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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート柱の接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/04 20060101AFI20221111BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20221111BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
E04B1/04 F
E04B1/58 600F
E04G21/12 105E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019025119
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020133158
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 正美
(72)【発明者】
【氏名】淵本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】長田 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】乙藤 佳名子
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-147978(JP,A)
【文献】特開平2-248543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/04
E04B 1/58
E04G 21/12
E04B 1/21
E04B 1/682
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスリーブ式鉄筋継手部材が内挿されたプレキャストコンクリート柱をスラブ上に接合するプレキャストコンクリート柱の接合方法であって、
前記スラブとの間に目地空間を設けて前記プレキャストコンクリート柱を配する工程と、
前記目地空間に離隔部材を配し、前記目地空間を離隔部材で離隔し、複数の分割目地空間とする工程と、
一の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、
前記一の分割目地空間に充填したグラウトの養生が完了した後、前記一の分割目地空間に隣接する他の分割目地空間との間に配された離隔部材を撤去する工程と、
前記他の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、
を含むことを特徴とするプレキャストコンクリート柱の接合方法。
【請求項2】
複数のスリーブ式鉄筋継手部材が内挿されたプレキャストコンクリート柱をスラブ上に接合するプレキャストコンクリート柱の接合方法であって、
前記スラブとの間に目地空間を設けて前記プレキャストコンクリート柱を配する工程と、
前記目地空間に離隔部材を配し、前記目地空間を離隔部材で離隔し、複数の分割目地空間とする工程と、
一の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、
前記一の分割目地空間に隣接する他の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、
前記一の分割目地空間に充填したグラウトと、前記他の分割目地空間に充填したグラウトの養生が完了した後、前記一の分割目地空間に隣接する他の分割目地空間との間に配された離隔部材を撤去する工程と、
前記離隔部材を撤去した後に形成された空間にてグラウトを充填し養生する工程と、
を含むことを特徴とするプレキャストコンクリート柱の接合方法。
【請求項3】
複数のスリーブ式鉄筋継手部材が内挿されたプレキャストコンクリート柱をスラブ上に接合するプレキャストコンクリート柱の接合方法であって、
前記プレキャストコンクリート柱が配されることで、前記スラブと前記プレキャストコンクリート柱の間で目地空間となる予定箇所に、前記目地空間を離隔し、複数の分割目地空間とする離隔部材を配する工程と、
前記スラブとの間に目地空間を設けて前記プレキャストコンクリート柱を配する工程と、
一の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、
前記一の分割目地空間に隣接する他の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、
