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特許7175159撮像素子および製造方法、並びに電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】撮像素子および製造方法、並びに電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20221111BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20221111BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N5/369
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018207880
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2020077650
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】星 博則
(72)【発明者】
【氏名】奥山 敦
(72)【発明者】
【氏名】押山 到
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0105928(US,A1)
【文献】特開2015-029047(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130723(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/062687(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0008555(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0350856(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03410487(EP,A1)
【文献】特開昭62-149153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられたトレンチ部と、
前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部と
を備え
前記突起部は、前記半導体基板を構成する結晶の所定の面方位に沿った前記傾斜面により構成される
撮像素子。
【請求項2】
前記突起部は、前記トレンチ部の先端に設けられる
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記突起部は、前記半導体基板の受光面から前記トレンチ部の先端までの間の中段に設けられる
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記突起部は、前記半導体基板の受光面から前記トレンチ部の先端までの間の複数個所に設けられる
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記トレンチ部および前記突起部には、光の透過を抑制する材料が埋め込まれる
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記突起部のうちの前記トレンチ部の側面よりも側面方向に突出している突出部に埋め込まれる第1の材料と、前記突出部以外の前記トレンチ部の内部に埋め込まれる第2の材料とは、それぞれ特性が異なる
請求項5に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記第1の材料は、前記第2の材料よりも光に対する吸収係数が高く、
前記第2の材料は、前記第1の材料よりも光に対する反射率が高い
請求項6に記載の撮像素子。
【請求項8】
撮像素子を製造する製造装置が、
照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられるトレンチ部を彫り込むことと、
前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部を形成することと
を含み、
前記突起部は、前記半導体基板を構成する結晶の所定の面方位に沿った前記傾斜面により構成される
製造方法。
【請求項9】
照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられたトレンチ部と、
前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部と
を有する撮像素子を備え
前記突起部は、前記半導体基板を構成する結晶の所定の面方位に沿った前記傾斜面により構成される
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像素子および製造方法、並びに電子機器に関し、特に、クロストークを低減する効果の向上を図ることができるようにした撮像素子および製造方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体撮像装置では、特に、裏面照射型の固体撮像装置では、隣接する画素からのクロストークが発生することが知られている。特に、グローバルシャッタ機能を有した固体撮像装置では電荷蓄積部へのクロストークにより蓄積電荷が増加してしまい、グローバルシャッタ機能が低下することになってしまう。
【0003】
そこで、クロストークの発生に伴う解像度や色再現性の低下、輝度段差などを回避するために、隣接する画素どうしを分離するように素子分離部を設ける技術が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、裏面のフォトダイオード側からトレンチを形成し、半導体基板の表面から裏面に貫通するようなトレンチを設けたり、一部を非貫通するようなトレンチを設けたりすることで光学的な画素分離を実現する構造が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、トレンチの先端に、半導体基板と水平な遮光部を設けた構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-30803号公報
【文献】特開2013-98446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1で開示されている構造では、トレンチ端部における光の回折により隣接する画素へ光が漏れ込むことでクロストークが発生し、そのクロストークを抑える効果が不十分であった。また、上述の特許文献2で開示されている構造では、遮光部の体積が大きくなり過ぎるとフォトダイオードの面積が小さくなって感度が低下するだけでなく、遮光面積が大きくなるのに伴って結晶欠陥が生じる要因となっていた。
【0008】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、クロストークを低減する効果の向上を図ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面の撮像素子は、照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板と、前記半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられたトレンチ部と、前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部とを備え、前記突起部は、前記半導体基板を構成する結晶の所定の面方位に沿った前記傾斜面により構成される
