(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】ストーカ式ごみ焼却炉における燃焼位置検出方法、ストーカ式ごみ焼却炉における燃焼制御方法及びストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
F23G5/50 C ZAB
F23G5/50 G
(21)【出願番号】P 2019119744
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】中神 健司
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一栄
(72)【発明者】
【氏名】眞田 孝輔
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-009546(JP,A)
【文献】特開2017-187228(JP,A)
【文献】特開2009-281743(JP,A)
【文献】特開昭61-143617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入されたごみを搬送しながら焼却するストーカ式ごみ焼却炉(1)のストーカの燃焼段(6b)におけるごみを撮影する撮影手段(10)を備え、前記撮影手段(10)により撮影した燃焼段(6b)で燃えているごみの映像を画像として抽出し、該抽出された画像(20)に基づいて前記燃焼段(6b)上の燃焼位置を検出するストーカ式ごみ焼却炉における燃焼位置検出方法であって、
前記画像(20)を縦横のグリッド線(21)で格子状の複数のマス(22~26)に区分けし、
該グリッド線(21)で区分けされた格子状の各マス(22~26)の位置に応じて重みづけをして、
各マス(22~26)の実測の輝度値に各マスの重みづけを考慮した重みづけ後の輝度値を求め、
各マス(22~26)の横一列又は縦一列の重みづけ後の輝度値の平均値を算出し、
ごみが火炎をあげて盛んに燃えているストーカ上の燃焼位置(29)を検出すること
を特徴とするストーカ式ごみ焼却炉における燃焼位置検出方法。
【請求項2】
投入されたごみを搬送しながら焼却するストーカ式ごみ焼却炉(1)のストーカの燃焼段(6b)におけるごみを撮影する撮影手段(10)を備え、前記撮影手段(10)により撮影した燃焼段(6b)で燃えているごみの映像を画像として抽出し、該抽出された画像(20)を縦横のグリッド線(21)で格子状の複数のマス(22~26)に区分けし、
該グリッド線(21)で区分けされた格子状の各マス(22~26)の位置に応じて重みづけをして、
各マス(22~26)の実測の輝度値に各マスの重みづけを考慮した重みづけ後の輝度値を求め、
各マス(22~26)の横一列又は縦一列の重みづけ後の輝度値の平均値を算出し、
ごみが火炎をあげて盛んに燃えているストーカ上の燃焼位置(29)を検出し、前記画像(20)に表示された適正位置(28)と燃焼位置(29)とが離れていた場合、
前記燃焼位置(29)の位置と、該燃焼位置(29)と適正位置(28)との距離が格子のマス目で何マス分離れているかによって、ストーカのごみ送り速度を現在の速度に対してどれだけ増減させるのかをあらかじめ設定しておき、
該設定した速度の増減度合いによって、自動で燃焼位置(29)を適正位置(28)と一致するようストーカのごみ送り速度を制御すること
を特徴とするストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項3】
投入されたごみを搬送しながら焼却するストーカ式ごみ焼却炉(1)のストーカの燃焼段(6b)におけるごみを撮影する撮影手段(10)と、
前記撮影手段(10)により撮影した燃焼段(6b)で燃えているごみの映像を画像(20)として抽出し、該抽出された画像(20)に縦横のグリッド線(21)で格子状の複数のマス(22~26)に区分けし、
該グリッド線(21)で区分けされた格子状の各マス(22~26)の位置に応じて重みづけをして、各マス(22~26)の実測の輝度値に各マスの重みづけを考慮した重み付け後の輝度値を求め、各マス(22~26)の横一列又は縦一列の重みづけ後の輝度値の平均値を算出し、燃焼位置(29)を検出し、