を含むことを特徴とするプレキャストコンクリート柱の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大断面のプレキャストコンクリート柱であってもグラウト材の充填率を担保することができるプレキャストコンクリート柱の接合方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルディングなどの建設にあたっては、壁や柱といった建築部材を、プレキャストコンクリート部材として、予め工場生産しておき、これを現場に搬入し組み上げる工法が広く用いられるようになっている。このような工法を採用することで、現場における工数を減らしたり、工期を短縮したりすることができるようになった。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2001-164688号公報)には、コンクリート部材の上面の両端側に型枠形成部を備えたプレキャストコンクリート梁材を各柱間に架設し、これらのプレキャストコンクリート梁材間に、コンクリート板の上面に型枠形成部を備えたプレキャストコンクリート床板を敷設し、前記型枠形成部により構成された打ち継ぎ型枠内にコンクリートを打設することを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の構築工法が開示されている。
【文献】特開2001-164688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設プロジェクトは現在大型化しており、超超高層建物が増加する傾向にある。その結果として、各部材の断面が大型化し、これまでにあまり施工実績のない、大断面のプレキャストコンクリートを施工する状況になりつつある。
【0005】
プレキャストコンクリート柱においては、柱の脚部に鉄筋の機械式継手を設けて、柱脚の目地部分と継手部分のグラウトを同時に施工する方法が一般的である。しかしながら、当該柱の断面が大きくなると、グラウト材が所望する充填率で充填されない可能性がある、という問題があった。特に、施工時期が、グラウト材が硬化しやすい夏場などに当たる場合には、適切なグラウト充填率で施工を行うことがより一層困難になることが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するものであって、本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法は、複数のスリーブ式鉄筋継手部材が内挿されたプレキャストコンクリート柱をスラブ上に接合するプレキャストコンクリート柱の接合方法であって、前記スラブとの間に目地空間を設けて前記プレキャストコンクリート柱を配する工程と、前記目地空間に離隔部材を配し、前記目地空間を離隔部材で離隔し、複数の分割目地空間とする工程と、一の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、前記一の分割目地空間に充填したグラウトの養生が完了した後、前記一の分割目地空間に隣接する他の分割目地空間との間に配された離隔部材を撤去する工程と、前記他の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法は、複数のスリーブ式鉄筋継手部材が内挿されたプレキャストコンクリート柱をスラブ上に接合するプレキャストコンクリート柱の接合方法であって、前記スラブとの間に目地空間を設けて前記プレキャストコンクリート柱を配する工程と、前記目地空間に離隔部材を配し、前記目地空間を離隔部材で離隔し、複数の分割目地空間とする工程と、一の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、前記一の分割目地空間に隣接する他の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、前記一の分割目地空間に充填したグラウトと、前記他の分割目地空間に充填したグラウトの養生が完了した後、前記一の分割目地空間に隣接する他の分割目地空間との間に配された離隔部材を撤去する工程と、前記離隔部材を撤去した後に形成された空間にてグラウトを充填し養生する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法は、複数のスリーブ式鉄筋継手部材が内挿されたプレキャストコンクリート柱をスラブ上に接合するプレキャストコンクリート柱の接合方法であって、前記プレキャストコンクリート柱が配されることで、前記スラブと前記プレキャストコンクリート柱の間で目地空間となる予定箇所に、前記目地空間を離隔し、複数の分割目地空間とする離隔部材を配する工程と、前記スラブとの間に目地空間を設けて前記プレキャストコンクリート柱を配する工程と、一の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、前記一の分割目地空間に隣接する他の分割目地空間にスリーブ式鉄筋継手部材を介してグラウトを充填し養生する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法は、目地空間に離隔部材を配し、目地空間を離隔部材で離隔し、複数の分割目地空間とし、それぞれにグラウト材を充填し養生する工程を経るようになっており、このような本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法によれば、大断面のプレキャストコンクリート柱でも、適切な面積の分割目地空間に分割された上でグラウト材が充填されるので、十分なグラウト充填率が確保することができ、信頼性の高い施工を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する透過的模式図である。