【0010】
本開示の一側面の製造方法は、照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられるトレンチ部を彫り込むことと、前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部を形成することとを含み、前記突起部は、前記半導体基板を構成する結晶の所定の面方位に沿った前記傾斜面により構成される
【0011】
本開示の一側面の電子機器は、照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板と、前記半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられたトレンチ部と、前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部とを有する撮像素子を備え、前記突起部は、前記半導体基板を構成する結晶の所定の面方位に沿った前記傾斜面により構成される
【0012】
本開示の一側面においては、照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板の受光面側から、複数の光電変換部どうしの間に設けられるトレンチ部が彫り込まれ、そのトレンチ部の一部分において、トレンチ部の間隔が広がるようにトレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部が形成される。そして、その突起部は、半導体基板を構成する結晶の所定の面方位に沿った傾斜面により構成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本技術を適用した撮像素子が備える素子分離部の基本的な構成例を説明する図である。
図2】素子分離部の平面的な配置例を示す図である。
図3】撮像素子の第1の構成例を表す断面図である。
図4】撮像素子の第2の構成例を表す断面図である。
図5】撮像素子の第3の構成例を表す断面図である。
図6】撮像素子の第4の構成例を表す断面図である。
図7】素子分離部の変形例を示す図である。
図8】撮像素子の第5の構成例を表す断面図である。
図9】撮像素子の第6の構成例を表す断面図である。
図10】平面的に見たときの突起部と開口部との関係について説明する図である。
図11】撮像素子の第7の構成例を表す断面図である。
図12】撮像素子の第8の構成例を表す断面図である。
図13】撮像素子の第9の構成例を表す断面図である。
図14】素子分離部の平面的な配置例を示す図である。
図15】第1の製造方法について説明する図である。
図16】第2の製造方法について説明する図である。
図17】第3の製造方法について説明する図である。
図18】第4の製造方法について説明する図である。
図19】第5の製造方法について説明する図である。
図20】第5の製造方法について説明する図である。
図21】第6の製造方法について説明する図である。
図22】第7の製造方法について説明する図である。
図23】第8の製造方法について説明する図である。
図24】撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図25】イメージセンサを使用する使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
<突起部を有する素子分離部の基本的な構成例>
図1を参照して、本技術を適用した撮像素子が備える素子分離部の基本的な構成例について説明する。
【0016】
図1のAには、一般的な素子分離部の断面構成の一例が示されている。図1のBには、突起形状を有する素子分離部の断面構成の一例が示されており、図1のCには、突起形状が拡大されて示されている。
【0017】
例えば、図1のAに示すように、一般的に、半導体基板11の裏面(または表面)を垂直に彫り込んだトレンチによって、素子分離部21が形成される。また、図示するように、2本の素子分離部21aおよび21bが、それらの間に設けられる画素を、隣接する他の画素から分離する。そして、素子分離部21は、半導体基板11の裏面に対して略垂直となるトレンチ側面22が形成されるとともに、素子分離部21の底面には、トレンチ側面22に対して略垂直な平坦面からなる平坦部23が形成される。
【0018】
これに対し、図1のBに示すように、本技術を適用した素子分離部31は、その先端部分に、半導体基板11の裏面(または表面)を垂直に彫り込んだトレンチ側面32の間隔が広がるように、断面的に見て略菱形の形状の突起部33が形成される。また、図示するように、2本の素子分離部31aおよび31bが、それらの間に設けられる画素を、隣接する他の画素から分離する。
【0019】
そして、突起部33は、図1のCに示すように、断面的に見て、素子分離部31を形成するトレンチ側面32に対して傾斜する複数の傾斜面41乃至44によって構成されている。
【0020】
例えば、傾斜面41および42は、半導体基板11を垂直に彫り込んでトレンチを形成する際の底面(例えば、素子分離部21では平坦部23となる面)に対して所定の傾斜角で、そのトレンチの奥側の斜め方向に広がるように形成される。また、傾斜面43および44は、半導体基板11を垂直に彫り込んでトレンチを形成する際の底面に対して所定の傾斜角で、そのトレンチの開口側の斜め方向に広がるように形成される。
【0021】
具体的には、突起部33は、シリコン基板(100)に対して、アルカリ性の薬液を用いたシリコン面方位選択エッチングを行い、エッチングレートの低いシリコン面(111)が露出することで、略菱形の形状となるように形成することができる。これにより、例えば、傾斜面41および42は、半導体基板11を垂直に彫り込んでトレンチを形成する際の底面に対して傾斜角54.7°で形成される。即ち、突起部33は、半導体基板11を構成するシリコン結晶のシリコン面(111)の面方位に沿って傾斜する傾斜面41乃至44により構成される。
【0022】
そして、図1のAおよびBでは、半導体基板11に入射した光が破線の矢印によって表されている。
【0023】
図1のAに示すように、ある画素において、半導体基板11内で素子分離部21に沿って進む光は、素子分離部21の先端部分で、その画素に隣接する他の画素の方向に向かって屈折することになる。従って、素子分離部21を備えた固体撮像素子では、他の画素へ光が漏れ込むことによる混色(クロストーク)が発生する。
【0024】
これに対し、図1のBに示すように、ある画素において、半導体基板11内で素子分離部31に沿って進む光は、素子分離部31の突起部33で、その画素自身の方向に向かって屈折することになる。従って、素子分離部31を備えた固体撮像素子では、他の画素への光の漏れ込みを防止することができ、混色の発生を抑制することができる。
【0025】
<素子分離部の平面的な配置例>
図2を参照して、突起部33を有する素子分離部31の平面的な配置について説明する。
【0026】
固体撮像素子の受光面には、カラーフィルタを透過した光を受光する複数の画素が、行列状に配置されている。図2には、赤色の光を受光する1つの画素R、緑色の光を受光する2つの画素G、および、青色の光を受光する1つの画素Bが、いわゆるベイヤ配列に従って2×2で配置されている例が示されている。
