(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】自在継手の製造装置
(51)【国際特許分類】
F16D 3/41 20060101AFI20221111BHJP
F16D 3/26 20060101ALI20221111BHJP
B21D 39/00 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
F16D3/41 R
F16D3/26 X
B21D39/00 B
(21)【出願番号】P 2018200262
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトマシンシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】小山 剛司
(72)【発明者】
【氏名】田野 淳
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-159864(JP,A)
【文献】特開平05-296256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/41
F16D 3/26
B21D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字軸の軸部を回転自在に支持する軸受をヨークの貫通孔の第一位置まで圧入し、前記貫通孔及び前記軸部に対して前記軸受を仮組みする第一軸体と、
前記ヨークにおける前記貫通孔の周囲をかしめながら、当該かしめによって形成されたカシメ肉部で、仮組み後の前記軸受を前記貫通孔内に押し込むことで、前記貫通孔の前記第一位置よりも奥側の第二位置まで前記軸受を圧入する第二軸体と、を備え
る自在継手の製造装置であって、
前記第一軸体と前記第二軸体とは、一体化されており、
前記第一軸体は、前記第二軸体に対して進退自在に内蔵されており、
前記製造装置は、前記第一軸体が前記軸受を第一位置まで圧入する際には当該第一軸体と前記第二軸体とを連結させ、前記軸受を前記第二位置まで圧入する際には前記連結を解除する切替機構を備える
自在継手の製造装置。
【請求項2】
前記第一位置と前記第二位置との間隔は、0.05mm以上である
請求項
1に記載の自在継手の製造装置。
【請求項3】
前記ヨークと前記軸受とは異なる金属により形成されている
請求項1または2に記載の自在継手の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自在継手の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の操舵装置において、ステアリングシャフトとピニオンシャフトとを繋ぐために、四方へ突出した4つの軸部を有する十字軸と、各軸部を回転自在に支持する複数の軸受とを有した十字軸継手が用いられている(例えば特許文献1参照)。前記各シャフトの端部には一対のアームを有するヨークが設けられており、各アームに形成された貫通孔に、軸受を介して、十字軸の軸部がその軸線回りに回動自在に支持されている。また、軸受を貫通孔内に固定するために、ヨークにおける貫通孔の周囲にはカシメが施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヨークの貫通孔または軸受においては、公差の範囲内で寸法にばらつきが生じており、個体差がある。前述したカシメは一定量で行うために、ヨークの貫通孔または軸受の寸法によっては、カシメを確実に行えず、ガタツキが発生するおそれがある。
【0005】
また、十字軸継手の軸受は、ヨークの貫通孔と負隙間の関係を有し、当該貫通孔に対して圧入されることで保持されている。負隙間の量は、例えばヨーク・軸受の製造誤差や、ヨーク・軸受の線熱膨張係数差などにより減少することがある。そのため、軸受の軸方向の抜け止め(フェール機能)として、前述のカシメがヨークにおける貫通孔の周囲に施されている。このカシメは、フェール機能を目的とするために、カシメによって生じるカシメ肉部と軸受とを必ずしも接触させる必要はない。つまり、カシメ肉部と軸受との間に隙間があった場合には、走行時に軸受とカシメ肉部とが接触し、異音を発生させるおそれがある。
【0006】
本発明は、ヨーク及び軸受に対するカシメの確実性を高めることが可能な自在継手の製造方法及び自在継手の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る自在継手の製造方法は、十字軸の軸部を回転自在に支持する軸受をヨークの貫通孔の第一位置まで圧入し、貫通孔及び軸部に対して軸受を仮組みする第一圧入工程と、第一圧入工程後に、ヨークにおける貫通孔の周囲をかしめながら、当該かしめによって形成されたカシメ肉部で軸受を貫通孔内に押し込むことで、貫通孔の第一位置よりも奥側の第二位置まで軸受を圧入する第二圧入工程と、を含む。
【0008】
また、本発明の一態様に係る自在継手の製造装置は、十字軸の軸部を回転自在に支持する軸受をヨークの貫通孔の第一位置まで圧入し、貫通孔及び軸部に対して軸受を仮組みする第一軸体と、ヨークにおける貫通孔の周囲をかしめながら、当該かしめによって形成されたカシメ肉部で、仮組み後の軸受を貫通孔内に押し込むことで、貫通孔の第一位置よりも奥側の第二位置まで軸受を圧入する第二軸体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヨーク及び軸受に対するカシメの確実性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る自在継手の使用形態の一例を示す模式図である。