図2】プレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する透過的模式図である。
図3】プレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する透過的模式図である。
図4】プレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する透過的模式図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。まず、図1乃至図4は、前提となるプレキャストコンクリート柱の接合方法の各工程を順に、プレキャストコンクリート柱10とスラブ30とを透過的にみた模式図で示したものである。
【0012】
プレキャストコンクリート柱10には、垂直方向に延びるように、複数の柱側柱主筋13が埋設されている。また、図示していない箇所には、複数の柱側柱主筋13に対して垂直方向に、各柱側柱主筋13を連結する補強筋が設けられている。
【0013】
それぞれの柱側柱主筋13の下端部は、それぞれの柱側柱主筋13に対応するスリーブ式鉄筋継手部材20に挿通されている。複数のスリーブ式鉄筋継手部材20も、プレキャストコンクリート柱10内に埋設されている。スリーブ式鉄筋継手部材20は、下側端部は開放された状態となっており、上側端部はコンクリート材で閉鎖された状態となっている。
【0014】
また、複数のスリーブ式鉄筋継手部材20それぞれの内部空間は、その下側で下端開口15と連通しており、上側で上端開口17と連通している。下端開口15及び上端開口17は、プレキャストコンクリート柱10の表面に設けられた開口であり、これらの開口を通してグラウト材が注入されたり或いは、充填した際の余剰のグラウト材が排出されたりするようになっている。
【0015】
一方、プレキャストコンクリート柱10が接合される相手側であるスラブ30にも、複数のスラブ側柱主筋33が埋設されている。これらのスラブ側柱主筋33の上端側はスラブ30から露出するようになっている。また、図示していない箇所において、複数のスラブ側柱主筋33に対して垂直方向に、各スラブ側柱主筋33を連結する補強筋が設けられている。
【0016】
なお、本実施形態では、プレキャストコンクリート柱10がスラブ30と接合される例に基づいて行うが、このようなスラブ30にはプレキャストコンクリート柱も含まれる。本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法は、プレキャストコンクリート柱10同士の接合などにも用い得るものである。
【0017】
図1は、プレキャストコンクリート柱10が不図示の吊下手段によって吊り下げられている状態を示している。吊下手段によって吊り下げられているプレキャストコンクリート柱10は降下させられ、目地空間40が残るようにスラブ30上に配される。目地空間40の形成には、スラブ30上に載置される不図示のスペーサーなどが用いられる。
【0018】
目地空間40が形成された状態でプレキャストコンクリート柱10が、スラブ30上に設置されると、続いて図2に示すように、複数のスリーブ式鉄筋継手部材20のうちの一つに対応する下端開口15に、グラウト材を注入するための注入ノズル49が装着される。
【0019】
また、スラブ30の上面とプレキャストコンクリート柱10の底面との間に形成された目地空間40の周辺には型枠43が設けられ、目地空間40からグラウト材が溢れ出すことを防止するようになっている。これにより、グラウト材50の注入準備が完了する。
【0020】
続いて、不図示のポンプが駆動されることで、図3に示すように注入ノズル49から、スリーブ式鉄筋継手部材20へとグラウト材50が注入される。スリーブ式鉄筋継手部材20下方から溢れ出したグラウト材50は目地空間40を充填していき、目地空間40全体が充填されると、他のスリーブ式鉄筋継手部材20を下方側から充填していく。スリーブ式鉄筋継手部材20に対応する下端開口15と上端開口17の全てから、グラウト材50が排出されると、目地空間40と全てのスリーブ式鉄筋継手部材20内部空間にグラウト材50が充填されたことが確認できるので、そのようになったらポンプ(不図示)の駆動を停止、グラウト材50の充填を完了する。
【0021】
その後、グラウト材50の養生を行い、養生が完了すると、目地空間40を囲っていた型枠43を撤去し、図4に示すようにスラブ30と、プレキャストコンクリート柱10との接合が完了する。このような接合方法によれば、目地空間40と、主筋同士の継ぎ手部分(スリーブ式鉄筋継手部材20)との双方を同時に接合することができる。
【0022】
従来、基本的に上記のようなプレキャストコンクリート柱の接合方法が採用されているが、近年、プレキャストコンクリート柱の断面積が増加傾向にあり、従来のような接合方法では、グラウト材が所望とする充填率で充填されない可能性がある、という問題があった。そこで、本発明では、以下に説明するような接合方法を採用する。
【0023】
図5乃至図7は本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する図である。なお、図5(A)はプレキャストコンクリート柱10を透過的平面図としてみた図であり、図5(B)はスラブ30とプレキャストコンクリート柱10とを側面から見た図である。また、図5乃至図7において、図1乃至図4で説明した注入ノズル49などについては図示省略すると共に、それに関連する工程も説明を省略している。
