(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】放電ランプおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 61/36 20060101AFI20221111BHJP
H01J 9/32 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
H01J61/36 B
H01J9/32 D
(21)【出願番号】P 2019061882
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】林 武弘
(72)【発明者】
【氏名】細木 裕介
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-014362(JP,U)
【文献】特開昭57-013663(JP,A)
【文献】特開2000-149873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/36
H01J 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管内の電極を支持し、前記発光管と一体的に繋がる封止管内に配設される電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、前記封止管と溶着するガラス管と、
電極軸に沿って配設された金属箔と前記電極支持棒とを電気的に接続する金属部材とを備え、
前記金属部材が、円盤部と、前記円盤部の周縁の少なくとも一部から発光管側へ延びる延出部とを備え、
前記延出部が、電極軸に対して前記電極支持棒から離れる方向に延びていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記延出部が、円錐面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記延出部が、円錐面および円柱面を形成していることを特徴とする請求項1または2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記延出部が、電極軸に対して0°<θ≦15°の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記延出部の端部が、前記ガラス管と対向していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記延出部の周囲の少なくとも一部に、隙間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項7】
前記ガラス管が、前記金属部材と対向する端部に段差部分を有し、
前記延出部の端部が、前記段差部分と向かい合うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項8】
前記金属箔および前記金属部材を覆う箔部材をさらに備え、
前記箔部材のガラス管側端部は、前記延出部の端部よりもガラス管側に位置することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項9】
前記ガラス管と前記金属部材との間に配置され、前記金属部材に応じた形状を有する円板箔をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項10】
前記封止管が、複数の封止管で構成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項11】
放電ランプの封止管内に封止され、前記封止管内に設けられる電極支持棒と同軸的に配置される金属部材であって、
円盤部と、
円錐面を形成するように、前記円盤部の周縁から少なくとも一方の円盤部側面方向へ末広がりに延びる傾斜部を設けた延出部と
を備えることを特徴とする金属部材。
【請求項12】
発光管内の電極を支持し、前記発光管と一体的に繋がる封止管内に配設される電極支持棒と、
前記電極支持棒が挿通され、前記封止管と溶着するガラス管と、
電極軸に沿って配設された金属箔と前記電極支持棒とを電気的に接続する金属部材とを備え、
前記金属部材が、円盤部と、前記円盤部の周縁の少なくとも一部から発光管側へ延びる延出部とを備え、
前記延出部が、電極軸に沿って周縁から延び、その端部が前記ガラス管と対向することを特徴とする放電ランプ。
【請求項13】
円盤状の金属素材を、その周縁から末広がりの円錐面を含む形に形成するように加工して、ボウル状の金属部材を成形する工程と、