【
図2】実施の形態に係るインターミディエイトシャフトの概略構成を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る第一自在継手の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る第一自在継手の一部を示す分解斜視図である。
【
図5】実施の形態に係る自在継手の製造装置の要部構成を示す説明図である。
【
図6】実施の形態に係る自在継手の製造装置であって仮組み時の状態を示す説明図である。
【
図7】実施の形態に係る自在継手の製造方法の一工程を示す説明図である。
【
図8】実施の形態に係る自在継手の製造方法の一工程を示す説明図である。
【
図9】実施の形態に係る自在継手の製造方法の一工程を示す説明図である。
【
図10】
図9における第二軸体と第一ヨークとの関係を示す斜視図である。
【
図11】変形例1に係る自在継手の製造装置の要部構成を示す説明図である。
【
図12】変形例1に係る自在継手の製造方法の一工程を示す説明図である。
【
図13】変形例1に係る自在継手の製造方法の一工程を示す説明図である。
【
図14】変形例2に係る自在継手の製造装置の要部構成を示す説明図である。
【
図15】変形例2に係る切替機構の通常時を示す説明図である。
【
図16】変形例2に係る切替機構の第二圧入工程時時を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、実施の形態に係る自在継手の使用形態の一例を示す模式図である。
図1に示すように、自在継手(第一自在継手100、第二自在継手200)は、例えば自動車のステアリング装置10に備わるインターミディエイトシャフト20に対して設けられている。具体的には、ステアリング装置10は、一端にステアリングホイール11が連結されたステアリングシャフト12と、ピニオン軸13及びラック軸14を含むラックアンドピニオン機構からなり転舵輪15を転舵する転舵機構16と、ステアリングシャフト12とピニオン軸13との間に介在して操舵トルクを伝達するインターミディエイトシャフト20とを備えている。
【0014】
インターミディエイトシャフト20の一方の端部が、第一自在継手100を介してステアリングシャフト12と連結されている。インターミディエイトシャフト20の他方の端部が、第二自在継手200を介してピニオン軸13と連結されている。
【0015】
ステアリングホイール11が操作されてステアリングシャフト12が回転されると、その回転がインターミディエイトシャフト20を介してピニオン軸13及びラック軸14に伝達される。これにより、転舵機構16は転舵輪15を転舵させる。
【0016】
図2は、実施の形態に係るインターミディエイトシャフト20の概略構成を示す斜視図である。
図2に示すようにインターミディエイトシャフト20は、伸縮自在な中間シャフト21と、中間シャフト21の一端部に設けられた第一自在継手100と、中間シャフト21の他端部に設けられた第二自在継手200とを備えている。
【0017】
第一自在継手100は、中間シャフト21の一端部に結合された第一ヨーク110と、ステアリングシャフト12に結合された第二ヨーク120と、第一ヨーク110と第二ヨーク120とを連結する十字軸130と、十字軸130の各軸部132(
図4参照)を回転自在に支持する複数の軸受140とを備えている。
【0018】
第二自在継手200は、中間シャフト21の他端部に結合された第一ヨーク210と、ピニオン軸13に結合された第二ヨーク220と、第一ヨーク210と第二ヨーク220とを連結する十字軸230と、十字軸230の各軸部(図示省略)を回転自在に支持する複数の軸受240とを備えている。
【0019】
以下、第一自在継手100について詳細に説明する。なお第一自在継手100と第二自在継手200は基本的に同様の構成であるので、第二自在継手200の詳細については省略する。
【0020】
図3は、実施の形態に係る第一自在継手100の概略構成を示す斜視図である。
図4は、実施の形態に係る第一自在継手100の一部を示す分解斜視図である。具体的には、
図4では、第一自在継手100の第二ヨーク120を省略している。
【0021】
図3及び
図4に示すように、第一ヨーク110は、例えばアルミニウム製であり、互いに対向するように配置された一対のアーム111を備えている。一対のアーム111のそれぞれには、軸受140が固定されるための貫通孔112が形成されている。一対のアーム111のそれぞれの貫通孔112は、軸線が同一とされている。この軸線を第一軸線と称す。
【0022】
図3に示すように、第二ヨーク120は、例えばアルミニウム製であり、互いに対向するように配置された一対のアーム121を備えている。一対のアーム121のそれぞれには、軸受140が固定されるための貫通孔122が形成されている。一対のアーム121のそれぞれの貫通孔122は、軸線が同一とされている。この軸線を第二軸線と称す。第一軸線と第二軸線とは、直交している。なお、第一ヨーク110及び第二ヨーク120は、例えば鉄系の金属製であってもよい。
【0023】
