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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20221111BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20221111BHJP
   H05K 7/04 20060101ALI20221111BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
H05K9/00 R
H05K7/04 K
H01F17/06 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018165185
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020039050
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】平島 光
(72)【発明者】
【氏名】田中 佐和
【審査官】宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127756(JP,A)
【文献】特開2016-034180(JP,A)
【文献】特開2018-050034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H7/01
H05K7/04,9/00
H01F17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコアと、前記コアに挿通される棒状の導電体と、前記導電体に電気接続される回路基板と、を備え、
前記回路基板は、その主面が前記導電体の長手方向において前記コアに対向するように、前記コアに対して前記導電体の長手方向に並べて配され
電磁気的なノイズを遮蔽するシールド板部を備え、
前記導電体は、前記シールド板部をその板厚方向に貫通し、
前記シールド板部は、前記回路基板に含まれるフィルタ装置。
【請求項2】
前記コア、前記導電体、前記回路基板、及び、前記シールド板部を収容し、電磁気的なノイズを遮蔽するシールド用ケースを備え、
前記シールド板部は、前記シールド用ケースの収容領域を、板厚方向における前記シールド板部の両側に位置する二つの区画領域に区画する請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
環状のコアと、前記コアに挿通される棒状の導電体と、前記導電体に電気接続される回路基板と、を備え、
前記回路基板は、その主面が前記導電体の長手方向において前記コアに対向するように、前記コアに対して前記導電体の長手方向に並べて配され
電磁気的なノイズを遮蔽するシールド板部を備え、
前記導電体は、前記シールド板部をその板厚方向に貫通し、
前記コア、前記導電体、前記回路基板、及び、前記シールド板部を収容し、電磁気的なノイズを遮蔽するシールド用ケースを備え、
前記シールド板部は、前記シールド用ケースの収容領域を、板厚方向における前記シールド板部の両側に位置する二つの区画領域に区画するフィルタ装置。
【請求項4】
前記シールド用ケースが、少なくとも前記シールド用ケースの底面から上方に向かう一方向に開口するように形成され、
前記一方向に延びる前記シールド用ケースの内側面には、前記シールド板部をその板厚方向から保持すると共に、前記シールド板部を前記一方向に案内する案内部材が設けられている請求項2又は請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記導電体は、前記回路基板をその板厚方向に貫通する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記導電体を複数備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電源装置では、電磁気的なノイズが発生する。このため、電源装置の配線には、このようなノイズを除去するためのフィルタ装置が設けられる。
