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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
C08G59/68
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018556560
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2017043072
(87)【国際公開番号】W WO2018110297
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2016240751
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】井上 尭大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝哉
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-275343(JP,A)
【文献】特開2014-101516(JP,A)
【文献】特開2002-069159(JP,A)
【文献】特開2009-120632(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093236(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/059002(WO,A1)
【文献】特開2006-048021(JP,A)
【文献】特開2016-030821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08G 65/00-67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物(A)、光酸発生剤(B)及び熱酸発生剤(C)を含有し、
光酸発生剤(B)と、熱酸発生剤(C)との質量比が、前者:後者で、100:0.05~100:5である組成物。
ただし、カチオン重合性化合物(A)はエポキシ化合物であり、
光酸発生剤(B)は芳香族スルホニウム塩であり、
熱酸発生剤(C)はモノフェニルスルホニウム塩である。
【請求項2】
光酸発生剤(B)が、下記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩である請求項に記載の組成物。
【化1】


(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R19、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数2~10のエステル基を表し、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、X は1価の陰イオンを表す。)
【請求項3】
熱酸発生剤(C)が、下記一般式(2)で表されるモノフェニルスルホニウム塩である請求項1又は2に記載の組成物。
【化2】

(式中、R31及びR32は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基(ただし、フェニル基を除く。)又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、R33、R34、R35、R36及びR37は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、X は1価の陰イオンを表す。)
【請求項4】
カチオン重合性化合物(A)に対する熱酸発生剤(C)の使用割合が、カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して、熱酸発生剤(C)0.00025~0.5質量部である、請求項1~の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載の組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
請求項1~の何れか一項に記載の組成物を、活性エネルギー線照射又は加熱、あるいは紫外線照射及び加熱により硬化させる硬化方法。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項に記載の組成物を、活性エネルギー線照射又は加熱、あるいは紫外線照射及び加熱により硬化させる、硬化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン重合性化合物、光酸発生剤、及び熱酸発生剤を含有する組成物、及び該組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や光学素子において、必要なパターンを形成するために化学増幅型レジストを用いたフォトリソグラフィー法が用いられているが、そのパターンの微細化と高感度化が求められている。パターンの微細化においては、感度をコントロールして露光量に対する線幅変化を抑制することが必要であるが、高感度になるとより少ない露光量でパターン成型することになるため、高感度化するほど、露光量の調整は難しくなる。
【0003】
特許文献1には、露光光を照射することにより酸を発生する第1の酸発生剤、及び露光光を透過し、荷電粒子線を照射することにより酸を発生する第2の酸発生剤を含有することを特徴とするパターン形成材料が開示されており、特許文献2には、シロキサンポリマー及び光酸発生剤を含有するシロキサン組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-297597号公報
【文献】特開2015-147930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2の組成物は、露光量が変化した場合に、得られる硬化物の形状変化が大きくなるという問題があった。
従って、本発明の目的は、露光量の変化に対して得られる硬化物の形状変化が少ない組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、カチオン重合性化合物、光酸発生剤及び熱酸発生剤を含有する組成物が、高感度でありかつ硬化物の光照射時のパターン形成性に優れることを知見し、本発明に到達した。
【0007】
本発明は、カチオン重合性化合物(A)、光酸発生剤(B)、及び熱酸発生剤(C)を含有する組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、高感度で硬化物の光照射時のパターン形成性に優れる。また、その硬化物は、光学フィルタ等に好適なものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の組成物について、好ましい実施形態に基づき説明する。
