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特許7175284変形可能な準固体電極材料を備えたアルカリ金属電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】変形可能な準固体電極材料を備えたアルカリ金属電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20221111BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20221111BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20221111BHJP
   H01G 11/40 20130101ALI20221111BHJP
   H01G 11/48 20130101ALI20221111BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20221111BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20221111BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221111BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20221111BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20221111BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221111BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221111BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20221111BHJP
【FI】
H01M10/052
H01G11/06
H01G11/36
H01G11/40
H01G11/48
H01G11/50
H01G11/84
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/60
H01M4/62 Z
H01M10/054
H01M10/0566
H01M10/0568
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/485
H01M4/139
H01M10/058
【請求項の数】 88
(21)【出願番号】P 2019564174
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2018022141
(87)【国際公開番号】W WO2018217274
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】15/604,606
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/604,607
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012688(JP,A)
【文献】特表2016-500465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
H01G 11/06
H01G 11/40
H01G 11/36
H01G 11/48
H01G 11/50
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)30体積%~95体積%のカソード活物質と、溶媒に溶解されたアルカリ塩を含有する5体積%~40体積%の第1の電解質と、0.01体積%~30体積%の導電性添加剤とを含有する準固体カソードであって、導電性フィラメントを含有する前記導電性添加剤が、電子伝導路の3Dネットワークを形成し、準固体電極が10 -6 S/cm~300S/cmの導電率を有する、準固体カソードと、
(b)アノードと、
(c)前記アノードと前記準固体カソードとの間に配設されたイオン伝導膜又は多孔質セパレータとを備えるアルカリ金属セルにおいて、前記準固体カソードが、200μm以上の厚さを有する
ことを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項2】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アノードが、30体積%~95体積%のアノード活物質と、溶媒に溶解されたアルカリ塩を含有する5体積%~40体積%の第2の電解質と、0.01体積%~30体積%の導電性添加剤とを含有する準固体アノードを含み、導電性フィラメントを含有する前記導電性添加剤が、電子伝導路の3Dネットワークを形成し、前記準固体電極が、10 -6 S/cm~300S/cmの導電率を有し、前記準固体アノードが、200μm以上の厚さを有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項3】
(a)30体積%~95体積%のアノード活物質と、溶媒に溶解されたアルカリ塩を含有する5体積%~40体積%の電解質と、0.01体積%~30体積%の導電性添加剤とを含有する準固体アノードであって、導電性フィラメントを含有する前記導電性添加剤が、電子伝導路の3Dネットワークを形成し、前記準固体電極が、10 -6 S/cm~300S/cmの導電率を有する、準固体アノードと、
(b)カソードと、
(c)前記準固体アノード前記カソードとの間に配設されたイオン伝導膜又は多孔質セパレータとを備えるアルカリ金属セルにおいて、前記準固体アノードが、200μm以上の厚さを有する
ことを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項4】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記第1の電解質が、2.5M以上の塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項5】
請求項2に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記第1の電解質又は第2の電解質が、2.5M以上の塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項6】
請求項3に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記電解質が、2.5M以上の塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項7】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記第1の電解質が、3.0M~14Mの塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項8】
請求項2に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記第1の電解質又は第2の電解質が、3.0M~14Mの塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項9】
請求項3に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記電解質が、3.0M~14Mの塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項10】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記導電性フィラメントが、炭素繊維、黒鉛繊維、炭素ナノファイバ、グラファイトナノファイバ、カーボンナノチューブ、ニードルコークス、カーボンウィスカ、導電性ポリマー繊維、導電性材料被覆繊維、金属ナノワイヤ、金属繊維、金属ワイヤ、グラフェンシート、膨張黒鉛プレートレット、それらの組合せ、又はそれらと非フィラメント状導電性粒子との組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項11】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記電極が、10 -5 S/cm~100S/cmの導電率を維持することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項12】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記電極が、10 -3 S/cm~10S/cmの導電率を維持することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項13】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記電極が、10 -2 S/cm~10S/cmの導電率を維持することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項14】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記導電性フィラメントが、前記導電性フィラメント間の交点で樹脂によって互いに結合されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項15】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記準固体カソードが、0.1体積%~20体積%の導電性添加剤を含有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項16】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記準固体カソードが、1体積%~10体積%の導電性添加剤を含有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項17】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記活物質の量が、前記電極の材料40体積%~90体積%であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項18】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記活物質の量が、前記電極の材料50体積%~85体積%であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項19】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記活物質の量が、前記電極の材料50体積%~75体積%であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項20】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記第1の電解質が、過飽和状態にあることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項21】
請求項2に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記第1の電解質又は前記第2の電解質が、過飽和状態にあることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項22】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記第1の電解質が、水性液体、有機溶媒、イオン液体、又は有機溶媒とイオン液体との混合物を含有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項23】
請求項2に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記第1の電解質又は前記第2の電解質が、水性液体、有機溶媒、イオン液体、又は有機溶媒とイオン液体との混合物を含有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項24】
請求項2に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アルカリ金属セルが、リチウム金属セル、リチウムイオンセル、又はリチウムイオンキャパシタセルであり、前記アノード活物質が、
(a)リチウム金属又はリチウム金属合金の粒子と、
(b)天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素粒子、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、炭素繊維、及び黒鉛繊維と、
(c)シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd)と、
(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、又はCdと他の元素との合金又は金属間化合物であって、化学量論的又は非化学量論的である合金又は金属間化合物と、
(e)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合物と、
(f)それらのプレリチウム化されたバージョンと、
(g)プレリチウム化されたグラフェンシートと、
それらの組合せと
からなる群から選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項25】
請求項24に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記プレリチウム化されたグラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープグラフェン、窒素ドープグラフェン、化学的に官能化されたグラフェン、それらの物理的若しくは化学的に活性化又はエッチングされたバージョン、又はそれらの組合せのプレリチウム化されたバージョンから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項26】
請求項2に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アルカリ金属セルが、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、前記アノード活物質が、石油コークス、カーボンブラック、非晶質炭素、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸塩、NaTi(PO、NaTi、Na、NaTP、NaTiO(x=0.2~1.0)、Na、カルボン酸塩ベースの材料、CNa、C、CNaO、CNa、C10Na、C14、C14Na、又はそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項27】
請求項2に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アルカリ金属セルが、ナトリウム金属セル、ナトリウムイオンセル、又はナトリウムイオンキャパシタであり、前記アノード活物質が、
a)ナトリウム金属又はナトリウム金属合金の粒子と、
b)天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素粒子、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、炭素繊維、及び黒鉛繊維と、
c)ナトリウムをドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、及びそれらの混合物と、
d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金又は金属間化合物と、
e)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cdのナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、又はアンチモン化物、及びそれらの混合物又は複合物と、
f)ナトリウム塩と、
g)ナトリウムイオンを予め装填されたグラフェンシートと、それらの組合せと
からなる群から選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項28】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アルカリ金属セルが、リチウム金属セル又はリチウムイオンセルであり、前記カソード活物質が、コバルト酸リチウム、ドープされたコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ドープされたニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ドープされたマンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ドープされたバナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、金属硫化物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウムインターカレーション化合物を含有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項29】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アルカリ金属セルが、リチウム金属セル又はリチウムイオンセルであり、前記カソード活物質が、無機材料、有機若しくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるリチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物を含有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項30】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸リチウム混合金属、遷移金属硫化物、及びそれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項31】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記無機材料が、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項32】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記無機材料が、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項33】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13、それらのドープされたバージョン、それらの誘導体、及びそれらの組合せからなる群から選択された酸化バナジウムを含み、0.1<x<5であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項34】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、オリビン化合物LiMPO、ケイ酸塩化合物LiMSiO、タボライト化合物LiMPOF、ホウ酸塩化合物LiMBO、又はそれらの組合せから選択され、ここで、Mは、遷移金属、又は複数の遷移金属の混合物であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項35】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記無機材料が、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド又はトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、又は遷移金属の硫化物、セレン化物、又はテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項36】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記有機材料又はポリマー材料が、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS]n)、リチウム化された1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリットジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li、又はこれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項37】
請求項36に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記チオエーテルポリマーが、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族成分からなる主鎖を有し、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項38】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記有機材料が、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、又はそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含むことを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項39】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物が、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項40】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物が、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートレットの形態での、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項41】
請求項29に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物が、(a)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せ、から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートから選択され、ここで、前記ディスク、プレートレット、又はシートが100nm未満の厚さを有することを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項42】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アルカリ金属セルが、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、前記活物質が、無機材料、有機若しくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物又はナトリウム吸収化合物を含有するカソード活物質であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項43】
請求項42に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸ナトリウム、ニッケル酸ナトリウム、マンガン酸ナトリウム、バナジウム酸ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、ナトリウム/カリウム遷移金属酸化物、リン酸鉄ナトリウム、リン酸鉄ナトリウム/カリウム、リン酸マンガンナトリウム、リン酸マンガンナトリウム/カリウム、リン酸バナジウムナトリウム、リン酸バナジウムナトリウム/カリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項44】
請求項42に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記無機材料が、硫黄、硫黄化合物、多硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項45】
