(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】ガス用電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
F16K31/06 305K
F16K31/06 385F
F16K31/06 305L
(21)【出願番号】P 2019015886
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将佳
(72)【発明者】
【氏名】二宮 誠
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋司
(72)【発明者】
【氏名】中村 典生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 由幹
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-292049(JP,A)
【文献】特開昭59-073678(JP,A)
【文献】実開平07-035874(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
F15B 11/00-11/22;21/14
F16K 27/00-27/12
F16K 31/12-31/165;31/36-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポート、第2ポート、及び前記第1及び第2ポートに繋がる弁口を有するハウジングと、
前記弁口を閉じる閉位置と前記弁口を開く開位置との間で移動可能であって、前記第1ポートから供給されるガスの圧力によって開方向に移動する主弁体と、
開位置から閉位置に向かう閉方向の付勢力を前記主弁体に与えて前記主弁体を閉位置に位置させる付勢部材と、
前記主弁体に挿通され、前記付勢部材の付勢力を受けて前記主弁体を閉位置に付勢するシートピストンと、
前記付勢部材の付勢力に抗する励磁力を発生させて前記主弁体を開位置へと移動させる電磁駆動装置とを備え、
前記主弁体には、前記第1ポートと前記第2ポートとを繋ぐパイロット通路が形成され、
前記シートピストンは、前記パイロット通路を閉じるパイロット閉位置と前記パイロット通路を開くパイロット開位置との間で移動することができ、
前記電磁駆動装置は、前記シートピストンが連動可能に挿通されているプランジャと、前記プランジャに対向させて配置される固定磁極と、前記プランジャに励磁力を与えて前記プランジャを前記固定磁極に引き寄せることによって前記シートピストンを開位置に移動させて前記主弁体を開位置に移動させるソレノイドとを有し、
前記プランジャ内には、前記主弁体の動きを減衰させるダンパー室が形成さ
れ、
前記ダンパー室は、前記シートピストンと前記プランジャとの間の隙間から前記ダンパー室のガスを吸排する、ガス用電磁弁。
【請求項2】
前記ダンパー室は、前記シートピストンより開方向であって前記シートピストンに隣接する位置に形成され、
前記付勢部材は、前記ダンパー室に配置されている、請求項1に記載のガス用電磁弁。
【請求項3】
第1ポート、第2ポート、及び前記第1及び第2ポートに繋がる弁口を有するハウジングと、
前記弁口を閉じる閉位置と前記弁口を開く開位置との間で移動可能であって、前記第1ポートから供給されるガスの圧力によって開方向に移動する主弁体と、
開位置から閉位置に向かう閉方向の付勢力を前記主弁体に与えて前記主弁体を閉位置に位置させる付勢部材と、
前記主弁体に挿通され、前記付勢部材の付勢力を受けて前記主弁体を閉位置に付勢するシートピストンと、
前記付勢部材の付勢力に抗する励磁力を発生させて前記主弁体を開位置へと移動させる電磁駆動装置とを備え、
前記主弁体には、前記第1ポートと前記第2ポートとを繋ぐパイロット通路が形成され、
前記シートピストンは、前記パイロット通路を閉じるパイロット閉位置と前記パイロット通路を開くパイロット開位置との間で移動することができ、
前記電磁駆動装置は、前記シートピストンが連動可能に挿通されているプランジャと、前記プランジャに対向させて配置される固定磁極と、前記プランジャに励磁力を与えて前記プランジャを前記固定磁極に引き寄せる
ことによって前記シートピストンを開位置へと移動させて前記主弁体を開位置へと移動させるソレノイドとを有し、
前記プランジャ内には、前記シートピストンより開方向であって前記シートピストンに隣接する位置に、前記主弁体の動きを減衰させるべくダンパー室が形成され、
前記付勢部材は、前記ダンパー室に配置され、
前記ダンパー室は、前記付勢部材が前記シートピストンと前記固定磁極との間に配置されるように前記プランジャ内に形成され、前記シートピストンと前記プランジャとの間の隙間から前記ダンパー室のガスを吸排する