【0027】
例えば、図2のAに示すように、突起部33を有する素子分離部31は、画素R、画素G、および画素Bの全てについて、それらの間を分離するように、複数の画素の境界において格子状に配置することができる。
【0028】
また、図2のBに示すように、突起部33を有する素子分離部31は、画素R、画素G、および画素Bのうち、画素Rを囲うように配置することができる。このような配置例では、画素Rの周囲以外には、平坦部23を有する素子分離部21が配置される。即ち、赤色の光は、半導体基板11の奥深くまで届くことよって混色の原因となり易く、少なくとも画素Rを囲うように、突起部33を有する素子分離部31を配置することで、混色の発生を低減させることができる。
【0029】
また、図2のCおよびDに示すように、突起部33を有する素子分離部31は、複数の画素の境界となる格子状の交差部において連続的とならずに、交差部において不連続となるように形成することができる。例えば、交差部においてエッチング速度が異なることによるマイクロローディング効果を抑制するために、このように交差部において不連続となるように素子分離部31を形成することが好ましい。
【0030】
図2のCに示す素子分離部31は、平面的に見て両端部分が平坦形状となるように形成されており、交差部において素子分離部31どうしが重ならないような形状となっている。図2のCに示す素子分離部31は、平面的に見て両端部分が約45度で傾斜する凸形状となるように形成されており、交差部において素子分離部31どうしが重なる部分が少なくなるような形状となっている。
【0031】
なお、図2に示す配置例の他、例えば、単独の線や点で画素が存在する場合には、マイクロローディング効果を考慮せずに、個々の画素を囲うように連続的に(例えば、図2のBやCに示すように交差部において不連続とならないように)、素子分離部31を形成することができる。
【0032】
<撮像素子の構成例>
図3乃至図14を参照して、突起部33を有する素子分離部31を備えた撮像素子の構成例について説明する。
【0033】
図3には、撮像素子の第1の構成例を表す断面図が示されている。
【0034】
図3に示すように、撮像素子51は、半導体基板11の裏面側に、平坦化膜12、フィルター層13、およびオンチップレンズ層14が積層され、半導体基板11の表面側に、配線層15が積層されて構成される。即ち、撮像素子51は、半導体基板11の裏面に対して光が照射される裏面照射型である。
【0035】
また、撮像素子51は、平面的に見て、複数の画素52が行列状に配置されて構成されており、図3には、それらの画素52のうちの、2つの画素52aおよび52bの断面が示されている。また、撮像素子51では、画素52ごとに、フィルター層13にカラーフィルタ53が配置され、オンチップレンズ層14にマイクロレンズ54が配置される。
【0036】
そして、図3のAに示すように、撮像素子51-1は、突起部33を有する素子分離部31により画素52aおよび画素52bが分離される構成となっている。図1のBを参照して上述したように、素子分離部31は、半導体基板11の裏面に対して垂直なトレンチ側面32となるようにトレンチを彫り込み、そのトレンチの先端部分に対して、アルカリ性の薬液を用いたシリコン面方位選択エッチングを行うことにより形成される菱形形状の突起部33を有する。また、素子分離部31は、トレンチに対してメタルなどの所望の材料が埋め込まれて形成され、その材料が半導体基板11の裏面において平面的に形成された遮光部34を有する構造となっている。
【0037】
このように、素子分離部31によって隣接する画素52どうしが分離される構造の撮像素子51-1は、画素52aに入射した光(破線の矢印)が、素子分離部31の突起部33によって、画素52aの方向に向かって屈折する。従って、撮像素子51-1は、画素52aから画素52bへ光が漏れ込むことを防止すること、即ち、混色の発生を防止することができる。
【0038】
一方、図3のBには、平坦部23を有する素子分離部21が隣接する画素52どうしを分離する構造の撮像素子51-2が示されている。また、素子分離部21は、素子分離部31と同様に、遮光部24を有する構造となっている。そして、撮像素子51-2では、図示するように、素子分離部21の先端部分で、隣接する他の画素52へ光が漏れ込んでしまう。
【0039】
従って、撮像素子51-1は、撮像素子51-2と比較して、混色の発生に伴う画質の劣化を抑制することができ、より高画質な画像を撮像することができる。
【0040】
図4には、撮像素子の第2の構成例を表す断面図が示されている。なお、図4に示す撮像素子51Aにおいて、図3の撮像素子51と共通する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図4に示すように、撮像素子51A-1および51A-2は、半導体基板11Aに対して積層される平坦化膜12Aの内部に、画素52ごとにインナーレンズ55が形成されている点で、図3の撮像素子51-1および51-2と異なる構成となっている。また、素子分離部31Aは、半導体基板11Aを彫り込んでトレンチ側面32および突起部33が形成され、半導体基板11Aの裏面に遮光部35が形成されるとともに、遮光部34からフィルター層13まで、インナーレンズ55どうしの間にも形成される。
【0042】
従って、図4のAに示すように、撮像素子51A-1は、素子分離部31Aによって画素52aから画素52bへ光が漏れ込むことを防止することができる。
【0043】
一方、図4のBに示すように、撮像素子51A-2では、素子分離部21Aの先端部分で、隣接する他の画素52へ光が漏れ込んでしまう。
【0044】
このように構成される撮像素子51A-1では、図3の撮像素子51-1と同様に、混色の発生に伴う画質の劣化を抑制することができ、より高画質な画像を撮像することができる。
【0045】
図5には、撮像素子の第3の構成例を表す断面図が示されている。なお、図5に示す撮像素子51Bにおいて、図3の撮像素子51と共通する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0046】
図5に示すように、撮像素子51B-1では、半導体基板11Bにおいて配線層15の近傍まで、素子分離部31Bが形成されている点で、図3の撮像素子51-1と異なる構成となっている。
【0047】
従って、図5のAにおいて破線の矢印で表す光のように、撮像素子51B-1は、画素52aに入射した光(破線の矢印)が、素子分離部31の突起部33によって、画素52aの方向に向かって屈折する。さらに、撮像素子51B-1は、配線層15の近傍まで素子分離部31Bが形成されていることで、画素52aに入射した光が、隣接する画素52b近くの配線に当たり難くすることができる。これにより、撮像素子51B-1は、画素52aから画素52bへ光が漏れ込むことを、より確実に防止すること、即ち、混色の発生を防止する効果を向上させることができる。
【0048】
また、図5のBに示すように、撮像素子51B-2でも、配線層15の近傍まで、素子分離部21Bが形成されている。
【0049】
しかしながら、撮像素子51B-2では、図示するように、素子分離部21Bの先端部分で、隣接する画素52b近くの配線に当たり、その配線で散乱し、散乱光が隣接する画素52bに入射されてしまう。
【0050】