請求項42に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記無機材料が、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項46】
請求項42に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アルカリ金属セルが、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、前記活物質が、NaFePO、Na(1-x)PO、Na0.7FePO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、Na(PO、NaFePOF、NaFeF、NaVPOF、Na(PO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、NaV15、NaVO、Na0.33Na CoO 、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O、Na(Fe1/2Mn1/2)O、NaMnO、λ-MnO、Na(1-x)MnO、Na0.44MnO、Na0.44MnO/C、NaMn18、NaFeMn(PO、NaTi、Ni1/3Mn1/3Co1/3、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaMnO、NaCrO、NaTi(PO、NiCo、Ni/FeS、Sb、NaFe(CN)/C、NaV1-xCrPOF、Se(y/z=0.01~100)、Se、アルオード石、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物を含有するカソード活物質であり、ここでxは0.1~1.0であることを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項47】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アノード活物質が、15mg/cm超の電極活物質質量装填量を成すことを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項48】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アノード活物質が、20mg/cm超の電極活物質質量装填量を成すことを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項49】
請求項1に記載のアルカリ金属セルにおいて、前記アノード活物質が、30mg/cm超の電極活物質質量装填量を成すことを特徴とするアルカリ金属セル。
【請求項50】
準固体電極を有するアルカリ金属セルを調製する方法において、
(d)ある量の活物質と、ある量の電解質と、導電性添加剤とを組み合わせて、変形可能な導電性電極材料を形成するステップであって、導電性フィラメントを含有する前記導電性添加剤が、電子伝導経路の3Dネットワークを形成するステップと、
(e)前記電極材料を準固体電極として形成するステップであって、電極が10-6S/cm以上の導電率を維持するように、電子伝導経路の3Dネットワークを途切れさせずに前記電極材料を電極形状に変形することを含むステップと、
(f)第2の電極を形成するステップと、
(g)前記準固体電極と前記第2の電極とを組み合わせることによって、アルカリ金属セルを形成するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法において、前記電解質が、2.5M~14Mの塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法において、前記電解質が、3.0M~11Mの塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項50に記載の方法において、前記導電性フィラメントが、炭素繊維、黒鉛繊維、炭素ナノファイバ、グラファイトナノファイバ、カーボンナノチューブ、ニードルコークス、カーボンウィスカ、導電性ポリマー繊維、導電性材料被覆繊維、金属ナノワイヤ、金属繊維、金属ワイヤ、グラフェンシート、膨張黒鉛プレートレット、それらの組合せ、又はそれらと非フィラメント状導電性粒子との組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項50に記載の方法において、前記電極が、10 -5 S/cm~300S/cmの導電率を維持することを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項50に記載の方法において、前記変形可能な電極材料が、1000s-1の見掛けせん断速度で10000Pa・s以上の見掛け粘度を有することを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項50に記載の方法において、前記変形可能な電極材料が、1000s-1の見掛けせん断速度で100000Pa・s以上の見掛け粘度を有することを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項50に記載の方法において、前記活物質の量が、前記電極材料の20体積%~95体積%であることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項50に記載の方法において、前記活物質の量が、前記電極材料の35体積%~85体積%であることを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項50に記載の方法において、前記活物質の量が、前記電極材料の50体積%~75体積%であることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項50に記載の方法において、前記組み合わせるステップが、前記導電性フィラメントを液体溶媒に分散し、均質な懸濁液を生成し、その後、前記活物質を前記懸濁液に添加し、リチウム塩又はナトリウム塩を前記懸濁液の前記液体溶媒に溶解することを含むことを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項50に記載の方法において、前記電極材料を組み合わせて準固体電極として形成する前記ステップが、リチウム塩又はナトリウム塩を液体溶媒に溶解して、第1の塩濃度を有する電解質を形成し、その後、前記液体溶媒の一部を除去して前記塩濃度を増加させて、前記第1の濃度よりも高く2.5Mよりも高い第2の塩濃度を有する準固体電解質を得ることを含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項61に記載の方法において、前記除去するステップが、前記塩の沈殿又は結晶化を引き起こさず、前記電解質が過飽和状態にあることを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項61に記載の方法において、前記液体溶媒が、少なくとも第1の液体溶媒と第2の液体溶媒との混合物を含有し、前記第1の液体溶媒が、前記第2の液体溶媒よりも揮発性が高く、前記液体溶媒の一部を除去する前記ステップが、前記第1の液体溶媒を除去することを含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項50に記載の方法において、前記アルカリ金属セルが、リチウム金属セル又はリチウムイオンセルであり、前記活物質が、
(h)リチウム金属又はリチウム金属合金の粒子と、
(i)天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素粒子、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、炭素繊維、及び黒鉛繊維と、
(j)シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd)と、
(k)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、又はCdと他の元素との合金又は金属間化合物であって、化学量論的又は非化学量論的である合金又は金属間化合物と、
(l)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合物と、
(m)それらのプレリチウム化されたバージョンと、
(n)プレリチウム化されたグラフェンシートと、
それらの組合せと
からなる群から選択されるアノード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法において、前記プレリチウム化されたグラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープグラフェン、窒素ドープグラフェン、化学的に官能化されたグラフェン、それらの物理的若しくは化学的に活性化又はエッチングされたバージョン、又はそれらの組合せのプレリチウム化されたバージョンから選択されることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項50に記載の方法において、前記アルカリ金属セルが、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、前記活物質が、石油コークス、非晶質炭素、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸塩、NaTi(PO、NaTi、Na、NaTP、NaTiO(x=0.2~1.0)、Na、カルボン酸塩ベースの材料、CNa、C、CNaO、CNa、C10Na、C14、C14Na、又はそれらの組合せから選択されるアルカリインターカレーション化合物を含有するアノード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項50に記載の方法において、前記アルカリ金属セルが、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、前記活物質が、
h)ナトリウム金属又はナトリウム金属合金の粒子と、
i)天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素粒子、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、炭素繊維、及び黒鉛繊維と、
j)ナトリウムをドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、及びそれらの混合物と、
k)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金又は金属間化合物と、
l)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cdのナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、又はアンチモン化物、及びそれらの混合物又は複合物と、
m)ナトリウム塩と、
n)ナトリウムイオンを予め装填されたグラフェンシートと、それらの組合せと
からなる群から選択されるアノード活性物質であることを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項50に記載の方法において、前記アルカリ金属セルが、リチウム金属セル又はリチウムイオンセルであり、前記活物質が、コバルト酸リチウム、ドープされたコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ドープされたニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ドープされたマンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ドープされたバナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、金属硫化物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウムインターカレーション化合物を含有するカソード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項69】
請求項50に記載の方法において、前記電解質が、水性液体、有機溶媒、イオン液体、又は有機溶媒とイオン液体との混合物から選択されることを特徴とする方法。
【請求項70】
請求項50に記載の方法において、前記アルカリ金属セルが、リチウム金属セル又はリチウムイオンセルであり、前記活物質が、無機材料、有機若しくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるリチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物を含有するカソード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項71】
請求項70に記載の方法において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項72】
請求項70に記載の方法において、前記無機材料が、硫黄、硫黄化合物、多硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項73】
請求項70に記載の方法において、前記無機材料が、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項74】
請求項70に記載の方法において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13、それらのドープされたバージョン、それらの誘導体、及びそれらの組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含有し、ここで、0.1<x<5であることを特徴とする方法。
【請求項75】
請求項70に記載の方法において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、オリビン化合物LiMPO、ケイ酸塩化合物LiMSiO、タボライト化合物LiMPOF、ホウ酸塩化合物LiMBO、又はそれらの組合せから選択され、Mは、遷移金属又は複数の遷移金属の混合物であることを特徴とする方法。
【請求項76】
請求項70に記載の方法において、前記無機材料が、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲナイド又はトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項77】
請求項70に記載の方法において、前記有機材料又はポリマー材料が、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS]n)、リチウム化された1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリットジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li、又はこれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項78】
請求項77に記載の方法において、前記チオエーテルポリマーが、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族成分からなる主鎖を有し、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項79】
請求項70に記載の方法において、前記有機材料が、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、又はそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項80】
請求項70に記載の方法において、前記リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物が、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ジカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項81】
請求項70に記載の方法において、前記リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物が、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートレットの形態での、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ジカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択されることを特徴とする方法。
【請求項82】
請求項70に記載の方法において、前記リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物が、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲナイド又はトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せから選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートから選択され、前記ディスク、プレートレット、又はシートの厚さが100nm未満であることを特徴とする方法。
【請求項83】
請求項70に記載の方法において、前記リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物が、(i)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(ii)遷移金属ジカルコゲナイド又はトリカルコゲナイド、(iii)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(iv)窒化ホウ素、又は(v)それらの組合せから選択されるリチウムインターカレーション化合物のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートを含み、前記ディスク、プレートレット、コーティング、又はシートの厚さが100nm未満であることを特徴とする方法。
【請求項84】
請求項50に記載の方法において、前記アルカリ金属セルが、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、前記活物質が、無機材料、有機若しくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物又はナトリウム吸収化合物を含有するカソード活物質であることを特徴とする方法。
【請求項85】
請求項84に記載の方法において、前記金属酸化物/リン酸塩/硫化物が、コバルト酸ナトリウム、ニッケル酸ナトリウム、マンガン酸ナトリウム、バナジウム酸ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、ナトリウム/カリウム遷移金属酸化物、リン酸鉄ナトリウム、リン酸鉄ナトリウム/カリウム、リン酸マンガンナトリウム、リン酸マンガンナトリウム/カリウム、リン酸バナジウムナトリウム、リン酸バナジウムナトリウム/カリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項86】
請求項84に記載の方法において、前記無機材料が、硫黄、硫黄化合物、多硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項84に記載の方法において、前記無機材料が、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項88】
請求項50に記載の方法において、前記アルカリ金属セルが、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、前記活物質が、NaFePO、Na(1-x)PO、Na0.7FePO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、Na(PO、NaFePOF、NaFeF、NaVPOF、Na(PO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、NaV15、NaVO、Na0.33Na CoO 、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O、Na(Fe1/2Mn1/2)O、NaMnO、λ-MnO、Na(1-x)MnO、Na0.44MnO、Na0.44MnO/C、NaMn18、NaFeMn(PO、NaTi、Ni1/3Mn1/3Co1/3、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaMnO、NaCrO、NaTi(PO、NiCo、Ni/FeS、SbNa Fe(CN) /C、NaV1-xCrPOF、Se(y/z=0.01~100)、Se、アルオード石、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物を含有するカソード活物質であり、ここでxは0.1~1.0であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年5月24日出願の米国特許出願第15/604,606号及び2017年5月24日出願の米国特許出願第15/604,607号の優先権を主張し、上記特許出願を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、概して、充電式リチウム金属電池、ナトリウム金属電池、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、及びナトリウムイオンキャパシタを含むアルカリ金属電池の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に見ると、今日最も好まれている充電式エネルギー貯蔵デバイス、すなわちリチウムイオン電池は、実際には、リチウム(Li)金属又はLi合金をアノードとして使用し、Liインターカレーション化合物をカソードとして使用する充電式「リチウム金属電池」から進化した。Li金属は、その軽量(最も軽い金属)、高い電気陰性度(標準水素電極に対して-3.04V)、及び高い理論的容量(3,860mAh/g)により、理想的なアノード材料である。これらの顕著な特性に基づいて、リチウム金属電池は、40年前に、高エネルギー密度用途に理想的なシステムとして提案された。1980年代半ば、充電式Li金属電池の幾つかのプロトタイプが開発された。注目すべき一例は、MOLI Energy,Inc.(カナダ)によって開発された、Li金属アノードと硫化モリブデンカソードとから構成された電池であった。この電池、及び様々な製造業者からの幾つかの他の電池は、後続の各再充電サイクル中に金属が再びめっきされるので、非常に不均一なLi成長(Liデンドライトの形成)によって一連の安全性の問題が引き起こされるため見限られた。サイクル数が増加するにつれて、これらのデンドライト又は樹枝状のLi構造は、最終的にセパレータを横切ってカソードに到達し、内部短絡を引き起こす可能性がある。
【0004】
これらの安全性の問題を克服するために、電解質又はアノードのいずれかを改良した幾つかの代替手法が提案された。1つの手法は、アノードとして黒鉛(別のLi挿入材料)によってLi金属を置換することを含む。そのような電池の動作は、2つのLi挿入化合物の間でLiイオンを往復させることを含み、したがって「Liイオン電池」という名称である。おそらく、金属状態ではなくイオン状態でLiが存在するので、Liイオン電池は、本来的にLi金属電池よりも安全である。
【0005】
リチウムイオン電池は、電気自動車(EV)、再生可能エネルギー貯蔵、及びスマートグリッド用途のための第一候補のエネルギー貯蔵デバイスである。過去20年間で、リチウムイオン電池ではエネルギー密度、レート特性、及び安全性の面での継続的な改良が見られたが、どういうわけか、かなり高いエネルギー密度を有するLi金属電池にはほとんど目が向けられていなかった。しかし、Liイオン電池における黒鉛ベースのアノードの使用は、以下のような幾つかの大きな欠点を有する。低い比容量(Li金属に関する3,860mAh/gとは対照的に372mAh/gの理論的な容量);長い再充電時間(例えば、電気自動車の電池では7時間)を必要とする長いLiインターカレーション時間(例えば、黒鉛及び無機酸化物粒子の内外へのLiの低い固体拡散効率);高いパルス出力(電力密度<<1kW/kg)を送給することができないこと;及び、プレリチウム化されたカソード(例えば、コバルト酸リチウム)を使用する必要があり、それにより利用可能なカソード材料の選択が制限されること。さらに、これらの一般的に使用されるカソードは、比較的低い比容量(典型的には<200mAh/g)を有する。これらの因子は、今日のLiイオン電池の2つの主要な欠点、すなわち、低い重量及び体積エネルギー密度(典型的には150~220Wh/kg及び450~600Wh/L)、及び低い電力密度(典型的には<0.5kW/kg及び<1.0kW/L)の原因となっている(上記値は全て、総電池セル重量又は体積に基づく)。