図4に示すように、十字軸130は、鉄製であり、胴体部131と、この胴体部131の側周面から四方に突出する4つの軸部132を有している。4つの軸部132のうち、対向する一対の軸部132は、第一ヨーク110に備わる一対のアーム111のそれぞれの貫通孔112に軸受140を介して取り付けられる。4つの軸部132のうち、残りの一対の軸部132は、第二ヨーク120に備わる一対のアーム121のそれぞれの貫通孔122に軸受140を介して取り付けられる。
【0024】
軸受140は、それぞれ鉄製のカップ141と転動体142とを備えている(
図5参照)。カップ141は、有底円筒状であり、その内部に転動体142を収容している。転動体142は、ニードルローラであり、カップ141の筒状の内周面に沿って複数配列されている。このためカップ141の内周面は転動体142の軌道面となる。
【0025】
各軸受140は、一対のアーム111のそれぞれの貫通孔112と、一対のアーム121のそれぞれの貫通孔122とに対して圧入されている。また、各軸受140には、十字軸130の各軸部132が圧入されている。これにより、十字軸130の各軸部132は、各軸受140によって、各アーム111、121に対して回転自在に支持されている。このため、十字軸130は、第一軸線を中心として回転するとともに、第二軸線を中心として回転する。
【0026】
図3に示すように、第一ヨーク110には、各貫通孔112の周囲に凹部113が形成されている。この凹部113はかしめによって形成された部位であり、当該部位が塑性変形していることで、軸受140を貫通孔112内の所定位置に固定している。同様に、第二ヨーク120においても、各貫通孔122の周囲に、軸受140を固定するための凹部123が形成されている。
【0027】
次に、実施の形態に係る自在継手の製造方法について説明する。なお、以降の説明では、第一自在継手100の製造方法を例示して説明する。第二自在継手200の製造方法も同様であるため、その説明は省略する。また、ここでは、第一自在継手100における第一ヨーク110に対して十字軸130及び軸受140を組み付ける場合を例示するが、第二ヨーク120に対して十字軸130及び軸受140を組み付ける際においても同様である。
【0028】
まず、自在継手の製造方法で用いられる製造装置500について説明する。
図5は、実施の形態に係る自在継手の製造装置500の要部構成を示す説明図である。
図5では、十字軸130以外の部材を断面図で図示している。これは
図6~
図9においても同様である。また、
図5では、第一自在継手100の組み立て前の状態を示している。
【0029】
製造装置500は、ヨーク保持部(図示省略)と、十字軸保持部510と、軸受保持部520と、圧入部530とを備えている。
【0030】
ヨーク保持部は、組立時において第一ヨーク110を所定位置で保持する部位である。ヨーク保持部は、組立時に圧入部530から第一ヨーク110に対して圧力が作用したとしても、第一ヨーク110を所定位置で維持する。
【0031】
十字軸保持部510は、ヨーク保持部で保持された第一ヨーク110に対して十字軸130を保持する部位である。具体的には、十字軸保持部510は、ピン部材511を備えており、そのピン部材511の先端部が第一ヨーク110の貫通孔112内に嵌合する。また、ピン部材511の先端面には凹部512が形成されており、この凹部512に対して、十字軸130の軸部132が嵌合する。これにより、十字軸130と第一ヨーク110との相対的な位置関係が固定される。また、この状態であると、凹部512に嵌合した軸部132とは反対側の軸部132が、第一ヨーク110の他方の貫通孔112内に位置決めされることになる。この位置決めにより、凹部512に嵌合した軸部132とは反対側の軸部132と、第一ヨーク110の他方の貫通孔112とに対して軸受140が組み付け可能な状態となる。以降、軸受140が組み付けられる対象となる軸部132及び貫通孔112を「軸部132a」及び「貫通孔112a」と称す。十字軸保持部510の位置決めにより、軸部132aと貫通孔112aとは、同軸上に配置されている。
【0032】
軸受保持部520は、組付け前の軸受140を保持する部位である。軸受保持部520は、軸受140を支持することで、当該軸受140を軸部132a及び貫通孔112aに対して位置決めする。この軸受保持部520の位置決めにより、軸受140は、軸部132a及び貫通孔112aに対して同軸上に配置される。以降、この位置決め後の軸方向であって、軸受140から十字軸130に向かう方向を圧入方向とし、その反対方向を退避方向と称す。また、軸受保持部520は、圧入部530による軸受140の圧入が行われると、軸受140を支持する位置から下降して退避するようになっている。
【0033】
圧入部530は、第一ヨーク110の貫通孔112a及び十字軸130の軸部132aに対して軸受140を圧入する部位である。具体的には、圧入部530は、台座部531と、第一軸体532と、第二軸体533とを備えている。
【0034】
台座部531は、第一軸体532及び第二軸体533とを保持した状態で移動する部位である。具体的には、台座部531は、図示しない駆動源からの動力によって、上記軸方向に往復移動したり、上記軸方向に直交する方向(本実施の形態では上下方向)に往復移動したりする。駆動源としては例えばサーボモータなどのモータが挙げられる。
【0035】
第一軸体532は、軸受140を第一ヨーク110の貫通孔112aの第一位置P1(