特許文献1には、環状のコアと、コアに挿通された棒状の導電体(導電バー)と、導電体に電気接続された回路基板と、を備えるフィルタ装置が開示されている。回路基板の主面には、コアと共にノイズを除去するための回路を構成するコンデンサ等の回路部品が搭載される。特許文献1のフィルタ装置では、コアが回路基板における回路部品の配置に影響を与えないように、導電体を、回路基板の主面に沿って回路基板の外側まで延ばし、回路基板の外側においてコアに挿通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-093658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のフィルタ装置では、コアと回路基板とが回路基板の主面に沿う方向(導電体の長手方向)に配列されるため、導電体の長手方向におけるフィルタ装置の寸法が大きくなってしまう。すなわち、特許文献1の構成では、フィルタ装置の小型化を図ることが難しい、という問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、小型化を図ることが可能なフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、環状のコアと、前記コアに挿通される棒状の導電体と、前記導電体に電気接続される回路基板と、を備え、前記回路基板は、その主面が前記導電体の長手方向において前記コアに対向するように、前記コアに対して前記導電体の長手方向に並べて配され、電磁気的なノイズを遮蔽するシールド板部を備え、前記導電体は、前記シールド板部をその板厚方向に貫通し、前記シールド板部は、前記回路基板に含まれるフィルタ装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、環状のコアと、前記コアに挿通される棒状の導電体と、前記導電体に電気接続される回路基板と、を備え、前記回路基板は、その主面が前記導電体の長手方向において前記コアに対向するように、前記コアに対して前記導電体の長手方向に並べて配され、電磁気的なノイズを遮蔽するシールド板部を備え、前記導電体は、前記シールド板部をその板厚方向に貫通し、前記コア、前記導電体、前記回路基板、及び、前記シールド板部を収容し、電磁気的なノイズを遮蔽するシールド用ケースを備え、前記シールド板部は、前記シールド用ケースの収容領域を、板厚方向における前記シールド板部の両側に位置する二つの区画領域に区画するフィルタ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルタ装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係るフィルタ装置を示す斜視図である。
図2図1のフィルタ装置において、コア、導電体及び回路基板をシールド用ケースから取り外した状態を示す斜視図である。
図3図2のコア、導電体及び回路基板を分解した状態を示す分解斜視図である。
図4図1のフィルタ装置をZ軸正方向側から見た断面を模式的に示す図である。
図5図1のフィルタ装置をY軸負方向側から見た断面を模式的に示す図である。
図6図2のコア、導電体及び回路基板をX軸負方向側から見た断面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係るフィルタ装置を示す断面図である。
図8図7のVIII-VIII矢視断面図である。
図9図7のIX-IX矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第一実施形態〕
以下、図1~6を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
本実施形態に係るフィルタ装置は、電気配線に流れる電流から電磁気的なノイズを除去する装置である。図1~3に示すように、本実施形態のフィルタ装置1は、コア2と、導電体3と、回路基板4と、を備える。また、本実施形態のフィルタ装置1は、シールド板部5と、シールド用ケース6と、を備える。
【0011】
図3に示すように、コア2は、環状に形成されている。コア2は、図示例のように円形の環状に形成されてよいし、例えば矩形や多角形の環状に形成されてもよい。コア2は、フェライト系、アモルファス系などの高透磁率材料によって構成される。本実施形態のフィルタ装置1は、コア2を二つ備える。二つのコア2は、コア2の軸方向(X軸方向)に間隔をあけて配される。
【0012】
図3~5に示すように、導電体3は、一方向に延びる棒状に形成されている。本実施形態において、導電体3は、一方向に延びる帯板状に形成されている。導電体3は、コア2に挿通される。導電体3は、コア2に挿通された状態でコア2の軸方向(X軸方向)に延びる。
導電体3は、例えば電源と負荷装置とを接続する配線として機能する。すなわち、導電体3の長手方向(X軸方向)の第一端部11は、例えば電源等に電気接続するための端子(入力側端子)として機能する。また、導電体3の長手方向の第二端部12は、例えば負荷装置等に電気接続するための端子(出力側端子)として機能する。
