(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】医療用容器に含まれる組成物を選択的に注射するための補助注入デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20221111BHJP
A61M 5/48 20060101ALI20221111BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20221111BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A61M5/315 510
A61M5/48 500
A61M5/24 500
A61M5/20 510
A61M5/315 500
(21)【出願番号】P 2020502607
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2018069713
(87)【国際公開番号】W WO2019016351
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク カレル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ガリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ペロー
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/031627(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/054916(WO,A1)
【文献】特表2001-513688(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0025032(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/48
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用容器(30)に含まれる組成物を注入するための補助注入デバイス(1)であって、
- 主本体(10)に対して固定された位置で医療用容器(30)を受け入れるように適合された主本体(10)であって、歯付き表面(14)を設ける内壁を備える主本体(10)と、
- ピストン(40)であって、
・ 内側ばね仕掛けピストンロッド(50)と、
前記内側ばね仕掛けピストンロッド(50)に接続され、ロック部材を設け、前記内側ばね仕掛けピストンロッド(50)の周りに同軸に延びる外側ピストン本体(60)とを含む第1の部分であって、前記内側ばね仕掛けピストンロッド(50)および前記外側ピストン本体(60)は、前記内側ばね仕掛けピストンロッド(50)が前記医療用容器(30)のストッパ(34)と係合し、前記医療用容器(30)の前記ストッパ(34)を押す近位の静止位置と遠位の作動位置との間で並進移動可能である第1の部分と、
・ 前記内側ばね仕掛けピストンロッド(50)と前記外側ピストン本体(60)との間に配置され、押圧部材(75)を備える第2の部分であって、前記第2の部分(70)は前記第1の部分に対して、前記押圧部材(75)が歯付き表面(14)と摩擦係合してロック部材(65)近位を半径方向外側に押圧する第1の位置と、前記押圧部材(75)が前記ロック部材(65)から離れており、前記ロック部材(65)の半径方向内側への移動と前記歯付き表面(14)との摩擦係合の解除を可能にする遠位の第2の位置との間で選択的に摺動可能である第2の部分と、を備えるピストン(40)と、
- 前記ピストン(40)の前記第2の部分(70)に接続されて、前記近位の第1の位置と前記遠位の第2の位置との間で前記第2の部分を選択的に移動させるように適合された作動手段と、
を備えることを特徴とする補助注入デバイス。
【請求項2】
前記ロック部材(65)は、少なくとも1つの可撓性タブを含み、前記押圧部材(75)は、フレアスカートを含み、前記第2の部分(70)が前記遠位の第2の位置にあるとき、前記可撓性タブは半径方向内向きに撓むことを特徴とする請求項1に記載の補助注入デバイス。
