(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】カップホルダ付きアームレスト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 3/10 20060101AFI20221111BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20221111BHJP
B60N 2/75 20180101ALN20221111BHJP
A47C 7/62 20060101ALN20221111BHJP
【FI】
B60N3/10 A
B60R7/04 S
B60N2/75
A47C7/62 A
(21)【出願番号】P 2018232237
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 裕由
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03299214(EP,A1)
【文献】特開2000-238568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154815(US,A1)
【文献】国際公開第2013/114456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/10
B60R 7/04
B60N 2/75
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドと、
前記パッドを覆う表皮と、
前記表皮に形成された開口に挿通されて一部が前記表皮内に配置されるカップホルダと、を有する、カップホルダ付きアームレストにおいて、
前記パッドには、前記カップホルダを内側に挿通させる挿通口を有するベゼルが埋設され、
前記表皮の開口縁部が、前記カップホルダに形成されたフランジ部と前記ベゼルの間に挟持され
、
前記フランジ部には、前記カップホルダの底側に開口するフランジ溝が形成され、
前記ベゼルには、前記フランジ溝に突入する枠状突壁と、前記枠状突壁を外側から囲んで枠溝を形成する枠溝形成壁と、前記枠溝形成壁から外側に張り出す張出部と、が設けられ、
前記枠溝には、前記フランジ部のうち前記フランジ溝より外側に配置される溝外周部が受容され、
前記表皮の開口縁部は、前記フランジ溝の溝底壁と前記枠状突壁との間に挟まれると共に、前記枠溝の溝底壁と前記溝外周部との間にも挟まれるカップホルダ付きアームレスト。
【請求項2】
前記張出部には、前記張出部を厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている、請求項1に記載のカップホルダ付きアームレスト。
【請求項3】
パッドと、
前記パッドを覆う表皮と、
前記表皮に形成された開口に挿通されて一部が前記表皮内に配置されるカップホルダと、を有する、カップホルダ付きアームレストにおいて、
前記パッドには、前記カップホルダを内側に挿通させる挿通口を有するベゼルが埋設され、
前記表皮の開口縁部が、前記カップホルダに形成されたフランジ部と前記ベゼルの間に挟持され、
前記ベゼルの内周面には、前記表皮の開口縁部に形成された係止孔に引っ掛けられた係止突起が設けられているカップホルダ付きアームレスト。
【請求項4】
前記パッドには、前記カップホルダと前記ベゼルを支持する支持フレームが埋設されている、請求項1から3の何れか1の請求項に記載のカップホルダ付きアームレスト。
【請求項5】
表皮に形成された開口にカップホルダを挿通し、その表皮内にパッド形成用の発泡原料を注入して、前記表皮及び前記カップホルダと一体にパッドを成形するカップホルダ付きアームレストの製造方法において、
前記カップホルダを前記表皮の開口に挿通させる前に、前記カップホルダを内側に挿通させる挿通口を有するベゼルを前記表皮内に配置しておき、
前記カップホルダに形成されたフランジ部には、前記カップホルダの底側に開口するフランジ溝を形成しておき、
前記ベゼルには、枠状突壁を突設すると共に、前記枠状突壁を外側から囲んで枠溝を形成する枠溝形成壁と、前記枠溝形成壁から外側に張り出す張出部と、を形成しておき、
前記表皮の開口に前記カップホルダを挿通するときに、前記挿通口に前記カップホルダを挿通して、前記枠状突壁を前記フランジ溝に突入させて、前記表皮の開口縁部を前記フランジ溝の溝底壁と前記枠状突壁との間に挟むと共に、前記フランジ部のうち前記フランジ溝より外側に配置される溝外周部を前記枠溝に受容させて、前記表皮の開口縁部を、前記枠溝の溝底壁と前記溝外周部との間にも挟むカップホルダ付きアームレストの製造方法。