【0013】
図3~6に示すように、本実施形態のフィルタ装置1は、導電体3を四つ備える。四つの導電体3は、これらの長手方向が互いに平行するように、導電体3の長手方向に直交する方向に互いに間隔をあけて位置する。
四つの導電体3は、例えばその長手方向に直交する方向(例えばY軸方向)に一列に並べられてよい。本実施形態において、導電体3は、図6に示すように、その長手方向に直交する第一方向(Y軸方向)に二つ配列されると共に、長手方向及び第一方向に直交する第二方向(Z軸方向)に二つ配列される。すなわち、四つの導電体3は、格子状に配列されている。言い換えれば、四つの導電体3は、導電体3の長手方向を軸とした周方向(コア2の周方向)に配列される。なお、本実施形態において、帯板状に形成された四つの導電体3は、いずれもその板厚方向が第一方向に向くように配されている。
【0014】
図4~6に示すように、互いに隣り合う導電体3の間には、隣り合う導電体3同士の電気的な絶縁を確保するための絶縁部7が介在する。
具体的に、絶縁部7は、第一絶縁壁部21と、第二絶縁壁部22と、を含む。第一絶縁壁部21は、第一方向に配列された二つの導電体3の間で第二方向に延びている。第一絶縁壁部21は、第二方向に配列された二つの導電体3の両端よりも外側まで延びている。第二絶縁壁部22は、第二方向に配列された二つの導電体3の間で第一方向に延び、第一絶縁壁部21と交差する。第二絶縁壁部22は、第一方向に配列された二つの導電体3の両端よりも外側まで延びている。すなわち、絶縁部7は、図6に示すように、第一絶縁壁部21及び第二絶縁壁部22によって、導電体3の長手方向に直交する断面で十字状に形成されている。
【0015】
また、絶縁部7は、第三絶縁壁部23をさらに含む。第三絶縁壁部23は、第一方向における第二絶縁壁部22の両端から第二絶縁壁部22の厚さ方向(第二方向)の両側に延びている。第三絶縁壁部23は、第二方向に配列された二つの導電体3の両端よりも外側まで延びている。これにより、各導電体3は、第一方向において第一絶縁壁部21と第三絶縁壁部23との間に位置する。第二方向における第三絶縁壁部23の長さは、第一絶縁壁部21よりも短い。
以上のように構成される本実施形態の絶縁部7は、例えば1つ又は複数の絶縁シートに折り曲げ加工を施すことで構成することができる。
【0016】
図5に示すように、四つの導電体3の両端部11,12は、導電体3同士の電気的な短絡を防ぐために、四つの導電体3の長手方向の中途部分よりも互いに離れて位置している。また、四つの導電体3の第一端部11(入力側端子)は、四つの導電体3の第二端部12(出力側端子)よりも互いに離れて位置している。
具体的に、四つの導電体3の第一端部11は、それぞれ折り曲げ加工されることで、導電体3の板厚方向(第二方向;Z軸方向)に互いに離れて位置する。一方、四つの導電体3の第二端部12に関しては、導電体3の板厚方向に配列された二つの導電体3のうち一方の導電体3の第二端部12だけが折り曲げ加工される。これにより、導電体3の板厚方向に並ぶ二つの導電体3の第二端部12が、導電体3の板厚方向において互いに離れて位置する。なお、図3に示すように、導電体3の幅方向(第一方向;Y軸方向)に並ぶ二つの導電体3の第二端部12は、導電体3の板厚方向において同じ位置に配される。
四つの導電体3の第二端部12同士の間隔を、第一端部11同士の間隔よりも小さくすることで、四つの導電体3を前述のコア2や後述する回路基板4、シールド板部5に対して容易に貫通させることができる。
【0017】
図3~5に示すように、各導電体3の長手方向の両端部11,12には、ネジ13が取り付けられている。ネジ13は、電源や負荷装置と接続するための各種配線を導電体3の各端部11,12に固定するために設けられている。
【0018】
図2~5に示すように、回路基板4は、その主面31が導電体3の長手方向においてコア2に対向するように、コア2に対して導電体3の長手方向に並べて配される。回路基板4の主面31は、回路基板4の板厚方向に直交する回路基板4の面である。本実施形態において、回路基板4は、その主面31が導電体3の長手方向に対して直交するように配されている。
【0019】
図3~6に示すように、本実施形態の回路基板4には、その板厚方向に貫通する基板挿通孔32が形成されている。本実施形態では、基板挿通孔32が回路基板4の主面31の中央部分に形成されている。基板挿通孔32には、導電体3が挿通される。すなわち、導電体3は、回路基板4をその板厚方向に貫通する。