【請求項3】
前記作動手段は、前記内側
ばね仕掛けピストンロッド(50)の近位端に取り付けられたばね仕掛けボタン(80)を含み、前記第2の部分(70)は、前記ばね仕掛けボタン(80)を押すかまたは放すことによって選択的に摺動可能であることを特徴とする請求項1に記載の補助注入デバイス。
【請求項4】
前記第2の部分(70)はばね仕掛けボタン(80)の対応する凹部(82)に収容された少なくとも2つのアーム(71)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の補助注入デバイス。
【請求項5】
前記第2の部分(70)は、前記第2の部分(70)が前記遠位の第2の位置にあるとき、前記第2の部分(70)を前記外側ピストン本体(60)に対して少なくとも遠位側でブロックするための前記外側ピストン本体(60)に設けられた半径方向開口部(68)にクリップすることによって挿入されるように構成された少なくとも2つのクリップタブ(73)を含むことを特徴とする請求項1に記載の補助注入デバイス。
【請求項6】
前記主本体(10)は、前記主本体(10)と同軸の内側本体(13)を備え、前記内側本体(13)は、前記内側ばね仕掛けピストンロッド(50)
がばね(51)のばね力によって摺動移動可能
な内側ハウジング(16)を画定し、前記内側本体(13)と前記主本体(10)との間の外側ハウジング(17)は、前記外側ピストン本体(60)および前記第2の部分(70)が移動可能であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の補助注入デバイス。
【請求項7】
前記歯付き表面(14)の各歯(15)は、遠位方向に半径方向外向きに広がっていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の補助注入デバイス。
【請求項8】
前記主本体(10)は、容器ホルダーシステム(20)を備え、前記容器ホルダーシステム(20)は、前記近位の静止位置から前記遠位の作動位置に移動するとき、前記内側
ばね仕掛けピストンロッド(50)は前記医療用容器(30)の前記ストッパ(34)に係合し、前記医療用容器(30)の前記ストッパ(34)を押して組成物を注入し、前記医療用容器(30)の少なくとも一部を受け入れ、前記医療用容器(30)を前記内側
ばね仕掛けピストンロッド(50)の移動方向に合わせて保持するように構成されたことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の補助注入デバイス。
【請求項9】
容器ホルダーシステム(20)は、
- 前記医療用容器(30)の少なくとも一部を収容し、前記医療用容器(30)を前記内側
ばね仕掛けピストンロッド(50)の移動方向と整列した固定位置に維持するように構成されたハウジング(22)に接続する前記主本体(10)
の外壁に設けられるスロット(21)と、
- 前記主本体(10)
の遠位壁に設けられ、前記スロット(21)と連続し、前記スロット(21)から前記遠位壁に延び、前記主本体(10)の前記遠位壁に設けられた貫通溝(23)であって、前記スロット(21)を介して前記ハウジング(22)に挿入された前記医療用容器(30)を案内するように構成される溝(23)と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の補助注入デバイス。
【請求項10】
前記主本体(10)は、ユーザの手に保持されるように構成されており、前記ピストン(40)は、前記作動手段が作動するとき、ユーザによって遠位方向に押され、前記内側
ばね仕掛けピストンロッド(50)の前記遠位の作動位置への移動を加速するように構成される近位端を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の補助注入デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療用容器に含まれる組成物を注入するための補助注入デバイスに関する。注入デバイスは、ユーザが注入を選択的に許可または静止することによって、組成物、特に高粘度の組成物を注入するための労力を減らす必要があるユーザにとって注入を容易にし、注入を実行しながら注入速度を制御する。
