(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】光学フィルム製造用のドープ溶液およびこれを用いた光学フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221111BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20221111BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20221111BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20221111BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20221111BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F2/18
C08F220/18
C08L33/06
C09K23/52
(21)【出願番号】P 2019537728
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 KR2017010525
(87)【国際公開番号】W WO2018062784
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】10-2016-0123912
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0052336
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519104558
【氏名又は名称】エルジー エムエムエー コープ.
【氏名又は名称原語表記】LG MMA CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】パク ソン イル
(72)【発明者】
【氏名】チョン ソン チャン
(72)【発明者】
【氏名】パク サン ソク
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ナ サン オプ
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】加々美 一恵
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/098676(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/147115(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111519(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/032304(WO,A1)
【文献】特開2003-2907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/30
B01F17/00-17/56
C08F2/00-2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体として重量平均分子量が400,000~1,500,000g/molであり、ガラス転移温度が110~150℃であるアクリル系重合体のみが有機溶媒に溶解されているドープ溶液であって、
前記アクリル系重合体は、ii)少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)とアルキルアクリレート系単量体(B)との共重合体、もしくは、iii)少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)とスチレン系単量体(C)とマレイミド系単量体(D)との共重合体であり、前記アクリル系重合体は、下記化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物およびアルキル(メタ)アクリレートを重合した懸濁重合分散剤の存在下で懸濁重合された共重合体であり、
前記ドープ溶液をソルベントキャスト法で偏光板保護フィルムとして製造する場合、フィルムの厚さが20~80μmの範囲で、透湿度が200g/m
2・24hr以下である、偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液
:
【化1】
前記化学式1中、R
1は水素またはC
1~C
3のアルキルであり、nは0~3から選択される整数であり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択されるいずれか一つである。
【化2】
前記化学式2中、R
2は水素またはC
1~C
3のアルキルであり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択されるいずれか一つである。
【請求項2】
前記アクリル系重合体の固形分含有量が10~40重量%であり、
前記ドープ溶液の粘度が、25℃で20,000cps以上である、請求項1に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項3】
前記アルキルメタクリレート系単量体(A)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物である、請求項1に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項4】
前記アルキルアクリレート系単量体(B)は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n‐ブチルアクリレート、t‐ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、およびイソボルニルアクリレートから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であり、
前記スチレン系単量体(C)は、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐ブロモスチレン、p‐メチルスチレンおよびp‐クロロスチレンから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であり、
前記マレイミド系単量体(D)は、フェニルマレイミド、ニトロフェニルマレイミド、モノクロロフェニルマレイミド、ジクロロフェニルマレイミド、モノメチルフェニルマレイミド、ジメチルフェニルマレイミド、エチルメチルフェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミドから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物である、請求項1に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項5】
前記有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素の単独、またはハロゲン化炭化水素と、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合溶媒である、請求項1に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項6】
前記有機溶媒は、メチレンクロライドとアルコールの混合溶媒である、請求項5に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項7】
前記ドープ溶液は、ポリカーボネートをさらに含む、請求項1に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項8】
前記ドープ溶液は、コア層または中間層にアクリルゴム層を含む2層または3層構造の耐衝撃パウダーをさらに含む、請求項1に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項9】
前記アクリルゴム層は、芳香族ビニル系単量体と、炭素数1~15個のアルキル(メタ)アクリレート単量体との重合体である、請求項8に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項10】
前記耐衝撃パウダーは、平均粒径が100~400nmである、請求項8に記載の偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のドープ溶液を用いてソルベントキャスト法で製膜することを特徴とする、偏光板保護フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記偏光板保護フィルムは、異物の個数が0.3個/1m以下である、請求項11に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
【請求項13】
偏光子と、
前記偏光子の少なくとも一面に配置される
重合体として重量平均分子量が400,000~1,500,000g/molであり、ガラス転移温度が110~150℃であるアクリル系重合体を含む偏光板保護フィルムとを含む、偏光板
であって、
前記偏光板保護フィルムは、フィルムの厚さが20~80μmの範囲で、透湿度が200g/m
2
・24hr以下であり、
前記アクリル系重合体は、ii)少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)とアルキルアクリレート系単量体(B)との共重合体、もしくは、iii)少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)とスチレン系単量体(C)とマレイミド系単量体(D)との共重合体であり、前記アクリル系重合体は、下記化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物およびアルキル(メタ)アクリレートを重合した懸濁重合分散剤の存在下で懸濁重合された共重合体である、偏光板:
【化1】
前記化学式1中、R
1
は水素またはC
1
~C
3
のアルキルであり、nは0~3から選択される整数であり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択されるいずれか一つである。
【化2】
前記化学式2中、R
2
は水素またはC
1
~C
3
のアルキルであり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択されるいずれか一つである。
【請求項14】
請求項13に記載の偏光板を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱、高分子量のアクリル系重合体を用いて、溶液キャスト法で偏光板保護フィルムを製造するためのドープ溶液およびこれを用いた偏光板保護フィルムに関する。
【0002】
本発明によるドープ溶液を用いた偏光板保護フィルムは、光学物性に優れ、引張強度が高く、低い吸湿性と高い耐熱性を有することを特徴とし、これによる寸法安定性に優れ、ポリビニルアルコールフィルムとの接着性に優れるという効果がある。
