原 浩文
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000971(JP,A)
【文献】特公昭51-029077(JP,B1)
【文献】米国特許第03667593(US,A)
【文献】特開2015-150437(JP,A)
【文献】特開2015-228071(JP,A)
【文献】特開2004-071427(JP,A)
【文献】中国実用新案第206606556(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/05
B33Y 40/00
B65D 81/15
B65D 81/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的な物体である立体物を梱包する梱包方法であって、
前記立体物を収容する容器である収容容器と、前記収容容器内に充填される物質である充填材とを用い、前記立体物の周囲が前記充填材に囲まれるように前記収容容器内に前記立体物と前記充填材とを収容する収容段階と、
前記収容容器内の少なくとも一部の前記充填材が前記立体物に対して相対的に動かなくなるようにする段階であり、前記立体物の周囲の前記充填材について、前記立体物と接した状態で前記立体物に対する相対位置を固定することで、少なくとも前記立体物と接している前記充填材について、予め設定された大きさ以下の衝撃を前記収容容器が受けた場合にも前記立体物に対して相対的に動かなくなるようにする充填材位置固定段階と
を備え
衝撃を緩衝するクッション性の緩衝材を更に用い、前記立体物の周囲が前記充填材に囲まれるように前記充填材を充填すると共に、前記収容容器内における前記充填材の外側に前記緩衝材を設置することを特徴とする梱包方法。
【請求項2】
前記充填材は、粉体又は粒体であり、
前記充填材位置固定段階において、前記収容容器内の前記充填材を細密充填とすることにより、少なくとも前記立体物と接している前記充填材について、前記衝撃を前記収容容器が受けた場合にも前記立体物に対して相対的に動かなくなるようにすることを特徴とする請求項1に記載の梱包方法。
【請求項3】
前記収容段階において、前記充填材の合間の少なくとも一部に液体を更に充填することを特徴とする請求項2に記載の梱包方法。
【請求項4】
前記充填材は、寸法が2mm以下の粉体又は粒体であることを特徴とする請求項2又は3に記載の梱包方法。
【請求項5】
前記収容容器は、一定形状の容器であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の梱包方法。
【請求項6】
前記充填材として、シリカゲルの粒子を用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の梱包方法。
【請求項7】
前記充填材として、片栗粉を用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の梱包方法。
【請求項8】
前記充填材として、中空樹脂を用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の梱包方法。
【請求項9】
前記充填材として、パーライト又はバーミキュライトを用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の梱包方法。
【請求項10】
前記収容段階において、液体の状態の前記充填材を前記収容容器内に充填し、
前記充填材位置固定段階において、前記充填材を固体の状態に相変化させることを特徴とする請求項1に記載の梱包方法。
【請求項11】
立体的な物体である立体物を梱包する梱包方法であって、
前記立体物を収容する容器である収容容器と、前記収容容器内に充填される物質である充填材とを用い、前記立体物の周囲が前記充填材に囲まれるように前記収容容器内に前記立体物と前記充填材とを収容する収容段階と、
前記収容容器内の少なくとも一部の前記充填材が前記立体物に対して相対的に動かなくなるようにする段階であり、前記立体物の周囲の前記充填材について、前記立体物と接した状態で前記立体物に対する相対位置を固定することで、少なくとも前記立体物と接している前記充填材について、予め設定された大きさ以下の衝撃を前記収容容器が受けた場合にも前記立体物に対して相対的に動かなくなるようにする充填材位置固定段階と
を備え、
前記収容段階において、液体の状態の前記充填材を前記収容容器内に充填し、
前記充填材位置固定段階において、前記充填材を固体の状態に相変化させ、
前記充填材として、油脂を用い、
前記収容段階において、前記油脂の温度を前記油脂が液体になる温度にして、前記油脂を前記収容容器内に充填し、
前記充填材位置固定段階において、前記油脂の温度を前記油脂が固体になる温度に低下させることにより、前記油脂を固体の状態に相変化させることを特徴とする梱包方法。
【請求項12】
前記立体物は、造形装置で造形を行った造形物であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の梱包方法。
【請求項13】
前記収容容器の外側を覆う部材である外装部材と、前記収容容器の周囲に設置される緩衝材である容器用緩衝材とを用い、前記収容容器の周囲の少なくとも一部が前記容器用緩衝材と接するようにして、前記外装部材により前記収容容器と前記容器用緩衝材とを覆う外装段階を更に備えることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の梱包方法。
【請求項14】
立体的な物体である立体物を梱包する梱包方法であって、
前記立体物を収容する容器である収容容器と、前記収容容器内に充填される粉体又は粒体である充填材とを用い、前記立体物の周囲が前記充填材に囲まれるように前記収容容器内に前記立体物と前記充填材とを収容する収容段階と、
前記立体物の周囲の前記充填材について、前記立体物と接した状態で前記立体物に対する相対位置を固定する充填材位置固定段階とを備え
衝撃を緩衝するクッション性の緩衝材を更に用い、前記立体物の周囲が前記充填材に囲まれるように前記充填材を充填すると共に、前記収容容器内における前記充填材の外側に前記緩衝材を設置することを特徴とする梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な立体的形状の造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が普及しつつある。このような造形装置においては、例えば、積層造形法等の様々な方法で造形物を造形する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-71282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
造形装置で造形物を造形した場合、造形の完了後に、他の場所へ輸送(運送)することが必要になる場合がある。そして、この場合、造形物の形状によっては、例えば輸送時の衝撃の影響を抑えるために、梱包箱等を用いて造形物を梱包することが必要になる。また、この場合、輸送中に梱包箱に衝撃が加えられて造形物が揺れ動いた場合にも造形物が破損することを防ぐために、衝撃を緩衝する緩衝材(クッション材)が用いられる場合がある。また、このような緩衝材としては、例えば、ポリエチレン製気泡緩衝材、ポリウレタン発泡緩衝材、スポンジ等が使用される。そして、このような方法は、実際、ある程度有効である。
【0005】
しかし、様々な形状の造形物を輸送する実験等を本願の発明者らが実際に行ったところ、例えば微細な構造の部分を有する造形物(例えば、薄い造形物や細い造形物等)のように、破損しやすい造形物を輸送する場合には、上記のような緩衝材を用いて梱包を行ったとしても、造形物の破損を十分に防げない場合があることを見出した。また、本願の発明者は、このような破損が生じる原因について、例えば、上記のような緩衝材を用いる場合に、輸送時の衝撃等で緩衝材や造形物がわずかに動き、緩衝材が部分的に強く造形物に押しつけられるためであることを見出した。また、このような緩衝材や造形物のわずかな動きは、強い衝撃を受けた場合に限らず、緩衝材と造形物の間の配置の不均一さに依る静的な圧力の部分的なバラツキや、輸送の前後や長期保管でのわずかな動作等に起因して生じる場合もある。そのため、この場合、例えば輸送の前後や長期保管で造形物の微細な構造部分が破損すること等も考えられる。また、その結果、輸送中に限らず、造形物が破損の危険にさらされることになる。
