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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/18 20060101AFI20221111BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
F02C7/18 C
F01D25/12 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020126388
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023442
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2020-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 祥太
(72)【発明者】
【氏名】沼田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】小金沢 知己
(72)【発明者】
【氏名】長橋 裕明
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-120504(JP,A)
【文献】特開2004-225688(JP,A)
【文献】特開2011-74924(JP,A)
【文献】特開2020-60119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器からタービンに燃焼ガスを導く尾筒と、
前記尾筒の前記タービン側の出口部に設置され、かつ、前記タービンの1段静翼エンドウォールと所定の間隙を有して対向して配置される額縁と、
前記額縁および前記1段静翼エンドウォールの各々と嵌合され、前記間隙に供給される冷却空気をシールするシール部材と、を備え、
前記額縁は、前記1段静翼エンドウォールに直接冷却空気を供給する冷却孔を有し、
前記冷却孔は、前記尾筒の背側に位置する額縁に設けられ、前記1段静翼エンドウォールの内周側の前記冷却孔の冷却空気の吹き出し口に対向する先端面に続く傾斜部に直接冷却空気を供給し、当該傾斜部をフィルム冷却およびインピンジ冷却により冷却する第1の冷却孔と、
前記尾筒の腹側に位置する額縁に設けられ、前記1段静翼エンドウォールの内周側の先端面に直接冷却空気を供給する第2の冷却孔と、を有し、
前記第1の冷却孔の前記額縁の内周面に対する傾斜角度と、前記第2の冷却孔の前記額縁の内周面に対する傾斜角度が異なることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記第1の冷却孔は、前記額縁の前記燃焼ガスの流れ方向に垂直な方向において、前記額縁の中央部の前記第1の冷却孔の孔径に対する配置ピッチの比が前記額縁の周辺部の前記第1の冷却孔の孔径に対する配置ピッチの比よりも小さいことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記第2の冷却孔は、前記額縁の前記燃焼ガスの流れ方向に垂直な方向において、前記額縁の中央部の前記第2の冷却孔の孔径に対する配置ピッチの比が前記額縁の周辺部の前記第2の冷却孔の孔径に対する配置ピッチの比よりも小さいことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項2または3に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記額縁の中央部の前記第1の冷却孔および前記第2の冷却孔の孔径に対する配置ピッチの比は3.1以下であり、前記額縁の周辺部の前記第1の冷却孔および前記第2の冷却孔の孔径に対する配置ピッチの比は4.0以下であることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記第1の冷却孔は、前記額縁の径方向において、前記額縁の内周面からの高さが異なる位置に複数に分割して設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記第1の冷却孔は、前記額縁の周方向において、隣接する冷却孔同士の高さが異なることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項7】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記第1の冷却孔は、前記額縁の内周面に対する傾斜角度が互いに異なる複数の冷却孔に分割して設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項8】