【0010】
本発明の組成物は、カチオン重合性化合物(A)、光酸発生剤(B)、及び熱酸発生剤(C)を含有する。以下、各成分について順に説明する。
【0011】
本発明の組成物に用いられるカチオン重合性化合物(A)としては、光照射又は加熱によりカチオン種又はルイス酸を発生した光酸発生剤又は熱酸発生剤により高分子化する化合物、又は、架橋反応を起こす化合物であればどのような化合物でもよく、特に限定されるものではないが、一例を挙げると以下の通りである。
カチオン重合性化合物(A)としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニル化合物などが挙げられ、これらの1種又は2種以上使用することができる。これらの化合物の中でも、入手するのが容易であり、取り扱いに便利なエポキシ化合物が適している。該エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが適している。
カチオン重合性化合物としては、なかでも、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物であることが好ましく、特に、芳香族エポキシ化合物であることが好ましい。上記カチオン重合性化合物が上述の化合物であることで、露光量の変化に対して得られる硬化物の形状変化が少ないものとなるからである。
なお、エポキシ化合物は、エポキシ構造を含むもの全てが包含するものとすることができる。例えば、エポキシ構造及びオキセタン構造の両者を含む化合物は、エポキシ化合物に包含するものとすることができる。
【0012】
前記脂環族エポキシ化合物の具体例としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたはシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。前記脂環族エポキシ化合物としては、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシー2-2エポキシエチルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、等が挙げられる。
なお、脂環族環及び芳香族環の両者を含むエポキシ化合物は、脂環族エポキシ化合物に該当するものとすることができる。
【0013】
前記脂環族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR-6100、UVR-6105、UVR-6110、UVR-6128、UVR-6200(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマーA200、サイクロマーM100、サイクロマーM101、エポリードGT-301、エポリードGT-302、エポリード401、エポリード403、ETHB、エポリードHD300、EHPE-3150、EHPE-3150CE(以上、ダイセル(株)製)、KRM-2110、KRM-2199(以上、ADEKA(株)製)などを挙げることができる。
前記脂環族エポキシ化合物の中でも、シクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ樹脂は硬化性(硬化速度)の点で好ましい。
【0014】
前記芳香族エポキシ化合物の具体例としては、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノールまたは、そのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、またはこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂などが挙げられる。
【0015】
前記脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。前記脂肪族エポキシ化合物の代表的な化合物として、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。更に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
なお、脂肪族エポキシ化合物は、脂環族環及び芳香族環を含まないものとすることができる。
【0016】
前記芳香族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、jERYX-4000、jERYX-8000、jER871、jER872、jER157S70、jER806、jER1001、jER152、jER604(三菱化学社製)PY-306、0163、DY-022(以上、チバガイギー社製)、KRM-2720、EP-4100、EP-4000、EP-4080、EP-4088、EP-4900、ED-505、ED-506(ADEKA社製)、エポライトM-1230、エポライトEHDG-L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライト3002、エポライトFR-1500(共栄社化学社製)、サントートST0000、YD-716、YH-300、PG-202、PG-207、YD-172、YDPN638(新日鐵化学社製)デナコールEX321、デナコールEX313、デナコール314、デナコールEX-411、EM-150(ナガセケムテックス社製)、EPPN-201、EPPN-502H、NC-3000、NC-7300L、XD-1000、NC-2000-L、NC-7000L、CER-3000-L、EOCN-104S、EOCN-1020、EPPN-501H(日本化薬社製)などを挙げることができる。
【0017】
カチオン重合性化合物(A)として用いることができる前記オキセタン化合物の具体例としては、例えば以下の化合物を挙げることができる。3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4-フルオロ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4-メトキシ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-テトラブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-トリブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、3,3’-(1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス-(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルなどを例示することがでる。
【0018】
