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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】油圧回路及びコントロール弁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
F15B11/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018163945
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020037948
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作手段に対する操作量に応じてパイロットポンプからの作動油の出力圧を出力する操作弁と、
励磁電流に応じて前記操作弁からの作動油の出力圧を調節して出力する電磁比例弁と、
前記電磁比例弁からの作動油の出力圧に応じてアクチュエータポンプからの作動油の出力圧を調節して出力し、前記操作手段に対する操作量が最大の操作量よりも小さい所定操作量以上のときに、前記操作弁が全開の前記電磁比例弁を介して出力する前記パイロットポンプからの作動油の出力圧によって略全開状態となり得るコントロール弁と、を備える、油圧回路。
【請求項2】
前記電磁比例弁は、前記励磁電流が供給されない非励磁の状態で前記操作弁からの作動油が通過し、前記励磁電流が供給される場合に前記操作弁からの作動油を遮断する、請求項1に記載の油圧回路。
【請求項3】
当該油圧回路は、ノーマルモード又はフェイルセーフモードにて前記コントロール弁に作動油を供給するようになっており、
前記ノーマルモードは、前記電磁比例弁に対する前記励磁電流を調節することで、前記操作弁からの作動油の出力圧を前記電磁比例弁を介して調節し前記コントロール弁に出力するモードであり、
前記フェイルセーフモードは、前記電磁比例弁を常時非励磁の状態として、前記操作弁のみによって前記パイロットポンプからの作動油の出力圧を調節して前記コントロール弁に出力するモードであり、
前記ノーマルモードでは、前記電磁比例弁が、前記操作手段に対する操作がなされていないときに所定励磁電流を供給されることで全閉状態となって前記操作弁からの作動油を遮断するとともに、前記操作手段に対する操作量の増加に従い前記所定励磁電流に対して反比例して供給される前記励磁電流に応じて前記操作弁からの作動油の出力圧を調節するようになっている、請求項2に記載の油圧回路。
【請求項4】
操作手段に対する操作量に応じてパイロットポンプからの作動油の出力圧を出力する操作弁と、励磁電流に応じて前記操作弁からの作動油の出力圧を調節して出力する電磁比例弁と、前記電磁比例弁からの作動油の出力圧に応じてアクチュエータポンプからの作動油の出力圧を調節して出力するコントロール弁と、を備える油圧回路におけるコントロール弁の製造方法であって、
前記パイロットポンプからの作動油の出力圧を特定する工程と、
前記操作手段に対する操作量が最大の操作量よりも小さい所定操作量以上のときに前記操作弁が全開の前記電磁比例弁を介して出力する前記パイロットポンプからの作動油の出力圧によって前記コントロール弁が略全開状態となり得る前記コントロール弁の受圧特性を、前記特定された前記パイロットポンプからの作動油の出力圧に基づき設定する工程と、を含む、コントロール弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータ等の油圧機器を作動油によって制御するコントロール弁と、コントロール弁にパイロット圧用の作動油を供給する電磁比例弁とを備える油圧回路、及び、このような油圧回路で使用されるコントロール弁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ブーム用シリンダ等の油圧アクチュエータに接続されたコントロール弁に切換弁が接続され、当該切換弁に互いに異なる配管を介して操作弁と電磁比例弁とが接続される油圧回路を開示する。操作弁は操作レバーに連動して機械的に開度を調節し、電磁比例弁は操作レバーに連動して電気的に開度を調節する。操作弁及び電磁比例弁は共通のパイロットポンプに接続され、それぞれパイロットポンプからの作動油の圧力を調節してコントロール弁に出力することができる。