【背景技術】
【0003】
近年、光学技術の発展に伴い、ディスプレイ産業の全般において液晶ディスプレイの薄膜化、軽量化および大型化が求められるにつれて、その広視野角化、高コントラスト化、画面表示の均一化および視野角による画像変化の抑制などの技術が、特に重要な問題として浮上している。
【0004】
かかるディスプレイ装置には、偏光フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、導光板、プラスチック基板といった様々なポリマーフィルムが使用されており、かかるディスプレイ用のポリマー素材は、その要求特性が一層高度化している傾向にある。
【0005】
セルロースエステルフィルムは、高い強度および難燃性を有することから、写真用や様々な光学材料として使用されてきた。特に、セルロースアシレートフィルムは、高い光学透明性および光学等方性を有することから、液晶表示装置用の光学透明フィルムとして広く用いられてきた。例えば、液晶表示装置を構成する光学フィルムの一つである偏光板では、偏光子であるポリビニルアルコール(PVA)に直接接合可能なセルロースアシレートフィルム、特に、トリアセチルセルロースフィルムが、偏光子の両面に積層される保護フィルムである偏光板保護フィルムとして主に用いられている。また、これを適切な条件で延伸し、光学補償フィルムとして使用することができる。
【0006】
しかし、かかるセルロースエステルフィルムを薄膜型に成形する場合、一般的に透湿性が脆くて膨張による貯蔵安定性に問題が生じており、特に、高温多湿な環境での耐久性の低下によって液晶表示装置の機能の低下に大きな影響を及ぼすことになる。また、薄膜化によるフィルムの強度と表面硬度の低下の問題もある。
【0007】
前記のような問題点を解消するために、アクリル系重合体を用いて光学フィルムを製造するための研究が行われている。本出願人が出願した韓国公開特許第10‐2015‐0039089号には、アクリル系共重合体を含む光学フィルム用の樹脂組成物およびこれを用いて製造された光学フィルムについて記載されている。前記特許は、溶融押出法で光学フィルムを製造するための光学フィルム用樹脂組成物に関するものであるが、前記組成物を溶液キャスト法で製造する場合、フィルムの製膜が困難であり、ピールオフ(peel‐off)がうまく行われず、不良が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10‐2015‐0039089号(2015.04.09)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来、セルロースアシレート樹脂を使用したことに対し、耐熱性に優れ、高温高湿の条件下で透湿度が低い偏光板保護フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、アクリル系樹脂を使用してソルベントキャスト法で偏光板保護フィルムを製造するためのドープ溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねたところ、アクリル系重合体を用いて、ソルベントキャスト法でフィルムを製造するためには、アクリル系重合体の重量平均分子量とガラス転移温度が特定の範囲で可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
より具体的には、本発明は、重量平均分子量が400,000g/mol以上であり、ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系重合体および有機溶媒を含む偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液に関する。
【0013】
また、本発明は、前記ドープ溶液を用いて、ソルベントキャスト法で製造した重量平均分子量が400,000g/mol以上、ガラス転移温度110℃以上である偏光板保護フィルムに関する。
【0014】
また、本発明は、偏光子および前記偏光子の少なくとも一面に配置される前記偏光板保護フィルムを含む偏光板に関する。
【0015】
また、本発明は、a)重量平均分子量が400,000g/mol以上であり、ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系重合体および有機溶媒を含むドープ溶液を、ダイを介して支持体上に塗布するステップと、
b)前記有機溶媒を蒸発させ、アクリル系フィルムを製造するステップと、
c)前記支持体からアクリル系フィルムを剥離するステップとを含む偏光板保護フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるアクリル系重合体を含むドープ溶液は、ソルベントキャスト法により、光学フィルム、より具体的には、偏光板保護フィルムを製造することができる。
【0017】
また、本発明によるドープ溶液を使用して製造された偏光板保護フィルムは、透湿度が低く、耐熱性が高く、平滑度に優れ、異物の個数が少ないという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を含む具体例または実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な形態に実現されてもよい。
【0019】
また、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明において説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0020】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図することができる。
【0021】
本発明の一様態は、重量平均分子量が400,000g/mol以上であり、ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系重合体および有機溶媒を含む偏光板保護フィルム製造用のドープ溶液である。
【0022】
本発明の一様態において、前記アクリル系重合体の固形分含有量が10~40重量%であり、前記ドープ溶液の粘度が25℃で20,000cps以上であってもよい。
【0023】
本発明の一様態において、前記アクリル系重合体は、少なくとも二つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)の共重合体、または少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)と、アルキルアクリレート系単量体(B)、スチレン系単量体(C)およびマレイミド系単量体(D)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の単量体との共重合体であってもよい。
【0024】
本発明の一様態において、前記共重合体は、懸濁重合分散剤の存在下で懸濁重合されたものであり、前記懸濁重合分散剤は、下記化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物およびアルキル(メタ)アクリレートを重合したものであってもよい。
【0025】
【0026】
前記化学式1中、R1は水素またはC1~C3のアルキルであり、nは0~3から選択される整数であり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択されるいずれか一つである。
【0027】
【0028】
前記化学式2中、R2は水素またはC1~C3のアルキルであり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択されるいずれか一つである。
【0029】
本発明の一様態において、前記アルキルメタクリレート系単量体(A)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0030】
本発明の一様態において、前記アルキルアクリレート系単量体(B)は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n‐ブチルアクリレート、t‐ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよびヒドロキシエチルアクリレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0031】
前記スチレン系単量体(C)は、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐ブロモスチレン、p‐メチルスチレンおよびp‐クロロスチレンなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0032】
前記マレイミド系単量体(D)は、フェニルマレイミド、ニトロフェニルマレイミド、モノクロロフェニルマレイミド、ジクロロフェニルマレイミド、モノメチルフェニルマレイミド、ジメチルフェニルマレイミド、エチルメチルフェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミドなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0033】
本発明の一様態において、前記有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素の単独、またはハロゲン化炭化水素と、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0034】
本発明の一様態において、前記有機溶媒は、メチレンクロライドとアルコールの混合溶媒であってもよい。
【0035】
本発明の一様態において、前記ドープ溶液は、ポリカーボネートをさらに含んもよい。
【0036】
本発明の一様態において、前記ドープ溶液は、コア層または中間層にアクリルゴム層を含む2層または3層構造の耐衝撃パウダーをさらに含んでもよい。
【0037】
本発明の一様態において、前記アクリルゴム層は、芳香族ビニル系単量体と炭素数1~15個のアルキル(メタ)アクリレート単量体の重合体であってもよい。
【0038】
本発明の一様態において、前記耐衝撃パウダーは、平均粒径が100~400nmであってもよい。
【0039】
本発明の一様態において、前記耐衝撃パウダーは、ドープ溶液内の固形分含有量が1~40重量%含まれてもよい。
【0040】
本発明は、前記ドープ溶液を用いて、ソルベントキャスト法で製造し、重量平均分子量が400,000g/mol以上であり、ガラス転移温度が110℃以上である偏光板保護フィルムも本発明の範囲に含まれる。
【0041】
本発明の一様態において、前記偏光板保護フィルムは、平滑度が1.0以下であり、異物の個数が0.3個/1M以下であってもよい。
【0042】
本発明の一様態において、前記偏光板保護フィルムは、フィルムの厚さが20~80μmの範囲で、透湿度が200g/m2・24hr以下であってもよい。
【0043】
本発明の一様態において、前記偏光板保護フィルムは、偏光板用保護フィルムであってもよい。
【0044】
