(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】造血幹細胞の生着活性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0789 20100101AFI20221111BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20221111BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20221111BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221111BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221111BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
C12N5/0789
A61K35/28
A61P7/00
C12N5/10
C12N15/867 Z
C12N15/09 100
(21)【出願番号】P 2019541079
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(86)【国際出願番号】 US2018015547
(87)【国際公開番号】W WO2018140791
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-14
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マリク,プナム
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/210292(WO,A1)
【文献】特表2012-508185(JP,A)
【文献】Cell Stem Cell (2011) Vol.8, pp.445-458
【文献】Blood (2013) Vol.122, No.17, pp.3074-3081
【文献】生化学 (2013) Vol.85, No.3, pp.187-195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞(HSC)を調製するための方法であって
、有効量のp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)阻害剤および有効量の低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)安定化剤の存在下
でHSC
の第1の集団を培養
してHSCの第2の集団を作製するステップを含
み、
前記HSCの第2の集団は、前記p38 MAPK阻害剤と前記HIF-1α安定化剤の不在下で培養されたHSCに比べて向上した生着活性を有する、
方法。
【請求項2】
前記HSC
の第1の集団が、DNA二本鎖切断を誘導する遺伝子操作を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子操作が、組み込みベクターの形質導入を含む、請求
項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組み込みベクターが、ウイルスベクターである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子操作が、ゲノム編集を含む、請求
項2に記載の方法。
【請求項7】
前記HSC
の第1の集団が、分裂HSCである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記HSC
の第1の集団が、対象から得られ
たHSCの集団である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、ヒト対象である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記HSC
の第1の集団が、前記ヒト対象の骨髄または末梢血細胞から得られ
た成体HSC
の集団である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記HSC
の第1の集団が、前記ヒト対象の臍帯血細胞から得られ
たHSCの集団である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記MAPK阻害剤が、ドラマピモド、ラリメチニブ、p38MAPKのアミノピリジンベースのATP競合阻害剤、またはピリジニルイミダゾール阻害剤である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記HIF-1α安定化剤が、プロスタグランジンE2(PGE2)または16-16ジメチルプロスタグランジンE2(dmPGE2)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記培養のステップが、1~7日間行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
対象において血液疾患の治療に使用するための組成物であって、造血幹細胞(HSC)の集団を含み、前記HSCの集団は、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法
によって作製される、組成物。
【請求項16】
50,000
~500,000個のHSCの用量
での使用のための、請求項
15に記載の
組成物。
【請求項17】
50,000
~100,000個のHSCの用量
での使用のための、請求項
16に記載の
組成物。
【請求項18】
前記HSCが、前記対象にとって自己由来である、請求項15~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記HSCが、前記対象にとって同種異系である、請求項15~17のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月27日に出願された米国仮出願第62/451,594号の米国特許法119(e)条に基づく利益を主張し、その内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
向上した生着活性を有する幹細胞(例えば、造血幹細胞(HSC))を調製するための方法が、本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
造血幹細胞(HSC)は、造血系全体を再構成し、それらの集団の維持のために自己再生する能力を有する、独特で稀な細胞集団である。遺伝子をHSCに導入すること、またはHSCの遺伝子を編集することを含む遺伝子療法(GT)は、単一遺伝子障害または造血障害を治癒するための魅力的な治療戦略を提供する。それはまた、適切な移植ドナーがいないそれを必要とする患者を治癒するための同種造血幹細胞移植の魅力的な代替を提供する。しかしながら、GTは、HSCのエクスビボ操作および培養を必要とし、それはそれらが老化してそれらのリンパ性表現型を喪失するにつれて大量のHSC喪失をもたらす。
【0004】
現在、自家移植後に再増殖するヒトHSCの数が、効果的な遺伝子導入の大きな限界となっている。したがって、骨髄破壊的前処置が、常在HSCを破壊し、エクスビボ操作後の限られた数の遺伝子操作HSCの生着を有利にするためにしばしば必要とされる。
【0005】
したがって、エクスビボ遺伝子操作および/または細胞培養中にHSCの幹細胞性を維持し、それによってそれらの生着活性、およびひいては遺伝子療法の治療成功を増大させる方法の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、少なくとも部分的には、例えば、プロスタグランジンE2(PGE2)などのHIF-1α安定化剤を使用して、低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)を安定させると同時に、例えば、ドラマピモドなどのp38MAPK阻害剤を使用して、幹細胞におけるp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の活性化を阻害することが、p38MAPK阻害剤またはHIF-1α安定化剤単独での単独処理と比較して、インビトロまたはエクスビボ培養中の幹細胞(例えば、分裂HSCなどの分裂幹細胞)の喪失をうまく減少させたという予想外の発見に基づく。したがって、幹細胞(例えば、分裂HSCなどの分裂幹細胞)とp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤との併用処理は、インビボでの培養幹細胞の生着を予想外に増加させた。
【0007】
したがって、本開示の一態様は、向上した生着活性を有する造血幹細胞(HSC)などの幹細胞を調製するための方法を特徴とする。方法は、有効量のp38MAPK阻害剤および有効量のHIF-1α安定化剤の存在下で幹細胞(例えば、HSC)を培養することを含む。いくつかの実施形態では、HSCは、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の両方を含有する培養培地中で培養されてもよい。本明細書に記載の方法に適している幹細胞は、DNA二本鎖切断(例えば、組み込みベクターの形質導入またはゲノム編集)を誘導する遺伝子操作に供することができる。いくつかの例では、幹細胞は、(例えば、S-G2M期にある)周期または分裂幹細胞であり得る。
【0008】
本明細書に記載の方法のいずれも、培養ステップの前に、幹細胞を遺伝子操作することをさらに含み得る。遺伝子操作は、細胞周期非依存的または細胞周期依存的に行うことができる。いくつかの例では、遺伝子操作は、細胞分裂周期中に行われ得る。遺伝子操作は、幹細胞を組み込みベクターで形質導入することを含み得る。組み込みベクターの例としては、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)などのウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。あるいはまたは加えて、遺伝子操作は、幹細胞においてゲノム編集を行うことを含み得る。ゲノム編集は、例えば、これらに限定されないが、CRISPR-Cas9システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ホーミングエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、および/または転写アクチベーター様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)の使用を含み得る。
【0009】
本明細書に記載の方法のいずれも、それを必要とする対象に、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養されたHSCを投与または移植することをさらに含み得る。例えば、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養された約50,000~約500,000個のHSCの用量(またはさらに約50,000~約100,000個のHSCなどのより低い用量)が対象に投与され得る。幹細胞(例えば、HSC)は、同種幹細胞(例えば、HSC)または自己幹細胞(例えば、HSC)であり得る。HSCは、それらの投与または対象への移植の前に1~7日間培養され得る。いくつかの例では、レシピエント対象は、骨髄破壊的化学療法前処置、またはHSCの投与もしくは移植の前に、レシピエント対象における常在HSCを破壊することができる任意の他の同等の方法を行っていない。
【0010】
本明細書に記載される任意の方法では、幹細胞(例えば、HSC)は、成体幹細胞であり得、これは適切な供給源(例えば、ヒト)の骨髄および/または末梢血細胞に由来し得る。あるいは、幹細胞は、適切な供給源(例えば、ヒト)の臍帯血に由来し得る。
【0011】
本明細書に記載の任意の態様では、p38MAPK阻害剤は、タンパク質、核酸、小分子、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの例では、p38MAPK阻害剤は、p38MAPK遮断剤(例えば、p38-αに結合してp38MAPKシグナル伝達を遮断する小分子)であり得る。p39MAPK阻害剤の例としては、ドラマピモド(例えば、BIRB-796)、ラリメチニブ(例えば、LY2228820ジメシレート)、アミノピリジンベースの、p38MAPKのATP競合阻害剤(例えば、Vx702)、ピリジニルイミダゾール阻害剤(例えば、SB203580)、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、p38MAPK阻害剤の量は、G0静止期における幹細胞(例えば、HSC)の割合を増加させるため、および最初の細胞分裂周期前のS-G2-M期(例えば、24時間)における幹細胞(例えば、HSC)の割合を減少させるため、幹細胞のG0静止期からS期への移行を遅らせるため、ならびに/または細胞培養および/もしくは遺伝子操作に関連する幹細胞におけるDNA損傷応答および修復(DDR)を減少させるため(例えば、γH2AXレベルを減少させるため)に有効であり得る。いくつかの例では、p38MAPK阻害剤の量は、他の非特異的阻害を最小限に抑えるか、または全く伴わずに、幹細胞におけるp38リン酸化を特異的に減少させるように選択される。
【0013】
本明細書に記載の任意の態様では、HIF-1α安定化剤は、タンパク質、核酸、小分子、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの例では、HIF-1α安定化剤は、メッセンジャーRNA(mRNA)に影響を及ぼすことなくHIF-1αタンパク質および/または転写活性を安定化することができる。いくつかの例では、HIF-1α安定化剤は、HIF-1α遺伝子発現を増加させることができる。HIF-1α安定化剤の例としては、プロスタグランジンE2(PGE2)およびその類似体、例えば、16-16ジメチルPGE2(dmPEG2)、フマル酸ジエチル(DEF)、およびジメチルオキサリグリシン(DMOG、別名N-(メトキシオキソアセチル)-グリシン)、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、HIF-1α安定化剤の量は、幹細胞(例えば、周期または分裂HSCなどのHSC)におけるHIF-1αタンパク質および/もしくは転写活性を安定させるため、ならびに/または幹細胞(例えば、周期または分裂HSCなどのHSC)においてCXCR4を上方調節するために有効であり得る。
【0015】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わされた量は、細胞周期のG2M期における幹細胞(例えば、周期または分裂HSCなどのHSC)の蓄積を減少させるため、幹細胞における長期再増殖能(LTRP)の喪失を減少させるため、幹細胞の骨髄性歪み表現型を減少させるため、および/または対象に移植されたHSCの生着を促進するために有効であり得る。
【0016】
いくつかの例では、幹細胞(例えば、周期または分裂HSCなどのHSC)のp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤での併用処理の効果(複数可)は相乗的であり得る。例えば、p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせは、インビトロまたはエクスビボ操作(例えば、細胞培養および/または遺伝子操作)を受けた周期または分裂幹細胞のインビボ生着を向上させるが、いずれかの分子の不在はそうすることができない。
【0017】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、対象は、ヒト対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、造血障害を有するヒト患者である。いくつかの実施形態では、対象は、単一遺伝子障害を有するヒト患者である。
【0018】
幹細胞(例えば、HSC)移植を必要としている対象において幹細胞(例えば、HSC)の生着を促進するのに使用するための組成物もまた本開示の範囲内である。組成物は、(i)本明細書に記載のp38MAPK阻害剤のいずれかと、(ii)本明細書に記載のHIF-1α安定化剤のうちのいずれかと、(iii)造血幹細胞などの幹細胞と、を含む。組成物は、細胞培養培地をさらに含み得る。対象は、造血障害または単一遺伝子障害を有するヒト患者であり得る。
【0019】
開示の1つ以上の実施形態の詳細を、以下の説明に記載する。本開示の他の特徴または利点は、以下の図面およびいくつかの実施形態の詳細な説明から、ならびにまた添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに実証するために含まれており、それらは、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つ以上を参照することによってよりよく理解され得る。
【0021】
【
図1-1】成体造血幹細胞のヒト異種移植モデルを示す。新たに単離されたヒト動員末梢血(MPB)由来CD34
+細胞(100万細胞/マウス)を、18時間以内にレンチウイルスベクター(LV)で形質導入し、照射されたNSGマウスに注射した。一次ヒト生着を6週のマウスで、骨髄(BM)(パネルA)および同時に末梢血(PB)(パネルB)において分析した。各記号は個々のマウスを表し、線は平均±SEMを示す。(BM0時間についてn=13、18~24時間n=14、36~42時間n=15、PB:0時間についてn=6、18~24時間n=7、36~42時間n=8マウス)。パネルC:一次移植(1T)後6、12、および24週に、フローサイトメトリーによってBMを異なるヒト細胞集団について分析した。一次移植(1T)後24週のGFP
+(形質導入)対GFP
-(未形質導入)細胞についてゲーティングされたヒトCD45
+細胞を示す代表的なFACSプロット。GFP
-およびGFP
+ヒトCD45
+集団から、CD19について陰性であったヒトCD33
+骨髄性細胞、ヒトCD19
+B-リンパ性およびCD3
+T-リンパ性細胞ならびにヒトCD34
+HSPCを示す。パネルD:未培養MPB由来CD34
+細胞の1T後6、12、および24週で分析された多系統生着パーセンテージを示す。データを平均±SEMとしてプロットした(6週についてn=20、12週n=12、24週n=10マウス)。
【
図2】成体ヒトHSCエクスビボ操作および遺伝子導入ならびにLTRPに対するその効果を研究するための前臨床モデルを示す。パネルA:新たに単離または解凍された動員末梢血(MPB)由来CD34
+細胞を研究に利用した。指示された時点でレンチウイルスベクター(LV)またはγ-レトロウイルスベクター(RV)媒介遺伝子導入が行われた研究に2つの異なるプロトコルを利用した。0時間、18~24時間、36~42時間、および72~96時間は、NSGマウスへの注射前のCD34
+細胞単離後にエクスビボ培養において細胞が曝露された時間の総量を示す。パネルB:培養および形質導入における指示された時間後、全身照射後のNSGマウスあたり100万個のCD34
+開始同等細胞を静脈内移植した(一次移植=1T)。一次ヒト生着および多系統再構成を、左右の大腿骨から6および12週の骨髄採取後、ならびに全ての骨から24週の犠死後の指定された時間でマウスにおいて分析した。細胞の一部分をFACSについて分析し、残りはマウスCD45
+細胞が枯渇し、二次マウスに一対一で移植した(二次移植=2T)。
【
図3-1】24時間超にわたるヒトCD34
+HSPCにおけるエクスビボ操作および遺伝子導入を示し、LTRPの有意な喪失および骨髄性歪み遺伝子修飾子孫をもたらす。パネルA:新たに単離または解凍されたヒト動員末梢血由来CD34
+細胞を培養し、指示された時間にわたってレンチウイルスベクター(LV)またはγ-レトロウイルスベクター(RV)で形質導入した。照射されたNSGマウスあたり100万個のCD34
+細胞に相当する投入量を注射した。指示された時点での一次NSGマウスの骨髄(BM)中のヒトCD45
+細胞のパーセンテージを示す。x軸は一次移植(1T)後の週数を示す。データは平均±SEMを表し、合計58マウスに対して0時間について模擬n=10、18~24時間についてn=20、36~42時間についてn=9、72~96時間についてn=19マウス。パネルB:一次NSGマウスのBM中の全ヒト細胞を、照射された二次マウスに1対1で移植した。二次移植(2T)後6週の骨髄におけるヒト生着(Y軸)を示す(合計40マウスに対して0時間について模擬n=7、18~24時間についてn=5、36~42時間についてn=14、72~96時間についてn=14。多系統再構成を1T後24週で分析した。未形質導入(GFP
-)および形質導入(GFP
+)両方のヒトCD33
+骨髄性集団(パネルCおよびD)、ヒトCD19
+B-リンパ性(パネルEおよびF)、ヒトCD3
+T-リンパ性(パネルGおよびH)、およびヒトCD34
+HSPC集団(パネルIおよびJ)を示す。データは平均±SEMとして表し、n=
図3、パネルAと同じ統計:マン・ホイットニーU検定、****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
【
図4】インビトロおよびインビボでのGFPマーキングを示す。ヒトMPB CD34
+細胞を培養し、
図2、パネルAに記載される指示された時間(hrs)LVまたはRVでおよび形質導入し、コロニー形成単位細胞(CFUc)を少ない割合のCD34
+細胞上に播種し、残り(100万開始等価物)をNSGマウスに静脈内移植した。BMは左右の大腿骨から6および12週に吸引し、マウスは24週に犠死させ、BMはGFP
+hCD45
+細胞について6、12、および24週に分析し(合計36マウスに対して18~24時間についてn=20、36~42時間についてn=9、および72~96時間についてn=7、データは平均±SEMとして表した)。
【
図5-1】NSGマウスにおけるエクスビボ操作および培養MPB由来hCD34
+細胞の多系統生着を示す。ヒト動員末梢血(MPB)CD34
+細胞を指示された時間(X軸)培養し、形質導入細胞のマーカーとして増強した緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするレンチウイルスベクター(LV)またはγ-レトロウイルスベクター(RV)で形質導入し、その後照射された(280cGy)NSGマウスあたり100万個のCD34
+細胞の等価投入量を注射した。一次移植後6週(パネルA、C、E、およびG)および12週(パネルB、D、F、およびH)で骨髄(BM)を多系統再構成について分析した。未形質導入(GFP
-)および形質導入(GFP
+)両方のヒトCD33
+骨髄性集団(パネルAおよびB)、ヒトCD19
+B-リンパ性(パネルCおよびD)、ヒトCD3
+T-リンパ性(パネルEおよびF)、およびヒトCD34
+HSPC集団(パネルGおよびH)を示す。データは平均±SEMとして表した。合計50NSGマウスに対して0時間についてn=12、18~24時間についてn=7、36~42時間についてn=11、72~96時間についてn=20。統計:マン・ホイットニー検定、**P<0.01。
【
図6-1】LVおよびRVの両方がヒトHPCおよびHSCを同等に形質導入することを示す。42時間のLV形質導入後の様々な造血幹/前駆細胞(HSPC)サブセット(パネルA、左)および定量化(パネルA、右)(n=4の独立した実験)、72時間のLVまたはRV形質導入後のヒトCD34