【請求項6】
前記張出部に、前記張出部を厚み方向に貫通する複数の貫通孔を形成しておく、請求項5に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法。
【請求項7】
表皮に形成された開口にカップホルダを挿通し、その表皮内にパッド形成用の発泡原料を注入して、前記表皮及び前記カップホルダと一体にパッドを成形するカップホルダ付きアームレストの製造方法において、
前記カップホルダを前記表皮の開口に挿通させる前に、前記カップホルダを内側に挿通させる挿通口を有するベゼルを前記表皮内に配置しておき、
前記表皮の開口に前記カップホルダを挿通するときに、前記ベゼルの内周面に形成された係止突起を前記表皮の開口縁部に形成された係止孔に引っ掛けてから、前記カップホルダを前記ベゼルの前記挿通口に挿通して、前記カップホルダに形成されたフランジ部と前記ベゼルとで前記表皮の開口縁部を挟むカップホルダ付きアームレストの製造方法。
【請求項8】
前記ベゼルの前記表皮内への配置は、前記表皮内に予め配置した支持フレームに前記ベゼルを固定することで行われ、
前記カップホルダを前記ベゼルの前記挿通口に挿通させて前記支持フレームに固定することで、前記フランジ部と前記ベゼルとで前記表皮の開口縁部を挟み付ける
請求項5から7の何れか1の請求項に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カップホルダが表皮の開口に挿通されて、その一部が表皮内に配置されるカップホルダ付きアームレスト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるカップホルダ付きアームレストの製造方法では、パッドの凹部に表皮の開口が重なるようにパッドを表皮で覆った後、表皮の開口にカップホルダを挿通してカップホルダをパッド内に埋設されたフレームに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-127077号(段落[0027]、
図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の製造方法とは異なり、カップホルダをインサート部品として、表皮に形成された開口にカップホルダを挿通して一部を表皮内に配置し、その表皮内にパッド成形用の発泡原料を注入して、表皮とパッドを一体成形することが提案されている。この場合、表皮の開口から発泡原料が漏れ出ることを防ぐことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、パッドと、前記パッドを覆う表皮と、前記表皮に形成された開口に挿通されて一部が前記表皮内に配置されるカップホルダと、を有する、カップホルダ付きアームレストにおいて、前記パッドには、前記カップホルダを内側に挿通させる挿通口を有するベゼルが埋設され、前記表皮の開口縁部が、前記カップホルダに形成されたフランジ部と前記ベゼルの間に挟持されている、カップホルダ付きアームレストである。
【0006】
発明の第2態様は、前記パッドには、前記カップホルダと前記ベゼルを支持する支持フレームが埋設されている、第1態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0007】
発明の第3態様は、前記フランジ部には、前記カップホルダの底側に開口するフランジ溝が形成され、前記ベゼルには、前記フランジ溝に突入する枠状突壁が形成され、前記表皮の開口縁部は、前記フランジ溝の溝底壁と前記枠状突壁との間に挟まれる、第1態様又は第2態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0008】
発明の第4態様は、前記ベゼルには、前記枠状突壁を外側から囲んで枠溝を形成する枠溝形成壁と、前記枠溝形成壁から外側に張り出す張出部と、が設けられ、前記枠溝には、前記フランジ部のうち前記フランジ溝より外側に配置される溝外周部が受容され、前記表皮の開口縁部は、前記枠溝の溝底壁と前記溝外周部との間にも挟まれる、第3態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0009】
発明の第5態様は、前記張出部には、前記張出部を厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている、第4態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0010】