また、本発明は、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一面に配置される前記偏光板保護フィルム含む偏光板も本発明の範囲に含まれる。
【0045】
また、本発明は、前記偏光板を含む画像表示装置も本発明の範囲に含まれる。
【0046】
また、本発明は、a)重量平均分子量が400,000g/mol以上であり、ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系重合体および有機溶媒を含むドープ溶液を、ダイを介して支持体上に塗布するステップと、
b)前記有機溶媒を蒸発させ、アクリル系フィルムを製造するステップと、
c)前記支持体からアクリル系フィルムを剥離するステップとを含む偏光板保護フィルムの製造方法に関する。
【0047】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の一様態において、前記c)ステップの後、一軸延伸または二軸延伸するステップおよび乾燥ステップをさらに含んでもよい。
【0048】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の一様態において、前記有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素の単独、またはハロゲン化炭化水素と、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0049】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の一様態において、前記ドープ溶液は、アクリル系重合体の固形分含有量が10~40重量%であり、ドープ溶液の粘度が25℃で20,000cps以上であってもよい。
【0050】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の一様態において、前記a)ステップにおいて、ドープ溶液の塗布時に支持体の温度は-50~100℃であり、前記b)ステップにおいて、アクリル系光学フィルム内の残留溶媒量が0~40重量%になる範囲に有機溶媒を蒸発させてもよい。
【0051】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の一様態において、前記アクリル系光学フィルムの厚さが20~140μmであり、フィルムの厚さが20~80μmの範囲で、透湿度が200g/m2・24hr以下であってもよい。
【0052】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の一様態において、前記ドープ溶液は、ポリカーボネートをさらに含んでもよい。
【0053】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の一様態において、前記ドープ溶液は、コア層または中間層にアクリルゴム層を含む2層または3層構造の耐衝撃パウダーをさらに含んでもよい。
【0054】
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の一様態において、前記耐衝撃パウダーを含むドープ溶液を支持体上に塗布する際、ドープ溶液の粘度変化率が20%以下の範囲内で行ってもよい。
【0055】
以下、本発明の各構成についてより具体的に説明する。
【0056】
本発明による偏光板保護フィルムは、ドープ溶液を使用するソルベントキャスト(Solvent cast)法によって製造することが好ましい。ソルベントキャスト法は、樹脂を有機溶媒の中に溶解したドープ溶液を支持体上にキャストし、有機溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。必要に応じて、このように製造されたフィルムを延伸機で延伸し、最終製品であるフィルムを製造することができる。前記ソルベントキャスト法でフィルムを製造する際、ドープ溶液の粘度が低すぎるか高すぎる場合、支持体上にドープ溶液をキャストすることが困難であるため、フィルムの製造が不可能になることがあり、また、ドープ溶液に使用された有機溶媒の蒸発時間、蒸発温度などの条件が、ドープ溶液に使用された樹脂の物性と適合しない場合、有機溶媒が十分に乾燥されず、支持体からフィルムが剥離されないこともある。
【0057】
したがって、本発明者らは、アクリル系重合体を使用してソルベントキャスト法でフィルムを製造するために鋭意研究を重ねたところ、アクリル系重合体の重量平均分子量およびガラス転移温度が特定の範囲を満たす重合体を使用し、ドープ溶液の製造時に粘度が20,000cps以上になるように固形分含有量を調節することで、ピールオフ性に優れ、フィルム製膜が容易で、ソルベントキャスト法でフィルムを製造することができることを見出した。
【0058】
具体的には、本発明者らは、重量平均分子量が400,000g/mol以上であり、具体的には400,000~1,500,000g/mol、さらに具体的には600,000~1,200,000g/molであり、ガラス転移温度が110℃以上、さらに具体的には110~150℃であるアクリル系重合体を使用することで、ソルベントキャスト法でフィルムを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0059】
重量平均分子量が前記範囲を満たす範囲でドープ溶液を製造すると、ソルベントキャスト法に適用するのに適当な粘度を有し、フィルムの製造後、支持体からフィルムを剥離し易いため好ましい。また、ソルベントキャスト法でフィルムを製造する際、有機溶媒を蒸発させたときに支持体からフィルムを剥離することができるが、有機溶媒を蒸発させる工程で、アクリル系樹脂の物性が変化することを防止し、且つ短時間で有機溶媒を乾燥し薄膜のフィルムを製造するためには、アクリル系重合体のガラス転移温度が110℃以上であるという物性が求められる。ガラス転移温度が110℃未満の場合、耐熱性が十分でなく、高温高湿条件でフィルムの変形が生じやすく、ガラス転移温度が150℃を超える場合、フィルムの形成が困難で、生産性が低下し得る。
【0060】
前記重量平均分子量とガラス転移温度を満たす範囲で、アクリル系重合体の固形分含有量が10~40重量%になるように有機溶媒と混合する際、25℃で粘度が20,000cps以上、具体的には20,000~60,000cps、さらに具体的には30,000~40,000cpsであるドープ溶液を製造することができる。前記固形分含有量および粘度の範囲で支持体に均一な厚さでキャストが可能であり、支持体にキャスト後、有機溶媒の乾燥すると、比較的高い温度で乾燥が可能であるため、短時間で平滑で剥離が容易な光学フィルムを製造することができ、好ましい。固形分含有量が前記範囲を超えて高い場合には、相対的に溶媒の含有量が減少することになるため、前記粘度を満たすとしてもフィルム支持体にキャストするときに、ドープ溶液の塗布が容易でなく、ノズルの目詰まりなどが発生することがある。また、固形分含有量が前記範囲未満と低い場合には、相対的に溶媒の含有量が多くて有機溶媒の乾燥に多量のエネルギーを要し、平滑な光学フィルムの製造が困難であり得る。
【0061】
本発明の一様態において、前記アクリル系重合体は、少なくとも二つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)の共重合体、または少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)と、アルキルアクリレート系単量体(B)、スチレン系単量体(C)およびマレイミド系単量体(D)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の単量体との共重合体であってもよい。
【0062】
より具体的には、本発明の一様態は、
i)少なくとも二つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)の共重合体
ii)少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)とアルキルアクリレート系単量体(B)の共重合体
iii)少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)とスチレン系単量体(C)およびマレイミド系単量体(D)の共重合体
iv)少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)とアルキルアクリレート系単量体(B)、スチレン系単量体(C)およびマレイミド系単量体(D)の共重合体から選択されてもよい。
【0063】
前記i)~iv)様態は、本発明を具体的に説明するために例示したものであって、これに制限されるものではない。
【0064】
本発明の一様態において、前記アルキルメタクリレート系単量体(A)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0065】
本発明の一様態において、前記アルキルアクリレート系単量体(B)は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n‐ブチルアクリレート、t‐ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよびヒドロキシエチルアクリレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0066】
本発明の一様態において、前記スチレン系単量体(C)は、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐ブロモスチレン、p‐メチルスチレンおよびp‐クロロスチレンなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0067】
本発明の一様態において、前記マレイミド系単量体(D)は、フェニルマレイミド、ニトロフェニルマレイミド、モノクロロフェニルマレイミド、ジクロロフェニルマレイミド、モノメチルフェニルマレイミド、ジメチルフェニルマレイミド、エチルメチルフェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミドなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0068】
本発明の一様態において、前記i)様態は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートなどから選択される二つ以上の単量体を共重合したものであってもよい。さらに具体的には、メチルメタクリレートと、共単量体として、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の単量体を共重合したものであってもよい。さらに具体的には、メチルメタクリレート90~99重量%と前記共単量体1~10重量%を共重合したものであってもよい。さらに具体的には、メチルメタクリレート93~97重量%と前記共単量体3~7重量%を共重合したものであってもよい。前記含有量範囲で、光学特性に優れ、耐熱性に優れたフィルムを製造することができ、機械的な強度に優れたフィルムを製造することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0069】