【0006】
これに対し、例えば緩衝材としてポリウレタン発泡緩衝材を用いる場合には、膨らんで造形物を梱包箱内で固定する構成であるため、梱包箱内での緩衝材や造形物の動きは生じ難い。しかし、この場合、ポリウレタン発泡緩衝材が膨らむタイミングや、輸送後に緩衝材を取り除くタイミングにおいて、造形物に部分的に強い力が加わることになる。その結果、微細な構造の部分を有する造形物等に対しては、破損の原因となりやすいと考えられる。また、この場合、例えば造形物が樹脂等で形成されていると、発泡時の発熱の影響で造形物が変形するおそれもある。
【0007】
また、例えば石膏を材料にして製作した造形物等の場合には、その脆さから、上記のような緩衝材を用いても破損が特に生じやすくなる。また、造形装置で造形する造形物は、通常、量産品ではない。そのため、輸送用のブリスターケースのような部材を製作することも、通常、費用面で困難である。また、造形装置においては、造形中の造形物の周囲を支えるサポート層を形成しつつ造形物を造形する場合もある。そして、この場合、サポート層を残したままで造形物を輸送すれば、造形物の破損を生じ難くできるとも考えられる。しかし、この場合、輸送された造形物を受け取る側(例えば、顧客側)でサポート層の除去を行うことが必要になり、造形物を受け取る側に大きな負担をかけることになる。
【0008】
また、上記のような問題は、造形装置で造形した造形物の輸送時に限らず、様々な立体物(オブジェクト)を梱包する場合にも同様に生じる。そのため、従来、より適切な方法で立体物を梱包することが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明者は、造形物等の立体部が梱包された状態で破損する原因について、更に鋭意研究を行った。具体的には、例えば、立体物を輸送する実験等を繰り返して行い、輸送中や梱包中に破損した状況の確認等を行った。そして、その確認結果等に基づき、梱包箱内で周囲の緩衝材に対して造形物が動くことが破損の原因になりやすいことを見出した。また、このような知見に基づき、梱包箱内で造形物やその周囲の物が相対的に動かなければ破損が生じ難いと考えた。そして、このような条件を満たすために、例えば、粉体又は粒体(粉状又は粒子状)の充填材で満たした梱包箱内に造形物を完全に埋没させ、例えば一方向から圧力をかけることで、造形物に対する充填材の相対位置を固定することを考えた。この場合、梱包箱からの反発を利用することで、作用反作用の法則により、造形物が全方位から圧迫を受けることになる。また、この圧迫により、造形物やその周囲の充填材は、梱包箱内で相対的に動かなくなる。
【0010】
また、梱包された造形物の破損は、造形物における破損しやすい部分が一方向から圧迫を受ける場合に特に生じやすくなると考えられる。これに対し、このように造形物を梱包した場合、造形物が全方位から同じ力で圧迫を受けることにより、造形物の破損をより適切に防ぐことができる。更に、本願の発明者は、このような条件で梱包した造形物を運搬する実験を繰り返し、破損を防ぐ効果が適切に得られることを確認した。また、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、立体的な物体である立体物を梱包する梱包方法であって、前記立体物を収容する容器である収容容器と、前記収容容器内に充填される物質である充填材とを用い、前記立体物の周囲が前記充填材に囲まれるように前記収容容器内に前記立体物と前記充填材とを収容する収容段階と、前記収容容器内の少なくとも一部の前記充填材が前記立体物に対して相対的に動かなくなるようにする段階であり、前記立体物の周囲の前記充填材について、前記立体物と接した状態で前記立体物に対する相対位置を固定することで、少なくとも前記立体物と接している前記充填材について、予め設定された大きさ以下の衝撃を前記収容容器が受けた場合にも前記立体物に対して相対的に動かなくなるようにする充填材位置固定段階とを備える。
【0012】
このように構成した場合、例えば、収容容器内で充填材が立体物に対して動かなくすることにより、例えば、立体物や充填材が収容容器内で動くことを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、運搬時等に収容容器が衝撃を受けた場合にも、立体物の破損を適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、立体物を適切に梱包することができる。
【0013】
ここで、収容容器が受ける衝撃について、予め設定された大きさ以下の衝撃とは、例えば、求められる耐衝撃性に応じて設定される上限以下の衝撃のことである。また、この方法において、立体物の周囲が充填材に囲まれるとは、例えば充填材の中に立体物が埋没することで、立体物の周囲の全体が充填材に囲まれることである。充填材としては、例えば、立体物と接触しても立体物に強固に付着せず、立体物からの除去が容易なものを用いることが好ましい。また、立体物の形状等によっては、例えば衝撃等により壊れやすい部分(立体物の一部)のみを保護すればよい場合もある。そして、このような場合、立体物の一部のみが充填材に埋没するように梱包を行うことも考えられる。この場合、立体物の周囲が充填材に囲まれることについて、立体物の一部の周囲が充填材に囲まれる状態等と考えることもできる。
【0014】
また、充填材としては、例えば粉体又は粒体等を用いることが考えられる。この場合、乾燥した粉体や粒体を用いることが好ましい。また、より具体的に、充填材としては、シリカゲルや片栗粉を用いることが考えられる。また、充填材として、砂等を用いることも考えられる。また、充填材としては、これらに限らず、シリカゲル以外の乾燥剤や、様々な有機材料や無機材料等を用いることが考えられる。例えば、充填材として、パーライト又はバーミキュライトを用いること等も考えられる。また、充填材としては、1種類の充填材に限らず、複数種類の充填材を併用して用いてもよい。また、充填材としては、例えば、中空樹脂を用いること等も考えられる。また、充填材として粉体又は粒体を用いる構成については、例えば、複数(多数)の材料からなる充填材を用いる構成等と考えることもできる。このような構成により、例えば、立体物と接している充填材について、衝撃を収容容器が受けた場合にも立体物に対して動かなくすることができる。また、これらの特徴に着目した場合、充填材位置固定段階の動作については、例えば、流動性を示す充填材について、立体物と接した状態で立体物に対する相対位置を固定する動作等を考えることもできる。また、この場合、粉体や粒体としては、流動性を示す性質の粉体や粒体を用いることが好ましい。粉体や粒体が流動性を示すとは、例えば、多数の粉体や粒体が集合体として流動性を示すことである。また、この場合、粉体や粒体が流動性を示すことにより、例えば、充填時に立体物の周囲に隙間無く充填材が充填されることになる。また、その結果、外部からの衝撃による立体物の部分的な動きが抑制され、立体物の破損を適切に防ぐことができる。尚、充填材の一部については、例えば樹脂、金属、木片等の固形物で置き換えてもよい。この場合、固形物については、立体物に接触しない範囲で十分に離れた位置に充填することが好ましい。
【0015】
また、この場合、収容容器としては、例えば、一定形状の容器を好適に用いることができる。一定形状の容器とは、例えばビニール袋等のように変形自在な容器ではなく、中身が空の状態でも一定の形状を保つ容器(固い容器)のことである。また、少なくとも充填材位置固定段階の動作を行った後において、収容容器内の充填材については、細密充填の状態にすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、少なくとも立体物と接している充填材について、衝撃を収容容器が受けた場合にも立体物に対して相対的に動かない状態を適切に実現できる。また、充填材としては、非弾性体を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、充填材に潰れ等を生じさせることなく、立体物との間に空間を形成せずに、細密充填での充填を適切に行うことができる。また、この場合、梱包用の公知の緩衝材等を利用して充填材に対して圧力を加えることが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、収容容器内において外側から充填材に接するように緩衝材等を更に収容容器内に収容して、緩衝材等を圧縮する力を加えることで、緩衝材等を介して充填材に圧力を加えることができる。また、この場合、緩衝材等としては、例えば、ポリエチレン製緩衝材、ポリウレタン発泡緩衝材、スポンジ、エアークッション、綿等を好適に用いることができる。また、この場合、例えば、一方向から充填材を圧迫するように緩衝材等を設置することが好ましい。このように構成すれば、例えば、収容容器内の充填材に適切に圧力を加えることができる。