、ガス用電磁弁。
【請求項4】
前記主弁体の開方向の移動量を制限するストッパを更に備えている、請求項1乃至3の何れか1つに記載のガス用電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁駆動式の開閉弁であるガス用電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスが流れる流路を開閉すべくガス用電磁弁が設けられており、その一例として例えば特許文献1のような電磁弁が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁弁は、例えばガスタンクに設けられることがあり、ガスタンクに設けられた場合、以下のように使用される。即ち、ガスタンクにガスを充填する場合、ガス圧によって主弁を弁座から持ち上げて流路が開かれる。この際に主弁等にチャタリングが発生し、騒音、シートの損傷、及び摩耗によるコンタミの発生等の各種問題が発生する。
【0005】
そこで本発明は、主弁体におけるチャタリングの発生を抑制することができるガス用電磁弁の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明であるガス用電磁弁は、第1ポート、第2ポート、及び前記第1及び第2ポートに繋がる弁口を有するハウジングと、前記弁口を閉じる閉位置と前記弁口を開く開位置との間で移動可能であって、前記第1ポートから供給されるガスの圧力によって開方向に移動する主弁体と、開位置から閉位置に向かう閉方向の付勢力を前記主弁体に与えて前記主弁体を閉位置に位置させる付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗する励磁力を発生させて前記主弁体を開位置へと移動させる電磁駆動装置とを備え、前記ハウジング内には、前記主弁体の動きを減衰させるべくダンパー室が形成されているものである。
【0007】
本発明に従えば、ダンパー室によって主弁体の動きを減衰する、即ち主弁体の振動を減衰することができる。これにより、主弁体におけるチャタリングの発生を抑制することができる。
【0008】
上記発明において、前記主弁体に挿通され、前記付勢部材の付勢力を受けて前記主弁体を閉位置に付勢するシートピストンを更に備え、前記主弁体には、前記第1ポートと前記第2ポートとを繋ぐパイロット通路が形成され、前記シートピストンは、前記パイロット通路を閉じるパイロット閉位置と前記パイロット通路を開くパイロット開位置との間で移動することができ、前記電磁駆動装置は、励磁力を発生させて前記シートピストンを開位置へと移動させることによって、前記主弁体を開位置へと移動させ、前記ダンパー室は、前記シートピストンより開方向であって前記シートピストンに隣接する位置に形成され、前記付勢部材は、前記ダンパー室に配置されていることが好ましい。
【0009】
上記構成に従えば、付勢部材が収容される部屋をダンパー室として使用しており、主弁体の振動を減衰させるべく新たなダンパー室を形成する必要がない。それ故、ガス用電磁弁が大型化することを避けることができる。
【0010】
上記発明において、前記電磁駆動装置は、前記シートピストンが連動可能に挿通されているプランジャと、前記プランジャに対向させて配置される固定磁極と、前記プランジャに励磁力を与えて前記プランジャを前記固定磁極に引き寄せるソレノイドとを有し、前記ダンパー室は、前記付勢部材が前記シートピストンと前記固定磁極との間に配置されるように前記プランジャ内に形成され、前記シートピストンと前記プランジャとの間の隙間からダンパー室のガスを吸排することが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、隙間によってダンパー室に対するガスの吸排量を制限することで、ダンパー室における急激な容積変化を抑制し、主弁体の振動を抑制することができる、即ち主弁体におけるチャタリングの発生を抑制することができる。
また、ダンパー室に対するガスの吸排量を隙間の幅によって変えることができるので、隙間の幅によってダンパー室の減衰力を調整することができる。それ故、幅を調整することによって主弁体におけるチャタリングの発生をより効果的に抑制することができる。
【0012】
上記発明において、前記主弁体の開方向の移動量を制限するストッパを更に備えていることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、主弁体が過剰にストロークして第2付勢部材が損傷することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、主弁体におけるチャタリングの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る第1実施形態のガス用電磁弁を示す断面図である。