図6参照)まで圧入し、十字軸130の軸部132aに対して仮組みをする部位である。具体的には、第一軸体532は、上記軸方向に長尺な円柱状の軸体である。第一軸体532の基端部は、台座部531によって保持されている。第一軸体532は、台座部531の移動により圧入方向に沿って十字軸130に近づくと、当該第一軸体532の先端面が軸受140に当接して、当該軸受140を貫通孔112a内の第一位置P1まで圧入する。
【0036】
図6は、実施の形態に係る自在継手の製造装置500であって仮組み時の状態を示す説明図である。ここでは、軸受140の基準となる部位を、カップ141の外底面とする。
図6に示すように、第一位置P1とは、軸受140の最終的な組付け位置である第二位置P2(
図9参照)よりも圧入方向の上流側の位置である。第二位置P2は、第一位置P1よりも貫通孔112a内の奥の位置である。さらに、第一位置P1は、軸受140におけるカップ141の外底面と第一ヨーク110におけるアーム111の外側面とが面一となる位置PFよりも、圧入方向の下流側の位置である。つまり、第一位置P1は、第二位置P2と位置PFとの間に配置されている。このように、第一軸体532は、軸受140を貫通孔112a内の第一位置P1までしか圧入しないので、軸受140が貫通孔112a及び十字軸130の軸部132aに対して仮組みされた状態となる。
【0037】
第二軸体533は、貫通孔112a内の第一位置P1にある軸受140を、第二位置P2まで圧入する部位である。具体的には、第二軸体533は、上記軸方向に長尺な円柱状の軸体である。第二軸体533は、第一軸体532の下方に配置されており、第二軸体533の基端部が台座部531によって保持されている。
【0038】
第二軸体533の先端部には、その外周面に外方に向けて突出した複数の突起534が放射状に配置されている。第二軸体533は、台座部531の移動により圧入方向に沿って十字軸130に近づくと、複数の突起534の先端面が第一ヨーク110における貫通孔112aの周囲に当接して、当該部位をかしめることになる。第二軸体533は、このかしめによって形成されたカシメ肉部119(
図9参照)で軸受140を貫通孔112a内にさらに押し込むことで、軸受140を第二位置P2まで圧入する。カシメ肉部119は、第一ヨーク110の凹部113に対応した位置に設けられている(
図3参照)。
【0039】
次に、製造装置500を用いた自在継手の製造方法について
図5~
図10に基づいて説明する。
図7~
図9は、実施の形態に係る自在継手の製造方法の各工程を示す説明図である。
図10は、
図9における第二軸体と第一ヨークとの関係を示す斜視図である。
【0040】
図5に示すように、まず製造装置500には、第一ヨーク110と、十字軸130と、軸受140とがセットされる。具体的には、第一ヨーク110は、図示しないヨーク保持部により保持されている。この第一ヨーク110の貫通孔112に対して、十字軸保持部510のピン部材511の先端部が嵌合しており、当該ピン部材511の凹部512に十字軸130の軸部132が嵌合している。この状態では、凹部512に嵌合した軸部132とは反対側の軸部132aが、第一ヨーク110の他方の貫通孔112a内に位置決めされている。また、軸受140は、軸受保持部520によって支持されており、これにより軸受140が軸部132a及び貫通孔112aに対して位置決めされている。この状態では、軸受140と、軸部132aと、貫通孔112aと、第一軸体532とが同一軸上に配置されている。
【0041】
図6は第一圧入工程での各部の状態を示している。
図6に示すように、圧入部530の台座部531が圧入方向に進むことで、第一軸体532の先端面が軸受140に当接して、当該軸受140を貫通孔112a内の第一位置P1まで圧入する。この圧入時には、適切なタイミングで軸受保持部520が下降しており、第二軸体533との干渉が防止されている。また、この圧入によって、軸受140は、貫通孔112a内に進入しながら、十字軸130の軸部132aに対して組み付けられる。また、軸受140は、第一位置P1まで圧入されるために、最終的な組付け位置である第二位置P2まで間隔Hだけ残した状態、つまり仮組みされた状態となる。
【0042】
次に、
図7に示すように、圧入部530の台座部531が退避方向に進んだ後に上昇することで、第一軸体532が軸受140の同軸上から退避して、第二軸体533が軸受140と同軸上に配置される。
【0043】
図8及び
図9は、第二圧入工程での各部の状態を示している。具体的には、
図8に示すように、圧入部530の台座部531が圧入方向に進むことで、第二軸体533の複数の突起534の先端面が、第一ヨーク110における貫通孔112aの周囲に当接する。その後、
図9及び
図10に示すように、圧入部530の台座部531が圧入方向にさらに進むと、第二軸体533の複数の突起534の先端面が、当接した部位をかしめてカシメ肉部119を形成する。第二軸体533は、カシメ肉部119で軸受140を貫通孔112a内にさらに押し込むことで、軸受140を第一位置P1から間隔Hだけ移動させて、第二位置P2まで圧入する。間隔Hは、カシメ肉部119で軸受140を安定して押し込むうえで必要な長さであり、0.05mm以上であることが好ましい。これにより、軸受140が最終的な組付け位置(第二位置P2)に配置されることになる。
【0044】