本実施形態において、基板挿通孔32には、四つの導電体3の他に、前述した絶縁部7も挿通される。回路基板4の主面31側から見た基板挿通孔32の平面視形状は、任意であってよいが、本実施形態では図6に示すように絶縁部7の断面形状に対応する十字状に形成されている。
【0020】
図3~6に示すように、回路基板4の主面31には、回路部品33が搭載されている。回路部品33は、コア2及び導電体3と共に導電体3におけるノイズを除去するための回路を構成する。回路部品33は、例えばコンデンサである。回路部品33は、例えば回路基板4の両方の主面31a,31bに搭載されてよい。本実施形態において回路部品33は、回路基板4の一方の主面31aのみに搭載されている。
【0021】
回路基板4は、導電体3に電気接続される。本実施形態の回路基板4は、これに導電体3を貫通させた状態で導電体3に電気接続される。具体的に、回路基板4は、接続体8によって導電体3に電気接続される。接続体8は、導電性を有する帯板をL字状に折り曲げることで形成されている(特に図5参照)。接続体8は、導電体3の面及び回路基板4の一方の主面31aに対してそれぞれ面接触するように配される。接続体8は、回路基板4の一方の主面31aに半田付け等することで固定される。また、接続体8は、ネジ止め等により導電体3に固定される。これにより、回路基板4と導電体3とが、電気接続される。
【0022】
図4,5に示すように、本実施形態のフィルタ装置1は、上記した回路基板4を二つ備える。二つのコア2(2A,2B)及び二つの回路基板4(4A,4B)は、四つの導電体3及び絶縁部7を挿通させた状態で、導電体3の長手方向(X軸方向)に交互に配列される。具体的に、第一回路基板4Aは、その他方の主面31bが第一コア2Aに対向し、かつ、一方の主面31aが第二コア2Bに対向するように、二つのコア2の間に配される。第二回路基板4Bは、その他方の主面31bが第二コア2Bに対向し、かつ第一回路基板4Aとの間に第二コア2Bが位置するように配される。各コア2は、例えば回路基板4や回路部品33に接触するように配されてもよいが、本実施形態では、回路基板4や回路部品33に対して間隔をあけて配される。
【0023】
シールド板部5は、導電性を有する材料によって形成され、電磁気的なノイズを遮蔽する。シールド板部5には、その板厚方向に貫通するシールド挿通孔41が形成されている。シールド挿通孔41には、導電体3が挿通される。すなわち、導電体3は、シールド板部5をその板厚方向に貫通する。
本実施形態のシールド板部5は、二つの回路基板4にそれぞれ含まれている。すなわち、本実施形態のフィルタ装置1は、二つのシールド板部5を備える。シールド板部5は、例えば回路基板4の内部にある配線層によって構成されてよい。シールド板部5のシールド挿通孔41は、回路基板4の基板挿通孔32に対応する位置に形成されている。
【0024】
図1,2,4,5に示すように、シールド用ケース6は、上記したコア2、導電体3、及び、回路基板4を収容する収容領域51を有する。シールド用ケース6は、導電性を有する材料によって形成され、電磁気的なノイズを遮蔽する。一つのシールド板部5は、シールド用ケース6の収容領域51を、板厚方向におけるシールド板部5の両側に位置する二つの区画領域52に区画する。本実施形態では、二つのシールド板部5が、シールド用ケース6の収容領域51を三つの区画領域52(52A,52B,52C)に区画する。
【0025】
具体的に、本実施形態のシールド用ケース6は、底板部53と、一対の側板部54と、を備える。底板部53は、シールド用ケース6の底面55を構成する。一対の側板部54は、底板部53の幅方向(Y軸方向)の両側において底面55から延びるように形成されている。一対の側板部54は、それぞれシールド用ケース6の内側面56を構成する。底板部53及び一対の側板部54は、導電性を有する板材に折り曲げ加工を施すことで一体に形成することができる。
これら底板部53(底面55)及び一対の側板部54(内側面56)によって囲まれた空間が、シールド用ケース6の収容領域51となる。これにより、シールド用ケース6は、その底面55からその上方に向かう一方向(Z軸正方向)に開口するように形成されている。また、シールド用ケース6は、底板部53の長手方向(X軸方向)の両側にも開口するように形成されている。
【0026】
二つのコア2、四つの導電体3及び二つ回路基板4は、四つの導電体3及び絶縁部7を二つのコア2及び二つの回路基板4に挿通させた状態で、シールド用ケース6の収容領域51に配される。