+HSPC対CD34
+38
-90
+45RA
-49f
+HSC(左)および定量化(右)(n=3の独立した実験)(パネルB)、ならびにそれぞれの群の定量化(パネルDおよびF)を伴う72時間のLV(パネルC)またはRV(パネルE)形質導入後のCD34
+38
-90
-45RA
-MPP対HSCにおける、緑色蛍光タンパク質(GFP)マーカー発現を示す代表的な蛍光活性化細胞選別(FACS)プロットを、平均±SEMでの棒グラフ(n=3の独立した実験)として示す。
【
図7-1】エクスビボ操作がHSCの生存率またはアポトーシスの低減とは関連していないが、ROSがより高い表現型HSCの増加とは関連し、ROSの低減が遺伝子導入を減少させることを示す。ヒトCD34
+細胞を培養し、指示された時点についてLVまたはRVで形質導入した。パネルA:採取後の全細胞生存率をトリパンブルー排除方法によって決定した。パネルB:エクスビボ培養後のアネキシンV
+(アポトーシス)CD34
+38
-90
+細胞をフローサイトメトリーにより検出した。パネルC:表現型ヒトHSC(CD34
+38
-90
+45RA
-49f
+細胞)の倍率増加をフローサイトメトリー分析後に計算した(n=5)。統計:対応のあるt検定。パネルD:EdU取り込みアッセイにおいてEdU
+HSPCおよびHSCの割合によって決定されたエクスビボ培養中のヒトCD34
+HSPC対CD34
+38
-90
+HSC富化集団の増殖状態(N=3)。パネルE:総細胞内ROSレベルをCM-H2DCFDA蛍光を用いて決定し、LVおよびRV形質導入ヒト(CD34
+38
-90
+)HSCにおけるDCFDA MFIの倍率変化を±SEMの平均として示す(n=3)。統計:スチューデントのt検定、*p<0.05。パネルF:24時間対72時間培養されたヒトCD34
+38
-90
+HSCにおけるミトコンドリア特異的ROSの測定のためのMitoSOXを示す代表的なヒストグラムプロット。数字はMFIを表す。CD34
+38
-90
+HSC中の増加する用量の抗酸化剤N-アセチルシステインアミド(NACA)での陽性セルリアン蛍光タンパク質(CFP)%(パネルH)に関するMitoSOXレベル(パネルG)および形質導入効率を示すヒストグラムプロット(n=1実験)。
【
図8-1】培養時間の増加がHSCにおいてp38MAPKを活性化することを示す。ヒトMPB由来CD34
+細胞を培養し、
図4に記載のように形質導入した。フローサイトメトリーによるヒト(CD34
+38
-90
+)HSC富化におけるホスホ-ERK(p-ERK)(パネルA)、ホスホJNK(p-JNK)(パネルB)、およびホスホ-p38MAPK(p-p38)(パネルC)レベルを示す代表的なヒストグラムプロット。指示された時間でのHSC中のp-ERK(パネルD)、p-JNK(パネルE)、およびp-p38(パネルF)の平均蛍光強度(MFI)の定量的倍率変化を示す。データは3人の異なるMPBドナーを用いた3つの独立した実験からの平均±SEMとして表した。統計:スチューデントのt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。パネルG:(細胞周期のG
0-G
1期の)非周期HSC対(細胞周期のS-G
2-M期の)周期HSCにおけるp-p38レベルの代表的なヒストグラムプロット。ヘキストを用いて周期を決定した。数字はMFIを示す。3つの独立した実験からの周期対非周期(パネルH)および未形質導入(GFP
-)対形質導入(GFP
+)HSC(パネルI)におけるp-p38MFIの定量的倍率変化を平均±SEMとして示す。統計:スチューデントのt検定、*p<0.05。パネルJおよびK:ヒトMPB由来CD34
+細胞を様々なp38阻害剤(B=Birb796、Vx=VX745、およびLy=Ly2228820)ありまたはなしで培養し、72時間レトロウイルス(RV)で形質導入した。ヒト(CD34
+38
-90
+)HSCにおけるp-p38レベルの代表的なヒストグラムプロットを示す(パネルJ)。未操作(0時間)HSCと比較した72時間培養ヒトHSCにおけるp-p38平均蛍光強度(MFI)の定量的倍率変化を示す(パネルK)。データは7人の異なるMPBドナーを用いる7つの独立した実験からの平均±SEMとして表す。統計:スチューデントのt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図9-1】エクスビボ培養中のp38MAPKの阻害がHSCの長期再増殖能(LTRP)を救済し、骨髄性歪み表現型を部分的に元に戻すことを示す。ヒトCD34
+細胞を培養し、指示された時点について緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するレンチウイルスベクター(LV)またはγ-レトロウイルスベクター(RV)で形質導入した。p38阻害剤(p38i)ありまたはなしでのCD34
+38
-90
+45RA
-49f
+HSCにおけるp-p38MAPK平均蛍光強度(MFI)(パネルA)、およびHSCにおけるp-p38MAPK MFIの定量的倍率変化(パネルB)の代表的なフローサイトメトリーヒストグラムプロット。データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表した。1T後24週後のp38阻害剤あり(縞模様のバー)またはなし(無地のバー)でのNSGマウスにおけるヒトCD45
+生着(パネルC)、および2T後6週後のp38iありまたはなしでのNSGマウスにおけるヒト生着(パネルD)。移植された全マウスに対する非生着マウス(全BM中の<0.01%CD45
+細胞)をパーセンテージとして示す。統計:パネルDについて、フィッシャーの正確確率検定を行った。移植後24週の1Tマウスにおけるp38iありまたはなしでのヒトCD33
+骨髄性(パネルEおよびF)、CD19
+B-リンパ性(パネルGおよびH)、およびCD34
+HSPC(パネルIおよびJ)再構成(パネルE、G、およびI:GFP
-未形質導入、パネルF、H、およびJ:GFP
+形質導入)。データは5つの独立した実験からの平均±SEMとして表した(パネルCおよびE~J)。合計139マウスに対して0時間について:n=15マウス、18~24時間処理なし(Φ)n=19マウス、18~24時間p38i n=21マウス、36~42時間Φ n=17マウス、36~42時間p38i n=14マウス、72~96LVΦ n=12マウス 72~96LV p38i n=7マウス、72~96時間RVΦ n=17マウス、72~96時間RV p38i n=17マウス。統計:マン・ホイットニーU検定(パネルCおよびE~J)、*P<0.05、**P<0.01、*** P<0.001。
【
図10】エクスビボ培養中のp38MAPKの阻害が二次移植NSGマウスにおいてヒト生着を保持することを示す。二次移植の6週後のBirb 796ありまたはなしでのNSGマウスにおけるヒト生着を調査した。生着マウス(全骨髄中の>0.01%CD45
+細胞)を中央のバーの上に示し、生着/総マウス数を横に示す。中抜き三角は対照であり、塗りつぶし三角はp38iで処理される。各記号は個々のマウスを表す。データは5つの独立した実験からの平均±SEMとして表した(0時間についてn=16、18~24時間LV対照についてn=25、18~24時間LVp38iについてn=11、36~42時間LV対照についてn=17、36~42時間LVp38iについてn=9、72~96時間LV対照についてn=12、72~96時間LVp38iについてn=7、72~96時間RV対照についてn=29、および72~96時間RVp38iについてn=16)統計:マン・ホイットニーU検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図11】NSGマウスの骨髄におけるGFPマーキングを示す。ヒトCD34
+細胞を
図9に記載のように培養し、NSGマウスに移植した。全ヒトGFP
+細胞を、移植前にインビトロで(パネルA)、ならびに一次移植後(1T)6週(パネルB)および24週(パネルC)にインビボで分析した。パネルAでは、18~24時間はGFP発現を測定するのに十分な時間ではなかったので示さなかった。データは5つの独立した実験からの平均±SEMとして表した(各群n=12~21マウス)。統計:対応のあるt検定、**p<0.01。
【
図12】p38阻害が、総CD34
+細胞数/生存率、アポトーシス、形質導入効率、およびROSレベルを変化させず、表現型HSCのパーセンテージを保持し得ることを示す。ヒトCD34
+細胞を培養し、
図9、パネルAに記載のように形質導入した。採取された細胞を生存率についてトリパンブルーで染色し、ヒトCD34
+38
-90
+45RA
-49f
+(HSC)パーセント(パネルA)(n=6)、アネキシンV
+(アポトーシス)CD34
+38
-90
+細胞パーセント(パネルB)(n=3)の倍率変化、総生存CD34
+細胞数(パネルC)の倍率変化、未処理CD34
+38
-90
+細胞に対する(GFPマーカーパーセンテージに基づく)形質導入効率の倍率変化(パネルD)(n=5)、およびCD34
+38
-90
+細胞におけるMitoSOX MFIの倍率変化(パネルE)(n=3)示す。データは平均±SEMを表す。統計:対応のあるt検定、*p<0.05。
【
図13-1】p38MAPK阻害がエクスビボ培養中にDNA損傷応答(DDR)を低減することを示す。ヒトCD34
+細胞を培養し、指示された時点について緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するレンチウイルスベクター(LV)またはγ-レトロウイルスベクター(RV)で形質導入した。抗γH2AXおよび53BP1で染色された72時間p38iを伴ってまたは伴わないで処理された選別されたヒト(CD34
+38
-90
+)HSCの代表的な免疫蛍光画像(パネルA)、ならびにLVで36時間(パネルB)、およびRVで72時間(パネルC)形質導入されたHSCにおけるMFI/細胞としてのγ-H2AXおよび53BP1の定量化。p38阻害剤(p38i)ありまたはなしでのγ-H2AXについて染色されたHSCのフローサイトメトリー分析からの代表的なヒストグラムプロット(パネルD)、ならびに指示された時間でのγ-H2AXの平均蛍光強度(MFI)(パネルE)およびγH2AX
+HSCパーセント(パネルF)の倍率変化の定量化。ヒストグラムに示されるパーセンテージはγH2AXについて陽性の細胞であり、下の数字は平均蛍光強度(MFI)(n=5の独立した実験)である。統計:マン・ホイットニーU検定および対応のあるt検定、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図14-1】p38MAPK阻害がHSCをエクスビボ培養の初期時間中にG
0静止期に保持し、より長いエクスビボ予備刺激時間後のヒトHSC富化細胞の形質導入がG
2M期蓄積の増加を示すことを示す。ヒトMPB由来CD34
+細胞を培養し、
図13、パネルAに記載のように形質導入した。培養(パネルA)および定量化(パネルB)における指示された時間でp38iありまたはなしでの細胞周期のG
0(静止)、G
1、およびS-G
2M期における(CD34
+38
-90
+)HSCを表すFACSプロットを示す。(Φ=無処理)細胞周期のG
0、G
1、およびS-G
2M期における(±SEM)HSCのパーセンテージをy軸に示す。(24時間LVについてn=4の独立した実験、42時間LVについてn=7、および72時間RVについてn=5))。パネルCおよびD:LV
E(LV初期)(パネルC)またはRV(パネルD)のいずれかでのHSCにおけるG
2M期蓄積の分析を表し、最後の形質導入の18時間後(n=1)に分析されたヒストグラムプロット。初期(LV
E)もしくは後期(LV
L)のいずれかにLVで、またはγ-レトロウイルスベクター(RV)で形質導入されたHSCにおけるG
2-M期蓄積の経時的分析を表すヒストグラムプロット(パネルE)。72時間の培養のG
2M期でのGFP
-(未形質導入)対GFP
+(形質導入)細胞の倍率変化の定量化を示す(パネルF)(n=3の独立した実験)。統計:対応のあるスチューデントのt検定、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図15】p38MAPK阻害が骨髄(BM)由来のヒトCD34
+38
-90
+細胞においてDNA損傷応答(DDR)も低減することを示す。ヒトBM由来CD34
+細胞を培養し、レンチウイルス(LV)で48時間形質導入した。パネルA:p38iありまたはなしでの細胞周期のG
0(静止)、G
1、およびS-G
2-M期における骨髄由来(CD34
+38
-90
+)HSCを表す代表的なFACSプロット(左)ならびに指示された時間および処理でのγH2AXの対応する代表的なヒストグラムプロット(右)。ヒストグラムに示されるパーセンテージはγH2AXについて陽性の細胞であり、下の数は平均蛍光強度(MFI)である。様々な細胞周期におけるHSCの定量的プロット(パネルB)およびその対応するγH2AX MFI(パネルC)を示す。n=1の実験。
【
図16】p38MAPK阻害がHSCをエクスビボ培養および遺伝子導入の初期期間中G
0静止期に保持することを示す。ヒトMPB由来CD34
+細胞を培養し、
図13に記載のように形質導入した。エクスビボ培養の24時間(LV)(パネルA)、42時間(LV)(パネルB)、および72時間(RV)(パネルC)のp38iありまたはなしでの細胞周期のG
0およびG
1-S-G
2-M期における(CD34
+38
-90
+)におけるHSCを表す定量的プロット。(24時間のLVについてn=4の独立した実験、42時間のLVについてn=7、および72時間のRVについてn=5)。統計:対応のあるt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図17-1】非周期HSCの形質導入(LV、LV
Eでの6および18時間)がHSC系統運命を保持するが、周期HSCの形質導入(RVまたはLV[LV
L]での44時間および68時間)が骨髄性に偏ったHSC運命をもたらすことを示す。パネルA:エクスビボ培養および形質導入スキーマ。パネルB:24時間対72時間培養(CD34
+38
-90
+)HSCにおける熟成に関連する遺伝子のmRNA発現をqPCRにより分析した。GAPDHを参照遺伝子として使用した。n=3MPBドナー。データは±SEMを意味する。対応のないt検定。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。1T後24週のNSGマウスのBMにおける形質導入(GFP
+)CD45
+細胞内のCD33
+骨髄性(パネルC)およびCD19
+Bリンパ性(パネルD)系統比率。データを平均±SEMとして表した(24LVおよび72LV
Eについてn=5マウス、72LV
Lまたは72RVについてn=4マウス)。統計:マン・ホイットニーU検定、*p<0.05。パネルE:トランスフェクションスキーマ(上)φ(トランスフェクションコントロールなし)対遺伝子編集(GE)(トランスフェクト)(CD34
+38
-90
+)HSCにおけるG2M蓄積(下:左)。GEを44時間の予備刺激後にCas9およびgRNAを含有するRNPのトランスフェクションによって行い、トランスフェクション後6時間または24時間のいずれかに細胞周期を分析した。トランスフェクション後のG2-M蓄積の時間経過6時間対24時間を示す定量的プロット(下:右)。パネルF:7日目のGEありまたはなしでの全CD34
+細胞中のhCD45発現%。
【
図18】G
2-M期のHSC富化細胞の増加がCHK2ではなくCHK1に特異的であり、エクスビボ培養中の形質導入がHIF1αを減少させ、γH2AXを増加させ、これはp38阻害剤(p38i)とプロスタグランジンE2(PGE2)との組み合わせによって逆転することを示す。パネルA:指示された化合物を用いて72時間RVで形質導入された(CD34
+38
-90
+)HSC中のG
2-M期蓄積(%表示)の代表的なヒストグラムプロット。パネルB:HIF-1αについて染色されたHSCの代表的なヒストグラムプロット、DEF(フマル酸ジエチル)およびα-KG(α-ケトグルタレート)をHIF-1α染色の陽性および陰性対照として用いた。n=1。パネルC:指示された化合物での72時間の培養およびRV形質導入後の(CD34
+38
-90
+)HSC中のγH2AXの代表的なヒストグラムプロット。数字は平均蛍光強度(MFI)を表す。φ=形質導入なし、対照=処理なし。
【
図19-1】後期形質導入HSCにおけるG
2M期蓄積の増加およびHIF-1αの減少が、Chk1キナーゼ阻害剤(Chk1i)またはプロスタグランジンE2(PGE2)のいずれかと組み合わされたp38阻害剤(p38i)によって逆転することを示す。72時間のRV形質導入後のフローサイトメトリーによるG
2M期におけるGFP
-(未形質導入)対GFP
+(形質導入)HSC(CD34
+38
-90
+)の倍率変化の定量化(パネルA)(n=6、統計:対応のあるスチューデントのt検定、*P<0.05。**P<0.01)、およびγ-H2AX平均蛍光強度(MFI)の倍率変化の定量化(パネルB)(n=9の独立した実験、統計:対応のあるウィルコクソン検定、*P<0.05)。**P<0.01)。パネルC:HSCにおけるHIF-1αMFIの定量的倍率変化(3人の異なるMPBドナーを用いたn=3の独立した実験、対応のあるスチューデントのt検定)。HIF-1αについて染色されたHSCの代表的な免疫蛍光画像(パネルD)および細胞あたりのHIF-1αの定量的MFIを示す(パネルE)(統計:対応のあるウィルコクソン検定、*P<0.05)。G
2-M期のHSC富化細胞における定量的倍率変化(パネルF)(n=8)および指示された処理によるHSCのγ-H2AX MFIにおける倍率変化(パネルG)を示す(n=9の独立した実験、統計:対応のあるスチューデントt検定、*P<0.05。**P<0.01、***P<0.001)。
【
図20-1】p38iとPGE2との併用処理が限界用量でヒト生着およびCD34
+細胞移植マウスにおける骨髄性歪み表現型の完全な逆転を増加させたことを示す。限界希釈移植を方法に記載されているように行った。マウスに、指示された数の開始CD34
+細胞を、処理なし(φ:中抜き緑丸)、p38阻害剤(p38i:塗りつぶし青丸)、もしくはPGE2(P:塗りつぶし紫丸)、またはp38i+PGE2(p38i+P:塗りつぶし赤丸)での42時間のレンチウイルス(LV)形質導入および培養後に注射した。1T後6ヶ月の骨髄(BM)中のヒトCD33
+骨髄性細胞(未形質導入、GFP
-:パネルAおよび形質導入GFP
+:パネルB)およびCD19
+B-リンパ性細胞(未形質導入、GFP
-:パネルCおよび形質導入GFP
+:パネルD)のパーセンテージを示す(合計76NSGマウスに対して、P:500K用量n=4、p38i+P:50K用量n=3、およびφ:250K用量n=4を除き、CD34投入用量の各々についてn=5マウス/処理)。一次移植(1T)後6ヶ月(6mo)の骨髄中のヒトCD45
+細胞%(y軸)および同数の開始CD34
+細胞(X軸)を示す(パネルE)。プロットされているのは、一次移植後6ヶ月の0.1%未満のヒトCD45
+細胞を含有する陰性または未移植マウスの割合である(パネルF)。機能的HSC(競合的再増殖単位:CRU)の頻度を表の横に示す。方法に記載されているように、1Tで使用された最高投入用量からの一次限界希釈移植の24週後に二次移植を行った。二次移植(2T)後12週のBMにおけるヒトCD45
+細胞%(パネルG)、GFP
+hCD45
+細胞(パネルH)、およびヒトCD33
+骨髄性細胞%(未形質導入、GFP
-:パネルIおよび形質導入GFP
+:パネルJ)、CD19
+B-リンパ性細胞(未形質導入、GFP
-:パネルKおよび形質導入GFP
+:パネルL)を示す。合計32NSGマウスに対して、φについてn=9、p38iについてn=7、Pについてn=8、p38i+Pについてn=8。データを平均±SEMとして表す。統計:マン・ホイットニーU検定、正確なP値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
造血幹細胞(HSC)は、例えば、異常ヘモグロビン症を含む、様々な遺伝性血液疾患に対する遺伝子療法のための望ましい標的である。それらは造血系を再生するために造血前駆細胞(HPC)に分化する能力を有する。しかしながら、HSCへの遺伝子導入またはHSCにおける遺伝子編集は、典型的にはエクスビボ操作および培養を含み、それは大量のHSC喪失をもたらし、これらの細胞はインビボでの生着であまりコンピテントではなくなる。現在、自家移植後に再増殖するヒトHSCの限られた数は、効果的な遺伝子導入の大きな限界となっている。したがって、常在HSCを破壊するための骨髄破壊的前処置での大きな形質導入HSCは、現在、生着の利点を提供するために必要とされている。しかしながら、HSCの供給源は限られており、骨髄破壊的前処置はそのような手順に感受性である患者において有害作用または合併症を誘導し得る。したがって、HSC移植を必要とする対象における生着の増加のための造血幹細胞(HSC)を調製するための方法および組成物を開発する必要がある。
【0023】
p38MAPK阻害剤単独では、エクスビボ操作ストレス(例えば、長期エクスビボ培養および/または遺伝子操作)に関連するDNA損傷応答(DDR)を効果的に低減することにより、それらの最初の細胞分裂前に造血幹細胞(HSC)の幹細胞性を効果的に維持した一方で、HSCにおけるp38MAPK阻害剤のこのような効果は、HSCが細胞周期を通して進行した後にはそれほど効果的ではなくなった。本開示は、少なくとも部分的には、p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせが幹細胞(例えば、周期または分裂HSCなどのHSC)の生着能力の向上に対して相乗効果を示したが、いずれの薬剤の不在もそうすることができなかったという予想外の発見に基づく。特に、(例えば、遺伝子操作による)DNA二本鎖切断が周期または分裂HSCにおいて発生する場合、SおよびG2M後期にHSCSの蓄積があり、この現象が非周期HSCにおいて観察されなかったことが発見された。G2M蓄積を有するこのようなHSC集団は、p38MAPK阻害剤単独によって効果的に救済されなかった骨髄性バイアス子孫を産生した。しかしながら、驚くべきことに、p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせが、周期または分裂HSCを含むHSCにおけるDDRおよびG2M蓄積の両方を効果的に低減し、これによってHSCにおける骨髄性歪みを回復、HSCの長期再増殖能を維持、および/またはインビボで移植されたHSCの生着の増加させることが発見された。したがって、p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせは、HIF-1αを安定させると同時にp38MAPKストレスシグナル伝達を遮断することによって(例えば、長期培養および/または遺伝子操作などのエクスビボ操作に供される、周期HSCを含む)HSCのインビボ生着能力を相乗的に向上させることができる。
