(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20221111BHJP
C10M 105/34 20060101ALN20221111BHJP
C10M 105/38 20060101ALN20221111BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20221111BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20221111BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20221111BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20221111BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M105/34
C10M105/38
C10M137/10 Z
C10N20:02
C10N30:06
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2019570778
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2019004261
(87)【国際公開番号】W WO2019156124
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018019949
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018059574
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】庄野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】奈良 文之
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 武
(72)【発明者】
【氏名】尾形 英俊
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2016/072296(JP,A1)
【文献】特開平05-070785(JP,A)
【文献】特開平06-009978(JP,A)
【文献】特開2005-146010(JP,A)
【文献】特開2009-235226(JP,A)
【文献】特開2018-095792(JP,A)
【文献】特開2008-214618(JP,A)
【文献】特開2017-071690(JP,A)
【文献】特開2009-235179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールと脂肪酸とのエステルを含む基油と、
下記式(1)で表される化合物と、を含有し、
前記エステルの含有量が、基油全量基準で90質量%以上であり、
前記基油の非極性指数が60以下であり、
40℃における動粘度が10mm
2/s以下である、冷凍機油。
【化1】
[式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、R
3は2価の炭化水素基を表し、R
4は水素原子又は1価の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
前記アルコールが、1価アルコール及び2価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の冷凍機油。
【請求項3】
前記脂肪酸が分岐脂肪酸を含む、請求項1又は2に記載の冷凍機油。
【請求項4】
アルコールと脂肪酸とのエステルを含む基油と、下記式(1)で表される化合物とを含有し、40℃における動粘度が10mm
2/s以下である、冷凍機油と、
冷媒と、を含有
し、
前記エステルの含有量が、基油全量基準で90質量%以上であり、
前記基油の非極性指数が60以下である、冷凍機用作動流体組成物。
【化2】
[式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、R
3は2価の炭化水素基を表し、R
4は水素原子又は1価の炭化水素基を表す。]
【請求項5】
前記アルコールが、1価アルコール及び2価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項
4に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸が分岐脂肪酸を含む、請求項
4又は5に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、空調等の冷凍機は、冷媒を冷媒循環システム内に循環させるための圧縮機を備えている。圧縮機には、摺動部材を潤滑するための冷凍機油が充填される。一般的に、冷凍機油の粘度が低いほど撹拌抵抗及び摺動部の摩擦を低減できるため、冷凍機油の低粘度化は、冷凍機の省エネルギー化につながる。特許文献1には、例えば、VG3以上でVG8以下の所定の冷凍機油が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷凍機油の粘度が低くなると、摺動部における油膜の保持が難しくなるため、例えば耐焼付き性を維持できなくなるおそれがある。そのため、冷凍機油には、耐焼付き性を向上させるための添加剤が添加される。一方で、このような添加剤は、冷凍機油の安定性を低下させる可能性があるため、その添加量はできる限り少ないことが望ましい。つまり、同じ量の添加剤を添加した場合に、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られるような冷凍機油が求められる。
【0005】
そこで本発明は、低粘度の冷凍機油において、大きな耐焼付き性の向上効果を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、アルコールと脂肪酸とのエステルを含む基油と、下記式(1)で表される化合物と、を含有し、40℃における動粘度が10mm