この状態においては、図1,4,5に示すように、導電体3の長手方向が底板部53の長手方向(X軸方向)に向いている。二つのシールド板部5は、それぞれシールド板部5の板厚方向が底板部53の長手方向に向くように配される。また、二つのシールド板部5は、底板部53の長手方向に間隔をあけて配される。各シールド板部5は、シールド板部5の縁とシールド用ケース6の内面(底面55、内側面56)との間に隙間が生じないように、あるいは、当該隙間が小さくなるように、配されるとよい。これにより、二つのシールド板部5は、シールド用ケース6の収容領域51を、底板部53の長手方向に配列された三つの区画領域52(52A,52B,52C)に区画することができる。
【0027】
四つの導電体3及び二つ回路基板4をシールド用ケース6の収容領域51に配した状態において、各導電体3の長手方向の両端部11,12は、図1,4,5に例示するように長手方向(X軸方向)における側板部54の両端から収容領域51の外側に突出してもよいが、例えば突出しなくてもよい。
【0028】
図1,2,4,5に示すように、収容領域51を構成するシールド用ケース6の内側面56には、絶縁シート57が配されている。絶縁シート57は、シールド用ケース6の内側面56と収容領域51に配された導電体3や回路基板4との間で電気的な短絡が生じることを防ぐ。なお、絶縁シート57は、例えばシールド用ケース6の底面55にも配されてよい。
【0029】
本実施形態において、底面55からその上方に向かう一方向(Z軸方向)に延びるシールド用ケース6の内側面56には、案内部材58が設けられている。案内部材58は、収容領域51に収容される回路基板4(シールド板部5)をその板厚方向から保持する。また、案内部材58は、回路基板4(シールド板部5)を一方向に案内する。
案内部材58の具体的な構成や形状は任意であってよい。本実施形態の案内部材58には、一方向に延びる溝部59が形成されている。この溝部59に、回路基板4(シールド板部5)の縁部が入り込むことで、案内部材58は、回路基板4(シールド板部5)をその板厚方向から保持することができる。また、回路基板4(シールド板部5)の縁部が溝部59に入り込んだ状態では、回路基板4を溝部59の長手方向(すなわち一方向)に案内することができる。
【0030】
本実施形態では、二つの案内部材58によって同一の回路基板4(シールド板部5)を保持すると共に溝部59の長手方向(一方向)に案内する。二つの案内部材58は、底板部53の幅方向に対向する一対の内側面56にそれぞれ設けられている。底板部53の幅方向における同一の回路基板4(シールド板部5)の両縁部が、これら二つの案内部材58の溝部59にそれぞれ入り込むことで、回路基板4(シールド板部5)を安定に保持することができる。また、二つの案内部材58の溝部59によって、安定した状態で同一の回路基板4(シールド板部5)を溝部59の長手方向に案内することができる。
本実施形態のフィルタ装置1は、二つの回路基板4(シールド板部5)を備えるため、シールド用ケース6には、二つの案内部材58が二組設けられている。
【0031】
案内部材58は、例えばシールド用ケース6の内側面56に直接接触するように設けられてよいが、本実施形態では、シールド用ケース6の内側面56との間に絶縁シート57が介在するように設けられている。
【0032】
本実施形態のフィルタ装置1は、例えば図1に示すように、一方向(Z軸正方向)に開口するシールド用ケース6の開口部(以下、上方開口部と呼ぶ。)を塞ぐ蓋部材9をさらに備えてよい。
蓋部材9は、シールド用ケース6の上方開口部に対して着脱可能に設けられるとよい。蓋部材9は、例えば、シールド用ケース6の上方開口部をなす一対の側板部54の先端に形成された鍔部60に重ねて配された上で、当該鍔部60に対してねじ止め等によって固定されてよい。蓋部材9の具体的な形状は、平板状など任意の形状であってよい。
【0033】
また、蓋部材9は、例えばシールド用ケース6と同様に導電性を有する板材によって形成されるとよい。この場合、蓋部材9は、シールド用ケース6の収容領域51に収容されたシールド板部5の縁との間に隙間が生じないように、あるいは、当該隙間が小さくなるように、シールド用ケース6の上方開口部に設けられるとよい。
また、蓋部材9のうちシールド用ケース6の収容領域51側に向く面には、例えば絶縁シートが配されてよい。この場合、絶縁シートによって蓋部材9と収容領域51に配された導電体3や回路基板4との間で電気的な短絡が生じることを防ぐことができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態のフィルタ装置1によれば、回路基板4は、その主面31が導電体3の長手方向(X軸方向)においてコア2に対向するように、コア2に対して導電体3の長手方向に並べて配される。すなわち、回路基板4の主面31が導電体3の長手方向に対して直交するように、コア2と回路基板4とが導電体3の長手方向に配列される。このため、コア2と回路基板4とが回路基板4の主面31に沿う方向(導電体3の長手方向)に配列された従来の構成と比較して、導電体3の長手方向におけるフィルタ装置1の寸法を小さくできる。したがって、フィルタ装置1の小型化を図ることができる。
