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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】ウェハー収納容器及びウェハーの収納方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/30 20060101AFI20221111BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
B65D85/30 500
H01L21/68 U
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018167143
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020040679
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】福田 真行
(72)【発明者】
【氏名】永島 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡山 玲子
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/112106(WO,A1)
【文献】特開2000-281172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30-85/48
B65D 85/86
B65D 85/90
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒部及び該第1筒部の一端を閉鎖する第1端壁を有する第1ウェハーケースと、
第2筒部及び該第2筒部の一端を閉鎖する第2端壁を有し、且つ前記第2筒部が前記第1筒部と係合できる第2ウェハーケースと、
前記第1,第2端壁間に配設されたウェハー押さえと、
前記第1,第2ウェハーケースの第1、第2筒部を互いに固定及び固定解除可能にする係合固定手段を備えると共に、
前記第1,第2端壁との間において、前記ウェハー押さえと前記第1端壁によりウェハーを挟持させるようにしたウェハー収納容器であって、
さらに、前記ウェハー押さえと前記ウェハーとの間に、セルロース及びリヨセルからなる群より選ばれる少なくとも1種のセルロース由来の素材を含む不織布の防汚シートを備え、前記ウェハー押さえと前記ウェハーとが前記防汚シートを介して接触していることを特徴とするウェハー収納容器。
【請求項2】
第1筒部及び該第1筒部の一端を閉鎖する第1端壁を有する第1ウェハーケースと、
第2筒部及び該第2筒部の一端を閉鎖する第2端壁を有し、且つ前記第2筒部が前記第1筒部と係合できる第2ウェハーケースと、
前記第1,第2端壁間に配設されたウェハー押さえと、
前記第1,第2ウェハーケースの第1、第2筒部を互いに固定及び固定解除可能にする係合固定手段を備えると共に、
前記第1,第2端壁との間において、前記ウェハー押さえと前記第1端壁によりウェハーを挟持させるようにしたウェハー収納容器にウェハーを収納する方法であって、
前記ウェハー押さえとウェハーとを、セルロース及びリヨセルからなる群より選ばれる少なくとも1種のセルロース由来の素材を含む不織布の防汚シートを介して接触させることを特徴とするウェハーを収納する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハーとウェハー押さえとの摩擦による摩耗粉(以下、異物粒子ともいう)のウェハーへの付着を防ぐウェハー収納容器及びその収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の半導体ウェハー(以下、ウェハーという)を貯蔵及び搬送する方法として、ウェハーケース(ハウジング)内に1枚のウェハーを収納し、このウェハーの上に板状のウェハー押さえ(スプリング)を載せると共にウェハーケースに他のウェハーケース又は蓋体(カバー)を係合させて、ウェハー押さえとウェハーケースとによりウェハーを挟持するようにしたものがある。