請求項7に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記第1の冷却孔は、前記額縁の周方向において、隣接する冷却孔同士の傾斜角度が異なることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項9】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記第1の冷却孔は、前記額縁の周方向において、所定の角度を有して複数に分割して設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項10】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記冷却孔は、前記額縁の径方向において、前記第1の冷却孔とは異なる角度で前記額縁の外周面と内周面を連通し、前記額縁の軸方向において、前記第1の冷却孔とはそれぞれ異なる前記額縁の外周面と内周面を連通する第3の冷却孔を有することを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項11】
請求項10に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記第1の冷却孔と前記第3の冷却孔は、前記額縁の周方向において、交互に配置されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン燃焼器の構造に係り、特に、尾筒の額縁構造に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な発電プラントやメカニカルドライブ向けのガスタービンでは、空気圧縮機から導入された高圧空気は、ディフューザから車室に導入され、燃焼器の燃焼用空気としてバーナ部で使用される分と燃焼器及びガスタービン本体の冷却用として使用される分に分かれて流入する。
【0003】
燃焼器において燃料と空気の混合空気の燃焼により生成された燃焼ガスは、尾筒(トランジションピース)からタービン翼に導入される。タービン翼に導入された高温高圧の燃焼ガスが断熱膨張する際に発生する仕事量をタービンにおいて軸回転力に転換することにより、発電機から出力を得る。
【0004】
また、この軸回転力を利用して、発電機の代わりに別の圧縮機を回転させることで、ガスタービンを流体圧縮の動力源として使用するメカニカルドライブ用途のプラントもある。
【0005】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「燃焼ガスが流れる燃焼ガス流路を画定するガスタービンの高温部品において、前記燃焼ガス流路に沿って隣接する他の高温部品と対向する端面から該他の高温部品に対して遠ざかる向きに凹み、且つ該端面の延在方向に延びる溝と、前記溝と前記燃焼ガス流路とに挟まれた領域中で、前記延在方向に延びる冷却通路と、前記溝と前記冷却通路とを接続する導入通路と、前記冷却通路と前記燃焼ガス流路とを接続する排出通路と、が形成されているガスタービンの高温部品」が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には「燃焼器尾筒の壁部において、燃焼ガスを排出する側である後端の前記燃焼器尾筒の外周に設けられるとともに、前記燃焼器尾筒の外側に突出する鍔と、当該鍔に嵌合するフック形状を有し、当該鍔に嵌合して固定されるとともに前記燃焼器尾筒の後端の端面と対向する位置に設けられる尾筒シールと、前記燃焼器尾筒の壁部の内部において前記燃焼器尾筒の軸方向に延びて設けられるとともに、少なくともその一部が前記燃焼器尾筒の後端の端面まで貫通し、その内部に冷却媒体を流す複数の冷却流溝と、前記燃焼器尾筒の後端の端面に設けられるとともに、前記燃焼器尾筒の後端まで貫通した形状の前記冷却流溝から前記冷却媒体が排出される貫通孔と、を備え、当該貫通孔から排出される前記冷却媒体が前記尾筒シールに吹き付けられる燃焼器冷却構造」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-221455号公報
【文献】特開2007-120504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃焼器のバーナとタービン翼を繋ぐ尾筒(トランジションピース)は高温の燃焼ガスにさらされるため、圧縮機吐出空気の一部を使い冷却する必要がある。一般的には、冷却孔からの空気膜で保護するフィルム冷却や、外面を圧縮機吐出空器で冷却し、内面の温度を下げる対流冷却などの構造が採用されている。
【0009】
また、タービン翼も同様に高温の燃焼ガスにさらされるため、翼内部の冷却構造やフィルム冷却などでメタル温度を下げる必要がある。
【0010】
しかしながら、燃焼器及びタービン翼でそれぞれ冷却空気を使うとガスタービンの効率低下や、燃焼用空気が少なくなることでバーナ部での局所的な燃料と空気の比率(燃空比)が高くなり、燃焼ガス温度が上昇し、メタル温度も高くなることが課題となる。局所的な燃焼ガス温度の上昇は、排ガス中のNOx(窒素酸化物)濃度上昇に繋がり、メタル温度の上昇は、高温部品の信頼性及び耐久性の低下に繋がる。
【0011】
上記特許文献1では、圧縮空気Aは静翼シュラウド(内側シュラウド45)の角部には接触しているものの、衝突角度から見てインピンジ冷却とは言い難く、静翼シュラウド(内側シュラウド45)の十分な冷却は困難である。また、額縁とタービン入り口にシール部材を介在させており、そのシール部材に冷却孔を設けている。