【背景技術】
【0002】
事前充填注入デバイスは、患者に薬やワクチンを送達するための一般的な容器であり、シリンジ、カートリッジ、自動注入器などが含まれる。それらは通常、容器に滑り係合する密封ストッパを備え、容器は、患者にすぐに使用できる注入デバイスを施術者に提供するために医薬組成物で満たされている。
【0003】
容器は、実質的に円筒形形状を有し、密封ストッパによって栓止めできる近位端と、医薬組成物が容器から排出される遠位端と、容器の近位端と遠位端との間に延びる側壁とを備えている。実際には、密封ストッパは、ピストンロッドによって加えられる圧力によって、容器本体の近位端から容器本体の遠位端に向かって移動することを目的とし、それにより容器本体に含まれる薬を放出する。
【0004】
患者の体への注入の直前にバイアルに保存された医薬組成物で満たされた空の注入デバイスと比較すると、事前充填された注入デバイスの使用は、いくつかの利点をもたらす。特に、注入前の準備を制限することにより、事前充填注入デバイスは、医療投薬のエラーの低減、微生物汚染のリスクの最小化、および施術者のために使用の利便性の向上を提供する。さらに、そのような事前充填された容器は、患者による自己投与を促進および単純化し、治療のコストを削減し、患者の遵守を増加させることができる。最終的に、事前充填注入デバイスは、医薬組成物がバイアルから事前充填注入デバイスに移されるときに通常生じる貴重な医薬組成物の損失を減らす。これにより、医薬品の特定の製造のバッチに対して、より多くの注入が可能になり、購入及およびサプライチェーンのコストが削減される。
【0005】
特定の場合、組成物を放出するためにピストンロッドに加える必要がある力のために、シリンジなどの手動注入デバイスによる容器に含まれる組成物の注入は、実行するのが難しい場合がある。これは、例えば、組成物の粘度が高い場合、および/またはピストンロッドを指で十分強く推すことができないユーザが手動で注入を行う場合に発生する。注入は、自己注入であってもよく、医療従事者などのユーザが別の人に行ってもよい。粘性のある薬を患者にくり返し注入する医療従事者の場合、注入を行うためにピストンロッドに大きな力を加える必要がある同じジェスチャーを繰り返すと、繰り返し損傷を引き起こす可能性がある。
【0006】
自動注入器は、ユーザが組成物の自動注入を実行するのを支援することができる。これらは通常、ユーザが注入を開始するために押す必要がある注入ボタンを備えている。
【0007】
自動注入器で実行される注入は自動であり、ユーザが注入ボタンを押してピストンを移動させると、注入が開始され、組成物全体が注入されるまで続けられる。
【0008】
その結果、ユーザがボタンを押すことによって注入を引き起すと、注入が静止され再開することができない。特に、医薬組成物の画分のマルチ注入シーケンスを実行しながら、2つの連続するシーケンスの間で注入を静止することもできない。
【0009】
さらに、ユーザは自動注入器で注入を実行している間、注入レート(または注入速度)を変更することができない。言い換えると、注入の実行中に注入レートを増加または減少することはできない。
【0010】
この注入の制御の欠如は、ユーザに痛みと不安を生じさせる可能性があり、ユーザが正しく注入を実行できなくなる可能性がある。
【0011】
さらに、手動注入デバイスと同様に、自動注入器は、主に注入機構によってピストンロッドに加えられる不十分な力のために、高粘度の組成物を注入するのに困難に直面する可能性がある。したがって、組成物は容器から排出されないか、せいぜい非常に低速で排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を考慮して、医療用容器に含まれる組成物を注入するための注入デバイスが強く必要であり、これにより、ユーザは注入を制御でき、特に注入をやめてから再開することができる。特に、組成物の粘度が高い場合、および/またはユーザの体力が低下している場合、既存の注入デバイスと比較して組成物の注入を容易にする注入デバイスの必要性もある。
【0013】