このように構成される撮像素子51B-1では、図3の撮像素子51-1と同様に、混色の発生に伴う画質の劣化を抑制することができ、より高画質な画像を撮像することができる。
【0051】
図6には、撮像素子の第4の構成例を表す断面図が示されている。なお、図6に示す撮像素子51Cにおいて、図4の撮像素子51Aと共通する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
即ち、撮像素子51C-1および51C-2は、撮像素子51A-1および51A-2と同様に、画素52ごとにインナーレンズ55が形成されている。さらに、撮像素子51C-1は、図5の撮像素子51B-1と同様に、半導体基板11Cにおいて配線層15の近傍まで、素子分離部31Cが形成されている。
【0053】
このように構成される撮像素子51C-1では、図3の撮像素子51A-1および図5の撮像素子51B-1と同様に、混色の発生に伴う画質の劣化を抑制することができ、より高画質な画像を撮像することができる。
【0054】
ここで、図7には、素子分離部31の変形例が示されている。
【0055】
図7のAに示されている素子分離部31’は、半導体基板11を貫通するようにトレンチ側面32’が形成され、素子分離部31’の先端部分に略三角形の形状(例えば、図1Cの傾斜面43および44のみの形状)の突起部33’を有している。即ち、突起部33は、略菱形の形状に限定されることなく、トレンチ側面32よりも側面方向に突出するような形状であれば、様々な形状を採用することができる。
【0056】
図7のBに示されている素子分離部31’’は、半導体基板11を彫り込んで形成されるトレンチ側面32’’の中段に、略菱形の形状の突起部33’’を有している。即ち、突起部33は、素子分離部31の先端部分に形成されるのに限定されることなく、半導体基板11の受光面から素子分離部31’’の先端(即ち、トレンチの底部)までの間に設けられる構成であればよい。
【0057】
このような形状の素子分離部31’および素子分離部31’’においても、上述した素子分離部31と同様に、半導体基板11に入射した光が、他の画素へ漏れ込むことを防止することができ、混色の発生を抑制することができる。
【0058】
図8には、撮像素子の第5の構成例を表す断面図が示されている。なお、図8に示す撮像素子51Dにおいて、図4の撮像素子51Aと共通する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
即ち、図8に示す撮像素子51Dは、全ての画素で略同一のタイミングでフォトダイオードから電荷蓄積部62へ電荷を転送するグローバルシャッタ機能を有しており、フォトダイオードと電荷蓄積部62とが縦方向に配置されている構成となっている。そして、撮像素子51Dは、半導体基板11Dの内部で、水平方向に向かう遮光壁61によって電荷蓄積部62が遮光され、電荷蓄積部62とフォトダイオードとが分離されるように構成される。また、遮光壁61には、フォトダイオードから電荷蓄積部62へ電荷を転送するための縦型トランジスタ(図示せず)を設けるための開口部が形成されている。
【0060】
従って、図8のAにおいて破線の矢印で表す光のように、撮像素子51D-1は、素子分離部31Dによって反射した光が水平方向の遮光壁61に向かって反射されることで、蓄積部62へ光が漏れ込むことを防止することができる。
【0061】
一方、図8のBに示すように、撮像素子51D-2では、素子分離部21Dに沿って伝搬する光が、蓄積部62に至ってしまう。
【0062】
このように構成される撮像素子51D-1では、蓄積部62への光の漏れ込みを防止することで、蓄積部62の蓄積電荷が増加してしまうことを回避し、確実に、グローバルシャッタ機能を実現することができる。
【0063】
図9には、撮像素子の第6の構成例を表す断面図が示されている。なお、図9に示す撮像素子51Eにおいて、図8の撮像素子51Dと共通する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0064】
即ち、撮像素子51Eは、図8の撮像素子51Dと同様に、グローバルシャッタ機能を有しており、遮光壁61には、フォトダイオードから電荷蓄積部62へ電荷を転送するための縦型トランジスタ(図示せず)を設けるための開口部が形成されている。
【0065】
そして、撮像素子51Eでは、素子分離部31Eの突起部33Eが、トレンチ側面32の中段に形成されるとともに、突起部33Eの水平方向の大きさが、遮光壁61の開口部よりも大きくなるように形成される。
【0066】
即ち、図10に示すように、撮像素子51Eを平面的に見たときに、素子分離部31Eの突起部33Eが、遮光壁61の開口部63よりも広くなるように形成されている。なお、撮像素子51Eでは、遮光壁61の開口部63以外の領域では、平坦部23を有する素子分離部21によって、隣接する画素52どうしを分離するように構成されている。
【0067】
このような構成によって、撮像素子51Eは、図8の撮像素子51Dよりも、より確実に、蓄積部62への光の漏れ込みを防止することができる。
【0068】
図11には、撮像素子の第7の構成例を表す断面図が示されている。なお、図11に示す撮像素子51Fにおいて、図3の撮像素子51と共通する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0069】
撮像素子51Fは、グローバルシャッタ機能を有しており、フォトダイオードと電荷蓄積部62とが横方向に配置されている構成となっている。
【0070】
このような構成の撮像素子51Fでは、電荷蓄積部62が遮光部36および遮光壁37によって遮光されるとともに、フォトダイオードと電荷蓄積部62との間に、突起部33を有する素子分離部31が形成される。
【0071】
従って、図11のAにおいて破線の矢印で表す光のように、撮像素子51F-1は、素子分離部31Fによって反射した光がフォトダイオード側に向かって反射されることで、蓄積部62へ光が漏れ込むことを防止することができる。
【0072】
一方、図11のBに示すように、撮像素子51F-2では、平坦部23を有する素子分離部21Fに沿って伝搬する光が、素子分離部21Fの先端部で回折し、蓄積部62に漏れ込んでしまう。
【0073】
このように構成される撮像素子51F-1では、蓄積部62への光の漏れ込みを防止することで、蓄積部62の蓄積電荷が増加してしまうことを回避し、確実に、グローバルシャッタ機能を実現することができる。
【0074】
図12には、撮像素子の第8の構成例を表す断面図が示されている。なお、図12に示す撮像素子51Gにおいて、図3の撮像素子51と共通する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0075】
撮像素子51Gは、グローバルシャッタ機能を有しており、フォトダイオードから転送される電荷を蓄積する電荷蓄積部として、FD(Floating Diffusion)部64が用いられる。そして、撮像素子51Gでは、FD部64を遮光するように遮光部36が設けられ、遮光部36からFD部64の周囲を囲うように、突起部33を有する素子分離部31が形成される。
【0076】
従って、図12のAにおいて破線の矢印で表す光のように、撮像素子51G-1は、素子分離部31Gによって反射した光がフォトダイオード側に向かって反射されることで、FD部64へ光が漏れ込むことを防止することができる。
【0077】