【0016】
また、立体物の破損等をより適切に防ぐためには、充填材の寸法(サイズ)について、立体物における壊れやすい部分の寸法に対して十分に小さくすることが好ましい。より具体的に、この場合、例えば立体物における壊れやすい部分の寸法が2mm程度である場合には、充填材として、寸法が2mm以下の粉体又は粒体等を用いることが好ましい。この場合、粉体又は粒体等の充填材の寸法とは、例えば、平均寸法のような、統計的に求められる実質的な寸法のことである。また、このような方法で梱包を行う場合、輸送用のブリスターケース等を用いることなく立体物を適切に梱包できるため、様々な形状の立体物を低コストで適切に梱包することが可能になる。そのため、梱包対象の立体物としては、例えば、造形装置(三次元造形装置)で造形を行った造形物等を好適に用いることができる。また、より具体的に、この場合、造形装置としては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることでインクジェット積層方式での造形を行う造形装置や、紛体積層方式で造形を行う造形装置等を好適に用いることができる。
【0017】
また、この梱包方法での具体的な梱包の仕方等については、上記に限らず、様々な変形を行うことも可能である。例えば、収容段階において、充填材の合間の少なくとも一部に液体を更に充填すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、充填材の隙間を液体で満たすことで、収容容器の中身の移動をより適切に防ぐことができる。また、立体物の破損をより確実に防ぐためには、例えば、収容容器の外側を覆う部材である外装部材と緩衝材とを用いて、多重の梱包を行うこと等も考えられる。この場合、例えば、収容容器の周囲の少なくとも一部が緩衝材と接するようにして、外装部材により収容容器と緩衝材とを覆う外装段階の動作を更に行うこと等が考えられる。
【0018】
また、充填材としては、粉体や粒体以外の構成を用いることも考えられる。この場合、例えば、梱包の動作の中で液体の状態から固体の状態に相変化する物質等を用いることが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、収容段階において、液体の状態の充填材を収容容器内に充填する。そして、充填材位置固定段階において、充填材を固体の状態に相変化させることが考えられる。このようにした場合も、立体物の輸送時において、立体物や充填材が収容容器内で動くことを適切に防ぐことができる。また、これにより、立体物の破損を適切に防ぐことができる。また、このような充填材としては、例えば油脂等を用いることが考えられる。この場合、収容段階において、例えば、油脂の温度を油脂が液体になる温度にして、油脂を収容容器内に充填する。そして、充填材位置固定段階において、例えば、油脂の温度を油脂が固体になる温度に低下させることにより、油脂を固体の状態に相変化させる。また、このような油脂としては、例えばラード、マーガリン等の食用の油脂や、各種の工業用の油脂等を用いることが考えられる。これらの材料としては、立体物に対して含浸、溶解、変色などの悪影響を及ぼさない材料を用いることが考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば、立体物を適切に梱包することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る梱包方法の一例について説明をする図である。図1(a)は、本例における梱包の対象物や梱包に用いる部材の一例を示す。図1(b)は、造形物50、充填材120、及び緩衝材140を収容容器100内に収容する動作について説明をする図である。図1(c)は、造形物50、充填材120、及び緩衝材140を収容容器100内に収容して蓋106を閉めた状態について説明をする図である。
図2】梱包方法の変形例について説明をする図である。図2(a)~(c)は、梱包方法の様々な変形例を示す。
図3】梱包方法の更なる変形例について説明をする図である。図3(a)~(c)は、本変形例の特徴について、図1(a)~(c)と同様の事項を示す。
図4】本願の発明者が行った実験について説明をする図である。図4(a)は、粉体の充填材120を用いて梱包を行う梱包形態で行った輸送試験について説明をする図である。図4(b)は、比較実験について説明をする図である。
図5】様々な充填材120を用いて行った実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る梱包方法の一例について説明をする図である。図1(a)は、本例における梱包の対象物や梱包に用いる部材の一例を示す。本例の梱包方法は、立体物の一例である造形物50を輸送する場合や長期保管のために造形物50を梱包する方法であり、収容容器100、充填材120、及び緩衝材140を用いて、造形物50を梱包する。この場合、梱包とは、例えば、輸送や長期保管のために対象物を包装することである。立体物とは、立体的な物体のことである。
【0022】
また、図1(a)に示す構成のうち、造形物50は、造形装置(三次元造形装置)で造形を行った立体物である。この場合、造形装置としては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることでインクジェット積層方式での造形を行う造形装置や、紛体積層方式で造形を行う造形装置等を好適に用いることができる。また、以下において詳しく説明をするように、本例においては、造形物50の破損を防ぐように、梱包を行う。そのため、造形物50としては、例えば、壊れやすい部分を有する造形物を用いることが考えられる。より具体的に、造形物50としては、例えば、厚さが10mm以下(例えば、1~10mm程度)の薄い部分を有する造形物を用いてもよい。また、造形物50における壊れやすい部分の厚さは、例えば5mm以下(例えば、1~5mm程度)であってもよい。また、以下において説明をする梱包の対象物としては、造形物50以外の立体物を用いることも考えられる。より具体的には、例えば、輸送中の破損が心配される模型などを輸送する場合において、模型を梱包の対象物にしてもよい。
【0023】
また、図1(a)に示す構成のうち、収容容器100、充填材120、及び緩衝材140は、造形物50の梱包に用いる部材の一例である。また、これらのうち、収容容器100は、梱包時に造形物50を収容する容器(包装容器)である。また、本例において、収容容器100は、一定形状の容器である。この場合、一定形状の容器とは、例えばビニール袋等のように変形自在な容器ではなく、中身が空の状態でも一定の形状を保つ容器(固い容器)のことである。また、収容容器100について、一定形状であるとは、梱包において必要とされる精度に応じて、実質的に一定形状であることであってよい。この場合、以下において説明をするように充填材120を充填した状態で十分に一定形状を保つことが可能であれば、例えば充填材120の充填の前後で、ある程度の変形等が生じていてもよい。また、より具体的に、本例において、収容容器100は、底面102、側面104、及び蓋106を有する箱状の容器である。この場合、底面102及び側面104は、造形物50等を収容する収容容器100の本体部分を構成する面である。また、蓋106は、収容容器100の本体部分の上方を覆う部材である。収容容器100としては、例えば、プラスチック、ガラス、金属、木材又はこれらの組み合わせの材質の容器等を好適に用いることができる。
【0024】