本発明の別の目的は、注入を実行しながら注入レートを調整できる注入デバイスを提案することでもある。
【0014】
したがって、本発明の目的は、既知のデバイスの欠点を克服する医療容器に含まれる組成物を注入するための注入デバイスを提供することである。
【0015】
そのような改善されたデバイスは、容器内に含まれる組成物の容易な注入を実行するとともに、注入を制御するためにユーザを支援することを可能にする。
【0016】
本発明の1つの目的は、医療用容器に含まれる組成物を注入するための補助注入デバイスであり、補助注入デバイスは、
- 本体に対して固定された位置で医療用容器を受け入れるように適合された主本体であって、歯付き表面を備える内壁を備える主本体と、
- ピストンであって、
・ 内側ばね仕掛けピストンロッドと、ロック部材を備えた外側ピストン本体と、を含む第1の部分であって、内側ばね仕掛けピストンロッドおよび外側ピストン本体は主本体内で、近位の静止位置と、内側ばね仕掛けピストンロッドが医療用容器のストッパと係合し、医療用容器のストッパを押す遠位の作動位置との間で並進移動可能である第1の部分と、
・ 内側ばね仕掛けピストンロッドと外側ピストン本体の間に配置され、押圧部材を備える第2の部分であって、第2の部分は第1の部分に対して、押圧部材が歯付き表面と摩擦係合してロック部材近位を半径方向外側に押圧する第1の位置と、押圧部材がロック部材から離れており、ロック部材の半径方向内側への移動と歯付き表面との摩擦係合の解除を可能にする遠位の第2の位置との間で選択的に摺動可能である第2の部分と、を備えるピストンと、
- ピストンの第2の部分に接続されて、近位の第1の位置と遠位の第2の位置との間で第2の部分を選択的に移動させるように適合された作動手段と、
を備える。
【0017】
本発明のデバイスの他の任意の特徴によれば、
- 外側ピストン本体は、内側ばね仕掛けピストンロッドの周りに同軸に延びており、内側ばね仕掛けピストンロッドに接続されている、
- ロック部材は、少なくとも1つの可撓性タブを含み、押圧部材はフレアスカートを含み、第2の部分が遠位の第2の位置にあるとき、可撓性タブは半径方向内側に撓む、
- 作動手段は、内側ピストンロッドの近位端に取り付けられたばね仕掛けボタンを含み、第2の部分は、ばね仕掛けボタンを押したり離したりすることによって選択的に摺動可能である、
- 第2の部分は、ばね仕掛けボタンの対応する凹部に収容された少なくとも2つのアームを備えている、
- 第2の部分は、第2の部分が遠位第2の位置にあるとき、外側ピストン本体に対して少なくとも遠位で第2の部分をブロックするために、外側ピストン本体に設けられた半径方向の開口にクリップすることによって挿入されるように構成された少なくとも2つのクリップタブを含む、
- 主本体は、主本体と同軸の内側本体を備え、内側本体は、内側ばね仕掛けピストンロッドがばねのばね力によって内側に摺動移動可能な内側ハウジングを画成し、内側本体と主本体との間の外側ハウジングであって、内側ピストン本体および第2の部分が内部で移動可能である、
- 歯表面の各歯は遠位方向の半径方向外側に広がっている、
- 主本体は、医療用容器の少なくとも一部を受け入れ、医療用容器を内側ピストンロッドの移動方向に合わせて保持するように構成された容器ホルダ―システムを備え、近位の静止位置から遠位の作動位置に移動するとき、内側ピストンロッドが医療用容器のストッパと係合し、医療用容器のストッパを押して組成物を注入する、
- 容器ホルダ―システムであって、
- 医療用容器の少なくとも一部を収容し、医療用容器を内側ピストンロッドの移動方向と整列した固定位置に維持するように構成されたハウジングに接続する主本体の外壁に設けられるスロットと、
- 主本体の遠位壁に設けられ、スロットと連続し、スロットから遠位壁に延び、主本体の遠位壁に設けられた貫通溝であって、スロットを介してハウジングに挿入された医療容器を案内するように構成される貫通溝と、
を備える、
- 主本体は、ユーザの手に保持されるように構成されており、ピストンは、作動手段が作動するときユーザによって遠位方向に押され内側ピストンロッドの遠位の作動位置への移動を加速するように構成される近位端を含む。
【0018】