しかも、このようなウェハーケースを複数段重ねたのち、最上のウェハーケースに蓋体をして複数枚のウェハーの貯蔵及び搬送をする容器が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記容器においては、ウェハー押さえの脚部がウェハーの周縁部に接触し、ウェハーの周縁部をウェハー押さえとウェハーケースとにより挟持する。しかしながら、ウェハー押さえを押圧する蓋体又は他のウェハーケースを開閉する方向に回動させるとき、これに従動してウェハー押さえが蓋体又は上側のウェハーケースと一体に共回りして、ウェハー押さえがウェハーに対して摺動することがある。この時、ウェハー押さえがウェハーに対して摺動するとウェハーが損傷すると共に、ウェハーとウェハー押さえとの摩擦により摩耗粉(異物粒子)がウェハーケース内に発生しウェハー表面が汚染されて、性能を損なう恐れがあった。
【0004】
上記の問題を解決するため、ウェハー押さえを蓋体又は上側のウェハーケースの中央に支持軸で回動可能にし、ウェハーを均一に押さえることができると共に、上下のウェハーケースの相対回動時に共回りする現象、すなわちウェハーとウェハー押さえとの摩擦による異物粒子の発生、及びこれによるウェハーの性能劣化を抑えることができるウェハー収納容器が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭48-28953号公報
【文献】特開2006-56573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等の検討によれば、上記のウェハー押さえが上側のウェハーケースと一体に共回りすることを抑える容器においても、上側のウェハーケースでウェハー押さえが押さえ付けられる際に、ウェハーと接触しているウェハー押さえの脚部がウェハーの径方向に向かって移動することによってもウェハーと擦れて、ウェハーとウェハー押さえとの摩擦により異物粒子が発生する可能性があることが分かった。
【0007】
また、ウェハーが小さい等ウェハー押さえによってウェハー周縁部で挟持できない場合、ウェハー押さえを逆向きに使用し、ウェハー押さえの中央部をウェハーの中央に接触させてウェハーを挟持することもある。この場合、特許文献2に記載のウェハー収納容器のように、ウェハー押さえを蓋体又は上側のウェハーケースの中央に支持軸で回動可能にすることができないため、ウェハー押さえの共回りを抑制できず、ウェハー押さえの中央部がウェハーに対して摺動し、ウェハーとウェハー押さえとの摩擦により異物粒子が発生する可能性がある。また、蓋体又は他のウェハーケースを開閉する方向に回動させるとき、ウェハー又はウェハー押さえがずれることにより、やはりウェハー押さえの中央部がウェハーに対して摺動し、ウェハーとウェハー押さえとの摩擦により異物粒子が発生する可能性がある。
【0008】
ウェハーは評価や輸送のたびにウェハー収納容器に何度も出し入れしながら使用される場合が多いので、何度も異物粒子が付着する。ウェハーに付着した異物粒子は、ウェハー表面を汚染させて製品の歩留まりを低下させるだけではなく、後工程の成膜装置、加工装置、洗浄装置を汚染させることになる。従って、ウェハーへの異物粒子の付着がより抑制されたウェハー収納容器が望まれる。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、ウェハーの出し入れを繰り返してもウェハーへの異物粒子の付着を抑制することができるウェハー収納容器及びウェハーの収納方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った。