電極支持棒を前記金属部材に溶接する工程と、
前記金属部材を含むマウント部品を封止管に挿入し、封止する工程と
を含むことを特徴とする放電ランプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関し、特に、電極マウント部品が配置される封止管の封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大型のショートアーク型放電ランプ(例えば1kW以上)では、半導体、液晶製造の生産効率を向上させるため、大電力化が進んでいる。大電力化に伴って電極が大型化するため、マウント部品を配置した封止管もそれに伴って大型化する。
【0003】
このような放電ランプのマウント部品では、筒状ガラス管によって保持される電極支持棒に対して金属リングを固定させ、複数の帯状金属箔を金属リング外周面に溶着させる。これによって、電力が金属箔、金属リング、電極支持棒を介して発光管内の電極に供給される。
【0004】
ランプ点灯中、金属部品と封止管の熱膨張量の差により、金属リング付近や帯状金属箔付近において封止管にクラックが生じやすい。これを防ぐため、例えば、所定の条件式を満たすように、帯状の金属箔の厚さを特有の厚さに定める(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
露光対象物の大型化やスループット向上のためには、放電ランプの更なる高出力が求められ、また、精密な露光を実現するため、ランプ点灯時に流れる電流は高電流となり、これまで以上に封止管が熱の影響を受ける。このような放電ランプにおいて、金属箔の厚さ調整だけでクラック発生を抑制するのが難しい。
【0007】
したがって、放電ランプに対し、熱耐久性の優れた封止管の封止構造を提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放電ランプは、発光管内の電極を支持し、発光管と一体的に繋がる封止管内に配設される電極支持棒と、電極支持棒が挿通され、封止管と溶着するガラス管と、電極軸に沿って配設された金属箔と電極支持棒とを電気的に接続する金属部材とを備える。例えば、封止管は、二重封止管など複数の封止管で構成可能である。
【0009】
そして、金属部材が、円盤部と、円盤部の周縁の少なくとも一部から発光管側へ延びる延出部とを備え、延出部が、電極軸に対して電極支持棒から離れる方向に延びている。ここで、延出部は、少なくともその一部が電極軸から離れる方向に延びていればよく、円盤部の周縁から延びる方向が、電極軸に対して傾斜した方向に構成することが可能であり、また、周縁から直状に延びて端部で傾斜するように構成することも可能である。
【0010】
延出部全体が、同じ方向に延びてもよく、あるいは、端部側で角度を変えて延びてもよい。例えば、延出部が、円錐面を形成するように構成することが可能であり、また、円錐面および円柱面を形成し、端部側が電極軸に平行に延びる直状部を設けるようにしてもよい。延出部は、電極軸に対して0°<θ≦15°の範囲で傾斜するようにするのがよい。
【0011】
延出部の端部は、封止管に熱膨張の影響を与えないように、ガラス管と対向するように構成することが可能である。例えば、ガラス管が、金属部材と対向する端部に段差部分を設け、延出部の端部が、段差部分と向かい合うようにすることができる。延出部の周囲の少なくとも一部(特にガラス管と対向する延出部端面側)に、延出部の熱膨張を受け入れる隙間を形成するのが良い。
【0012】
金属箔および金属部材を覆う箔部材を設ける場合、箔部材で延出部を覆うため、箔部材のガラス管側端部は、延出部の端部よりもガラス管側に位置するようにするのがよい。ガラス管と金属部材との間に配置され、金属部材に応じた形状を有する円板箔を設けることも可能である。
【0013】
本発明の他の態様である放電ランプは、発光管内の電極を支持し、発光管と一体的に繋がる封止管内に配設される電極支持棒と、電極支持棒が挿通され、封止管と溶着するガラス管と、電極軸に沿って配設された金属箔と電極支持棒とを電気的に接続する金属部材とを備え、金属部材が、円盤部と、円盤部の周縁の少なくとも一部から発光管側へ延びる延出部とを備え、延出部が、電極軸に沿って延び、その端部はガラス管と対向している。
【0014】
本発明の他の態様である金属部材は、放電ランプの封止管内に封止され、封止管内に設けられる電極支持棒と同軸的に配置される金属部材であって、円盤部と、円錐面を形成するように、円盤部の周縁から少なくとも一方の円盤部側面方向へ末広がりに延びる傾斜部を設けた延出部とを備える。
【0015】