充填材120は、造形物50の梱包時に収容容器100内に充填される物質であり、造形物50と共に収容容器100内に収容されることにより、収容容器100内に余分な隙間ができないように、例えば、収容容器100内に細密充填で充填される。この場合、充填材120が細密充填で充填されるとは、例えば、単位体積に含まれる充填材120の容積が充填材の形状等に応じて決まる最大の容積になるように充填されることである。この場合、単位体積に含まれる充填材120の容積とは、単位体積の中で充填材120が占めている部分の体積のことである。また、充填材120の容積について、充填材120の形状等に応じて決まる最大の容積とは、例えば、充填材120に潰れ等が生じない状態での最大の容積のことである。また、この場合、充填材120として、非弾性体を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、充填材120に潰れ等を生じさせることなく、また、造形物50との間に空間を形成することなく、細密充填での充填を適切に行うことができる。また、充填材120は細密充填で充填された状態については、例えば、造形物50に対して相対的に充填材120が動く隙間を実質的に開けずに、造形物50の周囲の充填材120が造形物50に密着するように充填材120を充填した状態等と考えることもできる。また、図示は省略するが、充填材120の容積の一部については、樹脂、金属、木片等の固形物で置き換えてもよい。この場合、固形物については、造形物50に接触しない範囲で十分に離れた位置に充填することが好ましい。更に、収容容器100において充填材120が充填されている領域内(充填材120の容積内)には、複数個の造形物50を収容してもよい。
【0025】
また、本例においては、このような充填材120として、例えば、粉体又は粒体を用いる。また、粉体や粒体としては、流動性を示す性質の粉体や粒体を用いる。粉体や粒体が流動性を示すとは、例えば、多数の粉体や粒体が集合体として流動性を示すことである。また、充填材120としては、例えば、造形物50と接触しても造形物50に強固に付着せず、造形物50からの除去が容易なものを用いることが好ましい。そして、このような観点で考えた場合、充填材120としては、乾燥した粉体や粒体を用いることが好ましい。また、より具体的に、本例において、充填材120としては、例えばシリカゲルの粒体(シリカゲルの粒子)を用いる。
【0026】
この場合、例えば、造形物50に対して充填材120が強固に付着しないため、輸送後に収容容器100から造形物50を取り出す取り出し時において、水洗い等を行わなくても、例えば柔らかい刷毛等で充填材120を取り除くことで、余分な充填材120が付着しない状態で造形物50を適切に取り出すことができる。また、シリカゲルは、毒性を有しておらず、一般廃棄も可能である。そのため、充填材120としてシリカゲルを用いた場合、例えばこの点でも、必要な輸送等を行った後に充填材120の除去を容易かつ適切に行うことができる。また、この場合、充填材120が収容容器100内の水分を吸収するため、例えば吸湿により膨潤、変質、腐敗、又は変色等が生じる造形物50を梱包する場合にも、このような問題の発生を適切に防ぐことができる。また、シリカゲルは、比較的安価で入手可能であり、かつ、加熱乾燥を行うことで繰り返し使用可能である。そのため、この場合、充填材120のコストを適切に低減することもできる。
【0027】
ここで、本例のように粒体の充填材120を用いる場合において、梱包時や梱包後に造形物50が破損することを防ぐためには、充填材120の寸法(粒体のサイズ、粒子の直径)について、造形物50における壊れやすい部分の寸法に対して十分に小さくすることが好ましい。この場合、造形物50における壊れやすい部分の寸法に対して充填材120のサイズを十分に小さくするとは、例えば、造形物50における最も薄い部分の厚さや、最も細い部分の幅よりも充填材120のサイズを小さくすることである。また、より具体的に、充填材120の寸法については、例えば2mm以下にすることが好ましい。この場合、充填材120の寸法とは、例えば、充填材120として用いる各粒体において直線距離が最も長い部分の長さのことである。また、充填材120の寸法は、例えば、平均寸法のような、統計的に求められる実質的な寸法のことであってよい。また、充填材120の寸法については、例えば、設計上の標準の寸法等と考えることもできる。また、実用上、寸法が2mm以下の充填材120を用いるとは、収容容器内に充填される多数の充填材120のうち、重量比で90%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上)の充填材120の寸法が2mm以下であればよい。また、充填材120の寸法は、更に好ましくは、1mm以下である。また、本例において、収容容器100への充填を行うまでの間、充填材120は、例えば袋等の密封容器内に保管されている。そして、造形物50の梱包時には、必要な量が、収容容器100内へ充填される。
【0028】
尚、充填材120の好ましい寸法の上限については、梱包の対象物である造形物50の材料強度や微細さによって変化すると考えられる。また、この場合、造形物50の破損を防ぐという観点で考えた場合の理論上は、充填材120の寸法については、小さい程好ましいと考えられる。また、充填材120の特徴については、図1(b)、(c)等を用いて、以下において更に詳しく説明をする。
【0029】
緩衝材140は、造形物50及び充填材120と共に収容容器100内に収容される緩衝性の部材である。また、本例において、緩衝材140は、収容容器100内において外側から充填材120に接するように設置されて、充填材120に圧力を加えるために用いられる。緩衝材140としては、梱包用に用いられている公知の緩衝材を好適に用いることができる。より具体的に、緩衝材140としては、例えば、ポリエチレン製緩衝材、ポリウレタン発泡緩衝材、スポンジ、エアークッション、綿、ゴム板等を好適に用いることができる。緩衝材140により充填材120に圧力を加える動作についても、図1(b)、(c)等を用いて、以下において更に詳しく説明をする。
【0030】
図1(b)は、造形物50、充填材120、及び緩衝材140を収容容器100内に収容する動作について説明をする図である。この場合、造形物50等を収容容器100内に収容する動作は、収容段階の動作の一例である。また、本例においては、例えば図中に示すように、造形物50の周囲が充填材120に囲まれるように収容容器100内に造形物50及び充填材120を収容する。この場合、造形物50の周囲が充填材120に囲まれるとは、例えば、充填材120の中に造形物50が埋没することで、造形物50の周囲の全体が充填材120に囲まれることである。また、図1(b)においては、図示の便宜上、造形物50が収容されている収容容器100の断面を示すことで、造形物50が見えるように収容容器100の中の状態を図示している。しかし、実際の梱包時には、例えば透光性の収容容器100を用いた場合にも収容容器100の外側から造形物50が見えないように、充填材120により収容容器100の周囲を囲む。
【0031】
また、上記においても説明をしたように、本例において、充填材120としては、シリカゲルの粒体を用いる。この場合、例えば、充填材120を収容容器100内へ流し込むことで収容容器100の底面からある程度の高さにまで充填材120を充填した後に、その上に造形物50を設置する。そして、その上から更に充填材120を追加することが考えられる。また、この場合、造形物50を設置した後においては、充填材120を流し込む勢いで造形物50の破損等が生じないように、十分に静かに充填材120を追加することが好ましい。
【0032】
また、本例においては、収容容器100内に造形物50及び充填材120を収容した後に、充填材120の上に、緩衝材140を設置する。また、この場合において、例えば図中に示すように、収容容器100の本体部分には完全に収まらず、後に蓋106によりふさがれる開口部から緩衝材140の少なくとも一部がはみ出すように、緩衝材140を設置する。このように構成した場合、例えば、収容容器100の蓋106を閉めることで、充填材120と蓋106との間に挟まれた緩衝材140は、蓋106に押さえつけられて、一方向から充填材120を圧迫することになる。また、その結果、収容容器100内の充填材120に対し、圧力が加えられることになる。