その結果、ウェハー押さえとウェハーが接触する箇所で異物粒子が観察され、さらに、ウェハー押さえの形状の特徴がそのままウェハーに反映されていることが判明し、ウェハーとウェハー押さえとが、直接接触しないようにすることでウェハーへの異物粒子の付着を抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、第1の本発明は、第1筒部及び該第1筒部の一端を閉鎖する第1端壁を有する第1ウェハーケースと、第2筒部及び該第2筒部の一端を閉鎖する第2端壁を有し、且つ前記第2筒部が前記第1筒部と係合できる第2ウェハーケースと、前記第1,第2端壁間に配設されたウェハー押さえと、前記第1,第2ウェハーケースの第1、第2筒部を互いに固定及び固定解除可能にする係合固定手段を備えると共に、前記第1,第2端壁との間において、前記ウェハー押さえと前記第1端壁によりウェハーを挟持させるようにしたウェハー収納容器であって、さらに、前記ウェハー押さえと前記ウェハーとの間に、セルロース及びリヨセルからなる群より選ばれる少なくとも1種のセルロース由来の素材を含む不織布の防汚シートを備え、前記ウェハー押さえと前記ウェハーとが前記防汚シートを介して接触していることを特徴とするウェハー収納容器である。
【0012】
また、第2の本発明は、第1筒部及び該第1筒部の一端を閉鎖する第1端壁を有する第1ウェハーケースと、第2筒部及び該第2筒部の一端を閉鎖する第2端壁を有し、且つ前記第2筒部が前記第1筒部と係合できる第2ウェハーケースと、前記第1,第2端壁間に配設されたウェハー押さえと、前記第1,第2ウェハーケースの第1、第2筒部を互いに固定及び固定解除可能にする係合固定手段を備えると共に、前記第1,第2端壁との間において、前記ウェハー押さえと前記第1端壁によりウェハーを挟持させるようにしたウェハー収納容器にウェハーを収納する方法であって、前記ウェハー押さえとウェハーとを、セルロース及びリヨセルからなる群より選ばれる少なくとも1種のセルロース由来の素材を含む不織布の防汚シートを介して接触させるウェハー収納方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ウェハー収納容器に防汚シートを備えており、ウェハー押さえとウェハーとを防汚シートを介して接触させることが特徴である。前述のとおり、ウェハーに付着した異物粒子は、ウェハー押さえとウェハーとの摩擦による摩耗粉である。
【0014】
本発明においては、ウェハー押さえと第1端壁とによりウェハーを挟持する際に、ウェハー押さえとウェハーとは防汚シートを介して接触しているので、ウェハー押さえとウェハーとが直接接触することがない。よって、第1ウェハーケースの第1筒部と第2ウェハーケースの第2筒部との固定・固定解除時に、第2ウェハーケースでウェハー押さえが押さえ付けられ又は解放され、ウェハー押さえの脚部がウェハーの径方向に向かって移動しても、ウェハーが小さい等の理由でウェハー押さえでウェハー周縁部を挟持できずウェハー押さえを逆向きに使用した場合に、蓋体又は他のウェハーケースを開閉する方向に回動させるとき、ウェハー又はウェハー押さえがずれることによりウェハー押さえの中央部がウェハーに対して摺動したりしても、ウェハーとウェハー押さえとの摩擦による異物粒子の発生が抑制できる。また、第1ウェハーケースの第1筒部と第2ウェハーケースの第2筒部との固定・固定解除を相対回転により行ない、ウェハー押さえが第2ウェハーケースと共回りしても、ウェハー押さえが防汚シートを介してウェハーと接触していることでウェハー押さえがウェハーに対して摺動することにより発生する異物粒子の発生が抑制できる。異物粒子のないウェハーは、後工程で歩留りを向上させるだけはなく、成膜装置、加工装置、洗浄装置への汚染を防ぐことができる。さらに、外観検査工程や異物粒子を除去する洗浄を省略することができ、生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のウェハー収納容器の一例を模式的に説明する断面図である。
図2】ウェハー押さえの形状の一例を模式的に説明する図である。