【0024】
図5に示すプレキャストコンクリート柱10は比較的に大きな断面を有しているものである。スラブ30との間に目地空間40を残して、プレキャストコンクリート柱10が配された後には、目地空間40を分割することが行われる。
【0025】
具体的には、目地空間40に離隔部材としてエアチューブ型枠100を配し、目地空間40をエアチューブ型枠100(離隔部材)で離隔し、複数の分割目地空間とする。本実施形態では、エアチューブ型枠100(離隔部材)により、目地空間40を分割目地空間40a、40bの2つの空間に分割する例に基づいて説明を行うが、本発明で目地空間を離隔して幾つの分割目地空間とするかは任意である。
【0026】
また、上記のように、目地空間40に離隔部材としてエアチューブ型枠100を配する前段においては、エアチューブ型枠100に離型剤を塗布しておくと、養生後のグラウト材からの取り外しが容易となるので好ましい。目地空間40を離隔するために用いられるエアチューブ型枠100は、注入されるグラウト材の圧に負けて対象外の分割目地空間にグラウト材が移動しない程度に密かつ強固に取り付けられる。
【0027】
目地空間40に配するエアチューブ型枠100は、コンプレッサ(不図示)によって空気が導入されることで膨張するホース状部分を有するエアー型枠である。エアチューブ型枠100は、空気の導入・排出によって膨張・収縮するので、そのセットそして脱型を容易に行うことができる、というメリットがある。ただし、本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法では、離隔部材として、例えば、ギャップガード(登録商標)などのエアチューブ型枠100のみならず、細径エアフェンス、発泡ポリエチレン製型枠(例えば、エサフォーム(登録商標)など)、硬練りのグラウト材、角材、山形鋼などを利用することも可能である。
【0028】
さて、上記のようにエアチューブ型枠100によって、目地空間40を2つの分割目地空間40a、40bとした後には、一方の分割目地空間に対してグラウト材50を充填する準備がなされる。図5に示す例は、分割目地空間40aに対してグラウト材50を充填する準備がなされている様子であり、分割目地空間40aの周囲には型枠43が取り付けられている。
【0029】
図5のように型枠43が取り付けられた後に、続いて、図1乃至図4の例で説明したように、複数のスリーブ式鉄筋継手部材20のうちの一つからグラウト材50が注入され、分割目地空間40a、分割目地空間40aと連通する全てのスリーブ式鉄筋継手部材20にグラウト材50が充填される。グラウト材50が注入される工程が実施されることで図6に示すような状態となる。このようにグラウト材50が充填され、養生が行われる。
【0030】
なお、グラウト材注入では、複数のスリーブ式鉄筋継手部材20のうちの一つからグラウト材50を注入すればよいが、より好ましくは、平面視で矩形の分割目地空間の角部に近いスリーブ式鉄筋継手部材のうちから一つを選択することがよい。具体的には、図5(A)で言えば、(p)、(q)、(r)、(s)からグラウト材50をするスリーブ式鉄筋継手部材を選択するとよい。角部に近いスリーブ式鉄筋継手部材を選択すると、より均等にグラウト材50が注入される。
【0031】
分割目地空間40aに充填したグラウト材50の養生が完了すると次の工程に移る。続く工程では、分割目地空間40aに隣接する他の分割目地空間40bとの間に配されているエアチューブ型枠100を撤去がされ、さらに分割目地空間40aを囲んでいた型枠43も取り除かれる。エアチューブ型枠100を撤去する際には、導入されていた空気を排出して収縮させてから、これを行うと作業性がよい。
【0032】
さらに、他の分割目地空間である40b側の周辺に、型枠43が取り付けられる。続いて、分割目地空間40bと連通する複数のスリーブ式鉄筋継手部材20のうちの一つからグラウト材50が注入される。ここでも、平面視で矩形の分割目地空間40bの角部に近いスリーブ式鉄筋継手部材のうちから一つが選択される。
【0033】
分割目地空間40b、分割目地空間40bと連通する全てのスリーブ式鉄筋継手部材20にグラウト材50が充填されると図7に示すような状態となる。そして、続いて、グラウト材50の養生が行われる。グラウト材50の養生が完了すると型枠43が撤去されて、本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法における各工程が終了する。
【0034】
以上のように、本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法は、目地空間40に離隔部材(エアチューブ型枠100)を配し、目地空間40を離隔部材(エアチューブ型枠100)で離隔し、複数の分割目地空間とし、それぞれにグラウト材50を充填し養生する工程を経るようになっており、このような本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法によれば、大断面のプレキャストコンクリート柱10でも、適切な面積の分割目地空間に分割された上でグラウト材50が充填されるので、十分なグラウト充填率が確保することができ、信頼性の高い施工を行うことが可能となる。