【0006】
新興のEV及び再生可能エネルギー業界では、現在のLiイオン電池技術が提供できるものに比べてかなり高い重量エネルギー密度(例えば、>>250Wh/kg、及び好ましくは>>300Wh/kgを要求する)及び高い電力密度(より短い再充電時間)を有する充電式電池の利用可能性が要求される。さらに、マイクロエレクトロニクス業界では、より多くのエネルギーを貯蔵するより小さい体積のよりコンパクトなポータブルデバイス(例えば、スマートフォン及びタブレット)を消費者が求めているので、かなり大きな体積エネルギー密度(>650Wh/L、好ましくは>750Wh/L)を有する電池が必要とされている。これらの要件のために、より高い比容量、優れたレート特性、及び良好なサイクル安定性を有するリチウムイオン電池用の電極材料の開発に向けた多大な研究努力が成されている。
【0007】
周期表の第III族、第IV族、及び第V族からの幾つかの元素は、特定の所望の電圧でLiと共に合金を形成することができる。したがって、リチウムイオン電池には、そのような元素に基づく様々なアノード材料及び幾つかの金属酸化物が提案されている。それらの中で、シリコンは、高エネルギーリチウムイオン電池のための次世代アノード材料の1つと認識されている。なぜなら、シリコンは、黒鉛に比べて理論的な重量容量が約10倍であり(LiCに関する372mAh/gに対して、Li3.75Siに基づくと3,590mAh/g)、体積容量が約3倍であるからである。しかし、リチウムイオン合金化及び脱合金化(セルの充電及び放電)中のSiの急激な体積変化(最大380%)は、しばしば激しい急速な電池性能劣化を招いた。性能の低下は、主に、Siが体積変化により粉末化すること、及び粉末化されたSi粒子と集電体との電気的接触を粘結剤/導電性添加剤が維持できないことに起因する。さらに、シリコンの固有の低い導電率が、対処する必要がある別の課題である。
【0008】
幾つかの高容量アノード活性材料(例えば、Si)が見付かったが、それに対応する利用できる高容量カソード材料はない。Liイオン電池で一般的に使用されている現在のカソード活性材料には、以下のような重大な欠点がある。
(1)現在のカソード材料(例えば、リン酸鉄リチウム及びリチウム遷移金属酸化物)で実現可能な実用上の容量は、150~250mAh/gの範囲、大抵の場合には200mAh/g未満に制限されている。
(2)これらの一般的に使用されているカソードへのリチウムの挿入及びそこからの取出しは、非常に低い拡散係数(典型的には10-8~10-14cm/s)を有する固体粒子中での非常に遅いLiの固体拡散に依拠し、これは、非常に低い電力密度(今日のリチウムイオン電池の別の積年の問題)をもたらす。
(3)現在のカソード材料は、電気絶縁性及び断熱性であり、効果的且つ効率的に電子及び熱を輸送することができない。低い導電率は、高い内部抵抗、及び大量の導電性添加剤を加える必要性を意味し、既に容量が低いカソード内の電気化学的活性材料の割合を実質的に減少させる。また、低い熱伝導率は、熱暴走を受ける傾向がより高いことを意味し、これは、リチウム電池業界における主要な安全性の問題である。
【0009】
低容量のアノード又はカソード活性材料は、リチウムイオン電池業界が直面している唯一の問題ではない。リチウムイオン電池業界が認識していないと思われる、又はほとんど無視している重大な設計上及び製造上の問題がある。例えば、公開されている文献及び特許文献で頻繁に主張されているように(アノード又はカソード活性材料の重量のみに基づく)電極レベルでの重量容量が高いにもかかわらず、これらの電極は、残念ながら、(総電池セル重量又はパック重量に基づく)電池セル又はパックレベルでの高い容量を電池に提供することができない。これは、これらの報告では電極の実際の活性材料質量負荷が低すぎるという見解によるものである。ほとんどの場合、アノードの活性材料質量負荷(面密度)は、15mg/cmよりもかなり低く、大抵は<8mg/cmである(面密度=電極の厚さ方向に沿った電極断面積あたりの活性材料の量)。カソード活性材料の量は、典型的にはアノード活性材料の1.5~2.5倍である。その結果、リチウムイオン電池におけるアノード活性材料(例えば、黒鉛又は炭素)の重量比は、典型的には12%~17%であり、カソード活性材料(例えば、LiMn)の重量比は、17%~35%(大抵は<30%)である。カソード活性材料及びアノード活性材料の複合の重量分率は、典型的には、セル重量の30%~45%である。
【0010】
全く異なるクラスのエネルギー貯蔵デバイスとして、ナトリウム電池が、リチウム電池に代わる魅力的な代替物と考えられている。なぜなら、ナトリウムは豊富に存在し、ナトリウムの生産はリチウムの生産に比べてかなり環境に優しいからである。さらに、リチウムの高いコストは大きな問題である。
【0011】
ハードカーボンベースのアノード(Na-炭素インターカレーション化合物)と、カソードとしてのナトリウム遷移金属リン酸塩とを使用したナトリウムイオン電池が、幾つかの研究グループによって述べられている。しかし、これらのナトリウムベースのデバイスは、Liイオン電池よりもさらに低い比エネルギー及びレート能力を示す。これらの従来のナトリウムイオン電池は、アノードとカソードの両方においてナトリウムインターカレーション化合物の内外にナトリウムイオンを拡散する必要がある。ナトリウムイオン電池におけるナトリウムイオンに必要な固体拡散プロセスは、Liイオン電池のLi拡散プロセスよりもさらに遅く、出力密度が非常に低くなる。
【0012】
ハードカーボン又は他の炭素質インターカレーション化合物の代わりに、ナトリウム金属をナトリウム金属セルのアノード活物質として使用してもよい。しかし、通常、金属ナトリウムをアノード活物質として使用することは、デンドライトの形成、界面の老化、電解質の不適合性の問題により、望ましくなく危険であると考えられている。最も重要なのは、以前にリチウム二次電池に使用されていたのと同じ可燃性溶媒が、ほとんどのナトリウム金属又はナトリウムイオン電池にも使用されることである。
【0013】
低い活性材料質量負荷は、主として、従来のスラリコーティング手順を使用して比較的厚い電極(100~200μmよりも厚い)を得ることができないことが原因である。これは、思うほど簡単な作業ではなく、現実には、電極の厚さは、セル性能を最適化するために任意に且つ自由に変えることができる設計パラメータではない。反対に、より厚い試料は、非常に脆くなりやすく、又は構造的完全性が低くなりやすく、また大量の粘結剤樹脂の使用を必要とする。低い面密度及び低い体積密度(薄い電極及び低い充填密度に関連する)により、電池セルの体積容量は比較的低く、体積エネルギー密度は低い。
【0014】
よりコンパクトでポータブルなエネルギー貯蔵システムに対する需要の高まりと共に、電池の体積の利用率を高めることに強い関心が持たれている。セルの体積容量及びエネルギー密度の改良を実現するために、高い体積容量及び高い質量負荷を可能にする新規の電極材料及び設計が不可欠である。
【0015】
したがって、高い活物質質量装填量(高い面積密度)、電子及びイオンの輸送速度の大幅な低下を伴わない(例えば導電率の改善を伴う)高い電極厚さ、高容量、高出力密度、及び高エネルギー密度を有するリチウム及びナトリウム電池の必要性は明らかであり、急を要するものである。これらの電池を、環境に優しく製造しなければならない。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、高い活性材料質量負荷、(活性材料質量及び体積に対して)非常に低いオーバーヘッド重量及び体積、高い容量、並びにこれまでにない高いエネルギー密度及び電力密度を有するリチウム電池及びナトリウム電池を製造するための方法を提供する。このリチウム及びナトリウム電池は、一次電池(非充電式)又は二次電池(充電式)でよく、充電式リチウム及びナトリウム金属電池(リチウム又はナトリウム金属アノードを有する)及びリチウムイオン又はナトリウムイオン電池(例えば、アノード活性材料として第1のリチウムインターカレーション化合物を有し、カソード活性材料として、第1のリチウムインターカレーション化合物よりもはるかに高い電気化学ポテンシャルを有する第2のリチウムインターカレーション又は吸収化合物を有する)を含む。このアルカリ電池には、リチウムイオンキャパシタ及びナトリウムイオンキャパシタも含み、アノードは、リチウムイオン又はナトリウムイオンセルタイプのアノードであり、カソードは、スーパーキャパシタカソードである(例えば、電気二重層キャパシタ又はレドックス擬似キャパシタで使用するための活物質としての活性炭又はグラフェンシート)。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、(a)約30体積%~約95体積%のカソード活物質と、溶媒に溶解されたアルカリ塩を含有する約5体積%~約40体積%の第1の電解質と、約0.01体積%~約30体積%の導電性添加剤とを含有する準固体カソードであって、導電性フィラメントを含有する導電性添加剤が、電子伝導路の3Dネットワークを形成し、準固体電極が約10-6S/cm~約300S/cmの導電率を有する、準固体カソードと;(b)アノードと;(c)アノードと準固体カソードとの間に配設されたイオン伝導膜又は多孔質セパレータとを備えるアルカリ金属セルにおいて、準固体カソードが、200μm以上の厚さを有するアルカリ金属セルを提供する。好ましくは、準固体カソードは、10mg/cm以上、好ましくは15mg/cm以上、さらに好ましくは25mg/cm以上、より好ましくは35mg/cm以上、さらにより好ましくは45mg/cm以上、最も好ましくは65mg/cm超のカソード活物質質量装填量を含む。
【0018】
このセルにおいて、アノードは、約30体積%~約95体積%のアノード活物質と、溶媒に溶解されたアルカリ塩を含有する約5体積%~約40体積%の第2の電解質と、約0.01体積%~約30体積%の導電性添加剤とを含有する準固体アノードを含むことがあり、導電性フィラメントを含有する上記導電性添加剤が、電子伝導路の3Dネットワークを形成し、準固体電極が、約10-6S/cm~約300S/cmの導電率を有し、準固体アノードが、200μm以上の厚さを有する。好ましくは、準固体アノードは、10mg/cm以上、好ましくは15mg/cm以上、さらに好ましくは25mg/cm以上、より好ましくは35mg/cm以上、さらにより好ましくは45mg/cm以上、最も好ましくは65mg/cm超のアノード活物質質量装填量を含む。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、(A)約30体積%~約95体積%のアノード活物質と、溶媒に溶解されたアルカリ塩を含有する約5体積%~約40体積%の電解質と、約0.01体積%~約30体積%の導電性添加剤とを含有する準固体アノードであって、導電性フィラメントを含有する導電性添加剤が、電子伝導路の3Dネットワークを形成し、準固体電極が、約10-6S/cm~約300S/cmの導電率を有する、準固体アノードと、(B)カソードと、(C)アノードと準固体カソードとの間に配設されたイオン伝導膜又は多孔質セパレータとを備えるアルカリ金属セルにおいて、準固体カソードが、200μm以上の厚さを有するアルカリ金属セルを提供する。
【0020】
また、本発明は、準固体電極を有するアルカリ金属セルを調製する方法において、(a)ある量の活物質(アノード活物質又はカソード活物質)と、ある量の電解質と、導電性添加剤とを組み合わせて、変形可能な導電性電極材料を形成するステップであって、導電性フィラメントを含有する導電性添加剤が、電子伝導経路の3Dネットワークを形成するステップと、(b)電極材料を準固体電極として形成するステップであって、電極が10-6S/cm以上(好ましくは10-5S/cm以上、より好ましくは10-3S/cm以上、さらに好ましくは10-2S/cm以上、さらにより好ましくは且つ典型的には10-1S/cm以上、さらに典型的には且つ好ましくは1S/cm以上、さらにより典型的には且つ好ましくは10S/cm以上であり、最大で300S/cm)の導電率を維持するように、電子伝導経路の3Dネットワークを妨げずに電極材料を電極形状に変形することを含む形成するステップと、(c)第2の電極を形成するステップと(第2の電極は準固体電極でもよい)、(d)準固体電極と第2の電極とを、これら2つの電極の間に配設されたイオン伝導セパレータを有して組み合わせることによって、アルカリ金属セルを形成するステップとを含む方法を提供する。
【0021】
電解質は、2.5M~14M、好ましくは3M超、より好ましくは3.5M超、さらに好ましくは5M超、さらにより好ましくは7M超、さらにより好ましくは10M超の塩濃度で液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質でよい。塩濃度2.5M以上では、電解質はもはや液体電解質ではなく、準固体電解質である。特定の実施形態では、電解質は、塩濃度3.0M~11Mで液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質である。
【0022】
特定の実施形態では、導電性フィラメントは、炭素繊維、黒鉛繊維、炭素ナノファイバ、グラファイトナノファイバ、カーボンナノチューブ、ニードルコークス、カーボンウィスカ、導電性ポリマー繊維、導電性材料被覆繊維、金属ナノワイヤ、金属繊維、金属ワイヤ、グラフェンシート、膨張黒鉛プレートレット、それらの組合せ、又はそれらと非フィラメント状導電性粒子との組合せから選択される。
【0023】
特定の実施形態では、電極は、10-5S/cm~約1S/cmの電気伝導率を維持する。
【0024】
特定の実施形態では、変形可能な電極材料は、1000s-1の見掛けせん断速度で測定された約10000Pa・s以上の見掛け粘度を有する。特定の実施形態では、変形可能な電極材料は、1000s-1の見掛けせん断速度で約100000Pa・s以上の見掛け粘度を有する。
【0025】
この方法では、活物質の量は、典型的には、電極材料の約20体積%~約95体積%、より典型的には電極材料の約35体積%~約85体積%、最も典型的には電極材料の約50体積%~約75体積%である。
【0026】
好ましくは、活物質、導電性添加剤、及び電解質を組み合わせるステップ(リチウム又はナトリウム塩を液体溶媒に溶解することを含む)は、特定の順序に従う。このステップは、最初に、導電性フィラメントを液体溶媒に分散し、均質な懸濁液を生成し、その後、活物質を懸濁液に添加し、リチウム塩又はナトリウム塩を懸濁液の液体溶媒に溶解することを含む。言い換えれば、活物質などの他の成分を添加する前、及びリチウム塩又はナトリウム塩を液体溶媒に溶解する前に、導電性フィラメントを液体溶媒に均一に分散させなければならない。この順序は、電子伝導経路の3Dネットワークを形成するための伝導フィラメントのパーコレーションを実現するために不可欠である。そのような順序に従わない場合、伝導フィラメントのパーコレーションは発生しないか、又は極めて大きい比率の伝導フィラメント(例えば、10体積%超)が添加された場合にしか発生しない。そのような極めて大きい比率の伝導フィラメントは、活物質の分率を減少させ、したがってセルのエネルギー密度を減少させる。
【0027】
特定の実施形態において、電極材料を組み合わせて準固体電極として形成するステップが、リチウム塩又はナトリウム塩を液体溶媒に溶解して、第1の塩濃度を有する電解質を形成し、その後、液体溶媒の一部を除去して塩濃度を増加させて、第2の塩濃度を有する準固体電解質を得ることを含み、第2の塩濃度は、第1の濃度よりも高く、好ましくは2.5Mよりも高い(より好ましくは、3.0M~14M)。
【0028】
溶媒の一部を除去するステップは、塩の沈殿又は結晶化を引き起こさず、電解質が過飽和状態になるように行われる。特定の好ましい実施形態では、液体溶媒が、少なくとも第1の液体溶媒と第2の液体溶媒との混合物を含有し、第1の液体溶媒が、第2の液体溶媒よりも揮発性が高く、液体溶媒の一部を除去するステップが、第1の液体溶媒を一部又は完全に除去することを含む。
【0029】
本発明を実施するのに使用することができるアノード活性材料又はカソード活性材料の種類に制限はない。しかし、好ましくは、アノード活性材料は、電池が充電されるときに、Li/Liよりも(すなわち、標準電位としてのLi→Li+eに対して)1.0ボルト未満(好ましくは0.7ボルト未満)だけ上の電気化学ポテンシャルでリチウムイオンを吸収する。
【0030】
特定の好ましい実施形態では、アルカリ金属セルは、リチウム金属電池、リチウムイオン電池、又はリチウムイオンキャパシタであり、アノード活物質が、(a)リチウム金属又はリチウム金属合金の粒子と;(b)天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素粒子(ソフトカーボン及びハードカーボンを含む)、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、炭素繊維、及び黒鉛繊維と;(c)シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd)と;(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、又はCdと他の元素との合金又は金属間化合物であって、化学量論的又は非化学量論的である合金又は金属間化合物と;(e)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合物と;(f)それらのプレリチウム化されたバージョンと;(g)プレリチウム化されたグラフェンシートと;それらの組合せとからなる群から選択される。
【0031】
特定の実施形態では、アルカリ金属セルは、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、活物質は、石油コークス、カーボンブラック、アモルファスカーボン、活性炭、ハードカーボン(黒鉛化が困難な炭素)、ソフトカーボン(容易に黒鉛化できる炭素)、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸塩、NaTi(PO、NaTi、Na、NaTP、NaTiO(x=0.2~1.0)、Na、カルボン酸ベースの材料、CNa、C、CNaO、CNa、C10Na、C14、C14Na、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物を含有するアノード活物質である。
【0032】
特定の実施形態では、アルカリ金属セルは、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、活物質は、以下のものからなる群から選択されるアノード活物質である。(a)ナトリウム金属又はナトリウム金属合金の粒子と;(b)天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素粒子、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、炭素繊維、及び黒鉛繊維と;(c)ナトリウムをドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、及びそれらの混合物と;(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金又は金属間化合物と;(e)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cdのナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、又はアンチモン化物、及びそれらの混合物又は複合物と;(f)ナトリウム塩と;(g)ナトリウムイオンを予め装填されたグラフェンシートと;それらの組合せ。
【0033】
特定の実施形態では、アルカリ金属セルは、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、活物質は、無機材料、有機若しくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物又はナトリウム吸収化合物を含有するカソード活物質である。金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、コバルト酸ナトリウム、ニッケル酸ナトリウム、マンガン酸ナトリウム、バナジウム酸ナトリウム、ナトリウム混合金属酸化物、ナトリウム/カリウム遷移金属酸化物、リン酸鉄ナトリウム、リン酸鉄ナトリウム/カリウム、リン酸マンガンナトリウム、リン酸マンガンナトリウム/カリウム、リン酸バナジウムナトリウム、リン酸バナジウムナトリウム/カリウム、ナトリウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、又はそれらの組合せから選択されてよい。
【0034】
無機材料は、硫黄、硫黄化合物、多硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されてよい。特定の実施形態において、無機材料は、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択される。
【0035】
幾つかの実施形態では、アルカリ金属セルは、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、活物質は、NaFePO、Na(1-x)PO、Na0.7FePO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、Na(PO、NaFePOF、NaFeF、NaVPOF、Na(PO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、NaV15、NaVO、Na0.33、NaCoO、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O、Na(Fe1/2Mn1/2)O、NaMnO、λ-MnO、Na(1-x)MnO、Na0.44MnO、Na0.44MnO/C、NaMn18、NaFeMn(PO、NaTi、Ni1/3Mn1/3Co1/3、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaMnO、NaCrO、NaTi(PO、NiCo、Ni/FeS、Sb、NaFe(CN)/C、NaV1-xCrPOF、Se(y/z=0.01~100)、Se、アルオード石、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物を含有するカソード活物質であり、ここでxは0.1~1.0である。
【0036】
幾つかの好ましい実施形態では、カソード活性材料は、コバルト酸リチウム、ドープされたコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ドープされたニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ドープされたマンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ドープされたバナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸リチウム混合金属、金属硫化物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウムインターカレーション化合物を含む。
【0037】
電解質は、水性液体、有機液体、イオン液体(100℃よりも低い、好ましくは室温25℃よりも低い融解温度を有するイオン性塩)、又は1/100~100/1の比でのイオン液体と有機液体との混合物でよい。有機液体が望ましいが、イオン液体が好ましい。
【0038】
好ましい実施形態では、準固体電極は、200μm~1cm、好ましくは300μm~0.5cm(5mm)、さらに好ましくは400μm~3mm、最も好ましくは500μm~2.5mm(2500μm)の厚さを有する。活物質がアノード活物質である場合、アノード活物質は、25mg/cm以上(好ましくは30mg/cm以上、より好ましくは35mg/cm以上)の質量装填量を有し、及び/又は、電池セル全体の重量又は体積で少なくとも25%(好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%)を占める。活物質がカソード活物質である場合、カソード活物質は、好ましくは、有機又はポリマー材料に関しては、カソード内で20mg/cm以上(好ましくは25mg/cm以上、より好ましくは30mg/cm以上)の質量装填量を有し、無機及び非ポリマー材料に関しては、カソード内で45mg/cm以上(好ましくは50mg/cm以上、より好ましくは55mg/cm以上)の質量装填量を有し、及び/又は、電池セル全体の重量又は体積で少なくとも45%(好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%)を占める。