本発明の他の態様である放電ランプの製造方法は、円盤状の金属素材を、その周縁から末広がりの円錐面を含む形に形成するように加工して、ボウル状の金属部材を成形する工程と、電極支持棒を金属部材に溶接する工程と、金属部材を含むマウント部品を封止管に挿入し、封止する工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱耐久性の優れた封止構造をもつ放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態であるショートアーク型放電ランプの概略的構成図である。
【
図3】金属部材付近における封止管の概略的断面図である。
【
図5】本実施形態の変形例である金属部材を示した図である。
【
図6】本実施形態の第2の変形例である金属部材を示した図である。
【
図7】封止管に対する応力の低減度合いを表すグラフを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態であるショートアーク型放電ランプの概略的断面図である。
【0020】
ショートアーク型放電ランプ10は、石英ガラスから成る発光管12内に陽極14、陰極16を対向配置させた放電ランプであり、発光管12の両端には、石英ガラスの封止管20、60が対向するように一体的に形成されている。
【0021】
封止管20、60の内部には、陰極16、陽極14を支持するとともに、発光管12内の放電空間11を封止するパーツ(以下、マウント部品という)18A、18Bがそれぞれ封入され、封止管20、60の両端は、口金80A、80Bで塞がれている。放電空間11には水銀および希ガスが封入されており、例えば定格電力1kW以上で発光するように水銀量が定められている。
【0022】
図2は、
図1の陰極側のマウント部品18A付近の概略的断面図である。ここでは口金80Aは省略している。なお、陽極側のマウント部品18Bも同様の構成になっている。
【0023】
封止管20は、ここでは二重管封止構造になっており、内側封止管20A、外側封止管20Bから成り、内側封止管20Aと外側封止管20Bは互いに溶着している。マウント部品18Aは、円筒状の肉厚ガラス管(以下、ガラス管という)24、柱状のガラス部材34、そして複数の帯状の金属箔36とを備える。内側封止管20Aは、ガラス管24およびガラス部材34と溶着している。
【0024】
封止管20内には、陰極16を支持する導電性の電極支持棒22Aが、電極軸E(ランプ軸)に沿って配置されている。電極支持棒22Aは、ガラス管24に形成された軸穴24Aに挿通され、ガラス管24によって保持される。
【0025】
一方、封止管端部側(口金80A側)では、導電性のリード棒28が、電極支持棒22Aと対向するように配置されている。電極支持棒22Aおよびリード棒28は、ガラス部材34の両端に設けられた穴(凹み部分)34A、34Bにそれぞれ軸挿され、ガラス部材34は、電極支持棒22Aおよびリード棒28を保持する。リード棒28は、電源部(図示せず)と繋がった外部のリード線(図示せず)に接続されている。
【0026】
ガラス部材34の両端には、金属リング(金属部材)26、32がそれぞれ配置され、電極支持棒22A、リード棒28は、それぞれ金属リング26、32の軸穴26A、32Aに溶接され、ともに電極軸Eに対し同軸配置されている。金属リング26、32は、導電性の任意の金属素材(例えばタングステン、モリブデン、タンタル等)で構成可能である。
【0027】
発光管12に近い金属リング(以下、内側金属リングという)26は、ディスク状で電極支持棒22Aを挿通させる穴の開いた円板箔42、44に挟まれており、他方の金属リング(以下、外側金属リングという)32も同様に、ディスク状の円板箔52、54に挟まれている。封止管端部側は、リード棒28を挿通させて保持する肉厚固定ガラス管50が固定されている。
【0028】
内側金属リング26と外側金属リング32の間には、複数の帯状金属箔(例えばモリブデン箔)36がガラス部材34の外表面に沿って電極軸Eに沿って延び、その両端は、内側金属リング26、外側金属リング32の外周面に溶接されている。外側金属リング32は、リード棒28と金属箔36とを電気的に接続させ、内側金属リング26は、金属箔36と電極支持棒22Aとを電気的に接続させる。
【0029】
図3は、内側金属リング26付近における封止管20の概略的断面図である。
図4は、内側金属リング26の断面図である。
【0030】
内側金属リング26は、両側面が平坦な円盤部26Bをベース部分とし、その円盤部26Bの周縁から発光管側に延びるリング状の延出部26Cが形成されている。延出部26Cは発光管側に向けて末広がりの円錐面26S3を形成し、発光管側から見ると、内側金属リング26は、一方の側面26S2を底面としたボウル(鉢)状に形成されている。