本発明の一様態において、前記ii)様態は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートなどから選択される少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)と、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n‐ブチルアクリレート、t‐ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよびヒドロキシエチルアクリレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上のアルキルアクリレート系単量体(B)の共重合体であってもよい。より具体的には、前記アルキルメタクリレート系単量体(A)90~99重量%と、前記アルキルアクリレート系単量体(B)1~10重量%を共重合したものであってもよい。前記含有量範囲で、光学特性に優れ、耐熱性に優れたフィルムを製造することができ、機械的な強度に優れたフィルムを製造することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0070】
本発明の一様態において、前記iii)様態は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートなどから選択される少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)と、スチレン系単量体(C)およびマレイミド系単量体(D)の共重合体であってもよい。より具体的には、アルキルメタクリレート系単量体(A)75~98重量%、さらに好ましくは85~95重量%、スチレン系単量体(C)0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%、マレイミド系単量体(D)1~15重量%、さらに好ましくは2~13重量%の共重合体であってもよい。前記含有量範囲で、光学特性に優れ、耐熱性に優れたフィルムを製造することができ、機械的な強度に優れたフィルムを製造することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。また、スチレン系単量体とマレイミド系単量体を、前記範囲で混合して使用することで、各単量体間の重合効率を向上させ、製造された共重合体内に含まれた残留単量体を低減できるという効果を期待することができ、耐熱性を向上させ、透湿度が低いアクリル系重合体を得ることができる。
【0071】
本発明の一様態において、前記iv)様態は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、t‐ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートなどから選択される少なくとも一つ以上のアルキルメタクリレート系単量体(A)と、アルキルアクリレート系単量体(B)、スチレン系単量体(C)およびマレイミド系単量体(D)の共重合体であってもよい。より具体的には、アルキルメタクリレート系単量体(A)75~97重量%、さらに好ましくは85~95重量%、アルキルアクリレート系単量体(B)1~10重量%、さらに好ましくは1~5重量%、スチレン系単量体(C)0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%、マレイミド系単量体(D)1~15重量%、さらに好ましくは2~13重量%の共重合体であってもよい。前記含有量範囲で、光学特性に優れ、耐熱性と機械的な強度に優れたフィルムを製造することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。また、スチレン系単量体とマレイミド系単量体を前記範囲で混合して使用することで、各単量体間の重合効率を向上させ、製造された共重合体内に含まれた残留単量体を低減できるという効果を期待することができ、耐熱性を向上させ、透湿度が低いアクリル系重合体を得ることができる。
【0072】
本明細書において、重合体は、単独重合体または共重合体を含み、共重合体とは、本明細書において、単量体として言及された要素が重合されて共重合体樹脂内で繰り返し単位として含まれるものを意味し、本明細書において、前記共重合体は、ブロック共重合体またはランダム共重合体であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0073】
本発明の一様態において、前記アクリル系重合体は、乳化重合または懸濁重合により製造されるものであってもよいが、より好ましくは、下記化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物およびアルキル(メタ)アクリレートを重合した懸濁重合分散剤の存在下で懸濁重合したものであってもよい。
【0074】
【0075】
前記化学式1中、R1は水素またはC1~C3のアルキルであり、nは0~3から選択される整数であり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択されるいずれか一つである。
【0076】
【0077】
前記化学式2中、R2は水素またはC1~C3のアルキルであり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択されるいずれか一つである。
【0078】
前記懸濁重合分散剤の存在下で懸濁重合を行うことで、透明性にさらに優れることで光学的な特性に優れ、高分子量であり、且つ粒子の凝集現象が少ないアクリル系重合体を製造することができるため、ソルベントキャスト法で光学物性に優れたフィルムの製造が可能となる。また、実施例に記載してはいないが、前記懸濁重合分散剤を使用して製造されたアクリル重合体でドープ溶液を製造する場合、ドープ溶液の経時変化がさらに減少するという優れた効果を示した。
【0079】
さらに具体的には、化学式1の単量体60~70重量%、化学式2の単量体5~15重量%およびアルキル(メタ)アクリレート系単量体15~35重量%からなる単量体混合物を開始剤の存在下で水溶液の中で均一に重合してもよい。前記開始剤としては、例えば、2,2‐アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2´‐アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2,2´‐アゾビス(4‐メトキシ‐2,4‐ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2´‐アゾビス(2‐メチルプロピオネート)、2,2´‐アゾビス[2‐(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]ジヒドロクロライドおよび2,2´‐アゾビス[N‐(2‐カルボキシエチル)‐2‐メチルプロピオンアミジン]ハイドレートなどのアゾ系開始剤を使用することができ、これに制限されるものではない。前記懸濁重合分散剤を使用することで、分散性がさらに向上し、未反応単量体の含有量がさらに減少し、反応が安定し、取得される共重合体の粒径が均一であるという効果があり、偏光板保護フィルムの製造時に、フィルムの製膜安定性をさらに向上させることができる。
【0080】
前記懸濁重合分散剤の重量平均分子量は、100,000~5,000,000g/molであってもよく、さらに具体的には、1,000,000~3,000,000g/molであってもよい。前記範囲で、均一な形態および粒度分布を有する重合体を製造することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0081】
前記化学式1で表される化合物は、3‐スルホプロピルアクリレートカリウム塩、3‐スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2‐スルホエチルメタクリレートナトリウム塩および2‐スルホエチルアクリレートナトリウム塩から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0082】
前記懸濁重合分散剤の固形分含有量は、1~10重量%であってもよく、さらに好ましくは3~6重量%であってもよい。
【0083】
本発明の共重合体の重合の際、全単量体100重量部に対して、前記固形分含有量が1~10重量%である懸濁重合分散剤を0.001~1.0重量部、さらに好ましくは0.005~0.6重量部使用してもよい。前記範囲で、良好な共重合体粒子を得ることができ、重合安定性に優れ、洗浄および乾燥工程で共重合体粒子の流失が少なくて作業性および経済性が良好になる。
【0084】
また、懸濁重合開始剤および連鎖移動剤の存在下で重合をしてもよい。より具体的には、前記開始剤は、有機過酸化物開始剤であれば、制限なく使用可能であり、具体的には、例えば、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート(t‐butylperoxy‐2‐ethylhexanoate)、t‐アミルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート(t‐amylperoxy‐2‐ethylhexanoate)、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン(1,1‐bis(t‐butylperoxy)‐3,3,5‐trimethyl cyclohexane)、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1,1‐bis(t‐butylperoxy)cyclohexane)、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐2‐メチルシクロヘキサン(1,1‐bis(t‐butylperoxy)‐2‐methyl cyclohexane)、2,2‐ビス(4,4‐ジ‐t‐ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(2,2‐bis(4,4‐di‐t‐butylperoxy cyclohexyl)propane)、1,1‐ジ‐(t‐アミルパーオキシ)シクロヘキサン(1,1‐di‐(t‐amylperoxy)cyclohexane)およびこれらの混合物などが挙げられるが、これに限定されるものではない。前記開始剤は、単量体の全含有量100重量部に対して、0.05~0.5重量部、さらに好ましくは0.1~0.3重量部含まれてもよい。前記範囲で、所望の分子量を得ることができ、反応器の反応熱の制御が容易であるため好ましく、これに制限されるものではない。
【0085】
前記連鎖移動剤は、当該技術分野において自明に公知となった化合物であれば、制限なく使用可能であり、具体的には、例えば、1個のチオール官能基を有するC1~C12のアルキルメルカプタンまたは2個以上のチオール官能基を有するポリチオールメルカプタンを使用することができる。具体例としては、イソプロピルメルカプタン、ノルマルブチルメルカプタン、ターシャリー‐ブチルメルカプタン、ターシャリー‐ドデシルメルカプタン、ノルマル‐アリールメルカプタン、ノルマル‐オクチルメルカプタン、ノルマル‐ドデシルメルカプタンなどを使用することができる。その含有量は、全単量体の重量100重量部に対して、0.01~0.2重量部使用してもよく、前記範囲内で、重量平均分子量が400,000g/mol以上のアクリル系重合体を製造することができるため好ましい。