【
図2】ガス用電磁弁を
図1の切断線II-IIで切断して見た拡大断面図である。
【
図3】シートピストンが主弁体によって押し上げられた状態のガス用電磁弁において、
図1の領域Xを拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】
図1のガス用電磁弁において第2ポートから第1ポートへとガスを供給する際の状態を示す断面図である。
【
図5】
図1のガス用電磁弁において第1ポートから第2ポートへとガスを供給する際の状態を示す断面図である。
【
図6】別の実施形態のガス用電磁弁を示す断面図である。
【
図7】更に別の実施形態のガス用電磁弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る本実施形態のガス用電磁弁1について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するガス用電磁弁1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0017】
<第1実施形態>
高圧ガスが貯められるガスタンク等には、
図1に示すようなガス用電磁弁1が設けられており、ガス用電磁弁1は、流路を開閉することによってガスの充填及び放出を可能にしている。なお、ガスタンクは、ガス用電磁弁1が使用される一例であり、使用される対象は必ずしもガスタンクに限定されない。即ち、ガス用電磁弁1は、双方向にガスを流すことが要求される流路に設けられる。このような機能を有するガス用電磁弁1は、以下のように構成されている。
【0018】
即ち、ガス用電磁弁1は、主にハウジング11と、ガイド部材12と、主弁体13と、シートピストン14と、電磁駆動装置15とを備えている。ハウジング11は、大略有底円柱形状の弁室21が形成されており、その開口部分が蓋体18によって塞がれている。また、ハウジング11には、第1ポート22に繋がる第1流路23、及び第2ポート24に繋がる第2流路25が形成されている。第1流路23は、弁室21の底部21aにて弁口26を介して開口し、また第2流路25は、弁室21の側面にて開口している。このように構成されているハウジング11には、弁口26を開閉すべく弁室21にガイド部材12、主弁体13、シートピストン14、及び電磁駆動装置15が収容されている。
【0019】
ガイド部材12は、大略円筒状に形成されており、その外周面の少なくとも一部(本実施形態では、互いに周方向に180度離れた2か所の位置)が平坦に形成されている。このような形状を有するガイド部材12は、その一端部を弁室21の底部21aに当接させている状態で弁室21に嵌合されており、ハウジング11との間に一対の間隙27,27を形成している。また、ガイド部材12の一端部には、
図2に示すように2つの連通流路31,32が形成されている。2つの連通流路31,32は、ガイド部材12の内孔12aから半径方向一方及び他方に伸びており、弁口26と間隙27,27とを繋いでいる。ガイド部材12の他端面にも、同様に2つの連通流路33,34が形成されており、連通流路33,34によって間隙27,27とガイド部材12の内孔12aと繋がっている。また、内孔12aには、
図3に示すように主弁体13が挿入されている。
【0020】
主弁体13は、大略有底円筒状に形成されており、その基端側部分13bが先端側部分13aに対して大径に形成されている。このような形状を有する主弁体13の基端側部分13bは、内孔12aに嵌まり込んでおり、ガイド部材12の内孔12aに沿ってその軸線方向に移動することができる。また、主弁体13は、
図1に示すような閉位置に位置することができ、その先端面にシート部材13cを備えている。シート部材13cは、主弁体13が閉位置に位置した際に弁座28に着座し、これによって弁口26が閉じられる。他方、主弁体13が軸線方向他方に移動して開位置に位置すると、シート部材13cが弁座28から離れ、弁口26が開かれる。
【0021】
このように構成されている主弁体13は、第1コイルばね16を収容すべく、ガイド部材12との間に収容空間35を形成している。即ち、ガイド部材12では、内孔12aの一端側部分12bが残余部分12cに比べて小径に形成されており、そこに主弁体13の先端側部分13aが挿通されている。これにより、主弁体13の先端側部分13aとガイド部材12との間に大略円環状の収容空間35が形成され、そこに第1コイルばね16が収容されている。第1コイルばね16は、いわゆる圧縮コイルバネであり、閉位置から開位置へ向かう方向である開方向に付勢力を主弁体13に与えている。なお、第1コイルばね16は、それに変えて板ばね、弾性体、磁気ばね、空気ばね、及び静電力による押し付け機構等の用いることができる。