前記オキセタン化合物として好適に使用できる市販品の具体的な製品名としては、アロンオキセタンOXT-101,OXT-121,OXT-221,OXT-212,OXT-211(以上、東亞合成(株)製)、エタナコールEHO,OXBP,OXTP,OXMA(以上、宇部興産(株)製)などが挙げられる。これらは1種単独で用いることができ、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら、オキセタン化合物は特に可撓性を必要とする場合に使用すると効果的であり好ましい。
【0019】
その他のカチオン重合性化合物(A)としては、テトラヒドロフラン、2,3-ジメチルテトラヒドロフランなどのオキソラン化合物、トリオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,6-トリオキサンシクロオクタンなどの環状アセタール化合物、β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトンなどの環状ラクトン化合物、エチレンスルフィド、チオエピクロルヒドリンなどのチイラン化合物、1,3-プロピンスルフィド、3,3-ジメチルチエタンなどのチエタン化合物、テトラヒドロチオフェン誘導体などの環状チオエーテル化合物、エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、プロピレングリコールのプロペニルエーテルなどのビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンの反応によって得られるスピロオルトエステル化合物、スチレン、ビニルシクロヘキセン、イソブチレン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和化合物及び上記誘導体などが挙げられる。
【0020】
本発明においては、カチオン重合性化合物(A)として、上述したカチオン重合性化合物のうち1種又は2種以上を配合して使用することができる。
カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物が、硬化物の耐熱性及び透明性の点で特に好ましい。
【0021】
本発明の組成物に用いられる光酸発生剤(B)とは、光照射によりカチオン種又はルイス酸を発生させることが可能な化合物であればどのようなものでも差し支えないが、好ましくは、紫外線の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、下記一般式
[A]m+[B]m-
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
【0022】
ここで陽イオン[A]m+はオニウムであることが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式
[(RQ]m+
で表すことができる。
【0023】
式中、Rは炭素原子数が1~60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでいてもよい有機の基である。aは1~5なる整数である。a個のRは各々独立で、同一でも異なっている場合がある。また、少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。QはS,N,Se,Te,P,As,Sb,Bi,O,I,Br,Cl,F,N=Nからなる群から選ばれる原子或いは原子団である。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a-qなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0024】
また、陰イオン[B]m-は、特に限定されるものではないが、ハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式
[LXm-
で表すことができる。
【0025】
式中、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid)であり、B,P,As,Sb,Fe,Sn,Bi,Al,Ca,In,Ti,Zn,Sc,V,Cr,Mn,Co等である。Xはハロゲン原子である。bは3~7なる整数である。また、陰イオン[B]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=b-pなる関係が成り立つことが必要である。
【0026】
上記一般式の陰イオン[LXm-の具体例としては、過塩素酸イオン(ClO、テトラフルオロほう酸イオン(BF、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF、ヘキサフルオロアルセネート(AsF、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl等の無機イオン;フルオロスルホン酸イオン(FSO、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、ノナフルオロブタンスルホン酸イオン、ヘキサデカフロロオクタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;テトラアリールほう酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸イオン等のほう酸イオン;メタンカルボン酸イオン、エタンカルボン酸イオン、プロパンカルボン酸イオン、ブタンカルボン酸イオン、オクタンカルボン酸イオン、トリフルオロメタンカルボン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、p-トルエンカルボン酸イオン等のカルボン酸イオン;トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO、メチル硫酸イオン(CHOSO、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン等を挙げることができる。
【0027】
また、陰イオン[B]m-は、下記一般式、[LXb-1(OH)]m-で表される構造のものも好ましく用いることができる。L,X,bは上記と同様である。
【0028】
本発明では、このようなオニウム塩の中でも、下記の(イ)~(ハ)の芳香族オニウム塩を使用することが特に有効である。これらの中から、その1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
(イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩
【0030】
(ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のジアリールヨードニウム塩