以上のように、本実施の形態に係る自在継手の製造方法は、十字軸130の軸部132aを回転自在に支持する軸受140を第一ヨーク110の貫通孔112aの第一位置P1まで圧入し、軸部132aに対して軸受140を仮組みする第一圧入工程と、第一圧入工程後に、第一ヨーク110における貫通孔112aの周囲をかしめながら、当該かしめによって形成されたカシメ肉部119で軸受140を貫通孔112a内に押し込むことで、貫通孔112aの第一位置よりも奥側の第二位置P2まで軸受140を圧入する第二圧入工程と、を含む。
【0045】
また、本実施の形態に係る自在継手の製造装置500は、十字軸130の軸部132aを回転自在に支持する軸受140を第一ヨーク110の貫通孔112aの第一位置P1まで圧入し、貫通孔112a及び軸部132aに対して軸受140を仮組みする第一軸体532と、第一ヨーク110における貫通孔112aの周囲をかしめながら、当該かしめによって形成されたカシメ肉部119で、仮組み後の軸受140を貫通孔112a内に押し込むことで、貫通孔112aの第一位置P1よりも奥側の第二位置P2まで軸受140を圧入する第二軸体533と、を備えている。
【0046】
これによれば、仮組み時においては軸受140が第一位置P1に位置決めされるので、第一ヨーク110の貫通孔112aまたは軸受140の寸法に個体差があったとしても、軸受140は第一位置P1に確実に配置される。その後、軸受140は、カシメ肉部119を介して第二位置P2まで圧入されるので、第二位置P2に配置された軸受140にはカシメ肉部119が確実に接触することになる。したがって、第一ヨーク110の貫通孔112aまたは軸受140の寸法に個体差があったとしても、これらに対するカシメの確実性を高めることができる。これにより、ガタツキの発生を抑えることができる。また、フェール機能を実現するためのカシメであっても、カシメ肉部119が軸受140に確実に接触するので、軸受140と第一ヨーク110との間の隙間を抑制することができる。したがって、異音の発生を抑制することができる。
【0047】
また、第一位置P1と第二位置P2との間隔Hは、0.05mm以上である。これによれば、第一位置P1と第二位置P2との間隔Hが0.05mm以上であるので、カシメ肉部119で軸受140を安定して第二位置P2まで圧入することができる。
【0048】
また、第一ヨーク110と軸受140とが異なる金属により形成されている。ここで、第一ヨーク110と軸受140とが異なる金属から形成されている場合には、互いの熱膨張係数に差が生じるために、当該差を起因として軸受140の圧入が不十分となる可能性が高い。しかし、塑性変形により形成されたカシメ肉部119で軸受140を圧入するのであれば、熱膨張係数に差があったとしても、圧入の確実性を高めることができる。特に、上述したように第一ヨーク110がアルミニウム製である場合には、カシメ肉部119の肉厚を十分確保することができるので、圧入の確実性をさらに高めることができる。
【0049】
また、第一軸体532と第二軸体533とが一体化されている。これによれば、第一軸体532と第二軸体533とが台座部531を介して一体化されているので、圧入部530の構成や機構を簡素化することができる。
【0050】
[変形例]
なお、自在継手の製造装置の構成は、上記実施の形態で説明された構成に限定されない。そこで、以下に、自在継手の製造装置についての変形例を上記実施の形態との差分を中心に説明する。以降の説明では、上記実施の形態または他の変形例と同一部分については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0051】
(変形例1)
図11は、変形例1に係る自在継手の製造装置500Aの要部構成を示す説明図である。
図11では、十字軸130以外の部材を断面図で図示している。これは
図12、
図13においても同様である。
【0052】
図11に示すように、変形例1に係る製造装置500Aでは圧入部530aが、上記実施の形態に係る製造装置500の圧入部530と異なっている。以降では圧入部530aについて詳細に説明する。
【0053】
変形例1に係る圧入部530aでは、第一軸体532aが第二軸体533aに対して進退自在に内蔵されている点で上記実施の形態に係る製造装置500とは異なる。
【0054】
具体的には、圧入部530aは、支持部531aと、第一軸体532aと、第二軸体533aと、第一押圧部535aと、第二押圧部536aとを備えている。
【0055】
支持部531aは、第一軸体532aが内蔵された第二軸体533aを、軸方向にスライド自在に支持する部位である。支持部531aには、軸方向に沿って貫通した貫通孔5311が形成されており、この貫通孔5311に対して第二軸体533aがスライド自在に嵌合している。これにより、第二軸体533aの軸方向に直交する方向への位置ずれが規制されている。
【0056】
第一軸体532aは、軸受140を第一ヨーク110の貫通孔112aの第一位置P1(
図12参照)まで圧入し、十字軸130の軸部132aに対して仮組みをする部位である。具体的には、第一軸体532aは、軸方向に長尺な円柱状の軸体である。第一軸体532aの基端部は、第一押圧部535aに連結されている。第一軸体532aは、第一押圧部535aの押圧により圧入方向に沿って十字軸130に近づくと、当該第一軸体532aの先端面が軸受140に当接して、当該軸受140を貫通孔112a内の第一位置P1まで圧入する。
【0057】