【0012】
上記特許文献2では、例えば、図11(c)に示されているように、尾筒の本体5と第一段静翼シュラウド16の冷却は考慮されているものの、一般的に尾筒の出口部に設置される額縁の冷却は考慮されていない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、尾筒額縁と1段静翼エンドウォールを効果的に冷却しつつ、低NOx化及び燃焼性能向上が可能なガスタービン燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、燃焼器からタービンに燃焼ガスを導く尾筒と、前記尾筒の前記タービン側の出口部に設置され、かつ、前記タービンの1段静翼エンドウォールと所定の間隙を有して対向して配置される額縁と、前記額縁および前記1段静翼エンドウォールの各々と嵌合され、前記間隙に供給される冷却空気をシールするシール部材と、を備え、前記額縁は、前記1段静翼エンドウォールに直接冷却空気を供給する冷却孔を有し、前記冷却孔は、前記尾筒の背側に位置する額縁に設けられ、前記1段静翼エンドウォールの内周側の前記冷却孔の冷却空気の吹き出し口に対向する先端面に続く傾斜部に直接冷却空気を供給し、当該傾斜部をフィルム冷却およびインピンジ冷却により冷却する第1の冷却孔と、前記尾筒の腹側に位置する額縁に設けられ、前記1段静翼エンドウォールの内周側の先端面に直接冷却空気を供給する第2の冷却孔と、を有し、前記第1の冷却孔の前記額縁の内周面に対する傾斜角度と、前記第2の冷却孔の前記額縁の内周面に対する傾斜角度が異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、尾筒額縁と1段静翼エンドウォールを効果的に冷却しつつ、低NOx化及び燃焼性能向上が可能なガスタービン燃焼器を実現することができる。
【0016】
これにより、信頼性及び耐久性に優れた高性能なガスタービン燃焼器を提供することができる。
【0017】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一般的なガスタービンの構成例を示す図である。
図2】一般的な燃焼器の構成例を示す図である。
図3】本発明の実施例1に係る尾筒の額縁構造を示す断面図である。
図4図3のB部拡大図である。
図5】本発明の実施例2に係る尾筒の額縁構造を示す断面図である。
図6図5のC-C’断面図である。
図7】本発明の実施例3に係る尾筒の額縁構造を示す断面図である。
図8図7のD-D’方向矢視図(透視図)である。
図9】本発明の実施例4に係る尾筒の額縁構造を示す断面図である。
図10図9のE-E’方向矢視図(透視図)である。
図11】本発明の実施例5に係る尾筒の額縁構造を示す断面図である。
図12図11のF-F’方向矢視図(透視図)である。
図13】本発明の実施例6に係る尾筒の額縁構造を示す断面図である。
図14図13のG-G’方向矢視図(透視図)である。
図15】従来の尾筒の額縁構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0020】
先ず、図1図2及び図15を参照して、本発明の対象となるガスタービン燃焼器と従来の問題点について説明する。図1は、一般的なガスタービンの構成例を示す図である。図2は、一般的な燃焼器の構成例を示す図であり、尾筒(トランジションピース)4及び額縁6を含む燃焼器として示している。図15は、従来の尾筒の額縁構造を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、ガスタービンは大きく分けて圧縮機1、燃焼器2およびタービン3から構成されている。圧縮機1は大気から吸い込んだ空気を作動流体として断熱圧縮し、燃焼器2は圧縮機1から供給された圧縮空気に燃料を混合し燃焼させることで高温高圧の燃焼ガスを生成し、タービン3では燃焼器2から導入された燃焼ガスが膨張する際に回転動力を発生する。タービン3からの排気は大気中に放出される。
【0022】
図2に示すように、燃焼器2とタービン3の間には、燃焼器2からタービン3に燃焼ガスを導く尾筒(トランジションピース)4が設けられている(燃焼ガスの流れ方向5)。尾筒(トランジションピース)4の周囲には、図示しないフロースリーブが設けられている。圧縮機1から吐出された冷却空気をフロースリーブと尾筒(トランジションピース)4の間に取り込み、フロースリーブと尾筒(トランジションピース)4の間に形成される冷却空気の流路を冷却空気が流れることで、尾筒(トランジションピース)4が冷却される。尾筒(トランジションピース)4のタービン3側の出口部には、補強部材である額縁6が設置されている。
【0023】
図15に示すように、従来の額縁6は、1段静翼エンドウォール10(一般に「リテーナリング」とも呼ぶ)と所定の間隙を有して対向して配置され、額縁6及び1段静翼エンドウォール(リテーナリング)10の各々は、間隙に供給される冷却空気をシールするシール部材11とそれぞれ嵌合されている。
【0024】
額縁6には、上述したフロースリーブと尾筒(トランジションピース)4の間を流れる冷却空気の一部を取り込む冷却孔26,28が設けられており、冷却孔26,28の内部を冷却空気が流れ方向27,29の方向へ流れることで、額縁6が冷却される。