【0003】
特許文献1に開示される油圧回路では、切換弁が、操作弁からコントロール弁に向かう作動油と電磁比例弁からコントロール弁に向かう作動油とを選択的に切り換えてコントロール弁に供給することができ、これによりフェイルセーフ機能が確保される。すなわち、例えば電磁比例弁が故障した場合に、パイロットポンプからの作動油を操作弁からコントロール弁に供給することでコントロール弁を制御することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-142032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の油圧回路はフェイルセーフ機能を確保するために切換弁やこれに接続される複数の種の配管が必要となるため、構成が複雑になる。これに対し、操作弁からの作動油を非励磁状態で全開となるネガティブタイプの電磁比例弁からコントロール弁に供給する油圧回路であれば、作動油の圧力を電磁比例弁によって調節することができるとともに、簡易な構成でフェイルセーフ機能が確保され得る。
【0006】
このようなネガティブタイプの電磁比例弁を用いた油圧回路では、操作レバーに対する操作量の増加に従って操作弁の開度が増加し、操作弁から電磁比例弁に供給される作動油の圧力が増加する。一方で、電磁比例弁は操作レバーに対して操作がなされていない状態で所定の励磁電流を供給されることで全閉状態となり、操作レバーに対する操作量の増加に応じて励磁電流が減少することで、コントロール弁に供給する作動油の圧力が増加する。そして、操作レバーに対する操作量が最大となった際に、コントロール弁が全開状態となるようにパイロット圧が出力される。このとき、普通に考えれば、操作弁が最大開度となるとともに、電磁比例弁が最大開度となる。
【0007】
しかしながら、この構成では、操作レバーに対する操作量が或る操作量になった際に操作弁が出力する作動油の圧力を電磁比例弁を絞ることで低下させることはできるが、電磁比例弁に流入する作動油の圧力は操作レバーに対する操作量に応じて機械的に決定されるものであるため、電磁比例弁の開度を大きくしたとしても作動油の圧力を増加させることはできない。そのため、例えば操作レバーに対する或る操作量以降から油圧アクチュエータの動作を急激に加速させたいような場合でも、このような動作が得られるようなパイロット圧を電磁比例弁からコントロール弁に供給することは困難である。このことは、ポジティブタイプの電磁比例弁で同様である。
【0008】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであり、コントロール弁と操作弁との間に設けられる電磁比例弁からコントロール弁に対してパイロット操作用の作動油を供給する場合において、作動油の出力圧を広い調節範囲において柔軟に調節することができ、これにより、コントロール弁によって制御されるアクチュエータの動作パターンを柔軟に設定することが可能となる油圧回路及びコントロール弁の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる油圧回路は、操作手段に対する操作量に応じてパイロットポンプからの作動油の出力圧を出力する操作弁と、励磁電流に応じて前記操作弁からの作動油の出力圧を調節する電磁比例弁と、前記電磁比例弁からの作動油の出力圧に応じてアクチュエータポンプからの作動油の出力圧を調節して出力し、前記操作手段に対する操作量が最大の操作量よりも小さい所定操作量以上のときに、前記操作弁が出力する前記パイロットポンプからの作動油の出力圧によって略全開状態となり得るコントロール弁と、を備える、油圧回路である。
【0010】
前記電磁比例弁は、前記励磁電流が供給されない非励磁の状態で前記操作弁からの作動油が通過し、前記励磁電流が供給される場合に前記操作弁からの作動油を遮断するタイプの電磁比例弁であってもよい。