前記燃焼位置(29)を画像(20)上に表示する画像処理装置(11)と、適正位置(28)と前記画像処理装置(11)により得られた画像(20)に表示された前記燃焼位置(29)との位置を比較して、該距離に対応して設定した速度の増減度合いによって、自動で燃焼位置(29)を適正位置(28)と一致するようストーカの送り速度を制御する制御装置からなることを特徴とするストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ式移動火格子を備え、ごみを搬送しながら焼却するごみ焼却炉の火格子上のごみの燃焼位置検出方法及びストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御装置に関し、詳しくは、投入されたごみを搬送しながら焼却処理するストーカ式の焼却炉内に設置した映像手段で撮影したストーカ上で燃えているごみの映像を、一定時間ごとに画像として抽出し、抽出した画像を画像処理装置で読み込み、前記画像を処理し燃焼位置を検出し、適正位置と前記実際に燃えているごみの燃焼位置が離れていた場合に適正位置と燃焼位置の距離によってストーカのごみ送り速度を制御するストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御方法及びストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストーカ式のごみ焼却炉1では、
図6に示すように、ごみ供給ホッパ2よりクレーン(図示しない)にて燃焼室3に投入されたごみ4は、プッシャー5に押されストーカ6で搬送されながら燃焼し、燃焼したごみは最終的には灰となって、灰シュート7から排出される。
前記ストーカ6は、投入されたごみを乾燥させる乾燥段6a、乾燥したごみが着火し燃焼する燃焼段6b、燃焼段で燃焼させたごみを完全に灰化する後燃焼段6cの合計三つの区間で構成されている。
なお、ごみ焼却炉1の下からごみ燃焼用の一次空気量が空気送風機8によりごみ焼却炉1へ供給される。
ごみは、燃焼段6bの中央付近では火炎を上げて盛んに燃え、後部ではほぼ灰化する。この火炎を上げて盛んに燃えている領域は、燃焼位置9と呼ばれる。燃焼位置9は、ストーカ6のごみ送り速度が適正であれば燃焼段6bに現れるが、ストーカ6のごみ送り速度が遅いと乾燥段6aに現れ、ストーカのごみ送り速度が速いと後燃焼段6cに現れる。燃焼位置9が乾燥段6aに現れた場合は、ごみの急激燃焼による炉体の損耗が発生してしまう。一方で、燃焼位置9が後燃焼段6cに現れた場合はごみの未燃炭素の割合が増え、熱しゃく減量が増加する。
上記の燃焼過程において炉内の適切な位置でごみを燃焼させるため、ストーカ式ごみ焼却炉内における火炎部(燃焼部)を燃焼位置として検出し、ごみの燃焼位置を制御するに際し、ごみ焼却炉内部をITVカメラにより撮像した炉内画像を撮影し、画像処理装置により、炉内画像の明るさ分布の傾向を利用して、火炎部のみを抽出するための2値化しきい値を求め、この2値化しきい値により火炎部の領域を抽出して燃焼位置を検出している。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の焼却炉内部をITVカメラにより撮像した炉内画像を画像処理装置により、炉内画像の明るさ分布の傾向を利用して、火炎部のみを抽出するための2値化しきい値を求め、この2値化しきい値により火炎部の領域を抽出して燃焼位置を検出する方法では、可視光で焼却炉内の炎の明るさは測定するが、その場合、燃焼位置から離れた場所で燃焼している箇所がある場合は、その箇所の明るさを検知してしまい、燃焼位置の決定が困難となる。また、炉内で飛灰が舞い上がった際、舞い上がった飛灰によって可視光がさえぎられてしまう。
赤外線カメラで炉内画像を撮影した場合、温度を測定しているため、温度差から燃焼領域を区別できる。また、炉内で飛灰が舞い上がった際も、温度を測定しているため、炉内の観察は継続可能である。しかし、壁近傍の温度は、壁からの輻射熱の影響を受けるため、燃焼位置の決定が困難となる。
また、焼却施設の運転員が焼却炉に設置された撮影手段により撮影された映像を一定時間ごとに目視で確認し、燃焼位置が適正位置から離れた場合に、ストーカ速度(ごみの送り速度)を手動で調整し、燃焼位置を適正位置に戻していた。しかし、投入されたごみの組成(元素比率、発熱量比率や水分比率)が変動した際は、作業員の目視によるストーカ速度の調整だけでは、対応が遅れていた。