この用途において、「遠位方向」は本発明のデバイスが取り付けられる医療用容器に関して、注入方向を意味すると理解されるべきである。遠位方向は、注入中のピストンロッドの移動方向に対応し、最初に医療容器に含まれていた医療用組成物は、ピストンロッドから排出される。「近位方向」とは、注入方向と反対方向を意味すると理解されるべきである。
【0019】
さらに、本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の注入デバイスの実施形態の側面全体図である。
【
図4】
図4は、デバイスの側面断面図であり、遮断システムはピストンロッドを近位静止位置で遮断し、外側ピストン本体の可撓性タブおよび中間ピストン本体のフレアスカートの拡大図とともに示す。
【
図5】
図5は、デバイスの側面断面図であり、遮断システムが解除され、ピストンロッドが作動位置に移動し、外側ピストン本体の可撓性タブおよび中間ピストン本体のフレアスカートの拡大図とともに示す。
【
図6】
図6は、注入の終了時のデバイスの側面断面図である。
【
図7】
図7は、容器ホルダ―システムの実施形態によるデバイスの斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すデバイスの側面全体図であり、医療容器が容器ホルダ―システムに挿入されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、医療用容器に含まれる組成物を注入するための補助注入デバイスを提案する。
【0022】
注入の前に、医療用容器は注入されることを意図された組成物で満たされ、そこに挿入されたストッパ34で栓をされる。次いで、栓をされた医療用容器30がデバイスに取り付けられ、組成物の注入を実行することができる。
【0023】
図1を参照すると、注入デバイス1は、縦軸(A)に沿って延びる円筒形状の主本体10を備える。主本体10は、軸(A)から半径方向外向きに延びるフランジ12によって近位に制限されたグリップ表面11を備えた周壁19を含む。したがって、デバイス1を使用する場合、ユーザは、ユーザの手のひらがグリップ表面11に接触し、ユーザの手の上端がフランジ12に当接するように主本体10を容易に掴むことができ、このように、デバイスの取り扱いが容易になる。または、ユーザは、通常のシリンジを保持するように、ユーザの人差し指と中指の両方でグリップ表面11を保持し、両方ともフランジ12に隣接することができる。したがって、デバイスは、手持ち式であり、デバイスの寸法と重量は、この目的に有利に適合している。
【0024】
医療用容器30は、近位端31と、先端32とそこから延びるニードル33とを有する遠位端とを含む本体35を備える。ニードル33は、使用前に取り扱われるときに怪我を防止するようにキャップ(図示せず)で覆われていてもよい。
【0025】
主本体10は、容器ホルダーシステム20を備えている。
【0026】
図1および
図2に示されている実施形態によれば、容器ホルダーシステム20は、医療用容器30の近位端31を受け入れるように適合されたハウジング22につながる本体の外壁に設けられたスロット21を含む。
【0027】
容器ホルダーシステム20は、主本体10の遠位壁18に設けられ、スロット21を連続し、スロット21から主本体の遠位壁に延びる貫通溝23をさらに含む。実際には、容器30の近位端は、スロット21を通って挿入され、容器30が主本体10に対してハウジング22内の固定位置になるまで溝23に沿って半径方向に移動する。溝23は、医療用容器30の近位端31が当接する2つの突出部24を分離し、それにより医療用容器40がデバイスから落下するのを防止している。
【0028】
このため、溝23の内側表面は、容器30の本体に接触する。特に、溝23は、ユーザによって容器を移動されない限り、ここに挿入された容器30が半径方向に移動するのを防止するように構成することができる。溝は、好ましくは、例えば硬質プラスチックまたは金属(アルミニウム、ステンレス鋼)など硬質で滑らかな金属でできており、容器の挿入をより容易にし、注入中のハウジング22の静止位置の容器を静止位置に維持するのに貢献する。
【0029】
スロット21および溝23の両方の構造は、デバイス1によって栓をされるように意図された容器30のタイプに従って適合され得る。