2/s以下である、冷凍機油である。
【化1】
式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、R
3は2価の炭化水素基を表し、R
4は水素原子又は1価の炭化水素基を表す。
【0007】
本発明の他の一側面は、アルコールと脂肪酸とのエステルを含む基油と、上記式(1)で表される化合物とを含有し、40℃における動粘度が10mm2/s以下である、冷凍機油と、冷媒と、を含有する冷凍機用作動流体組成物である。
【0008】
アルコールは、好ましくは、1価アルコール及び2価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。脂肪酸は、好ましくは、分岐脂肪酸を含む。これらの場合、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られる。
【0009】
基油の非極性指数は、60以下であってよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低粘度の冷凍機油において、大きな耐焼付き性の向上効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
一実施形態に係る冷凍機油は、アルコールと脂肪酸とのエステルを含む基油を含有する。アルコールは、脂肪族アルコールであってよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルコールの炭素数は、例えば、3以上、4以上、又は5以上であってよく、12以下、10以下、又は8以下であってよい。
【0014】
アルコールは、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られる観点から、好ましくは、1価アルコール及び2価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは、1価の脂肪族アルコール及び2価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0015】
アルコールに占める1価アルコール及び2価アルコールの割合(合計)は、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。アルコールに占める1価の脂肪族アルコール及び2価の脂肪族アルコールの割合(合計)は、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。アルコールは、1価アルコール及び2価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のみからなっていてよく、1価の脂肪族アルコール及び2価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のみからなっていてよい。
【0016】
1価の脂肪族アルコールは、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタンノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール等であってよい。これらの1価の脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0017】
2価の脂肪族アルコールは、例えば、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等であってよい。
【0018】
脂肪酸の炭素数は、例えば、4以上、5以上、又は6以上であってよく、20以下、15以下、又は10以下であってよい。脂肪酸は、直鎖脂肪酸を含んでいてよく、分岐脂肪酸を含んでいてよく、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られる観点から、好ましくは分岐脂肪酸を含む。
【0019】
脂肪酸は、低粘度化できるとともに、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られる観点から、好ましくは、炭素数4~12の直鎖脂肪酸及び炭素数4~12の分岐脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは、炭素数6~8の分岐脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。このような脂肪酸は、例えば、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、2-メチルヘキサン酸、又は2-エチルヘキサン酸であってよい。
【0020】
脂肪酸に占める炭素数4~10の直鎖脂肪酸及び炭素数4~10の分岐脂肪酸の割合(合計)は、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。脂肪酸に占める炭素数6~8の分岐脂肪酸の割合(合計)は、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。脂肪酸は、炭素数4~10の直鎖脂肪酸及び炭素数4~10の分岐脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のみからなっていてよく、炭素数6~8の分岐脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のみからなっていてよい。
【0021】
エステルは、1価アルコール(好ましくは1価の脂肪族アルコール)と脂肪酸とのエステルのみを含んでいてよく、2価アルコール(好ましくは2価の脂肪族アルコール)と脂肪酸とのエステルのみを含んでいてよく、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られる観点から、1価アルコール(好ましくは1価の脂肪族アルコール)と脂肪酸とのエステル及び2価アルコール(好ましくは2価の脂肪族アルコール)と脂肪酸とのエステルのみを含んでいてもよい。
【0022】