【0035】
次に本発明に係る他の実施形態について説明する。先の第1実施形態では、目地空間40を離隔部材(エアチューブ型枠100)で離隔し、2つの分割目地空間40a、40bとして、段階的にそれぞれの分割目地空間毎にグラウト材を充填し、養生を行うようにしていた。これに対して、第2実施形態では、目地空間40を離隔部材(エアチューブ型枠100)で離隔し、2つの分割目地空間40a、40bとした後、略同時にそれぞれの分割目地空間毎にグラウト材を充填し、養生を行うものである。以下、図8乃至図10に基づいて、第2実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法を説明する。
【0036】
なお、図8(A)はプレキャストコンクリート柱10を透過的平面図としてみた図であり、図8(B)はスラブ30とプレキャストコンクリート柱10とを側面から見た図である。また、図8乃至図10において、図1乃至図4で説明した注入ノズル49などについては図示省略すると共に、それに関連する工程も説明を省略している。
【0037】
図8に示すプレキャストコンクリート柱10は比較的に大きな断面を有するものである。スラブ30との間に目地空間40を残して、プレキャストコンクリート柱10が配された後には、目地空間40を分割することが行われる。
【0038】
具体的には、目地空間40に離隔部材として2本のエアチューブ型枠100を配し、目地空間40を2本のエアチューブ型枠100(離隔部材)で離隔し、複数の分割目地空間とする。本実施形態では、2本のエアチューブ型枠100(離隔部材)により、目地空間40を分割目地空間40a、40bの2つの空間に分割する例に基づいて説明を行うが、本発明で目地空間を離隔して幾つの分割目地空間とするかは任意である。
【0039】
また、本実施形態においても、目地空間40に離隔部材としてエアチューブ型枠100を配する前段においては、エアチューブ型枠100に離型剤を塗布しておくようにすることが好ましい。また、目地空間40に配する離隔部材としては、エアチューブ型枠100などのエアー型枠(例えば、ギャップガード(登録商標)など)或いは細径エアフェンスの他に、発泡ポリエチレン製型枠(例えば、エサフォーム(登録商標)など)、硬練りのグラウト材、角材、山形鋼などを利用することも可能である。
【0040】
2本のエアチューブ型枠100によって、目地空間40を2つの分割目地空間40a、40bとした後には、両方の分割目地空間に対してグラウト材50を充填する準備がなされる。図8に示す例は、分割目地空間40a及び分割目地空間40bの両方に対してグラウト材50を充填する準備がなされている様子であり、分割目地空間40a及び分割目地空間40bの両方の周囲に型枠43が取り付けられる。
【0041】
図8のように型枠43が取り付けられた後に、分割目地空間40aに対応するスリーブ式鉄筋継手部材20のうちの一つからグラウト材50が注入され、ほぼ同時期に、分割目地空間40bに対応するスリーブ式鉄筋継手部材20のうちの一つからグラウト材50が注入される。これにより、分割目地空間40a、40b及びこれらに連通する全てのスリーブ式鉄筋継手部材20にグラウト材50が充填される。なお、グラウト材50の注入口として選択されるスリーブ式鉄筋継手部材20は、先の実施形態と同様、平面視で矩形の分割目地空間の角部に近いスリーブ式鉄筋継手部材のうちから一つを選択する。
【0042】
上記のように、グラウト材50が注入される工程が実施されることで図9に示すような状態となる。このようにグラウト材50が充填され、養生が行われる。
【0043】
分割目地空間40a及び分割目地空間40bに充填したグラウト材50の養生が完了すると次の工程に移る。続く工程では、分割目地空間40aと、これに隣接する他の分割目地空間40bとの間に配されている2本のエアチューブ型枠100が引き抜かれることで撤去がされ、さらに分割目地空間40a、分割目地空間40bを囲んでいた型枠43も取り除かれる。
【0044】
ここで、本実施形態においては、目地空間40を2つの分割目地空間40a、40bとして離隔する際に、2本のエアチューブ型枠100を用いる理由について説明する。
【0045】
エアチューブ型枠100の先端部110は、カシメられることによって形成されている。従って、先端部110の幅は、空気が充填されるホース状部分の幅より大きい。仮に、1本のエアチューブ型枠100のみを用いて分割目地空間40aと40bを形成して、両方の分割目地空間にグラウト材50を充填・養生・固化した後、エアチューブ型枠100の空気を排出して引き抜こうとしても、固化したグラウト材50に先端部110が当たることで、当該1本のエアチューブ型枠100を引き抜くことが困難となってしまう。そこで、本実施形態においては、2本のエアチューブ型枠100を用いてグラウト材50が固化した後にできる空間を広めの空間とすることで、エアチューブ型枠100を引き抜きやすくするようにしている。
【0046】