第二軸体533aは、貫通孔112a内の第一位置P1にある軸受140を、第二位置P2(
図13参照)まで圧入する部位である。具体的には、第二軸体533aは、軸方向に長尺な円筒状の軸体である。第二軸体533aの基端部は、第二押圧部536aに連結されている。
【0058】
第二軸体533aの中空部分には第一軸体532aがスライド自在に嵌合している。これにより、第二軸体533aと第一軸体532aとは同軸上で相対的な移動が可能となっている。つまり、第一軸体532aは、第二軸体533aの先端部から進退自在となっている。
【0059】
第二軸体533aの先端部には、その外周面に外方に向けて突出した複数の突起534aが放射状に配置されている。第二軸体533aは、第二押圧部536aの押圧により圧入方向に沿って十字軸130に近づくと、複数の突起534aの先端面が第一ヨーク110における貫通孔112aの周囲に当接して、当該部位をかしめることになる。第二軸体533aは、このかしめによって形成されたカシメ肉部119(
図13参照)で軸受140を貫通孔112a内にさらに押し込むことで、軸受140を第二位置P2まで圧入する。
【0060】
第一押圧部535aは、軸方向に長尺な円柱状の軸体であり、先端部が第一軸体532aに連結されている。第一押圧部535aは、図示しない駆動源からの動力によって、軸方向に往復移動する。これにより、第一押圧部535aは、第一軸体532aを軸方向に往復移動させる。
【0061】
第二押圧部536aは、軸方向に長尺な円筒状の軸体であり、先端部が第二軸体533aに連結されている。第二押圧部536aの中空部分には、第一軸体532a及び第一押圧部535aが挿通されている。これにより、第一軸体532a及び第一押圧部535aの移動が、第二押圧部536aの移動を阻害しないようになっている。第二押圧部536aは、第一押圧部535aの駆動源とは別の図示しない駆動源からの動力によって、軸方向に往復移動する。これにより、第二押圧部536aは、第二軸体533aを軸方向に往復移動させる。
【0062】
次に、製造装置500Aを用いた自在継手の製造方法について
図11~
図13に基づいて説明する。
図12、
図13は、変形例1に係る自在継手の製造方法の各工程を示す説明図である。
【0063】
図11に示すように、まず製造装置500Aには、第一ヨーク110と、十字軸130と、軸受140とがセットされる。この状態では、軸受140と、軸部132aと、貫通孔112aと、第一軸体532aと、第二軸体533aとが同一軸上に配置されている。
【0064】
図12は、変形例1における第一圧入工程での各部の状態を示している。
図12に示すように、圧入部530aの第一押圧部535aが圧入方向に進むことで、第一軸体532aも押されて圧入方向に進行する。これにより、第一軸体532aの先端面が軸受140に当接して、当該軸受140を貫通孔112a内の第一位置P1まで圧入する。この圧入時には、適切なタイミングで軸受保持部520が下降しており、第二軸体533aとの干渉が防止されている。また、この圧入によって、軸受140は、貫通孔112a内に進入しながら、十字軸130の軸部132aに対して組み付けられる。また、軸受140は、第一位置P1まで圧入されるために、仮組みされた状態となる。
【0065】
図13は、変形例1における第二圧入工程での各部の状態を示している。具体的には、
図13に示すように、第二押圧部536aが圧入方向に進むとともに、第一押圧部535aが退避方向に進む。これにより、第二軸体533aが圧入方向に進んで軸受140を圧入し、第一軸体532aが退避方向に進んで軸受140から退避する。なお、第一軸体532aと第二軸体533aとは同時に退避してもよい。
【0066】
第二軸体533aは、圧入方向に進むと複数の突起534aの先端面が、第一ヨーク110における貫通孔112aの周囲に当接する。その後、複数の突起534aの先端面が、当接した部位をかしめてカシメ肉部119を形成する。第二軸体533aは、カシメ肉部119で軸受140を貫通孔112a内にさらに押し込むことで、軸受140を第一位置P1から第二位置P2まで圧入する。これにより、軸受140が最終的な組付け位置(第二位置P2)に配置されることになる。
【0067】
以上のように、第一軸体532aは、第二軸体533aに対して進退自在に内蔵されている。これにより、第一軸体532aと第二軸体533aとを同軸上に配置することができる。したがって、圧入部530aを小型化することができる。また、第一軸体532aと第二軸体533aの位置を入れ替えなくとも、第一圧入工程及び第二圧入工程を実行することができるので、製造時間を短縮化することも可能である。
【0068】
(変形例2)
図14は、変形例2に係る自在継手の製造装置500Bの要部構成を示す説明図である。
図14では、十字軸130以外の部材を断面図で図示している。これは
図15、
図16においても同様である。
【0069】
図14に示すように、変形例2に係る製造装置500Bでは圧入部530bが、上記変形例1に係る製造装置500Aの圧入部530aと異なっている。以降では圧入部530bについて詳細に説明する。
【0070】
変形例2に係る圧入部530bでは、第一軸体532bが軸受140を第一位置P1まで圧入する際には当該第一軸体532bと第二軸体533bとを連結させ、軸受140を第二位置P2まで圧入する際には連結を解除する切替機構540bを備えている点で、変形例1に係る製造装置500Aとは異なる。