【0039】
電極の厚さ、アノード活性材料の面積質量負荷又は電池セル全体に対する質量分率、又はカソード活性材料の面積質量負荷又は電池セル全体に対する質量分率に関する前述の要件は、従来のスラリコーティング及び乾燥法を使用する従来のリチウム又はナトリウム電池では可能でなかった。
【0040】
幾つかの実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的若しくは化学的に活性化若しくはエッチングされたバージョン、又はそれらの組合せから選択されるプレリチウム化されたバージョンのグラフェンシートである。意外にも、プレリチウム化がないと、得られるリチウム電池セルは十分なサイクル寿命を示さない(すなわち容量が急速に減衰する)。
【0041】
本発明による方法の幾つかの実施形態では、セルは、無機材料、有機若しくは高分子材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、又はそれらの組合せから選択されるリチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物から選択されるカソード活物質を含有するリチウム金属セル又はリチウムイオンセルである。例えば、金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸リチウム混合金属、遷移金属硫化物、及びそれらの組合せから選択されることがある。無機材料は、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択される。特に、無機材料は、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択される。これらについては、後でさらに論じる。
【0042】
このリチウム金属電池において、カソード活性材料は、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されるリチウムインターカレーション化合物を含む。幾つかの実施形態において、カソード活性材料は、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートレットの形態での、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択されるリチウムインターカレーション化合物を含む。好ましくは、カソード活性材料は、(a)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せ、から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートから選択されるリチウムインターカレーション化合物を含み、ここで、ディスク、プレートレット、又はシートは100nm未満の厚さを有する。
【0043】
幾つかの実施形態では、このリチウム金属電池において、カソード活性材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS]n)、リチウム化された1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリットジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li、又はこれらの組合せから選択される有機材料又はポリマー材料である。
【0044】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族成分からなる主鎖を有し、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0045】
好ましい実施形態では、カソード活性材料は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、又はそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含む有機材料である。
【0046】
このリチウム金属電池において、カソード活性材料は、30mg/cm超(好ましくは40mg/cm超、より好ましくは45mg/cm超、及び最も好ましくは50mg/cm超)の電極活性材料負荷を成し、及び/又は第1の導電性発泡構造は、300μm以上(好ましくは400μm以上、より好ましくは500μm以上、さらに600μm超でもよい)の厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A図1(A)は、アノード集電体と、アノード集電体の2つの主面にコーティングされた1つ又は2つのアノード活物質層(例えば、薄いSiコーティング層)と、多孔質セパレータ及び電解質と、1つ又は2つのカソード電極層(例えば、硫黄層)と、カソード集電体とから構成される先行技術のリチウムイオン電池セルの概略図である。
図1B図1(B)は、電極層が、活物質の離散粒子(例えば、アノード層内のグラファイト又は酸化スズ粒子又はカソード層内のLiCoO)と、導電性添加剤(図示せず)と、樹脂バインダ(図示せず)とから構成された先行技術のリチウムイオン電池の概略図である。
図1C図1(C)は、準固体アノード(電解質中に直接混合又は分散されたアノード活物質粒子及び導電性フィラメントからなる)と、多孔質セパレータと、準固体カソード(電解質中に直接混合又は分散されたカソード活物質粒子及び導電性フィラメントとからなる)とを備える本発明によるリチウムイオン電池セルの概略図である。この実施形態では、樹脂バインダは不要である。
図1D図1(D)は、アノード(Cu箔表面に堆積されたリチウム金属層を含有する)と、多孔質セパレータと、準固体カソード(電解質中に直接混合又は分散されたカソード活物質粒子及び導電性フィラメントとからなる)とを備える本発明によるリチウム金属電池セルの概略図である。この実施形態では、樹脂バインダは不要である。
図2A図2(A)は、ナトリウム塩分子比x(NaTFSI/DOL)の関数としての蒸気圧比データ(p/p=溶液の蒸気圧/溶媒のみの蒸気圧)を、古典的なラウールの法則に基づく理論的予測と共に示す図である。
図2B図2(B)は、ナトリウム塩分子比x(NaTFSI/DME)の関数としての蒸気圧比データ(p/p=溶液の蒸気圧/溶媒のみの蒸気圧)を、古典的なラウールの法則に基づく理論的予測と共に示す図である。
図2C図2(C)は、ナトリウム塩分子比x(NaPF/DOL)の関数としての蒸気圧比データ(p/p=溶液の蒸気圧/溶媒のみの蒸気圧)を、古典的なラウールの法則に基づく理論的予測と共に示す図である。
図2D図2(D)は、ナトリウム塩分子比x(NaTFSI/DOL、NaTFSI/DME、NaPF/DOL)の関数としての蒸気圧比データ(p/p=溶液の蒸気圧/溶媒のみの蒸気圧)を、古典的なラウールの法則に基づく理論的予測と共に示す図である。
図3A図3(A)は、固体電解質の稠密の高秩序構造の概略図である。
図3B図3(B)は、カチオン(例えば、Na)が容易に移動することできる大きな割合の自由体積を有する完全に非晶質の液体電解質の概略図である。
図3C図3(C)は、遊離(非クラスタ化された)カチオンが容易に移動できる非晶質区域を生成するために塩種を分離する溶媒分子を有する準固体電解質の不規則化又は非晶質構造の概略図である。
図4A図4(A)は、ナトリウム塩分子比xに関連する電解質中のNaイオン輸率(例えば、NaTFSI塩/(DOL+DME)溶媒)を示す図である。
図4B図4(B)は、ナトリウム塩分子比xに関連する電解質中のNaイオン輸率(例えば、NaTFSI塩/(EMImTFSI+DOL)溶媒)を示す図である。
図4C図4(C)は、ナトリウム塩分子比xに関連する電解質中のNaイオン輸率(例えば、NaTFSI塩/(EMImTFSI+DME)溶媒)を示す図である。
図4D図4(D)は、ナトリウム塩分子比xに関連する様々な電解質(図6図8におけるものなど)でのNaイオン輸率を示す図である。
図5図5は、剥離黒鉛、膨張黒鉛フレーク(厚さ>100nm)、及びグラフェンシート(厚さ<100nm、より典型的には<10nmであり、0.34nmの薄さでもよい)を製造するための一般に使用されている方法の概略図である。
図6A図6(A)は、導電性フィラメント(カーボンナノファイバ)の体積分率の関数としてプロットされた、準固体電極内の伝導フィラメントの導電率(パーコレーション挙動)を示す図である。
図6B図6(B)は、導電性フィラメント(還元された酸化グラフェンシート)の体積分率の関数としてプロットされた、準固体電極内の伝導フィラメントの導電率(パーコレーション挙動)を示す図である。
図7図7は、アノード活性材料として黒鉛粒子を含み、カソード活性材料として炭素被覆LFP粒子を含むリチウムイオン電池セルのRagoneプロット(重量電力密度対エネルギー密度)を示す図である。4つのデータ曲線のうちの3つは、本発明の実施形態に従って用意されたセルに関するものであり、残りの1つは、電極の従来のスラリコーティング(ロールコーティング)によるものである。
図8図8は、3つのセルのラゴンプロット(重量出力密度対重量エネルギー密度)を示す図である。各セルは、アノード活物質としてのグラフェン包有Siナノ粒子と、カソード活物質としてのLiCoOナノ粒子とを含有する。実験データは、本発明による方法(順序S1及びS3に続く)及び電極の従来のスラリコーティングによって調製されたLiイオン電池セルから得られた。
図9図9は、アノード活物質としてのリチウム箔と、カソード活物質としてのロジゾン酸二リチウム(Li)と、有機電解質としてのリチウム塩(LiPF)-PC/DECとを含有するリチウム金属電池のラゴンプロットである。データは、本発明による方法(2つの異なる塩濃度を用いた順序S2及びS3)及び電極の従来のスラリコーティングによって調製されたリチウム金属セルである。
図10図10は、それぞれがアノード活物質としてのプレナトリウム化されたハードカーボン粒子と、カソード活物質としてのグラフェンシートとを含有する2つのナトリウムイオンキャパシタのラゴンプロットを示す図である。一方のセルは、従来のスラリコーティングプロセスによって調製されたアノードを有し、他方のセルは、本発明による方法に従って調製された準固体アノードを有する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、従来実現されていなかった非常に高い体積エネルギー密度を示すリチウム電池又はナトリウム電池を製造する方法を対象とする。この電池は、一次電池でよいが、リチウムイオン電池、リチウム金属二次電池(例えばリチウム金属をアノード活物質として使用する)、ナトリウムイオン電池、ナトリウム金属電池、リチウムイオンキャパシタ、又はナトリウムイオンキャパシタから選択される二次電池であることが好ましい。電池は、水性電解質、非水性若しくは有機電解質、イオン液体電解質、又は有機液体とイオン液体の混合物に基づく。好ましくは、電解質は、液体溶媒中に高濃度のリチウム塩又はナトリウム塩を含有する「準固体電解質」であり、固体のように挙動するが、所望の量の導電性フィラメント及び活物質が電解質中に添加されても変形可能なままである(したがって、用語「変形可能な準固体電極材料」)。リチウム電池の形状は、円筒形、正方形、ボタン状などでよい。本発明は、任意の電池形状又は構成に限定されない。
【0049】
便宜上、カソード活性材料の例示的な例としては、リン酸鉄リチウム(LFP)、酸化バナジウム(V)、ロジゾン酸二リチウム(Li)、及び銅フタロシアニン(CuPc)、アノード活性材料の例としては、黒鉛、ハードカーボン、SnO、Co、及びSi粒子など、選択された材料を使用する。これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0050】
図1(A)に示すように、先行技術のリチウム電池セルは、典型的には、アノード集電体(例えば、Cu箔)と、アノード電極又はアノード活物質層(例えば、Cu箔の1面又は2面に堆積されたLi金属箔又はプレリチウム化Siコーティング)と、多孔質セパレータ及び/又は電解質成分と、カソード電極又はカソード活物質層(又はAl箔の2面にコーティングされた2つのカソード活物質層)と、及びカソード集電体(例えば、Al箔)とから構成される。
【0051】
より一般的に使用される従来技術のセル構成(図1(B))において、アノード層は、アノード活性材料(例えば、黒鉛、ハードカーボン、又はSi)、導電性添加剤(例えば、カーボンブラック粒子)、及び樹脂粘結剤(例えば、SBR又はPVDF)の粒子から構成される。カソード層は、カソード活性材料(例えば、LFP粒子)、導電性添加剤(例えば、カーボンブラック粒子)、及び樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子から構成される。アノード層及びカソード層はどちらも典型的には100~200μmまでの厚さであり、単位電極面積当たりでおそらく十分な量の電流を生じさせる。この厚さ範囲は、電池設計者が通常的に作業を行う、業界で受け入れられている制約と考えられる。この厚さの制約は、以下のような幾つかの理由によるものである:(a)既存の電池電極コーティング機は、非常に薄い又は非常に厚い電極層をコーティングするようには装備されていない;(b)リチウムイオン拡散経路長の短縮を考慮すると、より薄い層が好ましい;しかし、層が薄すぎると(例えば、<100μm)、十分な量の活性リチウム貯蔵材料を含まない(したがって、不十分な電流出力となる);(c)より厚い電極は、ロールコーティング後の乾燥又は取扱い時に層間剥離又は亀裂が生じやすい;及び(d)最小オーバーヘッド重量及び最大リチウム貯蔵容量、したがって最大エネルギー密度(セルのWk/kg又はWh/L)を得るために、電池セル内の全ての非活性材料層(例えば、集電体及びセパレータ)を最小に保たなければならない。
【0052】
あまり一般的に使用されていないセル構成では、図1(A)に示されるように、アノード活性材料(例えば、Siコーティング)又はカソード活性材料(例えば、リチウム遷移金属酸化物)が、銅箔又はAl箔などの集電体上に直接、薄膜の形態で堆積される。しかし、厚さ方向の寸法が非常に小さい(典型的には500nmよりもはるかに小さく、しばしば必要であれば100nmよりも薄い)そのような薄膜構造は、(電極又は集電体の表面積を同じと仮定して)電極に少量の活性材料しか組み込むことができないことを示唆し、総リチウム貯蔵容量を低減し、単位電極表面積当たりのリチウム貯蔵容量を低減する。そのような薄膜は、(アノードに関する)サイクリングにより誘発される割れに対する耐性をより高くするため、又はカソード活性材料の完全な利用を容易にするために、厚さを100nm未満にしなければならない。そのような制約は、総リチウム貯蔵容量、及び単位電極表面積当たりのリチウム貯蔵容量をさらに減少させる。そのような薄膜電池は、適用範囲が非常に限られている。
【0053】
アノード側では、100nmよりも厚いSi層は、電池の充放電サイクル中に割れ抵抗性が低いことが判明している。わずか数サイクルでSi層は破砕されてしまう。カソード側では、100nmよりも厚いリチウム金属酸化物のスパッタ層は、リチウムイオンが完全に浸透してカソード層全体に達することを可能にせず、カソード活性材料利用率が低くなる。望ましい電極厚さは少なくとも100μmであり、個々の活性材料コーティング又は粒子は、望ましくは100nm未満の寸法を有する。したがって、集電体上に直接堆積されたこれらの薄膜電極(<100nmの厚さを有する)は、必要な厚さに3桁足りない。さらなる問題として、カソード活性材料は全て、電子とリチウムイオンの両方に対して伝導性ではない。大きな層厚さは、非常に高い内部抵抗、及び低い活性材料利用率を示唆する。ナトリウム電池にも同様の問題がある。
【0054】
すなわち、材料のタイプ、サイズ、電極層の厚さ、及び活性材料の質量負荷の面で、カソード又はアノード活性材料の設計及び選択に際して同時に考慮しなければならない幾つかの相反する因子がある。これまでのところ、これらのしばしば相反する問題に対して任意の先行技術の教示によって提供されている有効な解決策は存在していない。本明細書に開示されるように、本発明者らは、リチウム電池及びナトリウム電池を製造する新規の方法を開発することによって、電池設計者及びまた電気化学者を30年超にわたって悩ませてきたこれらの難題を解決した。
【0055】
従来技術のリチウム電池セルは、典型的には、以下のステップを含む方法によって製造される:(a)第1のステップは、アノード活性材料(例えば、Siナノ粒子又はメソカーボンマイクロビーズ、MCMB)、導電性フィラー(例えば、黒鉛フレーク)、及び樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子を溶媒(例えば、NMP)中で混合して、アノードスラリを形成することである。それとは別に、カソード活性材料(例えば、LFP粒子)、導電性フィラー(例えば、アセチレンブラック)、及び樹脂粘結剤(例えば、PVDF)の粒子を溶媒(例えば、NMP)中で混合して分散させて、カソードスラリを形成する。(b)第2のステップは、アノード集電体(例えば、Cu箔)の一方又は両方の主面にアノードスラリをコーティングし、溶媒(例えば、NMP)を蒸発させることによってコーティングされた層を乾燥させて、Cu箔上にコーティングされた乾燥アノード電極を形成することである。同様に、カソードスラリをコーティングして乾燥させて、Al箔上にコーティングされた乾燥カソード電極を形成する。実際の製造状況では、スラリコーティングは通常、ロールツーロール方式で行われる;(c)第3のステップは、アノード/Cu箔シート、多孔質セパレータ層、及びカソード/Al箔シートを積層し合わせて、3層又は5層アセンブリを形成し、これを所望のサイズに切断して又は細く裂いて積層し、(形状の一例として)矩形の構造を形成するか、又は巻いて円筒形のセル構造にすることを含む。(d)次いで、矩形又は円筒形の積層構造を、アルミニウムプラスチック積層エンベロープ又はスチールケーシングに収容する。(e)次いで、液体電解質を積層構造に注入して、リチウム電池セルを製造する。
【0056】
この方法及び結果として得られるリチウム電池セルに関連する幾つかの重大な問題がある。
1)200μmよりも厚い電極層(アノード層又はカソード層)を製造することは非常に難しい。その理由は幾つかある。厚さ100~200μmの電極は、典型的には、スラリコーティング施設において長さ30~50メートルの加熱区域を必要とし、これは、時間がかかりすぎ、エネルギーを消費しすぎ、費用対効果が良くない。金属酸化物粒子など幾つかの電極活性材料に関しては、100μmよりも厚い良好な構造的完全性を備える電極を実際の製造環境で連続的に製造することはできていない。得られる電極は、非常に壊れやすくて脆い。より厚い電極は、層間剥離及び割れが生じる傾向が高い。
2)図1(A)に示されるような従来の方法では、電極の実際の質量負荷、及び活性材料に関する見掛けの密度は、200Wh/kgを超える重量エネルギー密度を実現するには低すぎる。大抵は、比較的大きい黒鉛粒子に関してさえ、電極のアノード活性材料質量負荷(面密度)は25mg/cmよりもかなり低く、活性材料の見掛けの体積密度又はタップ密度は典型的には1.2g/cm未満である。電極のカソード活性材料質量負荷(面密度)は、リチウム金属酸化物系の無機材料に関しては45mg/cmよりも実質的に低く、有機又はポリマー材料に関しては15mg/cmよりも実質的に低い。さらに、電池容量に寄与せずに電極に追加の重量及び体積を加える非常に多くの他の非活性材料(例えば、導電性添加剤及び樹脂粘結剤)が存在する。これらの低い面密度及び低い体積密度は、比較的低い重量エネルギー密度及び低い体積エネルギー密度をもたらす。
3)従来の方法は、電極活性材料(アノード活性材料及びカソード活性材料)を液体溶媒(例えば、NMP)中で分散させてスラリにする必要があり、集電体表面にコーティングした後に液体溶媒を除去して電極層を乾燥させなければならない。アノード及びカソード層をセパレータ層と共に積層し合わせて、ハウジング内にパッケージングしてスーパーキャパシタセルを形成した後、セル内に液体電解質を注入する。実際には、2つの電極を濡らし、次いで電極を乾燥させ、最後に再び濡らす。そのような湿潤-乾燥-湿潤プロセスは、良好なプロセスとは思えない。
4)現在のリチウムイオン電池は、重量エネルギー密度が比較的低く、体積エネルギー密度が低いという欠点が依然としてある。市販のリチウムイオン電池は、約150~220Wh/kgの重量エネルギー密度及び450~600Wh/Lの体積エネルギー密度を示す。
【0057】
文献では、活性材料重量のみ又は電極重量に基づいて報告されたエネルギー密度データから、実用的な電池セル又はデバイスのエネルギー密度を直接導くことはできない。「オーバーヘッド重量」、すなわち他のデバイス構成要素(粘結剤、導電性添加剤、集電体、セパレータ、電解質、及びパッケージング)の重量も考慮に入れる必要がある。従来の製造法では、リチウムイオン電池中のアノード活性材料(例えば、黒鉛又はカーボン)の重量比は典型的には12%~17%であり、カソード活性材料(例えば、LiMn)の重量比は20%~35%である。
【0058】
本発明は、高い電極厚さ、高い活物質質量装填量、低いオーバーヘッド重量及び体積、高容量、並びに高エネルギー密度を有するリチウム電池又はナトリウム電池セルを製造する方法を提供する。
【0059】
特定の実施形態では、方法は、以下のステップを含む。
(a)ある量の活物質(アノード活物質又はカソード活物質)と、ある量の電解質と、導電性添加剤とを組み合わせて、変形可能な導電性電極材料を形成するステップ。ここで、導電性フィラメントを含有する導電性添加剤が、電子伝導経路の3Dネットワークを形成する(カーボンナノチューブやグラフェンシートなどのこれらの導電性フィラメントは、活物質の粒子及び電解質と混合される前には、不規則に凝集された多量のフィラメントである。混合手順は、これらの導電性フィラメントを、活物質の粒子を含有する高粘度電解質に分散させることを含む。これについては、後のセクションでさらに論じる);
(b)電極材料を準固体電極として形成するステップ。ここで、この形成ステップは、電極が10-6S/cm以上(好ましくは10-5S/cm以上、より好ましくは10-4S/cm以上、さらに好ましくは10-3S/cm以上、さらにより好ましくは且つ典型的には10-2S/cm、さらにより典型的には且つ好ましくは10-1S/cm、さらにより典型的には且つ好ましくは1S/cm以上;最大300S/cmが観察された)の導電率を維持するように、電子伝導経路の3Dネットワークを妨げずに電極材料を電極形状に変形することを含む;
(c)第2の電極を形成するステップ(第2の電極は準固体電極でも従来の電極でもよい);及び
(d)準固体電極と第2の電極とを、これら2つの電極の間に配設されたイオン伝導セパレータを有して組み合わせることによって、アルカリ金属セルを形成するステップ。
【0060】
図1(C)に示すように、本発明の1つの好ましい実施形態は、伝導性準固体アノード236、伝導性準固体カソード238、及びアノードとカソードとを電子的に分離する多孔質セパレータ240(又はイオン透過膜)を有するアルカリ金属イオンセルである。これらの3つの構成要素は、典型的には保護筺体(図示せず)内に収納され、保護筺体は、典型的には、アノードに接続されたアノードタブ(端子)と、カソードに接続されたカソードタブ(端子)とを有する。これらのタブは、外部負荷(例えば、その電池から電力を供給すべき電子デバイス)を接続するためのものである。この特定の実施形態では、準固体アノード236は、アノード活物質(例えば、Si粒子、図1(C)には図示せず)と、電解質相(典型的には、溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する;同様に図1(C)には図示せず)と、電子伝導経路244の3Dネットワークを形成する導電性添加剤(導電性フィラメントを含有する)とを含有する。同様に、準固体カソードは、カソード活物質と、電解質と、電子伝導経路242の3Dネットワークを形成する導電性添加剤(導電性フィラメントを含有する)とを含有する。
【0061】
図1(D)に示す本発明の別の好ましい実施形態は、集電体280(例えばCu箔)に堆積された/取り付けられたリチウム又はナトリウム金属コーティング/箔282から構成されたアノードと、準固体カソード284と、セパレータ又はイオン伝導膜282とを有するアルカリ金属セルである。準固体カソード284は、カソード活物質272(例えばLiCoO粒子)と、電解質相274(典型的には、溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する)と、電子伝導経路の3Dネットワーク270を形成する導電性添加剤相(導電性フィラメントを含有する)とを含有する。また、本発明は、リチウムイオンキャパシタ及びナトリウムイオンキャパシタを含む。
【0062】
電解質は、好ましくは、液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質であり、その塩濃度は、2.5M以上、好ましくは3M超、より好ましくは3.5M超、さらに好ましくは5M超、さらにより好ましくは7M超、さらにより好ましくは10M超である。特定の実施形態では、電解質は、塩濃度3.0M~14Mで液体溶媒に溶解されたリチウム塩又はナトリウム塩を含有する準固体電解質である。リチウム塩又はナトリウム塩及び液体溶媒の選択については、後のセクションでさらに論じる。