発明の第6態様は、前記ベゼルの内周面には、前記表皮の開口縁部に形成された係止孔に引っ掛けられた係止突起が設けられている、第1態様乃至第5態様のうち何れか1の態様に記載のカップホルダ付きアームレストである。
【0011】
発明の第7態様は、表皮に形成された開口にカップホルダを挿通し、その表皮内にパッド形成用の発泡原料を注入して、前記表皮及び前記カップホルダと一体にパッドを成形するカップホルダ付きアームレストの製造方法において、前記カップホルダを前記表皮の開口に挿通させる前に、前記カップホルダを内側に挿通させる挿通口を有するベゼルを前記表皮内に配置しておき、前記表皮の開口に前記カップホルダを挿通させるときに、前記挿通口に前記カップホルダを挿通して、前記カップホルダに形成されたフランジ部と前記ベゼルとで前記表皮の開口縁部を挟み付ける、カップホルダ付きアームレストの製造方法である。
【0012】
発明の第8態様は、前記ベゼルの前記表皮内への配置は、前記表皮内に予め配置した支持フレームに前記ベゼルを固定することで行われ、前記カップホルダを前記ベゼルの前記挿通口に挿通させて前記支持フレームに固定することで、前記フランジ部と前記ベゼルとで前記表皮の開口縁部を挟み付ける、第7態様に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法である。
【0013】
発明の第9態様は、前記フランジ部に、前記カップホルダの底側に開口するフランジ溝を形成しておき、前記挿通口に前記カップホルダを挿通させるときに、前記ベゼルに突設された枠状突壁を前記フランジ溝に突入させて、前記表皮の開口縁部を前記フランジ溝の溝底壁と前記枠状突壁との間に挟む、第7態様又は第8態様に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法である。
【0014】
発明の第10態様は、前記ベゼルに、前記枠状突壁を外側から囲んで枠溝を形成する枠溝形成壁と、前記枠溝形成壁から外側に張り出す張出部と、を形成しておき、前記挿通口に前記カップホルダを挿通させるときに、前記フランジ部のうち前記フランジ溝より外側に配置される溝外周部を前記枠溝に受容させて、前記表皮の開口縁部を、前記枠溝の溝底壁と前記溝外周部との間にも挟む、第9態様に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法である。
【0015】
発明の第11態様は、前記張出部に、前記張出部を厚み方向に貫通する複数の貫通孔を形成しておく、第10態様に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法である。
【0016】
発明の第12態様は、前記ベゼルの内周面に形成された係止突起を前記表皮の開口縁部に形成された係止孔に引っ掛けてから、前記カップホルダを前記ベゼルの前記挿通口に挿通させることで、前記表皮の開口縁部を前記カップホルダと前記ベゼルの間に挟む、第7態様乃至第11態様のうち何れか1の態様に記載のカップホルダ付きアームレストの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
第1態様、第7態様の発明では、カップホルダのフランジ部とベゼルとの間に表皮の開口縁部を挟んだ状態で、表皮内にパッド形成用の発泡原料を注入することで、表皮の開口から発泡原料が漏れ出ることが防ぎつつ、表皮とパッドを一体成形することが可能となる。
【0018】
第2態様、第8態様の発明では、ベゼルとカップホルダが同じ部品(支持フレーム)に固定されることで、表皮を安定的に挟持することが可能となる。
【0019】
第3態様、第9態様の発明では、フランジ溝の内面と枠状突壁との間に形成される隙間がラビリンス状となり、その隙間に表皮の開口縁部が挟まれるので、発泡原料の漏出が抑えられる。
【0020】
第4態様、第10態様の発明では、フランジ部の溝外周部がベゼルの枠溝に受容され、その溝外周部と枠溝の溝底壁との間にも表皮の開口縁部が挟まれるので、発泡原料の漏出が一層抑制される。また、ベゼルには、枠溝を形成する枠溝形成壁から外側に張出部が張り出しているので、カップホルダ付きアームレストの利用者の指がカップホルダのフランジ部の下に入り込むことが抑制される。
【0021】
第5態様、第11態様の発明では、張出部の貫通孔に発泡原料を通して、張出部と表皮との間にパッドを形成しやすくなる。その結果、カップホルダ付きアームレストの利用者が張出部に触れて違和感を覚えることが抑制される。