【0071】
具体的には、圧入部530aは、支持部531aと、第一軸体532bと、第二軸体533bと、第一押圧部535bと、第二押圧部536bと、切替機構540bとを備えている。
【0072】
第一軸体532bは、軸受140を第一ヨーク110の貫通孔112aの第一位置P1(
図15参照)まで圧入し、十字軸130の軸部132aに対して仮組みをする部位である。具体的には、第一軸体532bは、軸方向に長尺な円柱状の軸体であり、その基端部が他の部分よりも直径が大きい大径部5321となっている。第一軸体532bの基端部は、第一押圧部535bに連結されている。第一軸体532bは、第一押圧部535bの押圧により圧入方向に沿って十字軸130に近づくと、当該第一軸体532bの先端面が軸受140に当接して、当該軸受140を貫通孔112a内の第一位置P1まで圧入する。
【0073】
第二軸体533bは、貫通孔112a内の第一位置P1にある軸受140を、第二位置P2(
図16参照)まで圧入する部位である。具体的には、第二軸体533bは、軸方向に長尺な円筒状の軸体である。第二軸体533aの基端部は、第二押圧部536aに連結されている。
【0074】
第二軸体533bの中空部分は、第一軸体532の外形形状に対応した形状となっている。具体的には、第二軸体533bの中空部分は基端部側が他の部分よりも直径が大きい開口5331となっている。この直径が大きい開口5331に対して、第一軸体532bの大径部5321が嵌り合う。これにより、第二軸体533bは、第一軸体532bよりも圧入方向に進むが、退避方向へは進まない。換言すると、第一軸体532bは、圧入方向へは第二軸体533bとともに進行可能であり、退避方向へは第二軸体533bから離間可能となっている。
【0075】
また、開口5331に対して第一軸体532bの大径部5321が嵌った状態では、第一軸体532bの先端部が、第二軸体533bの先端部から突出している。
【0076】
第二軸体533bの先端部には、その外周面に外方に向けて突出した複数の突起534bが放射状に配置されている。第二軸体533bは、第二押圧部536bの押圧により圧入方向に沿って十字軸130に近づくと、複数の突起534bの先端面が第一ヨーク110における貫通孔112aの周囲に当接して、当該部位をかしめることになる。第二軸体533bは、このかしめによって形成されたカシメ肉部119(
図16参照)で軸受140を貫通孔112a内にさらに押し込むことで、軸受140を第二位置P2まで圧入する。
【0077】
第一押圧部535bは、軸方向に長尺な円柱状の軸体であり、先端部が第一軸体532bに連結されている。第一軸体532bの基端部には、切替機構540bが着脱自在に連結されている。
【0078】
第二押圧部536bは、軸方向に長尺な円筒状の軸体であり、先端部が第二軸体533bに連結されている。第二押圧部536bには、切替機構540bが取り付けられている。第二押圧部536bの中空部分には、第一押圧部535bが配置されている。第二押圧部536bは、図示しない駆動源からの動力によって、軸方向に往復移動する。これにより、第二押圧部536bは、第二軸体533bを軸方向に往復移動させる。
【0079】
切替機構540bは、例えばソレノイドであり、本体部541と、本体部541に対して進退自在な可動軸542とを備えている。本体部541は、第二押圧部536bに固定されている。可動軸542は、通常時には本体部541から第二押圧部536bの内部に進入しており、第二圧入工程では本体部541内に退避している(
図16参照)。なお、切替機構540bはエアシリンダーであってもよい。
【0080】
図15及び
図16に基づいて切替機構540bの動作について説明する。
図15は、変形例2に係る切替機構540bの通常時を示す説明図である。
図16は、変形例2に係る切替機構540bの第二圧入工程時を示す説明図である。
【0081】
図15に示すように、通常時においては、可動軸542が第二押圧部536bの基端部に当接しており、第一軸体532bと第二軸体533bとが、第一押圧部535b、第二押圧部536b及び切替機構540bを介して連結された状態となる。この状態で、第二押圧部536bが圧入方向に移動すると、第二軸体533bが第二押圧部536bによって押されて圧入方向に移動する。同時に切替機構540bも圧入方向に移動しているので、可動軸542が第一押圧部535bを圧入方向に移動させて、第一軸体532bも圧入方向に移動される。
【0082】
一方、
図16に示すように、第二圧入工程時では可動軸542が第二押圧部536bの基端部から離間しており、第一軸体532bと第二軸体533bとの連結が解除された状態となる。この状態で、第二押圧部536bが圧入方向に移動すると、第二軸体533bが第二押圧部536bによって押されて圧入方向に移動する。このとき、第一軸体532bと第二軸体533bとの連結は解除されているので、第一押圧部535b及び第一軸体532bは移動しない。
【0083】
次に、製造装置500Bを用いた自在継手の製造方法について
図14~
図16に基づいて説明する。
図14~
図16は、変形例2に係る自在継手の製造方法の各工程を示している。
【0084】
図14に示すように、まず製造装置500Bには、第一ヨーク110と、十字軸130と、軸受140とがセットされる。この状態では、軸受140と、軸部132aと、貫通孔112aと、第一軸体532aと、第二軸体533aとが同一軸上に配置されている。