【0031】
(ハ)下記群I又は群IIで表されるスルホニウムカチオンとヘキサフルオロアンチモンイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のスルホニウム塩
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
また、その他好ましいものとしては、(η-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)〔(1,2,3,4,5,6-η)-(1-メチルエチル)ベンゼン〕-アイアン-ヘキサフルオロホスフェート等の鉄-アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体とトリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物等も挙げることができる。
【0035】
これらの中でも、実用面と光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄-アレーン錯体を用いることが好ましく、下記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩が、感度の点から更に好ましい。
【0036】
【化3】
【0037】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R19、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又は炭素原子数2~10のエステル基を表し、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、X は1価の陰イオンを表す。)
【0038】
上記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22及びR23で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22及びR23で表される炭素原子数1~10のアルキル基はハロゲン原子で置換されている場合があり、また、該アルキル基中のメチレン基が-O-、-S-、-CO-、-OCO-、-COO-、-C=C-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で置換される場合がある。炭素原子数1~10のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、エチルオクチル、2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、2-ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3-メトキシブチル、2-メチルチオエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ジフルオロエチル、トリクロロエチル、ジクロロジフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、デカフルオロペンチル、トリデカフルオロヘキシル、ペンタデカフルオロヘプチル、ヘプタデカフルオロオクチル、メトキシメチル、1,2-エポキシエチル、メトキシエチル、メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、エトキシエチル、ブトキシメチル、t-ブチルチオメチル、4-ペンテニルオキシメチル、トリクロロエトキシメチル、ビス(2-クロロエトキシ)メチル、メトキシシクロヘキシル、1-(2-クロロエトキシ)エチル、1-メチル-1-メトキシエチル、エチルジチオエチル、トリメチルシリルエチル、t-ブチルジメチルシリルオキシメチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、t-ブトキシカルボニルメチル、エチルオキシカルボニルメチル、エチルカルボニルメチル、t-ブトキシカルボニルメチル、アクリロイルオキシエチル、メタクリロイルオキシエチル、2-メチル-2-アダマンチルオキシカルボニルメチル、アセチルエチル、2-メトキシ-1-プロペニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、1,2-ジヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R19、R20、R21、R22及びR23で表される炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、s-ブチルオキシ、t-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソアミルオキシ、t-アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、2-メトキシエチルオキシ、3-メトキシプロピルオキシ、4-メトキシブチルオキシ、2-ブトキシエチルオキシ、メトキシエトキシエチルオキシ、メトキシエトキシエトキシエチルオキシ、3-メトキシブチルオキシ、2-メチルチオエチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R19、R20、R21、R22及びR23で表される炭素原子数2~10のエステル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、クロロアセチルオキシ、ジクロロアセチルオキシ、トリクロロアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、t-ブチルカルボニルオキシ、メトキシアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩において、X で表される1価の陰イオンとしては、特に限定されるものでは無いが、過塩素酸イオン(ClO、テトラフルオロほう酸イオン(BF、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF、ヘキサフルオロアルセネート(AsF、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl等の無機イオン;テトラアリールほう酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸イオン等のほう酸イオン;トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン;3フッ化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンアニオンが好ましく挙げられる。
【0043】
