(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】電動ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/0215 20130101AFI20221111BHJP
E05B 83/00 20140101ALI20221111BHJP
【FI】
B60R25/0215
E05B83/00 A
(21)【出願番号】P 2018232311
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】田向 知典
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107550(JP,A)
【文献】特開2011-148356(JP,A)
【文献】特表2020-519524(JP,A)
【文献】特開2011-088456(JP,A)
【文献】特開2006-044573(JP,A)
【文献】特開2015-101166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/0215
B60R 25/023
E05B 77/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸にウォームが設けられたモータと、
前記出力軸と直交する方向を軸方向とした筒状に形成され、外周部に被係合部が形成されると共に、前記ウォームに噛合され、前記モータの駆動によって第1位置と第2位置との間を往復回転するギア部材と、
前記ギア部材の内部において前記ギア部材に連結され、前記ギア部材が第1位置から第2位置へ回転することで前記ギア部材の軸方向一方側へ移動してステアリングシャフトの回転を制限するロック位置に配置され、前記ギア部材が第2位置から第1位置へ回転することで前記ギア部材の軸方向他方側へ移動して前記ステアリングシャフトの回転を許容するアンロック位置に配置されるロック部材と、
前記ギア部材の径方向外側に設けられ、前記ギア部材の第1位置において前記被係合部と前記ギア部材の回転方向に係合して前記ギア部材の第2位置側への回転を制限する係合部材と、
を備えた電動ステアリングロック装置。
【請求項2】
前記係合部材は、付勢部材によって前記ギア部材の径方向内側に付勢されており、
前記係合部材の前記ギア部材との係合解除時には、前記ギア部材の外周部が前記係合部材を摺動しながら第1位置と第2位置との間を回転する請求項1に記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項3】
前記被係合部は、前記ギア部材の周方向を幅方向として前記ギア部材の径方向外側へ開放された凹状に形成されており、
前記第1位置において、前記係合部材が前記被係合部の内部に配置されている請求項2に記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項4】
前記被係合部の幅方向の側面には、前記被係合部の幅方向外側へ向かうに従い前記ギア部材の径方向外側へ傾斜された係合傾斜面が形成されている請求項3に記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項5】
前記ギア部材の側壁には、前記ギア部材の周方向を幅方向として前記ギア部材の径方向に貫通された連通部が形成されており、
前記ギア部材の第2位置において、前記係合部材の一部が、前記連通部から前記ギア部材の内部に侵入した阻止位置に配置されて、前記ロック位置における前記ロック部材の前記アンロック位置側への移動を制限する請求項2~請求項4の何れか1項に記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項6】
前記連通部が、前記ギア部材の軸方向他端部に形成されると共に、前記ギア部材の軸方向他方側へ開放されている請求項5に記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項7】
前記モータ、前記ギア部材、及び前記ロック部材を収容し、前記ギア部材の軸方向他方側へ開放されたケースと、
前記ケースの開口部を閉塞するリッドと、
を備え、
前記リッドには、前記ギア部材の軸方向一方側へ開放され且つ前記係合部材及び前記付勢部材を収容する収容部が形成されると共に、前記収容部を閉塞するカバーが設けられている請求項2~請求項6の何れか1項に記載の電動ステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ステアリングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の電動ステアリングロック装置では、スライダの一端部がギア部材にネジ結合されており、スライダの他端部には、ロック部材が設けられている。また、スライドとロック部材との間には、圧縮コイルスプリングが設けられており、圧縮コイルスプリングの付勢力によってロック部材がロック位置側へ付勢されている。
【0003】
そして、モータの駆動によってギア部材が回転すると、スライダがギア部材に対して軸方向へ移動すると共に、ロック部材がスライダと共にアンロック位置からロック位置へ移動する。これにより、ロック部材がステアリングシャフトと係合して、ステアリングシャフトの回転が制限される。これにより、車両の盗難防止が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の電動ステアリングロック装置では、以下に示す点において改善の余地がある。すなわち、例えば、ロック部材がアンロック位置に配置された状態において、車両の振動等によってギア部材が仮に回転すると、ロック部材がアンロック位置からロック位置側へ移動する可能性がある。