【0063】
準固体アノードと準固体カソードとはどちらも、好ましくは、200μm超の厚さ(好ましくは300μm超、より好ましくは400μm超、さらに好ましくは500μm超、さらにより好ましくは800μm超、さらに好ましくは1mm超であり、5mm、1cm、又はさらに厚くてもよい)を有する。本発明による電極の厚さに理論上の制限はない。本発明のセルでは、アノード活物質は、典型的には、アノード中で20mg/cm以上(より典型的には且つ好ましくは25mg/cm以上、より好ましくは30mg/cm以上)の電極活物質装填量を成す。無機材料をカソード活物質とする場合には、カソード活物質は、45mg/cm以上(典型的には且つ好ましくは50mg/cm超、より好ましくは60mg/cm超)の電極活物質装填量を成す(有機又は高分子カソード活物質の場合には25mg/cm以上)。
【0064】
そのような構成(図1(C)~図1(D))では、電子は、導電性フィラメントによって収集される前に、短い距離(例えば数マイクロメートル)を移動するだけすむ。導電性フィラメントは、電子伝導経路の3Dネットワークを構成しており、準固体電極(アノード又はカソード)全体にわたって至る所に存在する。さらに、全ての電極活物質粒子が液体電解質中に予め拡散されており(濡れ性の問題なし)、ウェットコーティング、乾燥、パッキング、及び電解質注入の従来のプロセスによって調製される電極中に一般的に存在するドライポケットを排除する。したがって、本発明によるプロセス又は方法は、従来型電池セル製造プロセスに勝る全く予想外の利点を有する。
【0065】
これらの導電性フィラメント(カーボンナノチューブやグラフェンシートなど)は、供給時、活物質の粒子及び電解質と混合される前には元々は不規則に凝集されている多量のフィラメントである。混合手順は、これらの導電性フィラメントを、活物質の粒子を含有する高粘度電解質に分散させることを含む。これは、思ったほど簡単な作業ではない。高流動性(非粘性)液体中でのナノ材料(特に、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、及びグラフェンシートなどのナノフィラメント材料)の拡散は非常に難しいことが知られており、まして、高い装填量の活物質(例えば、アノード用のSiナノ粒子及びカソード用のコバルト酸リチウムなどの固体粒子)を含有する電解質など、高粘度の準固体中では言うまでもない。幾つかの好ましい実施形態では、この問題は、電解質自体が準固体電解質であり、溶媒中に高濃度のリチウム塩又はナトリウム塩を含有することにより、さらに悪化する。
【0066】
幾つかの好ましい実施形態では、電解質は、十分に高いアルカリ金属塩分子比を有する有機又はイオン液体溶媒に溶解されたアルカリ金属(リチウム塩及び/又はナトリウム塩)を含有し、その結果、電解質は、0.01kPa未満、又は溶媒単独の蒸気圧の0.6(60%)未満の蒸気圧(20℃で計測時)、第1の有機液体溶媒単独の引火点よりも少なくとも20℃高い引火点(リチウム塩が存在しない場合)、若しくは150℃よりも高い引火点を示すか、又は検出可能な引火点を全く示さない。
【0067】
最も驚くべきであり、且つ科学的及び技術的に非常に重要なのは、十分に多量のアルカリ金属塩をこの有機溶媒に添加して溶解し、固体のような又は準固体の電解質を生成すれば、いかなる揮発性有機溶媒の可燃性をも効果的に抑制することができるという本発明者らの発見である。一般に、そのような準固体電解質は、0.01kPa未満及び多くの場合には0.001kPa未満(20℃で計測時)、並びに0.1kPa未満及び多くの場合には0.01kPa未満(100℃で計測時)の蒸気圧を示す(溶媒中にアルカリ金属塩が全く溶解されていない状態では、対応するニート溶媒の蒸気圧は、典型的にはかなり高くなる)。多くの場合、蒸気分子は、実際には少なすぎて検出できない。
【0068】
非常に重要な観察結果は、通常であれば高揮発性である溶媒中でのアルカリ金属塩の高い溶解度(典型的には0.2超、より典型的には0.3超、及び多くの場合には0.4超、又はさらには0.5超の、アルカリ金属塩の大きい分子比又はモル分率)により、熱力学的平衡状態において蒸気相に逃げることができる揮発性溶媒分子の量を飛躍的に低減することができるということである。多くの場合、これは、(例えばトーチを使用した)極めて高い温度でさえ、可燃性溶媒ガス分子が火炎を発生するのを効果的に防止する。準固体電解質の引火点は、典型的には、ニート有機溶媒単体の引火点よりも少なくとも20度(多くの場合、50度超、又は100度超)高い。ほとんどの場合、引火点は150℃よりも高いか、又は引火点を検出することができない。電解質が発火することはない。さらに、偶発的な火炎発生は、数秒よりも長く続くことはない。発火及び爆発の懸念が、電池駆動式の電気自動車が広く受け入れられるための主な障害であるという見解を考慮すると、これは非常に重大な発見である。この新規の技術は、活気に満ちたEV産業の出現を加速する大きな一助となり得る。
【0069】
基礎化学の原理の観点から、液体へ溶質分子を添加すると、その液体の沸点が上昇し、その蒸気圧及び凝固点温度が低下する。これらの現象は、浸透性と同様に、溶質濃度だけに依存し、その種類には依存せず、溶液の束一的性質と呼ばれる。本来のラウールの法則は、純粋な液体の蒸気圧(p)に対する溶液の蒸気圧(p)の比と、溶質のモル分率(x)との関係を与える。
/p=e-x 式(1a)
希釈溶液の場合、x<<1、ゆえに、e-x≒1-xである。したがって、溶質モル分率が低い特別な場合には、より一般的な形のラウールの法則が得られる。
/p=1-x 式(1b)
【0070】
高い濃度の電解質の蒸気圧を予測するために古典的なラウールの法則を適用することができるかどうかを判断するために、本発明者らは、多岐にわたるアルカリ金属塩/有機溶媒の組合せの研究に取り掛かった。本発明者らの研究結果の実施例の幾つかが、図2(A)~図2(D)にまとめられており、そこには、幾つかの塩/溶媒の組合せについて、実験に基づくp/p値が、分子比(モル分率、x)の関数としてプロットされている。比較のために、古典的なラウールの法則、すなわち式(1a)に基づく曲線もプロットされている。全ての種類の電解質について、モル分率xが約0.2に到達するまではp/p値がラウールの法則の予測に従い、それを超えると蒸気圧が急速に低下し、実質的にゼロ(ほとんど検出できない)になることが明らかである。蒸気圧が閾値よりも低いとき、発火はせず、本発明は、火炎の発生を効果的に抑制するための優れたプラットフォーム材料化学の手法を提供する。
【0071】
ラウールの法則からのズレは科学的に珍しいことではないが、p/p値に関するこの種の曲線は、二成分溶液系に関しては観察されていなかった。特に、安全性の考察のために、超高濃度の電池電解質(アルカリ金属塩の分子率が高い、例えば0.2超、又は0.3超である)の蒸気圧に関して報告された研究はなかった。これは、全く予想外であり、技術的及び科学的に重要性が最も高い。
【0072】
さらに、本発明者らは、伝導性ナノフィラメントによって構成された電子伝導経路の3Dネットワークの存在が、臨界蒸気圧を抑制するのに必要なアルカリ金属塩の閾値濃度をさらに低くするように作用することを予期せず発見した。
【0073】
本発明の別の驚くべき要素は、充電可能なアルカリ金属電池での使用に適した準固体電解質を生成するために、一般的に使用されている電池グレードの有機溶媒のほぼ全ての種類で、高濃度のアルカリ金属塩を溶解することができるという見解である。より簡単に理解できる言葉で表すと、この濃度は、典型的には、2.5M(モル/リットル)超、より典型的には且つより好ましくは3.5M超、さらにより典型的には且つより好ましくは5M超、さらにより好ましくは7M超、最も好ましくは10M超である。塩濃度2.5M以上では、電解質はもはや液体電解質ではなく、準固体電解質である。リチウム又はナトリウム電池の分野では、溶媒中でそのような高濃度のアルカリ金属塩は、一般に不可能であり、また望ましくもないと考えられている。しかし、本発明者らは、これらの準固体電解質が、大幅な安全性向上(非可燃性)、エネルギー密度向上、及び出力密度向上の観点から、リチウム電池とナトリウム電池のどちらにも驚くほど良好な電解質であることを見出した。
【0074】
一般に、溶液の蒸気圧は、M(モル/リットル)を単位とした濃度値から直接且つ簡単に予測することはできない。その代わり、アルカリ金属塩では、ラウールの法則の分子比xは、正イオンと負イオンのモル分率の和であり、これは、所与の温度での特定溶媒中の金属塩の解離度に比例する。モル/リットル濃度は、蒸気圧の予測を可能にするための適切な情報を提供しない。
【0075】
一般に、電池電解質で使用される有機溶媒中では、特に、ネットワークを形成する伝導フィラメント及び/又は活物質の粒子も存在するときには、そのような高濃度のアルカリ金属塩(例えば、x=0.3~0.7)を実現することは可能でなかった。広範且つ綿密な研究の後、本発明者らは、(a)最初に、高揮発性の共溶媒を用いて、溶媒混合液中に溶解されるアルカリ金属塩の量を増加させ、次いで、(b)溶解手順の完了後、この揮発性の共溶媒を一部又は完全に除去した場合に、ある特定の溶媒におけるアルカリ金属塩の見掛けの溶解度を大幅に増加させることができることをさらに発見した。全く思いがけなかったことに、溶液が高過飽和状態であっても、この共溶媒の除去は、典型的には、溶液からのアルカリ金属塩の沈殿又は結晶化をもたらさなかった。この新規の独特な手法は、揮発性でないアルカリ金属塩イオン(実際、リチウム/ナトリウム塩は固体のようである)によって溶媒分子の大半が所定位置に捕捉又は保持された材料状態を生み出したようにみえる。したがって、ごく少数の揮発性溶媒分子しか蒸気相に逃げることができず、それにより、火炎の発生又は持続を助けるための「可燃性」ガス分子がほとんど存在しない。これは、Na、K、又はLi金属電池の先行技術において、技術的に可能又は実現可能なものとして提案されていなかった。
【0076】
さらに、化学又は材料科学分野の当業者は、そのような高い塩濃度により、電解質が極めて高い粘度を有する固体のように挙動するはずであり、したがって、この電解質は、内部でのアルカリ金属イオンの高速拡散を受けにくいはずであると予想していた。その結果、そのような固体のような電解質を含有するアルカリ金属電池は、高い充放電速度で、又は高い電流密度の条件下で高容量を示さない、また示すことができない(すなわち、電池が低いレート能力を有するはずである)と当業者は予想していた。通常の、さらには優れた当業者によるこれらの予想に反して、そのような準固体電解質を含有する全てのアルカリ金属セルは、長いサイクル寿命度にわたって高いエネルギー密度及び高い出力密度を提供する。本明細書で考案されて開示されている準固体電解質は、容易なアルカリ金属イオン輸送に寄与すると思われる。この驚くべき観測結果は、以下の2つの主な要因によると考えられる。すなわち、一方の要因は、電解質の内部構造に関連し、他方は、高いNa又はLiイオン輸率(TN)に関連し、これらについては本明細書の後のセクションでさらに説明する。
【0077】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、図3(A)~図3(C)におけるように、3つの基本的に異なるタイプの電解質の内部構造を視覚化することができる。図3(A)は、典型的な固体電解質の稠密の高秩序構造を概略的に示し、この構造には、アルカリ金属イオンが拡散するための自由体積がほとんどない。そのような結晶構造中でのイオンの移動は非常に困難であり、極めて低い拡散係数(10-16~10-12cm/sec)及び極めて低いイオン伝導率(典型的には、10-7S/cm~10-4S/cm)をもたらす。対照的に、図3(B)に概略的に示すように、液体電解質の内部構造は、完全に非晶質であり、大きな割合の自由体積を有し、その自由体積を通って、カチオン(例えば、Li又はNa)が容易に移動することができ、高い拡散係数(10-8~10-6cm/sec)及び高いイオン伝導率(典型的には、10-3S/cm~10-2S/cm)をもたらす。しかし、低濃度のアルカリ金属塩を含有する液体電解質は、可燃性でもあり、デンドライトを形成して、火災や爆発の危険を生じやすい。図3(C)に概略的に示されているのは、遊離(クラスタ化されていない)カチオンが容易に移動できる非晶質区域を生成するために、塩類を分離する溶媒分子を含む準固体電解質の不規則又は非晶質構造である。そのような構造は、高いイオン伝導率値(典型的には、10-4S/cm~8×10-3S/cm)を実現しやすく、それでも不燃性を維持する。溶媒分子は比較的少なく、これらの分子は、圧倒的多数の塩類及び伝導フィラメントのネットワークによって保定されている(蒸発を防止されている)。
【0078】
第2の要因として、全ての現在のLiイオン及びNaイオンセルで使用されている全ての低濃度電解質(例えば、2.0M未満;ほとんどの場合、1M)での、典型的な値0.1~0.2とは対照的に、準固体電解質が、0.3超(典型的には、0.4~0.8の範囲内)のTNを提供することを本発明者らは見出した。図4(A)~図4(D)に示すように、低い塩濃度の電解質中でのNaイオン輸率は、濃度がx=0からx=0.2~0.35に増加するにつれて低下する。しかし、分子比がx=0.2~0.35を超えると、塩濃度の増加と共に輸率が増加し、Na又はLiイオン輸送メカニズムの根本的な変化を示す。ここでもまた理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、例としてNaイオンを用いて以下の科学的に妥当な説明を提供する(同様の説明がLiイオンにも当てはまる)。Naイオンが、低い塩濃度の電解質(例えば、x<0.2)中を移動するとき、各Naイオンは、それと共に1つ又は複数の溶媒和分子を引きずる。流体粘度が増加される場合(すなわち、より多くの塩が溶媒に添加されるとき)、帯電種のそのようなクラスタの調整された移動はさらに妨害されることがある。
【0079】
幸いにも、超高濃度のNa塩(例えば、x>0.3)が存在するとき、Naイオンが、利用可能な溶媒和種又は溶媒分子を大幅に上回る可能性がある。そのような溶媒和種又は溶媒分子は、通常であればリチウムイオンをクラスタ化でき、多成分錯体種を形成し、Naイオンの拡散プロセスを減速させる。この高いNaイオン濃度により、より多くの「遊離Naイオン」(クラスタ化されずに単体で作用するもの)を有することが可能になり、それにより、高いNaの輸率(したがって、容易なNa輸送)が得られる。言い換えると、ナトリウムイオン輸送メカニズムが、マルチイオン錯体支配メカニズム(より大きい流体力学的半径を有する)から、多数の利用可能な遊離Naイオンを有する単一イオン支配メカニズム(より小さい流体力学的半径を有する)に変化する。さらに、この観察結果は、Na金属セルのレート能力を損なうことなくNaイオンが準固体電解質に対して作用することができることを主張している。それでも、これらの高濃度の電解質は不燃性であり、安全である。電池用途のためのこれらの特徴及び利点の組合せは、先行のいかなる報告書にも教示されていないか、又はわずかに示唆されていただけであった。次に、準固体電解質のイオン輸率の理論的側面を以下に示す。
【0080】
電池用の電解質システムの選択において、リチウムイオン又はナトリウムイオンのイオン伝導率は、考慮すべき重要な因子である。有機液体ベースの電解質中のNaイオンのイオン伝導率は、10-3~10-2S/cmのオーダーであり、固体状態の電解質中では、典型的には、10-7~10-4S/cmの範囲内である。イオン伝導率が低いため、固体状態の電解質は、電池システムであまり使用されてこなかった。固体状態の電解質はアルカリ金属二次セルにおけるデンドライト貫入に耐性を示すので、これは残念なことである。対照的に、本発明者らの準固体電解質のイオン伝導率は、典型的には、10-4~8×10-3S/cmの範囲内であり、充電式電池での使用に十分である。
【0081】
イオン移動度又は拡散係数は、電池電解質の唯一の重要な輸送パラメータではない。カチオン及びアニオンの個別の輸率も重要である。例えば、アルカリ金属電池で電解質として粘性のある液体が使用される場合、イオン移動度が低下される。したがって、高いイオン伝導率を実現するために、電解質中でのアルカリ金属イオンの高い輸率が必要とされる。
【0082】
1種のみのカチオン(例えば、Na)及び1種のみのアニオンと、液体溶媒又は2つの液体溶媒の混合物とからなる液体電解質中でのイオン輸送及び拡散は、ACインピーダンス分光法及びパルス場勾配NMR技法によって研究可能である。ACインピーダンスは、全体的なイオン伝導率に関する情報を提供し、NMRは、カチオン及びアニオンの個々の自己拡散係数の決定を可能にする。一般的に、カチオンの自己拡散係数はアニオンの自己拡散係数よりもわずかに高い。典型的には、拡散係数と全体的なイオン伝導率とから得られるヘブン比(Haven ratio)が、1.3~2の範囲内であり、イオン対又はイオン錯体(例えば、Na溶媒和分子のクラスタ)の輸送が、低い塩濃度を含有する電解質において重要な特徴であることを示すことが見出された。
【0083】
2つの異なるアルカリ金属塩又は1つのイオン液体(アルカリ金属塩又は液体溶媒)のいずれかが電解質に添加され、少なくとも3種又は4種のイオンを含む溶液になると、状況はさらに複雑になる。この場合、一例として、溶媒和イオン液体中のアニオンと同じアニオンを含有するアルカリ金属塩を使用することが有利である。これは、異種アニオンとの混合物中よりも溶解可能なアルカリ金属塩の量が多いためである。したがって、次の論理的な質問事項は、より多くのナトリウム(又はリチウム)塩を液体溶媒に溶解することによって、Na(又はLi)の輸率を改良することが可能であるかどうかである。
【0084】
3イオン液体混合物の全体的なイオン伝導率σdcと、イオンの個別の拡散係数Diとの関係は、ネルンスト-アインシュタイン方程式によって与えることができる。
σdc=(e/kTH)[(NNa )(DNa )+(N )(D )+(N )(D )] 式(2)
ここで、e及びkBは、それぞれ電気素量及びボルツマン定数を示し、Niは、個々のイオン(Na、Li、ClO など)の数密度である。ヘブン比Hは、様々な種類のイオンの移動間の相互相関を考慮に入れる。
【0085】
1種類のカチオン及びアニオンしか含まない単純なイオン液体は、ヘブン比が典型的には1.3~2.0の範囲内にあるという特徴がある。1よりも大きいヘブン比は、異なる電荷のイオンが優先的に同じ方向に移動することを示す(すなわち、対又はクラスタとしてのイオン輸送)。そのようなイオン対の形跡は、様々な電解質のラマンスペクトルを使用して見つけることができる。3イオン混合物中のヘブン比に関する値は、1.6~2.0の範囲内である。x=0を有する電解質に比べてわずかに高いH値は、対形成が混合物中でより顕著であることを示す。
【0086】
同じ混合物に関して、混合物の全体的なイオン伝導率は、アルカリ金属塩含有率xの増加と共に減少する。この導電率の低下は、全てのイオンの個別の自己拡散係数の低下に直接関係する。イオン液体とアルカリ金属塩との様々な混合物に関する本発明者らの研究は、塩含有率xの増加と共に粘度が増加することを示している。これらの知見は、アルカリ金属塩の添加が液体混合物中のより強力なイオン結合をもたらし、それが液体動力学的挙動を遅くすることを示唆する。これは、小さいナトリウム(又はリチウム)イオンとアニオンとのクーロン相互作用がより大きい有機カチオンとアニオンとのクーロン相互作用よりも強いことに起因し得る。したがって、アルカリ金属塩含有率xの増加に伴うイオン伝導率の低下は、可動イオンの数密度の減少によるものではなく、イオンの移動度の低下によるものである。
【0087】
混合物の全体的なイオン伝導率に対するカチオン及びアニオンの個々の寄与を分析するために、見かけの輸率tを以下の式によって定義することができる。
=NDi/(ΣNDi) 式(3)
一例として、Na、BMP、及びTFSIイオンを含有するN-ブチル-N-メチル-ピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BMP-TFSI)とナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Na-TFSI)との混合物中で、見かけのリチウム輸率tLiは、Na-TFSI含有率の増加とともに増加する。すなわち、x=0.34でtNa=0.242(x<0.2でのtNa<0.1に対して)、DNa≒0.7DTFSI、及びDBMP≒1.6DTFSI。混合物中の見かけのNa輸率がより高い主な理由は、Naイオンの数密度がより高いことである。
【0088】
そのような混合物中のナトリウム輸率をさらに高めるためには、ナトリウムイオンの数密度及び/又は拡散係数を他のイオンに比べてさらに増加させなければならない。混合物は高いNa塩含有率で塩の結晶化又は沈殿を受ける傾向があるため、Naイオン数密度のさらなる増加は非常に難しいと予想されるであろう。本発明は、この課題を克服した。本発明者らは、驚くべきことに、非常に小さい比率の高揮発性有機液体(例えば、エーテルベースの溶媒)の添加が、高粘度有機液体(例えば、VC)又はイオン液体中でのNa又はLi塩の溶解度限界を大幅に高めることができることを観察した(例えば、典型的には、x<0.2からx>0.3~0.6に、又は典型的には1Mから5M超に)。これは、イオン液体(又は粘性有機液体)と揮発性有機溶媒との比を10:1と高くした状態で実現することができ、したがって、揮発性溶媒の含有率を最低限に保ち、電解質の潜在的な可燃性を最小限に抑える。
【0089】
パルス磁場勾配NMR(PFG-NMR)実験で測定されるイオンの拡散係数は、拡散体の実効半径に依存する。NaイオンとTFSIイオンとの強い相互作用により、Naイオンは、[Na(TFSI)n+1n-錯体を形成する。アルカリ金属イオンに関するn+1=4までの配位数が観察されている。配位数は、錯体の実効流体力学的半径、したがって液体混合物中での拡散係数を決定する。ストークス-アインシュタインの方程式Di=kT/(cπηr)を使用して、拡散体の実効流体力学的半径riをその拡散係数Diから計算することができる。定数cは、拡散体の形状に応じて、4~6で変化する。イオン液体中のカチオン及びアニオンの実効流体力学的半径とそれらのファンデルワールス半径との比較から、一般に、カチオンに関するc値がアニオンに関するc値よりも低いことが明らかになる。EMI-TFSI/Na-TFSI混合物の場合、Naに関する流体力学的半径は、0.9~1.3nmの範囲内である。これは、概して、[Na(TFSI)及び[Na(TFSI)2-錯体のファンデルワールス半径である。x=0.34を有するBMP-TFSI/Na-TFSI混合物の場合、rBMP≒0.55nmであり、BMPと拡散Na錯体とに関するc値が同じであると仮定して、拡散ナトリウム錯体の実効流体力学的半径は、rNa=(DBMP/DNa)rBMP≒1.3nmである。rNaに関するこの値は、低い塩濃度を含有する混合物では、拡散錯体中のナトリウム配位数が少なくとも2であることを示唆する。
【0090】
TFSIイオンの数は、かなりの量の[Na(TFSI)2-錯体を生成するほど高くはないため、ほとんどのナトリウムイオンは、[Na(TFSI)錯体として拡散するはずである。他方、(例えば本発明者らの準固体電解質中で)結晶化を伴わずにより高いNa塩濃度が実現される場合、混合物は、かなりの量の中性[Na(TFSI)]錯体を含有するはずであり、これらの錯体は、比較的小さく(r[Na(TFSI)]≒0.5nm)、より高い拡散率を有するはずである。したがって、より高い塩濃度により、ナトリウムイオンの数密度が増加するだけでなく、拡散するナトリウム錯体の拡散係数が有機カチオンに比べて高くなるはずである。上記の分析は、有機液体溶媒又はイオン液体溶媒のいずれかと、リチウムイオン及びナトリウムイオンの両方とを含有する電解質に適用可能である。全ての場合において、アルカリ金属塩濃度が閾値よりも高いとき、濃度がさらに増加されると、アノードとカソードの間を移動する遊離又は非クラスタ化アルカリ金属イオンの数が増加し、カソード及びアノードでのインターカレーション/デインターカレーション又は化学反応に必要な適量のアルカリ金属イオンを提供する。
【0091】
上で論じた不燃性及び高いアルカリ金属イオン輸率に加えて、本発明による準固体電解質の使用に関連する幾つかの追加の利益がある。一例として、準固体電解質は、デンドライトの成長を効果的に抑制することにより、充電式アルカリ金属電池のサイクル性能及び安全性能を大幅に向上させることができる。めっきが生じる電極付近でアニオンが枯渇すると、非水性液体電解質中でデンドライトが成長し始めるという考えは一般に受け入れられている。超高濃度電解質では、金属ナトリウムアノードの近くでのカチオン(Li又はNa)とアニオンとのバランスを保つための多量のアニオンがある。さらに、アニオンの枯渇によって生成される空間電荷は最小限であり、これは、デンドライトの成長に寄与しない。さらに、超高Na塩濃度と高Naイオン輸率の両方により、準固体電解質は、多量の利用可能なナトリウムイオンフラックスを提供し、電解質とナトリウム電極との間のナトリウムイオン物質移動速度を上昇させ、それにより、充電/放電プロセス中のナトリウム堆積の均一性及び溶解を向上させる。さらに、高濃度によって誘発される局所的な高粘度は、電解質からの圧力を増加させてデンドライトの成長を阻害し、アノードの表面により均一な堆積をもたらす可能性がある。また、高い粘度は、堆積領域付近でのアニオン対流を制限し、ナトリウムイオンのより均一な堆積を促進することができる。同じ推論が、リチウム金属電池にも当てはまる。これらの理由は、個別に又は組み合わせて、本発明者らがこれまでに調べた多数の充電式アルカリ金属セルのいずれでもデンドライトのような特徴が観察されないという見解を裏付けるものと考えられる。