【0005】
本発明は、かかる観点に鑑みてなされたもので、ストーカ式ごみ焼却炉において、焼却炉内で燃えているごみを撮影手段で撮影した映像を一定時間ごとに画像として抽出し、画像処理を施して燃焼位置を検出し、燃焼位置を常に適正位置に保持するようにストーカ速度を調整しごみ送り速度を制御することで、ごみの急激燃焼による炉体の損耗や、ごみの不完全燃焼による熱しゃく減量の増加(灰中の未燃炭素の増加)を防止するストーカ式ごみ焼却炉における燃焼位置検出方法、ストーカ式ごみ焼却炉における燃焼制御方法及びストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
〈1〉投入されたごみを搬送しながら焼却するストーカ式ごみ焼却炉(1)のストーカの燃焼段(6b)におけるごみを撮影する撮影手段(10)を備え、前記撮影手段(10)により撮影した燃焼段(6b)で燃えているごみの映像を画像として抽出し、該抽出された画像(20)に基づいて前記燃焼段(6b)上の燃えきり位置を検出すストーカ式ごみ焼却炉における燃焼位置検出方法であって、
前記画像(20)を縦横のグリッド線(21)で格子状の複数のマス(22~26)に区分けし、
該グリッド線(21)で区分けされた格子状の各マス(22~26)の位置に応じて重みづけをして、
各マス(22~26)の実測の輝度値に各マスの重みづけを考慮した重みづけ後の輝度値を求め、
各マス(22~26)の横一列又は縦一列の重みづけ後の輝度値の平均値を算出し、
ごみが火炎をあげて盛んに燃焼しているストーカ上の燃焼位置(29)を検出することを特徴とするストーカ式ごみ焼却炉における燃焼位置検出方法。
〈2〉投入されたごみを搬送しながら焼却するストーカ式ごみ焼却炉(1)のストーカの燃焼段(6b)におけるごみを撮影する撮影手段(10)を備え、前記撮影手段(10)により撮影した燃焼段(6b)で燃えているごみの映像を画像として抽出し、該抽出された画像(20)を縦横のグリッド線(21)で格子状の複数のマス(22~26)に区分けし、
該グリッド線(21)で区分けされた格子状の各マス(22~26)の位置に応じて重みづけをして、
各マス(22~26)の実測の輝度値に各マスの重みづけを考慮した重みづけ後の輝度値を求め、
各マス(22~26)の横一列又は縦一列の重みづけ後の輝度値の平均値を算出し、
ごみが火炎をあげて盛んに燃えているストーカ上の燃焼位置(29)を検出し、前記画像(20)に表示された適正位置(28)と燃焼位置(29)とが離れていた場合、前記燃焼位置(29)の位置と、該燃焼位置(29)と適正位置(28)との距離が格子のマス目で何マス分離れているかによって、ストーカのごみ送り速度を現在の速度に対してどれだけ増減させるのかをあらかじめ設定しておき、該設定した速度の増減度合いによって、自動で燃焼位置(29)を適正位置(28)と一致するようストーカのごみ送り速度を制御することを特徴とするストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御方法。
【0007】
〈3〉投入されたごみを搬送しながら焼却するストーカ式ごみ焼却炉(1)のストーカの燃焼段(6b)におけるごみを撮影する撮影手段(10)と、
前記撮影手段(10)により撮影した燃焼段(6b)で燃えているごみの映像を画像(20)として抽出し、該抽出された画像(20)に縦横のグリッド線(21)で格子状の複数のマス(22~26)に区分けし、
該グリッド線(21)で区分けされた格子状の各マス(22~26)の位置に応じて重みづけをして、各マス(22~26)の実測の輝度値に各マスの重みづけを考慮した重みづけ後の輝度値を求め、各マス(22~26)の横一列又は縦一列の重みづけ後の輝度値の平均値を算出し、燃焼位置(29)を検出し、前記燃焼位置(29)を画像(20)上に表示する画像処理装置(11)と、適正位置(28)と前記画像処理装置(11)により得られた画像(20)に表示された前記燃焼位置(29)との位置を比較して、該距離に対応して設定した速度の増減度合いによって、自動で燃焼位置(29)を適正位置(28)と一致するようストーカの送り速度を制御する制御装置とからなることを特徴とするストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