【0022】
また、主弁体13には、閉位置において第1ポート22と第2ポート24とが連通できるようにパイロット通路13dが形成されている。パイロット通路13dは、主弁体13をその軸線に沿って貫通しており、主弁体13が着座している状態で弁口26と主弁体13の内孔13eとを繋いでいる。また、主弁体13の内孔13eには、パイロット通路13dを開閉すべく、シートピストン14がその軸線方向に移動可能に且つ収容空間35に隣接するように挿通されている。
【0023】
シートピストン14は、大略円柱状に形成されており、その先端部14aをパイロット通路13dのシート部13fに挿入させて着座させることによってパイロット通路13dを閉じる。即ち、シートピストン14がパイロット閉位置に位置することによってパイロット通路13dが閉じられる。また、シートピストン14は、その軸線に沿ってパイロット閉位置からパイロット開位置へと移動することができ、移動することによって先端部14aがシート部13fから離れる。これにより、パイロット通路13dが開き、弁口26と主弁体13の内孔13eが連通する。また、シートピストン14の外周面には、複数のスリット(本実施形態では2つのスリット)14b,14bが形成されており、スリット14b、14bは、パイロット通路13dが開いた際にパイロット通路13dと前述する2つの連通流路33,34とを繋ぐ流路を成している。このような構成されているシートピストン14は、その基端側部分14cが主弁体13より突き出ており、そこに電磁駆動装置15が設けられている。
【0024】
電磁駆動装置15は、プランジャ41、固定磁極42、及びソレノイド43を有している。プランジャ41は、磁性体から成る大略円筒状の部材であり、その内孔41aにシートピストン14の基端側部分14cが挿通されている。また、内孔41aでは、先端側部分41bが基端側部分41cに対して小径に形成されて、それに合わせてシートピストン14の基端部14dもまた残余の部分より大径に形成されている。これにより、プランジャ41は、その内孔41aの先端側部分においてシートピストン14の基端部14dと係合し、シートピストン14と連動するようになっている。このように構成されているプランジャ41には、対向させるようにして固定磁極42が設けられている。
【0025】
固定磁極42は、強磁性体から成る大略円柱状の部材であり、プランジャ41の基端から軸線方向一方に間隔をあけて配置されている。このように配置されている固定磁極42の先端側部分42bの外径は、プランジャ41の外径と略同一となっており、固定磁極42の先端側部分42bとプランジャ41には、スリーブ44が外装されている。スリーブ44は、非磁性体から成る大略円筒状の部材であり、その中でプランジャ41が軸線方向に移動可能に構成されている。このように構成されているスリーブ44には、ソレノイド43が外装されている。
【0026】
ソレノイド43は、大略円柱状に形成されており、ボビン43aに巻き付けたコイル43bに電流を流すことによってプランジャ41に対して励磁力を発生させることができる。即ち、ソレノイド43は、プランジャ41を励磁させて固定磁極42に引き寄せることができ、引き寄せることによってそれに連動するシートピストン14をパイロット開位置に移動させることができる。また、このような励磁力に抗する付勢力をプランジャ41に(より詳しくは、シートピストン14を介してプランジャ41に)与えるべく、プランジャ41には第2コイルばね17が設けられている。
【0027】
付勢部材の一例である第2コイルばね17は、いわゆる圧縮コイルバネであり、プランジャ41内に挿通されている。即ち、プランジャ41の内孔41aは、後述する固定磁極42のばね受け凹部42aと共にばね収容室45を形成し、このばね収容室45に第2コイルばね17が収容されている。また、第2コイルばね17の一端は、固定磁極42のばね受け凹部42aに嵌まり込み、また他端は、シートピストン14の基端部14dに押し付けられている。それ故、第2コイルばね17は、シートピストン14を介してプランジャ41を軸線方向一方側に付勢し、プランジャ41を固定磁極42から引き離している。また、第2コイルばね17は、シートピストン14に押し付けられることによってプランジャ41とシートピストン14との連動を可能にし、またソレノイド43に電流が流れていない状態にてシートピストン14をパイロット閉位置に位置させている。また、第2コイルばね17は、開位置から閉位置に向かう閉方向の付勢力を主弁体13にシートピストン14を介して与え、主弁体13を閉位置に位置させる。なお、第2コイルばね17は、それに変えて板ばね、弾性体、磁気ばね、空気ばね、及び静電力による押し付け機構等を用いることができる。