【0024】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、1つ以上のp38MAPK阻害剤および1つ以上のHIF-1α安定化剤の存在下でHSCなどの幹細胞の幹細胞性を保存するためのエクスビボ細胞培養方法を提供する。p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせは、長期エクスビボ培養および/または遺伝子操作による少なくともDNA損傷応答を抑制するだけでなく、HSCが細胞分裂中に遺伝子修飾される場合、細胞周期のGM2期におけるHSCの蓄積も低減する。いくつかの例では、幹細胞は、DNA二本鎖切断を誘導する操作、例えば、幹細胞のゲノムに組み込むことができるベクターによる形質導入、またはゲノム編集を受け得る。ゲノム編集方法は、一般に、標的核酸における二本鎖切断の生成に関与するエンドヌクレアーゼのタイプに基づいて分類される。いずれの特定の理論にも縛られることを望むものではないが、HSCのエクスビボ操作は、ストレスシグナル伝達を活性化し、HSC自己再生を犠牲にして造血前駆細胞(HPC)へのそれらの関与をもたらし得る。DNA二本鎖切断を伴う事象(例えば、ベクター組み込みまたは遺伝子編集事象)は、特に周期細胞においてDNA二本鎖切断が起こる場合、HSC喪失を悪化させ得る。本発見は、HIF-1αを安定させると共にp38MAPKシグナル伝達経路を遮断することが、エクスビボ培養および遺伝子操作におけるそのようなHSC喪失を救済することを示した。したがって、1つ以上のHIF-1α安定化剤と組み合わせて1つ以上のp38MAPK阻害剤を使用して向上した生着活性を有するHSC(周期または分裂HSCを含む)などの幹細胞を調製するためのエクスビボ方法および組成物もまた本明細書に記載される。本明細書に記載の方法および組成物は、HSC移植後の対象(例えば、ヒト患者)におけるHSCの生着を促進する。HSC生着活性を向上させることは、(HSC移植時に)骨髄の造血および/または免疫機能の回復のレベルを増加させることを含み得る。あるいはまたは加えて、それは、この回復が起こる速度(例えば、生着の特定のマイルストーンを達成する時間)を増加させることを含み得る。
【0025】
I.p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)阻害剤
p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)は、サイトカイン、紫外線照射、熱ショック、および/または浸透圧ショックなどのストレス刺激に応答するマイトジェン活性化タンパク質キナーゼの一種である。p38MAPKファミリーは、4つのメンバー、p38-α(MAPK14)、p38-β(MAPK11)、p38-γ(MAPK12/ERK6)、およびp38-δ(MAPK13/SAPK4)を含み、これらはサイトカインおよびストレスに対する細胞応答を制御するシグナル伝達カスケードに関与する。p38MAPKメンバーのいずれかに対する阻害剤は、本明細書に記載されるエクスビボ培養方法において使用することができる。いくつかの例では、本明細書で使用される阻害剤は、メンバーの1つに特異的であり、例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、またはp38-δに特異的である。他の例では、p38MAPK阻害剤は、p38MAPKファミリーの2つ以上のメンバーに普遍的である。一例では、本明細書で使用される阻害剤は、p38-α(MAPK14)に対して特異的または選択的である。
【0026】
様々な種の野生型p38MAPK配列(例えば、p38-α(MAPK14)、p38-β(MAPK11)、p38-γ(MAPK12/ERK6)、およびp38-δ(MAPK13/SAPK4)の配列)は、ヒト、マウス、およびラットを含み、NCBIからワールドワイドウェブ上で入手可能である。例えば、ヒトp38-α(MAPK14)のアイソフォームをコードするヌクレオチド配列は、NCBIにてGenBank受託番号NM_001315で入手可能であり、その対応するアミノ酸配列は、GenBank受託番号NP_001306で提供される。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「p38MAPK阻害剤」という用語は、p38MAPKタンパク質の生物学的活性を部分的にまたは完全に遮断する、阻害する、または中和する分子を指す。適切な阻害剤分子には、具体的には、アンタゴニスト抗体(例えば、全長抗体または抗体断片)、天然ポリペプチドの断片またはアミノ酸配列バリアント、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、有機小分子、組換えタンパク質またはペプチドなどが含まれる。ポリペプチドの阻害剤を特定するための方法は、ポリペプチドを候補p38MAPK阻害剤分子と接触させること、およびポリペプチドに通常関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含むことができる。
【0028】
p38MAPK阻害剤は、例えば、p38MAPKコード核酸の転写もしくは翻訳を減少させること、またはp38MAPKポリペプチド活性を阻害もしくは遮断することのいずれか、あるいはその両方によって、細胞における少なくとも1つ以上のp38MAPKファミリーメンバー(例えば、p38-α(MAPK14)、p38-β(MAPK11)、p38-γ(MAPK12/ERK6)、およびp38-δ(MAPK13/SAPK4))に関連するシグナル伝達に干渉する任意のタイプの分子であり得る。いくつかの例では、p38MAPK阻害剤は、p38-α(MAPK)に関連したシグナル伝達に干渉する薬剤である。p38MAPK阻害剤の例としては、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、RNA-DNAキメラ、p38MAPK特異的アプタマー、抗p38MAPK抗体、抗p38MAPK抗体のp38MAPK結合断片、p38MAPK結合小分子、p38MAPK結合ペプチド、およびp38MAPK阻害剤とp38MAPKとの間の相互作用がP38MAPK活性または発現の低減または停止をもたらすように、p38MAPKに特異的に結合する他のポリペプチド(任意に1つ以上の追加のドメインに融合した、1つ以上のp38MAPKリガンドのp38MAPK結合断片を含むが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、p38MAPK阻害剤が別のp38MAPK活性に影響を与えることなく1つのp38MAPK活性をアンタゴナイズまたは中和することができることは、当業者よって理解されるであろう。例えば、本明細書の特定の方法における使用に望ましいp38MAPK阻害剤は、例えば、他のp38MAPK相互作用、例えば、p38-β、p38-γ、および/またはp38-δを結合することのいずれにも影響を及ぼさず、または影響を最小限にして、p38-αに結合し、p38MAPKシグナル伝達を遮断するp38MAPK阻害剤である。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に使用されるp38MAPK阻害剤は細胞透過性である。
【0030】
いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、HSCなどの遺伝子操作幹細胞におけるDNA二本鎖切断および/またはDNA損傷応答を直接的または間接的に阻害または低減する薬剤であり、例えば、DNA二本鎖切断および/またはDNA損傷応答は、p38MAPKの1つ以上のファミリーメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、p38-δ、およびそれらの任意の組み合わせ)によって媒介される。したがって、p38MAPK阻害剤は、p38MAPK(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、p38-δ、およびそれらの任意の組み合わせ)またはp38MAPKの上流分子のいずれかを標的とすることができる。p38MAPK阻害剤の例としては、限定なく、抗p38-α分子、抗p38-β分子、抗p38-γ分子、抗p38-δ分子、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。p38MAPK阻害剤は、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、アプタマー、核酸、抗体、小分子、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0031】
p38MAPK阻害剤は、p38MAPKの1つ以上のファミリーメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、p38-δ、およびそれらの任意の組み合わせ)の結合に干渉する分子(例えば、抗体、アプタマー、または小分子)であり得る。あるいは、p38MAPK阻害剤は、p38MAPKの1つ以上のファミリーメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、p38-δ、およびそれらの任意の組み合わせ)の転写および/または翻訳を抑制し、それによってこの酵素のmRNA/タンパク質レベルを低減する分子(例えば、阻害ポリヌクレオチドまたは干渉RNAもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド)であり得る。本明細書に記載のp38MAPK阻害剤は、(例えば、遺伝子操作後のエクスビボ培養中に)幹細胞またはHSCにおけるP38MAPKシグナル伝達を少なくとも20%以上、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上低減し得る。p38MAPKに対するそのような阻害剤の阻害活性は、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットなどのタンパク質アッセイを使用して、例えば、p-p38のリン酸化レベルを測定する、従来の方法によって決定することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、p38MAPKの1つ以上のファミリーメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、p38-δ、およびそれらの任意の組み合わせ)に特異的に結合し、p38MAPKシグナル伝達経路を活性化するその活性を中和する抗体である。本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、キメラ、Fab断片、Fv断片、F(ab’)断片、およびF(ab’)2断片、ならびに単鎖抗体(scFv)、融合タンパク質および抗体の抗原結合部位を含む他の合成タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0033】
当業者は、抗体を当該技術分野において既知の方法ならびに商業的に利用可能なサービスおよびキットを用いて作製することができる。モノクローナル抗体の調製方法は、当該技術分野において周知であり、ハイブリドーマ技術およびファージディスプレイ技術を含む。本開示における使用に適したさらなる抗体は、例えば、以下の刊行物:Antibodies A Laboratory Manual,Second edition.Edward A.Greenfield.Cold Spring Harbor Laboratory Press(September 30,2013)、Making and Using Antibodies:A Practical Handbook,Second Edition.Eds.Gary C.Howard and Matthew R.Kaser.CRC Press(July 29,2013)、Antibody Engineering:Methods and Protocols,Second Edition(Methods in Molecular Biology).Patrick Chames.Humana Press(August 21,2012)、Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology).Eds.Vincent Ossipow and Nicolas Fischer.Humana Press(February 12,2014)、およびHuman Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology).Michael Steinitz.Humana Press(September 30,2013))に記載されている。
【0034】
抗体は、標準的な技法によって、例えば、適切なポリペプチドもしくはその部分(複数可)での免疫化によって、またはファージディスプレイライブラリーを使用することによって産生され得る。ポリクローナル抗体が所望される場合、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)は、所望のエピトープ(複数可)を有する免疫原性ポリペプチドで免疫化され、任意に別のポリペプチドにハプテン化される。宿主種に応じて、免疫学的応答を増加させるために様々なアジュバントが使用され得る。そのようなアジュバントとしては、フロイント、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、ならびにリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールなどの界面活性物質が挙げられるが、これらに限定されない。免疫化動物からの血清は収集され、既知の手順に従って処理される。所望のエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する血清が他の抗原に対する抗体を含有する場合、ポリクローナル抗体は免疫親和性クロマトグラフィーまたは当該技術分野で既知の任意の他の方法によって精製することができる。ポリクローナル抗血清を産生および処理するための技法は当該技術分野で周知である。
【0035】
阻害剤が無関係なポリペプチドよりも高い親和性でp38MAPKの特定のメンバーに結合する場合、p38MAPK阻害剤はp38MAPKのメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、またはp38-δ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、無関係なポリペプチドに対するよりも少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも50倍高い親和性でp38MAPKの1つのメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、またはp38-δ)に結合する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、無関係なポリペプチドに対するよりも少なくとも100、または少なくとも1,000、または少なくとも10,000倍高い親和性でp38MAPKの1つのメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、またはp38-δ)に結合する。そのような結合は、当該技術分野で周知の方法、例えば、Biacore(登録商標)システムなどの表面プラズモン共鳴によって決定され得る。いくつかの実施形態では、阻害剤は、少なくとも10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、または10-11Mのp38MAPKの特定のメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、またはp38-δ)に対する(解離定数、KDによって測定される)親和性を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、典型的には5,000kDa未満の分子量を有する、小有機分子などの小分子である。適切な小分子は、p38MAPKの1つ以上のファミリーメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、またはp38-δ)またはそれらの断片に結合するものを含み、化合物の大きなライブラリーをスクリーニングすることなどの方法(Beck-Sickinger&Weber(2001)Combinational Strategies in Biology and Chemistry(John Wiley&Sons,Chichester,Sussex)、核磁気共鳴による構造-活性相関(Shuker et al(1996)”Discovering high-affinity ligands for proteins:SAR by NMR.Science274:1531-1534)、コードされた自己集合化学ライブラリー(Melkko et al(2004)“Encoded self-assembling chemical libraries.”Nature Biotechnol.22:568-574)、DNAテンプレート化学(Gartner et al(2004)”DNA-tem plated organic synthesis and selection of a library of macrocycles.Science305:1601-1605)、動的コンビナトリアル化学(Ramstrom&Lehn(2002)“Drug discovery by dynamic combinatorial libraries.”Nature Rev.Drug Discov.1:26-36)、テザリング(Arkin&Wells(2004)“Small-molecule inhibitors of protein-protein interactions:progressing towards the dream.Nature Rev.Drug Discov.3:301-317)、およびスピードスクリーン(Muckenschnabel et al(2004)“SpeedScreen:label-free liquid chromatography-mass spectrometry-based high-throughput screening for the discovery of orphan protein ligands.”Anal.Biochem.324:241-249)によって特定され得る。典型的には、小分子は、ナノモル範囲のP38MAPKに対する解離定数を有するであろう。
【0037】
本明細書に記載のエクスビボ培養方法において使用するための小分子p38MAPK阻害剤の例を以下の表1に提供する。
【表1】
【0038】
例示的なp38MAPK阻害剤としては、ドラマピモド(例えば、BIRB-796)、ラリメチニブ(例えば、LY2228820ジメシレート)、アミノピリジンベースのp38MAPKのATP競合阻害剤(例えば、Vx702)、ピリジニルイミダゾール阻害剤(例えば、SB203580)、およびそれらの任意の組み合わせも挙げられる。
【0039】
他のp38MAPK阻害剤は、当該技術分野、例えば、米国特許第7,169,779号、同第6,635,644号、同第6,608,060号、同第6,632,945号、同第6,528,508号、同第6,509,363号(p38の複素環阻害剤)、同第6,147,080号、同第6,800,626号、同第6,093,742号、同第6,949,560号(イミダゾ置換化合物)、同第6,852,740号(ピラゾール誘導体)、同第6,630,485号、同第6,759,410号(3,4-ジヒドロ-(1h)-キナゾリン-2オン)、同第6,696,471号(アミノピロール化合物)、同第6,696,443号(ピペリジン/ピペラジン型阻害剤)、同第6,509,361号(1,5-ジアリール置換ピラゾール)、同第6,444,696号(ピラゾール誘導体)、およびPCT特許公開第WO2000/017175号、同第WO2000/017204号、同第WO1996/021654号、同第WO1999/000357号、同第WO1999/064400号に記載されるもの、参照により本明細書に組み込まれる各々の関連教示において周知である。Xing”Clinical candidates of small molecule p38 MAPK inhibitors for inflammatory diseases”(2015)MAP Kinase4:5508に記載される他のp38MAPK阻害剤も、本明細書に記載のエクスビボ方法および組成物に使用され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、小干渉RNA(siRNA)短ヘアピンRNA(shRNA)などの干渉RNAである。いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、p38MAPKの1つ以上のファミリーメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、またはp38-δ)のmRNAに結合し、その翻訳を遮断するか、またはRNA干渉を介してmRNAを分解する小干渉RNA(siRNA)である。例示的な小干渉RNAは、Hannon et al.Nature,418(6894):244-51(2002)、Brummelkamp et al.,Science21,21(2002)、およびSui et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA99,5515-5520(2002)によって記載されている。RNA干渉(RNAi)は、サイレンシングされた遺伝子と配列が相同である二本鎖(dsRNA)によって開始される動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。siRNAは一般に、各鎖が20~25(例えば、19~21)塩基対長であるRNA二本鎖である。いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、p38MAPK核酸(例えば、p38MAPK mRNA)に相補的な短ヘアピンRNA(shRNA)である。shRNAは、典型的には19~29塩基対のステム、少なくとも4ヌクレオチド(nt)のループ、および任意に3’末端にジヌクレオチドオーバーハングを含有する。対象におけるshRNAの発現は、shRNAをコードするベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスもしくは細菌ベクター)の送達によって得ることができる。siRNAおよびshRNAは、当該技術分野において既知または市販の任意の方法を用いて設計され得る(例えば、Dharmacon and Life Technologiesから入手可能な製品を参照されたい)。siRNAはまた、その安定性および標的mRNAに対する結合親和性を少なくとも改善するための塩基修飾および/または結合修飾などの1つ以上の化学修飾も含み得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、p38MAPK核酸(例えば、p38MAPK mRNA)に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般に一本鎖核酸(DNA、RNA、またはハイブリッドRNA-DNA分子のいずれか)であり、これはp38MAPK mRNAの一部などの標的核酸配列に相補的である。標的配列に結合することによって、RNA-RNA、DNA-DNA、またはRNA-DNA二本鎖が形成され、それによって、例えば、転写、プロセシング、ポリ(A)付加、複製、翻訳を遮断するか、またはmRNA分解を促進するなどの細胞の阻害メカニズムを促進することにより、標的核酸の機能またはレベルを阻害する。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、10~40、12~35、もしくは15~35塩基長、またはその間の任意の整数である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン(2-アミノ-dA)、5-ブロモdU、5-メチルdC、デオキシイノシン、ロックド核酸(LNA)、5-ニトロインドール、2’-O-メチル塩基、ヒドロキシメチルdC、2’フルオロ塩基などの1つ以上の修飾塩基を含むことができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合などの1つ以上の修飾結合を含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、p38MAPK核酸(例えば、p38MAPK mRNA)に相補的であり、p38MAPK核酸を切断するリボザイムである。リボザイムは、部位特異的に核酸を切断するRNAまたはRNA-タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特異的触媒ドメインを有する。本開示のリボザイムは、米国特許第5,254,678号に記載されているものなどの合成リボザイムであり得る。これらの合成リボザイムは、別々のハイブリダイズ領域および触媒領域を有し、したがって、ハイブリダイズ領域は、p38MAPK配列などの標的配列を認識するように設計することができる。