【0030】
この実施形態は、容器30の近位端31が突出部24に当接するフランジであるため、医療用容器30がシリンジなどである場合に特に有用である。
【0031】
あるいは、容器30がシリンジなど(近位シリンジを除く)である場合、容器ホルダーシステム20の構成はそれに応じて適合してもよい。
【0032】
図7および
図8に示す他の実施形態によれば、スロット21およびハウジング22の寸法は、そこに挿入された医療用容器30の本体35全体を受け入れるように適合され、一方、容器30の先端32は、医療用容器30が本体10に対して静止位置を維持されるハウジング22内に配置されるまで、溝23に沿って半径方向に移動する。容器30がハウジング22内に配置されると、ショルダー36(本体35と先端32の間)が突出部24に当接し、それにより医療用容器30がデバイス1から脱落するのを回避する。有利には、この状況では、医療用容器30の先端32およびニードル33のみがデバイスの主本体10から遠位方向に突出する。当然ながら、この実施形態は医療用容器30がシリンジなどであり、それに応じてハウジング22が医療用容器のフランジを収容するように適合される場合にも適切であり得る。
【0033】
当然ながら、本発明の範囲から逸脱することなく、容器ホルダーシステムの他の実施形態が可能である。例えば、医療用容器30は、本体10の遠位壁18に設けられた開口部を通して長手方向に挿入され、主本体10の周壁19に設けられたスロットに半径方向に挿入された挿入部で固定され得る。
【0034】
デバイス1は、主本体10内で軸(A)に沿って並進移動可能なピストン40と、好ましくは、ピストン40の近位端に取り付けられたばね仕掛けボタン80を含む作動手段とを備える。
【0035】
図2および
図3を参照すると、主本体10は、その内壁に沿って歯付き表面14を備え、軸(A)に沿って本体の内側に延び、本体に対して固定された内側本体13を含む。内側本体13は内側ハウジング16を画定し、主本体10は内側本体と共にその間に延びる外側ハウジング17を画成する。
【0036】
ピストン40は2つの部分に分かれている。ピストンの第1の部分は、軸(A)に沿って内側本体13の内側に延びる内側ピストンロッド50を含む。ばね51は内側本体13の内側に同軸に配置され、内側ピストンロッド50と接触する。そのようにして、内側ばね仕掛けピストンロッド50は、内側ピストンロッド50が係合する近位静止位置と遠位動作位置との間で、軸(A)に沿ったばね51の力の下で、内側本体13内で摺動可能である医療用容器30のストッパ34は医療用容器内のストッパを押し、ばね51の近位端は、内側ピストンロッドの遠位端に取り付けられたリング52で内側ピストンロッド50に固定され、内側ピストンロッド50に設けられた凹部54に挿入されたネジ53でその上に固定される。当然ながら、凹部に挿入されたネジ以外の固定手段は、本発明の範囲から逸脱することなく使用可能である。
【0037】
さらに、ピストンの第1の部分は、内側ピストンロッドから距離を置いて、内側ピストンロッド50と同軸にその周りに延びる円筒形状の外側ピストン本体60を含む。外側ピストン本体60は、外側ハウジング17に収容され、それにより、主本体10と内側本体13との間に延びて歯付き表面に面し、内側ピストンロッド50と共に外側ハウジング17内で並進移動可能である。
【0038】
外側ピストン本体60の近位端は、外側ピストン本体から半径方向外側に延びるフランジ部分61を形成し、そこから延びる内側ピストンロッド50の近位端に接続される。外側ピストン本体60は、内側ピストンロッド50と一体であることが有利である。
【0039】
外側ピストン本体60の近位端は、好ましくは、凹部67内に配置され、内側ピストンロッド50と同軸であり、フランジ部分61から近位に延びるスタッド62が設けられている。ボタン80は、スタッドの周りに配置されたばね81によりスタッド62に取り付けられている。
【0040】
2つの開口部63が、外側ピストン本体60の近位端に設けられ、各々が近位端を横切る通路を形成する。2つの開口部63は、スタッド62から半径方向に延び、スタッドに対して対称である。
【0041】