【0022】
第6態様、第12態様の発明では、表皮においてベゼルとカップホルダに挟持される位置がずれ難くなるので、表皮の成形の安定化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の一実施形態に係るカップホルダ付きアームレストの斜視図
【
図2】カップホルダ付きアームレストのA-A断面図
【
図3】アームレスト本体に埋設された支持フレーム、カップホルダ及びベゼルの平面図
【
図10】カップホルダ付きアームレストの(A)B-B断面図、(B)C-C断面図
【
図11】カップホルダ付きアームレストの(A)D-D断面図、(B)E-E断面図
【
図13】発泡成形型にセットされた表皮内に支持フレームとベゼルが固定された状態を示す断面図
【
図14】支持フレームにカップホルダが固定された状態を示す断面図
【
図15】発泡成形型にセットされた表皮内に発泡原料が注入された状態を示す断面図
【
図16】発泡成形型にセットされた表皮内にパッドが形成された状態を示す断面図
【
図17】他の実施形態に係るカップホルダ付きアームレストにおける表皮の開口縁部周辺の断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示されるように、本実施形態に係るカップホルダ付きアームレスト10(以下、単に「アームレスト10」という。)は、アームレスト本体11の上部にカップホルダ30を固定してなる。
【0025】
図2に示されるように、アームレスト本体11は、発泡樹脂で構成されたパッド12の外側を袋状の表皮15で覆ってなる。パッド12は、上下に扁平な略直方体状をなし、パッド12の上面には、受容凹部12Aが形成されている。表皮15には、受容凹部12Aに重ねられる開口15A(
図13参照)が形成されている。カップホルダ30は、表皮15の開口15Aに挿通されて、パッド12の受容凹部12Aに受容されている。なお、カップホルダ30の上面は、アームレスト本体11の上面と略面一に配置されている。
【0026】
図3に示されるように、パッド12には、カップホルダ30を固定するための支持フレーム20が埋設されている。
図4に示されるように、支持フレーム20は、1対のサイドフレーム21,21と、1対のサイドフレーム21,21の後端部どうしを連絡する後端連絡部材22と、1対のサイドフレーム21,21の前端部どうしを連絡する前端連絡部材24と、1対のサイドフレーム21,21の中間部どうし連絡する中間連絡部材25と、を備えている。前端連絡部材24は、丸棒を略C字状に形成してなり、そのC字の切れ目が後側を向くように配置されている。中間連絡部材25は、丸棒を略コ字状に形成してなり、前側で開放するように配置されている。なお、各サイドフレーム21の後端部には、アームレスト10の回動軸となる回動軸部23が固定される。
【0027】
図5及び
図6に示されるように、カップホルダ30は、容器状に形成されたホルダ本体31の上端開口縁からフランジ部33が外側に張り出した構造を有する。ホルダ本体31の内側部分は、図示しないカップを受容するためのカップ受容部32になっている。カップ受容部32は、左右に並べられた2つの単カップ受容部32Aが連絡路32Bで繋がれた平面視ダンベル形状に形成されている。
【0028】
フランジ部33には、下方に開口したフランジ溝34が形成されている。具体的には、フランジ部33は、ホルダ本体31の上端から外側に向かって延設された張出壁33Aと、張出壁33Aの外縁部から垂下してホルダ本体31と対向する外側対向壁33Bと、からなる。そして、フランジ溝34が、外側対向壁33Bとホルダ本体31との間に形成されている。
【0029】
詳細には、ホルダ本体31は、平面視矩形状に形成され、その長辺が前後方向で対向するように配置されている。ホルダ本体31の外周面のうち前側を向く部分には、係合リブ35が突設されている(
図5参照)。係合リブ35は、上下方向に延在し、左右方向に対をなして設けられている。各係合リブ35には、前側に開放した半円状の切欠35Kが形成されている。
【0030】
ホルダ本体31の外周面のうち後側を向く部分には、係止フック36が設けられている(
図6参照)。係止フック36は、逆L字状に形成された弾性片36Hと、弾性片36Hの下端部から後側に突出した係止爪36Kと、弾性片36Hの中間部から後側に突出した抜止突部36Tと、からなる。なお、弾性片36Hは、ホルダ本体31の外周面から突出する弾性片補強リブ36Rによって補強されている。