【0043】
本明細書に記載のsiRNA、shRNA、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドは、p38MAPK核酸(例えば、p38MAPK mRNA)またはその一部に相補的であり得る。相補性は100%の相補性を含むが、必ずしも1つ以上の位置でのミスマッチを排除するわけではなく、例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相補性をもたらすと理解される。
【0044】
いくつかの実施形態では、p38MAPK阻害剤は、非抗体ペプチドまたはタンパク質である。ペプチドまたはタンパク質は、p38MAPKシグナル伝達に干渉するアミノ酸配列を含み得る。タンパク質およびペプチドは、当該技術分野で知られている任意の方法を使用して、例えば、p38MAPKへの結合またはp38MAPKなどのリガンドへのp38MAPK結合の阻害についてタンパク質またはペプチドのライブラリーをスクリーニングすることによって設計され得る。
【0045】
小分子、タンパク質、またはペプチドなどの候補化合物がp38MAPKポリペプチドまたはその断片に結合または相互作用する能力は、タンパク質/タンパク質相互作用または他の化合物/タンパク質相互作用を検出/測定する任意の方法によって測定され得る。適切な方法としては、例えば、酵母ツーハイブリッド相互作用、共精製、ELISA、共免疫沈降、および表面プラズモン共鳴方法などの方法が挙げられる。したがって、全て当該技術分野において知られている、ELISA、共免疫沈降もしくは表面プラズモン共鳴法によって、または酵母ツーハイブリッド相互作用もしくは共精製法によって候補化合物とポリペプチドまたはその断片との間の相互作用が検出され得る場合、候補化合物はポリペプチドまたはその断片に結合することができると考えられ得る。ハイスループット操作が可能であるスクリーニングアッセイもまた企図される。例としては、細胞ベースのアッセイおよびタンパク質-タンパク質結合アッセイが挙げられ得る。
【0046】
幹細胞のインビボ生着を増加させるためにエクスビボ培養および/または遺伝子操作中の幹細胞(例えば、造血幹細胞)の喪失を低減するための使用に適したMAPK阻害剤の他の例は、その関連する開示が本明細書で参照される目的または主題のために参照により組み込まれる、国際特許公開第WO2017/075274号に記載されている。
【0047】
II.低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)安定化剤
低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)は、アルファおよびベータサブユニットからなるヘテロ二量体である、転写因子低酸素誘導因子-1(HIF-1)のアルファサブユニットである。HIF-1は、エネルギー代謝、血管新生、アポトーシス、およびそのタンパク質産物が酸素送達を増加させるかまたは低酸素への代謝適応を促進する遺伝子を含む、多くの遺伝子の転写を活性化することによって低酸素に対する細胞性および全身性恒常性応答のマスターレギュレーターとして機能する。したがって、HIF-1は、胚性血管分布、腫瘍血管新生、および虚血性疾患の病態生理学において本質的な役割を果たす。HEK細胞およびミクログリア細胞において、HIF-1αは、CXCR4プロモーター内の低酸素応答エレメント(HRE)と相互作用することによってCXCR4を調節する。例えば、Staller et al.Nature.2003;425(6955):307-311、およびWang et al.Biochem Biophys Res Commun.2008;371(2):283-288を参照されたい。HIF-1αに対する安定化剤は、本明細書に記載されるエクスビボ培養方法において使用することができる。いくつかの例では、本明細書で使用される安定化剤は、HIF-1αに対して特異的または選択的である。
【0048】
HIF-1のαサブユニットの安定性および活性は、ヒドロキシル化、ユビキチン化、アセチル化、およびリン酸化などのその翻訳後修飾によって調節することができる。例えば、酸素正常状態では、HIF-1αの酸素依存的分解(ODD)ドメインでの2つのプロリン残基のヒドロキシル化およびリジン残基のアセチル化は、pVHL E3リガーゼ複合体とのその会合を誘導し、ユビキチン-プロテアソーム経路を介したHIF-1α分解をもたらす。低酸素状態では、HIF-1αサブユニットは安定し、cAMP応答エレメント結合タンパク質結合タンパク質/p300などのコアクチベーターと相互作用し、標的遺伝子の発現を調節する。
【0049】
様々な種の野生型HIF-1α配列およびそのアイソフォームは、ヒト、マウス、およびラットを含み、NCBIからワールドワイドウェブ上で入手可能である。例えば、ヒトHIF-1αのアイソフォームをコードするヌクレオチド配列は、NCBIにて受託番号NM_001530で入手可能であり、その対応するアミノ酸配列は、受託番号NP_001521である。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「HIF-1α安定化剤」という用語は、HIF-1αタンパク質および/もしくはその生物学的活性を直接的もしくは間接的に安定させる、例えば、HIF-1αタンパク質レベルをHIF-1αmRNA発現に対する最小限の効果もしくは効果なしで安定させる、HIF-1αmRNA発現を増加させる、またはHIF-1αタンパク質もしくはmRNAの分解を部分的もしくは完全に遮断もしくは阻害する分子を指す。適切な安定化剤分子には、具体的には、アゴニスト抗体(例えば、全長抗体または抗体断片)、天然ポリペプチドの断片またはアミノ酸配列バリアント、ペプチド、有機小分子、組換えタンパク質またはペプチドなどが含まれる。ポリペプチドの安定化剤を特定するための方法は、ポリペプチドを候補HIF-1α安定化剤分子と接触させることと、そのレベルおよび/またはポリペプチドに通常関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することとを含むことができる。
【0051】
HIF-1α安定化剤は、例えば、その関連する内容が、参照により本明細書に参照される目的または主題のために組み込まれる、米国特許出願第US2006/0270699号に記載されているように、HIF-1αタンパク質中のアミノ酸残基のヒドロキシル化を阻害する任意のタイプの分子であり得る。いくつかの実施形態では、HIF-1α安定化剤は、HIF-1αタンパク質中の1つまたは2つのプロリン残基(例えば、ODDドメインに位置するPro402およびPro564)のヒドロキシル化を阻害する任意のタイプの分子であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、HIF-1α安定化剤は、HIF-1αの分解を開始するHIF特異的プロリルヒドロキシラーゼの阻害剤であり得る。そのような阻害剤の例には、ジメチルオキサリルグリシン(DMOG、N-(メトキシオキソアセチル)-グリシンとしても知られる)、または2-オキソグルタレート(2-OG)もしくはその類似体(例えば、FG-4592としても知られる、ロキサデュスタット)、またはその誘導体もしくは類似体が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
いくつかの実施形態では、HIF-1α安定化剤は、HIF-1αタンパク質中のリジン残基(例えば、ODDドメインに位置するLys532)のアセチル化を阻害する任意のタイプの分子であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、HIF-1α安定化剤は、プロスタグランジンE2受容体に結合および活性化する任意のタイプの分子であり得る。そのようなHIF-1α安定化剤の非限定的な例には、プロスタグランジンE2(PGE2)および例えば、16-16ジメチルプロスタグランジンE2(dmPGE2)を含む、その類似体または誘導体が含まれる。
【0055】
HIF-1α安定化剤の他の例には、ジメチル-2-ケトグルタレート(DKG)、デスフェリオキサミン(DFO)、鉄キレート剤、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0056】
いくつかの実施形態では、HIF-1α安定化剤は、フマル酸ジエチル(DEF)またはその誘導体もしくは類似体であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に使用されるHIF-1α安定化剤は、細胞透過性である。
【0058】
HIF-1α安定化剤は、HIF-1αの転写および/または翻訳を誘導し、それによってこのタンパク質のmRNA/タンパク質レベルを増加させる分子(例えば、活性化ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド)であり得る。本明細書に記載のHIF-1α安定化剤は、(例えば、エクスビボ培養および/または遺伝子操作中に)幹細胞またはHSCにおけるHIF-1αの転写および/または翻訳を少なくとも20%以上、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上増加させ得る。そのようなHIF-1α安定化剤の活性は、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットなどのタンパク質アッセイを使用して、例えば、HIF-1αのタンパク質またはmRNAレベルを測定する、従来の方法によって決定することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、HIF-1α安定化剤は、HIF-1αタンパク質もしくはその断片、またはHIF-1αペプチド模倣体であり得る。例えば、HIF-1αの1つまたは2つのプロリン残基(例えば、ODDドメイン内に位置するPro402および/またはPro564)の変異は、HIF-1αとpVHLとの相互作用を破壊し、したがって通常の酸素レベルの存在下でその安定性を増加させる(例えば、細胞培養中)。別の例として、HIF-1αのLys532(ODDドメインに位置する)のアルギニンへの変異は、HIF-1αの安定性の増加をもたらし得る。例えば、Tanimoto et al.2000.EMBO(Eur Mol Biol Organ)J19:4298-4309を参照されたい。
【0060】
いくつかの実施形態では、HIF-1α安定化剤は、典型的には5,000kDa未満の分子量を有する、小有機分子などの小分子である。適切な小分子は、HIF-1αまたはそれらの断片の分解経路を開始する1つ以上の酵素に結合するものを含み、化合物の大きなライブラリーをスクリーニングすることなどの方法(Beck-Sickinger&Weber(2001)Combinational Strategies in Biology and Chemistry(John Wiley&Sons,Chichester,Sussex)、核磁気共鳴による構造-活性相関(Shuker et al(1996)“Discovering high-affinity ligands for proteins:SAR by NMR.Science274:1531-1534)、コードされた自己集合化学ライブラリー(Melkko et al(2004)“Encoded self-assembling chemical libraries.”Nature Biotechnol.22:568-574)、DNAテンプレート化学(Gartner et al(2004)“DNA-tem plated organic synthesis and selection of a library of macrocycles.Science305:1601-1605)、動的コンビナトリアル化学(Ramstrom&Lehn(2002)“Drug discovery by dynamic combinatorial libraries.”Nature Rev.Drug Discov.1:26-36)、テザリング(Arkin&Wells(2004)“Small-molecule inhibitors of protein-protein interactions:progressing towards the dream.Nature Rev.Drug Discov.3:301-317)、およびスピードスクリーン(Muckenschnabel et al(2004)“SpeedScreen:label-free liquid chromatography-mass spectrometry-based high-throughput screening for the discovery of orphan protein ligands.”Anal.Biochem.324:241-249)によって特定され得る。典型的には、小分子は、ナノモル範囲のP38MAPKに対する解離定数を有するであろう。
【0061】
III.エクスビボ培養で幹細胞の幹細胞性を保存するための方法
p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との任意の組み合わせ、例えば、本明細書に記載のものは、エクスビボまたはインビトロ培養で幹細胞(例えば、造血幹細胞)の幹細胞性を保存するために使用することができる。幹細胞性とは、未分化細胞が未分化細胞として再生するが、依然として特定のタイプの細胞を産生するように分化するこの能力を保持する能力を指す。幹細胞能、または幹細胞(例えば、造血幹細胞)の「幹細胞性」は、特性:静止、再増殖能、自己再生能、および多系統分化能の組み合わせに依存する。幹細胞(例えば、HSC)における細胞周期静止は、分化または老化から細胞を保護することによって幹細胞性を維持する。
【0062】
本開示は、1つ以上のp38MAPK阻害剤および1つ以上のHIF-1α安定化剤の存在下で幹細胞(例えば、HSC)を培養することによって細胞培養物中の幹細胞の幹細胞性を保存するためのエクスビボ培養方法を特徴とする。このようにして調製された幹細胞は、幹細胞移植による適切な疾患の治療に使用することができる。
【0063】
本明細書に記載のエクスビボ培養方法を実施するために、幹細胞(例えば、多能性幹細胞)の適切な集団を適切な供給源から得ることができる。いくつかの例では、幹細胞(例えば、HSC)の集団は、従来の方法を介して、ヒト対象から、例えば、ヒト対象の骨髄細胞、末梢血細胞、および/または臍帯血細胞から誘導することができる。いくつかの例では、幹細胞は成体幹細胞(例えば、HSC)であり、これはヒト成体の骨髄または末梢血細胞に由来し得る。いくつかの例では、幹細胞集団は臍帯幹細胞を実質的に含まない。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の幹細胞集団のいずれも、DNA損傷、例えば、二本鎖切断、二量体化、または架橋、不対塩基、修飾塩基、不対塩基をもたらす1つの塩基の別の塩基への変換、クロマチン巻き戻し、または他の修飾などを引き起こす遺伝子操作を受けている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の幹細胞集団のいずれかは、二本鎖が切断する遺伝子操作を受けている。二本鎖切断および/またはDNA損傷応答は、p38MAPKの1つ以上のファミリーメンバー(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、p38-δ、およびそれらの任意の組み合わせ)によって媒介され得る。遺伝子操作は、幹細胞(例えば、HSC)中の遺伝子の少なくとも1つを修飾、挿入、または削除することを含む。遺伝子操作は、例えば、ゲノム編集技法および相同性指向修復(HDR)媒介ゲノム編集技法による非相同末端結合(NHEJ)媒介遺伝子破壊を含む、細胞ゲノムまたはゲノム編集に組み込むことができるベクターでの形質導入を含み得る。
【0065】
本明細書で使用される「ベクター」は、核酸分子の幹細胞(例えば、HSC)への移動を促進することができる任意の核酸ビヒクル(DNAまたはRNA)である。一般に、ベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルスベクター、および標的ヌクレオチド配列の挿入または組み込みによって操作されているウイルスまたは細菌源に由来する他のビヒクルを含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターには、以下のウイルス:レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタイン-バーウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルスのゲノムに由来するヌクレオチド配列を含むベクターが含まれるが、これらに限定されない。挙げられていないが当該技術分野に知られている他のベクターを容易に使用することができる。
【0066】
ウイルスベクターは、非必須遺伝子が標的ヌクレオチド配列で置換されている非細胞変性真核生物ウイルスをベースとし得る。非細胞変性ウイルスはレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)を含み、そのライフサイクルはゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写とそれに続く宿主細胞DNAへのプロウイルス組み込みを含む。レトロウイルスは、ヒトの遺伝子療法試験に承認されている。最も有用なものは、複製欠損性の(すなわち、所望のタンパク質の合成を指示することはできるが、感染性粒子を製造することはできない)レトロウイルスである。そのような遺伝的に改変されたレトロウイルス発現ベクターは、インビボでの遺伝子の高効率形質導入のための一般的な有用性を有する。複製欠損レトロウイルスを産生するための標準プロトコル(外因性遺伝物質のプラスミドへの組み込み、プラスミドで裏打ちされたパッケージング細胞のトランスフェクション、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの産生、組織培養培地からのウイルス粒子の収集、標的細胞のウイルス粒子での感染)は、当該技術分野において知られている。
【0067】
他のウイルスベクターにはアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが含まれ、これらは遺伝子療法におけるヒト使用にも承認されている二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損であるように操作することができ、広範囲の細胞型および種に感染することができる。レンチウイルスベクターは、それらの組み込み前複合体(ウイルス「シェル」)が標的細胞の核の無傷の膜を通過することができるので、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することができるタイプのレトロウイルスである。例示的なレンチウイルスベクターとしては、HIVに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
他のベクターには、当該技術分野で広く記載されており、当業者に周知である非ウイルスプラスミドベクターが含まれる。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press;4th edition(June 15,2012)を参照されたい。例示的なプラスミドには、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40、およびpBlueScriptが含まれる。他のプラスミドは当業者に周知である。加えて、プラスミドは、DNAの特定の断片を除去および付加するために制限酵素およびライゲーション反応を使用してカスタム設計され得る。
【0069】
当該技術分野において知られている様々なゲノム編集技法を用いて、本明細書に記載の方法に関与する幹細胞(例えば、HSC)を操作することができる。例えば、ゲノム編集は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、および/またはCRISPR/Casシステム(例えば、CRISPR/Cas9システム)の使用を含み得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法および/または組成物に関与する幹細胞(例えば、HSC)は、レトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いて、または本明細書に記載の遺伝子編集方法によって遺伝子操作されている。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法および/または組成物に関与する幹細胞は、遺伝子修飾幹細胞(例えば、HSC)である。
【0071】
幹細胞の遺伝子操作は、幹細胞が休止細胞(非周期)、すなわち、分裂していない細胞である場合、または幹細胞が周期、すなわち、分裂している細胞である場合に実施され得る。例えば、細胞周期非依存的遺伝子操作方法(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、TALENS、またはCas9ヌクレアーゼを使用するなどのレンチウイルス形質導入または非相同末端結合(NHEJ)媒介ゲノム編集方法)は、非周期および/または周期細胞を利用し得るが、細胞周期依存的遺伝子操作方法(例えば、レトロウイルスベクター形質導入または相同性指向修復(HDR)媒介ゲノム編集方法)は、周期HSCを必要とする。
【0072】
休止細胞は、静止G0期にあり得る。休止HSCの表現型は、当該技術分野において知られており、本明細書に記載の方法および/または組成物についてそのようなHSCを特定するために使用することができる。例えば、HSC富化集団は、少なくともCD34+CD38-CD90+である。全ての体細胞と同様に、幹細胞(例えば、HSC)は細胞周期を通して進行し、それは4つの期:G1(間期)、S(DNA合成期)、G2(間期)、およびM(有糸分裂期)を特徴とする。G1期における制限点を過ぎて進行する幹細胞(例えば、HSC)はS期に入るが、制限点を通過しないものは分裂しないままである。これらの分裂していない細胞は、細胞周期から撤退し、G0期:細胞が静止または休止期にある状態に入ることができる。G0期におけるそのような休止細胞は、細胞周期に可逆的に再入して分裂するか、または休止したまま、周期能を喪失し、いくつか場合では老化するかのいずれかであり得る。したがって、静止は、幹細胞(例えば、HSC)を特徴付け、それらが細胞の幹細胞性を維持することを可能にする特性である。