この場合、当該油圧回路は、当該油圧回路は、ノーマルモード又はフェイルセーフモードにて前記コントロール弁に作動油を供給するようになっており、前記ノーマルモードは、前記電磁比例弁に対する前記励磁電流を調節することで、前記操作弁からの作動油の出力圧を前記電磁比例弁を介して調節し前記コントロール弁に出力するモードであり、前記フェイルセーフモードは、前記電磁比例弁を常時非励磁の状態として、前記操作弁のみによって前記パイロットポンプからの作動油の出力圧を調節して前記コントロール弁に出力するモードであり、前記ノーマルモードでは、前記電磁比例弁が、前記操作手段に対する操作がなされていないときに所定励磁電流を供給されることで全閉状態となって前記操作弁からの作動油を遮断するとともに、前記操作手段に対する操作量の増加に従い前記所定励磁電流に対して反比例して供給される前記励磁電流に応じて前記操作弁からの作動油の出力圧を調節するようになっていてもよい。
【0011】
また、本発明にかかるコントロール弁の製造方法は、操作手段に対する操作量に応じてパイロットポンプからの作動油の出力圧を出力する操作弁と、励磁電流に応じて前記操作弁からの作動油の出力圧を調節して出力する電磁比例弁と、前記電磁比例弁からの作動油の出力圧としてのパイロット圧に応じてアクチュエータポンプからの作動油の出力圧を調節して出力するコントロール弁と、を備える油圧回路におけるコントロール弁の製造方法であって、前記パイロットポンプからの作動油の出力圧を特定する工程と、前記操作手段に対する操作量が最大の操作量よりも小さい所定操作量以上のときに前記操作弁が出力する前記パイロットポンプからの作動油の出力圧によって前記コントロール弁が略全開状態となり得る前記コントロール弁の受圧特性を、前記特定された前記パイロットポンプからの作動油の出力圧に基づき設定する工程と、を含む、コントロール弁の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コントロール弁と操作弁との間に設けられる電磁比例弁からコントロール弁に対してパイロット操作用の作動油を供給する際、作動油の出力圧を広い調節範囲において柔軟に調節することができ、これにより、コントロール弁によって制御されるアクチュエータの動作パターンを柔軟に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態にかかる油圧回路の概略図である。
図2】本発明の一実施の形態にかかる油圧回路に設けられる操作レバーに対する操作量と、操作量に応じてコントロール弁によって調節されてアクチュエータに出力されるアクチュエータポンプからの作動油の出力圧との関係を表したグラフを示す図である。
図3】(A)は、本発明の一実施の形態にかかる油圧回路において調節可能なアクチュエータポンプからの作動油の出力圧の範囲を示す図であり、(B)は、他の態様として、電磁比例弁を備える油圧回路において調節可能なアクチュエータポンプからの作動油の出力圧の範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施の形態にかかる油圧回路1について説明する。
【0015】
図1に示される油圧回路1は、油圧源であるパイロットポンプ10と、パイロットポンプ10から作動油を供給される操作弁11と、パイロットポンプ10からの作動油を操作弁11を介して供給される電磁比例弁12と、電磁比例弁12から作動油を供給され、当該作動油の圧力(以下、出力圧と呼ぶ場合がある)をパイロット圧として利用するコントロール弁13と、油圧アクチュエータ15を駆動するための作動油をコントロール弁13に対して供給するアクチュエータポンプ14と、電磁比例弁12に供給する励磁電流を制御する制御装置16と、を備えている。
【0016】
パイロットポンプ10は例えばエンジンにより駆動されることで作動油を吐出するポンプであり、本実施の形態では固定容量型油圧ポンプである。操作弁11はパイロットポンプ10からの作動油を通過させるものであり、操作レバー11A(操作手段)に対するユーザの操作量に応じて、パイロットポンプ10からの作動油の出力圧を調節して出力する。操作弁11は操作レバー11Aに対する操作量の増加に従い作動油の出力圧を増加させ、操作量の減少に従い作動油の出力圧を減少させるようになっている。
【0017】