【0085】
図15は、変形例2における第一圧入工程での各部の状態を示している。
図15に示すように、第一圧入工程では、切替機構540bが第一軸体532bと第二軸体533bとを連結しているので、圧入部530bの第二押圧部536bが圧入方向に進むと、第一軸体532bと第二軸体533bとが圧入方向に進行する。
【0086】
前述したように、第二軸体533bの開口5331に対して第一軸体532bの大径部5321が嵌った状態では、第一軸体532bの先端部が、第二軸体533bの先端部から突出している。このため、第一圧入工程では、第一軸体532aの先端面のみが軸受140に当接して、当該軸受140を貫通孔112a内の第一位置P1まで圧入する。この圧入時には、適切なタイミングで軸受保持部520が下降しており、第二軸体533bとの干渉が防止されている。また、この圧入によって、軸受140は、貫通孔112a内に進入しながら、十字軸130の軸部132aに対して組み付けられる。また、軸受140は、第一位置P1まで圧入されるために、仮組みされた状態となる。
【0087】
図16は、変形例2における第二圧入工程での各部の状態を示している。
図16に示すように、第二圧入工程では、切替機構540bが第一軸体532bと第二軸体533bとの連結を解除しているので、圧入部530bの第二押圧部536bが圧入方向に進むと、第二軸体533bのみが圧入方向に進行する。第二軸体533bは、圧入方向に進むと複数の突起534bの先端面が、第一ヨーク110における貫通孔112aの周囲に当接する。その後、複数の突起534bの先端面が、当接した部位をかしめてカシメ肉部119を形成する。第二軸体533bは、カシメ肉部119で軸受140を貫通孔112a内にさらに押し込むことで、軸受140を第一位置P1から第二位置P2まで圧入する。これにより、軸受140が最終的な組付け位置(第二位置P2)に配置されることになる。
【0088】
なお、第二押圧部536bが退避方向に移動すると、第二軸体533bも退避方向に移動する。この移動時においては、第二軸体533bの開口5331に対して第一軸体532bの大径部5321が嵌まるので、第一軸体532bも第二軸体533bに押されながら退避方向に移動する。
【0089】
以上のように、変形例2に係る製造装置500Bは、第一軸体532bが軸受140を第一位置P1まで圧入する際には当該第一軸体532bと第二軸体533bとを連結させ、軸受140を第二位置P2まで圧入する際には連結を解除する切替機構540bを備えている。
【0090】
これによれば、切替機構540bは、第一軸体532bが軸受140を第一位置P1まで圧入する際には当該第一軸体532bと第二軸体533bとを連結させ、軸受140を第二位置P2まで圧入する際には連結を解除している。これにより、一つの圧入用の駆動源で第一圧入工程と第二圧入工程とを実行することができ、製造装置500B自体の小型化を実現することができる。
【0091】
[その他]
以上、本発明に係る自在継手の製造方法及び自在継手の製造装置について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0092】
例えば、上記実施の形態では、第一ヨーク110の一対のアーム111の一方に対して十字軸130の軸部132a及び軸受140を組み付ける場合を例示した。しかし、一対のアーム111の両者に対して同時に十字軸130の軸部132a及び軸受140を組み付けてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、本発明に係る自在継手として、自動車のステアリング装置10に備わる第一自在継手100を例示した。しかしながら、その他の装置に設けられた自在継手に対しても本発明に係る製造方法及び製造装置を適用することは可能である。
【0094】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、十字軸及び軸受を有する自在継手の製造方法及び当該自在継手の製造装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
10…ステアリング装置、11…ステアリングホイール、12…ステアリングシャフト、13…ピニオン軸、14…ラック軸、15…転舵輪、16…転舵機構、20…インターミディエイトシャフト、21…中間シャフト、100…第一自在継手(自在継手)、110…第一ヨーク(ヨーク)、111、121…アーム、112、112a…貫通孔、113…凹部、119…カシメ肉部、120…第二ヨーク、122…貫通孔、123…凹部、130…十字軸、131…胴体部、132、132a…軸部、140…軸受、141…カップ、142…転動体、200…第二自在継手、210…第一ヨーク、220…第二ヨーク、230…十字軸、240…軸受、500、500A、500B…製造装置、510…十字軸保持部、511…ピン部材、512…凹部、520…軸受保持部、530、530a、530b…圧入部、531…台座部、531a…支持部、532、532a、532b…第一軸体、533、533a、533b…第二軸体、534、534a、534b…突起、535a、535b…第一押圧部、536a、536b…第二押圧部、540b…切替機構、541…本体部、542…可動軸、5311…貫通孔、5321…大径部、5331…開口、H…間隔、P1…第一位置、P2…第二位置、PF…位置