【0073】
理論に縛られることを望むものではないが、幹細胞(例えば、HSC)が、(例えば、細胞が非周期である場合)細胞周期に入る前に遺伝的に操作または修飾され、その後p38MAPK阻害剤および任意にHIF-1α安定化剤の存在下で培養される場合、p38MAPK阻害剤は、幹細胞(例えば、HSC)のS期への移行を遅らせ、これは幹細胞(例えば、HSC)が、例えば、遺伝子操作によって誘導される、いずれかのDNA損傷を修復することを可能にし得、任意のHIF-1α安定化剤は、HSCの系統運命を維持するのを助け、よって幹細胞(例えば、HSC)の幹細胞性を保持し得る。これは、保持された長期再増殖能および/またはバランスのとれた系統産生によって特徴付けられ得る。したがって、本明細書に記載の方法および/または組成物に関与する幹細胞のいくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、HSC)は、非周期または非分裂細胞であり、例えば、幹細胞は、静止G0期にある。
【0074】
遺伝子操作により誘導されるDNA二本鎖切断が周期または分裂幹細胞(例えば、HSC)において発生する場合、G2M期においてHSCの蓄積があり、そうでなければ非周期幹細胞(例えば、HSC)が遺伝子修飾された場合に観察されなかったことが発見された。理論に縛られることを望むものではないが、DNA二本鎖切断が、例えば、遺伝子操作によって周期HSCにおいて誘導される場合、DNA損傷応答はG2M期においてHSCを失速させ、この遅延は枯渇または老化に関連した表現型を示すHSC数の同時増加(例えば、Fzd3および/またはWnt5bの発現増加)を伴い、主に骨髄性バイアス子孫を産生するHSCをもたらす。しかしながら、分裂HSCがp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の共存在下で培養および/または遺伝子修飾される場合、組み合わされた処理は、HSCにおけるG2M蓄積およびDNA損傷応答を低減し、HSC系統運命を回復させ、よって幹細胞(例えば、HSC)の幹細胞性を保持する。これは、保持された長期再増殖能および/またはバランスのとれた系統産生によって特徴付けられ得る。したがって、本明細書に記載の方法および/または組成物に関与する幹細胞のいくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、HSC)は、周期または分裂細胞(例えば、HSC)である。非周期および周期幹細胞(例えば、HSC)は、例えば、細胞中のp34(Cdk2)mRNA発現を測定することによって特定することができる。周期幹細胞(例えば、HSC)は一般に、非周期幹細胞(例えば、HSC)よりも高レベルのp34(Cdk2)mRNA発現を有する。例えば、
図17、パネルBを参照されたい。
【0075】
本明細書に記載の幹細胞集団のいずれも、適切な培地(例えば、細胞培養培地)において、有効量の本明細書に記載のものとしての1つ以上のHIF-1α安定化剤と共に有効量の本明細書に記載のものとしての1つ以上のp38MAPK阻害剤の存在下、適切な時間、例えば、少なくとも約18時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、少なくとも96時間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間以上培養することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の幹細胞集団のいずれかを、適切な培地(例えば、細胞培養培地)において、有効量の本明細書に記載のものとしての1つ以上のHIF-1α安定化剤と共に有効量の本明細書に記載のものとしての1つ以上のp38MAPK阻害剤の存在下、約18時間~約7日間、または約1日間~約7日間、または約2日間~約7日間、または約3日間~約7日間以上培養することができる。
【0076】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、幹細胞は、本明細書に記載のものとしての1つ以上のp38MAPK阻害剤および本明細書に記載のものとしての1つ以上のHIF-1α安定化剤の同時存在下で培養され得る。例えば、p38MAPK阻害剤(複数可)およびHIF-1α安定化剤(複数可)は、同時に幹細胞培養物に添加され得る。あるいは、p38MAPK阻害剤(複数可)およびHIF-1α安定化剤(複数可)は、幹細胞がp38MAPK阻害剤(複数可)およびHIF-1α安定化剤(複数可)両方の同時存在下で最終的に培養されるように、逐次的様式で幹細胞培養物に添加され得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に関与する幹細胞は、まず本明細書に記載のものとして1つ以上のp38MAPK阻害剤の存在下で適切な時間培養され、次いで本明細書に記載のものとして1つ以上のHIF-1α安定化剤の存在下で(p38MAPK阻害剤が実質的に存在しないか、または以前の培養で使用されたものよりも低い濃度の1つ以上のp38MAPK阻害剤で)培養されるか、またはその逆であり得る。
【0078】
本明細書で使用される「有効量」または「に有効な量」は、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の両方が存在する場合、組み合わせが、幹細胞、例えば、HSCの幹細胞性の少なくとも1つの特徴(静止、再増殖能、自己再生能、および多系統分化能)を保存するのに有効である、および/またはHSC移植後の対象におけるHSCの生着の増加などの所望の臨床的効果をもたらすような、本明細書に記載のp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の個別の量を指す。これは、日常的な方法によって監視することができ、または本明細書に記載のHSCの生着を評価するための方法に従って監視することができる。p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の有効量は、別々におよび/または組み合わせて決定することができる。有効量は、当業者によって認識されるように、例えば、使用されるp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の効力、ならびに/またはその間に細胞が培養および/または遺伝子修飾される幹細胞(例えば、HSC)の細胞周期状態(例えば、周期対非周期)に依存して変動する。
【0079】
例えば、本明細書に記載の方法において幹細胞(例えば、HSC)を培養するための有効量のp38MAPK阻害剤は、p38MAPK阻害剤の存在下での培養なしでのG0静止期における幹細胞(例えば、HSC)の割合と比較して、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上、G0静止期における幹細胞(例えば、HSC)の割合の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、有効量のp38MAPK阻害剤は、p38MAPK阻害剤の存在下での細胞の培養なしでのG0静止期における幹細胞(例えば、HSC)の割合と比較して、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍以上を含む、少なくとも約1.1倍以上、G0静止期における幹細胞(例えば、HSC)の割合の増加をもたらす。
【0080】
いくつかの実施形態では、有効量の本明細書に記載の方法において使用されるp38MAPK阻害剤は、p38MAPK阻害剤の存在下での培養なしでの第1の細胞分裂周期前のS-G2-M期における幹細胞(例えば、HSC)の割合と比較して、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上、第1の細胞分裂周期(例えば、24時間)前のS-G2-M期における幹細胞(例えば、HSC)の割合の減少をもたらす。
【0081】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、HSC)は、p38MAPK阻害剤の存在下での培養なしで幹細胞において測定されるDNA損傷またはDNA二本鎖切断のレベルと比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約20%以上、幹細胞(例えば、HSC)において(例えば、γH2AXフォーカスまたは53bp1の発現によって測定される)DNA損傷またはDNA二本鎖切断を低減するのに有効な量のp38MAPK阻害剤の存在下で培養される。
【0082】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、HSC)を培養するための有効量のp38MAPK阻害剤は、p38MAPK阻害剤の処理なしでの幹細胞(例えば、HSC)におけるp38MAPKの対応するメンバーのリン酸化レベルと比較して、例えば、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%以上を含む、例えば、少なくとも約20%以上、幹細胞(例えば、HSC)におけるp38MAPK(例えば、p38-α、p38-β、p38-γ、またはp38-δ)の少なくとも1つ以上(例えば、少なくとも2つ、または少なくとも3つを含む)のリン酸化レベルの減少をもたらす。
【0083】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、有効量のp38MAPK阻害剤は、p38MAPK阻害剤の処理なしでの幹細胞(例えば、HSC)におけるERKまたはJNKのリン酸化レベルと比較して、例えば、10%以下、5%以下、3%以下を含む、例えば、20%以下、幹細胞(例えば、HSC)におけるERKまたはJNKのリン酸化レベルを実質的には増加させない。
【0084】
本明細書に記載の方法のためのp38MAPK阻害剤の有効用量は、少なくとも約10nM、少なくとも約20nM、少なくとも約30nM、少なくとも約40nM、少なくとも約50nM、少なくとも約100nM、少なくとも約200nM、少なくとも約300nM、少なくとも約400nM、少なくとも約500nM、少なくとも約600nM、少なくとも約700nM、少なくとも約800nM、少なくとも約900nM、少なくとも約1μM、少なくとも約2μM、少なくとも3μM、少なくとも約4μM、少なくとも約5μM、少なくとも約6μM、少なくとも約7μM、少なくとも約8μM、少なくとも約9μM、または少なくとも約10μMであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のためのp38MAPK阻害剤の有効用量は、10μM以下、9μM以下、8μM以下、7μM以下、6μM以下、5μM以下、4μM以下、3μM以下、2μM以下、1μM以下、900nM以下、800nM以下、700nM以下、600nM以下、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、または10nM以下であり得る。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である。例えば、本明細書に記載される方法のためのp38MAPK阻害剤の有効用量は、約30nM~約10μM、または約100nM~約5μM、または約400nM~約800nMであり得る。
【0085】
本明細書に記載の方法および/または組成物のいくつかの実施形態では、HIF-1αの有効量は、HIF-1α安定化剤の存在下での培養なしで幹細胞において測定されたHIF-1αタンパク質および/または転写活性レベルと比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約20%以上、幹細胞(例えば、HSC)におけるHIF-1αタンパク質および/または転写活性を安定させるのに有効であるように選択される。HIF-1αタンパク質レベルは、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットなどのタンパク質アッセイによって測定することができる。HIF-1αの転写活性は、例えば、HIF-1α下流応答性遺伝子(複数可)の活性および/またはレベルを測定することによって検出することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、有効量の本明細書に記載の方法および/または組成物における使用に選択されるHIF-1α安定化剤は、HIF-1α安定化剤の存在下での培養なしでのHSCにおけるCXCR4発現および/または活性レベルと比較して、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上、幹細胞(例えば、HSC)におけるCXCR4発現および/または活性レベルの上方調節をもたらす。いくつかの実施形態では、有効量のHIF-1α安定化剤は、HIF-1α安定化剤の存在下での培養なしでのHSCにおけるCXCR4発現および/または活性レベルと比較して、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、約10倍以上を含む、少なくとも約1.1倍以上、幹細胞(例えば、HSC)におけるCXCR4発現および/または活性レベルの上方調節をもたらす。
【0087】
本明細書に記載の方法のためのHIF-1α安定化剤の有効用量は、少なくとも約10nM、少なくとも約20nM、少なくとも約30nM、少なくとも約40nM、少なくとも約50nM、少なくとも約100nM、少なくとも約200nM、少なくとも約300nM、少なくとも約400nM、少なくとも約500nM、少なくとも約600nM、少なくとも約700nM、少なくとも約800nM、少なくとも約900nM、少なくとも約1μM、少なくとも約2μM、少なくとも3μM、少なくとも約4μM、少なくとも約5μM、少なくとも約6μM、少なくとも約7μM、少なくとも約8μM、少なくとも約9μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM以上であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のためのHIF-1α安定化剤の有効用量は、20μM以下、10μM以下、9μM以下、8μM以下、7μM以下、6μM以下、5μM以下、4μM以下、3μM以下、2μM以下、1μM以下、900nM以下、800nM以下、700nM以下、600nM以下、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、または10nM以下であり得る。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である。例えば、本明細書に記載の方法のためのHIF-1α安定化剤の有効用量は、約30nM~約20μM、または約100nM~約10μM、または約500nM~約10μMであり得る。
【0088】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、分裂または周期HSC)は、組み合わされる場合、p38MAPK阻害剤またはHIF-1α安定化剤なしで培養された幹細胞(例えば、分裂または周期HSC)におけるG2M蓄積と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約20%以上、例えば、抗Ki-67抗体およびヘキスト染色での細胞免疫染色によって評価される、細胞周期のG2M期における幹細胞(例えば、HSC)の幹細胞の蓄積を低減するのに有効な量でp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養される。
図14を含む実施例1は、細胞周期分析を実施する例示的な方法を記載する。
【0089】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、分裂または周期HSC)は、組み合わされる場合、細胞がp38MAPK阻害剤またはHIF-1α安定化剤なしで培養される場合のLTRPと比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約20%以上、(二次移植(2T)において評価される)長期再増殖能(LTRP)の喪失を低減するのに有効な量のp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養される。
図2(パネルB)を含む実施例1は、2T異種移植片におけるLTRPを決定するための例示的な方法を記載する。
【0090】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、分裂または周期HSC)は、組み合わされる場合、細胞がp38MAPK阻害剤またはHIF-1α安定化剤なしで培養される場合の骨髄性歪みバイアスと比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約20%以上、幹細胞中の骨髄性歪みバイアスを低減するのに有効な量のp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養される。
図2(パネルB)および
図3を含む、実施例1は、骨髄性歪みバイアスを評価するための多系統再構成のための例示的な方法を記載する。
【0091】
いくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、HSC)は、インビボ移植の前に、本明細書に記載の有効量のp38阻害剤および本明細書に記載の有効量のHIF-1α安定化剤を含む培地中で培養され、ここで、組み合わせは、移植前にp38MAPK阻害剤またはHIF-1α安定化剤での細胞の培養なしでの幹細胞(例えば、HSC)の生着と比較して、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上、インビボで幹細胞(例えば、HSC)のその後の生着を増加させる。いくつかの実施形態では、組み合わされた有効量のp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤は、移植前にp38MAPK阻害剤またはHIF-1α安定化剤での細胞の培養なしでの幹細胞(例えば、HSC)の生着と比較して、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍以上を含む、少なくとも約1.1倍以上、幹細胞(例えば、HSC)のその後の生着を増加させる。
【0092】
上記に参照した有効量のp38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、HSC)は、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養され、ここで、p38MAPK阻害剤の有効量は、p38MAPK阻害剤の存在下での培養なしで幹細胞において測定されたDNA損傷またはDNA二本鎖切断のレベルと比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約20%以上、幹細胞(例えば、HSC)における(例えば、γH2AXフォーカスまたは53bp1の発現によって測定される)DNA損傷またはDNA二本鎖切断を低減するのに十分であり、HIF-1α安定化剤の有効量は、HIF-1α安定化剤の存在下での培養なしでの幹細胞中で測定されたHIF-1αタンパク質および/または転写活性レベルと比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約20%以上の、幹細胞(例えば、HSC)中のHIF-1αタンパク質および/または転写活性を安定させるのに十分である。
【0093】
いくつかの実施形態では、幹細胞(例えば、HSC)は、インビボ移植の前に、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養され、ここで、p38MAPK阻害剤の有効量は、p38MAPK阻害剤の存在下での培養なしで幹細胞において測定されたDNA損傷またはDNA二本鎖切断のレベルと比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約20%以上、幹細胞(例えば、HSC)における(例えば、γH2AXフォーカスまたは53bp1の発現によって測定されるような)DNA損傷またはDNA二本鎖切断を低減するのに十分であり、HIF-1α安定化剤の量は、選択された量のp38MAPK阻害剤と組み合わされた場合、組み合わされた有効量のp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤が、移植前のp38MAPK阻害剤またはHIF-1α安定化剤での細胞の培養なしでの幹細胞(例えば、HSC)の生着と比較して、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上、インビボで幹細胞(例えば、HSC)のその後の生着を増加させるように選択される。いくつかの実施形態では、組み合わされた有効量のp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤は、移植前にp38MAPK阻害剤またはHIF-1α安定化剤での細胞の培養なしでの幹細胞(例えば、HSC)の生着と比較して、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍以上を含む、少なくとも約1.1倍以上、幹細胞(例えば、HSC)のその後の生着を増加させる。
【0094】
いくつかの例では、p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせは、幹細胞(例えば、周期または分裂HSCなどのHSC)に対する相乗効果を示し得る。本明細書で使用されるとき、本明細書で使用される「相乗効果」という用語は、例えば、幹細胞(例えば、HSC)の幹細胞性を維持するなどの効果を生成する、および/または移植された幹細胞(例えば、HSC)の生着効率を増加させる、例えば、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤などの2つの薬剤の作用を指し、これは単独で投与された各薬剤の効果の単純加算よりも大きい。例えば、p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせは、インビトロまたはエクスビボ操作(例えば、細胞培養および/または遺伝子操作)を受けた周期または分裂幹細胞のインビボ生着を向上させるが、いずれかの薬剤の不在はそうすることができない。相乗効果は、例えば、Sigmoid-Emax式(Holford,N.H.G.and Scheiner,L.B.,Clin.Pharmacokinet.6:429-453(1981))、Loewe相加性の式(Loewe,S,and Muischnek,H.,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313-326(1926))、および効果中央値式(Chou,T.C.and Talalay,P.,Adv.Enzyme Regul.22:27-55(1984))などの適切な方法を使用して計算することができる。上記に参照した各式を実験データに適用して、p38MAPK阻害剤とHIF-1α安定化剤との組み合わせの効果を評価するのに役立つ対応するグラフを生成することができる。上記に参照した式に関連する対応するグラフは、それぞれ濃度-効果曲線、イソボログラム曲線、および組み合せ指数曲線である。