基油の40℃における動粘度は、例えば、1mm2/s以上、1.5mm2/s以上、又は2mm2/s以上であってよく、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られ、かつ耐摩耗性にも優れる(摩耗量を低減できる)観点から、好ましくは、10mm2/s以下、9mm2/s以下、又は8mm2/s以下である。基油の100℃における動粘度は、例えば、0.5mm2/s以上、1mm2/s以上、又は1.5mm2/s以上であってよく、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られ、かつ耐摩耗性にも優れる(摩耗量を低減できる)観点から、好ましくは、8mm2/s以下、5mm2/s以下、又は2.5mm2/s以下である。本明細書における動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定された動粘度を意味する。
【0023】
基油の非極性指数は、好ましくは60以下であり、55以下、50以下、45以下又は40以下であってよく、20以上、30以上又は35以上であってよい。非極性指数が60以下の脂肪酸エステルを使用すると、非極性指数が60を超える脂肪酸エステルを使用した場合よりも式(1)で表される化合物による耐摩耗性又は耐焼付き性の向上効果(向上率)がより高まる。また、式(1)で表される化合物による耐摩耗性又は耐焼付き性の向上効果(向上率)は、直鎖脂肪酸エステルを基油とするよりも分岐脂肪酸エステルを基油とした方が高い傾向にある。なお、脂肪酸エステルの非極性指数は、下記式(A)に従って算出される。
非極性指数=(炭素原子数×分子量)/(エステル基の数×100) …(A)
式(A)中、炭素原子数は脂肪酸エステルを構成する炭素原子の数を表し、分子量は脂肪酸エステルの分子量を表し、エステル基の数は脂肪酸エステル1分子が有するエステル基の数を表す。
【0024】
基油は、上記エステルに加えて、その他の公知の基油を更に含んでいてもよい。上記エステルの含有量は、基油全量基準で、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。基油は、上記エステルのみからなっていてよい。
【0025】
基油の含有量は、冷凍機油全量基準で、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよく、99.5質量%以下、99質量%以下、又は98.5質量%以下であってよい。
【0026】
冷凍機油は、下記式(1)で表される化合物を更に含有する。
【化2】
【0027】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に1価の炭化水素基を表す。該1価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基等が例示される。R1及びR2で表される1価の炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、1以上、2以上又は3以上であってよく、10以下、9以下又は8以下であってよい。R1及びR2で表される1価の炭化水素基における炭素数の合計は、2以上、3以上又は4以上であってよく、20以下、19以下又は18以下であってよい。
【0028】
式(1)中、R3は、2価の炭化水素基を表す。該2価の炭化水素基としては、アルキレン基等が例示される。R3で表される2価の炭化水素基の炭素数は、1以上、2以上又は3以上であってよく、10以下、9以下又は8以下であってよい。
【0029】
式(1)中、R4は、水素原子又は1価の炭化水素基を表す。該1価の炭化水素基としては、アルキル基等が例示される。R4で表される1価の炭化水素基における炭素数は、1以上、2以上又は3以上であってよく、10以下、9以下又は8以下であってよい。
【0030】
式(1)で表される化合物は、好ましくは、下記式(2)で表される化合物である。
【化3】
【0031】
式(2)中、R1、R2及びR4は、式(1)におけるR1、R2及びR4とそれぞれ同義である。R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。該アルキル基は、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状である。該アルキル基の炭素数は、例えば、1~4、1~3、又は1~2であってよい。R5及びR6の少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。R5及びR6の一方はアルキル基であり他方は水素原子であることがより好ましい。
【0032】
このような化合物としては、具体的には、3-(ジイソブトキシ-チオホスホリルスルファニル)-2-メチル-プロピオン酸、エチル-3-[[ビス(1-メチルエトキシ)ホスフィノチオイル]チオ]プロピオネートや、3-(O,O-ジイソプロピル-ジチオホスホリル)-プロピオン酸、3-(O,O-ジイソプロピル-ジチオホスホリル)-2-メチル-プロピオン酸、3-(O,O-ジイソブチル-ジチオホスホリル)-プロピオン酸、3-(O,O-ジイソブチル-ジチオホスホリル)-2-メチル-プロピオン酸及びこれらの化合物のエチルエステル等のアルキルエステルなどが挙げられる。
【0033】
式(1)で表される化合物の含有量は、耐焼付き性の更なる向上の観点から、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上である。式(1)で表される化合物の含有量は、安定性の向上の観点から、冷凍機油全量基準で、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。式(1)で表される化合物の含有量は、耐焼付き性の更なる向上及び安定性の向上の観点から、好ましくは、0.001~5質量%、0.001~4質量%、0.001~3質量%、0.005~5質量%、0.005~4質量%、0.005~3質量%、0.01~5質量%、0.01~4質量%、又は0.01~3質量%である。
【0034】