本発明においては、上記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩において、R、R及びR13の少なくも一つがハロゲン原子であることが好ましい。また、R及びRの少なくとも一方がハロゲン原子であることが好ましく、両方がハロゲン原子であることがより好ましく、この場合、ハロゲン原子はフッ素であることが好ましい。また、R13がハロゲン原子であることが好ましく、塩素であることがより好ましい。R、R及び/又はR13を上記の基とすることで、露光量の変化に対して得られる硬化物の形状変化がより少ない組成物を得ることができるため好ましい。
【0044】
上記光酸発生剤(B)としては市販品を用いることもでき、例えば、サイラキュアUVI-6970、サイラキュアUVI-6974、サイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-950(米国ユニオンカーバイド社製)、イルガキュア261、CG-24-61(BASF社製)、DAICATII(ダイセル社製)、UVAC1591(ダイセル・オルネクス社製)、CI-2481、CI-2734、CI-2823、CI-2758(以上、日本曹達社製)、FFC509(3M社)、BBI-102、BBI-101、BBI-103、MPI-103、TPS-103、MDS-103、DTS-103、NAT-103、NDS-103(ミドリ化学社製)等が挙げられる。
【0045】
上記カチオン重合性化合物(A)に対する光酸発生剤(B)の使用割合は、特に限定されず、本発明の目的を阻害しない範囲内で概ね通常の使用割合で使用すればよいが、例えば、カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して、光酸発生剤(B)を0.05~20質量部、好ましくは0.1~15質量部とすることができる。光酸発生剤(B)の使用割合が少なすぎると硬化が不十分となりやすく、多すぎると硬化物の強度に悪影響を与える場合がある。
【0046】
本発明の組成物に用いられる、熱酸発生剤(C)とは、加熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する化合物であり、光酸発生剤(B)として例示したものを除くスルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩等の塩;ナフトイルイミドスルホナート、フタルイミドスルホナート等のイミドスルホナート;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン類;1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類;m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類;前記ポリアミン類と、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF-ジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類又はカルボン酸のグリシジルエステル類等の各種エポキシ樹脂とを常法によって反応させることによって製造されるポリエポキシ付加変性物;前記有機ポリアミン類と、フタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸などのカルボン酸類とを常法によって反応させることによって製造されるアミド化変性物;前記ポリアミン類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類及びフェノール、クレゾール、キシレノール、第三ブチルフェノール、レゾルシン等の核に少なくとも1個のアルデヒド化反応性場所を有するフェノール類とを常法によって反応させることによって製造されるマンニッヒ化変性物;多価カルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類等)の酸無水物;ベンゾイントシレート、p-ニトロベンジル-9,10-エトキシアントラセン-2-スルホネート、2-ニトロベンジルトシレート、2,6-ジニトロベンジルトシレート、2,4-ジニトロベンジルトシレートのスルホン酸エステル;ジシアンジアミド、イミダゾール類、カルボン酸エステル、アミンイミド、ハロゲン化合物等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
上記熱酸発生剤(C)としては、モノフェニルスルホニウム塩が、工業的に入手しやすいので好ましい。該モノフェニルスルホニウム塩としては、ベンジル-p-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム塩、p-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム塩、p-アセトキシフェニルジメチルスルホニウム塩、ベンジル-p-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム塩、ベンジルフェニルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0048】
上記熱酸発生剤(C)の中でも、下記一般式(2)で表されるものが、添加量が少なくても十分効果を発揮し、かつ工業的な原料を入手しやすいため、好ましい。
【0049】
【化4】
【0050】
(式中、R31及びR32は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、R33、R34、R35、R36及びR37は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、X は1価の陰イオンを表す。)
【0051】
上記一般式(2)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36及びR37で表される炭素原子数1~10のアルキル基、R33、R34、R35、R36及びR37で表されるハロゲン原子、X で表される1価の陰イオンとしては、上記一般式(1)で例示したものが挙げられる。
上記一般式(2)中、R31及びR32で表される炭素原子数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル等を挙げることができる。
上記一般式(2)中、R31及びR32で表される炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フルオレニル、インデニル、9-フルオレニルメチル基等を挙げることができる。