一方、図12のBに示すように、撮像素子51G-2では、平坦部23を有する素子分離部21Gに沿って伝搬する光が、素子分離部21Gの先端部で回折し、FD部64に漏れ込んでしまう。
【0078】
このように構成される撮像素子51G-1では、FD部64への光の漏れ込みを防止することで、FD部64の蓄積電荷が増加してしまうことを回避し、確実に、グローバルシャッタ機能を実現することができる。
【0079】
図13には、撮像素子の第9の構成例を表す断面図が示されている。なお、図13に示す撮像素子51Hにおいて、図3の撮像素子51と共通する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0080】
撮像素子51Hは、1つの画素52に2つのフォトダイオードが形成される構成となっており、隣接する画素52どうしを素子分離部31により分離するのに加えて、画素52内の2つのフォトダイオードも分離される。
【0081】
図13のAには、素子分離部31と同様に、突起部73を有する素子分離部71によって、画素52内の2つのフォトダイオードが分離される構成の撮像素子51H-1が示されている。一方、図13のBには、素子分離部21と同様に、平坦部83を有する素子分離部81によって、画素52内の2つのフォトダイオードが分離される構成の撮像素子51H-2が示されている。
【0082】
例えば、図12のAにおいて破線の矢印で表す光のように、撮像素子51H-1では、フォトダイオードを分離する素子分離部71の突起部73において反射した光が、隣接する画素52に漏れ込むことが懸念される。
【0083】
これに対し、図12のBにおいて破線の矢印で表す光のように、撮像素子51H-2では、フォトダイオードを分離する素子分離部81で反射した光が、隣接する画素52に漏れ込むことがない。
【0084】
従って、撮像素子51H-2のように、1つの画素52に2つのフォトダイオードが形成される構成では、それらのフォトダイオードを分離するのに平坦部83を有する素子分離部81を用い、画素52どうしの分離には突起部33を有する素子分離部31を用いることが好ましい。
【0085】
図14を参照して、突起部33を有する素子分離部31の平面的な配置について説明する。
【0086】
図14のAには、上述した図9の撮像素子51Eのように、遮光壁61に開口部63が形成される構成において、開口部63を通る個所にだけ、突起部33を有する素子分離部31が配置される配置例が示されている。また、この配置例では、開口部63を通る個所以外には、平坦部23を有する素子分離部21が設けられている。
【0087】
図14のBには、上述した図11の撮像素子51Fのように、フォトダイオードPDと電荷蓄積部62とが横方向に配置されている構成において、フォトダイオードPDと電荷蓄積部62とを分離する個所にだけ、突起部33を有する素子分離部31Fが配置される配置例が示されている。また、この配置例では、画素どうしの間には、平坦部23を有する素子分離部21が設けられている。
【0088】
図14のCには、上述した図12の撮像素子51Gのように、FD部64を設けた構成において、FD部64を囲う個所にだけ、突起部33を有する素子分離部31Gが配置される配置例が示されている。また、この配置例では、画素どうしの間には、平坦部23を有する素子分離部21が設けられている。
【0089】
<撮像素子の製造方法>
図15乃至図23を参照して、本技術を適用した撮像素子の製造方法における素子分離部31または素子分離部21を形成するプロセスについて説明する。
【0090】
図15を参照して、第1の製造方法について説明する。
【0091】
第1の工程において、図15の上から1段目に示すように、半導体基板11の裏面全面に対して窒化シリコン(Si3N4)を成膜して、トレンチ102を形成する領域のみ窒化シリコン膜を除去することによりハードマスク101を形成する。そして、ハードマスク101を利用して半導体基板11をエッチングすることによりトレンチ102を加工する。これにより、トレンチ102の側面103は、半導体基板11の裏面に対して略垂直となるように形成され、トレンチ102の底面104は、平坦となるように形成される。
【0092】
第2の工程において、図15の上から2段目に示すように、トレンチ102の側面103に対してサイドウォール105を成膜する。例えば、トレンチ102の内面すべてに対して窒化シリコンを成膜した後に、トレンチ102の底面部分をエッチバックして窒化シリコン膜を除去することによりサイドウォール105が形成される。
【0093】
第3の工程において、図15の上から3段目に示すように、半導体基板11に対するエッチバックを行って、トレンチ102の底面104を掘り下げ、サイドウォール105よりも深くなるようにトレンチ102の底面106を形成する。なお、第3の工程におけるエッチバックはオプションとしてもよい。
【0094】
第4の工程において、図15の上から4段目に示すように、半導体基板11に対するアルカリエッチングを行って、トレンチ102の底部に、菱形形状に広がる突出部107を形成する。即ち、アルカリ性の薬液を用いてシリコン面方位選択エッチングを行い、エッチングレートの低いシリコン面(111)が露出することで、トレンチ102の突出部107を、側面103よりも広がるような菱形形状に形成することができる。
【0095】
第5の工程において、図15の上から5段目に示すように、トレンチ102にメタルなどの所望の材料を埋め込むことで、トレンチ側面32よりも側面方向に突出するような菱形形状の突起部33を有する素子分離部31が形成される。
【0096】
図16を参照して、第2の製造方法について説明する。例えば、第2の製造方法は、突起部33を有する素子分離部31と、平坦部23を有する素子分離部21とを作り分ける製造方法である。
【0097】
第11の工程において、図16の上から1段目に示すように、上述した図15の第1の工程と同様に、トレンチ102-1および102-2を加工する。
【0098】
第12の工程において、図16の上から2段目に示すように、トレンチ102-1および102-2の内面すべてに対して窒化シリコンを成膜する。これにより、トレンチ102-1の側面103-1にサイドウォール105-1を形成するとともに、トレンチ102-1の底面104-1にマスク108-1を形成する。同時に、トレンチ102-2の側面103-2にサイドウォール105-2を形成するとともに、トレンチ102-2の底面104-2にマスク108-2を形成する。さらに、トレンチ102-2に埋め込むようにレジスト111を塗布する。
【0099】
第13の工程において、図16の上から3段目に示すように、トレンチ102-1の底面部分をエッチバックしてマスク108-1を除去した後、レジスト111を除去する。これにより、トレンチ102-1の底面104-1において半導体基板11が露出する。
【0100】
第13の工程において、図16の上から4段目に示すように、半導体基板11に対するアルカリエッチングを行って、トレンチ102-1の底部に、菱形形状に広がる突出部107を形成する。このとき、トレンチ102-2の底部は、マスク108-2により加工されることはない。
【0101】
その後、窒化シリコン膜を除去し、トレンチ102-1および102-2にメタルなどの所望の材料を埋め込むことで、それぞれ異なる深さで突起部33-1および33-2を有する素子分離部31-1および31-2が形成される。
【0102】