このため、電動ステアリング装置では、電動ステアリング装置の信頼性を一層向上するという観点からすると、ステアリングシャフトに対するアンロック状態を良好に維持できる構造にすることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、アンロック状態を良好に維持することができる電動ステアリングロック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、出力軸にウォームが設けられたモータと、前記出力軸と直交する方向を軸方向とした筒状に形成され、外周部に被係合部が形成されると共に、前記ウォームに噛合され、前記モータの駆動によって第1位置と第2位置との間を往復回転するギア部材と、前記ギア部材の内部において前記ギア部材に連結され、前記ギア部材が第1位置から第2位置へ回転することで前記ギア部材の軸方向一方側へ移動してステアリングシャフトの回転を制限するロック位置に配置され、前記ギア部材が第2位置から第1位置へ回転することで前記ギア部材の軸方向他方側へ移動して前記ステアリングシャフトの回転を許容するアンロック位置に配置されるロック部材と、前記ギア部材の径方向外側に設けられ、前記ギア部材の第1位置において前記被係合部と前記ギア部材の回転方向に係合して前記ギア部材の第2位置側への回転を制限する係合部材と、を備えた電動ステアリングロック装置である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記係合部材は、付勢部材によって前記ギア部材の径方向内側に付勢されており、前記係合部材の前記ギア部材との係合解除時には、前記ギア部材の外周部が前記係合部材を摺動しながら第1位置と第2位置との間を回転する電動ステアリングロック装置である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記被係合部は、前記ギア部材の周方向を幅方向として前記ギア部材の径方向外側へ開放された凹状に形成されており、前記第1位置において、前記係合部材が前記被係合部の内部に配置されている電動ステアリングロック装置である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記被係合部の幅方向の側面には、前記被係合部の幅方向外側へ向かうに従い前記ギア部材の径方向外側へ傾斜された係合傾斜面が形成されている電動ステアリングロック装置である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ギア部材の側壁には、前記ギア部材の周方向を幅方向として前記ギア部材の径方向に貫通された連通部が形成されており、前記ギア部材の第2位置において、前記係合部材の一部が、前記連通部から前記ギア部材の内部に侵入した阻止位置に配置されて、前記ロック位置における前記ロック部材の前記アンロック位置側への移動を制限する電動ステアリングロック装置である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記連通部が、前記ギア部材の軸方向他端部に形成されると共に、前記ギア部材の軸方向他方側へ開放されている電動ステアリングロック装置である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記モータ、前記ギア部材、及び前記ロック部材を収容し、前記ギア部材の軸方向他方側へ開放されたケースと、前記ケースの開口部を閉塞するリッドと、を備え、前記リッドには、前記ギア部材の軸方向一方側へ開放され且つ前記係合部材及び前記付勢部材を収容する収容部が形成されると共に、前記収容部を閉塞するカバーが設けられている電動ステアリングロック装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、アンロック状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は、本実施の形態に係る電動ステアリングロック装置のアンロック状態におけるストッパが係合位置に配置された状態を示す下側から見た斜視図であり、(B)は、電動ステアリングロック装置のロック状態においてストッパが阻止位置に配置された状態を示す下側から見た斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る電動ステアリングロック装置を示す上側から見た斜視図である。
【
図3】(A)は、
図2に示されるケースを下側から見た下面図であり、(B)は、
図2に示されるリッドを上側から見た平面図である。
【
図4】
図2に示される電動ステアリングロック装置を、リッドを取外した状態で示す下面図である。
【
図5】(A)は、
図4に示されるロック機構のアンロック状態を示す縦断面図であり、(B)は、ロック機構のロック状態を示す縦断面図である。
【
図6】(A)は、ウォームホイールが第1位置に配置されたときのストッパとウォームホイールとの係合状態を示す下面図であり、(B)は、ウォームホイールが第1位置から回転方向一方側へ回転して、ストッパがウォームホイールの侵入防止部の外周部に当接した状態を示す下面図であり、(C)は、ウォームホイールが第2位置に配置されたときのストッパが阻止位置に配置された状態を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係る電動ステアリングロック装置10(以下、「STロック装置10」と記載する)について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UP、矢印FR、矢印RHは、それぞれSTロック装置10の装置上側、装置前側、装置右側(幅方向一方側)を示している。そして、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、STロック装置10の装置上下方向、装置前後方向、装置左右方向を示すものとする。
【0017】
図2に示されるように、STロック装置10は、車両(自動車)のステアリングシャフトSFの径方向外側に設けられている。そして、STロック装置10は、車両(自動車)のエンジン停止時に作動して、車両(自動車)のステアリングシャフトSFの回転を制限する装置として構成されている。