【0035】
また、本実施形態のフィルタ装置1では、導電体3が回路基板4をその板厚方向に貫通している。特に本実施形態では、導電体3が回路基板4の中央部分を貫通している。このため、導電体3の長手方向(X軸方向)から見て、コア2と回路基板4とが重なる領域を大きくすることができる(例えば図6参照)。すなわち、導電体3の長手方向に直交する方向(Y軸方向、Z軸方向)におけるフィルタ装置1の寸法を小さくして、フィルタ装置1の小型化を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態のフィルタ装置1によれば、複数(例えば三つ以上)の導電体3を備えていても、フィルタ装置1の小型化を図りながら、これら複数の導電体3を容易に回路基板4に接続することができる。
例えば、複数の導電体3の長手方向が互いに平行するように、かつ回路基板4の主面31に平行するように、複数の導電体3が回路基板4の主面31上に配される場合には、複数の導電体3を互いに近づけて配置すると、一の導電体3と回路基板4との接続部分が、他の導電体3によって覆われてしまう。このため、一部の導電体3と回路基板4との接続が難しくなる。
これに対し、本実施形態において、導電体3はその長手方向が回路基板4の主面31に対して直交するように配される。このため、複数の導電体3を互いに近づけて配置しても、一の導電体3と回路基板4との接続部分(例えば図4,5に示した導電体3や回路基板4と接続体8との接続部分)が、他の導電体3によって覆われることを防止できる。すなわち、複数の導電体3を互いに近くに配置することでフィルタ装置1の小型化を図りつつ、複数の導電体3を容易に回路基板4に接続することができる。
【0037】
また、本実施形態のフィルタ装置1によれば、コア2に挿通される複数の導電体3が、コア2の周方向に配列されている。このため、複数の導電体3が一列に並べられる場合と比較して、コア2の大きさ(特に導電体3が通るコア2の孔の大きさ)を小さくして、フィルタ装置1の小型化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態のフィルタ装置1によれば、導電体3がシールド板部5をその板厚方向に貫通する。このため、シールド板部5の板厚方向の一方側に位置する導電体3の第一部位(例えば導電体3の第一端部11側の部位)における電磁気的なノイズが、シールド板部5の他方側に位置する導電体3の第二部位(例えば導電体3の第二端部12側の部位)に影響することを抑制できる。したがって、本実施形態のフィルタ装置1では、ノイズを効果的に除去することができる。
【0039】
また、本実施形態のフィルタ装置1によれば、シールド板部5が回路基板4に含まれる。このため、回路基板4とシールド板部5とが別個に形成され、導電体3の長手方向に配列される場合と比較して、導電体3の長手方向におけるフィルタ装置1の寸法を小さくできる。したがって、フィルタ装置1の小型化をさらに図ることができる。
【0040】
また、本実施形態のフィルタ装置1によれば、コア2、導電体3、回路基板4及びシールド板部5がシールド用ケース6の収容領域51に収容された状態では、シールド板部5がシールド用ケース6の収容領域51を二つの区画領域52に区画する。このため、シールド板部5の一方側に位置する導電体3の第一部位における電磁気的なノイズが、シールド板部5の周囲からシールド板部5の他方側に位置する導電体3の第二部位側に回り込もうとしても、当該ノイズはシールド用ケース6によって遮蔽される。これにより、導電体3の第一部位におけるノイズが導電体3の第二部位に影響することをさらに抑制できる。したがって、本実施形態のフィルタ装置1では、ノイズをさらに効果的に除去することができる。
さらに、シールド用ケース6の上方開口部が、導電性を有する蓋部材9によって塞がれる場合には、上方開口部から周辺回路への電磁気的なノイズの伝播を遮蔽することができる。なお、周辺回路は、例えばシールド用ケース6(収容領域51)の外側に配されて電源や負荷装置などを構成する回路である。また、シールド板部5の周囲を回り込もうとする電磁気的なノイズを蓋部材9によっても遮蔽することができる。すなわち、フィルタ装置1におけるノイズの除去効果をさらに高めることができる。
【0041】