【0086】
また、必要に応じて、分散補助剤をさらに含んでもよく、当該技術分野において自明に公知となった金属塩またはアンモニウム塩から選択される分散補助剤であれば、制限なく使用可能である。具体例としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどを使用することができる。前記分散補助剤の含有量は、制限されるものではないが、前記分散剤:分散補助剤の含有量が1:5~5:1重量比になるように使用されてもよい。前記範囲で、高分子粒子の平均粒径および粒度分布を制御することができるため好ましい。
【0087】
さらに、前記アクリル系重合体の製造時に、必要に応じて、当該技術分野において一般的に使用される様々な添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、熱安定剤などをさらに含んでもよい。この際、前記添加剤は、アクリル系重合体の物性を害しない範囲内で、適切な含有量で含まれてもよく、例えば、単量体の全含有量100重量部に対して、0.1~5重量部程度含まれてもよい。
【0088】
本発明のドープ溶液は、前記製造されたアクリル系重合体と有機溶媒を含む。
【0089】
前記アクリル系重合体の固形分含有量は、10~40重量%、さらに好ましくは20~35重量%であってもよい。前記固形分含有量範囲で、連続してフィルムを製造するのに適切な粘度を有し、有機溶媒に完璧に溶解することができ、5~100μm、好ましくは厚さ20~80μmのフィルムを製造するのに適するため好ましい。前記固形分含有量範囲で、ドープ溶液の粘度が25℃で20,000cps未満の場合には、流動性が高くてフィルムの製膜が困難である。前記固形分含有量範囲で、ドープ溶液の粘度が、25℃で20,000cps以上、具体的には20,000~60,000cps、さらに好ましくは30,000~40,000cpsである範囲で、重量平均分子量が400,000g/mol以上であり、ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系重合体を使用したドープ溶液を用いて、連続してフィルムを製膜するのに適する。
【0090】
前記有機溶媒は、アクリル系重合体を溶解することができるものであれば制限されないが、好ましくは、ハロゲン化炭化水素を使用することができ、ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素、メチレンクロライドおよびクロロホルムなどがあり、このうち、メチレンクロライドを使用することが最も好ましい。また、必要に応じて、ハロゲン化炭化水素以外の有機溶媒を混合して使用してもよい。ハロゲン化炭化水素以外の有機溶媒としては、エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールなどを含む。エステルとしては、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートなどが使用可能であり、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが使用可能であり、エーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4‐ジオキサン、1,3‐ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、ペネトールなどが使用可能であり、アルコールとしては、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、t‐ブタノール、1‐ペンタノール、2‐メチル‐2‐ブタノール、シクロヘキサノール、2‐フルオロエタノール、2,2,2‐トリフルオロエタノール、2,2,3,3‐テトラフルオロ‐1‐プロパノールなどを使用する。
【0091】
より好ましくは、メチレンクロライドを主溶媒として使用し、メタノール、エタノールなどのアルコールを副溶媒として使用することができる。具体的には、メチレンクロライドとアルコールを80~99:20~1の重量比、さらに好ましくは85~90:15~10の重量比で混合して使用することができる。
【0092】
また、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外線吸収剤、光学異方性コントロール剤などの添加剤を添加することができる。かかる添加剤の具体的な種類は、当該分野において通常使用するものであれば制限なく使用可能であり、その含有量は、フィルムの物性を低下させない範囲で使用することが好ましい。添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて決定する。ドープ調剤の最後に、添加剤を添加する工程を実施してもよい。
【0093】
前記可塑剤は、フィルムの機械的強度を向上させるために使用されるものであり、可塑剤を使用する場合、フィルムの乾燥工程時間を短縮することができる。可塑剤としては、通常使用されるものであれば制限なく使用可能であり、例えば、リン酸エステル、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルなどから選択されるカルボン酸エステルなどがある。リン酸エステルの例としては、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェートおよびトリクレジルホスフェート(TCP)などが挙げられる。フタル酸エステルの例としては、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)などが挙げられる。クエン酸エステルの例としては、o‐アセチルトリエチルシトレート(OACTE)およびo‐アセチルトリブチルシトレート(OACTB)などが挙げられる。他のカルボン酸エステルの例としては、ブチルオレート、メチルアセチルリジンオレート、ジブチルセバケートおよび各種のトリメリット酸エステルが挙げられる。好ましくは、フタル酸エステル可塑剤を使用した方が好ましい。可塑剤の含有量は、アクリル系重合体100重量部に対して、2~20重量部、さらに好ましくは5~15重量部を使用することができる。
【0094】
前記紫外線防止剤は、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物などを使用することができる。紫外線防止剤の量は、アクリル系重合体100重量部に対して、0.1~3重量部、さらに好ましくは0.5~2重量部を使用することができる。
【0095】
前記劣化防止剤としては、例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル抑制剤、金属不活性化剤、脱酸素剤、ヒンダードアミンなどの光安定化剤などが使用可能である。特に好ましい劣化抑制剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびトリベンジルアミン(TBA)が挙げられる。劣化抑制剤の量は、アクリル系重合体100重量部に対して、0.01~5重量部、さらに好ましくは0.1~1重量部を使用することができる。
【0096】
前記微粒子は、フィルムのカール抑制、搬送性、ロール形態での接着防止または耐傷性を良好に維持するために添加されるものであり、無機化合物、有機化合物から選択されるいずれかを使用してもよい。例えば、無機化合物としては、ケイ素を含有する化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムなどが好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムなどが使用可能である。前記微粒子は、平均1次粒径が80nm以下であり、好ましくは5~80nmであり、より好ましくは5~60nm、特に好ましくは8~50nmであってもよい。
【0097】
また、必要に応じて、波長分散調整剤などをさらに添加してもよい。かかる添加剤は、通常、当該分野において使用されるものであれば制限なく使用可能である。
【0098】
また、必要に応じて、リタデーション(retardation)をさらに高めるか、さらに低めるために任意のリタデーション添加剤をさらに含んでもよい。前記リタデーション添加剤は、通常、該当分野においてリタデーションを調節するために使用されるものであれば、制限なく使用可能である。通常、VAモードの液晶表示装置に適用されるための光学フィルムは、リタデーションを上昇させる添加剤が使用可能であり、IPSモードの液晶表示装置に適用されるための光学フィルムは、リタデーションを減少させる添加剤が使用可能である。前記リタデーション添加剤は、アクリル系重合体100重量部に対して、1~15重量部、さらに好ましくは3~10重量部を使用することができ、前記範囲で、ブリーディング(bleeding)現象が発生しないことができ、高品質の画像を形成することができる。
【0099】
また、本発明のドープ溶液は、必要に応じて、ポリカーボネートをさらに含んでもよい。前記ポリカーボネートは、位相差の調節のために添加されるものであり、アクリル系重合体100重量部に対して、0.1~10重量部、さらに好ましくは1~5重量部を含んでもよい。
【0100】
また、本発明のドープ溶液は、必要に応じて、耐衝撃パウダーをさらに含んでもよい。前記耐衝撃パウダーは、コア層または中間層にアクリルゴム層を含む2層または3層構造のアクリル系ラテックス粉末を意味する。前記耐衝撃パウダーをさらに含むことで、フィルムの耐衝撃性だけでなく、フィルムの製造時にピールオフ性(peel‐off)が向上し、製膜作業性および工程性が向上することを確認した。前記耐衝撃パウダーは、平均粒径が100~400nmであってもよく、前記範囲で厚さ20~80μmのフィルムの製造時に平滑性に影響が少なく、フィルムの光学物性に優れ、耐衝撃性の向上を期待することができる。また、前記耐衝撃パウダーは、ドープ溶液内に1~50重量%含まれてもよく、これに制限されるものではないが、前記範囲で、目的とする耐衝撃性をさらに向上させ、且つフィルムの物性低下を防止することができ、フィルムの製膜時にかかる時間の間にドープ溶液の粘度変化率が20%以下の物性を満たすことができるため好ましい。
【0101】
また、前記耐衝撃パウダーをさらに含む場合、耐衝撃パウダーが膨潤し、ドープ溶液の粘度が変更され得るが、ドープ溶液の製造後、ソルベントキャスト法でフィルムを製造する工程時間内では、膨潤する前にフィルムの製造が可能である。さらに好ましくは、前記耐衝撃パウダーを含む場合、ドープ溶液の粘度変化率が20%以下、具体的には0~20%、さらに好ましくは0~10%である範囲でフィルムを製膜することが、フィルター目詰まりがなく、製膜性に優れるため好ましい。前記粘度変化は、下記式1によって計算され得る。
【0102】
[式1]
粘度変化率=(最後の粘度-初期の粘度)/初期の粘度×100
【0103】