【0018】
STロック装置10は、STロック装置10の外郭を構成するケース20及びリッド30と、ケース20内に収容されたロック機構40(
図4及び
図5参照)と、を含んで構成されている。以下、STロック装置10の各構成について説明する。
【0019】
(ケース20について)
図2、
図3(A)、及び
図5に示されるように、ケース20は、金属製(本実施の形態では、マグネシウム合金製)とされている。ケース20は、下側へ開放された略直方体箱状を成すと共に、上側から見た平面視で、左右方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。ケース20の右上部には、上側へ突出された取付部20Aが一体に形成されている。この取付部20Aは、前後方向から見て、上側へ開放された略C字形ブロック状に形成されており、取付部20Aの内部に、前後方向を軸方向とするステアリングシャフトSFが配置されている。そして、取付部20Aが、図示しないネジ等の締結部材によってステアリングコラムのサポート部材等に固定されて、ケース20(すなわちSTロック装置10)が車両に取付けられている。
【0020】
ケース20の底壁には、右側部分において、第1ギア収容部20Bが形成されている。第1ギア収容部20Bは、下側へ開放された凹状に形成されると共に、下側から見て略円形状に形成されている。この第1ギア収容部20Bの略中央部には、略円筒状の筒部20Cが形成されており、筒部20Cは、第1ギア収容部20Bの底面から下側へ突出されている。筒部20C内の底壁には、略中央部において、挿通孔20Dが貫通形成されており、挿通孔20Dは、前後方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。これにより、筒部20Cの内部と、ケース20の外部と、が挿通孔20Dによって連通されている。また、筒部20Cの内部の底壁には、挿通孔20Dに対して右側及び左側の位置において、一対のガイド凹部20Eが形成されており、ガイド凹部20Eは、下側へ開放された凹状に形成されている。
【0021】
さらに、ケース20の底壁には、第1ギア収容部20Bに対して後側の位置において、第2ギア収容部20Fが形成されている。この第2ギア収容部20Fは、下側へ開放された凹状に形成されると共に、下面視で、左側へ向かうに従い、前側へ傾斜する方向に延在されている。さらに、第2ギア収容部20Fは、前側へ開放されており、第2ギア収容部20Fと第1ギア収容部20Bとが連通されている。
【0022】
また、ケース20の底壁には、第1ギア収容部20Bに対して左側の位置において、モータ収容部20Gが形成されている。このモータ収容部20Gは、下側へ開放された凹状に形成されると共に、下面視で、左側へ向かうに従い、前側へ傾斜する方向に延在されている。そして、モータ収容部20Gと第2ギア収容部20Fとが連通されている。また、ケース20の後側の側壁には、後述するコネクタ49を配置するための切欠部20Hが形成されている。
【0023】
(リッド30について)
図3(B)及び
図5に示されるように、リッド30は、樹脂材によって構成されている。リッド30は、上下方向を板厚方向とした板状に形成されると共に、下面視で、ケース20の開口部に対応する形状に形成されている。そして、リッド30が、ケース20の開口部を閉塞した状態で、ネジ(図示省略)によってケース20に固定されている。
【0024】
リッド30の右側の部分には、ケース20の筒部20Cの下側の位置において、下側へ隆起され且つ上側へ開放された凹状の支持部30Aが形成されている。この支持部30Aの底壁には、略円柱状の支持柱30Bが一体に形成されており、支持柱30Bは、支持部30Aの底壁から上側へ突出されると共に、ケース20の筒部20Cと同軸上に配置されている。
【0025】
また、リッド30には、支持部30Aに対して左側の位置において、後述するストッパ62を収容するための「収容部」としてのストッパ収容部30Cが形成されている。ストッパ収容部30Cは、下側へ隆起され且つ上側へ開放された凹状に形成されると共に、下面視で左右方向に延在されている。また、ストッパ収容部30Cは、右側へ開放されており、ストッパ収容部30Cの内部と支持部30Aの内部とが連通されている。ストッパ収容部30Cの底面には、左側の部分において、上側へ開放された前後一対のストッパ溝30Dが形成されており、ストッパ溝30Dは、左右方向に延在されている。
【0026】
また、リッド30には、ストッパ収容部30Cの前後方向外側及び左側の位置において、3箇所の嵌合孔30Eが貫通形成されている。ストッパ収容部30Cに対して前後方向外側に配置された嵌合孔30Eは、左右方向を長手方向とする略矩形状に形成されており、ストッパ収容部30Cに対して左側に形成された嵌合孔30Eは、前後方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。
【0027】
(ロック機構40について)
図4及び
図5に示されるように、ロック機構40は、モータ42と、「ギア部材」としてのウォームホイール50と、「ロック部材」としてのロックカム54と、ロックプレート56と、「係合部材」としてのストッパ62(
図5では、不図示)と、を含んで構成されている。また、ロック機構40は、作動することで、ステアリングシャフトSFの回転を許容するアンロック状態(
図5(A)に示される状態)、又は、ステアリングシャフトSFと係合してステアリングシャフトSFの回転を制限するロック状態(
図5(B)に示される状態)に遷移するようになっている。
【0028】
<モータ42について>
モータ42は、下面視で、左側へ向かうに従い前側に傾斜して配置され、ケース20のモータ収容部20G内に収容されている。モータ42の下側には、モータカバー46が設けられており、モータカバー46は、モータ収容部20Gを閉塞した状態で、ケース20に固定されている。そして、モータカバー46によって、モータ42におけるモータ本体42Aの下側への移動が制限されている。