【0031】
図4に示すように、延出部26Cは、電極軸Eに対して電極支持棒22Aから離れる方向、すなわち封止管外側に向けて角度θだけ傾斜している。ここでは、角度θは、0°<θ≦15°の範囲に定められている。延出部26Cの端部26Dは、その端面26S4が円盤部26Bと平行である。
【0032】
ガラス管24は、互いに大きさの異なる径D1、D2、D3をそれぞれ有する円筒状の小径部24D1、中径部24D2、大径部24D3とを連ねた形状を有し、小径部24D1と中径部24D2、中径部24D2と大径部24D3との間に、それぞれ段差部分J1、J2が形成される。
【0033】
内側金属リング26の延出部26Cは、その端面26S4が段差部分J1と向かい合う位置にあり、中径部24D2と向かい合う。また、延出部26Cの端面26S4と、中径部24D2との間には、電極軸Eに沿った距離間隔Bの隙間KSが設けられている。帯状の金属箔36は、金属リング26の延出部26Cまで延び、段差部分J1、すなわちガラス管24と接していない。
【0034】
段差部分J2は、内側封止管20Aと溶着し、また、巻き箔(箔部材)39と接している。巻き箔39は、MoやTa製の箔で構成され、ガラス部材34の内側金属リング26付近からガラス管24の段差部分J2に渡って電極軸方向に延び、ガラス部材34、内側金属リング26そしてガラス管24の小径部24D1、中径部24D2を覆う。ただし、巻き箔39は、
図1、2には示していない。
【0035】
内側金属リング26の発光管側側面26S2と接する円板箔42は、内側金属リング26と同様ボウル(鉢)状に形成され、末広がりの延出部によって円錐面が形成されることによって、内側金属部材26の円盤部26Bおよび延出部26C両方に跨って接している。そのため、内側金属リング26はガラス管24の小径部24D1と接していない。
【0036】
このような内側金属リング26を取り入れることによって、以下述べるようにランプ点灯中の封止管クラック発生を抑制することができる。
【0037】
ランプ点灯中、内側金属リング26は熱膨張するが、円盤部26Bだけでなく、どちらかといえば電極軸に近い方向に沿って延びる延出部26Cも熱膨張する。熱膨張の方向が径方向と延出部26Cの延びる傾斜方向に分散することで、巻き箔39および封止管20が受ける径方向の応力が低減し(一方向に応力が集中せず)、クラック発生を抑制することができる。特に、傾斜角度θが15°以下に定められることで、応力を効果的に抑制することができる。
【0038】
また、延出部26Cが発光管側に向けて延びているため、延出部26Cの熱膨張の方向に金属箔36も熱膨張し(引っ張られ)、金属箔36のヨレやシワを防ぐことができる。
【0039】
一方で、延出部26Cの端部26Dとガラス管24との間には隙間KSが形成されているため、延出部26Cが熱膨張したときにガラス管24や封止管20に対して応力がかからず、クラック発生を抑制することができる。この隙間KSは、ガラス管24の小径部24D1と延出部26Cの端面26S4との距離間隔で定められるため、小径部24D1の電極軸方向長さを調整すること、すなわち段差部分J1の形状を定めることにより、隙間KSを所望する電極軸方向長さに定めることができる。また、延出部26Cの端部26Dがガラス管24と対向した配置であるため、安定して封止作業を行うことが可能となる。
【0040】
さらに、ガラス部材34を覆う巻き箔39が、延出部26Cの端部26Dを超えて、ガラス管24と接するまで延び、巻き箔39が隙間KSを覆って隙間KSに露出している。これにより、ランプ点灯中に延出部26Cが熱膨張したとき、巻き箔39の変形によっても応力を吸収することができるため、より一層クラック発生を抑制することができる。
【0041】
内側金属リング26とガラス管24との間に配置された円板箔42は、内側金属リング26の形状に応じたボウル状(鉢状)に形成されている。これによって、延出部26Cがガラス管24と直接接触せず、ガラス管24のクラック発生を抑制することができる。
【0042】
このような封止構造をもつ放電ランプは、以下の製造方法に従って製造することができる。すなわち、電極支持棒挿通用の穴を円盤状の金属素材に形成し、また、金属素材の周縁から末広がりの円錐面を形成するように金属素材をプレス加工などによって加工し、ボウル状(鉢状)の金属部材を成形する。そして、金属部材に電極支持棒を挿通させて溶接するとともに、帯状の金属箔を金属部材外周面に溶接し、マウント部品を組み立てる。マウント部品を封止管に挿入後、熱によって封止管を縮径し、マウント部品を封止する。これによって、放電ランプが製造される。なお、放電ランプの組立手順は上述に限らず、例えば、金属素材のプレス加工後に電極支持棒挿通用穴を形成してもよく、電極支持棒挿通後に金属素材をボウル状に成形してもよい。また、プレス加工以外にも、延出部に相当する部材を溶接したり、すでにボウル状の金属素材を切削成形したりしてもよい。