式(1)で表される化合物の含有量は、初期酸化を低く抑えて安定性に優れる冷凍機油を得るとともに、式(1)で表される化合物以外のリン系極圧剤(詳細は後述)を更に含む場合において、その併用効果をより高める観点からは、冷凍機油全量基準で、1質量%以下、0.1質量%以下、0.06質量%以下、又は0.04質量%以下であってよく、0.001~1質量%、0.001~0.1質量%、0.001~0.06質量%、0.001~0.04質量%、0.005~1質量%、0.005~0.1質量%、0.005~0.06質量%、0.005~0.04質量%、0.01~1質量%、0.01~0.1質量%、0.01~0.06質量%、又は0.01~0.04質量%であってよい。
【0035】
冷凍機油は、式(1)で表される化合物以外のリン系極圧剤を更に含有してもよい。当該リン系極圧剤は、リンを分子中に含んでいればよい。当該リン系極圧剤は、例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル等であってよい。
【0036】
リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリ(エチルフェニル)ホスフェート、トリ(プロピルフェニル)ホスフェート、トリ(ブチルフェニル)ホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。リン酸エステルは、好ましくは、トリフェニルホスフェート又はトリクレジルホスフェートである。
【0037】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0038】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、上記の酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。
【0039】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。
【0040】
チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。チオリン酸エステルは、好ましくは、トリフェニルホスフォロチオネートである。
【0041】
リン系極圧剤の含有量は、耐焼付き性に更に優れる観点から、冷凍機油全量基準で、0.1質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、又は1.6質量%以上であってよく、5質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、又は2質量%以下であってよい。
【0042】
冷凍機油がリン系極圧剤を更に含有する場合、当該リン系極圧剤の含有量に対する式(1)で表される化合物の含有量の比(質量比、式(1)で表される化合物/リン系極圧剤)は、0.0001/1以上、0.0002/1以上、又は0.0005/1以上であってよく、1/1以下、0.5/1以下、0.1/1以下、0.05/1以下、又は0.01/1以下であってよい。
【0043】
冷凍機油の40℃における動粘度は、例えば、1mm2/s以上、1.5mm2/s以上、又は2mm2/s以上であってよく、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られ、かつ耐摩耗性にも優れる(摩耗量を低減できる)観点から、好ましくは、10mm2/s以下、9mm2/s以下、又は8mm2/s以下である。冷凍機油の100℃における動粘度は、例えば、0.5mm2/s以上、1mm2/s以上、又は1.5mm2/s以上であってよく、より大きな耐焼付き性の向上効果が得られ、かつ耐摩耗性にも優れる(摩耗量を低減できる)観点から、好ましくは、8mm2/s以下、5mm2/s以下、又は2.5mm2/s以下である。
【0044】
冷凍機油のISO粘度分類は、当該冷凍機油の40℃における動粘度が10mm2/s以下である限りにおいて特に制限されない。冷凍機油のISO粘度分類は、例えばVG2、3、5、7、10に分類され、流体潤滑領域における低摩擦性を確保する観点から、好ましくはVG10以下、より好ましくはVG7以下、更に好ましくはVG5以下である。例えば、VG7又は5の冷凍機油では、これより高い粘度グレードの冷凍機油と比べると、一般的には流体潤滑領域における摩擦係数が低くなるものの、混合潤滑ないし境界潤滑領域における潤滑性は悪化し、摩擦係数は高くなる傾向にある。しかし、本発明における上記一般式(1)で表される化合物を添加することで、混合潤滑ないし境界潤滑領域における潤滑性が著しく改善され、低摩擦性にも寄与することになる。この改善度合いはVG10以下の冷凍機油の方が高い。なお、ここでいうISO粘度分類とは、JIS K 2001(1993)「工業用潤滑油-ISO粘度分類」若しくはISO 3448・1992「Industrial liquid lubricants-ISO viscosity classification」に規定された粘度グレードを意味する。
【0045】
冷凍機油の引火点は、安全性の観点から、100℃以上、110℃以上、又は120℃以上であってよく、粘度を低下させる観点から、155℃以下、又は145℃以下であってよい。本明細書における引火点は、JIS K2265-4:2007(クリーブランド解放(COC)法)に準拠して測定された引火点を意味する。
【0046】
冷凍機油の流動点は、-10℃以下、-20℃以下、又は-50℃以下であってよく、精製コストの観点からは、-40℃以上であってもよい。本明細書における流動点は、JIS K2269:1987に準拠して測定された流動点を意味する。
【0047】
冷凍機油の酸価は、1.0mgKOH/g以下、又は0.1mgKOH/g以下であってよい。本明細書における酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定された酸価を意味する。
【0048】
冷凍機油の体積抵抗率は、1.0×109Ω・m以上、1.0×1010Ω・m以上、又は1.0×1011Ω・m以上であってよい。本明細書における体積抵抗率は、JIS C2101:1999に準拠して測定した25℃での体積抵抗率を意味する。
【0049】
冷凍機油の水分含有量は、冷凍機油全量基準で、200ppm以下、100ppm以下、又は50ppm以下であってよい。