【0029】
モータ42の出力軸42Bは、モータ本体42Aの一端から右側へ向かうに従い後側へ傾斜して延出されており、出力軸42Bの先端部が、モータカバー46に形成された軸受部(図示省略)に回転可能に支持されている。モータ42の出力軸42Bにおける先端側の部分には、ウォーム44が一体回転可能に設けられており、ウォーム44は、ケース20の第2ギア収容部20F内に収容されている。そして、ウォーム44の外周部には、ウォームギア44Aが形成されている。
【0030】
なお、モータカバー46の下側には、基板48が設けられており、基板48は、上下方向を板厚方向として配置されて、ケース20に固定されている。そして、モータ42が基板48に電気的に接続されている。また、基板48には、コネクタ49が実装されており、コネクタ49の一部がケース20の切欠部20H内に配置されている。このコネクタ49には、車両側のコネクタ(図示省略)が嵌合されて、車両側のハーネス(図示省略)を介して、モータ42が車両の制御部に電気的に接続されている。
【0031】
<ウォームホイール50について>
ウォームホイール50は、上下方向を軸方向とした略段付き円筒状に形成されている。具体的には、ウォームホイール50の上端部の径寸法が、ウォームホイール50の下端側の径寸法よりも大きくなっている。そして、ウォームホイール50の上端部が、ケース20の第1ギア収容部20B内に収容され、ウォームホイール50の下端部が、リッド30の支持部30A内に収容されて、ウォームホイール50が、ケース20の筒部20C及びリッド30の支持部30Aによって回転可能に支持されている。
【0032】
ウォームホイール50の上端部における外周部には、複数の外歯によって構成されたギア部50A(
図5参照)が形成されており、ギア部50Aは、ウォームホイール50の周方向全周に亘って形成されている。そして、ギア部50Aが、前述したウォーム44のウォームギア44Aに噛合している。これにより、モータ42が駆動して、出力軸42Bが回転することで、ウォームホイール50が自身の軸回りに回転するようになっている。具体的には、ロック機構40のアンロック状態では、ウォームホイール50が第1位置(
図4及び
図6(A)に示される位置)に配置されている。そして、ウォームホイール50が第1位置から回転方向一方側(
図4及び
図6(A)の矢印A方向側)へ回転することで、ウォームホイール50が第2位置(
図6(C)に示される位置参照)に回転して、ロック機構40がロック状態に遷移するようになっている。
【0033】
また、ウォームホイール50の下側の内周部には、上下方向に延在された一対の収容溝50Bが形成されており、一対の収容溝50Bは、ウォームホイール50の周方向に180度離間して配置されている。収容溝50Bは、ウォームホイール50の軸方向から見て、ウォームホイール50の径方向内側へ開放された略半円状に形成されている。そして、収容溝50Bには、球状のボール52(鋼球)の略半分が相対移動可能に収容されている。
【0034】
さらに、
図1及び
図6にも示されるように、ウォームホイール50の下端部は、下側から見て、ウォームホイール50の径方向外側へ開放された略C字形状に形成されている。すなわち、ウォームホイール50の下端部には、径方向に貫通され且つ下側へ開放された連通部50Cが形成されており、ウォームホイール50の内部と外部とが連通部50Cによって径方向に連通されている。また、連通部50Cは、ウォームホイール50の周方向に延在しており、連通部50Cの幅方向をウォームホイール50の周方向としている。そして、略C字形柱状に形成されたウォームホイール50の下端部が、後述するストッパ62のウォームホイール50の内部への侵入を防止する侵入防止部50Dとして構成されている。
【0035】
連通部50Cにおける幅方向一方側(ウォームホイール50の回転方向一方側)の開口部は、解除部50Eとして構成されている。解除部50Eは、解除面50E1を有しており、解除面50E1は、下面視で、連通部50Cにおける幅方向一方側へ向かうに従いウォームホイール50の径方向外側へ傾斜されて、侵入防止部50Dの外周面に接続されている。
【0036】
侵入防止部50Dの外周面には、周方向中間部において、後述するストッパ62と「被係合部」としての係合する係合凹部50Fが形成されている。係合凹部50Fは、侵入防止部50Dの径方向外側へ開放された凹状に形成されている。また、係合凹部50Fの幅方向両側には、係合傾斜面50F1が形成されており、係合傾斜面50F1は、下面視で、係合凹部50Fの幅方向外側へ向かうに従い、ウォームホイール50の径方向外側へ傾斜されている。
【0037】
<ロックカム54について>
図4及び
図5に示されるように、ロックカム54は、上下方向を軸方向とした略円筒状に形成されている。このロックカム54は、ウォームホイール50と同軸上に配置されると共に、ケース20の筒部20C内及びウォームホイール50内に収容されている。ロックカム54の外周部には、螺旋状のカム溝54Aが形成されており、カム溝54A内には、ボール52の略半分が収容されている。これにより、ロックカム54が、ウォームホイール50と相対移動可能に連結されている。具体的には、ウォームホイール50が回転方向一方側へ回転することで、ボール52がカム溝54A内を摺動して、ロックカム54が、ウォームホイール50に対して上側(軸方向一方側)へ移動する構成になっている。一方、ウォームホイール50が回転方向他方側へ回転することで、ボール52がカム溝54A内を摺動して、ロックカム54が、ウォームホイール50に対して下側(軸方向他方側)に移動する構成になっている。
【0038】