外側ピストン本体内の遠位端には、歯付き表面14と摩擦係合するように、半径方向外側に、すなわち、軸(A)から離れて延びるように適合されたロック部材が設けられている。
【0042】
図1から
図6に示す実施形態によれば、ロック部材は、軸方向ノッチ69によって分離された複数の可撓性タブ65を含むスカート64であり、歯付き表面14と摩擦係合するように半径方向外側に広がるように適合される。この目的のために、可撓性タブ65は、歯付き表面14の歯15の形状と実質的に相補的な形状を有するフック66を含む。さらに、歯付き表面14の歯15は、遠位方向に半径方向内側に優先的に広がり、その結果、可撓性タブ65は、歯15の広がり部分に当接しない。
【0043】
あるいは、歯15は、近位方向に半径方向内側に広がっていてもよい。 そのような場合、各歯は、可撓性タブ65の遠位端が当接する当接面によって遠位に隣接する歯から分離される。本体に対するピストンロッド50のブロック位置は、歯付き表面14のピッチに依存し、これは2つの隣接する当接面間の距離として定義される。歯付き表面のピッチは、組成物の単位用量に関連付けられてもよいため、ユーザは、単位用量の数を調整することにより、注入される組成物の量を制御することができる。
【0044】
ピストン40の第2の部分70は、円筒形状であり、第1の部分の内側ピストンロッド50と外側ピストン本体60との間に延び、第1の部分および主本体10に対してその中で摺動可能である。
【0045】
第2の部分70の近位端は、外側ピストン本体60の近位端の開口部63を通して、ボタン80の遠位表面に設けられ、アーム71の形状に対応する形状の凹部82に挿入されるように構成された2つの正反対のアーム71を備える。放射状の貫通穴72がアーム71に設けられ、対応する放射状の穴83がボタン80に設けられ、ボタンの直径およびアームの穴72と位置合わせされる。ピン(図示せず)は、ボタン80をアーム71に固定するために、アームの穴72およびボタンの穴83を通して挿入される。
【0046】
第2の部分70の近位端は、アーム71の間に配置された2つの正反対のクリップタブ73をさらに含む。クリップタブ73は、可撓性であり、外側ピストン本体60に設けられた正反対の半径方向開口部68にクリップすることによって挿入されるように構成された近位端に突起74を含み、突起74は半径方向開口部68の遠位部に当接できる。それにより、外側ピストン本体60に対して遠位に第2の部分70をブロックする。さらに、突出部は、半径方向開口部68の側面部分に有利に当接し、第2の部分70が外側ピストン本体60に対して回転するように固定される。
【0047】
第2の部分70の遠位端には、主本体10の歯付き表面14と摩擦係合する外側ピストン本体60のロック部材65を半径方向外側に押圧するように構成された押圧部材75が設けられている。
図1~
図6に示される実施形態によれば、押圧部材は、遠位方向に広がる単一のフレアスカート75であり、可撓性タブ65で形成されるロック部材を半径方向外側に押すように構成される。
【0048】
ボタン80を選択的に押したり放したり(作動手段を作動または解放)することにより、ユーザは医療用容器30に含まれる組成物の注入を開始または静止することができる。
【0049】
以下では、ロック部材が可撓性タブ65を含み、押圧部材がフレアスカート75を含む、上述のデバイスの実施形態を参照して、デバイスの機能を詳細に説明する。ロック部材および押圧部材の他の実施形態は、それらの構造的な違いにもかかわらず、同様の機能をもたらすことを知られていなければならない。
【0050】
図4に示すように、ボタン80が解放されると、ピストン40の第2の部分70は、近位の第1の位置にある。内側ピストンロッド50および外側ピストン本体60は、近位の静止位置にあり、内側ピストンロッド50のばね51は圧縮されている。
【0051】
クリップタブ73の突起74は、外側ピストン本体60の半径方向開口部68内の所定の位置にあるか、または半径方向開口部68の近位部分に当接してもよい。
【0052】