【0028】
また、ソレノイド43は、その外周面が基端部に対して残余の部分が小径に形成されており、残余の部分がハウジング11との間に円環状の環状流路29を形成している。環状流路29は、第2流路25を介して第2ポート24と繋がり、また間隙27,27、連通流路31,32、及び第1流路23を介して第1ポート22と繋がっており、それらの流路23,25,27,27,31,32と共に弁通路30を構成している。
【0029】
このように構成されているガス用電磁弁1では、ばね収容室45が以下のように構成されている。即ち、ばね収容室45は、プランジャ41及び固定磁極42の先端側部分42bをスリーブに嵌め込み、且つプランジャ41の先端側部分41bにシートピストン14を挿通させて形成されており、基本的に他の空間から隔離されている。他方、プランジャ41の先端側部分41bにシートピストン14の基端側部分14cとの間には、隙間48が形成されている。ばね収容室45は、この隙間48を介して弁通路30と繋がり、ばね収容室45に対するガスの吸排は、主に隙間48を介して行われている(
図3の矢符A参照)。この隙間48は、ばね収容室45に対するガスの吸排量を制限すべく、その幅Sが0.01mm以上0.5mm以下で形成されている。これにより、ばね収容室45の急激な容積変化が抑制され、ばね収容室45がダンパー機能を有する、即ちダンパー室46の役割を果たしている。
【0030】
また、プランジャ41には、その先端面にストッパ47が設けられている。ストッパ47は、大略円環状に形成され、プランジャ41の先端面から主弁体13に向かって突出している。このように構成されるストッパ47は、主弁体13が閉位置から開方向に向かって所定距離L移動すると、主弁体13の基端面に当たる。即ち、主弁体13が所定距離L移動すると、ストッパ47が主弁体13の移動を制限する(即ち、移動量を制限する)。これにより、主弁体13が過剰にストロークして第2コイルばね17が損傷することを抑制することができる。
【0031】
以下では、ガス用電磁弁1の動作について説明する。即ち、ガス用電磁弁1は、前述の通り例えばガスタンクに設けられており、ガスを充填及び放出すべく弁通路30においてガスを双方向に流すことができる。例えば、
図4に示すように第2ポート24から第1ポート22にガスを流す場合には、ソレノイド43のコイル43bに電流が流される。それ故、プランジャ41が持ち上げられ、それに連動してシートピストン14がパイロット開位置に移動する。これにより、パイロット通路13dが開き、ガスが2つの連通流路33,34、スリット14b,14b、及びパイロット通路13dを通って第1流路23に導かれる。そうすると、弁室21内のガスと第1流路23を流れるガスとの差圧が小さくなり、やがて第1コイルばね16によって主弁体13が開位置へ押し上げられる。これにより、弁口26が開く、即ち弁通路30が開き、ガスが弁通路30を介して第2ポート24から第1ポート22へと流れる。その後、コイル43bに流れる電流が止められると、第2コイルばね17がシートピストン14を介して主弁体13を押し、主弁体13が閉位置へと移動する。これにより、弁口26が閉じられる、即ち弁通路30が閉じられてガスの流れが止まる。
【0032】
他方、
図5に示すように第1ポート22から第2ポート24にガスを流す場合には、ガス用電磁弁1は以下のように動作する。即ち、第1ポート22から第1流路23にガスが流れると、そのガスの圧力によって主弁体13が開方向に押される。これにより、主弁体13が開位置へと移動し、弁口26が開く、即ち弁通路30が開く。そうすると、ガスは、主に第1流路23から弁口26を通って各連通流路31,32に流れ、更に間隙27,27及び環状流路29を通って第2流路25に導かれる。このようにして第1ポート22に供給されたガスは、弁通路30を介して第2ポート24へと導かれる。このようにして第1ポート22に供給されたガスによって主弁体13を動かして弁通路30を開く場合、弁通路30の開度に応じて主弁体13に作用する荷重が変化するので、主弁体13が振動する、即ち主弁体13にチャタリングが発生する。これに関して、ガス用電磁弁1では、以下のようにして主弁体13におけるチャタリングの発生が抑制されている。
【0033】