また、ロックカム54の上端面には、一対のガイド突起54Bが一体に形成されている。ガイド突起54Bは、前述したケース20のガイド凹部20Eに対応して形成されて、ガイド凹部20E内に収容されている。これにより、ウォームホイール50の回転時におけるロックカム54の回転を制限しつつ、ロックカム54が軸方向へ移動する構成になっている。
【0039】
また、ロック機構40のアンロック状態では、ロックカム54の下端面がウォームホイール50よりも下側へ僅かに突出した位置に配置されている(
図5(A)参照)。一方、ロック機構40のロック状態では、ロックカム54の下端面がウォームホイール50の連通部50Cの底面と面一又は当該底面よりも僅かに上側に配置されるようになっている。
【0040】
<ロックプレート56について>
ロックプレート56は、左右方向を板厚方向とし且つ上下方向を長手方向とする略矩形プレート状に形成されている。そして、ロックプレート56の上端部が、ケース20の挿通孔20D内に配置されており、ロックプレート56の下端部が、ロックカム54の内部に配置されている。ロックプレート56の下端部における幅方向中央部には、連結孔56Aが貫通形成されており、連結孔56Aには、ロックカム54の上端部に架け渡された連結ピン58が挿通されている。これにより、ロックプレート56がロックカム54と一体的に移動可能に構成されている。すなわち、ウォームホイール50が回転することで、ロックプレート56がロックカム54及び連結ピン58と共に上下方向に移動するようになっている。
【0041】
そして、ロック機構40(STロック装置10)のアンロック状態では、ロックプレート56の上端部が、ケース20の挿通孔20D内に配置されて、ケース20から上側へ突出しない位置に配置されている(
図5(A)に示される位置であり、以下、この位置を「ロック解除位置」と称する)。一方、ロック機構40(STロック装置10)のロック時では、モータ42の駆動によって、ウォームホイール50が回転方向一方側へ回転して、ロックプレート56がロックカム54と共にロック解除位置から上側へ移動したロック位置に配置されるようになっている(
図2及び
図5(B)参照)。そして、ロック位置では、ロックプレート56の上端部が、ケース20の挿通孔20Dから上側(ステアリングシャフトSF側)へ突出して、ステアリングシャフトSFと係合するようになっている。
【0042】
さらに、ロックプレート56の下側には、圧縮コイルスプリングとして構成されたロック付勢バネ60が設けられており、ロック付勢バネ60はロックカム54の内部に配置されている。そして、ロック付勢バネ60の上端部が、ロックプレート56の下端部に係止され、ロック付勢バネ60の下端部が、リッド30の支持柱30Bに装着されてリッド30に係止されており、ロック付勢バネ60が、圧縮変形した状態で、ロックプレート56とリッド30との間に配置されている。これにより、ロックプレート56が、ロック付勢バネ60の付勢力によって上側へ付勢されて、ロックプレート56の連結孔56Aの内周面が、連結ピン58に当接している。
【0043】
<ストッパ62について>
図1、
図5、及び
図6に示されるように、ストッパ62は、上下方向を板厚方向とした略台形プレート状に形成されて、左右方向(ウォームホイール50の径方向)に延在している。そして、ストッパ62が、リッド30のストッパ収容部30Cに左右方向にスライド可能(移動可能)に収容されて、ウォームホイール50の下端部の左側(径方向外側)に配置されている。具体的には、ストッパ62は、
図6(B)に示される退避位置と、退避位置から右側(ウォームホイール50の径方向内側)へ移動した阻止位置(
図6(C)に示される位置)と、の間をスライド可能に構成されている。
【0044】
ストッパ62の左端部(基端部)には、バネ収容部62Aが形成されており、バネ収容部62Aは、平面視で、左側へ開放された凹状に形成されている。このバネ収容部62Aには、「付勢部材」としてのストッパ付勢バネ64(
図5参照)が配置されており、ストッパ付勢バネ64は、圧縮コイルスプリングとして構成されている。ストッパ付勢バネ64の一端部は、バネ収容部62Aの底面に係止され、ストッパ付勢バネ64の他端部は、リッド30のストッパ収容部30Cの左側面に係止されており、ストッパ付勢バネ64が圧縮変形した状態でバネ収容部62A内に配置されている。これにより、ストッパ付勢バネ64によってストッパ62が右側(阻止位置側)へ付勢されている。
【0045】
ストッパ62の左端部には、前後一対の突起部62Bが形成されている。突起部62Bは、ストッパ62から下側へ突出されると共に、リッド30のストッパ溝30D内にスライド可能に収容されている。これにより、突起部62Bが、ストッパ溝30Dの右側面に当接することで、阻止位置におけるストッパ62の右側への移動が制限される構成になっている。
【0046】
ストッパ62の右端部(先端部)には、一方側(後側)の角部において、傾斜部62Cが形成されており、傾斜部62Cは、平面視で、ストッパ62の移動方向に対して傾斜している。具体的には、傾斜部62Cが、平面視で、ストッパ62の基端側(退避位置側)へ向かうに従いストッパ62の幅方向一方側(ウォームホイール50の回転方向一方側)へ傾斜されている。これにより、ストッパ62の先端部の幅寸法が、先端側へ向かうに従い小さくなるように構成されている。
【0047】
そして、ウォームホイール50の第1位置では、ウォームホイール50の径方向において、ストッパ62の先端部とウォームホイール50の係合凹部50Fとが対向して配置されて、ストッパ62の先端部が、ウォームホイール50の係合凹部50F内に配置されている(
図6(A)に示される位置であり、以下この位置を「係合位置」という)。すなわち、この状態では、ストッパ62が、退避位置に対して若干右側へスライドした係合位置に配置されて、ストッパ62の先端面が係合凹部50Fの底面に当接している。これにより、ストッパ62の係合位置では、ウォームホイール50の回転方向において、ストッパ62及びウォームホイール50が係合している。
【0048】