【0050】
冷凍機油の灰分は、100ppm以下、又は50ppm以下であってよい。本明細書における灰分は、JIS K2272:1998に準拠して測定された灰分を意味する。
【0051】
冷凍機油は、冷凍機において、冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物の状態で存在している。すなわち、冷凍機油は、冷媒と共に用いられ、冷凍機用作動流体組成物は、上記の冷凍機油と冷媒とを含有する。冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油の含有量は、冷媒100質量部に対して、1質量部以上又は2質量部以上であってよく、500質量部以下又は400質量部以下であってよい。
【0052】
冷媒としては、炭化水素冷媒、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、2フッ化ヨウ化メタン冷媒、及び、アンモニア、二酸化炭素等の自然系冷媒が例示される。
【0053】
炭化水素冷媒は、好ましくは炭素数1~5の炭化水素、より好ましくは炭素数2~4の炭化水素である。炭化水素としては、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン(R600a)、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2-メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。炭化水素冷媒は、好ましくは、25℃、1気圧で気体の炭化水素冷媒であり、より好ましくは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2-メチルブタン又はこれらの混合物である。
【0054】
飽和フッ化炭化水素冷媒は、好ましくは炭素数1~3、より好ましくは1~2の飽和フッ化炭化水素である。飽和フッ化炭化水素冷媒としては、具体的には、ジフルオロメタン(R32)、トリフルオロメタン(R23)、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、フルオロエタン(R161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R227ea)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R245fa)、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(R365mfc)、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0055】
飽和フッ化炭化水素冷媒は、上記の中から用途や要求性能に応じて適宜選択される。飽和フッ化炭化水素冷媒は、例えばR32単独;R23単独;R134a単独;R125単独;R134a/R32=60~80質量%/40~20質量%の混合物;R32/R125=40~70質量%/60~30質量%の混合物;R125/R143a=40~60質量%/60~40質量%の混合物;R134a/R32/R125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;R134a/R32/R125=40~70質量%/15~35質量%/5~40質量%の混合物;R125/R134a/R143a=35~55質量%/1~15質量%/40~60質量%の混合物などである。飽和フッ化炭化水素冷媒は、さらに具体的には、R134a/R32=70/30質量%の混合物;R32/R125=60/40質量%の混合物;R32/R125=50/50質量%の混合物(R410A);R32/R125=45/55質量%の混合物(R410B);R125/R143a=50/50質量%の混合物(R507C);R32/R125/R134a=30/10/60質量%の混合物;R32/R125/R134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);R32/R125/R134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);R125/R134a/R143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などであってよい。
【0056】
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒は、好ましくは炭素数2~3の不飽和フッ化炭化水素、より好ましくはフルオロプロペン、更に好ましくはフッ素数が3~5のフルオロプロペンである。不飽和フッ化炭化水素冷媒は、好ましくは、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ye)、及び3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)のいずれか1種又は2種以上の混合物である。不飽和フッ化炭化水素冷媒は、冷媒物性の観点からは、好ましくは、HFO-1225ye、HFO-1234ze及びHFO-1234yfから選ばれる1種又は2種以上である。不飽和フッ化炭化水素冷媒は、フルオロエチレンであってもよく、好ましくは1,1,2,3-トリフルオロエチレンである。
【0057】
本実施形態に係る冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。
【0058】
図1は、本実施形態に係る冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物が適用される冷凍機の構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、冷凍機10は、例えば、冷媒圧縮機1と、ガスクーラー2と、膨張機構3(キャピラリ、膨張弁など)と、蒸発器4とが流路5で順次接続された冷媒循環システムを少なくとも備えている。かかる冷媒循環システムにおいては、まず、冷媒圧縮機1から流路5内に吐出された高温(通常70~120℃)の冷媒が、ガスクーラー2にて高密度の流体(超臨界流体等)となる。続いて、冷媒は膨張機構3が有する狭い流路を通ることによって液化し、さらに蒸発器4にて気化して低温(通常-40~0℃)となる。