図3】ノマルスキー型微分干渉顕微鏡により異物粒子による摩擦痕が観察されなかったウェハーの画像である。
図4】ノマルスキー型微分干渉顕微鏡により異物粒子による摩擦痕が観察されたウェハーの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のウェハー収納容器について詳細に説明する。
【0017】
<ウェハー収納容器>
本発明のウェハー収納容器は、第1筒部及び該第1筒部の一端を閉鎖する第1端壁を有する第1ウェハーケースと、第2筒部及び該第2筒部の一端を閉鎖する第2端壁を有し、且つ前記第2筒部容器が前記第1筒部容器と係合できる第2ウェハーケースと、前記第1,第2端壁間に配設されたウェハー押さえと、前記第1,第2ウェハーケースの第1、第2筒部を互いに固定及び固定解除可能にする係合固定手段を備えると共に、前記第1,第2端壁との間において、前記ウェハー押さえと前記第1端壁によりウェハーを挟持させるようにしたウェハー収納容器であって、さらに、前記ウェハー押さえと前記第1端壁の間に、防汚シートを備えることが特徴である。
【0018】
本発明における、第1筒部及び該第1筒部の一端を閉鎖する第1端壁を有する第1ウェハーケースと、第2筒部及び該第2筒部の一端を閉鎖する第2端壁を有し、且つ前記第2筒部が前記第1筒部と係合できる第2ウェハーケースと、前記第1,第2端壁間に配設されたウェハー押さえと、前記第1,第2ウェハーケースの第1、第2筒部を互いに固定及び固定解除可能にする係合固定手段を備えると共に、前記第1,第2端壁との間において、前記ウェハー押さえと前記第1端壁によりウェハーを挟持させるようにしたウェハー収納容器として用いることができるウェハー収納容器としては、特公昭48-28953号公報に記載のウェハー貯蔵及び輸送容器、特開2006-56573号公報に記載のウェハー搬送容器等が挙げられる。
【0019】
以下、図1に基づいて本発明のウェハー収納容器を説明する。
【0020】
<ウェハーケース>
本発明のウェハー収納容器において、第1ウェハーケース(1)は、第1筒部(6)及び該第1筒部(6)の一端を閉鎖する第1端壁(7)を有する。第1筒部(6)と第1端壁(7)とにより、ウェハー(5)を収納する収納部を構成し、トレーとして機能する。第1端壁(7)の形状は収納するウェハー(5)の周縁部のみが接触するものであれば良く、下方に円錐状又は凹面に湾曲した形状であることが好ましい。ウェハー(5)を収納する収納部には、ウェハー(5)を収納すると共にウェハー押さえ(3)及び防汚シート(4)が配設される。
【0021】
第2ウェハーケース(2)は、第2筒部(8)及び該第2筒部(8)の一端を閉鎖する第2端壁(9)を有する。第2ウェハーケース(2)の第2筒部(8)は上記第1ウェハーケース(1)の第1筒部(6)と係合し、第2端壁(9)により第1ウェハーケース(1)の収納部を閉鎖する。第2ウェハーケース(2)は、第2端壁(9)が平板状であって本発明のウェハー収納容器の蓋体として機能するものであっても良い。
【0022】
また、第2ウェハーケース(2)が、第2端壁(9)の第2筒部(8)を有する面と反対側の面に第1ウェハーケース(1)の第1筒部(6)と同様の筒部を有し、該筒部と第2端壁(9)とで第1ウェハーケース(1)同様にウェハー(5)を収納する収納部を構成しても良い。この場合、第2ウェハーケース(2)は第1ウェハーケース(1)の蓋体として機能すると同時にウェハー(5)を収納する収納部も有することになる。
【0023】
更に、第1ウェハーケース(1)を、第1端壁(7)の第1筒部(6)を有する面と反対側の面に第2ウェハーケース(2)の第2筒部(8)と同様の筒部を有するものとし、第1ウェハーケース(1)と第2ウェハーケース(2)とを同形状のものとすることもできる。こうすることで、各ウェハーケースの第1筒部(6)と第2筒部(8)とを係合することができ、3つ以上のウェハーケースを積み重ねて使用することができる。この場合、第1ウェハーケース(1)が第2ウェハーケース(2)に、第2ウェハーケース(2)が第1ウェハーケース(1)に該当し、第1ウェハーケース(1)と第2ウェハーケース(2)は、それぞれ、第1ウェハーケース(1)と第2ウェハーケース(2)を兼ねることとなる。