【0031】
ホルダ本体31の外周面のうち係止フック36の下方に位置する部分には、ガイドリブ37が突設されている。ガイドリブ37は、上下方向に延在し、下側が尖った三角形状に形成されている。また、フランジ部33の後辺部における左右方向の中央部からは、中央突部38が垂下している。
【0032】
図10(B)に示されるように、カップホルダ30は、支持フレーム20の前端連絡部材24に固定されている。具体的には、ホルダ本体31の係合リブ35の切欠35Kが前端連絡部材24の前辺部24Fと嵌合し、係止フック36の係止爪36Kと抜止突部36Tが前端連絡部材24の後辺部24Bを挟む。カップホルダ30の前端連絡部材24への固定は、係合リブ35の切欠35Kを前端連絡部材24の前辺部24Fに斜め上方から嵌合させた状態で、前辺部24Fを中心にしてカップホルダ30を下方に回動させて、係止フック36の係止爪36Kを前端連絡部材24の後辺部24Bに引っ掛けることで行われる。なお、カップホルダ30を回動させるときに、ガイドリブ37によって後辺部24Bが係止フック36の係止爪36Kに案内される。
【0033】
図3及び
図10(A)に示されるように、本実施形態のアームレスト10では、カップホルダ30のホルダ本体31が挿通される挿通口40Aを備えたベゼル40がパッド12に埋設されている。
図7、
図8及び
図9に示されるように、ベゼル40は、矩形枠状に形成されたベゼル本体41と、ベゼル本体41の内縁部から下方に垂下した下方突壁51と、ベゼル本体41の内縁部から上方に起立した枠状突壁61と、を有している。なお、ベゼル本体41の内側部分が上述の挿通口40Aになっている。
【0034】
図7及び
図9に示されるように、ベゼル本体41は、ベゼル本体41の内周部を構成する内側平坦部42と、ベゼル本体41の外周部を構成する外側平坦部44と、内側平坦部42と外側平坦部44とを連絡する中間傾斜部43と、外側平坦部44の外縁部から下方に垂下した外周壁45と、からなる。上述した枠状突壁61は、内側平坦部42から起立している。
【0035】
ベゼル本体41の挿通口40Aには、カップホルダ30の係止フック36及び中央突部38との干渉を避けるための逃がし部42Kが連設されている。逃がし部42Kは、ベゼル本体41のうち後側に配置される長辺部において、内側平坦部42の周方向の一部を切除するか、又は、内側平坦部42と中間傾斜部43の周方向の一部を切除することによって形成されている。なお、下方突壁51は、挿通口40Aと逃がし部42Kとを外側から囲むように形成されている(
図8参照)。枠状突壁61は、内側平坦部42に沿った矩形枠のうち逃がし部42Kが形成された部位が分断された形状に形成されている。
【0036】
外側平坦部44は、内側平坦部42よりも上側に配置され、中間傾斜部43は、内側平坦部42へ近づくにつれて下るように傾斜している。そして、中間傾斜部43は、枠状突壁61との間に枠溝62を形成している。なお、外側平坦部44には、その周方向に沿って複数の貫通孔44Aが設けられている。
【0037】
下方突壁51は、略四角筒状に形成され、外周壁45よりも下方に延びている。下方突壁51の外周面には、下方突壁51と外側平坦部44とを繋ぐ複数の突壁補強リブ52が突設されている。詳細には、複数の突壁補強リブ52は、下方突壁51の短辺側壁51Aに設けられた短辺補強リブ52Aと、下方突壁51の長辺側壁51Bに設けられた長辺補強リブ52Bと、からなる。短辺補強リブ52Aは、短辺側壁51Aの中央部に対をなして設けられ、長辺補強リブ52Bは、長辺側壁51Bの両端部に設けられている。なお、ベゼル本体41の外周壁45からは、1対の短辺補強リブ52Aどうしを連絡する連絡壁53が垂下している。
【0038】
下方突壁51の2つの長辺側壁51Bは、前後方向で対向するように配置される。前側の長辺側壁51Bの後面には、上下方向に延在する前側係合リブ55が突設されている。前側係合リブ55には、後側に開放した切欠によって構成された前側嵌合部55Kが設けられている。前側係合リブ55のうち前側嵌合部55Kより下側に配置される部分は、下方に向かうにつれてベゼル40の外側へ向かう三角形状に形成されている。詳細には、前側の長辺側壁51Bからは、突片部51Tが下方に延設されていて、前側係合リブ55Kは、長辺側壁51Bと突片部51Tとに跨って形成されている。なお、前側係合リブ55は、前側の長辺側壁51Bに突設された長辺補強リブ52Bの延長線上(後側に延長した線上)に配置されている。
【0039】
また、