【0095】
幹細胞は、それらが本明細書に記載の方法に従ってp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養される場合にそれらの幹細胞性を保存することができる。いくつかの実施形態では、エクスビボ培養プロセス後の多能性幹細胞のパーセンテージは、エクスビボ培養前のそれの少なくとも70%(例えば、80%、90%、95%、97%以上)である。他の実施形態では、幹細胞の30%未満(例えば、25%、20%、15%、10%、または5%以下未満)は、本明細書に記載されるエクスビボ培養プロセス中に、例えば、多能性(pluripotent)幹細胞から多能性(multipotent)幹細胞へ、または多能性(multipotent)細胞から分化細胞へ分化するであろう。エクスビボ培養物中の異なるタイプの幹細胞、例えば、多能性(pluripotent)幹細胞および多能性(multipotent)細胞、ならびに分化細胞の存在は、日常的な方法によって監視することができ、特定のタイプの幹細胞に特異的な、または分化細胞に特異的な細胞表面マーカーの存在によって監視することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、成体HSCは、1つ以上のp38MAPK阻害剤および1つ以上のHIF-1α安定化剤の使用を含む、本明細書に記載のエクスビボ培養プロセスに供される。培養後のHSCのパーセンテージは、培養前のHSCのそれの少なくとも70%(例えば、80%、90%、95%以上)であり得る。あるいはまたは加えて、エクスビボ培養後の細胞中の造血前駆細胞(HPC)のパーセンテージは、30%未満(例えば、25%、20%、15%、10%、または5%未満)であり得る。
【0097】
IV.幹細胞療法
本明細書に記載のエクスビボ培養方法によって調製された幹細胞は、例えば、神経変性疾患および状態、糖尿病、心臓疾患、他の状態を含む、疾患または状態を治療または予防するための幹細胞の使用である、幹細胞療法において使用することができる。幹細胞療法によって治療される適切な状態の例には、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、骨髄異形成症候群、神経膠腫、および他の固形腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。幹細胞療法は、サラセミア、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、免疫不全症候群、または先天性代謝異常などの非悪性状態にも適用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のエクスビボ培養方法によって調製されたHSCは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年性骨髄単球性白血病、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫を含むがこれらに限定されない、造血障害の治療における移植に使用することができる。
【0098】
造血幹細胞移植(HSCT)は、通常は骨髄、末梢血、または臍帯血に由来する、多能性造血幹細胞の移植である。いくつかの例では、HSCは自己由来であり得る(患者自身の幹細胞は、本明細書に記載のエクスビボ培養方法によって培養され、疾患を治療するために使用される)。他の例では、HSCは同種異系であり得る(幹細胞はドナーに由来し、次いで本明細書に記載のエクスビボ培養方法によって培養される)。そのようなHSCは、多発性骨髄腫または白血病などの、血液または骨髄の特定の癌を治療するために使用することができる。これらの場合、レシピエントの免疫系は通常、移植前に放射線療法または化学療法によって破壊される。
【0099】
いくつかの例では、本明細書に記載のHSC(例えば、ヒト成体HSC)は、鎌状赤血球貧血およびサラセミアなどの貧血の治療における使用のためのγグロビンを発現するように遺伝子操作することができる。例えば、これらの各々の関連教示が本明細書で参照される目的または主題のために参照により組み込まれる、US2011/0294114およびWO2015/117027を参照されたい。
【0100】
本明細書に記載の幹細胞療法のいずれにおいても、適切な幹細胞を本明細書に記載のエクスビボ培養方法から収集し、薬学的に許容される担体と混合して薬学的組成物を形成することができ、これも本開示の範囲内である。
【0101】
本明細書に記載の治療方法を実施するために、治療を必要とする対象に有効量または用量の幹細胞を投与することができる。投与または移植のためにp38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養されたHSCの用量は、それを必要とする個々の対象によって変動し得る。p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養されたHSCは、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤なしまたはそのいずれか一方で処理されるHSCのそれよりも低い用量で投与または移植され得る。例えば、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養された約50,000~約500,000個のHSCの用量が対象に投与され得る。別の例として、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養された約50,000~約100,000個のHSCの用量が対象に投与され得る。いくつかの例では、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤の存在下で培養された約50,000、約60,000、約70,000、約80,000、約90,000、約100,000、約200,000、約300,000、約400,000、または約500,000個のHSCの用量が対象に投与され得る。本明細書に記載の方法のいずれかによって調製された50,000個未満のHSCの用量もまた可能である。
【0102】
幹細胞は、対象にとって自己由来であり得る。対象への自己由来細胞の投与は、非自己由来細胞の投与と比較して幹細胞の拒絶反応の低減をもたらし得る。あるいは、幹細胞は、同種異系細胞である。例えば、同種異系幹細胞は、ヒトドナーに由来し、ドナーとは異なるヒトレシピエントに投与され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、幹細胞は、本明細書に記載のものなどの標的疾患のための治療剤と併用することができる。本明細書に記載される幹細胞療法の有効性は、当該技術分野で既知の任意の方法によって評価され得、熟練した医療専門家には明らかであろう。ある量の本明細書に記載の細胞または組成物が治療効果を達成したかの決定は、当業者には明らかであろう。有効量は、当業者によって認識されるように、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、体調、体格、性別、および体重を含む個々の患者のパラメータ、治療の期間、併用療法(もしあれば)の性質、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識および専門知識内の同様の因子に応じて変動する。いくつかの実施形態では、有効量は、対象における任意の疾患または障害の症状を軽減、緩和、改善、向上、低減、またはその進行を遅延する。
【0104】
V.幹細胞生着能力の評価
本明細書に記載のエクスビボ培養方法のいずれかによって調製されたヒトHSCなどのヒト造血幹細胞(HSC)の生着を評価するために、HSCを、HSC移植を必要とするヒト対象からを入手または誘導し、免疫不全マウス(例えば、NSGマウス)などの適切な免疫不全動物に移植することができる。他の適切な免疫不全動物、例えば、Charles River Laboratoriesによって提供されるものもまた当該技術分野で知られている(以下の表2を参照されたい)。
【表2】
【0105】
適切な時間後、レシピエント動物の動員末梢血を収集することができ、その中のCD45+細胞のレベルを従来の方法、例えば、FACSによって測定することができる。CD45+細胞のレベルは、ヒトHSC生着速度と逆の相関関係にある。
【0106】
VI.幹細胞の幹細胞性の保存における使用のためのキット
本開示はまた、幹細胞(例えば、HSC)の幹細胞性の保存またはそれを必要とする対象における幹細胞生着の増加における使用のためのキットまたは組成物を提供する。そのようなキットまたは組成物は、p38MAPK阻害剤およびHIF-1α安定化剤、ならびに任意に1つまたは集団の幹細胞(例えば、HSC)を含む、1つ以上の容器を含むことができる。キットまたは組成物は、幹細胞(例えば、HSC)を培養するのに適した細胞培養培地をさらに含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従った使用のための説明書を含むことができる。含まれる説明書は、有効量の本明細書に記載のp38MAPK阻害剤および有効量のHIF-1α安定化剤を含む培地において幹細胞(例えば、HSC)を培養することの説明を含むことができる。キットは、特定の幹細胞に関連する表面マーカー(例えば、HSCについてはCD34+CD38-CD90+)を特定することに基づいて、特定の幹細胞、例えば、HSCを選択することの説明をさらに含み得る。さらに他の実施形態では、説明書は、処理を必要とする個体においてHSCを投与することの説明を含む。
【0108】
p38MAPK阻害剤および/またはHIF-1α安定化剤の使用に関する説明書は、一般に、幹細胞(例えば、HSC)の意図される処理のための投与量および投与スケジュールに関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、多用量パッケージ)、またはサブユニット用量であり得る。本発明のキットに供給される説明書は、典型的にはラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙のシート)上に書かれた説明書であるが、機械可読の説明書(例えば、磁気または光学記憶ディスク上に保持される説明書)も許容される。
【0109】
ラベルまたは添付文書は、組成物が幹細胞(例えば、HSC)の幹細胞性を保存するために使用されることを示す。本明細書に記載の方法のいずれかを実施するために説明書が提供され得る。
【0110】
本発明のキットは、適切な包装中にある。適切な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、フレキシブル包装(例えば、密封マイラーまたはビニール袋)などが含まれるが、これらに限定されない。吸入器、経鼻投与装置(例えば、アトマイザー)などの特定の装置、またはミニポンプなどの注入装置と組み合わされた使用のためのパッケージも考えられる。キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであり得る)。容器もまた、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであり得る)。
【0111】
キットは、緩衝液などの追加成分および解釈情報を任意に提供し得る。通常、キットは、容器、および容器上のまたはそれに付随するラベルまたは添付文書(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、上記のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0112】
一般的な技法
本発明の実施は、他に示されない限り、当該技術分野の技能の範囲内である、分子生物学(組み換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来技法を使用するであろう。そのような技法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.,eds.,1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.,1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)などの文献において十分に説明されている。
【0113】
さらに詳述しなくても、当業者であれば、上記の説明に基づいて、本開示を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる意味においても本開示の残部を限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で参照される目的または主題のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0114】
実施例:HSCの幹細胞性を維持するためにp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)阻害剤および低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)安定化剤の存在下でHSCを培養すること
概要
遺伝子療法(GT)は、適切な移植ドナーがいない単一遺伝子障害を有する患者を治癒するための同種造血幹細胞移植(HSCT)の魅力的な代替である1、2、3-15。その成功は、遺伝子修飾造血幹細胞(HSC)が、同時に自己再生して生涯にわたる血球産生を維持しながら、造血前駆細胞(HPC)に分化して造血系を再生する能力に依存する16-18。GTのために、稀なHSC(CD34+38-90+45RA-49f+)19を含有するCD34+造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)を、HSC分裂を強制するサイトカイン富化培地において2~4日間培養し、遺伝子操作20による影響を受けやすくし、次いで移植前化学療法前処置後に移植する。
【0115】
分裂細胞のみを形質導入するγ-レトロウイルスベクター(RV)を用いるGT試験は、免疫不全障害(IDDS)1、2の治療を除いて、大部分が不成功であるか、またはHSCT21に使用されたものよりも5~30倍高い形質導入CD34+HSPCでのみ控えめな成功であった。いくつかの生着遺伝子修飾HSCはとてつもなく大きな増幅能を有する長寿命リンパ性子孫を産生することができるので、免疫不全障害(IDD)の治療の成功が報告された1、2。遺伝子編集(GE)アプローチは、RV遺伝子導入と同様の条件、例えば、特に相同性指向修復(HDR)22-27について、周期HSCを必要とする。RVと同様に、GEでは、インビトロでの高い編集効率は、インビボでの高いLTRPにはつながらない23、28、29。非分裂細胞を形質導入するレンチウイルスベクター(LV)にはより多くの成功があったが、IDD30以外では、成功は非常に高いHSPC用量、および骨髄破壊的化学療法前処置で達成されている。LV-形質導入HSCは、残留HSCが高用量化学療法を受けているにもかかわらず、そうでなければ残留HSCと競合することができない31-33。大幅なHSC損失は、LVでも、移植された形質導入HSCの数より2~3桁少ない、患者の複数の血球系統における数百から数千の一般的な組み込み体の存在によって証明される。これらの報告は、遺伝子導入/編集でのHSCの長期再増殖能(LTRP)の大幅な喪失を強調する。それゆえ、GTの失敗は、HSCの喪失ならびにヒトHSC運命およびそれらのLTRPを遺伝子操作で改変させる経路の根本的なメカニズムの理解が不十分であることから生じる。これらが特定および標的化される場合、HSCを(RV、LV、またはGEでの)遺伝子操作中に維持し、GTの最大の治療可能性を利用することができる。
【0116】
容易に入手可能なHSCTの供給源である臍帯血(CB)HSCをインビトロで増殖させる試みは、主に失敗した34、35。さらに、試験化合物のほとんど、P38/MAPK阻害剤36、37、アンジオポエチン様タンパク質38プロスタグランジンE2(PGE2)39-42、ステムレゲニン-1(SR1)43、44、UM17145、およびUNC063846は、HSPCを増殖させないことが見出された。CB HSCは、GTの大部分は無関係の供給源であることに加えて、成体骨髄(BM)または動員末梢血(MPB)由来HSCとは異なる。CB HSCは、周期であるか、またはより迅速に細胞周期に入るかのいずれかである47。成体HSCは、一方で、大部分が静止状態であり、静止によってゲノムを保護する48。成体HSCをそれらの低酸素BMニッチから取り出すこと、および強制周期後のそれらのゲノムの操作は、HSC遺伝毒性ストレスシグナル伝達を誘導し得る。
【0117】
この研究では、ヒトHSCの成体モデルを使用して、遺伝子操作によって静止および周期HSCのLTRPに影響を与えるメカニズムを特定した。本明細書では、HSCストレスシグナル伝達ならびにDNA損傷応答および修復(DDR)経路の過剰な活性化は、ウイルスベクターインテグラーゼ/遺伝子編集ヌクレアーゼ誘導DNA二本鎖切断(DSB)から生じることが示された。共に、それらはHSC細胞周期動態を改変してHSC運命を変更し、LTRPの喪失、および主に骨髄性バイアスの子孫を有するHSCをもたらす。さらに、これらの経路を標的とすることは、遺伝的に操作されたHSCの運命を回復させること、ならびにまた骨髄性およびリンパ性両方の系統における遺伝子マーキングの長期的な維持を可能にすることが示された。発見は、ウイルスベクターまたは遺伝子編集ヒトHSCのいずれかを用いたGTの将来の成功に対して幅広い影響を有する。
【0118】
結果
エクスビボHSC分裂および遺伝子導入は、LTRPの喪失および骨髄性歪み
遺伝子修飾子孫をもたらす。
NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス異種移植片モデルをまず成体(BM/MPB由来)HSCモデルに適合させた。100万個のMPB CD34+細胞を致死照射NSGマウスに移植し、骨髄(BM)における連続生着を6、12、および24週で評価した(循環ヒト細胞はBMにおける生着と相関しない、
図1、パネルAおよびB)。B-、T-、および骨髄性細胞からなる多能性移植片は、1:1二次移植片(2T)が成功したヒト二次生着(>0.01%ヒトCD45+細胞)をもたらした場合のみ、24週までに明らかであった(
図1、パネルCおよびD)。多能性生着を一次(1T)マウスにおいて24週で、LTRPを2Tマウスにおいて1.5~3ヶ月で評価した(
図2)。
【0119】
LVおよびRV形質導入のために2つの一般的に臨床利用されているプロトコルを利用した。これらのプロトコルは、特にウイルスベクター媒介遺伝子導入または遺伝子編集(GE)を包含するように選択された:両方とも細胞周期非依存的にHSCを標的とするので、LV遺伝子導入は、遺伝子編集(GE)ヌクレアーゼ(ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、TALEN、またはCas9ヌクレアーゼ)による非相同末端結合(NHEJ)媒介遺伝子破壊を誘導するために使用されるものと類似している。両方とも周期HSCを必要とするので、RV遺伝子導入は、GEヌクレアーゼによる遺伝子突然変異を修正するための相同性指向修復(HDR)に類似している。MPB CD34+HSPCを(a)18~24時間以内にGFP-LVで形質導入し、直ちに移植するか、または培養し続け、36~42時間で照射NSGマウスに移植するかのいずれか、(b)あるいは、CD34+細胞をエクスビボで2日間予備刺激し、2日目および3日目(44時間および68時間)にGFP-RVで形質導入し、72~96時間にNSGマウスに移植した(
図2、パネルAおよびB)。対照として、NSGマウスに未操作CD34+HSPCをそれらの単離直後(0時間)に移植した(
図2)。
【0120】
ロバストなヒト造血生着(ヒトCD45+細胞)が、1T後24週で大きな変動なしに全ての条件下でBMにおいて観察された(
図3、パネルA)。しかしながら、HSPCが24時間を超えて培養された条件では、2T動物においてLTRPの有意な喪失があり、LTRPの喪失はRV72~96時間群において最も高かった(
図3、パネルB)。RVおよびLVでの(従来のコロニー形成アッセイを用いた)2週でのインビトロCD34
+細胞における遺伝子導入効率は同程度であった。LV形質導入(GFP+)ヒト細胞はインビトロで平均80%から、インビボで24週までに約50%まで減少したが、RV形質導入(GFP+)細胞はインビトロで80%からインビボで5~8%までより高い漸減があった(
図4)。それゆえ、RV形質導入ヒト異種移植片は、NSGマウスにおいて時間と共に大部分が失われたが、LVベクターで形質導入されたものはより良好に維持された。
【0121】
1TマウスにおけるBMの6、12、および24週での多系統再構成を、HSPCの未形質導入(GFP
-)および形質導入(GFP
+)子孫において調査した。6週で、系統出力は、GFP+およびGFP-集団の両方で類似しており、未操作0時間対照から得られたものと同程度であった。しかしながら、12週までに、72~96時間RV遺伝子修飾集団は、骨髄性細胞子孫の有意な増加を示し、これはBリンパ性細胞子孫の低減を犠牲にして起こり(
図5)、24週までに、この群では骨髄性バイアスが極度であったが、BおよびTリンパ性集団の有意な低減を犠牲にして発生した36~42時間LV移植片でも明らかであり、36~42時間LVおよび72~96時間RV移植片の両方ではGFP
+CD34
+細胞も有意に少なかった(
図3、パネルC~J)。条件のいずれにおいても未形質導入子孫においてそのような系統歪みが見られず、この系統歪みがサイトカイン/培養条件の影響ではなかったことを示し、さらに、未形質導入系統パターンが0時間HSPCに由来する移植片と類似していたことは注目に値した。それゆえ、骨髄性系統バイアスは、遺伝子導入および培養時間の増加に続発した。本明細書で使用される自己不活性化RVがウイルスエンハンサーを欠き、実験モデル
54、55およびヒト試験
56、57において挿入性有害事象または系統歪みを示していないことは注目に値する。同様に、LVはまた、ベクター挿入からの有害事象なしでインビトロおよびヒト試験において試験されている
31、58。
【0122】
集合的に、最初の24時間を超えた遺伝子導入およびエクスビボ培養は、2TマウスにおけるLTRPの有意な喪失をもたらし、形質導入CD34+子孫は、リンパ性子孫を犠牲にして骨髄性バイアスであった。LTRPの喪失は、多数のRV GT試験および遺伝子編集異種移植片28、29の結果を模倣し、高HSPC用量およびロバストなインビトロ遺伝子導入/HDR21にもかかわらず、短期生着(ほとんど未発表、59)または控えめな遺伝子マーク長期生着のいずれかがあった。加えて、モデルはまた、短い培養プロトコル30-33で安定した遺伝子マーキングを示している成功したLV GT試験をシミュレートするが、LV形質導入がRVプロトコル60と同様に行われた他のLV試験では控えめな成功/失敗であり、集合的にこのモデルを遺伝子操作HSC生着およびLTRPの前臨床モデルとして実証する。
【0123】
LTRPの損失および骨髄性系統バイアス子孫のメカニズムを調査した。RV遺伝子導入およびGE媒介HDRは分裂細胞において起こる。LV遺伝子導入およびGE媒介NHEJは、細胞の周期状態とは無関係に起こり得るが、LVは分裂細胞に対する選好性も有する
61。RV試験の失敗は、容易に周期化し、CD34
+HSPCの99%を構成する、導入遺伝子のHPCまたは多能性前駆細胞(MPP)への優先的な組み込み、およびCD34