【0024】
第1,第2ウェハーケース(1、2)の第1筒部(6)、第2筒部(8)の形状は、円筒状や角筒状など公知の形状でよく、収納するウェハー(5)の形状に合わせれば良い。大きさは、収納するウェハー(5)の大きさ、厚み、保存安定性、枚数から選べばよい。素材は、公知の素材でよいが、好ましくは洗浄により繰り返し使用可能なポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリカーボネートが良く、導電処理された導電性ポリプロピレン、高強度で積み重ねが容易なポリカーボネートがより好ましい。
【0025】
ウェハーを1つのウェハーケースに複数枚収納する場合は、ウェハーケースの形状としては1つのウェハーケースに複数のウェハー収納部を有する形状が挙げられる。ウェハー押さえ(3)は、ウェハー収納部の数に合わせて複数個設置すればよい。作業性を向上させるため、ウェハー押さえを、ウェハーケースの蓋体として機能する部分に固定してもよい。
【0026】
第1ウェハーケース(1)の第1筒部(6)と第2ウェハーケース(2)の第2筒部(8)を互いに固定及び固定解除可能にする係合固定手段は、相対回転、ヒンジ、クリップ、テーピングなどが挙げられ、その中で均一に圧力がかかりやすく、気密性に優れている相対回転方式が好ましい。
【0027】
本発明のウェハー収納容器の第1及び第2ウェハーケース(1、2)としては、ウェハートレー、ウェハートレーカバー、ウェハー搬送容器、ウェハーシッパー、チップトレイなどとして市販されている公知のものを用いることができる。
【0028】
本発明のウェハー収納容器は、ウェハーの周縁部を挟持するので、ウェハー表側面を上向きもしくは下向きにしてウェハーを収納しても良い。ウェハー収納容器にウェハーを収納した後、輸送中に第2ウェハーケース(2)やウェハー押さえ(3)に付着していた付着物が飛来してもウェハー表側表面に付着しにくい、下向きに収納することが好ましい。
【0029】
<ウェハー押さえ>
本発明のウェハー収納容器におけるウェハー押さえ(3)は、中央部分とここから半径方向外側に延びた複数の脚部(10)とを有する板ばね状の薄板からなっている。この脚部(10)は各先端が一方の側に湾曲する形状になっており、ウェハー押さえ(3)全体としては、中央部分が第2ウェハーケース(2)の第2端壁(9)を押し、脚部(10)がその端部で接する第1ウェハーケース(1)の第1端壁(7)内表面(ウェハー(5)を収納した場合にはウェハー(5)表面)を押すようなほぼ弓形の断面形状を有している。又、ウェハー押さえ(3)は、ウェハー(5)が小さい等の理由でウェハー押さえ(3)でウェハー(5)の周縁部を挟持できない場合、ウェハー押さえ(3)を逆向きに使用し、ウェハー押さえ(3)の中央部をウェハー(5)の中央に接触させてウェハーを挟持することもでき、この場合、ウェハー押さえ(3)の中央部分が第1ウェハーケース(1)の第1端壁(7)内表面(ウェハー(5)を収納した場合にはウェハー(5)表面)を押し、脚部(10)がその端部で第2ウェハーケース(2)の第2端壁(9)を押す。ウェハー押さえ(3)は、脚部(10)の端部がウェハー(5)の周縁部でウェハー(5)を挟持可能な直径、もしくは脚部(10)の端部が第2ウェハーケース(2)の第2筒部(8)や第1ウェハーケース(1)の第1筒部(6)の内側に収納できる直径を有していればよい。ウェハー押さえ(3)の脚部(10)の向きは、ウェハーの直径や形状から決定すれば良い。
【0030】
第1ウェハーケース(1)に第2ウェハーケース(2)を取り付けたときには、ウェハー押さえ(3)の脚部(10)の端部もしくは中央部分がその端部でウェハー(5)を第1端壁(7)の周縁部に押圧することにより、ウェハー(5)を挟持して保持する。
【0031】