図17を参照して、第3の製造方法について説明する。例えば、第3の製造方法は、中段に突起部33Eを有する素子分離部31E(図9参照)と、平坦部23を有する素子分離部21とを作り分ける製造方法である。
【0103】
第21の工程において、半導体基板11の裏面に対して酸化シリコン(SiO2)を成膜してハードマスク101を形成し、半導体基板11をエッチングすることによりトレンチ102-1および102-2を加工する。続いて、トレンチ102-1および102-2の内部に酸化シリコンを成膜し、トレンチ102-1の底面104-1およびトレンチ102-2の底面104-1-2の酸化シリコン膜をエッチバックにより除去する。これにより、トレンチ102-1の側面103-1にサイドウォール105-1を形成するとともに、トレンチ102-2の側面103-2にサイドウォール105-2を形成する。
【0104】
そして、トレンチ102-2を埋め込むようにレジスト(図示せず)を塗布し、半導体基板11をエッチングすることにより、トレンチ102-1の底面104-1のみ掘り下げる。さらに、トレンチ102-2からレジストを除去し、トレンチ102-1および102-2の内部に窒化シリコンを成膜し、トレンチ102-1の底面104-1およびトレンチ102-2の底面104-1-2の窒化シリコン膜をエッチバックにより除去する。
【0105】
これにより、図17の上から1段目に示すように、トレンチ102-1の側面103-1に窒化シリコン膜112-1を形成するとともに、トレンチ102-2の側面103-2に窒化シリコン膜112-2を形成する。
【0106】
第22の工程において、半導体基板11をエッチングすることにより、トレンチ102-1の底面104-1およびトレンチ102-2の底面104-2を掘り下げ、その掘り下げた部分に酸化シリコンを成膜する。これにより、図17の上から2段目に示すように、トレンチ102-1の内部において窒化シリコン膜112-1が形成されていない領域にハードマスク113-1が形成されるとともに、トレンチ102-2の内部において窒化シリコン膜112-2が形成されていない領域にハードマスク113-2が形成される。
【0107】
第23の工程において、図17の上から3段目に示すように、窒化シリコン膜112-1および窒化シリコン膜112-2をウォッシュアウトする。これにより、トレンチ102-1の側面103-1の中段における一部において、半導体基板11が露出した状態となる一方で、トレンチ102-2の側面103-2は、サイドウォール105-2およびハードマスク113-2に覆われた状態となる。
【0108】
第24の工程において、半導体基板11に対するアルカリエッチングを行って、トレンチ102-1の側面103-1の中段において露出している半導体基板11がシリコン面方位選択エッチングされ、突出部109-1が形成される。そして、酸化シリコン膜を除去することで、図17の上から4段目に示すように、中段に突出部109-1を有するトレンチ102-1と、平坦に形成された底面104を有するトレンチ102-2とを作り分けることができる。
【0109】
その後、トレンチ102-1および102-2にメタルなどの所望の材料を埋め込むことで、中段に突起部33Eを有する素子分離部31E(図9参照)、および平坦部23を有する素子分離部21が形成される。
【0110】
図18を参照して、第4の製造方法について説明する。例えば、第4の製造方法は、異なるサイズの突起部33を有する素子分離部31を作り分ける製造方法である。
【0111】
第31の工程において、半導体基板11の裏面に対して酸化シリコンを成膜してハードマスク101を形成し、半導体基板11をエッチングすることによりトレンチ102-1および102-2を加工する。続いて、トレンチ102-1および102-2の内部に酸化シリコンを成膜し、トレンチ102-1の底面104-1およびトレンチ102-2の底面104-1-2の酸化シリコン膜をエッチバックにより除去する。これにより、トレンチ102-1の側面103-1にサイドウォール105-1を形成するとともに、トレンチ102-2の側面103-2にサイドウォール105-2を形成する。
【0112】
そして、トレンチ102-1および102-2の内部に窒化シリコンを成膜する。このとき、トレンチ102-1では、側面103-1に窒化シリコン膜112が成膜されるとともに、トレンチ102-2では、その内部を埋め込むように窒化シリコン膜114が成膜される。さらに、図18の上から1段目に示すように、トレンチ102-2側にレジスト115を塗布する。
【0113】
第32の工程において、レジスト115を除去した後、半導体基板11をエッチングすることにより、図18の上から2段目に示すように、トレンチ102-1を掘り下げて底面106-1を形成する。
【0114】
第33の工程において、窒化シリコン膜112および窒化シリコン膜114を除去する。これにより、図18の上から3段目に示すように、トレンチ102-1では、側面103-1の先端部分と底面106-1とにおいて半導体基板11が露出し、トレンチ102-2では、底面104-2のみにおいて半導体基板11が露出する。
【0115】
第34の工程において、半導体基板11に対するアルカリエッチングを行って、トレンチ102-1の内部において側面103-1の先端部分と底面106-1とにおいて露出している半導体基板11がシリコン面方位選択エッチングされ、突出部107-1が形成される。一方、トレンチ102-2の内部において底面106-1において露出している半導体基板11がシリコン面方位選択エッチングされ、突出部107-2が形成される。
【0116】
即ち、図18の上から4段目に示すように、トレンチ102-1の先端部分において大きな形状の突出部107-1と、トレンチ102-2の先端部分において小さな形状の突出部107-2とを作り分けることができる。
【0117】
その後、トレンチ102-1および102-2にメタルなどの所望の材料を埋め込むことで、それぞれ異なるサイズの突起部33を有する素子分離部31が形成される。
【0118】
図19および図20を参照して、第5の製造方法について説明する。例えば、第5の製造方法は、複数の突起部33を有する素子分離部31の製造方法である。
【0119】
第41の工程において、半導体基板11の裏面に対して酸化シリコンを成膜してハードマスク101を形成し、半導体基板11をエッチングすることによりトレンチ102を加工する。続いて、トレンチ102の内部に酸化シリコンを成膜し、トレンチ102の底面104の酸化シリコン膜をエッチバックにより除去することによって、図19の上から1段目に示すように、トレンチ102の側面103にサイドウォール105を形成する。
【0120】
第42の工程において、半導体基板11をエッチングすることにより、トレンチ102の底面104を掘り下げて、トレンチ102の内部に窒化シリコンを成膜し、トレンチ102-1の底面104の窒化シリコン膜をエッチバックにより除去する。これにより、図19の上から2段目に示すように、トレンチ102の側面103に窒化シリコン膜112を形成する。
【0121】
第43の工程において、半導体基板11をエッチングすることにより、トレンチ102のさらに掘り下げて底面106を形成し、その掘り下げた部分に酸化シリコンを成膜して、底面106の酸化シリコン膜をエッチバックにより除去する。これにより、図19の上から3段目に示すように、トレンチ102の内部において窒化シリコン膜112が形成されていない領域にハードマスク113が形成される。
【0122】