【0043】
本実施形態の放電ランプ10においては、ガラス管に段差部分を形成しているが、段差部分のないガラス管の構成にしてもよい。また、巻き箔はキャップのように被せる構成も可能であり、あるいは巻き箔を設けない構成にしてもよい。本実施形態では大型の放電ランプのため二重封止管を採用したが、二重封止管以外の単一管などによる封止管構造にすることも可能である。また、内側金属リング側面に円板箔を設けない構成にしてもよい。
【0044】
内側金属リング26に関し、その延出部の電極軸方向に沿った長さは任意であるが、円盤部の直径よりも短く、また、内側金属リング26の厚さよりも長く設定すればよい。また、円盤部26Bの角R(
図4)に丸みを設けてもよく、曲率半径0.3~5に定めることができる。
【0045】
延出部26Cは、円盤部26Bの周縁全体から延びて円錐面を形成しているが、周縁一部から(例えば、所定間隔で)延びる構成にすることも可能である。また、内側金属リング26については、一方の電極側封止管のみ適用してもよく、また、リード棒と接続する外側金属リングも同様の構成にすることも可能である。
【0046】
内側金属リングの形状については、円錐面を形成する延出部に加え、円柱面を形成するように軸方向にさらに延びる延出部を設けてもよい。
【0047】
図5は、本実施形態の第1の変形例である内側金属リングを示した図である。
【0048】
内側金属リング260は、穴260Aを設けた円盤部260Bの周縁から延出部260Cが発光管側に延びる形状であり、延出部260Cは、円錐面を形成する傾斜部260C1と、電極軸Eに沿って延び、円柱面を形成する直状部260C2から成る。
【0049】
延出部260Cの端部側に直状部260C2を設けることにより、熱膨張する際にも段差部分J1に向けて隙間KS内を膨張することになり、さらなるクラック抑制をもたらすことができる。また、直状部260C2を設けることにより、金属箔36との溶接がしやすくなる。なお、直状部260C2だけで延出部260Cを構成することも可能であり、延出部260Cの端部側に傾斜部260C1を構成してもよい。
【0050】
内側金属リングの形状については、一方の側面から発光管側へ末広がりに延びるボウル形状に限定されず、反対側にも延びる延出部を設けてもよい。
【0051】
図6は、本実施形態の第2の変形例である内側金属リングを示した図である。内側金属リング360は、穴360Aを設けた円盤部360Bと、円盤部360Bの周縁から末広がりに側面両方向に延びる延出部360C1、360C2が形成されている。これにより、延出部360C1、360C2の傾斜方向に熱膨張させ、内側金属リング26と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0052】
本実施例の放電ランプは、実施形態に対応する放電ランプをコンピュータ上でモデリングしたものであり、段差部分を形成したガラス管や巻き箔、二重封止管相当の構造を再現している。以下、延出部の傾斜角度を変えながら所定の点灯条件で点灯シミュレーションを行い、封止管に対する応力の低減の度合いを調べた。ただし、8kWの電力を供給して安定点灯する条件下でシミュレーションを行った。
【0053】
図7は、延出部の傾斜角度と、封止管に対する応力の低減度合いとの関係を表すグラフを示した図である。比較例は、延出部を備えていない従来の円盤状内側金属リングで構成された放電ランプをモデル化している。内側金属リング以外の構成は、実施例と同じである。縦軸は、この比較例の応力値を1とし、実施例の傾斜角度を変えたときの応力値の割合を示している。低い値ほど封止管の破損の可能性が低い。
【0054】
図7から明らかなように、傾斜角度θが大きくなるほど値が低下している。10°で最も低下し、それ以降は値が下がらない。すなわち、特に傾斜角度θを15°以下に定めることで、応力を効果的に抑制できることが分かる。また、傾斜角0°でも値が低下していることから、第1の変形例に示した直状部だけで延出部を形成しても効果があることがわかった。
【符号の説明】
【0055】
10 放電ランプ
20 封止管
22A 電極支持棒
24 ガラス管
26 内側金属リング(金属部材)
26B 円盤部
26C 延出部