【0025】
この額縁6に設けられる冷却孔26,28は、額縁6の冷却を目的として尾筒4(額縁6)の外周側から内周側のガスパス面(燃焼ガスの流れ面)に向けて加工されている。
【0026】
一方、1段静翼エンドウォール10の冷却は、1段静翼エンドウォール10に設けられた冷却スリット(図示せず)等によりメタル温度の低減が図られており、この冷却スリットにも冷却空気を供給する必要があり、ガスタービン全体の効率低下を招いている。
【0027】
次に、図3及び図4を参照して、本発明の実施例1における尾筒の額縁構造を説明する。図3は、図2のA部拡大図であり、本実施例の尾筒の額縁構造を示す断面図である。図4は、図3のB部拡大図である。
【0028】
本実施例のガスタービン燃焼器は、図3及び図4に示すように、燃焼器2からタービン3に燃焼ガスを導く尾筒4と、尾筒4のタービン3側の出口部に設置され、かつ、タービン3の1段静翼エンドウォール10と所定の間隙を有して対向して配置される額縁6と、額縁6及び1段静翼エンドウォール10の各々と嵌合され、間隙に供給される冷却空気をシールするシール部材11を備えている。
【0029】
額縁6には、1段静翼エンドウォール10の内部を貫通するように直接冷却空気を供給する冷却孔12が設けられており、冷却孔12の内部を冷却空気が流れ方向13の方向へ流れることで、額縁6が内部から冷却されると共に、1段静翼エンドウォール10が冷却される。
【0030】
本実施例のガスタービン燃焼器は、以上のように構成されており、額縁6と1段静翼エンドウォール10の両方を効果的に冷却しつつ、高温部品の冷却に使用される冷却空気を低減し、燃焼用空気が少なくなることによる局所的な燃焼ガス温度の上昇を抑制することができる。これにより、ガスタービンの信頼性及び耐久性向上、低NOx化、燃焼性能向上が図れる。
【0031】
なお、図4に示すように、冷却孔12は、1段静翼エンドウォール10の内周側の傾斜部に直接冷却空気を供給するように、額縁6の内周面に対して所定の傾斜角度を有して設けるのが望ましい。1段静翼エンドウォール10の内周側の傾斜部は薄肉化されており、高温の燃焼ガスにより高温酸化減肉、熱応力によるクラック等が発生しやすいためである。また、フィルム冷却だけでなく、インピンジ冷却の効果も得ることができ、冷却効率を高くすることができる。
【実施例2】
【0032】
図5及び図6を参照して、本発明の実施例2における尾筒の額縁構造を説明する。図5は、本実施例の尾筒の額縁構造を示す断面図であり、尾筒4の背側と腹側についてそれぞれ示している。図6は、図5のC-C’断面の略半分を示す断面図である。
【0033】
本実施例のガスタービン燃焼器は、図5に示すように、尾筒4の背側に位置する額縁6に設けられた冷却孔12の額縁6の内周面に対する傾斜角度と、尾筒4の腹側に位置する額縁6に設けられた冷却孔12の額縁6の内周面に対する傾斜角度が異なるように構成されている。
【0034】
このように、尾筒4の背側と腹側のそれぞれの冷却孔12の額縁6の内周面に対する傾斜角度を変えることで、尾筒4の背側と腹側で1段静翼エンドウォール10のそれぞれの所望の部位、例えば、特に高温になりやすい部位に直接冷却空気を供給することができる。
【0035】
また、尾筒4の背側に位置する額縁6に設けられた冷却孔12は、1段静翼エンドウォール10の内周側の傾斜部に直接冷却空気を供給し、尾筒4の腹側に位置する額縁6に設けられた冷却孔12は、1段静翼エンドウォール10の内周側の先端部に直接冷却空気を供給するように構成してもよい。
【0036】
なお、図6に示すように、尾筒4の背側に位置する額縁6に設ける冷却孔12は、額縁6の燃焼ガスの流れ方向5に垂直な方向において、額縁6の中央部の冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)が額縁6の周辺部の冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)よりも小さくなるように設けるのが望ましい。
【0037】
同様に、尾筒4の腹側に位置する額縁6に設ける冷却孔12は、額縁6の燃焼ガスの流れ方向5に垂直な方向において、額縁6の中央部の冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)が額縁6の周辺部の冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)よりも小さくなるように設けるのが望ましい。
【0038】
一般に、額縁6の中央部周辺部よりも温度が高いため、中央部の冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)を周辺部よりも小さくすることで、中央部に供給される冷却空気が増えて、額縁6の中央部及び対向する1段静翼エンドウォール10を効果的に冷却することができる。
【0039】