また、ウォームホイール50が第1位置から回転方向一方側(第2位置側)へ回転すると、ウォームホイール50の係合傾斜面50F1がストッパ62の先端部を左側へ押圧して、ストッパ62がストッパ付勢バネ64の付勢力に抗して退避位置へ移動するようになっている。そして、ウォームホイール50の侵入防止部50Dの外周面がストッパ62の先端面に当接して、ストッパ62が、退避位置に配置される構成になっている。
【0049】
また、ウォームホイール50が第2位置まで回転すると、ウォームホイール50の径方向において、ストッパ62とウォームホイール50の連通部50Cとが対向して配置されるようになっている。つまり、ストッパ62とウォームホイール50の侵入防止部50Dとの当接状態が解除されて、ストッパ付勢バネ64の付勢力によってストッパ62が退避位置から右側へ移動して阻止位置に配置されるようになっている。そして、ストッパ62の阻止位置では、ストッパ62の先端部が、ウォームホイール50の連通部50C内を挿通して、ウォームホイール50の内部に侵入するようになっている。また、ストッパ62の阻止位置では、ストッパ62の先端部が、ロックカム54の下側に近接した位置に配置されて、ロックカム54及びロックプレート56のロック位置から下側への移動がストッパ62によって制限されるようになっている。
【0050】
なお、ストッパ62の上側には、ストッパ62を保持するための「カバー」としてのストッパカバー66が設けられている。ストッパカバー66は、上下方向を板厚方向とする略矩形プレート状に形成されている。このストッパカバー66には、リッド30の嵌合孔30Eに対応する3箇所の嵌合爪66Aが一体に形成されており、嵌合爪66Aは、ストッパカバー66の外周部から下側へ延出されている。また、嵌合爪66Aの先端部には、フック部66Bが形成されている。そして、嵌合爪66Aがリッド30の嵌合孔30E内に挿入されて、フック部66Bが嵌合孔30Eの周縁部に係合されている。これにより、ストッパカバー66によってストッパ62の上側への移動が制限されている。
【0051】
(作用及び効果)
次に、STロック装置10の動作を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
(アンロック状態からロック状態への動作について)
STロック装置10のアンロック状態では、ロックカム54及びロックプレート56がロック解除位置に配置されて、ロックプレート56の上端部がケース20の挿通孔20Dから上側へ突出していない状態になっている。これにより、ステアリングシャフトSFの回転が許可された状態になっている。
【0053】
また、この状態では、ウォームホイール50が第1位置に配置されており、ストッパ62の先端部が、ウォームホイール50の係合凹部50F内に配置されている(
図1(A)、
図5(A)、及び
図6(A)参照)。これにより、ウォームホイール50の回転方向において、ストッパ62及びウォームホイール50が係合して、アンロック状態におけるウォームホイール50の第2位置側への回転が制限されている。
【0054】
そして、車両のエンジンを停止させると、制御部の制御によってモータ42が駆動して、モータ42の出力軸42Bが回転する。これにより、出力軸42Bに設けられたウォーム44が回転すると共に、ウォーム44に噛合されたウォームホイール50が第1位置から回転方向一方側へ回転する。ウォームホイール50が回転すると、ロックカム54がウォームホイール50に対して上側へ移動すると共に、連結ピン58によってロックカム54に連結されたロックプレート56が上側へ移動する。これにより、
図2及び
図5(B)に示されるように、ロックカム54及びロックプレート56が、ロック位置に配置されて、ロックプレート56の上端部がステアリングシャフトSFと係合する。その結果、ロック機構40が、ステアリングシャフトSFの回転を制限するロック状態になる。
【0055】
一方、ウォームホイール50が第1位置から回転方向一方側へ回転するときには、ウォームホイール50がストッパ62に対して回転方向一方側へ相対回転する。具体的には、ストッパ62の先端部が、ウォームホイール50の係合傾斜面50F1によってウォームホイール50の径方向外側へ押上げられて、ストッパ62が係合位置から左側(退避位置側)へ変位する。これにより、ストッパ62の先端部とウォームホイール50の係合凹部50Fとの係合状態が解除される。また、このときには、ストッパ付勢バネ64の付勢力によって、ストッパ62の先端面が、ウォームホイール50の侵入防止部50Dの外周面に当接して、ストッパ62が退避位置に配置される(
図6(B)参照)。
【0056】
そして、ウォームホイール50の侵入防止部50Dの外周面が、ストッパ62の先端面上を摺動しながら、ウォームホイール50が回転方向一方側へ回転する。さらに、ウォームホイール50が第2位置まで回転すると、ウォームホイール50の連通部50Cとストッパ62とがウォームホイール50の径方向に対向配置される。これにより、ストッパ62とウォームホイール50の侵入防止部50Dとの当接状態が解除され、ストッパ付勢バネ64の付勢力によってストッパ62が退避位置から右側へ移動して阻止位置に配置される。このため、ストッパ62の先端部が、ウォームホイール50の連通部50C内を挿通して、ウォームホイール50の内部に侵入する。その結果、ストッパ62の先端部が、ロックカム54の下側に近接した位置に配置される。したがって、ロック位置におけるロックカム54及びロックプレート56の下側への移動がストッパ62によって規制される(
図1(B)、
図5(B)、及び
図6(C)参照)。
【0057】
(ロック状態からアンロック状態への動作について)
STロック装置10のロック状態からアンロック状態への動作では、制御部の制御によってモータ42を駆動させて、ウォームホイール50を第2位置から回転方向他方側へ回転させる。ウォームホイール50が回転すると、ロックカム54がウォームホイール50に対して下側へ移動すると共に、連結ピン58によってロックカム54に連結されたロックプレート56が下側へ移動する。これにより、