ウェハー押さえ(3)の脚部(10)は、ウェハー(5)もしくは第1ウェハーケース(1)の第1端壁(7)や第2ウェハーケース(2)の第2端壁(9)に均等に圧力が分散すれば良く、4本以上が好ましく、8本以上がより好ましい。代表的なウェハー押さえを図2に示す。素材は、第1及び第2ウェハーケースと同様で、洗浄により繰り返し使用可能なポリプロピレンやポリブチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、フッ素樹脂が良く、導電処理された導電性ポリプロピレンがより好ましい。ウェハーケース1つにウェハーを収納する収納部を複数有し、1つのウェハーケースでウェハーを複数枚収納することが可能な場合は、それぞれウェハー押さえ(3)を用意するか、複数枚押さえることができるウェハー押さえを用いるとよい。
【0032】
本発明のウェハー収納容器のウェハー押さえ(3)としては、ウェハートレー用スプリングなどとして市販されている公知のものを用いることができる。
【0033】
<防汚シート>
本発明のウェハー収納容器における防汚シート(4)は、上記ウェハー押さえ(3)と上記第1端壁(7)の間に備えられているシートであり、ウェハー(5)を本発明のウェハー収納容器に収納する際にウェハー押さえ(3)とウェハー(5)とを防汚シート(4)を介して接触させることで、ウェハー押さえ(3)と第1端壁(7)とによりウェハー(5)を挟持させてウェハー(5)を固定した際に、ウェハー押さえ(3)の脚部(10)もしくは中央部分とウェハー(5)とが直接接触して、ウェハー(5)とウェハー押さえ(3)との摩擦により異物粒子が発生することを抑制し、異物粒子がウェハー(5)に付着して汚染することを抑制する。防汚シート(5)の素材は、柔軟性があり発塵しにくい不織布が良い。例えば、セルロース、コットン、リヨセル、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンが挙げられる。その中で、静電気の放電(Electro-Static Discharge)対応(以下、ESD対応とも称す。)でイオン抽出やアウトガスを低減したポリエチレンがより好ましい。また、低発塵性である長繊維とし易い、ポリエステルやポリエステルとナイロンの複合物も好ましい。大きさや形状は、ウェハー押さえ(3)とウェハー(5)とを防汚シート(4)を介して接触させることができる形状であれば良く、具体例としてウェハー(5)と同程度の大きさ、同様の形状のシートが挙げられる。さらに、ウェハー(5)と防汚シート(4)の接触を最小限にしたい場合は、防汚シート(4)とウェハー(5)の接触面積を小さくするため、ウェハー押さえ部分が接触する箇所のみ保護するよう、ウェハー押さえが脚部で接触する場合にはリング状のシート、中央部で接触する場合には小口径のシートであっても良い。厚みは、フィルムのような薄膜材、クッションのような厚膜材でもよく、0.10mm~3.0mmの厚みがより好ましい。
【0034】
防汚シート(4)は、作業性を向上させるため、ウェハー押さえ(3)の脚部(10)や中央部分に固定してよい。さらに、ウェハー(5)との接触面積を小さくするため、ウェハー押さえ(3)の脚部(10)に脚部(10)を覆う程度の大きさの防汚シート(4)を接着することも好ましい。
【0035】
<ウェハー>
本発明のウェハー収納容器に収納するウェハー(5)に制限はなく、鏡面に研磨されたシリコン、化合物結晶、窒化物結晶、酸化物結晶等のウェハーや、研削工程、スライス工程、外周加工等の加工途中の試料を収納することができる。その中で、洗浄技術が確立されていない研究開発レベルのウェハー、厚みが厚く、ウェハー押さえと強く接触するウェハーに適している。形状も外周研削されたウェハー、四角形状のウェハーなども適用可能である。さらに、小片のチップなども適用可能である。直径はウェハー収納容器に収納できればよく、5mm~320mmが好ましく、20mm~52mmの基板がより好ましい。
【0036】
<ウェハーの収納>