【0092】
好ましい実施形態では、アノード活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、又はそれらの組合せから選択されるプレリチウム化されたバージョンのグラフェンシートである。上記のグラフェン材料の任意の1つを製造するための出発グラフェン材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、又はそれらの組合せから選択することができる。グラフェン材料は、リチウム電池のアノード活性材料とカソード活性材料の両方のための良好な導電性添加剤でもある。
【0093】
面間ファンデルワールス力を克服することができると仮定して、天然又は人造黒鉛粒子中の黒鉛結晶の構成グラフェン面を剥離し、抽出又は単離して、六角形を成す炭素原子の個々のグラフェンシートを得ることができ、これらのシートは単原子厚である。炭素原子の単離された個々のグラフェン面は、一般に、単層グラフェンと呼ばれる。厚さ方向で約0.3354nmのグラフェン面間隔でファンデルワールス力によって結合された複数のグラフェン面の積層は、一般に多層グラフェンと呼ばれる。多層グラフェンプレートレットは、最大300層のグラフェン面(100nm未満の厚さ)、しかしより典型的には最大30層のグラフェン面(10nm未満の厚さ)、さらにより典型的には最大20層のグラフェン面(7nm未満の厚さ)、及び最も典型的には最大10層のグラフェン面(科学界では一般に数層グラフェンと呼ばれる)を有する。単層グラフェン及び多層グラフェンシートは、総称して「ナノグラフェンプレートレット」(NGP)と呼ばれる。グラフェンシート/プレートレット(総称してNGP)は、0Dフラーレン、1D CNT又はCNF、及び3D黒鉛とは異なる新しいクラスのカーボンナノ材料(2Dナノカーボン)である。特許請求の範囲を定義する目的で、また当技術分野で一般に理解されるように、グラフェン材料(単離されたグラフェンシート)は、カーボンナノチューブ(CNT)又はカーボンナノファイバ(CNF)ではない(それらを含まない)。
【0094】
1つの方法では、図5に示されるように、グラフェン材料は、天然黒鉛粒子を強酸及び/又は酸化剤でインターカレーションして黒鉛インターカレーション化合物(GIC)又は酸化黒鉛(GO)を得ることによって得られる。GIC又はGO中のグラフェン面間の間隙空間に化学種又は官能基が存在することが、グラフェン間隔(d002;X線回折によって決定される)を増加させる働きをし、それにより、通常であればc軸方向に沿ってグラフェン面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に減少させる。GIC又はGOは、硫酸、硝酸(酸化剤)、及び別の酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウム又は過塩素酸ナトリウム)の混合物中に天然黒鉛粉末を浸漬することによって生成されることが最も多い。インターカレーション手順中に酸化剤が存在する場合、得られるGICは、実際には、ある種の酸化黒鉛(GO)粒子である。次いで、このGIC又はGOを繰り返し洗浄し、水中ですすいで余剰の酸を除去すると、酸化黒鉛懸濁液又は分散液が得られ、これは、水中に分散された、離散した視覚的に区別可能な酸化黒鉛粒子を含む。グラフェン材料を製造するために、このすすぎステップ後に2つの処理ルートの一方をたどることができ、以下に簡単に説明する。
【0095】
ルート1は、本質的に乾燥GIC又は乾燥酸化黒鉛粒子の塊である「膨張黒鉛」を得るために懸濁液から水を除去することを含む。膨張黒鉛を典型的には800~1,050℃の範囲内の温度に約30秒~2分間曝すと、GICは、30~300倍に急速に体積膨張して、「黒鉛ワーム」を形成する。黒鉛ワーム(104)はそれぞれ、剥離されてはいるがほとんど分離されておらず、相互接続されたままの黒鉛フレークの集合である。
【0096】
ルート1Aでは、これらの黒鉛ワーム(剥離された黒鉛又は「相互接続された/分離されていない黒鉛フレークのネットワーク」)を再び圧縮して、典型的には0.1mm(100μm)~0.5mm(500μm)の範囲内の厚さを有する可撓性黒鉛シート又は箔を得ることができる。代替として、100nmよりも厚い(したがって定義によりナノ材料ではない)黒鉛フレーク又はプレートレットを主として含むいわゆる「膨張黒鉛フレーク」を製造する目的で、低強度エアミル又はせん断機を使用して黒鉛ワームを単に破砕することを選択することもできる。
【0097】
ルート1Bでは、同一出願人の米国特許出願第10/858,814号明細書(2004年3月6日)(米国特許第2005/0271574号明細書)に開示されているように、剥離された黒鉛は、(例えば、超音波装置、高せん断ミキサ、高強度エアジェットミル、又は高エネルギーボールミルを使用した)高強度の機械的せん断を受けて、分離された単層及び多層グラフェンシート(総称してNGPと呼ぶ)を形成する。単層グラフェンが0.34nmの薄さであり得る一方、多層グラフェンは、最大100nm、しかしより典型的には10nm未満の厚さを有することがある(一般に数層グラフェンと呼ばれる)。複数のグラフェンシート又はプレートレットが、製紙法を使用して1枚のNGP紙として形成されることがある。このNGP紙は、本発明による方法で利用される多孔質グラフェン構造層の一例である。
【0098】
ルート2は、個々の酸化グラフェンシートを酸化黒鉛粒子から分離/単離する目的で、酸化黒鉛懸濁液(例えば、水中に分散された酸化黒鉛粒子)を超音波処理することを含む。これは、グラフェン面の離間距離が天然黒鉛での0.3354nmから高度に酸化された酸化黒鉛での0.6~1.1nmに増加されており、隣接する面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に弱めるという見解に基づいている。超音波出力は、完全に分離された、単離された、又は離散した酸化グラフェン(GO)シートを形成するために、グラフェン面シートをさらに分離するのに十分なものでよい。次いで、これらの酸化グラフェンシートを化学的又は熱的に還元して、「還元酸化グラフェン」(RGO)を得ることができ、これは、典型的には、0.001重量%~10重量%、より典型的には0.01重量%~5重量%の酸素含有量を有し、最も典型的には且つ好ましくは2重量%未満の酸素を含む。
【0099】
本出願の特許請求の範囲を定義する目的で、NGP又はグラフェン材料は、単層及び多層(典型的には10層未満)の純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープされた(例えば、B又はNをドープされた)グラフェンの離散シート/プレートレットを含む。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは、典型的には0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOを含む)は、0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェンを除き、全てのグラフェン材料が、非炭素元素(例えば、O、H、N、B、F、Cl、Br、Iなど)を0.001重量%~50重量%含む。本明細書では、これらの材料を不純グラフェン材料と呼ぶ。
【0100】
純粋なグラフェンは、より小さい離散グラフェンシート(典型的には0.3μm~10μm)として、黒鉛粒子の直接超音波処理(液相剥離又は生成としても知られている)又は超臨界流体剥離によって製造することができる。これらの方法は、当技術分野でよく知られている。
【0101】
酸化グラフェン(GO)は、反応容器内で、ある期間(出発材料の性質及び使用される酸化剤のタイプに応じて典型的には0.5~96時間)にわたって所望の温度で、出発黒鉛材料の粉末又はフィラメント(例えば、天然黒鉛粉末)を酸化性液体媒体(例えば、硫酸、硝酸、及び過マンガン酸カリウムの混合物)中に浸漬することによって得ることができる。上述したように、次いで、得られた酸化黒鉛粒子に熱剥離又は超音波誘発剥離を施して、単離GOシートを生成することができる。次いで、これらのGOシートは、OH基を他の化学基(例えば、BrやNHなど)で置換することによって様々なグラフェン材料に変換することができる。
【0102】
本明細書では、ハロゲン化グラフェン材料群の一例として、フッ素化グラフェン又はフッ化グラフェンが使用される。フッ素化グラフェンを生成するために採用されている2つの異なる手法がある。(1)予め合成されたグラフェンのフッ素化:この手法は、機械的剥離又はCVD成長によって用意されたグラフェンをXeF又はFベースのプラズマなどのフッ素化剤で処理することを必要とする。(2)多層フッ化黒鉛の剥離:フッ化黒鉛の機械的剥離と液相剥離の両方を容易に達成することができる。
【0103】
低温で黒鉛インターカレーション化合物(GIC)CF(2≦x≦24)が生成されるのに対し、高温でのFと黒鉛との相互作用は、共有結合性フッ化黒鉛(CF)又は(CF)をもたらす。(CF)では、炭素原子はsp3混成であり、したがって、フルオロカーボン層は波形であり、トランスリンクされたシクロヘキサンのいす型立体配座からなる。(CF)では、C原子の半分のみがフッ素化され、隣接する炭素シートの対はどれもC-C共有結合により結合される。フッ素化反応に関する系統的研究から、得られたF/C比が、フッ素化温度、フッ素化ガス中のフッ素の分圧、並びに黒鉛前駆体の物理的特性、例えば黒鉛化度、粒度、及び比表面積に大きく依存することが示された。フッ素(F)に加え、他のフッ素化剤も使用することができるが、入手できる文献のほとんどは、時としてフッ化物の存在下で、Fガスによるフッ素化を含む。
【0104】
層状の前駆体材料を個々の層又は数層の状態に剥離するためには、隣接する層間の引力を克服すること、及び層をさらに安定させることが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によって、又は特定の溶媒、界面活性剤、ポリマー、若しくはドナー-アクセプタ芳香族分子を使用する非共有結合修飾によって実現されることがある。液相剥離のプロセスは、液体媒体中のフッ化黒鉛の超音波処理を含む。
【0105】
グラフェンの窒素化は、酸化グラフェンなどのグラフェン材料を高温(200~400℃)でアンモニアに曝すことによって行うことができる。窒素化グラフェンは、水熱法によって、より低温で生成することもできる。これは、例えば、オートクレーブ内にGO及びアンモニアを封止し、次いで温度を150~250℃に上昇させることによって行われる。窒素ドープされたグラフェンを合成する他の方法は、グラフェンに対する窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件下での酸化グラフェンのアンモノリシス、及び様々な温度での酸化グラフェン及び尿素の水熱処理を含む。
【0106】
本発明の実施に使用することができるアノード活性材料又はカソード活性材料のタイプに制限はない。好ましくは、本発明によるリチウムセルにおいて、アノード活性材料は、電池が充電されたときに、Li/Liよりも上の(すなわち、標準電位としてのLi→Li+eに対して)1.0ボルト未満(好ましくは0.7ボルト未満)の電気化学ポテンシャルでリチウムイオンを吸収する。1つの好ましい実施形態では、リチウム電池のアノード活物質は、(a)リチウム金属又はリチウム金属合金の粒子と;(b)天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素粒子(ソフトカーボン及びハードカーボンを含む)、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、炭素繊維、及び黒鉛繊維と;(c)シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd)と;(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、又はCdと他の元素との合金又は金属間化合物であって、化学量論的又は非化学量論的である合金又は金属間化合物と;(e)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合物と;(f)それらのプレリチウム化されたバージョンと;(g)プレリチウム化されたグラフェンシートと;それらの組合せとからなる群から選択される。
【0107】
特定の実施形態では、アルカリ金属セルは、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、活物質は、石油コークス、カーボンブラック、アモルファスカーボン、活性炭、ハードカーボン(黒鉛化が困難な炭素)、ソフトカーボン(容易に黒鉛化できる炭素)、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸塩、NaTi(PO、NaTi、Na、NaTP、NaTiO(x=0.2~1.0)、Na、カルボン酸ベースの材料、CNa、C、CNaO、CNa、C10Na、C14、C14Na、又はそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物を含有するアノード活物質である。
【0108】
特定の実施形態では、アルカリ金属セルは、ナトリウム金属セル又はナトリウムイオンセルであり、活物質は、以下のものからなる群から選択されるアノード活物質である。(a)ナトリウム金属又はナトリウム金属合金の粒子と;(b)天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素粒子、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、炭素繊維、及び黒鉛繊維と;(c)ナトリウムをドープされたシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、及びそれらの混合物と;(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金又は金属間化合物と;(e)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、及びそれらの混合物又は複合物のナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、又はアンチモン化物と;(f)ナトリウム塩と;(g)ナトリウムイオンを予め装填されたグラフェンシートと;それらの組合せ。
【0109】
多様なカソード活性材料を使用して、本発明によるリチウムセルを実施することができる。カソード活性材料は、典型的には、リチウム電池が放電されたときにはリチウムイオンを貯蔵し、再充電されたときにはリチウムイオンを電解質に解放することが可能なリチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物である。カソード活性材料は、無機材料、有機若しくはポリマー材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物(最も望ましいタイプの無機カソード材料)、又は以下のようなそれらの組合せから選択することができる。
【0110】
コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム遷移金属酸化物、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、遷移金属硫化物、及びそれらの組合せからなる金属酸化物、金属リン酸塩、及び金属硫化物の群。特に、バナジウム酸リチウムは、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13、それらのドープされたバージョン、それらの誘導体、及びそれらの組合せからなる群から選択されることがある(ここで、0.1<x<5)。リチウム遷移金属酸化物は、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、オリビン化合物LiMPO、ケイ酸塩化合物LiMSiO、タボライト化合物LiMPOF、ホウ酸塩化合物LiMBO、又はそれらの組合せから選択されることがある(ここで、Mは、遷移金属、又は複数の遷移金属の混合物である)。
【0111】
カソード活性材料として使用するための他の無機材料は、硫黄、硫黄化合物、ポリ硫化リチウム、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることがある。特に、無機材料は、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム、又はそれらの組合せから選択される。これらについては、後でさらに論じる。
【0112】
特に、無機材料は、(a)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せから選択されることがある。
【0113】
有機材料又はポリマー材料は、ポリ(アントラキノニルスルフィド)(PAQS)、リチウムオキソカーボン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(アントラキノニルスルフィド)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、ホスファゼンジスルフィドポリマー([(NPS]n)、リチウム化された1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリットジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li、又はこれらの組合せから選択されることがある。
【0114】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含むポリマー、共役芳香族成分からなる主鎖を有し、ペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB、又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0115】
有機材料は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、それらの化学的誘導体、又はそれらの組合せから選択されるフタロシアニン化合物から選択されることがある。
【0116】
リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物は、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、又はそれらの組合せから選択されることがある。好ましくは、リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物は、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、又はナノプレートレットの形態での、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、又はニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、又はテルル化物から選択される。
【0117】
本発明者らは、本発明による直接活性材料-電解質注入法によって用意された本発明によるリチウム電池におけるカソード活性材料として、多様な2次元(2D)無機材料を使用することができることを発見した。層状材料は、予想外の電子的特性、及びリチウムイオンに対する良好な親和性を示すことができる2D系の種々の提供源となる。黒鉛は最もよく知られている層状材料であるが、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)、遷移金属酸化物(TMO)、並びにBN、BiTe、及びBiSeなどの広範な他の化合物も、2D材料の供給源となり得る。
【0118】
好ましくは、リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物は、(a)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(d)窒化ホウ素、又は(e)それらの組合せ、から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートから選択され、ここで、ディスク、プレートレット、又はシートは100nm未満の厚さを有する。リチウムインターカレーション化合物又はリチウム吸収化合物は、(i)セレン化ビスマス若しくはテルル化ビスマス、(ii)遷移金属ダイカルコゲナイド若しくはトリカルコゲナイド、(iii)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、若しくは遷移金属の硫化物、セレン化物、若しくはテルル化物、(iv)窒化ホウ素、又は(v)それらの組合せ、から選択される化合物のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、又はナノシートを含むことがあり、ここで、ディスク、プレートレット、コーティング、又はシートは100nm未満の厚さを有する。
【0119】
充電可能なナトリウムセルでは、カソード活物質は、NaFePO(リン酸鉄ナトリウム)、Na0.7FePO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、Na(PO、NaFePOF、NaFeF、NaVPOF、Na(PO、Na1.5VOPO0.5、Na(PO、NaV15、NaVO、Na0.33、NaCoO(ナトリウムコバルト酸化物)、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O2、Na(Fe1/2Mn1/2)O、NaMnO(ナトリウムマンガン青銅)、Na0.44MnO、Na0.44MnO/C、NaMn18、NaFeMn(PO、NaTi、Ni1/3Mn1/3Co1/3、Cu0.56Ni0.44HCF(ヘキサシアノ鉄酸銅及びニッケル)、NiHCF(ヘキサシアノ鉄酸ニッケル)、NaCoO、NaCrO、NaTi(PO、NiCo、Ni/FeS、Sb、NaFe(CN)6/C、NaV1-xCrPOF、SeySz(セレン及びセレン/硫黄、0.01~100のz/y)、Se(Sなし)、アルオード石、又はそれらの組合せから選択されたナトリウムインターカレーション化合物を含有することがある。
【0120】
代替として、カソード活物質は、電解質と直接接触するアルカリ金属イオン捕捉官能基又はアルカリ金属イオン貯蔵表面を有する機能性材料又はナノ構造化材料から選択されてもよい。好ましくは、官能基は、アルカリ金属イオンと可逆的に反応し、アルカリ金属イオンと酸化還元対を形成し、又はアルカリ金属イオンと化学錯体を形成する。機能性材料又はナノ構造化材料は、(a)ソフトカーボン、ハードカーボン、ポリマーカーボン又は炭化樹脂、メソフェーズカーボン、コークス、炭化ピッチ、カーボンブラック、活性炭、ナノセル炭素発泡体、又は一部黒鉛化された炭素から選択されるナノ構造化又は多孔性不規則炭素材料と;(b)単層グラフェンシート又は多層グラフェンプレートレットから選択されるナノグラフェンプレートレットと;(c)単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブから選択されるカーボンナノチューブと;(d)カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、金属酸化物ナノワイヤ若しくは繊維、導電性ポリマーナノファイバ、又はそれらの組合せと;(e)カルボニル含有有機又はポリマー分子と;(f)カルボニル、カルボキシル、又はアミン基を含有する機能性材料と;それらの組合せとからなる群から選択されることがある。
【0121】
機能性材料又はナノ構造化材料は、ポリ(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン-3,6-メチレン)、Na(x=1~3)、Na(C)、Na(Naテレフタレート)、Na(Naトランス-トランス-ムコネート)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸-二無水物(PTCDA)硫化物ポリマー、PTCDA、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸-二無水物(NTCDA)、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラキノン、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、及びそれらの組合せからなる群から選択されることがある。望ましくは、機能性材料又はナノ構造化材料は、-COOH、=O、-NH、-OR、又は-COORから選択される官能基を有し、ここで、Rは、炭化水素ラジカルである。