図5(A)に示されるように、ロックカム54及びロックプレート56が、アンロック位置に配置されて、ロックプレート56とステアリングシャフトSFとの係合状態が解除される。その結果、ロック機構40が、ステアリングシャフトSFの回転を許可するアンロック状態になる。
【0058】
一方、ウォームホイール50が第2位置から回転方向他方側へ回転するときには、ウォームホイール50がストッパ62に対して回転方向他方側へ相対回転する。そして、ウォームホイール50がストッパ62に対して所定量回転すると、ウォームホイール50における解除部50Eの先端部が、ストッパ62の傾斜部62Cに当接する。これにより、解除部50Eの先端部が傾斜部62C上を摺動しながら、ウォームホイール50が回転する。このため、ストッパ62、が解除部50Eによって押圧されて、ウォームホイール50の径方向外側(左側)へ移動し始める。また、ウォームホイール50が回転方向他方側へさらに回転すると、ウォームホイール50の解除面50E1が、ストッパ62の先端部に当接して、解除面50E1によってストッパ62がウォームホイール50の径方向外側へ移動する。これにより、ストッパ62が阻止位置から退避位置側へスライドする。そして、ウォームホイール50が回転方向他方側へさらに回転して、ストッパ62の先端面が、ウォームホイール50の侵入防止部50Dの外周面に当接すると、ストッパ62が退避位置に配置される。
【0059】
ウォームホイール50が回転方向他方側へさらに回転すると、ウォームホイール50の侵入防止部50Dの外周面が、ストッパ62の先端面上を摺動しながら、ウォームホイール50が回転方向他方側へ回転する。そして、ウォームホイール50が第1位置に到達すると、ウォームホイール50の径方向において、ウォームホイール50の係合凹部50Fとストッパ62とが対向配置される。これにより、ストッパ付勢バネ64の付勢力によってストッパ62が退避位置から係合位置へスライドして、ストッパ62の先端部が、係合凹部50Fの内部に配置される。その結果、ウォームホイール50回転方向において、係合凹部50Fとストッパ62の先端部とが係合する。
【0060】
以上説明したように、STロック装置10では、ウォームホイール50における侵入防止部50Dの外周面に、係合凹部50Fが形成されており、係合凹部50Fは、ウォームホイール50の径方向外側へ開放された凹状に形成されている。また、ウォームホイール50の径方向外側には、ストッパ62が設けられている。そして、ウォームホイール50の第1位置では、ストッパ62の先端部が係合凹部50F内に配置されて、ウォームホイール50の回転方向において、ウォームホイール50とストッパ62とが係合している。これにより、第1位置におけるウォームホイール50の回転をストッパ62によって制限することができる。したがって、STロック装置10のアンロック状態を良好に維持することができる。よって、例えば、車両の振動等によってウォームホイール50が第1位置から第2位置側へ不用意に回転して、ロックカム54及びロックプレート56がアンロック位置からロック位置側へ移動することを抑制できる。
【0061】
すなわち、ロックカム54のアンロック位置からロック位置側への移動を抑制するという観点からすると、ウォームホイール50の第1位置において、ストッパ62をロックカム54に直接係合させる構造も考えられる。しかしながら、この場合には、ウォームホイール50の回転が規制されないため、例えば、車両の振動等によってウォームホイール50が第1位置から第2位置側へ不用意に回転して、ロックカム54及びロックプレート56がアンロック位置からロック位置側へ移動する可能性がある。
【0062】
これに対して、本実施の形態では、上述のように、ウォームホイール50とストッパ62とが係合して、第1位置におけるウォームホイール50の回転が制限されている。このため、上記構成と比べて、第1位置におけるウォームホイール50の回転を効果的に抑制して、ロックカム54及びロックプレート56がアンロック位置からロック位置側へ移動することを抑制できる。
【0063】
また、ストッパ62は、ストッパ付勢バネ64によってウォームホイール50の径方向内側に付勢されている。このため、ストッパ62とウォームホイール50との係合解除時には、ストッパ付勢バネ64の付勢力によって、ストッパ62の先端部が、ウォームホイール50の侵入防止部50Dの外周部に当接する。これにより、ストッパ62とウォームホイール50との係合解除時には、侵入防止部50Dの外周部が、ストッパ62の先端部を摺動しながら、ウォームホイール50が第1位置と第2位置との間を回転する。すなわち、ウォームホイール50が、ストッパ付勢バネ64によって径方向内側へ付勢された状態で、第1位置と第2位置との間を回転する。このため、ウォームホイール50のガタを抑制した状態で、ウォームホイール50を回転させることができる。したがって、例えば、ウォームホイール50の回転時における異音の発生等を抑制することができる。
【0064】
また、ストッパ62と係合する、ウォームホイール50の係合凹部50Fは、ウォームホイール50の径方向外側へ開放された凹状に形成されている。これにより、ウォームホイール50の回転方向において、ストッパ62と係合凹部50Fとを簡易な構成で係合させることができる。
【0065】
また、係合凹部50Fの幅方向両側の側面には、係合傾斜面50F1が形成されており、係合傾斜面50F1は、係合凹部50Fの幅方向外側へ向かうに従い、ウォームホイール50の径方向外側へ傾斜している。このため、ウォームホイール50が第1位置から第2位置へ回転するときに、係合傾斜面50F1によって、ストッパ62とウォームホイール50との係合状態を容易に解除することができる。
【0066】