また、本実施形態のフィルタ装置1によれば、シールド用ケース6の内側面56には、回路基板4(シールド板部5)をその板厚方向から保持し、かつシールド用ケース6が開口する方向(Z軸方向)に案内する案内部材58が設けられている。これにより、回路基板4(シールド板部5)をシールド用ケース6に収容する際には、回路基板4(シールド板部5)が案内部材58によって保持されるため、回路基板4(シールド板部5)をシールド用ケース6内において簡単に位置決めすることができる。特に、本実施形態では、コア2及び導電体3が回路基板4(シールド板部5)に取り付けられた状態でシールド用ケース6内に収容されるため、コア2及び導電体3もシールド用ケース6内において簡単に位置決めできる。
また、本実施形態のフィルタ装置1では、複数の回路基板4(シールド板部5)がそれぞれ案内部材58によって位置決めされるため、複数の回路基板4(シールド板部5)の相対的な位置決めも容易に行うことができる。
【0042】
第一実施形態のフィルタ装置1において、回路基板4は、例えば回路基板4の主面31が導電体3の長手方向に対して傾斜するように配されてもよい。すなわち、回路基板4は、少なくとも回路基板4の主面31が導電体3の長手方向に対して交差するように配されればよい。
【0043】
第一実施形態のフィルタ装置1において、導電体3は、例えば回路基板4を貫通しなくてもよい。導電体3は、例えば回路基板4の縁に隣り合うように配されてもよい。
【0044】
第一実施形態のフィルタ装置1において、シールド板部5は、例えば回路基板4と別個に形成されてよい。この場合、シールド板部5は、例えば、導電体3の長手方向において回路基板4とコア2との間に配されてよい。
【0045】
第一実施形態のフィルタ装置1において、シールド用ケース6は、例えばその底面55からその上方に向かう一方向(例えば図1,2においてZ軸正方向)にのみ開口するように形成されてもよい。
【0046】
〔第二実施形態〕
次に、図7~9を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0047】
図7~9に示すように、本実施形態のフィルタ装置101は、第一実施形態と同様に、コア2と、導電体103と、回路基板104と、を備える。また、本実施形態のフィルタ装置101は、ベース部109を備える。
コア2は、第一実施形態と同様である。本実施形態のフィルタ装置101は、コア2を三つ備える。三つのコア2は、コア2の軸方向(X軸方向)に配列されている。
【0048】
導電体103は、第一実施形態の導電体3と同様に、一方向に延びる帯板状に形成され、例えば電源と負荷装置とを接続する配線として機能する。導電体103は、コア2に挿通される。本実施形態において、導電体103は、三つのコア2に挿通される。導電体103は、コア2に挿通された状態でコア2の軸方向(X軸方向)に延びる。
本実施形態のフィルタ装置101は、導電体103を二つ備える。二つの導電体103は、これらの長手方向が互いに平行するように、導電体103の長手方向に直交する方向に互いに間隔をあけて位置する。本実施形態において、二つの導電体103は、その板厚方向(Z軸方向)に間隔をあけて配列されている。
【0049】
図7に示すように、二つの導電体103の間には、第一スペーサ171が挟み込まれている。これにより、二つの導電体103は、互いに間隔をあけた状態に保持される。第一スペーサ171は、例えば電気的な絶縁性を有するとよい。
【0050】
図7~9に示すように、本実施形態の回路基板104は、コア2に挿入される。コア2には、例えば回路基板104の全体が挿入されてよいが、本実施形態では、回路基板104の一部だけが挿入され、コア2の軸方向における回路基板104の両端が、コア2の外側に突出する。
コア2に挿入された回路基板104は、その主面131が導電体103の長手方向に平行するように配される。回路基板104は、例えばその板厚方向が二つの導電体103の配列方向に対して傾斜又は直交するように配されてよい。本実施形態の回路基板104は、その板厚方向が二つの導電体103の配列方向に一致するように配される。また、本実施形態において、回路基板104は二つの導電体103の間に配される。
【0051】
回路基板104は、第一実施形態と同様に、導電体103に電気接続される。本実施形態において、回路基板104は、図7,9に示すように、回路基板104から各導電体103まで延びる棒状の接続体108によって各導電体103に電気接続される。各接続体108の長手方向の第一端は、例えばネジ止め等によって各導電体103に固定されてよい。各接続体108の第二端は、例えば回路基板104の一方の主面131aに半田付けされた端子135にネジ止めされることで、回路基板104に固定されてよい。