第43の工程において、半導体基板11をエッチングすることにより、トレンチ102の底面106をさらに掘り下げ、窒化シリコン膜112をウォッシュアウトする。これにより、図20の上から1段目に示すように、トレンチ102の側面103の中段における一部と、トレンチ102の側面103の先端部分および底面106とにおいて半導体基板11が露出する。
【0123】
第45の工程において、半導体基板11に対するアルカリエッチングを行って、トレンチ102の内部の中段および先端において露出している半導体基板11がシリコン面方位選択エッチングされる。これにより、トレンチ102の中段に突出部109が形成されるとともに、トレンチ102の先端に突出部107が形成される。
【0124】
その後、トレンチ102にメタルなどの所望の材料を埋め込むことで、2つの突起部33を有する素子分離部31が形成される。もちろん、同様の工程を繰り返すことにより、3つ以上の突起部33を有する素子分離部31を形成することができる。
【0125】
図21を参照して、第6の製造方法について説明する。例えば、第6の製造方法は、異なる深さで突起部33を有する素子分離部31を作り分ける製造方法である。
【0126】
第51の工程において、半導体基板11の裏面に対して酸化シリコンを成膜してハードマスク101を形成し、半導体基板11をエッチングすることによりトレンチ102-1および102-2を加工する。続いて、トレンチ102-1および102-2の内部に酸化シリコンを成膜し、トレンチ102-1の底面104-1およびトレンチ102-2の底面104-1-2の酸化シリコン膜をエッチバックにより除去する。これにより、トレンチ102-1の側面103-1にサイドウォール105-1を形成するとともに、トレンチ102-2の側面103-2にサイドウォール105-2を形成する。
【0127】
そして、半導体基板11をエッチングすることにより、トレンチ102-1の底面104-1を掘り下げるとともに、トレンチ102-2の底面104-2を掘り下げ、トレンチ102-1および102-2の内部に窒化シリコンを成膜する。このとき、トレンチ102-1では、側面103-1に窒化シリコン膜112が成膜されるとともに、トレンチ102-2では、その内部を埋め込むように窒化シリコン膜114が成膜される。さらに、図21の上から1段目に示すように、トレンチ102-2側にレジスト115を塗布する。
【0128】
第52の工程において、レジスト115を除去した後、半導体基板11をエッチングすることにより、トレンチ102-1の底面104-1をさらに掘り下げる。そして、CVD(chemical vapor deposition)によりトレンチ102-1の内部に酸化シリコン膜を成膜し、トレンチ102-1の底面104-1の酸化シリコン膜をエッチバックにより除去する。これにより、図21の上から2段目に示すように、酸化シリコン膜116が成膜される。
【0129】
第53の工程において、半導体基板11をエッチングすることにより、トレンチ102-1を掘り下げて底面106-1を形成した後、窒化シリコン膜114をウォッシュアウトする。これにより、図21の上から3段目に示すように、深く形成された底面106-1のトレンチ102-1と、浅く形成された底面104-2のトレンチ102-2とが形成される。
【0130】
第54の工程において、半導体基板11に対するアルカリエッチングを行って、トレンチ102-1の内部において側面103-1の先端部分と底面106-1とにおいて露出している半導体基板11がシリコン面方位選択エッチングされ、突出部107-1が形成される。同様に、トレンチ102-2の内部において側面103-2の先端部分と底面106-2とにおいて露出している半導体基板11がシリコン面方位選択エッチングされ、突出部107-2が形成される。
【0131】
即ち、図21の上から4段目に示すように、深い領域に突出部107-1が形成されたトレンチ102-1と、浅い領域に突出部107-2が形成されたトレンチ102-2とを作り分けることができる。
【0132】
その後、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を除去し、トレンチ102-1および102-2にメタルなどの所望の材料を埋め込むことで、それぞれ異なる深さで突起部33-1および33-2を有する素子分離部31-1および31-2が形成される。
【0133】
なお、窒化シリコンと酸化シリコンとを成膜する工程は逆でもよく、ウォッシュアウト時のエッチング選択性を確保することができれば、その他の膜種の組み合わせも選択することが可能である。
【0134】
図22を参照して、第7の製造方法について説明する。例えば、第7の製造方法は、酸性のエッチング薬液を用いた等方性エッチングで形成される突起部33を有する素子分離部31の製造方法である。
【0135】
第61の工程において、図22の上から1段目に示すように、半導体基板11の裏面に対して酸化シリコンを成膜してハードマスク101を形成し、半導体基板11をエッチングすることによりトレンチ102を加工する。
【0136】
第62の工程において、図22の上から2段目に示すように、トレンチ102の側面103に対してサイドウォール105を成膜する。例えば、トレンチ102の内面すべてに対して窒化シリコンを成膜した後に、トレンチ102の底面部分をエッチバックして窒化シリコン膜を除去することによりサイドウォール105が形成される。
【0137】
第63の工程において、図22の上から3段目に示すように、半導体基板11に対して酸性の薬液を用いて等方性エッチングを行って、トレンチ102の底部に、略球形状に広がる底面110を形成する。
【0138】
第64の工程において、図22の上から4段目に示すように、窒化シリコン膜を除去する。
【0139】
その後、トレンチ102にメタルなどの所望の材料を埋め込むことで、等方性エッチングで形成される突起部33を有する素子分離部31が形成される。
【0140】
図23を参照して、第8の製造方法について説明する。例えば、第8の製造方法は、異種材料が埋め込まれた突起部33を有する素子分離部31の製造方法である。
【0141】
まず、図15を参照して説明した第1乃至第4の工程が行われることで、トレンチ102の突出部107を、側面103よりも広がるような菱形形状に形成する。
【0142】
その後、第71の工程において、図23の上から1段目に示すように、トレンチ102に対してタングステン121を埋め込む。
【0143】
第72の工程において、エッチバックを行うことにより、トレンチ102の内部において側面103よりも側面方向に突出している突出部にタングステン122が残るように、トレンチ102の内部の突出部分以外のタングステン121を除去する。即ち、即ち、図23の上から2段目に示すように、レンチ102の突出部にのみタングステン122が埋め込まれた状態とする。
【0144】
第73の工程において、図23の上から3段目に示すように、トレンチ102の内部にアルミニウム123を埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Polishing)およびドライエッチングにより半導体基板11を平坦にする。これにより、突起部33の突出部にタングステン122が埋め込まれ、突起部33の突出部以外にアルミニウム123が埋め込まれた素子分離部31が形成される。
【0145】