のストーカ式ごみ焼却炉における燃焼位置検出方法及びストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御装置によれば、ストーカ式の焼却炉内に設置した映像手段で撮影したストーカ上で燃えているごみの映像を一定時間ごとに画像として抽出し、抽出した画像を画像処理装置で読み込み、前記画像を処理し燃焼位置を検出し、適正位置と前記実際に燃えているごみの燃焼位置が離れていた場合、燃焼位置を常に適正位置に保持するように該距離に対応して設定した速度の増減度合いによって、ストーカ速度を調整しごみ送り速度を制御することで、ごみの急激燃焼による炉体の損耗やごみの不完全燃焼による熱しゃく減量の増加(ごみの未燃炭素割合の増加)を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態によるごみ焼却炉の概略図である。
【
図3】撮影手段により撮影した炉内画像において燃焼位置を求める方法を説明する図である。
【
図4】ストーカのごみ送り速度の調整方法の説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態によるストーカのごみ送り速度の調整方法の流れを説明するためのフローチャート図である。
【
図6】従来のストーカ式ごみ焼却炉の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るごみ焼却炉の自動燃焼制御方法を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
なお、従来技術と同等の、若しくは相当する機能を有する要素には同一の符号を付し、これらの説明については一部省略する。
図1は本発明の実施の形態によるごみ焼却炉の概略図、
図2は撮影手段の設置位置の例を表す図、
図3は、炉内画像において燃焼位置を求める方法を説明する図、
図4はストーカのごみ送り速度の調整方法の説明図である。
図1のように、10の燃焼段6bの上部に設置した炉内を撮影する撮影手段で赤外線カメラを用いることで、可視カメラでは判別できない、燃焼位置を判別することができる。
11は撮影手段10で撮影された画像を処理する画像処理装置、12はストーカの速度を制御する制御装置である。
図1を参照してこの焼却炉における焼却炉へのごみ投入から該ごみが焼却されるまでの流れを説明する。
ごみ供給ホッパ2よりクレーン(図示しない)にて焼却炉1に投入されたごみ4はごみ燃焼室3に入りプッシャー5により押され乾燥段6aへ移動し、該乾燥段6a上で乾燥されながら燃焼段6bへ移動し、燃焼段6bで燃焼され、後燃焼段6cへ移動し燃焼し灰となり、焼却炉1の灰シュート7より排出される。
上記焼却炉1に投入されごみ4が燃焼室3で燃焼され灰となり焼却炉外へ排出される過程において、焼却炉1に設けた撮影手段10は、ストーカ6の燃焼段6bで燃焼されているごみの燃焼状態を撮影しその撮影画像は画像処理装置11に取り込まれる。
図2において、a~eは撮影手段(ITVカメラ)の設置位置の例を表し、aはストーカの直上、bはごみの進行方向の前側の上(または上壁)、cはごみの進行方向の後側の上(または上壁)、dはごみの進行方向から見て右側の横壁、eはごみの進行方向から見て左側の横壁に設置する場合である。
【0011】
以下の説明は、炉内画像における燃焼位置を求める方法の一例であり、これに限定されるものではない。
図3に示すように、画像処理装置に取り込まれた前記撮影画像20は、縦横(縦:ごみの進行方向、横:ごみの進行方向の直角方向)のグリッド線21で5×5の格子状のマス22~26に区分けされる。28はストーカ6の燃焼段6bにおける適正位置、29は燃焼位置である。前記適正位置とは、前記燃焼段6bにおいて前記ごみが炉体の損耗や熱しゃく減量の増加を起こすことなく燃焼する位置である。焼却炉の大小、撮影手段10の設置位置、撮影手段の向き等によりそれぞれ異なることから焼却炉を稼働させ撮影手段10でストーカ6の燃焼段6bで燃焼しているごみの燃焼状態を撮影しその撮影画像に基づいて適正位置を決めている。
【0012】