上記のように分割目地空間40a、40bにグラウト材50が充填・固化された後、2本のエアチューブ型枠100が引き抜かれる。続いて、2本のエアチューブ型枠100が引き抜かれた後に形成される分割目地空間40aと分割目地空間40bとの間の空間(図10の40c)に、グラウト材50を充填する工程が実施される。この準備のために、図10に示すように、空間40c全てにグラウト材50を充填した際に堰となる型枠43が、空間40cの両端開口部に設けられる。このような型枠43が設けられた後、空間40cにグラウト材50が充填され、養生が実施される。空間40cの前記両端開口部から溢れて固化したグラウト材50はカッターなどで除去される。
【0047】
以上のように、第2実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法は、目地空間40に離隔部材(エアチューブ型枠100)を配し、目地空間40を離隔部材(エアチューブ型枠100)で離隔し、複数の分割目地空間とし、それぞれの分割目地空間にグラウト材50をほぼ同時期に充填し養生する工程を経るようになっている。
【0048】
このような第2実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法によれば、大断面のプレキャストコンクリート柱10でも、適切な面積の分割目地空間に分割された上でグラウト材50が充填されるので、十分なグラウト充填率が確保することができ、信頼性の高い施工を行うことが可能となる。さらに、第2実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法によれば、それぞれの分割目地空間にグラウト材50をほぼ同時期に充填し養生するので、主要となる工程に要する時間を短縮することができる。
【0049】
次に本発明に係る他の実施形態について説明する。これまでの実施形態では、目地空間40を離隔し分割目地空間を形成するために、エアチューブ型枠100などの離隔部材を用いるようにしていた。これに対して、第3実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法では、固練りしたグラウト材を離隔部材とし、この離隔部材で目地空間40を離隔し分割目地空間を形成するものである。
【0050】
以下、図11を参照して第3実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法について説明する。図11は、プレキャストコンクリート柱10が不図示の吊下手段によって吊り下げられている状態を示している。吊下手段によって吊り下げられているプレキャストコンクリート柱10は降下させられ、目地空間40が残るようにスラブ30上に配されるが、プレキャストコンクリート柱10がスラブ30上に配される前段に、本実施形態では固練りした先行グラウト材150を、目地空間となる予定箇所に設けておく。
【0051】
先行グラウト材150の分量は、離隔部材として機能するエアチューブ型枠100の容積より若干多い程度とすることが望ましい。また、先行グラウト材150を配する際には、その高さは目地空間40の高さより高く盛るようにする。また、先行グラウト材150を配する箇所は、第1実施形態でエアチューブ型枠100を配した箇所と同様とする。
【0052】
図11の状態からプレキャストコンクリート柱10を降下し、目地空間40が残るようにスラブ30上にこれを配する。プレキャストコンクリート柱10が配されると、先行グラウト材150の分量と高さの関係から、プレキャストコンクリート柱10の底面が先行グラウト材150の上部が押し潰される。これにより、目地空間40は先行グラウト材150で離隔され、2つの分割目地空間が形成される。先行グラウト材150が固化すると、続いて、第2実施形態同様、2つの分割目地空間に対して、グラウト材50をほぼ同時期に充填し養生する。これによれば、第3実施形態に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法でも、主要となる工程に要する時間を短縮することができる。
【0053】
以上、本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法は、目地空間に離隔部材を配し、目地空間を離隔部材で離隔し、複数の分割目地空間とし、それぞれにグラウト材を充填し養生する工程を経るようになっており、このような本発明に係るプレキャストコンクリート柱の接合方法によれば、大断面のプレキャストコンクリート柱でも、適切な面積の分割目地空間に分割された上でグラウト材が充填されるので、十分なグラウト充填率が確保することができ、信頼性の高い施工を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・プレキャストコンクリート柱
13・・・柱側柱主筋
15・・・下端開口
17・・・上端開口
20・・・スリーブ式鉄筋継手部材
30・・・スラブ
33・・・スラブ側柱主筋
40・・・目地空間
40a、40b・・・分割目地空間
40c・・・(分割目地)空間
43・・・型枠
49・・・注入ノズル
50・・・グラウト材
100・・・エアチューブ型枠(離隔部材)
110・・・先端部
150・・・先行グラウト材(離隔部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11