【0033】
尚、このときに加える圧力については、例えば、輸送時等に想定される衝撃力の範囲内では造形物50が動かない強度とすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、輸送時等に収容容器100が衝撃を受けた場合にも造形物50や充填材120が動かないように、これらの位置を適切に固定できる。また、このような圧力を加えるためには、緩衝材140について、固体に近くなる圧縮度とすることが考えられる。また、例えば収容容器100に充填材120を多めに入れて蓋106を閉め、収容容器100や蓋106の弾性(膨らみ)を利用して充填材120全体を固定する場合には、緩衝材140を用いなくても、十分な圧力を充填材に加えることができる。そのため、このような場合には、緩衝材140を省略してもよい。また、本例においてこのような圧力を加える理由は、上記のように、造形物50や充填材120の位置を適切に固定するためである。そのため、例えば圧力を加えなくても位置が適切に固定される充填材120を用いる場合には、圧力を加えなくてもよい。
【0034】
図1(c)は、造形物50、充填材120、及び緩衝材140を収容容器100内に収容して蓋106を閉めた状態について説明をする図である。上記のように、本例においては、収容容器100の蓋106を閉めて充填材120と蓋106との間に緩衝材140を挟むことにより、充填材120に圧力を加える。そして、この場合、粒状の充填材120を緩衝材140により押さえつける作用に対して反作用の力が働き、充填材120に囲まれている造形物50に対し、全方向(全方位)から押さえる力が発生することになる。また、その結果、収容容器100内で充填材120及び造形物50の位置が固定され、動かなくなる。
【0035】
また、この場合、収容容器100内で充填材120及び造形物50の位置を固定する動作は、充填材位置固定段階の動作の一例である。充填材位置固定段階の動作とは、例えば、収容容器100内の少なくとも一部の充填材120が造形物50に対して動かなくなるようにする動作のことである。また、この場合、充填材120が造形物50に対して動かなくするとは、例えば、少なくとも造形物50と接している充填材120について、予め設定された大きさ以下の衝撃を収容容器100が受けた場合にも造形物50に対して動かなくなるようにすることである。また、収容容器100が受ける衝撃について、予め設定された大きさ以下の衝撃とは、例えば、求められる耐衝撃性に応じて設定される上限以下の衝撃のことである。また、この上限の衝撃は、例えば、運搬時の状況等に応じて想定される衝撃のことである。運搬時の状況等に応じて想定される衝撃とは、例えば、運搬時に受ける標準的な衝撃や慣性力に対応する衝撃のことである。また、予め設定された大きさ以下の衝撃を収容容器100が受けた場合にも造形物50に対して充填材120が動かなくなる状態とは、それを超える大きな衝撃(例えば、想定外の衝撃)を受けた場合には収容容器100内で充填材120や造形物50が動く状態であってもよい。また、予め設定された大きさ以下の衝撃を収容容器100が受けた場合にも造形物50に対して充填材120が動かないことについては、例えば、少なくとも収容容器100をある程度傾けた程度では充填材120が動かない状態等と考えることができる。この場合、収容容器100を傾けるとは、例えば、充填材120を充填したタイミングと比べて、収容容器100を傾けることである。また、収容容器100をある程度傾けた程度とは、例えば、収容容器100の底面を水平面に対して45度程度傾けた状態のことである。
【0036】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、充填材120として、粒状のシリカゲルを用いる。また、シリカゲルとしては、流動性を示す性質の小さな粒状の構成(シリカゲルの粒子)を用いる。そして、この場合、収容容器100内に充填された充填材120について、収容容器100内で均等に圧力が伝搬する状態になっていると考えることができる。収容容器100内で均等に圧力が伝搬するとは、例えば、小数の限定された経路に沿って圧力が伝搬するのではなく、流動性の特性により、液体内での圧力の伝搬と同一又は同様にして、収容容器100内の全方向へ均等に圧力が伝搬することである。そして、この場合、蓋106により緩衝材140を充填材120へ押しつけて充填材120に圧力を加えると、収容容器100において充填材120が充填されている領域内で均等に圧力が伝搬し、造形物50を全方向から均一に押圧することになる。また、これにより、例えば、充填材120や造形物50が収容容器100内で容易には動かない状態を適切に実現できる。また、このような状態については、例えば、充填材120が造形物50に対して動かなくなる状態等と考えることもできる。また、この場合、充填材120に圧力を加える動作について、例えば、造形物50の周囲の充填材120に関し、造形物50に直接接した状態で造形物50に対する相対位置を固定する動作等と考えることもできる。また、このような状態については、例えば、充填材120により造形物50を全方向から均一に押圧して造形物50の周辺空間を埋めることで、造形物50や充填材120が収容容器100内で動くことを防ぐ状態等と考えることもできる。
【0037】
上記においても説明をしたように、本例において、梱包の外郭を構成する収容容器100としては、容易には変形しない一定形状の容器を用いる。そして、この場合、収容容器100の運搬時等において、収容容器100の中身である造形物50や充填材120の部分的な移動(クリープ)をより適切に防ぎ、造形物50やその周囲の状態を一定の状態により適切に保つことができる。そのため、本例によれば、例えば運搬時等に収容容器100が衝撃を受けた場合や、運搬に伴う慣性力を受けた場合にも、造形物50が破損することを適切に防ぐことができる。また、この場合、流動性を示す充填材120を造形物50に密着させて充填材120と造形物50が相対的に動かない状態を実現する構成であるため、造形物50の形状によらず、同じ手順で造形物50を適切に梱包することができる。この場合、充填材120と造形物50が相対的に動かない状態とは、充填材120及び造形物50の一方が他方に対して相対的に動かない状態のことである。そして、この場合、輸送用のブリスターケース等を用いることなく造形物50を適切に梱包できるため、様々な形状の造形物50を低コストで適切に梱包することも可能になる。そのため、本例によれば、例えば、造形装置により造形した様々な形状の造形物50に対し、破損が生じ難い状態で適切に梱包を行うことができる。
【0038】
また、本願の発明者は、実際に、紫外線硬化型インクを用いてインクジェット法で造形を行う造形装置で造形した造形物50について、ポリプロピレンの収容容器100と、シリカゲルの充填材120とを用いて、図1(c)に示す状態での梱包を行い、500kmの車輸送、及び60℃環境で10日間の保存を行う実験を行った。そして、このような実験において、破損や変形、変色等を含めて、造形物50に異常が生じないことを確認した。
【0039】
ここで、上記においては、梱包に使用する充填材120について、主に、シリカゲルを用いる場合について、説明をした。しかし、充填材120としては、シリカゲル以外の様々な物質を用いることも考えられる。例えば、充填材120として、シリカゲル以外の乾燥剤の粉体又は粒体を用いることも考えられる。この場合、例えば、酸化カルシウムや塩化カルシウム等の化学系乾燥剤や、酸化アルミニウム、ゼオライト、モレキュラーシーブ等の物理系乾燥剤の粉体又は粒体を用いることが考えられる。この場合も、例えば比較的安価な充填材120を用いることで、充填材120のコストを適切に低減できる。また、梱包時に求められる条件等に応じて、乾燥剤以外にも、様々な有機材料や無機材料で構成される充填材120を用いることができる。より具体的に、このような充填材120としては、例えば、片栗粉等を好適に用いることができる。また、例えば小麦粉や食塩等を用いることも考えられる。このような食品の粉体又は粒体を充填材120として用いることにより、例えば、安全性の高い充填材120を適切に用いることができる。また、これら以外にも、例えば、砂等の無機材料を充填材120として用いることも考えられる。この場合、例えば、市販の川砂等のような、安価で入手しやすい砂を用いることが考えられる。また、珪砂、砂鉄、生石灰、硫酸マグネシウム、焼き明礬、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、硫酸ナトリウム無水塩、硫酸銅無水塩、過塩素酸マグネシウム等の粉体や粒体を充填材120として用いることも考えられる。また、充填材120として、例えば、園芸用品として市販されている粉体等を用いることも考えられる。この場合も、安価で入手が容易な充填材120を用いることが可能になる。また、より具体的に、このような充填材120としては、例えば、園芸用品等として市販されている発泡粉体(人工発泡体)であるパーライトや、園芸用品等として市販されている粉体であるバーミキュライト等を用いることが考えられる。