フレアスカート75は、歯付き表面14と摩擦係合するように可撓性タブ65を半径方向外側に押し、それによりピストンの第1部分をブロックする。この摩擦係合から生じるブレーキ力は、内側ピストンロッド50のばね51の力に対抗する。このブレーキ力は、ばね仕掛けボタン81のばね力、フレアスカート75の斜面の傾斜、ならびに可撓性タブ65および歯付き表面14の歯15の表面特性および傾斜に依存する。したがって、これらの特徴は、ピストン40を可能な限りしっかりとブロックするために、ブレーキ力が内側ピストンロッド50のばね51の力よりも大きくなるように調整することができる。
【0053】
図5に示すように、ユーザがボタン80を遠位方向に押すと、ボタン80はピストンの第2の部分70のアーム71を遠位方向に押し、クリップタブ73の突起74が半径方向開口部68の遠位部分に当接する。ピストンの第2の部分70は、内側ピストンロッド50および外側ピストン本体60に対して遠位方向に、近位静止位置からフレアスカート75が可撓性タブ65から離れた遠位の第2動作位置までスライドする。可撓性タブ65は、半径方向および内向きに撓み、歯付き表面14を外し、それによって歯付き表面14との摩擦係合を解除する。
可撓性タブ65の撓みにより、ピストンの第1の部分が主本体10に対して遠位方向に移動する。
【0054】
内側ピストンロッド50は、ばね51のばね力で内側本体13に沿って遠位方向に摺動し、内側ピストンロッド50がストッパ34に係合し、医療用容器30内のストッパを押す遠位作動位置まで動く。したがって、組成物は医療用容器から排出される。この位置では、内側ピストンロッド50のばね51は少なくとも部分的に解放される。
外側ピストン本体60は、内側ピストンロッド50と共に遠位方向に並進運動する。
ユーザが、ボタン80を押し続ける限り、可撓性タブ65は、歯付き表面14から半径方向に離れた偏向位置に留まる。ピストンの2つの部分は、内側のピストンロッド50のスプリング51の解放によって補助されて一緒に動き続け、注入が継続する。
【0055】
ユーザが、ボタン80を放すと、ピストンの第2の部分70が近位の静止位置で近位に摺動して戻り、クリップタブ73の突起74が半径方向開口部68の近位の部分を外す。可撓性タブ65は、歯付き表面14との摩擦係合で半径方向外向きに戻り、それによってピストンの第1部分をブロックし、装置は前述の状況に戻り、ピストン40の第1および第2部分は主本体10に対する以前の位置より遠位にある。
【0056】
そのようなものとして、ユーザは、特定の時間の間にボタン80を押すか、それを放すだけで、注入を開始または静止できる。
【0057】
注入を行うために、ユーザは、手のひらでグリップ表面11を握り、親指でばね仕掛けボタン80を押すことができる。そうでなければ、ユーザは、通常の標準的なシリンジを保持するように、人差し指と中指の間にグリップ表面11を保持し、両方ともフランジ12に隣接することができる。
【0058】
さらに、注入を実行している間、ユーザは、可撓性タブ65が歯付き表面14から外れた後、ボタン80をさらに強く押すことができる。この場合、内側ピストンロッド50に加えられる力は、内側ピストンロッド50のばね力と使用者によって加えられる力の組み合わせである。したがって、内側ピストンロッド50の動きを加速することができ、したがって注入速度が増加する。ユーザが、可撓性タブ65が歯付きラックからちょうど外れた状態に戻って強度を低下させると、内側ピストンロッド50は、ばね51のみによって再び駆動されるようになる。
【0059】
図6を参照すると、注入の最後に、組成物全体が注入される。ストッパ34は、医療用容器30の遠位端に当接し、内側ピストンロッド50はさらに遠位方向に移動することができない。内側ピストンロッド50のばね51は、少なくとも部分的に弛緩した状態にある。
【0060】
外側ピストン本体60の近位端は、内側本体13の近位端に当接し、フレアスカート75は、主本体10の遠位端に当接し、それ以上遠位に移動することはできない。
【0061】
注入の終了時に、別の注入に進むために、ユーザがデバイスを手動でリセットすることができる。そうするために、ボタン80を押しながらフランジ部分61をつかむことにより、ピストン40はユーザにより近位方向に引っ張られて近位の静止位置に戻る。次に、ボタン80を放し、空の医療用容器30を容器ホルダーシステム20から取り外し、新しい充填済み医療用容器30を容器ホルダーシステム20に配置することができる。