さらに、図6に示すように、額縁6の中央部の冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)を3.1以下とし、額縁6の周辺部の冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)を4.0以下となるようにするのがより好適である。このように構成することで、額縁6の周辺部では隣り合う冷却孔12からの噴出空気が冷却フィルムを形成して1段静翼エンドウォール10を確実に冷却することができると共に、中央部に供給される冷却空気を増やして中央部を効果的に冷却することができる。
【0040】
冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)を4.0以下とすることにより、隣り合う冷却孔からの噴出空気が周方向に途切れなく冷却フィルムを形成することで1段静翼エンドウォール10を確実に冷却することができる。
【0041】
以上説明したように、1段静翼エンドウォール10の必要冷却空気量によって、冷却孔径Dと配置ピッチPを複数の範囲でそれぞれ設定することで冷却空気の配分量を最小限にすることができる。
【0042】
なお、冷却孔12の孔径に対する配置ピッチの比(配置ピッチP/孔径D)は一定である必要はなく、燃焼ガス温度の周方向分布などに合わせて、異なるP/Dや冷却孔径で配置することでさらに冷却空気量を削減することも可能である。
【実施例3】
【0043】
図7及び図8を参照して、本発明の実施例3における尾筒の額縁構造を説明する。図7は、本実施例の尾筒の額縁構造を示す断面図である。図8は、図7のD-D’方向矢視図(透視図)である。
【0044】
本実施例のガスタービン燃焼器では、図7に示すように、冷却孔は、額縁6の径方向において、額縁6の内周面からの高さが異なる位置に複数に分割して冷却孔14,16として設けられている。尾筒と1段静翼エンドウォールは部品の製作公差、組立による微小な組立ズレが発生することもあるため、ズレ発生時もそれぞれの燃焼器缶で狙いの位置へ冷却空気を供給することが可能である。
【0045】
また、図8に示すように、額縁6の内周面からの高さが異なる位置に設けられる複数の冷却孔14,16は、額縁6の周方向において、隣接する冷却孔同士の高さが異なるように配置されている。
【0046】
本実施例のガスタービン燃焼器は、以上のように構成されており、1段静翼エンドウォール10の額縁6と対向する面を全周に渡り満遍なく冷却することができる。
【実施例4】
【0047】
図9及び図10を参照して、本発明の実施例4における尾筒の額縁構造を説明する。図9は、本実施例の尾筒の額縁構造を示す断面図である。図10は、図9のE-E’方向矢視図(透視図)である。
【0048】
本実施例のガスタービン燃焼器では、図9に示すように、冷却孔は、額縁6の内周面に対する傾斜角度が互いに異なる複数の冷却孔18,20に分割して設けられている。
【0049】
また、図10に示すように、額縁6の内周面に対する傾斜角度が互いに異なる複数の冷却孔18,20は、額縁6の周方向において、隣接する冷却孔同士の傾斜角度が異なるように配置されている。
【0050】
本実施例のガスタービン燃焼器は、以上のように構成されており、1段静翼エンドウォール10の額縁6と対向する面を全周に渡り満遍なく冷却することができる。
【実施例5】
【0051】
図11及び図12を参照して、本発明の実施例5における尾筒の額縁構造を説明する。図11は、本実施例の尾筒の額縁構造を示す断面図である。図12は、図11のF-F’方向矢視図(透視図)である。
【0052】
本実施例のガスタービン燃焼器では、図11に示すように、額縁6の周方向において、所定の角度を有して(斜めに)複数に分割して設けられている。額縁のメタル温度が高いことが問題となる場合、燃焼器軸方向と平行な冷却孔仕様と比べ、冷却空気量を増やさずに額縁メタル温度を低減することが可能である。
【実施例6】
【0053】
図13及び図14を参照して、本発明の実施例6における尾筒の額縁構造を説明する。図13は、本実施例の尾筒の額縁構造を示す断面図である。図14は、図13のG-G’方向矢視図(透視図)である。
【0054】
本実施例のガスタービン燃焼器では、図13に示すように、冷却孔は、額縁6の径方向において、第1の角度(所定の角度)で額縁6の外周面と内周面を連通する冷却孔24と、額縁6の軸方向において、第2の角度(第1の角度とは異なる角度)で冷却孔24とはそれぞれ異なる額縁6の外周面と内周面を連通する冷却孔12を有して構成されている。
【0055】
また、図14に示すように、冷却孔24冷却孔12は、額縁6の周方向において、交互に配置されている。
【0056】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…圧縮機
2…燃焼器
3…タービン
4…尾筒(トランジションピース)
5…燃焼ガスの流れ方向
6…額縁
7…額縁サポート
8…筐体
9…固定部材
10…1段静翼エンドウォール(リテーナリング)
11…シール部材
12,14,16,18,20,22,24,26,28…冷却孔
13,15,17,19,21,23,25,27,29…冷却空気の流れ方向
図1
図2
図3
図4
図5
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