+細胞の約1%を含む、静止HSCの形質導入不良によるものであった可能性がある。Dickら
19によって特定されたヒトHSCの表現型を使用して、本明細書に使用された臨床形質導入条件は、実際に、RVおよびLVの両方で同等にヒトHSC(CD34
+CD38
-CD90
+CD45RA
-CD49f
+)、MPP(CD34
+CD38
-CD90
-CD45RA
-19、62)、および総CD34
+細胞を形質導入するために最適化されることが見出された(
図6)。
【0124】
それゆえ、周期中に、形質導入されたHSCは、HPCに運命を変更するか、または失われる可能性がある。HSPC区画の注意深い評価は、CD34
+細胞の細胞死またはHSCのアポトーシスを示さず、実際は、培養時間の増加と共に表現型HSCが増加した(
図7、パネルA~C)。EdU標識は、高度HSC富化CD34+38-90+細胞が24時間後に初めて細胞周期に入り、大多数が72時間までに少なくとも1回の細胞分裂を経験したことを示した(
図7、パネルCおよびD)。
【0125】
HSCがそれらの低酸素ニッチに生理学的に維持されるか
63、および周囲酸素条件におけるサイトカイン富化培養において細胞分裂を誘導することが高い酸化ストレスを誘導する可能性があるか
64を次に決定しようとした。実際に、活性酸素種(ROS)は72~96時間の培養でHSCにおいて有意に増加し、これらのROSはミトコンドリアから生成された(
図7、パネルEおよびF)。N-アセチルシステインアミドは、HSCにおいてROSを減少させることができたが、予想外に、遺伝子導入効率の相互低下をもたらした(
図7、パネルGおよびH)。したがって、増加した酸化ストレスによって活性化された下流経路を次に調査した。
【0126】
高いROSは、ストレスシグナル伝達、特にマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を誘導することが示されている
37。ERK、JNK、およびp38MAPKのリン酸化状態を異なる培養プロトコルで分析し、24時間を超えるエクスビボ培養でp38MAPK(p38)のみの有意な活性化が見られた(
図8、パネルA~F)。興味深いことに、形質導入HSCではそうではないが、周期HSCでは有意により高いp38活性化があった(
図8、パネルG~I)。全てのp38阻害剤(p38i)
6566は、HSCにおけるp38リン酸化を減少させ、この経路の活性化の特異性を示した(
図8、パネルJおよびK)。以前の報告は、p38阻害ありで1週間培養されたCB CD34
+細胞が異種移植片において4ヶ月でヒト生着を増加させたことを示した
36。この時点は依然としてHPC出力を反映し得る。したがって、成体遺伝子修飾HSCのLTRPに対するp38阻害の効果を調査した。
【0127】
Birb-796、選択的p38α阻害剤
67は、非特異的阻害を引き起こすものよりはるかに下の濃度で選択され、全ての条件における未操作HSCにおいて見られたレベルで、有意により低いホスホ-p38(p-p38)が観察された(
図9、パネルAおよびB)。培養期間の効果から、非周期HSC対周期HSCへの遺伝子導入の効果を区別するために、18~24時間以内にLVで形質導入され(非周期HSC)、24、36~42、もしくは72~96時間後に移植された、または44時間もしくは68時間にRVで形質導入され(周期HSC)、72~96時間で移植されたヒトCD34
+HSPCの連続移植(
図2)を、p38iありまたはなしで行った。24週で、NSG BMにおけるヒトCD45
+細胞生着は、p38iあり/なしの全ての群の間で類似しており、実際に、CB CD34+細胞
36において報告された結果と同様に、72~96時間LVおよびRV群についてp38iで向上した(
図9、パネルC)。
【0128】
興味深いことに、p38iは、36~42時間および72~96時間群で移植された2TマウスにおいてLTRPを0時間および24時間群で観察されたレベルに回復させた(
図9、パネルDおよび
図10):ほぼ3分の1の2Tマウスは、CD34
+細胞をp38iなしで24時間より長く培養した場合、生着しなかったが、p38iの添加は、2TマウスにおけるLTRPを、ベクター型またはそれらがいつ形質導入されたかにかかわらず、未操作HSPCで見られたレベルに回復させ、LTRPの喪失が最初のインビトロHSC分裂で発生することを示した。
【0129】
HSCへの遺伝子導入が培養の最初の24時間(周期ではない場合)に起こった場合、それらが長期培養にその後最大96時間まで維持され、次いで移植された場合でも、p38iはまた24週(1T)の移植片の多能性を0時間対照と同様のレベルに回復させた。しかしながら、周期HSCが形質導入された場合(RV群)、形質導入子孫の顕著な骨髄性歪みはいくらか低減したが、B細胞(
図9、パネルGおよびH)およびCD34+HSPC(
図9、パネルIおよびJ)における対応する低減と共に、依然としてかなり有意であった(
図9、パネルEおよびF)。この効果は、遺伝子操作HSC子孫にのみ特異的であった(
図9、パネルE~J)。まとめると、遺伝子導入中のp38iは長期エクスビボ培養条件中に形質導入HSC LTRPを維持したが、周期HSCの形質導入での極度の骨髄性バイアス子孫およびリンパ性能の低減は部分的にのみ救済された。
【0130】
ヒトHSC運命に対するp38阻害の作用機序
次に、p38阻害が培養および形質導入HSCのLTRPを保持することができるメカニズムを調査した。p38iは、CD34
+細胞の総数、またはインビトロでの生存率に影響を及ぼさず、インビトロまたはインビボでの遺伝子導入効率にも影響を及ぼさなかった(
図11、パネルA~C)。HSC区画はまた、p38阻害でアポトーシス、形質導入効率、またはROSレベルにおいて差を示さず、表現型HSC集団の増加は、p38iありまたはなしで、長期培養を除いて、表現型HSCがp38iでより高かった場合に同様であった(
図12)。
【0131】
RV/LVインテグラーゼ
8、68またはGEヌクレアーゼ媒介DNA二本鎖切断(DSB)は、DNA損傷応答および修復(DDR)経路を引き起こすことができた。したがって、p38阻害がHSC分裂および遺伝子導入でDDRを低減するかを、免疫蛍光法によってFACS選別HSCにおいて調査した。実際、γH2AXフォーカス/細胞の増加は、42時間群または72時間群のいずれかにおける形質導入HSCにおいて見られ、これは、p38阻害で非常に有意に低減し(
図13、パネルA~C)、同時に行われた53bp1染色は、γH2AXの増加がDDRフォーカスと関連していることを確認した(
図13、パネルA~C)。
【0132】
DDR経路活性化はまた、γH2AXについてのフローサイトメトリーによって形質導入および未形質導入HSCにおいて比較された。未操作HSC(0時間)と比較して、γH2AX MFIの増加およびγH2AX陽性HSCの数の増加が24時間(HSCが周期ではない期間)でも見られ、これはp38i処理ありでの未操作HSCにおいて見られるレベルに戻った(
図13、パネルD~F)。特に、この集団は形質導入されるが、GFPタンパク質発現はこの初期24時間時点では存在しない。それゆえ、24時間でのDDRの増加は、遺伝子導入誘導DSBによって引き起こされる可能性が高い。36時間後、未形質導入(GFP
-)対形質導入(GFP
+)HSC集団を別々に分析することができた。形質導入(GFP
+)集団は、36~42時間群および72~96時間群の両方において、未形質導入(GFP
-)集団よりも高いγH2AXレベル、およびγH2AX陽性HSCのパーセンテージを有し、p38iは、γH2AX
+細胞のパーセンテージを有意に低減するが、これらの後の時点で、γH2AXのレベルは、0時間HSCにおいて見られるレベルには戻らなかった[γH2AX(
図13、パネルD~F)およびγH2AX MFI(
図13、パネルDおよびE)について染色するHSCの両方のパーセンテージ]。休止HSCを周期に誘導することもDDRを誘導する
69。データは、未操作HSCにおいて見られるベースラインレベルまでではないが、p38阻害が、周期の増加および形質導入の両方でHSCにおいてDDRを有意に低減することを示す。
【0133】
p38活性化は、周期HSCにおいて最も高かった(
図7、パネルD、ならびに
図8、パネルGおよびH)。したがって、HSC細胞周期動態におけるp38iの役割を調査した。MPB(
図14、パネルA)またはBM(
図15)から新たに単離された場合、ほぼ全てのHSCがG
0期にあり、24時間までにそれらの3分の1がG
1期に移行したが、ほとんどのHSCが周期ではなかった(S-G
2M期にはなかった)。p38iは、G
0静止期におけるHSCの割合を有意に増加させ、インビトロでの最初のHSC分裂前(24時間)にS-G
2M期におけるHSCの割合を減少させた。しかしながら、HSCが細胞周期を通して進行した後、G
0集団の増加に対するp38iの効果が失われた(
図14、パネルAおよびB)。したがって、HSCが周期ではないときに形質導入/DSBが起こる場合、G
0期からG
1期へおよびG
1期からS期への移行のp38i媒介遅延(
図14、パネルAおよびBならびに
図16)は、DDRが低下するのを可能にすることができ、それゆえ、LTRPの救済およびバランスのとれた系統産生によって示されるように、HSC運命が維持される。同じ現象が成体ヒト骨髄由来のHSCでも見られた(
図15)。それらが24時間以内に形質導入されても、42時間でG
0期における有意により低いGFP
+HSCも認められ、LV、好ましくは形質導入G
0細胞が深い休止にはなく、42時間までに、これらがG
1およびS-G
2M期に進行したことを示す。しかしながら、RVと同様に、それらが活性周期であるときにHSCが形質導入された場合、p38iありまたはなしで、細胞周期の異なる期における細胞のパーセンテージに差はなかった(
図14、パネルAおよびB、ならびに
図16)。
【0134】
別の注目すべき発見は、形質導入(GFP
+)72時間RV HSC集団のみが、p38阻害にかかわらず、G
1期におけるHSCの非常に有意な低減およびS-G
2M期におけるそれらの増加を示したことであった。この条件では、移植HSCが、p38iが有意に救済しなかった骨髄性バイアス子孫を産生したので、S-G
2M期を調査した(
図9)。
【0135】
S-G
2MチェックポイントとHIF-1αとの間のクロストークは、RV誘導DSB、細胞周期、およびHSC運命を関連づける
形質導入および未形質導入非周期および周期HSCのS-G
2M動態は、周期HSCにおいてDSBが起こった場合(培養2日後のRV形質導入)、SおよびG
2M後期にHSCの蓄積があったことを示した(
図14、パネルC)。しかしながら、最初の24時間以内に(LVで)ベクター組み込みが起こった場合、この現象は見られなかった(
図14、パネルD)。さらに、この効果はRVに特異的ではなかったが、形質導入された場合HSCの細胞周期に特異的であった。同じドナーからのCD34
+細胞を約2日間(44時間)培養し、44時間および68時間にLV(LV後期またはLV
L)、またはRVのいずれかで形質導入するか、またはHSCをLVで24時間以内に形質導入したが72時間(LV
E)培養し続けた(
図17、パネルA)。SおよびG
2M後期蓄積は、LV
LまたはRV群における形質導入(GFP
+)周期HSCにおいてのみ観察された(
図14、パネルEおよびF)。LVは周期および非周期の両方のHSCを形質導入するので、G
2M蓄積はRVよりもLV
Lにおいて少なく、したがってGFP
+集団は混合集団で構成された。特に、このG
2M蓄積はアポトーシスをもたらさず(むしろ、HSC数は増加し、
図7、パネルCおよび
図12、パネルC)、連続的に続く場合、HSCはG
2M期から移行した(
図14、パネルE)。このG
2M蓄積は、非周期HSCを形質導入した場合(24時間LVまたはLV
E、
図14、パネルE)、細胞周期分析をLV
E対RVでの形質導入後の同じ時点で行った場合(
図14、パネルCおよびD)にも見られなかった。
【0136】
LTRPの維持に失敗し、骨髄性バイアス子孫を産生する表現型HSCの増加は、老化/枯渇HSCを連想させる。HSC集団を、RNAseq分析のための1つの実験から、それぞれ24時間および72時間でのLVおよびRV後に選別して、老化関連遺伝子の転写プロファイルの概観を得た。Wnt5aおよびWnt4(マウスHSCの老化に関連する非古典的Wnt遺伝子
70、71)mRNAレベルはヒトCD34
+38
-90
+RA
-49f
+HSCにおいて検出不能であり、Wnt5b、Wnt11、およびFzd3(Wntシグナル伝達の下流標的
72)発現のみが検出可能なレベルであった。これらの時点でのHSCの非周期および周期を検証するためにP34(Cdk2)mRNA発現を使用して、異なるMPBドナーからの24時間LV
Eおよび72時間LV
L選別HSCにおけるこれらの遺伝子のqRTPCRは、LV
L群においてFzd3およびWntファミリー遺伝子の増加を示した(
図17、パネルB)。
【0137】
この現象がベクター誘導性ではなく、周期HSCにおいて任意の誘導されたDSBから発生することをさらに検証するために、このG
2M蓄積が遺伝子編集ヌクレアーゼでも起こるかを決定した。この目的のために、CD34
+細胞をLV
LおよびRV群と同じ44時間培養し、次いで、ヒトCD45対立遺伝子において高速DNA DSBを誘導する、Cas9/hCD45gRNAリボ核タンパク質複合体でヌクレオポレートし、対照細胞を、Cas9/gRNAリボ核タンパク質複合体なしで、ビヒクルでヌクレオポレートする実験を実施した。G
2M蓄積を、Cas9ヌクレアーゼ誘導DSBに供されたHSC集団において観察した(HSCにおけるFACSによるCD45発現の喪失によって示した、
図17、パネルEおよびF)。
【0138】
機能的には、G
2M期におけるHSCのこの遅延は、HSC系統運命を変更し、骨髄性バイアス子孫をもたらし、1T後6ヵ月の24時間LVおよび72時間LV
E群は骨髄性バイアスを示さなかったが、72時間LV
LまたはRV群はBリンパ性能の喪失を犠牲にして骨髄性バイアス形質導入HSC子孫を有した(
図17、パネルCおよびD)。集合的には、データは、DSBが周期HSCにおいてベクター組み込みまたはヌクレアーゼを介して誘導される場合、DDRがG
2M期においてHSCを失速させ、この遅延が主に骨髄性子孫を産生するHSCをもたらすことを示し、これはFzd3およびWnt5bの発現の増加と同時のHSCの数の増加と共に、枯渇または老化に関連したHSC表現型を示唆し
71、あるいは、リンパ性バイアスHSC集団がG
2M期における蓄積でより脆弱であり得る
73ことも企図される。
【0139】
それらの特定および標的化が周期中に形質導入されたHSCにおける正常な細胞周期進行を回復し得るので、G
2M蓄積のメカニズムが探求された。ほとんどのヒト疾患はNHEJ媒介遺伝子破壊では修正することができないので、周期HSCの遺伝子操作はHDR媒介遺伝子編集に必須である。DNA DSBは古典的に細胞周期チェックポイント、ATM/Chk2キナーゼを誘導するが、DSBがS期およびG
2期に起こる場合、これはATR/Chk1キナーゼを誘導することができる
74-77。より最近では、胸腺細胞におけるV(D)J組み換え中のDNA DSBによってMK2/p38MAPKの活性化は、G
2M細胞周期チェックポイントを誘導することが示されており
78、古典的ATR/Chk1およびATM/Chk2キナーゼに加え、MK2/p38MAPKは、Chk1に平行にDNA損傷に対する細胞周期応答を制御する非古典的チェックポイントキナーゼであることが最近示されている
79。特定のChk1阻害剤(MK-8776、Chk1i)、Chk2阻害剤(PV1019、chk2i)、および単独の、またはChk1iもしくはChk2iと組み合わされたp38iを、G
2M期に蓄積したHSCにおけるそれらの役割を決定するのに使用した。Chk1iでは(統計的に有意ではないが)G
2M期においてより少ない形質導入HSCが蓄積することが見出されたが、Chk2iではそうではなかった(
図18、パネルAおよび
図19、パネルA)。しかしながら、Chk1iとp38iとの組み合わせではG
2M期において著しく少ない形質導入HSCが蓄積したが、Chk2iとp38iとではそうではなく、周期HSCにおいてDSBが誘導される場合、Chk1キナーゼおよびp38MAPKが共にG
2Mチェックポイントを誘導することを示す(
図19、パネルB)。さらに、Chk1は形質導入HSCにおけるγH2AXレベルを低減せず、これはp38iを必要とし、Chk1iとp38iとの組み合わせはγH2AXを低減することにおいていかなる相加効果も有さなかった(
図19、パネルB)。HSCにおける細胞周期チェックポイントの阻害は、発生する他のDSBのチェックを外すことを可能にし得る。それゆえ、Chk1iの代替物が探索された。
【0140】
HIF-1α欠損マウスは老化HSC表現型を発現する
80。HSCにおける細胞周期進行の遅延は、形質導入HSC表現型を媒介するHIF-1αの不安定化をもたらし得、HIF-1α欠損マウス胚線維芽細胞はChk1発現の増加を示すので、HIF-1αの喪失は、Chk1をさらに活性化し得ると仮定された
81。実際に、HSCが72時間単に培養され、0時間のHSCと比較して周期(72時間)中に形質導入されたHSCにおいてHIF-1αレベルがさらに低減した場合、免疫蛍光によるHIF-1αレベルの有意な減少が観察された(
図19、パネルD)。プロスタグランジンE2(PGE2)は、HSC
82においてHIF-1αを安定させることにより
82、マウスおよびCBのHSCにおいてHSCの生存およびホーミングを向上させる
4252ことが報告されている。本明細書では、PGE2が周期形質導入成体HSCにおいてHIF-1αを安定させるか、およびこの安定化がG
2M蓄積を防止し、HSC系統運命を回復するかを調査した。選別された高度HSC富化CD34
+38
-90
+細胞におけるHIF-1αの免疫蛍光分析は、HIF-1αが、周期HSCにおけるRV誘導DNA DSBによって有意に低減し、PGE2をp38iと組み合わせた場合に最も高いHIF-1αレベルが見られたにもかかわらず、PGE2で安定化され得ることを示した(
図19、パネルC~E)。免疫蛍光データをフローサイトメトリーで確認した(
図18、パネルB)。さらに、形質導入周期HSCにおけるHIF-1αの増加は、細胞周期のG
2M期におけるそれらの蓄積の低減と関連していた。重要なことに、PGE2単独では、G
2M期における周期形質導入CD34
+38
-90
+細胞の数を低減する傾向があったが、G
2M蓄積の有意な低減は、PGE2およびp38iの組み合わせでのみ生じた。だが特に、PGE2単独では、これらのHSC富化集団におけるDDRの低減(γH2AXレベルの低減)には効果がなかった。しかしながら、p38iは上記のようにγH2AXを有意に低減し、p38iとPGE2との組み合わせはγH2AXの非常に有意な低減(
図19、パネルGおよび
図18、パネルC)およびG2M蓄積をもたらし、両者がHSCのLTRPおよび系統運命保持に必須であることを示す。
【0141】
PGE2と組み合わせされたp38iは、形質導入HSCのLTRPおよび系統運命を回復させる。
次に、NSGマウスにおけるp38iおよび/またはPGE2の併用処理での限界希釈移植を行った。CD34
+細胞を一晩培養し、次いで12時間あけて(18時間および30時間で)、42時間の総培養期間にわたってLVで形質導入し、以前の実験で使用された半分の用量(500KのCD34
+/マウス)から開始して、CD34
+細胞の制限用量でNSGマウスに移植した。RV形質導入細胞と同様に、500Kおよび250Kの細胞群において骨髄性歪みおよびB-リンパ性能の喪失が6ヶ月で観察された(
図20、パネルA~D)。注目すべきことに、生着HSCに重度の再生ストレスを課す、さらなる制限HSC用量で、未形質導入CD34
+細胞においても骨髄性歪みおよびBリンパ性能の喪失が観察され、過剰なHSC増殖が骨髄性バイアス子孫を誘導することを示した。p38i単独での処理は、より高いHSPC投与量で未形質導入子孫における系統バランスを回復するのに十分であったが、(初期の実験における高HSC用量で観察されたように[
図9])形質導入HSC子孫に対する効果は少なかった。PGE2単独は系統歪みを回復させるのに十分であったが、過剰な周期および形質導入ストレスの組み合わせが存在した場合、最低細胞用量で、PGE2およびp38iの組み合わせは、PGE2単独よりも骨髄性歪みを逆転させ、Bリンパ性能を回復させるのに最も効果的であった(
図20、パネルA~D)。また、1T後24週での骨髄における全ヒト生着は、より高いCD34
+用量群においてp38iおよびPGE2の組み合わせでより高い生着レベルを明らかにし、そこでは生着を有意に分析することができた(
図20、パネルE)。さらに、6ヶ月のBMにおける競合的再増殖単位(CRU)は、p38iまたはPGE2での単回処理と比較して、併用処理でほぼ5倍向上した(
図20、パネルF)。最後に、3ヶ月の2TマウスにおけるLTRPの評価は、LTRPおよび骨髄性歪み表現型の逆転の両方の増加について、p38iおよびPGE2の併用処理の効果を示した(
図20、パネルG、I~L)。p38iもしくはPGE2または組み合わせの使用は、長期二次ヒト移植片においても、GFPマーキングにおけるいかなる効果も有さなかったことに留意されたい(
図20、パネルH)。
【0142】
考察
本明細書に提示されているのは、HSCのインビトロ遺伝子操作がHSCの喪失および運命の変化をもたらす、重要かつ異なるメカニズムである。p38ストレスシグナル伝達は、ROSによって誘導されることが示されている37。この研究では、p38活性化がDDRを増加させ、これがHSCのLTRPを低減することが示されている。本研究はまた、休止から出たHSCおけるDDR増加のメカニズムおよびインビボマウスHSCにおいて結果として見られるHSC消耗を説明し69、DDR応答が遺伝子導入媒介DSBによってさらに誇張され、これはp38阻害でも低減することを示す。
【0143】
加えて、周期HSCにおけるベクターインテグラーゼまたは遺伝子編集ヌクレアーゼによって誘導されるDNA-DSBは、HIF-1αを不安定化し、Chk1/p38媒介G2Mチェックポイントを誘導し、HSCの細胞周期進行を改変し、これはHSCを老化/枯渇させると思われること(LTRP不良、骨髄性バイアス子孫、およびWntシグナル伝達の上方調節を有するHSCの数の増加)が本明細書に示される。本明細書に提示されるデータは、それがG2Mチェックポイントを誘導するためにChk1と協調して作用する、「周期HSC」における非古典的チェックポイントキナーゼとしてp38を支持するが、p38阻害がG0期におけるHSCを増加させるので、p38シグナル伝達の増加はまた「静止HSC」を急いで周期に入れ得る。G0期から活性細胞周期へのHSCの急速な移行は、LTRPが低減したHPCへのそれらの運命を改変する。細胞周期および細胞運命は、多くの幹細胞型におけるクロマチンリモデリングによって密接に関連している85。本明細書に提示されたデータは、インビトロでの最初のHSC分裂中の特定の細胞周期期間における改変がヒトHSC系統運命およびLTRPを改変するのに十分であることを明らかにする。
【0144】
さらに、この研究では、PGE2またはChk1のいずれかは、付随するp38阻害がG2M蓄積を有意に無効にし、さらに重要なことに、HSCにおけるDDRを低減することを必要とし、これらの組み合わされた効果は、周期成体HSCのCRU能をほぼ5倍向上させことが見出された。PGE2は、遺伝毒性ストレスに対してより脆弱である、リンパ性バイアスHSCの生存を媒介することも企図される73。それにもかかわらず、本明細書に提示される研究は、周期HSCのベクター媒介遺伝子導入またはヌクレアーゼ媒介遺伝子修正の両方についての重要な機構的洞察に基づく解決法、ならびにそれらの系統運命およびLTRPの改変を防止する方法を提供する。