前記式1において、初期の粘度は、ドープ溶液の製造後、初期に測定された粘度を意味し、前記最後の粘度は、ドープ溶液の製造後、保管してから最後に測定された粘度を意味する。
【0104】
より具体的には、前記耐衝撃パウダーの第1様態は、コア層とシェル層からなる2層構造の耐衝撃パウダーであり、前記コア層がアクリルゴムからなってもよい。
【0105】
前記耐衝撃パウダーの第2様態は、シード層、コア層およびシェル層からなる3層構造の耐衝撃パウダーであり、前記コア層または中間層がアクリルゴムからなってもよい。
【0106】
前記第1様態および第2様態は、本発明の耐衝撃パウダーについて説明するために例示したものであって、これに限定されるものではない。
【0107】
本発明の一様態による耐衝撃パウダーは、アクリルゴムからなる層を含むことで、フィルムの引張強度が向上することができる。前記アクリルゴム層は、制限されるものではないが、耐衝撃パウダーの全重量に対して、40~80重量%、より好ましくは50~70重量%からなることが、前記物性を満たすことができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0108】
前記耐衝撃パウダーは、乳化重合によって製造されてもよい。より具体的には、前記3層構造の耐衝撃パウダーは、イオン交換水にアクリル系単量体、乳化剤、グラフト剤および開始剤を添加し、ガラス転移温度が20℃以上のシード粒子を製造する第1段階重合と、前記第1段階重合による重合体にアクリル系単量体、共単量体、架橋剤、乳化剤、開始剤およびグラフト剤を添加し、前記シード粒子にガラス転移温度が0℃以下のゴム状のコアをグラフトさせる第2段階重合と、前記第2段階重合による重合体にアクリル系単量体、開始剤を添加し、前記コアにガラス転移温度が20℃以上のガラス状のシェルをグラフトさせて耐衝撃パウダーを製造する第3段階重合とを含んで製造されてもよい。
【0109】
前記第1段階重合の時に窒素気流下で反応器内のイオン交換水の温度が70~90℃に逹すると、アクリル系単量体、乳化剤、グラフト剤および開始剤を添加し、ガラス状のシード粒子を取得する。前記第1段階重合で使用されるアクリル系単量体は、耐衝撃パウダーの製造時に使用される全単量体の重量に対して1~40重量%で使用することが好ましい。
【0110】
前記第2段階重合は、第1段階重合による重合体にゴム相を形成することができるアクリル系単量体と屈折率を調節するためのスチレンまたはハロゲンや炭素数1~20個のアルキルまたはアリール基で置換されたスチレン誘導体を共単量体として少量使用して重合してもよい。前記シード粒子にゴム状のコアをグラフトさせるためのアクリル系単量体と共単量体の含有量は、耐衝撃パウダーの製造時に使用される全単量体の重量に対して、40~80重量%、より好ましくは50~70重量%で使用することが、耐衝撃性に優れた物性を発現するため好ましいが、これに制限されるものではない。この際、アクリル系単量体と共単量体は、4~9:1の重量比で混合して使用してもよい。
【0111】
前記3段階重合は、前記コアにガラス状のシェルをグラフトさせるためのものであり、この際、使用されるアクリル系単量体の含有量は、耐衝撃パウダーの製造時に使用される全単量体の重量に対して10~40重量%で使用することが好ましい。また、前記最終ガラス状のシェルをグラフトさせた耐衝撃パウダーの粒径も均一であることが好ましい。
【0112】
前記耐衝撃パウダーの製造時に使用されるアクリル系単量体としては、芳香族ビニル系単量体、炭素数1~15個のアルキル(メタ)アクリレート単量体および炭素数1~15個の(メタ)アクリル酸単量体から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を好ましく使用することができる。具体例としては、芳香族ビニル系単量体としては、スチレンが使用可能であり、炭素数1~15個のアルキル(メタ)アクリレート単量体としては、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびブチルメタクリレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用可能であり、これに限定されるものではない。
【0113】
本発明の一様態において、前記アクリルゴムは、前記アクリル系単量体のうち芳香族ビニル系単量体と炭素数1~15個のアルキル(メタ)アクリレート単量体の重合体であってもよく、さらに具体的には、例えは、ブチルアクリレートとスチレンの重合体であってもよい。
【0114】
前記乳化剤としては、炭素数4~30個のアルカリ性アルキルリン酸塩およびナトリウムドデシルサルフェートおよびナトリウムドデシルベンゼンサルフェトなどのアルキルサルフェト塩などのアニオン系乳化剤が使用可能であるがこれに限定されるものではなく、これらの使用量は、耐衝撃パウダーの製造時に使用される全単量体100重量部に対して0.02~4重量部を使用することが好ましい。
【0115】
前記架橋剤としては、1,2‐エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3‐プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5‐ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用可能であるが、これに限定されるものではなく、これらの使用量は、耐衝撃パウダーの製造時に使用される全単量体100重量部に対して0.1~10重量部を使用してもよい。
【0116】
前記グラフト剤としては、アリル(メタ)アクリレートまたはジアリルマレートなど、反応性が互いに異なる二重結合を有する1種以上の単量体などが使用可能であるが、これに限定されるものではなく、これらの使用量は、耐衝撃パウダーの製造時に使用される全単量体100重量部に対して0.1~10重量部を使用することが好ましい。
【0117】
前記耐衝撃パウダーの製造に使用される開始剤としては、硫酸第1鉄、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウムの存在下で、アゾ系化合物、パーオキシド系化合物などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用してもよく、これに制限されるものではない。
【0118】
アゾ系化合物は、例えば、2,2´‐アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2,2´‐アゾビス(4‐メトキシ‐2,4‐ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2´‐アゾビス(2‐メチルプロピオネート)、2,2´‐アゾビス[2‐(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]ジヒドロクロライドおよび2,2´‐アゾビス[N‐(2‐カルボキシエチル)‐2‐メチルプロピオンアミジン]ハイドレートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよく、これに制限されるものではない。
【0119】
パーオキシド(peroxide)系化合物は、テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2‐エチルヘキシル)パーオキシカーボネート、ブチルパーオキシネオデカノエート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジエトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ヘキシルパーオキシジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ビス(3‐メトキシ‐3‐メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジブチルパーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシピバレート、ヘキシルパーオキシピバレート、ブチルパーオキシピバレート、トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジメチルヒドロキシブチルパーオキシネオデカノエート、アミルパーオキシネオデカノエート、ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐ブチルパーオキシネオヘプタノエート、アミルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐アミルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、2,2‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)ブタン、1,1‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5‐ビス(ブチルパーオキシ)‐2,5‐ジメチルヘキサン、2,5‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)‐1‐メチルエチル)ベンゼン、1,1‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、tert‐ブチルヒドロパーオキシド、tert‐ブチルパーオキシド、tert‐ブチルパーオキシベンゾエート、tert‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロキシパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、2,4‐ペンタネジオンパーオキシド、tert‐ブチルパーアセテート、過酢酸および過硫酸カリウムなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよく、これに制限されるものではない。
【0120】
これらの使用量は、耐衝撃パウダーの製造時に使用される全単量体100重量部に対して、0.001~10重量部を使用してもよく、これに制限されるものではない。
【0121】
本発明の耐衝撃パウダーの製造時に、前記第1様態の2層構造の耐衝撃パウダーの製造は、前記第2様態の3層構造の耐衝撃パウダーの製造から第1段階重合を省略したものであり、以下の工程は、前記第2様態の製造方法と同一であってもよい。具体的には、イオン交換水にアクリル系単量体、共単量体、架橋剤、乳化剤、開始剤およびグラフト剤を添加し、ガラス転移温度が0℃以下のゴム状のコアを製造する第1段階重合と、前記第1段階重合による重合体にアクリル系単量体、開始剤を添加し、前記コアにガラス転移温度が20℃以上のガラス状のシェルをグラフトさせて耐衝撃パウダーを製造する第2段階重合とを含む。
【0122】
本発明による偏光板保護フィルムを製造するためには、前記ドープ溶液を製造し、ダイを通じて支持体の表面でドープ溶液をキャストして、シート状に塗布し、乾燥設備によってキャスト原液に存在する溶媒を蒸発させてアクリルフィルムを形成してもよい。前記ダイは、キャスト原液を押出するためのものであり、例えば、通常のT‐ダイが使用されてもよい。前記支持体は、キャスト原液を移送しながら乾燥させてフィルムを形成する支持体であり、コンベヤーベルト形態の金属支持体が使用されてもよく、さらに具体的には、ステンレススチールコンベヤーベルトが使用されてもよく、前記ベルトの移動または回転速度を調節することで、フィルムの厚さを調節することができる。