即ち、ガス用電磁弁1では、第1ポート22に供給されたガスによって主弁体13が持ち上げられると、一緒にシートピストン14もまた持ち上げられる。これにより、プランジャ41の先端側部分41bに着座していたシートピストン14が先端側部分41bから離れ、ダンパー室46が隙間48を介して弁通路30と繋がる(
図3の矢印参照)。このようにダンパー室46に対するガスの吸排が主に隙間48を介して行われることによって、ダンパー室46の伸縮を許容しつつその急激な容積変化が抑制されるので、シートピストン14及び主弁体13の振動を減衰することができる。それ故、主弁体13にチャタリングが発生することを抑制することができる。
【0034】
なお、主弁体13は、シートピストン14、場合によってはプランジャ41と一体的に振動しており、シートピストン14及びプランジャ41にもチャタリングが発生する。これに関して、ダンパー室46は、主弁体13だけでなくシートピストン14及びプランジャ41の振動も抑制するので、それらにおけるチャタリングの発生も抑制することができる。
【0035】
このようにしてガス用電磁弁1では、第1ポート22から第1流路23にガスを供給することによって弁口26を開いて第2ポート24にガスを流すことができ、その際に主弁体13におけるチャタリングの発生を抑制することができる。また、第1ポート22から第1流路23へのガスの供給を止めることによって、第2ポートから流す場合と同様に第2コイルばね17によって主弁体13が押されて閉位置に移動する。これにより、弁口26が閉じられる、即ち弁通路30が閉じられてガスの流れが止められる。このようにガス用電磁弁1では、第1ポート22及び第2ポート24の両方からガスを流すことができる。
【0036】
このように構成されているガス用電磁弁1では、ばね収容室45をダンパー室46として使用しており、シートピストン14及び主弁体13の振動を減衰させるべく新たなダンパー室46を形成する必要がない。それ故、ガス用電磁弁1が大型化することを避けることができる。更に、ダンパー室46に対するガスの吸排量を隙間48の幅Sによって変えることができるので、隙間48の幅Sによってダンパー室46の減衰力を調整することができる。それ故、幅Sを調整することによって主弁体13及びシートピストン14におけるチャタリングの発生をより効果的に抑制することができる。
【0037】
<その他の実施形態>
本実施形態のガス用電磁弁1では、ばね収容室45がダンパー室46として使用されているが、必ずしもこのように構成されている必要はない。例えば、収容空間35がダンパー室46と同じ機能を有していてもよく、またそれらとは別にダンパー室46を形成してもよい。また、本実施形態のガス用電磁弁1では、ダンパー室46に対するガスの吸排量を隙間48の幅Sによって調整されているが、ガイド44とプランジャ41との間を介してダンパー室46のガスを積極的に吸排させるようにしてもよい。この場合、固定磁極42の先端側部分42bとプランジャ41との間の間隔を調整することによってガスの吸排量を調整することができ、それによってダンパー室46の減衰力を調整することができる。
【0038】
また、
図6に示すようにガス用電磁弁1Aのように隙間48に代えてダンパー通路49を形成してもよい。即ち、ダンパー通路49は、ダンパー室46と外方とを繋ぐべく固定磁極42と蓋体18とを貫通するように形成され、ダンパー室46のガスがダンパー通路49を介して吸排される。この場合もまた、ダンパー通路49の孔径を調整することによってガスの吸排量を調整することができ、それによってダンパー室46の減衰力を調整することができる。なお、ガス用電磁弁1Aは、ダンパー通路49を除いてガス用電磁弁1と略同じ構成を有しており、
図6では、同一の構成については、同一の符号を付している。後述するガス用電磁弁1Bも同様である。また、ダンパー通路は、シートピストン14に形成されてもよく、この場合にはダンパー通路によってダンパー室46と連通流路33,34とが繋がるように形成される。
【0039】
本実施形態のガス用電磁弁1では、シートピストン14が備わっているが必ずしも必要ではなく、プランジャ41が主弁体13に直接押し付けられるような構成であってもよい。また、
図7に示すガス用電磁弁1Bのようにシートピストン14Bと主弁体13Bとがピン50によって連動するような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ガス用電磁弁
11 ハウジング
13 主弁体
13d パイロット通路
14 シートピストン
15 電磁駆動装置
16 第1コイルばね
17 第2コイルばね
22 第1ポート
24 第2ポート
26 弁口
41 プランジャ
42 固定磁極
43 ソレノイド
45 ばね収容室
46 ダンパー室
47 ストッパ