【0059】
図1中の冷媒圧縮機1内においては、高温(通常70~120℃)条件下、少量の冷媒と多量の冷凍機油とが共存する。冷媒圧縮機1から流路5に吐出される冷媒は、気体状であり、少量(通常1~10%)の冷凍機油をミストとして含んでいるが、このミスト状の冷凍機油中には少量の冷媒が溶解している(
図1中の点a)。次に、ガスクーラー2内においては、気体状の冷媒が圧縮されて高密度の流体となり、比較的高温(50~70℃前後)条件下で多量の冷媒と少量の冷凍機油とが共存する(
図1中の点b)。さらに、多量の冷媒と少量の冷凍機油との混合物は膨張機構3、蒸発器4に順次送られて急激に低温(通常-40~0℃)となり(
図1中の点c、d)、再び冷媒圧縮機1に戻される。
【0060】
本実施形態に係る冷凍機油は、上述の冷媒とともに使用することができるが、冷媒混合時の冷温特性及び相溶性の点で、特に炭化水素冷媒とともに好適に用いられる。同様の観点から、冷凍機用作動流体組成物は、特に好ましくは炭化水素冷媒を含有する。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0062】
以下に示す各成分を用いて、表1~4に示す組成(基油については基油全量基準での質量%、冷凍機油については冷凍機油全量基準での質量%)の冷凍機油を調製した。なお、実施例、比較例及び参考例の冷凍機油すべてにおいて、0.1質量%の2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールと、0.3質量%のグリシジルネオデカノエートとを添加した。
【0063】
(基油)
A1:ネオペンチルグリコールとn-オクタン酸とのエステル(40℃動粘度:7.4mm
2/s、非極性指数:38.5)
A2:ネオペンチルグリコールと2-エチルヘキサン酸とのエステル(40℃動粘度:7.5mm
2/s、非極性指数:38.5)
A3:2-エチルヘキサノールと2-エチルヘキサン酸とのエステル(40℃動粘度:2.7mm
2/s、非極性指数:41)
a1:ペンタエリスリトールと2-エチルヘキサン酸/3,5,5-トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸(質量比:50/50)とのエステル(40℃動粘度:67.4mm
2/s、非極性指数:65)
(添加剤)
B1:3-(ジイソブトキシ-チオホスホリルスルファニル)-2-メチル-プロピオン酸(下記式(3)で表される化合物)
【化4】
C1:トリクレジルホスフェート
【0064】
実施例、比較例及び参考例の各冷凍機油について、以下に示す手順で耐焼付き性を評価した。結果を表1~4に示す。
【0065】
(耐焼付き性の評価)
FALEX Pin/Vee-Block試験を実施した。回転数:290rpm、温度:60℃、油量:120mL、空気雰囲気の条件下で、300lbfの荷重の下で慣らし運転を5分間行い、次いで、荷重を加えていき、焼付きが発生した時点での荷重(lbf)を焼付き荷重とした。なお、試験片として、ASTM標準片を用いた。添加剤B1及び添加剤C1を含有しない場合(比較例1、比較例2-1、比較例3-1又は参考例2)の焼付き荷重を100としたときの、添加剤B1及び/又は添加剤C1を含有する場合の焼付き荷重を相対値として求めた。焼付き荷重の値が大きいほど、耐焼付き性の向上効果が大きいことを意味する。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
実施例1,2-1,2-2,3で示されるように、低粘度の冷凍機油の場合、式(1)で表される化合物を添加することで、大きな耐焼き付き性の向上効果が得られることが確認された。一方、参考例1,2で示されるように、低粘度の冷凍機油ではない場合、式(1)で表される化合物を添加しても、低粘度の冷凍機油の場合と比較して、耐焼き付き性の向上効果が小さいことが確認された。
【0071】
実施例2-1,2-2,3、比較例2-1,2-1,3-1,3-2、及び参考例1,2の各冷凍機油については、以下に示す手順で耐摩耗性も評価した。結果を表5に示す。
【0072】
(耐摩耗性の評価)
耐摩耗性は、ASTM D4172-94に準拠する高速四球試験により評価した。剛球としてSUJ2を用い、試験油量20mL、試験温度80℃、回転数1200rpm、負荷荷重196N、試験時間15分間の条件で試験を行い、固定球の摩耗痕径(mm)を測定した。摩耗痕径の値が小さいほど、耐摩耗性に優れていることを意味する。
【0073】
【0074】
また、実施例2-1又は2-2の冷凍機油におけるB1の含有量を0.05質量%又は0.1質量%とした以外は、実施例2-1又は2-2と同じ冷凍機油4種を得た。これらの冷凍機油の40℃における動粘度は、10mm2/s以下であった。これらの冷凍機油は、実施例2-1又は2-2と同様の耐焼き付き性や耐摩耗性の向上効果が認められたが、B1の含有量が多くなると安定性が悪化していく傾向にあることが示唆された。
【0075】
また、実施例2-1又は2-2の冷凍機油において、B1の代わりに下記式(4)で表される化合物を用いた以外は実施例2-1又は2-2と同じ冷凍機油4種を得た。これらの冷凍機油の40℃における動粘度は、10mm2/s以下であった。これらの冷凍機油は、実施例2-1又は2-2と同様の耐焼き付き性や耐摩耗性の向上効果が認められた。
【0076】
【0077】
また、実施例2-1又は2-2の冷凍機油において、C1をトリフェニルホスフェート、トリ(プロピルフェニル)ホスフェート、トリ(ブチルフェニル)ホスフェート又はトリフェニルホスフォロチオネートに代えた以外は実施例2-1又は2-2と同じ冷凍機油8種を得た。これらの冷凍機油の40℃における動粘度は、10mm2/s以下であった。これらの冷凍機油も、実施例2-1又は2-2と同様の耐焼き付き性や耐摩耗性の向上効果が認められた。
【符号の説明】
【0078】
1…冷媒圧縮機、2…ガスクーラー、3…膨張機構、4…蒸発器、5…流路、10…冷凍機。