【0040】
また、充填材120としては、例えば、樹脂を用いること等も考えられる。この場合、例えば、充填材120を適切に軽量化することができる。また、これにより、例えば、充填材120を充填することによる重量の増大を適切に抑えることができる。また、より具体的に、この場合、例えば、発泡樹脂を充填材120として用いることが考えられる。また、このような充填材120としては、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はPET等の樹脂発泡体の粒を用いることが考えられる。この場合、非帯電処理済みの樹脂発泡体の粒を用いることが好ましい。また、樹脂の充填材120としては、例えば、中空樹脂を用いることも考えられる。この場合、中空樹脂とは、例えば、中空のパイプ形状の樹脂のことである。中空樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はPET等で形成された中空樹脂を好適に用いることができる。また、この場合、例えば直径が4mm程度以下(例えば、1~4mm程度、好ましくは2~3mm程度)で、長さが6mm以下(例えば、2~6mm程度、好ましくは、3~5mm程度)の中空パイプ形状の粒子を用いることが考えられる。また、この場合、パイプを構成する樹脂の厚みについては、例えば、0.1mm程度(例えば、0.05~2mm程度)にすることが好ましい。また、充填材120としては、1種類の充填材120に限らず、複数種類の充填材120を併用して用いてもよい。
【0041】
続いて、造形物50の梱包方法の変形例等について、説明をする。上記においては、主に、収容容器100内での造形物50の周囲等を粉体又は粒体の充填材120のみで充填する場合について、説明をした。しかし、梱包方法の変形例においては、粉体又は粒体の充填材120以外の物質を更に用いて、造形物50の周囲等を充填してもよい。この場合、収容容器100内に造形物50や充填材120を収容する収容段階の動作において、充填材120の合間の少なくとも一部に液体を更に充填することが考えられる。このような液体の充填は、例えば粒体の充填材120を用いる場合に行うことが特に好ましい。このように構成すれば、例えば、粒体等の充填材120を充填するのみでは個々の充填材120の合間にわずかな隙間が生じる場合にも、液体により隙間を適切に埋めることができる。また、これにより、収容容器100の中身の移動をより適切に防ぐことができる。
【0042】
ここで、充填材120に加えて液体を充填する場合、液体の量が多くなりすぎると、収容容器100の中身の移動がかえって生じやすくなるおそれもある。そのため、液体の量については、充填材120のみで細密充填の状態になる範囲の量にすることが好ましい。充填材120のみで細密充填の状態になるとは、例えば、液体を充填しない場合にも収容容器100内で充填材120が細密充填になる状態のことである。また、液体の充填の仕方については、例えば、造形物50の周囲の充填材120の合間に液体が到達するように液体を充填することが好ましい。また、このようにして充填材120と併用して用いる液体としては、比重が2以上の液体や、粘度が0.04Pa・s以上の液体を好適に用いることができる。また、このような液体としては、例えばグリセリン、シリコンオイル、テトラブロモエタン等を用いることが考えられる。
【0043】
また、充填材120及び液体を収容容器100内に充填する場合において、それぞれを充填するタイミングについては、例えば、先に充填材120を充填した後に液体を充填することが考えられる。このように構成すれば、例えば、細密充填になった充填材120の隙間により適切に液体を充填することができる。また、梱包対象の造形物50の形状等や、梱包に求められる条件によっては、例えば、充填材120と液体とを同時に充填すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、収容容器100内に充填材120及び液体をより均一に充填できる。また、例えば、先に所定量の液体を充填した後に充填材120を充填することも考えられる。
【0044】
また、収容容器100内に充填材120を充填する充填の仕方や、収容容器100の蓋を閉じた後に行う動作等についても、様々な変更が可能である。図2は、梱包方法の変形例について説明をする図である。図2(a)~(c)は、梱包方法の様々な変形例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図2において、図1と同じ符号を付した構成は、図1における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0045】
上記においては、梱包時に使用する緩衝材140について、主に、例えば図1(b)、(c)に示すように、収容容器100の蓋106と接する位置に設置する用い方を説明した。しかし、緩衝材140については、収容容器100内において、蓋106と接する位置以外にも設置してもよい。より具体的に、この場合、例えば図2(a)に示すように、収容容器100の底面や側面と接する位置にも緩衝材140を設置することが考えられる。このように構成すれば、例えば、収容容器100において充填材120を充填すべき容積が小さくなるため、充填材120の使用量を低減することができる。また、この場合も、収容容器100の蓋106と接する部分においては、例えば図中の左側に示すように、後に蓋106によりふさがれる開口部から緩衝材140の少なくとも一部がはみ出すように、緩衝材140を設置する。また、この場合も、例えば図中の右側に示すように蓋106を閉じることで、収容容器100内の充填材120に適切に圧力を加えることができる。また、これにより、例えば、充填材120や造形物50が収容容器100内で容易には動かない状態を適切に実現できる。
【0046】
また、このように収容容器100の底面や側面と接する位置にも緩衝材140を設置する場合、緩衝材140と充填材120とが直接には接しないようにすることも考えられる。より具体的に、この場合、例えば図2(b)に示すように、造形物50及び充填材120を収容する袋200を用いることが考えられる。袋200としては、例えばポリエチレン製の袋等を好適に用いることができる。また、この場合、例えば、収容容器100の底面や側面と接する位置に緩衝材140が設置された状態で、収容容器100の開口部から袋200を収容容器100内に設置する。また、この場合、充填材120の中に造形物50が完全に埋没するように充填材120及び造形物50を袋200の中に入れ、テープ等で袋200の開口部を閉じることが考えられる。このように構成すれば、例えば、細かい粉体又は粒体の充填材120が緩衝材140の中に入り込むこと等を適切に防ぐことができる。また、この場合、袋200の中へ造形物50や充填材120を入れる動作については、袋200を収容容器100内に入れた後に行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、袋200に造形物50及び充填材120を入れた後の状態をより安定した状態で維持することができる。
【0047】