ここで、突起部33の突出部に埋め込まれるタングステン122は、その突出部以外のトレンチ102の内部に埋め込まれるアルミニウム123に対して相対的に、光を吸収しやすい材料(以下、高吸収材料と称する)である。即ち、突起部33の突出部には、その突出部以外のトレンチ102の内部に埋め込まれる材料の吸収係数よりも、吸収係数が高い高吸収材料が埋め込まれる。また、突起部33の突出部以外のトレンチ102の内部に埋め込まれるアルミニウム123は、突起部33の突出部に埋め込まれるタングステン122に対して相対的に、光を反射しやすい材料(以下、高反射材料と称する)である。即ち、突起部33の突出部以外のトレンチ102の内部には、突起部33の突出部に埋め込まれる材料の反射率よりも、反射率が高い高反射材料が埋め込まれる。
【0146】
例えば、素子分離部31の深い所で起こる反射光は、隣接する画素52への混色を引き起こしやすいことが知られている。そこで、突起部33の突出部に高吸収材料であるタングステン122を埋め込み、突出部以外の突起部33に高反射材料であるアルミニウム123を埋め込むことにより、隣接する画素52への混色を抑制することができる。即ち、突起部33の突出部以外のトレンチ102の内部に埋め込まれるアルミニウム123よりも、光に対する反射率が低く吸収係数が高いタングステン122を突起部33の突出部に埋め込むことで、隣接する画素52への混色を抑制することができる。
【0147】
なお、突起部33の突出部に埋め込まれる材質は、突起部33の突出部以外のトレンチ102の内部に埋め込まれる材質よりも相対的に反射率が低ければよく、上述したような、タングステン122およびアルミニウム123の組み合わせに限定されることはない。具体的には、高反射材料として、アルミニウム以外に、銀、金、銅、コバルトなどを用いてもよく、高吸収材料として、タングステン以外に、タンタル(窒化タンタル)、チタン(窒化チタン)、クロム、モリブデン、ニッケル、プラチナなどを用いてもよい。
【0148】
<電子機器の構成例>
上述したような撮像素子51は、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像システム、撮像機能を備えた携帯電話機、または、撮像機能を備えた他の機器といった各種の電子機器に適用することができる。
【0149】
図24は、電子機器に搭載される撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【0150】
図24に示すように、撮像装置201は、光学系202、撮像素子203、信号処理回路204、モニタ205、およびメモリ206を備えて構成され、静止画像および動画像を撮像可能である。
【0151】
光学系202は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの像光(入射光)を撮像素子203に導き、撮像素子203の受光面(センサ部)に結像させる。
【0152】
撮像素子203としては、上述した撮像素子51が適用される。撮像素子203には、光学系202を介して受光面に結像される像に応じて、一定期間、電子が蓄積される。そして、撮像素子203に蓄積された電子に応じた信号が信号処理回路204に供給される。
【0153】
信号処理回路204は、撮像素子203から出力された画素信号に対して各種の信号処理を施す。信号処理回路204が信号処理を施すことにより得られた画像(画像データ)は、モニタ205に供給されて表示されたり、メモリ206に供給されて記憶(記録)されたりする。
【0154】
このように構成されている撮像装置201では、上述した撮像素子51を適用することで、例えば、クロストークの抑制された、より高画質な画像を撮像することができる。
【0155】
<イメージセンサの使用例>
図25は、上述のイメージセンサ(撮像素子)を使用する使用例を示す図である。
【0156】
上述したイメージセンサは、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに使用することができる。
【0157】
・ディジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置
【0158】
<構成の組み合わせ例>
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられたトレンチ部と、
前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部と
を備える撮像素子。
(2)
前記突起部は、前記半導体基板を構成する結晶の所定の面方位に沿った前記傾斜面により構成される
上記(1)に記載の撮像素子。
(3)
前記突起部は、前記トレンチ部の先端に設けられる
上記(1)または(2)に記載の撮像素子。
(4)
前記突起部は、前記半導体基板の受光面から前記トレンチ部の先端までの間の中段に設けられる
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の撮像素子。
(5)
前記突起部は、前記半導体基板の受光面から前記トレンチ部の先端までの間の複数個所に設けられる
上記(1)から(4)までのいずれかに記載の撮像素子。
(6)
前記トレンチ部および前記突起部には、光の透過を抑制する材料が埋め込まれる
上記(1)から(5)までのいずれかに記載の撮像素子。
(7)
前記突起部のうちの前記トレンチ部の側面よりも側面方向に突出している突出部に埋め込まれる第1の材料と、前記突出部以外の前記トレンチ部の内部に埋め込まれる第2の材料とは、それぞれ特性が異なる
上記(6)に記載の撮像素子。
(8)
前記第1の材料は、前記第2の材料よりも光に対する吸収係数が高く、
前記第2の材料は、前記第1の材料よりも光に対する反射率が高い
上記(7)に記載の撮像素子。
(9)
撮像素子を製造する製造装置が、
照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられるトレンチ部を彫り込むことと、
前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部を形成することと
を含む製造方法。
(10)
照射される光を光電変換する光電変換部が形成される半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側から、複数の前記光電変換部どうしの間に設けられたトレンチ部と、
前記トレンチ部の一部分において、前記トレンチ部の間隔が広がるように前記トレンチ部の側面に対して傾斜する傾斜面を少なくとも設けた突起部と
を有する撮像素子を備える電子機器。
(11)
前記突起部は、アルカリ薬液を用いたシリコン面方位選択エッチングによって形成される
上記(9)に記載の製造方法。
【0159】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0160】
11 半導体基板, 12 平坦化膜, 13 フィルター層, 14 オンチップレンズ層, 15 配線層, 21 素子分離部, 22 トレンチ側面, 23 平坦部, 24および25 遮光部, 31 素子分離部, 32 トレンチ側面, 33 突起部, 34および35 遮光部 51 撮像素子, 52 画素, 53 カラーフィルタ, 54 マイクロレンズ, 55 インナーレンズ, 61 遮光壁, 62 電荷蓄積部 63 開口部, 64 FD部
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