また、ウォームホイール50の下端部の側壁に連通部50Cが形成されており、連通部50Cは、ウォームホイール50の径方向に貫通されている。そして、ウォームホイール50の第2位置では、ストッパ62の先端部が、連通部50Cからウォームホイール50の内部に侵入した阻止位置に配置されて、ロックカム54の下側に近接した位置に配置される。このため、ロック位置におけるロックカム54の下側への移動をストッパ62によって制限することができる。したがって、STロック装置10の盗難防止性能を向上することができる。
【0067】
特に、ロックカム54及びロックプレート56に対するロック強度試験(下側への所定の高荷重をロックカム54及びロックプレート56に付与する強度試験)において、ロックカム54及びロックプレート56がアンロック位置側へ移動することを効果的に防止又は抑制することができる。
【0068】
また、ストッパ62の先端部には、傾斜部62Cが形成されており、傾斜部62Cは、平面視で、ストッパ62の移動方向に対して傾斜する方向に傾斜している。具体的には、傾斜部62Cが、ストッパ62の基端側(退避位置側)へ向かうに従いストッパ62の幅方向一方側(ウォームホイール50の回転方向一方側)へ傾斜されている。さらに、ウォームホイール50の連通部50Cにおける幅方向の開口部には、解除部50Eが形成されている。このため、ウォームホイール50が第2位置から回転方向他方側(第1位置側)へ回転するときには、解除部50Eがストッパ62の傾斜部62Cに当接して、ストッパ62を阻止位置から退避位置側へ押上げる。このため、ウォームホイール50が第2位置から第1位置へ回転するときに、阻止位置に配置されたストッパ62をウォームホイール50の径方向外側へ容易に移動させることができる。
【0069】
また、ウォームホイール50の解除部50Eは、解除面50E1を有しており、解除面50E1は、連通部50Cの幅方向一方側へ向かうに従いウォームホイール50の径方向外側へ傾斜している。このため、ウォームホイール50の第2位置から第1位置への回転時に、解除部50Eによってストッパ62の先端部を押圧するときには、解除面50E1がストッパ62の先端部を摺動しながら、ストッパ62をウォームホイール50の径方向外側へ押上げる。したがって、ウォームホイール50が第2位置から第1位置へ回転するときに、阻止位置に配置されたストッパ62をウォームホイール50の径方向外側へ一層容易に移動させることができる。
【0070】
また、ウォームホイール50の連通部50Cは、ウォームホイール50の軸方向他端部(下端部)に形成されると共に、ウォームホイール50の軸方向他方側(下側)へ開放されている。すなわち、連通部50Cが下側へ開放された切欠き状に形成されている。このため、ウォームホイール50の連通部50Cがウォームホイール50の軸方向他方側(下側)へ開放していない構成と比べて、軸方向におけるウォームホイール50の大型化を抑制できると共に、上下方向におけるSTロック装置10の大型化を抑制することができる。
【0071】
また、連通部50Cを下側へ開放された切欠き状に形成することで、連通部50Cの幅方向両側において侵入防止部50Dを形成することができる。これにより、ロック機構40のアンロック状態では、ストッパ62を侵入防止部50Dに当接させて、ストッパ62のウォームホイール50の内部への侵入を阻止することができる。したがって、ロックカム54の移動をストッパ62によって阻害することなく、ロック機構40をアンロック状態又はロック状態に遷移させることができる。
【0072】
また、ストッパ62は、リッド30のストッパ収容部30Cに収容されており、リッド30には、ストッパ収容部30Cを閉塞するストッパカバー66が設けられている。このため、ストッパ62をリッド30に収容保持した状態で、リッド30をケース20に組付けることで、ストッパ62をウォームホイール50の径方向外側に配置することができる。したがって、STロック装置10の組付性を向上することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、ストッパ62がリッド30に左右方向(ウォームホイール50の径方向)に直線移動可能に設けられているが、ストッパ62をリッド30に回転可能に設ける構成にしてもよい。すなわち、図示は省略するが、この場合には、リッド30によって、ストッパ62を、上下方向を軸方向として支持するように構成する。また、この場合には、ストッパ付勢バネ64をトーションバネとして構成して、ストッパ付勢バネ64によってストッパ62を回転方向一方側(ウォームホイール50の径方向内側)へ付勢する。そして、ウォームホイール50の第1位置において、ストッパ62の一部を係合凹部50Fに侵入させ、ウォームホイール50の第2位置において、ストッパ62の一部を連通部50Cからウォームホイール50の内部に侵入させるようにしてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、ウォームホイール50の回転方向に係合する係合凹部50Fが、ウォームホイール50の径方向外側へ開放された凹状に形成されているが、ウォームホイール50におけるストッパ62と係合する形態はこれに限らない。例えば、ウォームホイール50の外周部に、ウォームホイール50の周方向に離間し且つウォームホイール50の径方向外側へ突出した一対の係合突起を形成して、第1位置において、ストッパ62を、一対の係合突起の間に配置するように構成してもよい。これにより、係合突起とストッパ62とがウォームホイール50の回転方向に係合するため、第1位置におけるウォームホイール50の回転を制限することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 電動ステアリングロック装置
20 ケース
30 リッド
30C ストッパ収容部(収容部)
42 モータ
42B 出力軸
44 ウォーム
50 ウォームホイール(ギア部材)
50C 連通部
50F 係合凹部(被係合部)
50F1 係合傾斜面
54 ロックカム(ロック部材)
62 ストッパ(係合部材)
64 ストッパ付勢バネ(付勢部材)
66 ストッパカバー(カバー)
SF ステアリングシャフト