31及びR32は、一方が炭素原子数1~10のアルキル基であり、他方が、炭素原子数1~10アルキル基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基であることが好ましく、なかでも、両者が炭素原子数1~10アルキル基であることがより好ましい。
また、上記一般式(2)中、R35が水酸基であることが好ましい。
31、R32及び/又はR35を上記の基とすることによって、露光量の変化に対して得られる硬化物の形状変化がより少ない組成物を得ることができるため好ましい。
【0052】
で表される1価の陰イオンとしては、X で表される1価の陰イオンより、発生する酸が弱いもの、すなわち塩としてpKaが大きいものが、光酸発生剤(B)のアニオンと熱酸発生剤(C)のアニオンとで塩交換が起こらないので好ましい。X で表される1価の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO、テトラフルオロほう酸イオン(BF、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF、ヘキサフルオロアルセネート(AsF、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl等の無機イオン、メチル硫酸イオンが好ましい。
【0053】
本発明の組成物において、光酸発生剤(B)として上記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩を用い、熱酸発生剤(C)として上記一般式(2)で表される化合物を用いた場合、X で表される1価の陰イオンとX で表される1価の陰イオンとの好ましい組合せは下記の通りである。下記の組み合わせを採用することによって、露光量の変化に対して得られる硬化物の形状変化がより少ない組成物を得ることができるため好ましい。
(1)X がテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸イオンであり、X がメチル硫酸イオンである組合せ。
(2)X がテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸イオンであり、X がヘキサフルオロリン酸イオン(PFである組合せ。
(3)X がヘキサフルオロアンチモネート(SbFであり、X がメチル硫酸イオンである組合せ。
(4)X がトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオンであり、X がメチル硫酸イオンである組合せ。
【0054】
上記熱酸発生剤(C)の加熱温度は、70~180℃、好ましくは90~140℃である。
【0055】
上記熱酸発生剤(C)としては市販品を用いることもでき、例えば、以下の商品が挙げられる。CI-2064、CI-2624、CI-2639、CI-2855、CI-2920、CI-2921、CI-2946、CI-3128(日本曹達社製)、SI-45、SI-47、SI-60、SI-60L、SI-80、SI-80L、SI-100、SI-100L、SI-110L、SI-145、SI-150、SI-160、SI-180、SI-180L(三新化学社製)、TA-90、TA-100、TA-120、TA-160、IK-1、IK-2(サンアプロ社製)、アデカオプトンCP-66、アデカオプトンCP-77(ADEKA社製)、FC-520(3M社製)等が挙げられる。
【0056】
上記カチオン重合性化合物(A)に対する熱酸発生剤(C)の使用割合は、特に限定されず、本発明の目的を阻害しない範囲内で概ね通常の使用割合で使用すればよいが、例えば、カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して、熱酸発生剤(C)を0.0000001~0.5質量部、好ましくは0.000001~0.1質量部とすることができる。
光酸発生剤(B)と熱酸発生剤(C)との質量比は、前者:後者で、100:0.00001~100:5とすることが、感度コントロールがしやすく成型のプロセスが向上するので好ましい。
【0057】
本発明の組成物には、通常、必要に応じて前記各成分を溶解又は分散しえる溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、クロロホルム、塩化メチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノールを加えることができる。本発明の組成物において、溶媒の含有量は、組成物の用途等に応じて適宜選択され特に限定されないが、通常、本発明の組成物中で固形分(溶媒以外の全成分の合計含有量)が5~90質量%となるように溶媒を含有させると、波長カットフィルタの製造時のように塗布によって本発明の組成物を用いる場合に好適である。
【0058】
また、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、硫黄系酸化防止剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤;ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、フッ素樹脂又は金属酸化物、(ポリ)リン酸メラミン、(ポリ)リン酸ピペラジン等の難燃剤;炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系又は金属石けん系の滑剤;顔料、カーボンブラック等の着色剤;フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、珪藻土、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト、シリカ等の珪酸系無機添加剤;ガラス繊維、炭酸カルシウム等の充填剤;造核剤、結晶促進剤等の結晶化剤、シランカップリング剤、可撓性ポリマー等のゴム弾性付与剤、増感剤、他のモノマー、消泡剤、増粘剤、レべリング剤、可塑剤、重合禁止剤、静電防止剤、流動調整剤、カップリング剤、接着促進剤等の各種添加剤を添加することができる。これらの各種添加剤の使用量は、本発明の組成物中、合計で、50質量%以下とする。
【0059】
本発明の組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができ、通常は照射から0.1秒~数分後に指触乾燥状態或いは溶媒不溶性の状態に硬化することができる。適当な活性エネルギー線としては、光酸発生剤の分解を誘発する限りいかなるものでもよいが、好ましくは、超高、高、中、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、YAGレーザー、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高活性エネルギー線を利用する。
【0060】