【0122】
単層又は数層(最大20層)の非グラフェン2Dナノ材料は、以下のような幾つかの方法によって製造することができる。機械的切断、レーザーアブレーション(例えば、レーザパルスを使用してTMDを単一層までアブレーションする)、液相剥離、及び薄膜技法の合成、例えば、PVD(例えば、スパッタリング)、蒸着、気相エピタキシ、液相エピタキシ、化学蒸着エピタキシ、分子線エピタキシ(MBE)、原子層エピタキシ(ALE)、及びそれらのプラズマ型。
【0123】
広範な電解質を本発明の実施に使用することができる。非水性有機及び/又はイオン液体電解質が最も好ましい。本明細書で採用される非水電解質は、電解質塩を非水溶媒に溶解することによって生成されることがある。リチウム二次電池の溶媒として採用されている任意の既知の非水溶媒を採用することができる。主として、炭酸エチレン(EC)と、上記炭酸エチレンよりも融点が低く、ドナー数が18以下の非水溶媒の少なくとも1種とを含む混合溶媒からなる非水溶媒(本明細書では以後、第2の溶媒と呼ぶ)を好ましくは採用することができる。この非水溶媒は、(a)黒鉛構造で良好に生じた炭質物を含む負電極に対して安定であり、(b)電解質の還元又は酸化分解を抑制するのに効果的であり、且つ(c)導電率が高いという利点がある。炭酸エチレン(EC)のみから構成される非水電解質は、黒鉛化炭質物による還元により、分解に対して比較的安定であるという利点がある。しかし、ECの融点は39~40℃と比較的高く、ECの粘度も比較的高く、そのためECの導電率は低く、したがって、EC単独では、室温以下で動作させる二次電池用電解質として使用するには不適切である。ECとの混合物中で使用される第2の溶媒は、溶媒混合物の粘度をEC単独の粘度よりも低くし、それにより混合溶媒のイオン導電率を高める働きをする。さらに、ドナー数が18以下(炭酸エチレンのドナー数は16.4)の第2の溶媒を用いると、上記炭酸エチレンを容易に且つ選択的にリチウムイオンで溶媒和することができ、したがって、十分に黒鉛化して生成された炭質物との第2の溶媒の還元反応は抑制されると仮定される。さらに、第2の溶媒のドナー数が18以下に制御されるとき、リチウム電極への酸化分解電位を4V以上に容易に上昇させることができ、それにより高電圧のリチウム二次電池を製造することが可能になる。
【0124】
好ましい第2の溶媒は、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン(PC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、蟻酸プロピル(PF)、蟻酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、及び酢酸メチル(MA)である。これらの第2の溶媒は、単独で採用されても、2種以上の組合せで採用されてもよい。より望ましくは、この第2の溶媒は、16.5以下のドナー数を有するものから選択されるべきである。この第2の溶媒の粘度は、好ましくは、25℃で28cps以下にすべきである。
【0125】
混合溶媒中の上記炭酸エチレンの混合比は、好ましくは、10~80体積%にすべきである。炭酸エチレンの混合比がこの範囲外になる場合、溶媒の導電率が低下されることがあり、又は溶媒がより分解しやすくなる傾向があり、それにより充放電効率が悪化する。炭酸エチレンのより好ましい混合比は、20~75体積%である。非水溶媒中の炭酸エチレンの混合比が20体積%以上に増加されるとき、リチウムイオンに対する炭酸エチレンの溶媒和効果が促進され、溶媒分解抑制効果を向上させることができる。
【0126】
好ましい混合溶媒の例は、EC及びMECを含む組成物;EC、PC、及びMECを含む組成物;EC、MEC、及びDECを含む組成物;EC、MEC、及びDMCを含む組成物;並びにEC、MEC、PC、及びDECを含む組成物であり、MECの体積比は30~80%の範囲内で制御される。MECの体積比を30~80%、より好ましくは40~70%の範囲から選択することによって、溶媒の導電率を向上させることができる。溶媒の分解反応を抑制する目的で、二酸化炭素を溶解した電解質を採用し、それにより電池の容量とサイクル寿命の両方を効果的に改良することができる。非水電解質中に取り込まれる電解質塩は、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、及びビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CFSO]などのリチウム塩から選択されることがある。それらの中でも、LiPF、LiBF、及びLiN(CFSOが好ましい。非水溶媒中の上記電解質塩の含有量は、0.5~2.0mol/lであることが好ましい。
【0127】
ナトリウムセルに関して、電解質(不燃性準固体電解質を含む)は、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF)、ヘキサフルオロヒ化ナトリウム、トリフルオロ-メタスルホン酸ナトリウム(NaCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CFSO)、イオン液体塩、又はそれらの組合せから好ましくは選択されるナトリウム塩を含有することがある。
【0128】
イオン液体はイオンのみから構成されている。イオン液体は、所望の温度を超えたときには融解状態又は液体状態になる低融解温度の塩である。例えば、塩は、その融点が100℃未満である場合にイオン液体とみなされる。融解温度が室温(25℃)以下である場合、塩は室温イオン液体(RTIL)と呼ばれる。IL塩は、大きなカチオンと電荷非局在化アニオンとの組合せによる弱い相互作用によって特徴付けられる。これは、可撓性(アニオン)及び非対称性(カチオン)による結晶化の傾向を低減する。
【0129】
典型的なよく知られているイオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI)カチオンと、N,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組合せによって形成される。この組合せにより、最大約300~400℃で、多くの有機電解質溶液と同等のイオン導電率、並びに低い分解性及び低い蒸気圧を有する流体が得られる。これは、一般に低い揮発性及び非引火性、したがって電池に関してはるかに安全な電解質を示唆する。
【0130】
イオン液体は、基本的には、多様な成分の調製が容易であることにより、本質的に無制限の数の構造変化を生じる有機イオンから構成される。したがって、様々な種類の塩を使用して、所与の用途に合わせて所望の特性を有するイオン液体を設計することができる。これらは、とりわけ、カチオンとしてのイミダゾリウム、ピロリジニウム、及び第四級アンモニウム塩と、アニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、及びヘキサフルオロホスフェートとを含む。それらの組成に基づいて、イオン液体は、基本的には非プロトン性型、プロトン性型、及び双性イオン型を含む異なるクラスに入り、それぞれが特定の用途に適している。
【0131】
室温イオン液体(RTIL)の一般的なカチオンとしては、限定はしないが、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、及びテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、並びにトリアルキルスルホニウムが挙げられる。RTILの一般的なアニオンとしては、限定はしないが、BF 、B(CN) 、CHBF 、CH2CHBF 、CFBF 、CBF 、n-CBF 、n-CBF 、PF 、CFCO 、CFSO 、N(SOCF 、N(COCF)(SOCF、N(SOF) 、N(CN) 、C(CN) 、SCN、SeCN、CuCl 、AlCl 、F(HF)2.3 などが挙げられる。相対的に言えば、イミダゾリウム又はスルホニウムベースのカチオンと、AlCl 、BF 、CFCO 、CFSO 、NTf 、N(SOF) 、又はF(HF)2.3 などの錯体ハロゲン化物アニオンとの組合せが、良好な動作伝導率を有するRTILをもたらす。
【0132】
RTILは、高い固有のイオン導電率、高い熱安定性、低い揮発性、低い(実質的にゼロの)蒸気圧、非引火性、室温よりも上及び下の広い温度範囲で液体を維持する機能、高い極性、高い粘度、及び広い電気化学的窓など、典型的な特性を有することができる。高い粘度を除いて、これらの特性は、スーパーキャパシタにおける電解質成分(塩及び/又は溶媒)としてRTILを使用する際に望ましい特性である。
【0133】
以下では、本発明を実施する最良の形態を示すために、幾つかの異なるタイプのアノード活性材料、カソード活性材料、及び多孔質集電体材料(例えば、黒鉛発泡体、グラフェン発泡体、及び金属発泡体)の幾つかの例を提供する。これらの例示的な実施例、並びに本明細書及び図面の他の箇所は、個別に又は組み合わせて、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分すぎるものである。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例
【0134】
実施例1:天然黒鉛粉末からの酸化グラフェン(GO)及び還元酸化グラフェン(RGO)ナノシートの調製
Huadong Graphite Co.(中国、青島)製の天然黒鉛を出発材料として使用した。よく知られているmodified Hummers法に従うことによってGOが得られた。この方法は、2つの酸化段階を含んでいた。典型的な手順において、以下の条件で第1の酸化を実現した。1100mgの黒鉛を1000mLの沸騰フラスコに入れた。次いで、K、20gのP、及び400mLの濃縮HSO水溶液(96%)をフラスコに加えた。混合物を還流下で6時間加熱し、次いで室温で20時間安置した。酸化黒鉛を濾過し、中性pHになるまで多量の蒸留水ですすいだ。この最初の酸化の終わりに、ウェットケーキ状物質が回収された。
【0135】
第2の酸化プロセスでは、前に収集されたウェットケーキを、69mLの濃縮HSO水溶液(96%)を含む沸騰フラスコに入れた。9gのKMnOをゆっくりと加えながら、フラスコを氷浴内で保った。過熱を避けるように注意した。得られた混合物を35℃で2時間撹拌し(試料の色が暗い緑色に変わった)、続いて140mLの水を加えた。15分後、420mLの水及び15mLの30wt%H水溶液を加えることによって反応を停止させた。この段階での試料の色は、明るい黄色に変わった。金属イオンを除去するために、混合物を濾過し、1:10HCl水溶液ですすいだ。収集した物質を2700gで穏やかに遠心分離し、脱イオン水ですすいだ。最終生成物は、乾燥抽出物から推定されるように、1.4wt%のGOを含むウェットケーキであった。その後、脱イオン水で希釈したウェットケーキ物質を軽く超音波処理することによって、GOプレートレットの液体分散液を得た。
【0136】
純水の代わりに界面活性剤水溶液でウェットケーキを希釈することによって、界面活性剤で安定化されたRGO(RGO-BS)を得た。Sigma Aldrichによって提供されているコール酸ナトリウム(50wt%)とデオキシコール酸ナトリウム(50wt%)の塩の市販の混合物を使用した。界面活性剤の重量画分は、0.5wt%であった。全ての試料に関してこの画分を一定に保った。13mmステップディストラクタホーンと、3mmテーパ付きマイクロチップとを備え、20kHzの周波数で動作するBranson Sonifier S-250Aを使用して超音波処理を行った。例えば、0.1wt%のGOを含む水溶液10mLを10分間超音波処理し、その後、2700gで30分間遠心分離して、溶解していない大きな粒子、凝集物、及び不純物を除去した。0.1wt%のGO水溶液10mLを50mL沸騰フラスコに入れることを含む方法に従うことによって、RGOを生成するために、上記のようにして得られたGOの化学的還元を行った。次いで、界面活性剤によって安定化させた混合物に、35wt%のN(ヒドラジン)水溶液10μL及び28wt%のNHOH(アンモニア)水溶液70mLを加えた。溶液を90℃に加熱し、1時間還流させた。反応後に測定されたpH値は約9だった。還元反応中、試料の色は暗黒色に変わった。
【0137】
本発明による幾つかのリチウム電池では、アノード活性材料及びカソード活性材料のいずれか又は両方での導電性添加剤としてRGOを使用した。選択されたリチウムイオンセルでのアノード活性材料として、プレリチウム化されたRGO(例えば、RGO+リチウム粒子又はリチウムコーティングを予め堆積されたRGO)も使用した。
【0138】
比較のために、従来の電極を製造するためにスラリコーティング及び乾燥手順を行った。次いで、1つのアノード及び1つのカソードと、2つの電極間に配設されたセパレータとを組み立てて、Al-プラスチック積層パッケージングエンベロープ内に入れ、続いて液体電解質を注入して、従来技術のリチウム電池セルを形成した。
【0139】
実施例2:純粋なグラフェンのシート(酸素0%)の調製
GOシート中の高欠陥集団が個々のグラフェン面の導電率を低下させるように作用する可能性を認識して、本発明者らは、純粋なグラフェンのシート(例えば、酸化されておらず、酸素を含まない、ハロゲン化されておらず、ハロゲンを含まない)を使用することで、高い導電率及び熱伝導率を有する導電性添加剤を得ることができるかどうか研究することにした。プレリチウム化された純粋なグラフェンも、アノード活性材料として使用した。直接超音波処理又は液相製造法を使用することによって、純粋なグラフェンのシートを製造した。
【0140】
典型的な手順では、約20μm以下のサイズに粉砕した5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(0.1重量%の分散剤を含む。DuPont社製のZonyl(登録商標)FSO)中に分散させて、懸濁液を得た。グラフェンシートの剥離、分離、及びサイズ減少のために、85Wの超音波エネルギーレベル(Branson S450 Ultrasonicator)を15分~2時間の期間にわたって使用した。得られたグラフェンシートは、一度も酸化されておらず、酸素を含まず、比較的欠陥のない純粋なグラフェンである。純粋なグラフェンは、非炭素元素を本質的に含まない。
【0141】
次いで、本発明による発泡体細孔へのスラリ注入手順と、従来のスラリコーティング、乾燥、及び積層の手順との両方を使用して、純粋なグラフェンのシートを、導電性添加剤として、アノード活性材料(又はカソードではカソード活性材料)と共に電池に組み込んだ。リチウムイオン電池とリチウム金属電池(カソードのみへの注入)の両方を調べた。
【0142】
実施例3:リチウムイオン電池のアノード活性材料としてのプレリチウム化されたグラフェンフッ化物シートの調製
GFを製造するために幾つかの方法を使用したが、ここでは一例として1つの方法のみを述べる。典型的な手順では、インターカレート化合物CF・xClFから、大きく剥離された黒鉛(HEG)を調製した。HEGを三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化された大きく剥離された黒鉛(FHEG)を生成した。予冷されたテフロン(Teflon)反応器に20~30mLの予冷された液体ClFを充填し、反応器を閉じ、液体窒素温度まで冷却した。次いで、ClFガスが反応炉の内部に入り込めるようにする穴を有する容器に、1g以下のHEGを入れた。7~10日で、近似式CFを有するグレーベージュの生成物が形成された。
【0143】
その後、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶媒(別々に、メタノールとエタノール)と混合し、超音波処理(280W)を30分間行って、均質な黄色っぽい分散液を生成した。溶媒の除去後、分散液は茶色っぽい粉末になった。液体電解質中で、グラフェンフッ化物粉末を表面安定化されたリチウム粉末と混合し、プレリチウム化を生じさせた。
【0144】
実施例4:使用される電解質の幾つかの例
好ましいナトリウム金属塩として以下のものが挙げられる。過塩素酸ナトリウム(NaClO)、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF)、ヘキサフルオロヒ化ナトリウム、ヘキサフルオロヒ化カリウム、トリフルオロ-メタスルホン酸ナトリウム(NaCFSO)、及びビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドナトリウム(NaN(CFSO)。以下は、選択される有機又はイオン液体溶媒によく溶解される傾向があるリチウム塩に関する良好な選択肢である。ホウフッ化リチウム(LiBF)、トリフルオロ-メタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス-トリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(CFSO又はLITFSI)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、及びビスペルフルオロエチルスルホニルイミドリチウム(LiBETI)。Li金属を安定化する助けとなる良好な電解質添加剤はLiNOである。特に有用なイオン液体ベースのリチウム塩としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)が挙げられる。
【0145】
好ましい有機液体溶媒としては以下のものが挙げられる。エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、アセトニトリル(AN)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカボネート(AEC)、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、ハイドロフルオロエーテル(例えば、TPTP)、スルホン、及びスルホラン。
【0146】
好ましいイオン液体溶媒は、テトラアルキルアンモニウム、ジ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、又はジアルキルピペリジニウムから選択されるカチオンを有する室温イオン液体(RTIL)から選択されることがある。対アニオンは、好ましくは、BF 、B(CN) 、CFCO 、CFSO 、N(SOCF 、N(COCF)(SOCF、又はN(SOF) から選択される。特に有用なイオン液体ベースの溶媒としては以下のものが挙げられる。N-n-ブチル-N-エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BEPyTFSI)、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(PP13TFSI)、及びN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド。
【0147】
実施例5:幾つかの溶媒の蒸気圧と、様々なナトリウム塩分子比を有する対応する準固体電解質
ホウフッ化ナトリウム(NaBF)、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(NaTFSI)など、広い分子比範囲のナトリウム塩を添加する前及び後の幾つかの溶媒(DOL、DME、PC、AN、イオン液体ベースの共溶媒PP13TFSIを含む又は含まない)の蒸気圧を測定した。図2(A)~図2(D)に示すように、蒸気圧比データの幾つか(p/p=溶液の蒸気圧/溶媒単独の蒸気圧)を、ラウールの法則を表す曲線と共に、リチウム塩分子比xの関数としてプロットする。全ての場合において、蒸気圧比は、x<0.15までに関してのみ、ラウールの法則に基づく理論的予測に従う。これを超えると、蒸気圧は、新たな且つ前例のない挙動でラウールの法則から逸脱する。蒸気圧は、分子比xが0.2を超えると非常に高速で低下し、xが0.4を超えると最小又は本質的にゼロに急速に近づくように見える。p/p値が非常に低い場合、電解質の蒸気相は火炎を発生できないか、又は開始後3秒よりも長く火炎を持続することはできない。
【0148】
実施例6:ナトリウム又はリチウム塩分子比がx=0.3での幾つかの溶媒及び対応する準固体電解質の引火点と蒸気圧
Na又はLi塩の分子比がx=0.3での幾つかの溶媒及びそれらの電解質の引火点及び蒸気圧を以下の表1に示す。OSHA(米国労働安全衛生庁)の分類によれば、38.7℃未満の引火点を有する液体は可燃性であることに留意されたい。しかし、安全性を確保するために、本発明者らは、38.7℃よりも大幅に高い引火点を示すように準固体電解質を設計した(例えば、大きな余裕をもって、少なくとも50℃、好ましくは150℃超増加させる)。表1でのデータは、通常、分子比0.35までアルカリ金属塩を添加すれば、これらの基準を満たすのに十分であることを示す。本発明者らによる準固体電解質は全て、可燃性でない。
【0149】
実施例7:幾つかの電解質におけるアルカリ金属イオン輸率
リチウム塩の分子比に関連する幾つかのタイプの電解質(例えば、NaTFSI塩/(EMImTFSI+DME)溶媒)のNaイオン輸率を研究した。代表的な結果を図3(A)~図3(D)にまとめる。一般に、低い塩濃度の電解質でのNaイオン輸率は、濃度がx=0からx=0.2~0.35に増加すると共に低下する。しかし、x=0.2~0.35の分子比を超えると、塩濃度の増加とともに輸率が増加し、Naイオン輸送メカニズムの根本的な変化を示す。これは、理論的なサブセクションで前に説明した。Naイオンが、低い塩濃度の電解質(例えば、x<0.2)中を移動するとき、Naイオンは、それと共に複数の溶媒和分子を引きずることができる。溶媒に溶解されたより多くの塩によって流体粘度が増加される場合、帯電種のそのようなクラスタの調整された移動はさらに妨害されることがある。対照的に、超高濃度のナトリウム塩(例えば、x>0.2)が存在するとき、Naイオンが、利用可能な溶媒和分子を大幅に上回る可能性がある。そのような溶媒和分子は、通常であればナトリウムイオンをクラスタ化でき、多イオン錯体種を形成し、Naイオンの拡散プロセスを減速させる。この高いNaイオン濃度により、より多くの「遊離Naイオン」(クラスタ化されない)を有することが可能となり、それにより、高いNaの輸率(したがって、容易なNa輸送)が得られる。ナトリウムイオン輸送メカニズムが、マルチイオン錯体支配メカニズム(より大きい全体的な流体力学的半径を有する)から、多数の利用可能な遊離Naイオンを有する単一イオン支配メカニズム(より小さい流体力学的半径を有する)に変化する。この観察結果はさらに、適切な数のNaイオンが準固体電解質を通って又は準固体電解質から迅速に移動して、カソード(放電中)又はアノード(充電中)との相互作用又は反応に容易に利用可能になり、それによりナトリウム二次セルの良好なレート能力を保証することを主張している。最も重要なことに、これらの高濃度の電解質は不燃性であり、安全である。したがって、全てのタイプのナトリウム及びリチウム二次電池について、安全性と、容易なナトリウムイオン輸送と、電気化学的性能特性との組合せを得るのは非常に困難である。
【0150】
実施例8:リチウム金属電池のリン酸鉄リチウム(LFP)カソード
コーティングされていない又はカーボンコーティングされたLFP粉末は、幾つかの製造元から市販されている。この実施例では、カソード活物質としてのLFP粒子と電解質(有機溶媒に溶解されたリチウム塩を含有する)とを含有する電極に、導電性フィラメントとしてグラフェンシート(RGO)とカーボンナノファイバ(CNF)を別々に含んだ。この実施例で使用したリチウム塩は、ホウフッ化リチウム(LiBF)を含み、有機溶媒は、PC、DOL、DEC、及びそれらの混合物である。この研究には、0.1%~30%の広範囲の伝導フィラメント体積分率を含めた。電極層の形成は、以下の一連のステップを使用して達成された。
【0151】
順序1(S1):最初に、PCとDOLの混合物にLiBF塩を溶解して、それぞれ1.0M、2.5M、及び3.5Mの塩濃度を有する電解質を形成した(2.5M以上の濃度では、得られた電解質は、もはや液体電解質ではなかった。実際には、より固体のように振る舞い、したがって用語「準固体」を使用する)。次いで、RGO又はCNTフィラメントを電解質に分散させて、フィラメント-電解質懸濁液を形成した。均一な分散の生成を助けるために、機械的せん断を使用した(このフィラメント-電解質懸濁液は、1.0Mの低い塩濃度でも、かなりの粘性があった)。次いで、カソード活物質であるLFP粒子をフィラメント-電解質懸濁液に分散させて、準固体電極材料を形成した。
【0152】
順序2(S2):最初に、PCとDOLの混合物にLiBF塩を溶解して、それぞれ1.0M、2.5M、及び3.5Mの塩濃度を有する電解質を形成した。次いで、カソード活物質であるLFP粒子を電解質に分散させて、活性粒子-電解質懸濁液を形成した。均一な分散の生成を助けるために、機械的せん断を使用した(この活性粒子-電解質懸濁液は、1.0Mの低い塩濃度でも、かなりの粘性があった)。次に、RGO又はCNTフィラメントを活性粒子-電解質懸濁液に分散させて、準固体電極材料を形成した。
【0153】