図8に示されるように、後側の長辺側壁51Bに突設された長辺補強リブ52Bは、長辺側壁51Bより下方に延設され、その延設部分によって後側係合突片56が形成されている。後側係合突片56には、前側に開放した切欠によって構成された後側嵌合部56Kが設けられている。後側係合突片56のうち後側嵌合部56Kより下側に配置される部分は、下方に向かうにつれてベゼル40の外側へ向かう三角形状に形成されている。
【0040】
また、
図8に示されるように、短辺補強リブ52Aは、短辺側壁51Aよりも下方に延び、短辺補強リブ52Aの下端部には、外側を下方に配置する段差57Dが設けられている。
【0041】
図7及び
図8に示されるように、下方突壁51の内周面には、複数の係止突起58が突設されている。係止突起58は、先端に矢尻部を有する矢印形状に形成されている。
【0042】
図12に示されるように、枠状突壁61は、内側平坦部42から上方に突出すると共に上端部がベゼル40の内側に屈曲する鉤状に形成された起立部61Aと、起立部61Aの上面から突出して起立部61Aに沿って延在する突条部61Bと、からなる。詳細には、突条部61Bは、起立部61Aの上面において、枠状突壁61の厚み方向の中央部から突出している。
【0043】
図10(A)及び
図11(A)に示されるように、ベゼル40は、支持フレーム20の前端連絡部材24に固定されている。具体的には、ベゼル40の前側係合リブ55の前側嵌合部55Kが前端連絡部材24の前辺部24Fに前側から嵌合し、後側係合突片56の後側嵌合部56Kが前端連絡部材24の後辺部24Bに後側から嵌合する。このとき、ベゼル40の短辺補強リブ52Aの段差57D(
図8参照)が前端連絡部材24を左右方向に挟むことで、ベゼル40の左右方向の位置ずれが規制される。ベゼル40の前端連絡部材24への固定は、例えば、前側嵌合部55Kを前端連絡部材24の前辺部24Fの斜め上方から嵌合した状態で前辺部24Fを中心にベゼル40を下方に回動させて、後側嵌合部56Kを前端連絡部材24の後辺部24Bに嵌合させることで行われる。
【0044】
図11(B)及び
図12に示されるように、本実施形態のアームレスト10では、表皮15の開口縁部(開口15Aの縁部)がカップホルダ30のフランジ部33とベゼル40に挟まれている。具体的には、ベゼル40の枠状突壁61は、フランジ部33のフランジ溝34に突入し、表皮15の開口縁部は、フランジ溝34の溝底壁と枠状突壁61とに挟み付けられている。
【0045】
また、フランジ部33の外側対向壁33Bは、ベゼル40の枠溝62に突入し、表皮15の開口縁部は、枠溝62の溝底壁(即ち、ベゼル本体41の内側平坦部42)と外側対向壁33Bとにも挟み付けられている。なお、パッド12は、ベゼル40のうち枠溝62より外側に配置される部分(即ち、ベゼル本体41の外側平坦部44)と表皮15との間にも形成されている。
【0046】
図12に示されるように、表皮15の開口縁部には、係止孔16が形成されていて、その係止孔16にベゼル40の係止突起58が挿通されている。
【0047】
ところで、カップホルダ30のフランジ部33近傍の表皮15が上から指で押されると、その表皮15の下にあるパッド12が沈み込み、指がフランジ部33の下に入り込むという問題が考えられる。しかしながら、本実施形態では、フランジ部33の外側対向壁33Bの下端部がベゼル40の枠溝62に受容されているので、指がフランジ部33の下に入り込むことが抑えられている。しかも、ベゼル40は、枠溝62の外側に外側平坦部44を備えているので、フランジ部33の外側にあるパッド12の沈み込みが抑えられている。
【0048】
本実施形態のアームレスト10は、以下のようにして製造される。
【0049】
アームレスト10を製造するには、まず、
図13に示されるように、発泡成形型70に、表皮15に内蔵した支持フレーム20をセットし、次いで、表皮15の開口15Aから表皮15内にベゼル40を挿入して、ベゼル40を支持フレーム20(詳細には、前端連絡部材24)に固定する。このとき、ベゼル40の係止突起58に表皮15の係止孔16を引っ掛けて、表皮15の開口縁部をベゼル40に固定する。なお、本実施形態では、発泡成形型70は、アームレスト10の前部を下側に配置する構成となっている。
【0050】
次いで、