【0123】
前記ベルトに塗布されたキャスト原液は、フィルムに成形するのに十分な時間および距離をベルトとともに移動した後、ガイドローラである剥離ローラによってベルトから剥離される。剥離されたフィルムは、延伸機に移送されて水平方向または機械方向に延伸され、乾燥器で乾燥され、最終にアクリルフィルムを形成した後、巻取機で巻かれて製品として出荷される。
【0124】
本発明による偏光板保護フィルムは、フィルムの厚さが20~80μmの範囲で、透湿度が200g/m2・24hr以下を満たす。前記透湿度は、透湿度測定装置(製品名:PERME(W3/0120)、LabThink社製)を用いて測定されたものであり、フィルム試験片に加えられる温度38℃、外部セルのRH(relative humidity)90%、N2キャリアガス(carrier gas)の条件下で外部セルからフィルムを通過して内部セルに透過された水分を測定したものである。本発明による偏光板保護フィルムは、従来のセルロースアシレートフィルムに比べて透湿度が非常に低いため、薄膜化する液晶表示装置の光学フィルムとして適用するのに適し、透湿度が前記範囲を満たすため、偏光板の製造時に偏光子が損傷することを防止することができ、液晶表示装置の製造工程および移送中に高温高湿条件でも光学フィルムの物性が変形することを防止することができる。
【0125】
また、本発明の偏光板保護フィルムは、下記数学式1で表される面方向の位相差の値が-50~+50nmであり、下記数学式2で表される厚さ方向の位相差の値が-50~+50nmであってもよい。
【0126】
[数1]
Rin=(nx-ny)×d
【0127】
[数2]
Rth=(nz-ny)×d
【0128】
前記数学式1および数学式2において、nxはフィルムの面方向において最も屈折率が大きい方向の屈折率であり、nyはフィルムの面方向において、nx方向の垂直方向の屈折率であり、nzは厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。
【0129】
また、本発明のドープ溶液を使用してソルベントキャスト法で製造された光学フィルムは、平滑度に優れ、異物が少なくて光学フィルムとして使用するのに優秀な物性を示す。より具体的には、平滑度が1.0以下、さらに具体的には0~1.0であり、異物の個数が1M当たり0.3個以下、さらに具体的には0~0.3個である物性を満たすことができる。
【0130】
次に、本発明の偏光板保護フィルムの製造方法についてより具体的に説明する。
【0131】
本発明の一様態において、偏光板保護フィルムは、通常のソルベントキャスト法によって製造することができる。より具体的に説明すると、製造されたドープ溶液を貯蔵槽で一旦貯蔵し、ドープ溶液に含有されている泡を脱泡する。脱泡したドープは、ドープ排出口から回転数に応じて高精度に定量送液することができる加圧型定量ギアポンプを通じて加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している金属支持体上に均一にキャストし、金属支持体がほぼ一周した剥離点で生渇きのキャストフィルムを金属支持体から剥離する。製造されたウェブの両端をクリップで挟んで幅を維持しながらテンターに搬送して乾燥させ、次いで、乾燥装置のローラに搬送して乾燥し、巻取機によって所定の長さで巻く。また、前記キャストフィルムの製造時に残留溶媒量が0~40重量%、さらに具体的には0.1~20重量%の状態で剥離後、機械方向および幅方向に一軸延伸または二軸延伸することも可能である。または、キャストフィルムの製造後、オフラインで延伸することも可能である。フィルムの延伸は、機械方向または幅方向の延伸も良好であり同時または順次2軸延伸も良好である。延伸度は、必要に応じて調節可能であり、具体例としては、0~100%範囲であってもよく、具体的には0.1~100%であってもよい。前記延伸度において%は長さ%を意味し、例えば、延伸前の長さが1Mであるフィルムに対して100%延伸度は、2m延伸されることを意味する。また、前記延伸後、さらにフィルムを乾燥するステップを含んでもよい。この際、乾燥温度は、有機溶媒が完全に乾燥することができる温度であれば制限されないが、好ましくは、50~120℃であってもよい。
【0132】
延伸時の温度は、ドープ溶液に使用されたアクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)±10℃であることが好ましい。溶液の塗布時の空間温度は、-50℃~50℃が好ましく、-30℃~40℃がさらに好ましくて、-20℃~30℃が最も好ましい。低い空間温度で塗布されたドープ溶液は、支持体上で瞬間的に冷却され、ゲル強度が向上するため、有機溶媒が多量残存するフィルムが得られる。したがって、有機溶媒を蒸発させず、支持体からフィルムを短時間で剥離することができる。空間を冷却する気体は、通常の空気、窒素、アルゴンまたはヘリウムを使用することができる。相対湿度は、0~70%が好ましく、0~50%がさらに好ましい。
【0133】
前記ドープ溶液を塗布する支持体の温度は、‐50~100℃が好ましく、‐30℃~25℃がさらに好ましく、10℃~25℃が最も好ましい。キャスト部を冷却するため、キャスト部で冷却させた気体を導入することができる。冷却装置をキャスト部に配置して空間を冷却することもできる。冷却では、キャスト部に水が付着しないように注意することが重要である。気体で冷却する場合は、気体を乾燥しておくことが好ましい。
【0134】
本発明による光学フィルムの厚さは、好ましくは20~140μm範囲、さらに好ましくは20~80μm範囲であってもよい。
【0135】
本発明による偏光板保護フィルムは、偏光板だけでなく、光学補償シートまたは立体映像用光学フィルターなどの光学フィルムに使用されることができ、1枚または2枚以上に積層して使用することができる。
【0136】
より具体的には、本発明の偏光板保護フィルムは、偏光板の保護フィルムとして使用可能である。本発明の偏光板の一例は、偏光子(polarizer)とその両面を保護する2枚の偏光板保護フィルムからなり、前記保護フィルムの少なくとも一枚が本発明の偏光板保護フィルムからなってもよい。
【0137】
また、本発明は、前記偏光板を含む画像表示装置も本発明の範囲に含まれる。例えば、前記表示装置は、液晶表示装置であってもよい。本発明の光学フィルムは、様々な表示モードの液晶表示装置に使用することができ、具体的には、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANなどのモードに使用することができる。
【0138】
本発明による液晶表示装置の一様態は、液晶セルと、液晶セルの少なくとも一面に配置された偏光板を含んでもよい。この際、前記偏光板は、偏光子と、前記偏光板保護フィルムを少なくとも一層以上含んでもよい。また、前記光学補償シートは、前記偏光板保護フィルムの少なくとも一面に光学異方性層を含み、前記光学異方性層は、ハイブリッド配向処理されたディスク型化合物を含有してもよい。
【0139】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例および比較例は、本発明をさらに詳細に説明するための一つの例示であって、本発明が下記実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0140】
以下、フィルムの物性は、次の測定方法により測定した。
【0141】
1.ガラス転移温度(Tg):示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/minの昇温条件で測定した。
【0142】
2.重量平均分子量:製造されたビーズおよびフィルムをテトラヒドロフランに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0143】
重量平均分子量は、Waters社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装備を用いて測定した。装備は、移動相ポンプ(M515 Pump)、カラムヒータ(ALLCOLHTRB)、検出器(2414 R.I.Detector)、注入器(2695 EB 自動注入器)から構成され、分析カラムは、WATERS社製のStyragel HRを使用し、標準物質としてはポリメチルメタクリレート(PMMA)American polymer standard corporation STDを使用した。移動相溶媒としてはHPLC級テトラヒドロフラン(THF)を使用してカラムヒーター温度40℃、移動相溶媒の流動速度1.0mL/minの条件下で測定する。試料の分析のために用意した共重合体を移動相溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた後、GPC装備に注入し、重量平均分子量を測定した。
【0144】
3.残留単量体:重合後、樹脂内の残留する単量体をGC(Gas Chromatography)分析装置により定量的に測定した。
【0145】
4.位相差:前記製造されたフィルムの位相差を、複屈折測定装置(Axoscan、Axometrics社製)を用いて測定し、測定波長は、550nmで行った。
【0146】
5.ヘイズおよび光線透過率:ASTM1003法に基づいて測定した。
【0147】
6.引張強度:万能試験機(UTM、Zwick)を用いてASTM D638試験法に基づいて測定した。
【0148】
7.透湿度:透湿度測定装置(LabThink社製、PERME(W3/0120))を用いて、密閉されたチャンバ内のフィルム試験片に加えられる温度38℃、外部セルのRH(relative humidity)90%、N2キャリアガス(carrier gas)の条件下で24時間の間に外部セルからフィルムを通過して内部セルに透過された水分を測定した。
【0149】
8.コーティング付着力:フィルム上のコーティングされた面を切り出し、横、縦10個ずつ総100個の碁盤目を作った後、3Mテープを付けてから剥がしてコーティング層の付着程度を評価した。
【0150】
ここで、95個以上残っていると良好、85個以上であると普通、85個以下であると不良
【0151】
9.平滑度:フィルムの厚さを全幅にわたり50mm間隔で測定し、最大値と最小値の差で値を求めた。フィルムの厚さは、ドイツのMahr社製のMicrometer測定装置で測定した。
【0152】
10.異物検査:ほこりのような異物をはじめ、未溶融の黒点、白点などを検出し、フィルムの製造後、走行中のフィルムをNEXTEYE社製のフィルム検査装置を用いて測定した。フィルムの長さ方向の1meter当たり異物の個数で表現し、10M走行中に異物が1個発生した場合、0.1個/1mで表示する。
【0153】
11.粘度:ドープ溶液を25℃に準備した後、落球法による粘度測定法で粘度を測定した。Brookfield社製の落球式粘度計Model KF40を使用し、6番ボールを用いて測定した。
【0154】