電磁比例弁12はスプール式の電磁比例弁であり、制御装置16から供給される励磁電流に応じてパイロット操作用スプール20を移動させることにより、その開度を調節し、操作弁11からの作動油の出力圧を調節してコントロール弁13に供給する弁である。本実施の形態における電磁比例弁12はネガティブタイプであり、励磁電流が供給されない非励磁の状態で操作弁11からの作動油が通過し、励磁電流が供給される場合に操作弁11からの作動油を制約又は遮断するように構成され、特に本例の電磁比例弁12は、所定励磁電流を供給されることで全閉状態となって操作弁11からの作動油を遮断する。
【0018】
すなわち、電磁比例弁12は操作弁11からの作動油の出力圧を調節してコントロール弁13に出力する際には、操作レバー11Aに対する操作がなされていないときに上記所定励磁電流を供給されることで全閉状態となる。一方で、電磁比例弁12は、この所定励磁電流が供給された全閉状態から操作レバー11Aに対する操作量の増加に従い上記所定励磁電流に対して反比例して供給される励磁電流に応じて、パイロット操作用スプール20を移動させることで、操作弁11からの作動油の出力圧を調節してコントロール弁13に出力するようになっている。なお、この際の操作量は、本実施の形態では油圧センサ18によって検出されるようになっている。
【0019】
本実施の形態では、上述のように電磁比例弁12を介して操作弁11からの作動油の出力圧を調節してコントロール弁13に出力する状態のことをノーマルモードと呼ぶ。ノーマルモードでは、励磁電流の調節により電磁比例弁12が開度を絞ることで操作弁11からの作動油の出力圧を低下させてコントロール弁13に出力することができる。また、このように開度を絞った状態から開度を大きくすることで操作弁11からの作動油の出力圧(パイロット圧)を増加させてコントロール弁13に出力することもできる。これにより、コントロール弁13に対する作動油の出力圧を任意に調節することが可能となる。
【0020】
これに対し、本実施の形態では電磁比例弁12がネガティブタイプであることで、電磁比例弁12を常時非励磁の状態として、操作弁11のみによってパイロットポンプ10からの作動油の出力圧を調節してコントロール弁に出力することもできる。この状態を、本実施の形態ではフェイルセーフモードと呼ぶ。フェイルセーフモードでは、例えば電磁比例弁12が故障した際に電磁比例弁12を動作させなくても、パイロットポンプ10からの作動油を操作レバー11Aの操作量に応じて操作弁11で調節してコントロール弁13に供給することができる。これにより、電磁比例弁12によらず油圧アクチュエータ15を動作させることが可能となる。
【0021】
図1に示されるように、電磁比例弁12は、上述した軸状部材であるパイロット操作用スプール20と、パイロット操作用スプール20をスライド自在に収納するスプール孔21を有する弁本体22と、パイロット操作用スプール20を励磁電流に応じた電磁力によりスプール孔21の軸方向に移動させる駆動部23と、パイロット操作用スプール20に対して付勢力を付与するための弾性部材24と、を有する。
【0022】
弁本体22にはスプール孔21に加え、スプール孔21に開口する入力ポート31、排出ポート32及び出力ポート33がさらに設けられている。入力ポート31及び排出ポート32は、それぞれスプール孔21の径方向に沿ってスプール孔21に開口するとともに弁本体22の外周面から外部に開口している。出力ポート33は、スプール孔21の軸方向における弁本体22の一方側の端部に形成され、当該軸方向においてスプール孔21に開口するとともに弁本体22の外部に開口している。駆動部23は、スプール孔21の軸方向において出力ポート33が開口する一方側とは反対の側に配置されている。
【0023】
入力ポート31は配管を介して操作弁11と接続され、排出ポート32は配管を介して作動油が排出される排液部Tに接続されている。また、出力ポート33は配管を介してコントロール弁13に接続されている。なお、上述した油圧センサ18は入力ポート31と操作弁11との間の配管の圧力を検出するようになっている。
【0024】