本発明のウェハーの収納方法は、上記したウェハー収納容器にウェハー(5)を収納する際に、ウェハー(5)がウェハー押さえ(3)と直接接触しないよう、ウェハー押さえ(3)とウェハー(5)とを防汚シート(4)を介して接触させて収納する方法である。
【0037】
即ち、第1ウェハーケース(1)の第1筒部(6)と第1端壁(7)とにより構成されるウェハー(5)を収納する収納部にウェハー(5)を収納した後、該ウェハー(5)の上面に防汚シート(4)を配設し、更に該防汚シート(4)の上にウェハー押さえ(3)を配設して、ウェハー押さえ(3)とウェハー(5)とを防汚シート(4)を介して接触させる。次に、第1ウェハーケース(1)の第1筒部(6)と第2ウェハーケース(2)の第2筒部(8)とを係合し固定することにより、ウェハー押さえ(3)と第1端壁(7)とによりウェハー(5)を挟持した状態で、本発明のウェハー収納容器にウェハー(5)を収納する。
【0038】
このように、ウェハー押さえ(3)と第1端壁(7)とによりウェハー(5)を挟持する際に、ウェハー押さえ(3)とウェハー(5)とは防汚シート(4)を介して接触しているので、ウェハー押さえ(3)とウェハー(5)とが直接接触することがなく、第2ウェハーケース(2)でウェハー押さえ(3)が押さえ付けられ、ウェハー押さえ(3)の脚部(10)がウェハー(5)の径方向に向かって移動しても、ウェハー押さえを逆向きに使用した場合にウェハー又はウェハー押さえ(3)がずれることによりウェハー押さえの中央部がウェハーに対して摺動したりしても、ウェハー(5)とウェハー押さえ(3)との摩擦による異物粒子の発生が抑制される。また、第1ウェハーケース(1)の第1筒部(6)と第2ウェハーケース(2)の第2筒部(8)との固定・固定解除を相対回転により行ない、ウェハー押さえ(3)が第2ウェハーケース(2)と共回りしても、ウェハー押さえ(3)が防汚シート(4)を介してウェハー(5)と接触していることでウェハー押さえ(3)がウェハー(5)に対して摺動することにより発生する異物粒子の発生が抑制される。
【0039】
本発明のウェハーの収納方法ではウェハーを挟持してウェハーを収納するので、ウェハーの収納はウェハー表側面が上向き、下向きのどちらでもよい。好ましくは、ウェハー収納容器にウェハーを収納した後、輸送中に第2ウェハーケース(2)やウェハー押さえ(3)に付着していた付着物が飛来してもウェハー表側表面に付着しにくい、下向きに収納することが好ましい。
【実施例
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、ウェハー表面の異物粒子の評価は、ノマルスキー型微分干渉顕微鏡による観察と、マイクロラマンスペクトル分析とにより行った。以下にその評価方法を示す。
【0041】
<ノマルスキー微分干渉顕微鏡観察>
ウェハーを、ノマルスキー型微分干渉顕微鏡(ニコン社製LV150)を用いて観察倍率100~500倍で明視野観察した。
【0042】
<マイクロラマンスペクトルによる異物粒子の組成の分析>
マイクロラマンスペクトルによる異物粒子の組成の分析は、日本分光製NRD-7100マイクロラマンスペクトル測定装置を使用した。励起レーザーとして波長531.98nmのレーザーを使用し、幅10μm×長さ1000μmスリットと、600本/mmのグレーティングを使用した。励起レーザー出力は10.8mWとして100倍の対物レンズを用いて測定スポットを直径約1μmに集光した後、励起レーザーをウェハー上の異物粒子に照射して局所的なラマンスペクトルを測定した。このときの露光時間は5秒として3回積算した。また、測定したラマンスペクトルの波数は、同様の条件で測定したシリコン基板の波数521.448cm-1のラマンシフトにより校正した。同様に、使用したウェハー押さえも測定し、スペクトルが合致するかどうか確認した。
【0043】
実施例1
(ウェハー収納容器と収納方法)