12.ピールオフ性:ドープ溶液を金属ベルトの表面にキャストした後、フィルム内の残留溶媒量が2重量%になるように乾燥してからフィルムを剥離し、下記のように評価した。
【0155】
優秀:フィルム表面が平滑で、剥離しやすい
普通:フィルム剥離時に破断なく剥離される
悪い:フィルム剥離時に音がし、一部破断が発生する
【0156】
[製造例1]懸濁重合用分散剤の製造
コンデンサを有する3口フラスコに、水2700gと2,2‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)ジヒドロクロライド0.3gを入れて、窒素雰囲気下で下記化学式1の化合物180g(固形分含有量のうち62.1重量%)、下記化学式2の化合物40g(固形分含有量のうち13.8重量%)およびメタクリル酸メチル70g(固形分含有量のうち25重量%)を入れて、60℃で6時間反応させて、固形分含有量が5重量%である重合体水溶液を得た。製造された分散剤の重量平均分子量は2、000,000g/molであった。
【0157】
【0158】
前記化学式1中、R1はメチルであり、nは1であり、Mはナトリウムである。
【0159】
【0160】
前記化学式2中、R2はメチルであり、Mはカリウムである。
【0161】
[製造例2]耐衝撃パウダーの製造
1段階として、5L反応器に蒸留水1500gを投入した後、窒素置換してから温度を80度まで昇温した。硫酸第1鉄0.002g、EDTA・2Na塩0.008gおよびホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム0.2gを反応器に添加して撹拌した。メチルメタクリレート200g、架橋剤である1,3ブタンジオールジメタクリレート6.0g、グラフト剤であるアリルメタクリレート0.7g、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェートナトリウム6g、開始剤であるターシャリーブチルパーオキシド0.5gを混合した混合溶液を2時間滴下した後、1時間80℃で、500rpmで撹拌しながら乳化重合した。この際、取得されたガラス状シード粒子の平均粒径は180nmであった。
【0162】
2段階には、前記第1段階で製造されたガラス状シード粒子の後に、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム1.0gを蒸留水20gに溶解し、反応器内に添加した。
【0163】
これに、ブチルアクリレート250g、スチレン55g、グラフト剤としてアリルメタクリレート5g、架橋剤として1,3‐ブタンジオールジメタクリレート1g、クメンヒドロパーオキシド1g、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェートナトリウム10gを混合した混合溶液を3時間にわたり滴下した後、2時間80℃で重合した。この際、取得された重合体の平均粒径は、250nmであった。
【0164】
最後に、3段階は、温度を80℃に維持した状態で、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム1gを添加した後、メチルメタクリレート285g、メチルアクリレート15g、ノルマルオクチルメルカプタン1g、ターシャリーブチルパーオキシド0.5gを混合した混合溶液を2時間にわたり滴下した後、80℃で1時間重合した。この際、取得された最終重合体である耐衝撃パウダーの平均粒径は280nmであった。
【0165】
[実施例1~4]
<ビーズの製造>
5Lの反応器に蒸留水2000g、前記製造例1で製造された固形分含有量が5重量%である懸濁重合分散剤12g、分散補助剤として硫酸ナトリウム6gを投入し、溶解した。単量体の種類および含有量を下記[表1]に記載したように添加し、開始剤および連鎖移動剤としてノルマルオクチルメルカプタンを投入した後、400rpmで撹拌しながら水相に分散させて懸濁液を製造した。
【0166】
前記懸濁液は、80℃で1時間20分間重合し、105℃に昇温して30分間さらに重合を実施した後、30℃に冷却した。前記重合反応で得られたビーズは、蒸留水で洗浄と脱水を繰り返した後、乾燥した。製造されたアクリル系重合体ビーズの物性を測定し、下記表1に示した。
【0167】
<ドープ溶液の製造>
前記製造されたアクリル系重合体ビーズ25重量%、メチレンクロライドとメタノールを9:1の重量比で混合した混合溶媒75重量%を混合し、前記混合液100重量部に対して、紫外線吸収剤としてciba specialty社製のTinuvin 918 3重量部を加え、ドープ溶液を製造した。前記ドープ溶液の粘度を測定し、下記表1に示した。
【0168】
<フィルムの製造>
前記ドープ溶液をダイを用いて、20℃の金属ベルトの表面に厚さ400μmおよび幅800mmのシート(sheet)状に押出した。前記金属ベルトを回転移動させながらキャスト原液の溶媒を蒸発させ、剥離した。剥離時、フィルム内の残留溶媒量は2重量%であった。剥離後、横方向に1.5倍延伸後、150℃で乾燥し、全厚さが40μmのフィルムを製造した。
製造されたフィルムの物性を測定して下記表1に示した。
【0169】
[実施例5]
アクリル系重合体ビーズは、実施例1で製造したものを使用した。
【0170】
<ドープ溶液の製造>
前記実施例1で製造されたアクリル系重合体ビーズ25重量%、メチレンクロライドとメタノールを9:1の重量比で混合した混合溶媒70重量%および前記製造例2で製造された耐衝撃パウダー5重量%を混合し、前記混合液100重量部に対して、紫外線吸収剤としてciba specialty社製のTinuvin 918 3重量部を加え、ドープ溶液を製造した。製造された後測定されたドープ溶液の粘度を下記表1に示した。製造されたドープ溶液を10時間後に粘度を測定した結果、10時間後の粘度変化率が6%であった。
【0171】
フィルムの製造は、実施例1と同様に実施し、ドープ溶液の製造後、10時間内にフィルムを製造し、製造されたフィルムの物性を測定し、下記表1に示した。
【0172】
[実施例6]
前記実施例5で耐衝撃パウダーの含有量を10重量%に変更し、混合溶媒の含有量を65重量%に変更した以外は、実施例5と同様にドープ溶液を製造した。製造された後、測定されたドープ溶液の粘度を下記表1に示した。製造されたドープ溶液を10時間後に粘度を測定した結果、10時間後の粘度変化率が9%であった。
【0173】
フィルムの製造は、実施例1と同様に実施し、ドープ溶液の製造後、10時間内にフィルムを製造し、製造されたフィルムの物性を測定し、下記表1に示した。
【0174】
[実施例7]
アクリル系重合体ビーズは、実施例2で製造したものを使用した。
【0175】
<ドープ溶液の製造>
前記実施例2で製造されたアクリル系重合体ビーズ25重量%、メチレンクロライドとメタノールを9:1の重量比で混合した混合溶媒70重量%および前記製造例2で製造された耐衝撃パウダー5重量%を混合し、前記混合液100重量部に対して、紫外線吸収剤としてciba specialty社製のTinuvin 918 3重量部を加え、ドープ溶液を製造した。製造された後、測定されたドープ溶液の粘度を下記表1に示した。製造されたドープ溶液を10時間後に粘度を測定した結果、10時間後の粘度変化率が7%であった。
【0176】
フィルムの製造は、実施例1と同様に実施し、ドープ溶液の製造後、10時間内にフィルムを製造し、製造されたフィルムの物性を測定し、下記表1に示した。
【0177】
[実施例8]
アクリル系重合体ビーズは、実施例3で製造したものを使用した。
【0178】
<ドープ溶液の製造>
前記実施例3で製造されたアクリル系重合体ビーズ25重量%、メチレンクロライドとメタノールを9:1の重量比で混合した混合溶媒70重量%および前記製造例2で製造された耐衝撃パウダー5重量%を混合し、前記混合液100重量部に対して、紫外線吸収剤としてciba specialty社製のTinuvin 918 3重量部を加え、ドープ溶液を製造した。製造された後、測定されたドープ溶液の粘度を下記表1に示した。製造されたドープ溶液を10時間後に粘度を測定した結果、10時間後の粘度変化率が6%であった。
【0179】
フィルム製造は実施例1と同様に実施し、ドープ溶液の製造後、10時間内にフィルムを製造し、製造されたフィルムの物性を測定し、下記表1に示した。
【0180】
[比較例1]
置換度2.87のセルローストリアセテート粉体25重量%とメチレンクロライドとメタノールを9:1の重量比で混合した混合溶媒75重量%を混合し、前記混合液100重量部に対して、紫外線吸収剤としてciba specialty社製のTinuvin 918 3重量部を加え、ドープ溶液を製造した。前記ドープ溶液の粘度を測定し、下記表2に示した。
【0181】
前記ドープ溶液を用いて、実施例1と同じ方法で全厚さが40μmのフィルムを製造した。
【0182】
製造されたフィルムの物性を測定し、下記表2に示した。
【0183】
[比較例2]
下記表2に示したように重量平均分子量が124,000g/molである重合体を製造した以外は、実施例1と同じ方法でビーズを製造した。
【0184】
次に、ドープ溶液および光学フィルムは、実施例1と同じ方法で製造し、物性を測定し、下記表2に示した。
【0185】
[比較例3]
前記比較例2で製造されたビーズ100重量部に対して、紫外線吸収剤としてciba specialty社製のTinuvin 918 3重量部を混合した後、二軸押出器を用いて、窒素雰囲気下で260℃温度で混練し、樹脂ペレットを製造した。
【0186】
製造された樹脂ペレットをT‐ダイ押出器を用いて、160μmのフィルムに製造し、機械方向に2倍、横方向に2倍延伸して40μm厚さのフィルムを製造した。
【0187】
製造されたフィルムの物性を測定し、下記表2に示した。
【0188】
[比較例4]
前記実施例1で、懸濁重合分散剤としてポリビニルアルコールを使用し、下記表2に示したように重量平均分子量が310,000g/molである重合体を製造した以外は、実施例1と同じ方法でビーズを製造した。
【0189】
製造されたフィルムの物性を測定し、下記表2に示した。
【0190】
以下、下記表1および表2において、略語は下記のとおりである。
【0191】
MMA:メチルメタクリレート
AMS:αメチルスチレン
PMI:フェニルマレイミド
MA:メチルアクリレート
n‐BMA:n‐ブチルアクリレート
AMPO:Luperox 575、(T‐Amyl peroxy2‐ethyl hexanoate)
n‐OM:ノルマルオクチルメルカプタン
【0192】
【0193】
【0194】
前記比較例1に示されているように、本発明の実施例で製造されたドープ溶液は、従来のセルロースフィルムに比べて、光学物性が同等類似の物性を示し、透湿度がさらに低く、ピールオフ性に優れた光学フィルムを製造することができることを確認した。
【0195】
比較例2に示されているように、重量平均分子量が124、000g/molである重合体を使用した場合および比較例4に示されているように、重量平均分子量が310,000g/molである重合体を使用した場合は、ピールオフ時にフィルムの破断が発生し、フィルム製膜が不可能であった。
【0196】
また、比較例3に示されているように、ドープ溶液を製造せずに押出器を用いて溶融押出して製造する場合には、キャスト法で製造されるフィルムに比べて、付着力および平滑性が低下することを確認した。