パイロット操作用スプール20には、スプール孔21の軸方向に延在し且つ当該軸方向における両端部が開口した中空孔40と、中空孔40に開口する入口孔41及び出口孔42とが設けられている。スプール孔21の軸方向における中空孔40の一方側の端部の第1開口40Aは、出力ポート33と同じ方向に開口し、他方側の端部の第2開口40Bは、駆動部23の側に開口する。入口孔41及び出口孔42は、それぞれスプール孔21の径方向に沿って中空孔40に開口するとともにパイロット操作用スプール20の外周面から外部に開口している。
【0025】
入口孔41はパイロット操作用スプール20の軸方向における移動位置に応じて、入力ポート31に接続するか、弁本体22の内周面と対向するか、又は入力ポート31に接続するとともに弁本体22の内周面に対向する。入口孔41が入力ポート31に接続した際には、入力ポート31に流入した作動油が、入口孔41、中空孔40及びスプール孔21を介して出力ポート33から流出し得る。一方、出口孔42はパイロット操作用スプール20の軸方向における移動位置に応じて、排出ポート32に接続するか、弁本体22の内周面と対向するか、又は排出ポート32に接続するとともに弁本体22の内周面に対向する。出口孔42が排出ポート32に接続した際には、スプール孔21及び中空孔40内の作動油が排液部Tに流出し得る状態となる。
【0026】
本実施の形態では、入口孔41が入力ポート31に接続した際、出口孔42が弁本体22の内周面と対向した状態となり、出口孔42が排出ポート32に接続した際には、入口孔41が弁本体22の内周面と対向した状態となる。したがって、パイロット操作用スプール20は、駆動部23によって移動される軸方向における位置(移動位置)に応じて、入口孔41を入力ポート31に接続するとともに出口孔42を排出ポート32から遮断する状態と、出口孔42を排出ポート32に接続するとともに入口孔41を入力ポート31から遮断する状態とを切り換えることができる。
【0027】
図1は、ソレノイドアクチュエータによって構成される駆動部23に対して励磁電流が流されていない非励磁状態を示し、パイロット操作用スプール20が駆動部23によって移動されていない状態を示している。この際、パイロット操作用スプール20は入口孔41を入力ポート31に全開状態で接続する。この全開状態から、駆動部23に対して上述した所定の励磁電流が供給されることでパイロット操作用スプール20は駆動部23から離間する方向に移動し、入口孔41と入力ポート31とを遮断するとともに出口孔42を排出ポート32に接続する全閉状態になる。ネガティブタイプでは、この全閉状態から励磁電流が小さくなることで、コントロール弁13に供給されるパイロットポンプ10からの作動油の出力圧が増加することになる。
【0028】
駆動部23に対して上記所定励磁電流が供給され、パイロット操作用スプール20が駆動部23から離間する方向に移動した際には、コイルスプリングからなる弾性部材24が圧縮し、弾性部材24がパイロット操作用スプール20を駆動部23の側に押し戻すための付勢力を蓄えるようになっている。したがって、駆動部23が非励磁の状態となった際には、パイロット操作用スプール20が駆動部23側に復帰する。
【0029】
次にコントロール弁13について説明する。コントロール弁13は電磁比例弁12から出力されるパイロットポンプ10からの作動油によるパイロット圧に応じてアクチュエータ操作用スプール131を移動させることにより、その開度を調節しアクチュエータポンプ14からの作動油の出力圧を調節して出力する。コントロール弁13はパイロットポンプ10からの作動油によるパイロット圧が増加するに従いその開度を増加させ、パイロット圧が作用しない状態では全閉状態となるノーマルクローズタイプの弁である。
【0030】
また、アクチュエータポンプ14は例えばエンジンにより駆動されることで作動油を吐出するポンプであり、本実施の形態では可変容量型油圧ポンプである。油圧アクチュエータ15は図示の例では油圧シリンダとなっており、コントロール弁13によって調節されたアクチュエータポンプ14からの作動油の出力が大ききほど、ロッドの移動量が増加することになる。
【0031】