活性エネルギー線の照射時間は、活性エネルギー線の強度、塗膜厚やカチオン重合性有機化合物によるが、通常は0.1秒~10秒程度で十分である。しかし、比較的厚い塗装物についてはそれ以上の照射時間をかけたほうが好ましい。活性エネルギー線照射後0.1秒~数分後には、ほとんどの組成物はカチオン重合により指触乾燥するが、カチオン重合を促進するため加熱やサーマルヘッド等による熱エネルギーを併用することも場合によっては好ましい。
【0061】
また、本発明の組成物は、ホットプレート等の熱板や、大気オーブン、イナートガスオーブン、真空オーブン、熱風循環式オーブン等による加熱により、硬化させることができる。
本発明の組成物の熱硬化の際の加熱温度としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂の反応を促進する点から、70~200℃が好ましく、90~150℃がより好ましい。
本発明の組成物の熱硬化の際の硬化時間としては、特に限定されないが、生産性向上の点から、1~60分が好ましく、1~30分がより好ましい。
【0062】
更に、本発明の組成物は、活性エネルギー線の照射及び加熱により硬化させることができる。本発明の組成物の硬化に活性エネルギー線の照射及び加熱を併用する場合、組成物に活性エネルギー線を照射した後に加熱を行うことができ、或いは、組成物を加熱した後に活性エネルギー線を照射することができるが、パターン形状の精度向上の点で、組成物に活性エネルギー線を照射した後に加熱を行うことが好ましい。
本発明の組成物の硬化に活性エネルギー線の照射及び加熱を併用する場合に用いられる活性エネルギー線及び加熱装置としては、上述したものを特に制限なく用いることができるが、活性エネルギー線として紫外線を用いることが好ましい。
【0063】
本発明の組成物の具体的な用途としては、光学フィルタ、塗料、コーティング剤、ライニング剤、接着剤、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基盤、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機EL用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽電池用等のパッシベーション膜、層間絶縁膜、保護膜、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、プラズマ表示パネル用の電極材料、印刷インク、歯科用組成物、光造形用樹脂、液状及び乾燥膜の双方、微小機械部品、ガラス繊維ケーブルコーティング、ホログラフィ記録用材料の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
【実施例
【0064】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0065】
[実施例1~17及び比較例1~3]組成物No.1~No.17及び比較組成物No.1~No.3の調製
[表1]~[表3]に示す配合で各成分を混合し、不溶物が無くなるまで撹拌し、組成物No.1~No.17及び比較組成物No.1~No.3を得た。なお、[表1]~[表3]中の各符合は、それぞれ下記を表す。また、[表1]~[表3]中の数値は質量部を表す。
【0066】
カチオン重合性化合物(A)
A-1:EHPE-3150(ダイセル社製エポキシ樹脂 脂環族エポキシ化合物)
A-2:EOCN-104S(日本化薬社製エポキシ樹脂 芳香族エポキシ化合物)
【0067】
光酸発生剤(B)
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0068】
熱酸発生剤(C)
【化10】
C-1は、上記一般式(2)中、R31及びR32の両者がアルキル基である化合物である。
【化11】
C-2は、上記一般式(2)中、R31がアルキル基であり、R32がアリールアルキル基である化合物である。
【0069】
溶媒(D)
D-1:プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート
D-2:メチルエチルケトン
D-3:トルエン
D-4:ジアセトンアルコール
【0070】
その他の成分(E)
E-1:KBE-403(信越シリコーン社製シランカップリング剤)
E-2:AO-60(ADEKA社製フェノール系酸化防止剤)
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
[パターン形成性評価]
得られた実施例及び比較例に関し、下記の基準でパターン形成性評価を評価した。
【0075】
[評価例1-1~1-17及び比較評価例1-1~1-3]
実施例1~17で得られた組成物No.1~No.17及び比較例1~3で得られた比較組成物No.1~No.3をそれぞれ、ガラス基板に2000rpm×10秒の条件でスピンコート法により塗工し、ホットプレートで乾燥(100℃、3分)させた。得られた塗膜に露光部幅20μmのフォトマスクを介して超高圧水銀ランプで任意の露光量を照射した。露光後の塗膜を、ホットプレートで加熱(120℃、5分)した。トルエン:メチルエチルケトン=1:1の混合溶媒中に浸漬させて未露光部を除去し、光学顕微鏡(キーエンス社製VK-X100)を用いてパターン形状を測定した。
パターン形状幅(露光部幅)が20μmになるときの露光量をX(mJ/cm)とし、露光量が10mJ/cm増やした場合と10mJ/cm減らした場合の形状幅をそれぞれ計測し、露光量変化に対する形状変化を下記式により算出してパターン形成性評価とした。結果を[表4]及び[表5]に示す。なお、数値が100に近いほど露光量の増減に対するパターン形状への影響が小さく、パターン形成性に優れる。
(露光量の変化に対する形状変化)=(各露光量における露光部の線幅)/20×100
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
[評価例2-1~2-4]
実施例7、9、10及び12で得られた組成物No.7、No.9、No.10及びNo.12をそれぞれ、ガラス基板に2000rpm×10秒の条件でスピンコート法により塗工し、ホットプレートで乾燥(100℃、3分)させた。得られた塗膜に露光部幅20μmのフォトマスクを介して超高圧水銀ランプで20mJ/cmの露光量を照射した。露光後の塗膜を、ホットプレートで加熱(120℃、5分)した。トルエン:メチルエチルケトン=1:1の混合溶媒中に浸漬させて未露光部を除去し、光学顕微鏡(キーエンス社製VK-X100)を用いて成形性を目視で確認した。
【0079】
【表6】
【0080】
以上の結果より、上記カチオン重合性化合物(A)、光酸発生剤(B)、及び熱酸発生剤(C)を含有する本発明の組成物は、硬化物の光照射時の形状変化が少ないことが明らかである。また、20mJ/cm程度の少ない露光量でも成形性が良好であるため、本発明の組成物は高感度である。よって、本発明の組成物は光学フィルタの原料として有用である。