図14に示されるように、表皮15の開口15Aにカップホルダ30のホルダ本体31を挿通して、カップホルダ30を支持フレーム20(詳細には、前端連絡部材24)に固定する。すると、ベゼル40の枠状突壁61がカップホルダ30のフランジ溝34に突入して、フランジ溝34の溝底壁と枠状突壁61(詳細には、突条部61B)との間に表皮15が挟み付けられると共に、カップホルダ30の外側対向壁33Bがベゼル40の枠溝62に突入して、枠溝62の溝底壁と外側対向壁33Bとの間に表皮15が挟み付けられる。なお、このとき、表皮15の係止孔16にベゼル40の係止突起58が係止しているので、表皮15においてベゼル40とカップホルダ30に挟持される部位の位置ずれが起こり難くなる。その結果、パッド12を覆う表皮15の面積が小さくなることが抑えられ、表皮15及びパッド12の成形の安定化が図られる。
【0051】
次いで、表皮15内にパッド形成用の発泡原料71を注入し(
図15参照)、発泡させる。このとき、表皮15の開口縁部は、カップホルダ30のフランジ部33とベゼル40との間に挟まれているので、発泡原料71が表皮15の開口15Aから漏れ出ることが抑えられる。
【0052】
そして、発泡原料71の発泡が終了すると、表皮15内にパッド12が形成されると共に、パッド12、表皮15、支持フレーム20、カップホルダ30及びベゼル40が一体化されたアームレスト10が完成する(
図16参照)。ここで、ベゼル40の外側平坦部44には、複数の貫通孔44A(
図7参照)が形成されているので、貫通孔44Aに発泡原料71を通して、外側平坦部44と表皮15との間にパッド12を形成しやすくなる。その結果、アームレスト10の利用者がベゼル40に触れて違和感を覚えることが抑制される。
【0053】
このように、本実施形態のアームレスト10及びその製造方法では、カップホルダ30のフランジ部33とベゼル40との間に表皮15の開口縁部が挟まれた状態で、表皮15内にパッド形成用の発泡原料71が注入されることで、表皮15の開口15Aから発泡原料71が漏れ出ることが防ぎつつ、表皮15とパッド12を一体成形することが可能となる。しかも、ベゼル40とカップホルダ30が同じ部材(支持フレーム20)に固定されるので、表皮15を安定的に挟持することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、フランジ溝34の内面と枠状突壁61との間に形成される隙間がラビリンス状となり、その隙間に表皮15の開口縁部が挟まれるので、発泡原料71の漏出が抑えられる。しかも、枠状突壁61の最上部に設けられた突条部61Bは、起立部61Aよりも枠状突壁61の壁厚方向で細くなっているので、表皮15に突条部61Bが食い込み易くなり、表皮15の挟み付けを強固にすることが可能となっている。
【0055】
さらに、本実施形態では、フランジ部33の外側対向壁33Bがベゼル40の枠溝62に受容され、その外側対向壁33Bと枠溝62の溝底壁との間にも表皮15の開口縁部が挟まれるので、発泡原料71の漏出が一層抑制される。
【0056】
なお、本実施形態では、カップホルダ30の外側対向壁33Bが特許請求の範囲に記載した「溝外周部」に相当し、ベゼル40の中間傾斜部43と外側平坦部44がそれぞれ、特許請求の範囲に記載した「枠溝形成壁」と「張出部」に相当する。
【0057】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態において、カップホルダ30は、支持フレーム20に固定されずにベゼル40に固定されてもよい。
【0058】
(2)
図17に示されるように、カップホルダ30のフランジ部33にフランジ溝34が形成されず、ベゼル40に枠状突部51及び枠溝62が形成されない構成であってもよい。この構成によっても、表皮15の開口縁部をカップホルダ30のフランジ部33とベゼル40との間に挟み付けることができ、発泡原料71の漏出が抑えられる。
【0059】
(3)ベゼル40の外側平坦部44に形成される貫通孔44Aは、外側平坦部44と表皮15との間でパッド12の欠肉が発生しやすい場所にのみ配置されてもよい。
【0060】
(4)カップホルダ30は、中央突部38を備えない構成としてもよい。
【0061】
(5)ベゼル40において、下方突壁51の前側の長辺側壁51Bと後側の長辺側壁51Bとの間で、係止突起58の数を異ならせてもよい。この構成によれば、ベゼル40が前後を逆にして支持フレーム20に固定されたときに、表皮15の貫通孔16に係止突起58が挿通されなくなるので、ベゼル40の取り付け方向の間違いを作業者に気付きやすくすることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 カップホルダ付きアームレスト
12 パッド
15 表皮
20 支持フレーム
30 カップホルダ
33 フランジ部
40 ベゼル