順序3(S3):最初に、溶解されたリチウム塩を含有していない液体溶媒混合物(PC+DOL)中に、所望の量のRGO又はCNTフィラメントを分散させた。溶媒中の伝導フィラメントの均一な懸濁液の形成を助けるために、機械的せん断を使用した。次いで、LiBF塩及びLFP粒子を懸濁液に添加し、LiBF塩を懸濁液の溶媒混合物中に溶解させて、それぞれ1.0M、2.5M、及び3.5Mの塩濃度を有する電解質を形成した。同時に又はその後、LFP粒子を電解質中に分散させて、変形可能な準固体電極材料を形成した。この準固体電極材料は、準固体電解質(液体電解質でない)中に分散された活物質粒子及び伝導フィラメントから構成される。この準固体電極材料では、伝導フィラメントがパーコレーションして、電子伝導経路の3Dネットワークを形成する。この3D伝導ネットワークは、電極材料が電池の電極に成形されるときに維持される。
【0154】
電極の導電率は、4点プローブ法を使用して測定した。結果を図6(A)及び6(B)に要約する。これらのデータが示すように、典型的には、電子伝導性経路の3Dネットワークを形成するための導電性フィラメント(CNF又はRGO)のパーコレーションは、以下の順序3によって形成される電極を除き、導電性フィラメントの体積分率が10~12%を超えるまで起こらない。言い換えれば、導電性フィラメントを液体溶媒に分散させるステップは、リチウム塩又はナトリウム塩が液体溶媒に溶解される前、及び活物質粒子が溶媒に分散される前に行わなければならない。また、そのような順序により、パーコレーションの閾値を0.5%~2.0%まで低くすることができ、最小量の導電性添加剤、したがってより高い比率の活物質(及びより高いエネルギー密度)を使用することによって導電性電極を製造することを可能にする。また、これらの観察結果は、これまでに調べた活物質粒子、導電性フィラメント、及び電解質を含有する全てのタイプの電極に当てはまることが判明した。これは、高エネルギー密度と高出力密度の両方を備えた高性能アルカリ金属電池を調製するための非常に重要であり予想外のプロセス要件である。
【0155】
次いで、準固体カソードと、多孔質セパレータと、準固体アノードと(同様の方法で調製されるが、アノード活物質として人造黒鉛粒子を有する)を一体に組み立ててユニットセルを形成し、次いでユニットセルを、突き出ている2つの端子を有する保護ハウジング(ラミネートアルミプラスチックポーチ)内に収納して、電池を形成した。液体電解質(1M)及び準固体電解質(2.5M及び3.5M)を含有する電池を製造して試験した。
【0156】
比較のために、スラリコーティング及び乾燥手順を実施して、従来の電極を製造した。次いで、1つのアノード及び1つのカソードと、2つの電極の間に配設されたセパレータとを組み立てて、Alプラスチックラミネートパッケージング容器に収納し、その後、液体電解質の注入を行って、先行技術のリチウム電池を形成した。電池の試験結果を実施例19に要約する。
【0157】
実施例9:リチウム電池の遷移金属酸化物カソード活性材料の一例としてのV
粉末が単独で市販されている。典型的な実験において、グラフェン担持V粉末試料の調製のために、LiCl水溶液にVを混合することによって五酸化バナジウムゲルを得た。LiCl溶液(Li:Vのモル比を1:1に保った)との相互作用によって得られたLi交換ゲルをGO懸濁液と混合し、次いでテフロンライニングされたステンレス鋼35mlオートクレーブに入れて封止し、12時間180℃に加熱した。そのような水熱処理後、未処理の固体を収集し、十分に洗浄し、2分間超音波処理し、70℃で12時間乾燥させ、その後、水中でさらなる0.1%GOと混合し、超音波処理してナノベルトサイズを破砕し、次いで200℃で噴霧乾燥させて、グラフェン包有複合粒子を得た。
【0158】
次いで、本発明によるカソード集電体の発泡体細孔へのスラリ注入手順と、従来のスラリコーティング、乾燥、及び積層の手順との両方を使用して、V粉末(導電性添加剤としてカーボンブラック粉末を含む)とグラフェン担持V粉末とを別々に、液体電解質と共に電池に組み込んだ。
【0159】
実施例10:リチウムイオン電池用のリチウム遷移金属酸化物カソード活性材料の一例としてのLiCoO
市販のLiCoO粉末及び多層カーボンナノチューブ(MW-CNT)を液体電解質中に分散させて、準固体電極を形成した。カソードと結合させるために、2種類の準固体アノードを用意した。一方は、アノード活物質としてグラファイト粒子を含み、他方は、アノード活物質として、グラフェン包有Siナノ粒子を含む。使用した電解質は、EC-VC(80/20の比)であった。各セルは、一体に組み立てられ、次いで気密封止された準固体アノード、セパレータ層、及び準固体カソードを含有する。
【0160】
LiCoO粉末、カーボンブラック粉末、及びPVDF樹脂粘結剤を別々にNMP溶媒中に分散させてスラリを生成し、これをAl箔集電体の両面に塗布し、次いで真空乾燥させてカソード層を形成した。黒鉛粒子及びPVDF樹脂粘結剤をNMP溶媒中に分散させてスラリを生成し、これをCu箔集電体の両面にコーティングし、次いで真空乾燥させてアノード層を形成した。次いで、アノード層、セパレータ、カソード層を積層し、Al-プラスチックハウジング内に収容し、そこに液体電解質を注入して従来のリチウムイオン電池を形成した。
【0161】
実施例11:リチウム金属電池のカソード活性材料としての有機材料(Li
ロジゾン酸二リチウム(Li)を合成するために、ロジゾン酸二水和物(以下の式では種1)を前駆体として使用した。両方のエネジオール酸機能を中和するために、塩基性リチウム塩LiCOを水性媒体中で使用することができる。厳密な化学量論量の両方の反応物、すなわちロジゾン酸と炭酸リチウムを10時間反応させて90%の収率を実現した。ロジゾン酸二リチウム(種2)は少量の水にさえ容易に溶解可能であり、水分子が種2に存在することを示唆する。水を真空中において180℃で3時間除去し、無水形(種3)を得た。
カソード活性材料(Li)と導電性添加剤(カーボンブラック、15%)との混合物を10分間ボールミル加工し、得られたブレンドを研磨して複合物粒子を製造した。電解質は、PC-EC中で1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)であった。
【0162】
式Li中の2つのLi原子は固定構造の一部であり、可逆的なリチウムイオンの貯蔵及び解放に関与しないことに留意されたい。これは、リチウムイオンがアノード側から来なければならないことを示唆する。したがって、アノードにはリチウム源(例えば、リチウム金属又はリチウム金属合金)が存在しなければならない。図1(D)に示すように、(例えば、スパッタリング若しくは電気化学めっきにより、又はリチウム箔を使用することによって)アノード集電体(Cu箔)にリチウムの層を堆積する。これに続いて、リチウム被覆層、多孔質セパレータ、及び準固体カソードをセルに組み立てた。カソード活物質及び導電性添加剤(Li/C複合粒子)を液体電解質中に分散させた。比較のために、対応する従来のLi金属セルも、スラリコーティング、乾燥、ラミネート、パッケージング、及び電解質注入の従来の手順によって製造した。
【0163】
実施例12:リチウム金属電池の金属ナフタロシアニン-RGOハイブリッドカソード
RGO-水懸濁液のスピンコーティングから調製されたグラフェンフィルム(5nm)と共にチャンバ内でCuPcを気化させることによって、銅ナフタロシアニン(CuPc)被覆グラフェンシートを得た。得られた被覆されたフィルムを切断して粉砕してCuPc被覆グラフェンシートを製造し、これを、アノード活性材料としてリチウム金属箔を有し、電解質として炭酸プロピレン(PC)溶液中の1.0M及び3.0MのLiClOを有するリチウム金属電池でのカソード活性材料として使用した。
【0164】
実施例13:リチウム金属電池のカソード活性材料としてのMoS/RGOハイブリッド材料の調製
この実施例では、多様な無機材料を調べた。例えば、200℃で、酸化された酸化グラフェン(GO)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中での(NHMoSとヒドラジンとの1段階のソルボサーマル反応により、超薄MoS/RGOハイブリッドを合成した。典型的な手順では、10mlのDMF中に分散された10mgのDMFに22mgの(NHMoSを加えた。混合物を、室温で約10分間、透明で均質な溶液が得られるまで超音波処理した。その後、0.1mlのN・HOを加えた。反応溶液をさらに30分間超音波処理した後、テフロンライニングされた40mLのオートクレーブに移した。オーブン内で、系を200℃で10時間加熱した。生成物を8000rpmで5分間の遠心分離によって収集し、DI水で洗浄し、遠心分離により再収集した。ほとんどのDMFが確実に除去されるように、洗浄ステップを少なくとも5回繰り返した。最後に、生成物を乾燥させてカソードにした。最後に、乾燥させた生成物を幾つかの炭素繊維及び準固体電解質と混合して、変形可能な準固体カソードを形成した。
【0165】
実施例14:2次元(2D)層状のBiSeカルコゲナイドナノリボンの調製
(2D)層状のBiSeカルコゲナイドナノリボンの調製は、当技術分野でよく知られている。例えば、蒸気-液体-固体(VLS)法を用いてBiSeナノリボンを成長させた。本明細書で製造されるナノリボンは、平均で厚さが30~55nmであり、幅及び長さが数百ナノメートル~数マイクロメートルの範囲である。これらの手順によって調製されたナノリボンと、グラフェンシート又は剥離グラファイトフレークのいずれかとを準固体電解質と組み合わせて、リチウム金属電池の変形可能なカソードを形成した。
【0166】
実施例15:MXene粉末+化学的に活性化されたRGO
TiAlCなど金属炭化物の層状構造から特定の元素を部分的にエッチング除去することによって、選択されたMXeneを生成した。例えば、TiAlC用のエッチャントとして、1MのNHHF水溶液を室温で使用した。典型的には、MXene表面は、O、OH、及び/又はF基によって終端される。これは、それらが通常はMn+1と呼ばれる理由であり、ここで、Mは前周期遷移金属であり、XはC及び/又はNであり、Tは末端基(O、OH、及び/又はF)であり、n=1、2、又は3であり、xは末端基の数である。調べたMXene材料には、TiCT、NbCT、VCT、TiCNT、及びTaが含まれる。典型的には、35~95%のMXeneシート及び2~35%のグラフェンシートを準固体電解質中に混合して、準固体カソードを形成した。
【0167】
実施例16:グラフェン担持MnOカソード活性材料の調製
MnO粉末を2つの方法(それぞれグラフェンシート有り又は無し)によって合成した。1つの方法では、過マンガン酸カリウムを脱イオン水中に溶解することによって、0.1mol/LのKMnO水溶液を調製した。一方、高純度のビス(2-エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムの界面活性剤13.32gを300mLのイソオクタン(油)中に加え、よく撹拌して、光学的に透明な溶液を得た。次いで、その溶液中に、0.1mol/LのKMnO溶液32.4mLと、選択された量のGO溶液とを加え、それを30分間超音波処理して、暗褐色の沈殿物を調製した。生成物を分離し、蒸留水及びエタノールで数回洗浄し、80℃で12時間乾燥させた。サンプルは、グラフェンに担持された粉末状のMnOであり、これをCNT含有電解質中に分散させて準固体カソード電極を形成した。
【0168】
実施例17:リチウムイオン電池のアノード活物質としてのグラフェン強化ナノシリコン
グラフェンで覆われたSi粒子を、Angstron Energy Co.(米国オハイオ州デイトン)から入手できた。純粋なグラフェンシート(導電性フィラメントとして)をPC-DOL(50/50の比)混合物中に分散させ、その後、グラフェンで覆われたSi粒子(アノード活物質)を分散させ、60℃での混合溶媒中に2.5Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を溶解することによって、準固体アノード電極が調製された。次いで、DOLを除去して、PC中に約5.0MのLiPFを含有する準固体電解質を得た。PC中でのLiPFの最大溶解度は室温で3.0M未満であることが知られているため、これによりLiPFが過飽和状態になる。
【0169】
実施例18:アノード活性材料としての酸化コバルト(Co)微粒子
LiCoOはリチウムイオン電池のカソード活性材料であるが、Coはアノード活性材料である。なぜなら、LiCoOは、Li/Liに対して約+4.0ボルトの電気化学ポテンシャルであり、Coは、Li/Liに対して約+0.8ボルトの電気化学ポテンシャルであるからである。
【0170】
適切な量の無機塩Co(NO・6HO、続いてアンモニア溶液(NH・HO、25wt%)をGO懸濁液にゆっくり加えた。完全な反応が確実に生じるように、得られた前駆体懸濁液をアルゴン流下で数時間撹拌した。得られたCo(OH)/グラフェン前駆体懸濁液を2つの部分に分けた。1つの部分を濾過し、70℃で真空乾燥して、Co(OH)/グラフェン複合前駆体を得た。この前駆体を空気中にて450℃で2時間焼成して、層状Co/グラフェン複合体を形成した。これは、互いに重なり合うCo被覆グラフェンシートを有することを特徴とする。
【0171】
実施例19:アノード活性材料としてのグラフェン強化酸化スズ微粒子
以下の手順を使用して、制御下でのSnCl・5HOとNaOHの加水分解によって酸化スズ(SnO)ナノ粒子を得た:SnCl・5HO(0.95g、2.7m-mol)とNaOH(0.212g、5.3m-mol)をそれぞれ50mLの蒸留水中に溶解した。激しく撹拌しながら塩化スズ溶液にNaOH溶液を1mL/分の速度で滴下して加えた。この溶液を、超音波処理により5分間均質化した。その後、得られたヒドロゾルをGO分散液と3時間反応させた。この混合溶液に0.1MのHSOを数滴加えて生成物を凝集させた。沈殿した固体を遠心分離によって収集し、水及びエタノールで洗浄し、真空乾燥させた。この乾燥した生成物を、Ar雰囲気下において400℃で2時間熱処理し、アノード活性材料として利用した。
【0172】
実施例20:様々な電池セルの用意と電気化学的試験
調べたアノード及びカソード活性材料のほとんどについて、本発明による方法と従来の方法との両方を使用して、リチウムイオンセル又はリチウム金属セルを用意した。
【0173】
従来の方法では、典型的なアノード組成物は、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)中に溶解された、85wt%の活性材料(例えば、Si又はCo被覆グラフェンシート)と、7wt%アセチレンブラック(Super-P)と、8wt%ポリフッ化ビニリデン粘結剤(PVDF、5wt%固形分)とを含む。Cu箔上にスラリをコーティングした後、電極を120℃で2時間真空乾燥させて溶媒を除去した。この方法により、典型的には、粘結剤樹脂が必要とされず、又は使用されず、8重量%節約する(非活性材料の量が減少する)。カソード層も、従来のスラリコーティング及び乾燥手順を使用して、(カソード集電体としてAl箔を使用して)同様に形成される。次いで、アノード層、セパレータ層(例えば、Celgard 2400膜)、及びカソード層を積層し合わせて、プラスチックAlエンベロープ内に収容する。例として、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)との混合物(EC-DEC、1:1v/v)中に溶解された2.8M LiPF電解質溶液をセルに注入する。幾つかのセルでは、液体電解質としてイオン液体を使用した。アルゴン充填グローブボックス内にセルアセンブリを形成した。
【0174】
本発明によるプロセスでは、好ましくは、準固体アノード、多孔質セパレータ、及び準固体カソードを保護ハウジング内に組み込む。次いで、ポーチを封止した。
【0175】
Arbin電気化学ワークステーションを使用して、1mV/sの典型的な走査速度でサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を行った。さらにまた、定電流充電/放電サイクルによって、様々なセルの電気化学的性能を50mA/g~10A/gの電流密度で評価した。長期のサイクル試験には、LAND製のマルチチャネル電池テスタを使用した。
【0176】
リチウムイオン電池業界では、電池のサイクル寿命を、所要の電気化学的形成後に測定された初期容量に基づいて電池が20%の容量減衰を受ける充放電サイクル数と定義するのが一般的な慣例である。
【0177】
実施例21:典型的な試験結果
各試料ごとに、電気化学的応答を決定するために幾つかの電流密度(充電/放電速度を表す)を課し、Ragoneプロット(電力密度対エネルギー密度)の構築に必要なエネルギー密度及び電力密度値の計算を可能にした。図7に、アノード活性材料として黒鉛粒子を含み、カソード活性材料として炭素被覆LFP粒子を含むリチウムイオン電池セルのRagoneプロット(重量電力密度対エネルギー密度)が示されている。4つのデータ曲線のうち3つは、(それぞれ順序S1、S2、及びS3を用いて)本発明の実施形態に従って調製されたセルに関するものであり、残りの1つは、電極の従来のスラリコーティング(ロールコーティング)によるものである。これらのデータから幾つかの重要な観察を行うことができる。
【0178】
本発明による方法によって調製されたリチウムイオン電池セルの重量エネルギー密度及び出力密度は、従来のロールコーティング法によって調製された対応物(「従来」と表記する)のものよりも大幅に高い。160μmのアノード厚さ(平坦な固体Cu箔上にコーティングされた)から315μmの厚さへの変化と、バランスの取れた容量比を維持するためのカソードの対応する変化により、165Wh/kgからそれぞれ230Wh/kg(S1)、235Wh/kg(S2)、及び264Wh/kg(S3)への重量エネルギー密度の増加が生じた。また、驚くべきことに、(導電性フィラメントのパーコレーションによる)電子伝導経路の3Dネットワークを有する本発明による準固体電極を含有する電池は、かなり高いエネルギー密度及び高い出力密度を提供する。
【0179】
これらの大きな相違は、単に電極の厚さ及び質量負荷の増加に起因するだけではない。この相違は、おそらく以下のことに起因する。本発明によるセルに関連するかなり高い活性材料質量負荷(単なる質量負荷ではなく)及び高い導電性;活性材料の重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;及び電極活性材料の驚くほど良い利用率(高い導電性により、全てではないにせよほとんどの黒鉛粒子及びLFP粒子がリチウムイオン貯蔵容量に寄与し、特に高い充電/放電率の条件下で、電極中に乾燥ポケット又は非効果的なスポットがない)。
【0180】
図8は、アノード活性材料としてグラフェン包有Siナノ粒子を含み、カソード活性材料としてLiCoOナノ粒子を含む2つのセルのRagoneプロット(重量エネルギー密度に対する重量電力密度)を示す。実験データは、本発明による方法によって用意されたLiイオン電池セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意されたLiイオン電池セルとから得られた。
【0181】
これらのデータは、本発明による方法によって用意された電池セルの重量エネルギー密度及び電力密度が、従来の方法によって用意された相当物よりもかなり高いことを示している。ここでも相違は大きい。従来のやり方で形成されたセルは、265Wh/kgの重量エネルギー密度を示すが、本発明によるセルは、それぞれ393Wh/kg(S1)及び421Wh/kg(S3)のエネルギー密度を送給する。1425W/kg及び1,654W/kgの高い電力密度も、リチウムイオン電池で前例のないものである。
【0182】
これらのエネルギー密度及び電力密度の相違は、主として以下のことによる。本発明によるセルに関連する高い活性材料質量負荷(アノードでは>25mg/cm、及びカソードでは>45mg/cm)及び高い導電性;活性材料重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)構成要素の割合の減少;及び活性材料粒子をより良く利用することができる(全ての粒子が液体電解質に接近可能であり、高速のイオン及び電子運動)、本発明による方法の機能。
【0183】
図9には、アノード活物質としてのリチウム箔と、カソード活物質としてのロジゾン酸二リチウム(Li)と、有機電解質としてのリチウム塩(LiPF)-PC/DEC(1.5Mと5.0Mの両方)とを含有するリチウム金属電池のラゴンプロットが示されている。準固体電極は、実施例8で述べた順序S2及びS3に従って調製した。データは、本発明による方法によって用意された3つのリチウム金属セルと、電極の従来のスラリコーティングによって用意されたリチウム金属セルとの両方に関するものである。
【0184】
これらのデータは、本発明による方法によって用意されたリチウム金属セルの重量エネルギー密度及び電力密度が、従来の方法によって用意された相当物よりもかなり高いことを示している。ここでも、相違は非常に大きく、これは、本発明の電極に関連するかなり高い活物質質量装填量(単なる質量装填量でなく)及びより高い導電性、活物質重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)成分の比率の減少、並びに電極活物質の驚くほど良好な利用率に起因する可能性が高い(導電率がより高いこと、及び特に高い充電/放電率条件下において電極内にドライポケット又は非効果的なスポットがないことにより、全てではないにせよほとんどの活物質がリチウムイオン貯蔵容量に寄与する)。
【0185】
本発明によるリチウム金属有機カソードセルの重量エネルギー密度は515Wh/kgと高く、これまでに報告されている全ての充電式リチウム金属又はリチウムイオン電池の重量エネルギー密度(現在のリチウムイオン電池は、総セル重量に基づいて150~220Wh/kgを貯蔵することを想起されたい)よりも高いという観察結果は、かなり注目に値し、意外である。さらに、有機カソード活物質ベースのリチウム電池に関して、1,576W/kgの重量出力密度は考えられなかった。順序3に従って調製された準固体電極を含有するセルは、従来の順序S2のセルと比較して、大幅に高いエネルギー密度及び出力密度を示す。また、驚くべきことに、より高い濃度の電解質(準固体電解質)ほど、より高いエネルギー密度及び出力密度の実現に寄与する。
【0186】
リチウム電池の上記の性能的特徴は、対応するナトリウム電池でも観察される。紙面に限りがあるため、ナトリウム電池に関するデータは本明細書には提示しない。しかし、一例として、図10は、それぞれがアノード活物質としてのプレナトリウム化されたハードカーボン粒子と、カソード活物質としてのグラフェンシートとを含有する2つのナトリウムイオンキャパシタのラゴンプロットを示す。一方のセルは、従来のスラリコーティングプロセスによって調製されたアノードを有し、他方のセルは、本発明による方法に従って調製された準固体アノードを有する。やはり、準固体電極ベースのセルは、大幅に高いエネルギー密度及び高い出力密度を提供する。リチウムイオンキャパシタも同様の傾向に従うことが判明した。
【0187】
多くの研究者が行っているようなRagoneプロット上での活性材料のみの重量当たりのエネルギー及び電力密度の報告は、組み立てられたスーパーキャパシタセルの性能の現実的な状況を示さないことがあることを指摘しておくことは重要であろう。他のデバイス構成要素の重量も考慮に入れなければならない。集電体、電解質、セパレータ、粘結剤、コネクタ、及びパッケージングを含むこれらのオーバーヘッド構成要素は、非活性材料であり、電荷蓄積量に寄与しない。これらの構成要素は、デバイスに重量及び体積を追加するだけである。したがって、オーバーヘッド構成要素の重量の相対比を減少し、活性材料の割合を増加させることが望ましい。しかしながら、従来の電池製造法を使用してこの目的を達成することは可能でなかった。本発明は、リチウム電池の技術分野におけるこの長年にわたる最も重大な問題を克服する。
【0188】
100~200μmの電極厚さを有する市販のリチウムイオン電池では、リチウムイオン電池におけるアノード活性材料(例えば、黒鉛や炭素)の重量比は、典型的には12~17%であり、カソード活性材料の重量比(LiMnなど無機材料に関して)は22%~41%であり、又は有機又はポリマー材料に関しては10%~15%である。したがって、活性材料重量のみに基づく特性から、デバイス(セル)のエネルギー又は電力密度を外挿するために、係数3~4が頻繁に使用される。大抵の科学論文では、報告されている特性は、典型的には活性材料重量のみに基づいており、電極は典型的には非常に薄い(<<100μm、及び大抵は<<50μm)。活性材料重量は、典型的には総デバイス重量の5%~10%であり、これは、対応する活性材料重量ベース値を係数10~20で割ることによって実際のセル(デバイス)エネルギー又は電力密度を得ることができることを示唆する。この係数が考慮された後では、これらの論文で報告されている特性は、商用電池の特性よりも良いものとは思えない。したがって、科学論文及び特許出願で報告されている電池の性能データを読んで解釈するに当たっては非常に慎重でなければならない。
図1A-1B】
図1C
図1D
図2A-2B】
図2C-2D】
図3(A)】
図3(B)】
図3(C)】
図4A-4B】
図4C-4D】
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10