画像処理装置においては、前記縦横のグリッド線21で5×5の格子状のマス22~26に区分けされた各マスの炉内温度を輝度で表す。このとき、可視カメラの場合、燃焼位置から離れた箇所で燃焼している箇所があった場合、検知する炎の明るさが分散するので、炎の明るさを輝度で表すことでは燃焼位置の判定が正確にできない。
赤外線カメラの場合、炎の生じる場所に関係なく、温度を検出して燃焼状態を適確に把握できる。しかしながらごみの進行方向に向かって両端に近いマスは焼却炉内の両側の壁から反射する輻射熱の影響を受けるため炉内温度を正確に測定することが困難である。一方中央のマスは焼却炉内の両側の壁から反射する輻射熱の影響を受けにくいので炉内温度を正確に測定することができる。
【0013】
そこで、各マスの位置に応じて重みづけをして、両端に近いマスの輝度の重みづけを軽くし、中央に近いマスの輝度の重みづけを重くして、横列の各マスの輝度の平均値を算出する等の方法で、ごみが火炎をあげて盛んに燃えている状態とみなした所定輝度以上となるストーカ上の燃焼位置を判断する。
例えば、
図3においてごみの進行方向に向かって後端の横一列のマス22において、実施例のように画像を5×5のマスに区切った場合、一段目のマスの輝度の実測値が全て100とした場合、例えば、左から右に向かって重みづけを0.2→0.4→0.7→0.4→0.2とした場合は、重みづけした後の輝度は、左から右に向かって20→40→70→40→20となりその横一列の平均値は、38となる。
このように中央のマス22aの重みづけを0.7とし実測の輝度値を0.7倍、中央のマスの両隣のマス22bの重みづけを0.4とし実測の輝度値を0.4倍、両端に近いマス22cの重みづけを0.2とし実測の輝度値を0.2倍し横一列の平均値を出す。
上記の例においては、重みづけを左右対称としたが、必ずしもそうする必要はなく、ITVカメラの設置位置を炉内のごみの進行方向の前側の上(または上壁)でごみの進行方向から見て右寄り(b’)に設置するような場合は、右寄りの横壁から反射する輻射熱の影響が強いので、この影響を緩和するため、例えば、左から右に向かって重みづけを0.1→0.3→0.4→0.6→0.5とした場合は、重みづけした後の輝度は、左から右に向かって10→30→40→60→50となりその横一列の平均値は、38となる。
このように左側に近いマス22cの重みづけを0.1とし実測の輝度値を0.1倍、その隣のマス22bの重みづけを0.3とし実測の輝度値を0.3倍、その隣のマス22aの重みづけを0.4とし実測の輝度値を0.4倍、その隣のマス22bの重みづけを0.6とし実測の輝度値を0.6倍、その隣のマス22cの重みづけを0.5とし実測の輝度値を0.5倍し横一列の平均値を出す。
【0014】
同様に後端から先端の横一列のマス(22~26)において、それぞれ各マスに重みづけをし、各マスの温度の測定値に重みづけを掛けて各横一列の輝度の平均値を算出し、ごみが火炎を上げて盛んに燃えているストーカ上の燃焼位置を特定する。
例えば、上記重みづけ後の平均値が100のところを適正位置とした場合に、前記5個の横一列の重みづけ後の平均値が、
図3の画像において上から30、60、90、120、150と仮定した場合、下から2段目と3段目のマスの間の位置が適正位置となる。
本発明の実施形態においては、画像を5×5のマスで区切ったが、焼却炉の大きさによって燃焼線の適切な区分方法が異なるため、3×3~9×9までのマスとしても良い。
なお、図においては後燃焼段6c側からみて2つ目のグリッド線21bの位置が前記の画像処理の結果特定された燃焼位置29である。
上記は、横一列の重みづけ後の平均値等に基づいてストーカ上の燃焼位置を判断する場合であるが、ITVカメラがごみの進行方向から見て右側の横壁(d)や左側の横壁(e)に設置している場合は、縦一列の重みづけ後の平均値等に基づいてストーカ上の燃焼位置を判断する。
【0015】
図4はストーカのごみ送り速度の調整方法の説明図である。
本発明の実施形態においては、前記撮影手段10で炉内のごみの燃焼状態を撮影した映像を一定時間ごとに画像として抽出し、前記画像処理を施す。
図4におけるグリッド線21a~21fは、それぞれ燃焼位置29であり、例えば画像処理を施された画像20において燃焼位置29がグリッド線21aに位置するときは、適正位置28に対して2マス分ごみ送り速度が速いことを表し、グリッド線が21bに位置するときは、適正位置28に対して1マス分ごみ送り速度が速いことを表している。