第1ウェハーケースと第2ウェハーケースは、φ25.4mm用ウェハートレー(フロロウエアー・インテグリス社製、型番:H22-10-0615-01)、ウェハートレーカバー(フロロウエアー・インテグリス社製、型番:H22-101-0615-02)を用いた。材質はポリプロピレン製で、第1ウェハーケースの第1端壁が凹面に湾曲した形状である。ウェハーは直径23mm、厚さ601μmの窒化アルミニウム単結晶ウェハーを用い、表側面を第1ウェハーケースの第1端壁側に向けて収納した(下向きに収納)。ウェハーの上側には、防汚シートとして、不織布(クレシアテクノワイプ(日本製紙クレシア社製)、型番:C100-S)を用いた。材質はリヨセルで、厚み約0.15mmのメッシュタイプの不織布である。直径約24mmの円形に切り出し、1枚設置した。ウェハー押さえは、φ25.4mm用ウェハートレー用スプリング(フロロウエアー・インテグリス社製、型番:H22-102-0815)を、脚部がウェハーと接触する向きに用いた。材質はポリプロピレン製で、脚部は8本ある。ウェハー押さえの上に第2ウェハーケースを配置し、第1ウェハーケースとの固定は、相対回転方式で固定した。
【0044】
(ウェハー収納容器の固定と解除)
第1ウェハーケースと第2ウェハーケースの固定は、ウェハー押さえが回転しないように慎重に固定した。さらに、第1ウェハーケースと第2ウェハーケースの固定を解除し、ウェハー押さえ、防汚シート、窒化アルミニウム単結晶ウェハーを取りだした。
【0045】
(異物粒子の確認)
収納、固定、固定解除、取り出しの作業を合計5回繰り返した。その後、ノマルスキー型微分干渉顕微鏡でウェハーへの異物粒子の有無を観察した。ウェハーに異物粒子による摩擦痕は観察されなかった。ノマルスキー型微分干渉顕微鏡による観察画像を図3に示す。
【0046】
(再現確認試験)
上記条件で異物粒子を確認するため、同様のウェハー収納容器、ウェハー押さえ、防汚シート、ウェハーを4セット用意し、再現確認試験を4回実施した。その結果、4回のうち3回では異物粒子による摩擦痕は観察されなかった。異物粒子による摩擦痕が発生する確率は25%であった。異物粒子による摩擦痕が発生したのは、用いた不織布がメッシュタイプのものであり、薄い箇所があるためであると考えられる。
【0047】
実施例2
防汚シートの枚数を2枚に変更した以外は実施例1と同様にして、異物粒子の確認を4回行う再現確認試験を実施した。その結果、異物粒子による摩擦痕は4回中4回観察されなかった。
【0048】
実施例3
実施例1より防汚シートとして用いた不織布を、ベンコット(R)リントフリー(小津産業社製、型番:7-662-01)に変更した。材質はセルロースで、厚みは約0.05mmである。直径約24mmの円形に切り出し、1枚設置した。それ以外は実施例1と同様にして異物粒子の確認を5回行う再現確認試験を実施した。その結果、異物粒子による摩擦痕は5回中5回観察されなかった。
【0049】
参考
実施例1より防汚シートとして用いた不織布を、ホリゾンタルウェーハシッパーインサート150mm(フロロウエアー・インテグリス社製、型番:HWS150-5TY500-INS)に変更した。ESD対応の単層不織布であり、材質はポリエチレン以外は実施例1と同様にして異物粒子の確認を5回行う再現確認試験を実施した。その結果、異物粒子による摩擦痕は5回中5回観察されなかった。
【0050】
比較例1
防汚シートを用いない以外は実施例1と同様にして異物粒子の確認を4回行う再現確認試験を実施した。その結果、異物粒子による摩擦痕がウェハーの外周部、ウェハー押さえが接触していた箇所に4回中4回観察された。ウェハーに付着した異物粒子をマイクロラマンスペクトル測定で分析した結果、ウェハー押さえの成分が検出された。ノマルスキー型微分干渉顕微鏡の観察画像を図4に示す。
【0051】
【表1】
【符号の説明】
【0052】
1 第1ウェハーケース
2 第2ウェハーケース
3 ウェハー押さえ
4 防汚シート
5 ウェハー
6 第1筒部
7 第1端壁
8 第2筒部
9 第2端壁
10 ウェハー押さえの脚部
図1
図2
図3
図4