次に、図2は、操作レバー11Aに対する操作量と、操作量に応じてコントロール弁13によって調節されて油圧アクチュエータ15に出力されるアクチュエータポンプ14からの作動油の出力圧と、の関係を表したグラフを示している。横軸が操作レバー11Aに対する操作量を示し、縦軸がアクチュエータポンプ14からの作動油の出力圧を示している。また、横軸におけるSmaxは操作レバー11Aに対する最大操作量を示し、Sdeは、最大操作量Smaxよりも小さい操作レバー11Aに対する所定操作量を示している。また、図2におけるラインLcoは、操作弁によって圧力調節された作動油を非励磁状態で全開となるネガティブタイプの電磁比例弁からコントロール弁に供給する油圧回路において他の態様として想定される、操作レバーの操作量と、油圧アクチュエータに出力される作動油の出力圧との関係を示している。
【0032】
ラインLcoに示される設定では、操作レバーの操作量が最大操作量Smaxとなった際に油圧アクチュエータに出力される作動油の出力圧が最大となる。すなわち、この設定では、操作レバーの操作量が増加するに従い操作弁から電磁比例弁に供給される作動油の出力圧が増加し、操作レバーの操作量が最大操作量Smaxとなった際に電磁比例弁からコントロール弁に出力される作動油のパイロット圧が最大となる。この最大のパイロット圧がコントロール弁の開度を全開にすることを意味する。
【0033】
これに対し、ラインLinは、本実施の形態にかかる油圧回路1において設定される、操作レバーの操作量と、油圧アクチュエータに出力される作動油の出力圧との関係を示している。このラインLinに示される設定では、電磁比例弁12が非励磁となる状態(つまり、フェイルセーフモード)において、操作レバー11Aに対する操作量が最大操作量Smaxよりも小さい所定操作量Sdeまで操作されたときにコントロール弁13が略全開状態になることを示している。
【0034】
すなわち、このような本実施の形態にかかる設定では、操作レバーの操作量が増加するに従い操作弁から電磁比例弁に供給される作動油の出力圧が増加し、そして操作レバー11Aの操作量が最大操作量Smaxよりも小さい所定操作量Sde以上のときに、非励磁の状態の電磁比例弁12からコントロール弁13に出力される作動油がコントロール弁13の開度を略全開にする。この際に電磁比例弁12からコントロール弁13に出力される作動油の出力圧(パイロット圧)は、ラインLcoに従う設定において最大操作量Smaxとなった際に電磁比例弁からコントロール弁に出力される作動油のパイロット圧よりも小さい値である。
なお、コントロール弁13の略全開状態とは、コントロール弁13がアクチュエータポンプ14からの作動油を最大量で流出させる際の開度の状態であり、作動油を流出させる開口部分が予め定められている最大の開度まで開かれた状態又は当該最大の開度と見做すことできる状態のことを意味する。
【0035】
ラインLinによって示される設定は、コントロール弁13の受圧特性を、上述のラインLcoに示される設定を有する油圧回路で用いられるノーマルクローズタイプのコントロール弁の受圧特性に対して異ならせることで実現することができる。具体的には、ノーマルクローズタイプのコントロール弁13はパイロット圧を受けない場合に全閉状態が維持されるようにスプリングから常時付勢力を受け、パイロット圧が増加するに従い全開状態に近づく。このスプリングの弾性力(ばね定数)を上述のラインLcoに示される設定を有する油圧回路のコントロール弁のスプリングよりも小さくすれば、ラインLinによって示されるような設定が得られる。
【0036】
より具体的には、例えば次のような手順を実施することで、ラインLinによって示されるような設定が得られる。まず、パイロットポンプ10が吐出する操作弁11流入前の作動油の出力圧を特定する。特定した出力圧に基づき、操作レバー11Aの操作量が最大操作量Smaxよりも小さい所定操作量Sdeとなった際に、操作弁11及び全開状態の電磁比例弁12を介してコントロール弁13に供給される作動油の出力圧を計算する。次いで、この計算した出力圧によって全開状態となるコントロール弁13の受圧特性、つまりスプリングの特性を設定する。
【0037】