また、燃焼位置29がグリッド線21cに位置するときは、適正位置28と燃焼位置29が一致しており、適切なごみ送り速度であることを表している。
【0016】
逆に、燃焼位置29がグリッド線21dに位置しているときは、適正位置28に対して1マス分ごみ送り速度が遅いことを表し、グリッド線21eに位置するときは、適正位置28に対して2マス分ごみ送り速度が遅いことを表し、グリッド線21fに位置するときは、適正位置28に対して3マス分ごみ送り速度が遅いことを表している。
上記のように、前記画像20から両者の位置を比較し、適正位置28と燃焼位置29が離れていた場合、離れている距離が格子のマス目で何マス分離れているかによって、ストーカのごみ送り速度を現在の速度に対してどれだけ増減させるのかをあらかじめ設定しておき、該設定した速度の増減度合いによって、自動で燃焼位置29を適正位置と一致するよう制御する。
例えば、燃焼位置がグリッド線21aに位置するときは、ストーカを送る速度をe%遅くし、グリッド線21bに位置するときは、ストーカを送る速度をd%遅くし、燃焼位置がグリッド線21dに位置するときは、ストーカを送る速度をc%速くし、グリッド線21eに位置するときは、ストーカを送る速度をb%速くし、グリッド線21fに位置するときは、ストーカを送る速度をa%速くして、ストーカのごみ送り速度を調整する。
このように適正位置28と燃焼位置29とが一致するようストーカのごみ送り速度を制御する。
なお、
図4の場合は、燃焼位置29が適正位置よりも後燃焼段6c側であるグリッド線21bにあるため、ストーカのごみ送り速度をd%遅くする。
【0017】
図5は、本発明の実施の形態によるストーカのごみ送り速度の調整方法の流れを説明するためのフローチャート図である。
焼却炉運転中に撮影手段10で炉内のごみの燃焼状態を撮影する(ステップ1)
撮影した映像を画像として抽出し、画像処理装置に取り込み、画像処理し処理後の画像を制御装置に送る。(ステップ2)
・取り込んだ画像を複数本のグリッド線で格子状に複数のマスに区分する。(ステップ2-1)
・各マスにその各マスの位置に応じて重みづけをする。(ステップ2-2)
・各マスの輝度の実測の輝度値と各マスの位置に応じた重みづけに基づいて、重みづけ後の輝度を求める。(ステップ2-3)。
・横列ごとに横一列のマスの重みづけ後の輝度の平均値を求め、燃焼位置を特定し画像に燃焼位置と適正位置を表示する。(ステップ2-4)
上記処理後の画像を制御装置に送る。(ステップ2-5)
画像処理装置から送られた燃焼位置が表示された画像に基づいてストーカのごみ送り速度を制御する。(ステップ3)。
・適正位置と燃焼位置を比較し、(ステップ3-1)
・適正位置と燃焼位置が同じ位置になるようにストーカのごみ送り速度の増減割合を決定し、(ステップ3-2)
・増減割合に応じてストーカのごみ送り速度を制御する。(ステップ3-3)
【0018】
このようにストーカのごみ送り速度の制御は、例えば図4の画像処理を施された画像において燃焼位置がグリッド線21aに位置するときは、適正位置28に対して2マス分(ごみ送り速度がe%早い)ごみ送り速度が速いため、ストーカのごみ送り速度をe%遅くする。
そして、燃焼位置がグリッド線21cに位置するときは、適正位置28と燃焼位置29が一致していてごみ送り速度が適切であるためストーカを同じ送り速度で維持する。
また、燃焼位置がグリッド線21dに位置するときは、適正位置28に対して1マス分(送り速度がc%遅い)ごみ送り速度が遅いため、ストーカの送り速度をc%速くし、グリッド線21eに位置するときは、ごみ送り速度をb%、グリッド線21fに位置するときは、ごみ送り速度をa%速くする。
【0019】
次のごみが投入され、該ごみのごみ質や重さ等が変化する場合、前記ごみの燃焼位置も変化するため、ごみを投入する都度燃焼位置を特定しそれに応じて、ストーカのごみ送り速度を増減させる制御をする。
以上のステップを繰り返し行い炉内で燃焼しているごみの燃焼位置に応じてごみ送り速度を制御する。
【符号の説明】
【0020】
1 ごみ焼却炉
2 ごみ供給ホッパ
3 ごみ燃焼室
4 ごみ
5 プッシャー
6 ストーカ
7 灰シュート
8 空気送風機
9 燃焼位置
10 撮影手段
11 画像処理装置
12 制御装置
20 画像
21 グリッド線
22~26 マス
28 適正位置
29 燃焼位置