また、運搬時の衝撃等から造形物50をより確実に保護するためには、収容容器100の中に充填材120や緩衝材140等を入れるのみではなく、例えば図2(c)に示すように、収容容器100の周囲に更に緩衝材320を設置することが好ましい。また、より具体的に、この場合、図中に示すように、例えば、収容容器100の外側を覆う外箱である外装部材300及び緩衝材320を更に用いて、多重の梱包を行う。外装部材300としては、例えば、収容容器100を内部に収容可能な大きさのダンボール箱等を好適に用いることができる。また、この場合、緩衝材320は、例えば公知の梱包方法において用いられる梱包材等と同一又は同様にして、収容容器100と外装部材300との間に充填される。緩衝材320としては、例えば発泡材やクッション材等のような公知の梱包用の緩衝材等を好適に用いることができる。また、この場合、外装部材300の中に収容容器100及び緩衝材320を設置する動作は、外装段階の動作の一例である。また、外装段階の動作とは、例えば、収容容器100の周囲の少なくとも一部が緩衝材320と接するようにして、外装部材300により収容容器100と緩衝材320とを覆う動作のことである。このように構成すれば、例えば、輸送中の衝撃等による造形物50の破損等をより適切に防ぐことができる。
【0048】
また、上記においては、主に、粉体又は粒体の充填材120を用いる場合について、梱包方法の例の説明をした。しかし、充填材としては、粉体や粒体以外の構成を用いることも考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、梱包の動作の中で液体の状態から固体の状態に相変化する物質等を充填材として用いることが考えられる。
【0049】
図3は、梱包方法の更なる変形例について説明をする図である。図3(a)~(c)は、本変形例の特徴について、図1(a)~(c)と同様の事項を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図3において、図1又は図2と同じ符号を付した構成は、図1又は図2における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。また、本変形例において用いる充填材160については、以下において説明をする点を除き、図1又は図2を用いて説明をした充填材120と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0050】
本変形例においては、収容容器100内に充填する充填材160として、粉体や粒体ではなく、梱包の動作の中で液体の状態から固体の状態に相変化する物質を用いる。この場合、液体の状態とは、例えば、収容容器100内へ注ぎ込むことが可能な流動性の状態のことである。そして、この場合、充填材160は、収容容器100への充填を行う時点では液体の状態になっている。より具体的に、本変形例においては、例えば図3(a)に示すように、収容容器100及び充填材160を用いて、造形物50の梱包を行う。また、この場合、例えば図3(b)に示すように、液体の状態の充填材160を収容容器100内に充填することで、造形物50の周囲が充填材160に囲まれるように、収容容器100内に造形物50及び充填材160を収容する。また、この場合、造形物50及び充填材160を収容容器100内に収容した後には、例えば充填材160の温度を下げることにより、充填材160を固体の状態に相変化させる。このようにした場合も、隙間のない固体の状態で収容容器100内を充填して、造形物50の周囲を囲むことにより、造形物50や充填材160が収容容器100内で動くことを適切に防ぐことができる。また、これにより、造形物50の破損を適切に防ぐことができる。
【0051】
ここで、このような充填材160としては、例えば、造形物50に影響を与えない範囲の温度で液体の状態になり、造形物50の輸送時の温度において固体の状態を保つ物質を用いることが好ましい。この場合、造形物50に影響を与えない範囲の温度とは、例えば、造形物50に軟化や変質等が生じない温度のことである。また、造形物50の輸送時の温度とは、例えば輸送時に造形物50を保管する環境の温度のことである。この場合、輸送用の車両の車内温度等を考慮すると、輸送時の温度について、例えば、最大で50℃程度と考えることができる。また、より安定した環境での輸送を行う場合、輸送時の温度について、例えば30℃程度と考えることもできる。また、例えば所定の低い温度に保った状態で造形物50の輸送を行う場合には、その温度を輸送時の温度と考えることができる。また、より具体的に、このような充填材160としては、例えば油脂等を好適に用いることができる。この場合、収容容器100への充填材160の充填時において、例えば、充填材160として用いる油脂の温度を液体になる温度にして、収容容器100への充填を行う。また、その後に、油脂の温度を固体になる温度に低下させることにより、油脂を固体の状態に相変化させる。また、このような油脂としては、例えばラード、マーガリン等の食用の油脂や、各種の工業用の油脂等を用いることが考えられる。
【0052】
続いて、本願の発明者が行った実験(輸送試験)について、説明をする。図4は、本願の発明者が行った実験について説明をする図である。図4(a)は、粉体の充填材120を用いて梱包を行う梱包形態で行った輸送試験について説明をする図である。尚、図1~3を用いて行った上記の説明では、図示及び説明の便宜上、梱包方法について、一部を簡略化して説明をしている。また、以下において説明をする具体的な梱包方法では、実験の都合上、上記において説明をした方法と一部を異ならせている。しかし、以下の説明から明らかなように、造形物50の破損を防ぐことに関する基本的な特徴は、上記において説明をした方法と同一又は同様である。
【0053】
また、より具体的に、この実験においては、例えば図2(b)を用いて説明をした場合と同様にして、ポリエチレン製の袋200を用い、造形物50が充填材120の中に完全に埋没するように袋200の中に充填材120及び造形物50を入れた。また、袋200の開口部の隙間から充填材120等が外部へ漏れることを防ぐために、テープで袋200の開口部を閉じている。また、この実験において、充填材120としては、粉状物質の一例である片栗粉を用いた。片栗粉を使用した理由は、人体に対して有害ではなく、かつ、使用後の処分が容易であるためである。
【0054】
また、緩衝材としては、図中に示すように、複数の緩衝材140a、bを用いた。これらのうち、緩衝材140aは、袋200の中の緩衝材140に対して均一に圧力を加えるための緩衝材であり、図中に示すように、袋200の上側に設置される。緩衝材140aとしては、ポリエチレン製気泡緩衝材を用いた。また、緩衝材140bは、収容容器100内に設置することで充填材120の使用量を低減するために用いる緩衝材である。緩衝材140bとしては、ポリウレタン製発泡緩衝材を用いた。また、緩衝材140bについては、図中に示すように、収容容器100内において、袋200の下側に設置した。また、収容容器100としては、一般的なダンボール箱を使用した。
【0055】
尚、上記において説明をしたように、収容容器100としては、一定形状の容器を用いることが好ましい。そのため、収容容器100としては、プラスチック、ガラス、金属、木材等のより固い材料で形成された容器を用いることがより好ましい。しかし、輸送時に一定形状を適切に保てるのであれば、上記のように、ダンボール箱等であっても、収容容器100として使用可能である。
【0056】
また、図4(a)に示すように梱包を行った場合も、収容容器100の蓋を閉じることで、緩衝材140aにより袋200内の充填材120を押しつけることになる。そして、この場合、緩衝材140aが充填材120を押さえつける作用に対する反作用の力が働くことで、造形物50の周囲の充填材120が全方位から造形物50を押さえる力が発生する。また、その結果、収容容器100内での充填材120の動きがなくなり、更にその結果として、造形物50の動きも生じない状態になる。また、これにより、上記においても説明をしたように、造形物50の輸送時において、造形物50の破損が生じ難い状態を適切に実現できる。また、本願の発明者は、実際に、指の部分や髪の毛の形状等が微細な構造になっているフィギュアの造形物50を用い、図4(a)に示す状態での梱包を行って、複数回の輸送を行う実験を行った。そして、造形物50を破損させずに適切に輸送を行い得ることを確認した。
【0057】