このように本実施の形態にかかる油圧回路1及び上述のラインLcoに示される設定を有する油圧回路のいずれにおいても、電磁比例弁は自身を通過する作動油の出力圧をその開度を絞ることで調節する。この際、これらの油圧回路においては、操作レバーが或る操作量になった際に操作弁が出力する作動油の出力圧が操作レバーに対する操作量に応じて機械的に決定されるものであるため、この作動油の出力圧は電磁比例弁の開度を大きくしたとしても増加させることはできない。したがって、電磁比例弁で調節されたパイロット圧によってコントロール弁が調節可能なアクチュエータへの出力圧の範囲は、本実施の形態にかかる油圧回路1では、ラインLinよりも下側の範囲となり、ラインLcoに示される設定を有する油圧回路では、ラインLcoよりも下側の範囲となる。
【0038】
すなわち、本実施の形態にかかる油圧回路1では電磁比例弁12を調節することで、図3(A)に示すハッチングを付した範囲においてアクチュエータへの出力圧を調節でき、ラインLcoに示される設定を有する油圧回路では、図3(B)に示すハッチングを付した範囲においてアクチュエータへの出力圧を調節できる。
【0039】
ここで、図3の(A)と(B)とを対比して明らかなように、本実施の形態では、ラインLcoに示される設定を有する油圧回路よりも広い範囲においてアクチュエータへの出力圧を調節することが可能となる。具体的に本実施の形態にかかる油圧回路1では、電磁比例弁12に対する励磁電流を調節することで、ラインLcoに示される設定を有する油圧回路では設定することが不能なラインLcoよりも上側にくるラインLadに示されるようなアクチュエータへの出力圧を得ることができる。そのため、アクチュエータの動作パターンを柔軟に設定することが可能となる。
【0040】
なお、本実施の形態にかかる油圧回路1では、所定操作量Sdeが小さい程、アクチュエータへの出力圧の調節範囲を拡げることができる。所定操作量Sdeの値は特に限られるものではないが、所定操作量Sdeを最大操作量Smaxの95%以下にすれば、アクチュエータへの出力圧の調節を比較的柔軟に行うことが可能となる。なお、所定操作量Sdeは、最大操作量Smaxの90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましく、50%以下であることが一層好ましい。
【0041】
以上のように本実施の形態にかかる油圧回路1では、操作レバー11Aの操作量が最大操作量Smaxよりも小さい所定操作量Sdeとなった際に電磁比例弁12からコントロール弁13に出力される作動油によってコントロール弁13の開度が全開となる。このような設定によって、コントロール弁13と操作弁11との間に設けられるネガティブタイプの電磁比例弁12からコントロール弁13に対してパイロット操作用の作動油を供給する場合において、作動油の出力圧を広い調節範囲において柔軟に調節することができ、これにより、コントロール弁13によって制御されるアクチュエータの動作パターンを柔軟に設定することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態では電磁比例弁12がネガティブタイプであることで、電磁比例弁12を非励磁の状態とした際に、操作弁11のみによってパイロットポンプ10からの作動油の出力圧を調節してコントロール弁13に出力することが可能であることで、フェイルセーフ機能が確保される。このようなフェイルセーフ機能を構成を複雑にすることなく確保できる点においても有用である。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、上述の各実施の形態においては、各種の変更が行われてもよい。例えば、上述の実施の形態では、フェイルセーフ機能を構成を複雑にすることなく確保するための、電磁比例弁12をネガティブタイプにしたが、電磁比例弁12はポジティブタイプの電磁比例弁であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…油圧回路
10…パイロットポンプ
11…操作弁
11A…操作レバー
12…電磁比例弁
13…コントロール弁
14…アクチュエータポンプ
15…油圧アクチュエータ
16…制御装置
20…パイロット操作用スプール
131…アクチュエータ操作用スプール
図1
図2
図3