回路基板104と各導電体103との間に上記した接続体108が介在することで、回路基板104と各導電体103との間隔が保持される。すなわち、接続体108はスペーサの機能も有する。これにより、回路基板104と各導電体103との間で不要な電気的な短絡が生じることを防止できる。
【0052】
図7~9に示すように、回路基板104の主面131には、第一実施形態と同様の回路部品33が搭載されている。回路部品33は、例えば回路基板104の両方の主面131(131a,131b)に搭載されてよいが、本実施形態では回路基板104の一方の主面131aのみに搭載されている。回路基板104の一方の主面131aは、二つの導電体103のうち第二導電体103Bに対向する面である。
【0053】
図7,8に示すように、本実施形態のフィルタ装置101は、上記した回路基板104を二つ備える。二つの回路基板104(104A,104B)は、コア2の軸方向(導電体103の長手方向)に配列される。第一回路基板104Aは二つのコア2に挿通され、第二回路基板104Bは残り一つのコア2に挿通されている。図示例において、第一回路基板104Aが挿通される二つのコア2と、第二回路基板104Bが挿通される一つのコア2とは、コア2の軸方向に間隔をあけて位置するが、これに限ることはない。
【0054】
図7~9に示すように、ベース部109は、上記したコア2、導電体103及び回路基板104を載置する載置面109aを有する。ベース部109は、図示例のような平板状に形成されてよいが、例えばコア2、導電体103及び回路基板104を収容するケース(例えば第一実施形態のシールド用ケース6と同様に電磁気的なノイズを遮蔽するケース)として構成されてもよい。
コア2、導電体103及び回路基板104は、導電体103及び回路基板104をコア2に挿入又は挿通させた状態で、ベース部109の載置面109aに配される。この状態において、コア2の軸方向や導電体103の長手方向は、ベース部109の載置面109aに平行する。また、第一導電体103A、回路基板104、第二導電体103Bが、この順番でベース部109の載置面109aから離れる方向に配列される。
【0055】
二つの導電体103のうち第一導電体103Aは、ベース部109の載置面109a上に配された状態で、第二スペーサ172によってベース部109の載置面109a上に支持される。第二スペーサ172は、ベース部109と第一導電体103Aとの間に挟み込まれる。第二スペーサ172は、例えばネジ止め等によって第一導電体103Aやベース部109に対して固定されてよい。
【0056】
各回路基板104は、ベース部109の載置面109a上に配された状態で、第三スペーサ173によってベース部109の載置面109a上に支持される。第三スペーサ173は、ベース部109と各回路基板104との間に挟み込まれる。第三スペーサ173は、例えばネジ止め等によって各回路基板104やベース部109に対して固定されてよい。
ベース部109が導電性を有する場合、第三スペーサ173は、例えば、導電性を有し、回路基板104の接地配線をベース部109に電気接続する接続体として構成されてよい。また、第三スペーサ173は、例えば回路基板104とベース部109とを電気的に絶縁するように設けられてもよい。この場合、第三スペーサ173は、例えば電気的な絶縁性を有するとよい。
【0057】
第二実施形態のフィルタ装置101によれば、回路基板104が導電体103と共にコア2に挿入又は挿通される。このため、コア2と回路基板104とが回路基板104の主面131に沿う方向(導電体103の長手方向)に配列された従来の構成と比較して、導電体103の長手方向におけるフィルタ装置101の寸法を小さくできる。したがって、フィルタ装置101の小型化を図ることができる。
【0058】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0059】
例えば、本発明のフィルタ装置において、コア、導電体、回路基板の数は、任意であってよい。
【符号の説明】
【0060】
1,101 フィルタ装置
2,2A,2B コア
3,103,103A,103B 導電体
4,4A,4B,104,104A,104B 回路基板
5 シールド板部
6 シールド用ケース
31,31a,31b,131,131a,131b 主面
32 基板挿通孔
51 収容領域
52,52A,52B,52C 区画領域
55 底面
56 内側面
58 案内部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9