また、本願の発明者は、図4(a)に示す状態での梱包の効果についてより適切に確認をするために、他の状態での梱包で輸送をする比較実験を更に行った。図4(b)は、この比較実験について説明をする図である。この比較実験においては、図4(a)に示した場合において充填材120が充填されている部分について、ポリエチレン製気泡緩衝材である緩衝材140cを用い、緩衝材140cで造形物50を包むようにして、造形物50の保護を行った。また、その上にポリエチレン製気泡緩衝材である緩衝材140aを設置することで、造形物50や緩衝材140cが動かないように固定を行った。
【0058】
この場合も、造形物50については、空気と共にポリエチレン製気泡緩衝材(緩衝材140c)によって包まれることになる。また、これにより、収容容器100内で造形物50が動かないように押さえる力や、緩衝材140cのクッション効果を得ることができる。しかし、この場合、このような力の反作用は、造形物50自身によって発生することになる。そして、この場合、例えば造形物50の輸送時の衝撃等で造形物50を移動させようとする力が加わると、造形物50に対し、特定の箇所に集中して力が加わる場合がある。また、その結果、微細な構造部分等が破損しやすくなると考えられる。また、実際に、本願の発明者は、図4(b)に示す状態での梱包を行って、複数回の輸送を行う実験を行った。そして、図4(a)に示す状態での梱包を行う場合と比べ、造形物50の破損が発生しやすいことを確認した。また、これにより、図4(a)に示す状態で梱包をすることについて、造形物50の破損を防ぐ効果があることが確認できた。
【0059】
また、本願の発明者は、片栗粉以外の様々な充填材120を用いる場合について、更に実験を行った。図5は、様々な充填材120を用いて行った実験の結果を示す。この実験では、図中に番号1~5を付して示すように、様々な充填材120を用いて、輸送試験及び保存試験を行った。この輸送試験では、使用する充填材120以外は図4を用いて説明をした場合と同一又は同様にして梱包を行い、200kmの車輸送を行った。また、保存試験では、60℃の環境で、1ヶ月間の保存を行った。また、梱包の対象物としては、人形(フィギュア)の形状の造形物50を用いた。また、充填材120を用いて梱包を行う場合と比較するための参考例として、番号6を付して示すように、フィルムパックを用いて梱包を行い、輸送試験及び保存試験を行った。
【0060】
また、より具体的に、図中において、番号1を付して示す充填材120は、中空樹脂である。また、中空樹脂としては、直径が4.5mm、長さが6mm、パイプを構成する樹脂の厚みが0.1mmのパイプ状の樹脂を用いた。この場合、充填材120の比重は、0.05程度の極めて小さな値になる。この比重は、例えば、小さなダンボール箱1個に充填した場合の重さが、1kg程度になる程度の比重である。そのため、このような充填材120を用いる場合、充填材120を充填することによる重量の増大を適切に抑えることができる。また、この場合、梱包の対象物である造形物50に充填材120が付着することはなく、操作性は良好であった。また、輸送試験の結果は良好であり、保存試験の結果は極めて良好であった。また、保存試験で長期間保存した場合も、パイプの変形等は生じなかった。更に、この場合、充填材120の再利用も可能である。以上の結果から、中空樹脂について、充填材120として好適に使用し得ることがわかる。
【0061】
また、番号2を付して示す充填材120は、シリカゲルである。シリカゲルとしては、ドライフラワー用の乾燥剤として市販されているシリカゲルを用いた。この場合、比重については、中空樹脂と比べると、大きくなっている。しかし、この場合も、梱包の作業時の操作性は良好であった。また、輸送試験の結果は極めて良好であった。また、保存試験の結果についても、刷毛等を用いて造形物から充填材120を落とすことが必要にはなるものの、良好であった。更に、この場合も、充填材120の再利用が可能である。以上の結果から、シリカゲルについても、充填材120として好適に使用し得ることがわかる。また、シリカゲルの充填材120については、上記のように、中空樹脂と比べると比重が大きくなるため、梱包後の重量がある程度大きくなっても許容される場合等に、特に好適に用いることができる。また、シリカゲルは除湿機能を有し、高温高湿下にあっても粒子どうしが粘着しない特性を有しているため、例えば、他の充填材120と混合して使用してもよい。この場合、例えば、長期間の輸送で圧力が加わった状態での高温高湿の環境下でも造形物50の変質を抑え、かつ、充填材120が造形物50の表面に付着するのを抑制することができる。また、この場合、更に、梱包後の重量を抑えることもできる。
【0062】
また、番号3、4を付して示す充填材120は、パーライト及びバーミキュライトである。パーライト及びバーミキュライトとしては、園芸用品として市販されているパーライト及びバーミキュライトを用いた。これらの場合、比重については、中空樹脂と同様に、小さくなる。しかし、これらの場合、粉塵が発生することで作業時にマスクが必要になるため、中空樹脂等と比べると、操作性が低くなる。しかし、この場合も、輸送試験の結果は良好であった。また、保存試験の結果についても、刷毛等を用いて造形物から充填材120を落とすことが必要にはなるものの、パーライトについては良好であり、バーミキュライトについても概ね良好であった。この場合、保存試験の結果が概ね良好であるとは、例えば、要求水準が厳しい場合以外には、造形物50を適切に保存し得ることである。以上の結果から、パーライト及びバーミキュライトについても、充填材120として好適に使用し得ることがわかる。また、パーライト及びバーミキュライトの充填材120については、上記のように、中空樹脂等と比べると操作性が低くなるため、作業時にマスクを使用することが問題にならない場合等に、特に好適に用いることができる。
【0063】
また、番号5を付して示す充填材120は、川砂である。川砂としては、左官用の砂として市販されている川砂を用いた。この場合、比重については、中空樹脂と比べると、大きくなっている。しかし、この場合も、梱包の作業時の操作性は良好であった。また、輸送試験の結果については、概ね良好であった。この場合、輸送試験の結果が概ね良好であるとは、特に壊れやすい造形物50を輸送する場合以外には、適切に造形物50を輸送し得ることである。また、保存試験の結果については、刷毛等を用いて造形物から充填材120を落とすことが必要にはなるものの、良好であった。以上の結果から、川砂についても、充填材120として好適に使用し得ることがわかる。また、川砂については、上記のように、輸送試験の結果が他の充填材120と比べてやや悪くなっている。また、川砂を用いる場合、使用前に乾燥させる工程等が必要になる。一方で、川砂は、他の充填材120と比べ、より低価格での入手が可能である。そのため、川砂については、比較的壊れにくい造形物50等を低コストで梱包する場合等に、特に好適に用いることができる。
【0064】
また、上記のように、図中において、番号6は、フィルムパックを用いて梱包を行う参考例を示している。また、この参考例では。フィルムパックで造形物50を包んだ後に、14×22×4cmのサイズのウレタンで挟むことで、造形物50を固定した。この場合、フィルムパックの比重については、十分に小さいと考えることができる。しかし、フィルムパックを用いて梱包を行う場合、作業に要する手間が多くなるため、操作性は、低くなる。また、図中に示すように、この場合、輸送試験では、造形物50に損壊が生じ、保存試験では造形物50に変形が生じた。また、より具体的に、この場合、輸送試験では、造形物50として用いた人形の指の部分に損壊が生じた。また、保存試験では、人形の足に変形が生じた。この参考例との比較により、例えば、上記の様々な充填材120を用いる場合について、造形物50の損壊や変形が生じにくい条件での梱包を適切に実現できていることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、例えば立体物の梱包方法に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
50・・・造形物、100・・・収容容器、102・・・底面、104・・・側面、106・・・蓋、120・・・充填材、140・・・緩衝材、160・・・充填材、200・・・袋、300・・・外装部材、320・・・緩衝材
図1
図2
図3
図4
図5