【0145】
加えて、DDRは非周期遺伝子操作HSCでも活性化されるが、HSCは静止している場合にこの遺伝毒性ストレスに対してはるかに耐性があるように思われることが観察された。したがって、NHEJを介した遺伝子破壊を対象としたGE方法論は、周期HSCのGEに関連する遺伝毒性ストレスを維持することなく、静止HSCを標的とすることができ、ここで、p38iはDDRを弱め、おそらく再生ストレスを低減することができる。翻訳の観点から、本明細書に提示されるこれらの研究は、RVおよびLV GT試験の結果の根拠を説明し、高いインビトロ遺伝子編集効率にもかかわらず、(周期HSCにおいてHDRが発生する場合)遺伝子標的HSPCの低いインビボ生着を説明する。
【0146】
要約すると、遺伝子導入によるLTRPの喪失およびHSC運命変化のメカニズムを特定することによって、本明細書に提示されているのは、HSCの異なる細胞周期における遺伝子導入/修復、ならびにまたベクター媒介およびGE媒介HDRに適用可能である、p38ストレスシグナル伝達の阻害およびHIF-1αの安定化による周期HSCの遺伝子操作の手段に対する重要な洞察である。
【0147】
例示的な方法
ヒトCD34+細胞単離、培養、および形質導入
新鮮なG-CSF動員末梢血細胞を、IRB承認プロトコルを用いて(全対象からインフォームドコンセントを得て)健常なボランティアからアフェレーシスによって収集し、以前21記載されたようにCliniMac(Miltenyi Biotech、ドイツ)またはIndirect CD34Micro Bead Kit、ヒト(Miltenyi Biotech,Inc.Bisley、ドイツ)を用いて95%より高い純度まで正の選択に供した。新鮮なまたは凍結保存されたCD34+をエクスビボ培養および形質導入のために新たに使用した。対照として、新たに単離されたCD34+細胞を直ちにNSGマウスに移植した。いくつかの実験では、正常骨髄ドナー由来のCD34+細胞を購入した。
【0148】
新たに単離されたCD34+細胞を、可能な限り、特に0時間の対照に使用した。いくつかの実験では、凍結保存されたCD34+細胞を、サイトカインを含有するIMDM中で4時間解凍し、次いで洗浄し、実験に使用した。CD34+細胞を、2%ヒト血清アルブミン(Baxter)、組み換えヒトFlt-3リガンド(Flt3-L、200ng/mL)、幹細胞因子(SCF、300ng/mL)、トロンボポエチン(TPO、100ng/mL)(全てのサイトカインはPeproTechから入手)、およびペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher Scientific)が補充されたX-VIVO10(Lonza)培地において、レトロネクチン(4μg/cm2、CH-296、Takara Bio Inc.)でコーティングされた非組織培養処理プレート上で形質導入した。LV形質導入のために、CD34+細胞(2-5×106/mL)を、4~8時間予備刺激し、培地体積mLあたり5X107~1X108感染単位(IU)のベクター濃度を維持するレンチウイルスベクター(LV)で、12~14時間あけて2回形質導入した。細胞を合計18~24時間、36~42時間、または72~96時間のいずれかにわたって培養し続けた。RV形質導入のために、ヒトCD34+細胞を3×105細胞/mlの細胞密度で約2日間(42~48時間)予備刺激した。レトロネクチンでコーティングされた組織培養フラスコまたはプレートに、室温でGALVシュードタイプRVを各々1時間にわたって2回予備装填した。ベクター上清を除去し、細胞をRV装填レトロネクチン被覆フラスコに装填した。RV形質導入もまた、5~10の範囲のMOIで24時間あけて2回行った。合計72~96時間の培養後、細胞を採取した。LVおよびRV形質導入を、周囲酸素濃度(20%O2)中、5%CO2下、37℃で行った。いくつかの実験について、LVをRVと同様に2日間の予備刺激後に添加した。p38MAPK阻害剤Birb796(600nM)、Vx-745(1μM)、またはLY2228820(500nM)(全てSelleckchem製)を培地に補充した。Chk1阻害剤:MK-8776(1μM)(Selleckchem S2735)またはChk2阻害剤:PV1019(1μM)(Calbiochem220488)を形質導入のみで添加し、16,16ジメチルプロスタグランジンE2(PGE2)(10μM)(Cayman)を培養の開始時、最初の形質導入時、および採取の1時間前に添加した。N-アセチルシステインアミド(NACA)(Sigma A0737)を記載の濃度で使用した。
【0149】
形質導入後、細胞を採取し、洗浄し、PBSに再懸濁し、135C供給源(Mark I Model68A Irradiator,J.L.Shepherd and Associates,San Fernando,CA)を使用して、280cGy照射を受けたNSGマウスに(マウスあたり1×106細胞)を静脈内注射した。いくつかの実験では、細胞の一部をMethoCult GF4434(Stem Cell Technologies、バンクーバー、カナダ)上に播種して、コロニー形成単位細胞(CFC)において14日目の遺伝子導入効率を決定し、液体培養において7日目のeGFP+細胞のパーセンテージを推定した。
【0150】
異種移植
NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から購入した。全ての動物は、特定の病原体を含まない環境において飼育および維持され、全ての実験は、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。8~14週齢のオスおよびメスNSGマウスに、照射の1週間前、その間、およびその2週間後ドキシサイクリン飼料(TestDiet、0.0625%ドキシサイクリンを含むModified Prolab RMH-1500)を与えた。左右の大腿骨から6週および12週に行われたBM吸引を介して、骨髄(BM)におけるヒト生着を分析した。24週後に犠死させた後、全ての一次マウス(1T)からの骨髄を採取した。いくつかの実験では末梢血分析も行った。マウスCD45+細胞を、ビオチンラット抗マウスCD45(BD Biosciences553078)およびストレプトアビジン粒子プラス-DM(BD Biosciences557812)を用いて、各1Tマウスから別々に採取されたBMから枯渇させ、1匹の照射された(280cGy)二次NSGマウスに注入した後に、二次移植(2T)を行った。限界希釈移植から競合的再増殖単位(CRU)を計算するために、L-Calcソフトウェア(Stem Cell Technologies)を使用した。この研究に使用された全てのマウスは、無作為に処置群に割り当てた。いずれの動物も分析から除外しなかった。
【0151】
レンチウイルスおよびγ-レトロウイルスベクター構築物
レンチウイルスベクター(LV)pRRL.SIN.cPPT.MNDU3.eGFP.WPRE86は、MNDU3プロモーターの制御下で向上された緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする。ベクターは、VSV-Gエンベロープを用いてパッケージングされた。レトロウイルスベクター(RV)pSRS11.EFS.GFP.PRE(GALV)87は、短いEF1α(EFS)プロモーターの制御下でGFPをコードし、GALVエンベロープを用いてパッケージングされた。
【0152】
フローサイトメトリー分析
ヒトCD34(BD Biosciences560710または555824)、CD38(eBiosciences、San Diego、CA47-0389-42)、CD90(BioLegend328120)、CD45RA(eBiosciences17-0458-42)、CD49f(BD Biosciences555736)、CD45(BD55485またはBiolegend304026)、CD33(eBiosciences25-0338-42)、CD19(BD Biosciences557791)、またはCD3(BD Biosciences555340)に対するPE-Cyanine7またはAPC-eFluor780、APCまたはPE複合抗体。細胞(約5×105~1×106)を、適切なアイソタイプコントロールと製造業者の指示通りに抗体で標識するために使用した。ホスホフローについて、一次抗体ホスホ-p38(Thr180/Tyr182、4092S)、ホスホ-p44/42MAPK(ERK1/2)(Thr202/Tyr204、4094S)、およびホスホ-JNK(Thr183-Tyr185PE複合体、575 5S)(全てCell Signaling製)を一晩染色に使用し、続いて洗浄およびヤギ抗ウサギIgG(H+L)またはヤギ抗ウサギIgG(H+L)またはPacific Blue(P-10994)抗体を含む二次抗体染色を行った。製造業者の説明書に従って、PEアネキシンVアポトーシス検出キット(BD Biosciences559763)を使用してアポトーシスアッセイを実施した。総ROSおよびミトコンドリア特異的ROSを、製造業者の指示に従って、それぞれ10μMのCM-H2DCFDA(ThermoFisher Scientific C6827)および5μMのMitoSOX Red(ThermoFisher Scientific M36008)を用いて検出した。
【0153】
細胞周期分析のために、以前に記載されているように88、細胞をまず表面マーカーで標識し、BD固定/透過処理溶液(BD Biosciences554714)を用いて固定および透過処理し、次いでPerCP-Cy(商標)5.5抗Ki-67(BD Biosciences561284)、Alexa Fluor647抗-Ki-67(BD Biosciences558615)、およびHoechst33342(Sigma-Aldrich B2261)で10μg/mLで染色した。EdU取り込みアッセイのために、細胞を、培養期間を通して10μM EdUでインキュベートし、Click-it Plus EdU Pacific Blue Flow Cytometry Assay Kit(ThermoFisher Scientific C10636)を染色に使用した。DDR検出のために、固定および透過処理された細胞をPEマウス抗H2AX(pS139)(BD Biosciences562377)で染色した。試料をFACSCanto、Fortessa、またはLSR2フローサイトメーター(BD Biosciences)に通し、データをFACSDivaソフトウェア(BD)によって分析した。いくつかの実験では、細胞を上記のように適切な抗体で染色し、次いでBD FACSAria IIセルソーターを用いて選別した。
【0154】
免疫蛍光
FACS選別CD34+38-90+細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%Triton X-100(Sigma-Aldrich)を用いて透過処理した。細胞を次いで、一次抗体抗ホスホH2AX(Ser139)(Millipore、05-636)、抗53BP1抗体(Novus Biologicals、NB100-904)、または抗HIF-1α(ab103063)で染色した。二次抗体について、Alexa Fluor594複合ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(A-11037)またはAlexa Fluor647複合ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(A-21245)(共にThermoFisher Scientific製)を37℃で1時間使用した。細胞を対比染色し、DAPIを含むVectaShield褪色防止封入剤(H-1200Vector Laboratories)で封入した。画像を、Nikon90i直立顕微鏡を用いて得た。
【0155】
ヒトCD34+細胞におけるCas9/gRNA RNPのヌクレオポレーション
CD45sgRNAを、GeneArt(商標)Precision gRNA Synthesis Kitを用いてアセンブリPCRおよびインビトロ転写により合成した。sgRNA試料の品質を、それを10%Novex(商標)TBE-尿素ゲル上で泳動することにより決定し、100塩基での離散バンドが無傷のsgRNAを示した。Cas9緩衝液を、20mMのHEPES pH7.5、150mMのKCl、1mMのMgCl2、10%グリセロール、および1mMのTCEPで調製した。解凍され、44時間予備刺激されたヒトMPB由来CD34+細胞をCas9RNPでのヌクレオフェクションに供した。Cas9RNPを、以前に記載されたように、CD34+細胞のヌクレオフェクション直前に組み立てた29。20μLの細胞懸濁液(150,000~200,000細胞)をCas9RNPでヌクレオフェクトするために、Cas9緩衝液中に120pmolのsgRNAを含有する5μLの溶液を調製した。Cas9緩衝液中に100pmolのCas9タンパク質を含有する5μLの溶液を調製し、約30秒間かけてゆっくりとsgRNA溶液に添加し、室温で20分間インキュベートした。各ヌクレオフェクションについて、150,000~200,000のCD34+細胞を20μLのP3溶液(Lonza)に再懸濁し、10μLのCas9RNPと混合した。この混合物を次いで、E0100プログラムを用いてLonza4Dヌクレオフェクターを用いてヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクトされた細胞を(上記のようにヒトサイトカインを補充した)新鮮な培地に回収し、さらなる時間37℃で培養した。細胞を、細胞周期染色のためにヌクレオフェクション後6および24時間で採取した。残りの細胞を、ジェノタイピングおよびフローサイトメトリーのためのCD45染色の前にさらに5~8日間培養した。
【0156】
定量的PCR分析
1つの実験において、p38iでの24時間および72時間の処理ありならびに処理なしでのFACS選別培養および形質導入CD34+38-90+45RA-49f+HSCからのRNAについてRNAseq分析を行った。qRT PCRのために、培養および形質導入された細胞を採取し、FACS Ariaセルソーター(BD)を用いてCD34+CD38-CD90+マーカーについて直接TRI試薬(Molecular Research Center,Inc.)に選別した。クロロホルムによる相分離およびイソプロパノールによる沈殿で全RNAを精製した。SuperScript IV VILO Master Mix(ThermoFisher Scientific11756050)を用いてcDNAを生成した。以下:FZD3Hs00184043_m1、WNT5B Hs01086864_m1、p34CDC2Hs00938777_m1(ABI/ThermoFisher、4331182)のようなプライマー/プローブセットを使用してqPCRによりcDNAを増幅し、ABI7900高速リアルタイムPCRシステム上で分析した。qPCR設定に使用したマスターミックスは、iTaq Universal Probes Supermix(BioRad1725134)であった。遺伝子発現レベルは、ヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)(ABI/ThermoFisher)に対して正規化したΔΔCt法を用いて計算した。
【0157】
統計分析
データは、平均±標準誤差(SEM)として表す。群に応じて、GraphPad Prism(V.7)ソフトウェアを使用して、図の凡例に示されるように、両側マン・ホイットニーU検定、対応のあるスチューデントt検定、またはウィルコクソン検定、ログランク検定を用いることによってデータを分析した。二群間の対比較を行ったので、多重比較検定は用いなかった。P値≦0.05を有意とみなした。
【0158】
実施例において引用されている参考文献
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【0159】
他の実施形態
本明細書に開示されている全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本明細書に開示されている各特徴は、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。したがって、他に明示的に述べられていない限り、開示された各特徴は、包括的な一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
【0160】
上記の説明から、当業者は、本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適合させるために本開示に様々な変更および修正を行うことができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内にある。
【0161】
等価物
本明細書ではいくつかの発明の実施形態が説明および例示されたが、当業者であれば、機能を実行する、かつ/または結果および/もしくは本明細書に記載の利点の1つ以上を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想起し、そのような変形および/または修正の各々は、本明細書に記載の発明の実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意味すること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が発明の教示が使用される特定の用途(複数可)に依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書に記載の特定の発明の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または日常的な実験のみを用いて確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態が例としてのみ提示されること、ならびに添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、発明の実施形態が具体的に説明および特許請求される以外で実施され得ることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載される各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾していない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0162】
本明細書で定義および使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書中の定義、および/または定義された用語の通常の意味に優先すると理解されるべきである。
【0163】
本明細書に開示されている全ての参考文献、特許、および特許出願は、いくつかの場合では文書の全体を包含し得る、各々が引用されている主題に関して参照により組み込まれる。
【0164】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、それとは反対に明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0165】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または」という句は、そのように結合された要素、すなわち、いくつかの場合では結合的に存在し、他の場合では分離的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙された複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。具体的に特定された要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、「および/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素が任意に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンド言語と共に使用される場合、一実施形態では、Aのみ(任意にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(任意に他の要素を含む)、などを指すことができる。
【0166】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、「または」は、上で定義される「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的、すなわち、多数の要素またはそのリスト、および任意に追加の列挙されていない項目の、少なくとも1つを含むが、2つ以上も含むものとして解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用される場合、「~の1つのみ」または「~の厳密に1つ」などのそれとは反対に明確に示された用語のみが、多数の要素またはそのリストの厳密に1つの要素の包含を指すであろう。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「~の1つ」、「~の1つのみ」、または「~の厳密に1つ」などの排他性の用語が先行する場合にのみ排他的な代替物(すなわち、「両方ではない一方または他方」)を示すと解釈されるものとする。「本質的に~からなる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野において使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0167】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、1つ以上の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト中の要素のいずれか1つ以上から選択されるが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙される要素の各々および全ての要素の少なくとも1つを含まず、要素のリスト中の要素のいずれの組み合わせも除外しない、少なくとも1つの要素を意味することが理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、任意に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも一方」(または同等に、「AまたはBの少なくとも一方」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも一方」)は、一実施形態では、任意に2つ以上、Aを含み、Bが存在しない(および任意にB以外の要素を含む)少なくとも1つ、別の実施形態では、任意に2つ以上、Bを含み、Aが存在しない(および任意にA以外の要素を含む)少なくとも1つ、さらに別の実施形態では、任意に2つ以上、Aを含む、少なくとも1つ、および任意に2つ以上、Bを含む(および任意に他の要素を含む)少なくとも1つ、などを指すことができる。
【0168】
それとは反対に明確に示されていない限り、2つ以上のステップまたは行為を含む本明細書で特許請求されるいかなる方法において、方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも方法のステップまたは行為が列挙されている順序に限定されないことも理解されるべきである。