(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】キナーゼを調節する化合物の製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20221111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221111BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221111BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20221111BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221111BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221111BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20221111BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20221111BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221111BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61K31/5377
A61P43/00 121
A61K9/10
A61K9/20
A61K47/38
A61K45/00
A61K47/20
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/44
A61K47/28
A61K47/34
A61K47/40
(21)【出願番号】P 2020522822
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 US2018057797
(87)【国際公開番号】W WO2019084462
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-08
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505324881
【氏名又は名称】プレキシコン インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】PLEXXIKON INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ハミド・レザエイ
(72)【発明者】
【氏名】マリカ・ネスピ
(72)【発明者】
【氏名】プラブハ・エヌ・イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・コナード・バイザー
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/191296(WO,A1)
【文献】特表2014-504640(JP,A)
【文献】PNAS,2016年,113(47),pp.13456-13461
【文献】Drug Discovery Today,2007年,12(23/24),pp.1068-1075
【文献】薬剤学,2013年,73(4),pp.214-222
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07D
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する化合物I:
【化1】
化合物I
ここで、化合物Iはアモルファスであり、
ここで、化合物Iは、固体状態にあるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)によって形成されるポリマーマトリックス内に分子的に分散される;
1.0%w/wから3%w/wの範囲にある、1つ以上の流動促進剤;
4%w/wから8%w/wの範囲にある、1つ以上の崩壊剤;
25%w/wから35%w/wの範囲にある、1つ以上の充填剤/結合剤;
0.5%w/wから1.0%w/wの範囲にある、1つ以上の滑沢剤;および
1つ以上の界面活性剤;
を含む、噴霧乾燥分散製剤であって、
ここで、化合物I、HPMCASおよび界面活性剤の組み合わせが53%w/wから約69.5%w/wの範囲にある、噴霧乾燥分散製剤。
【請求項2】
前記HPMCASがHPMCAS-LF、HPMCAS-MF、HPMCAS-HF、HPMCAS-LG、HPMCAS-MG、またはHPMCAS-HGである、請求項1に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項3】
前記HPMCASがHPMCAS-HGである、請求項2に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項4】
前記噴霧乾燥分散製剤内の化合物I対HPMCASの重量比が、約1:1から約1:4の範囲にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項5】
前記噴霧乾燥分散製剤内の化合物I対HPMCASの重量比が、約1:2.5から約1:3.5の範囲にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項6】
前記噴霧乾燥分散製剤内の化合物I対HPMCASの重量比が、約1:2.6から約1:2.9の範囲にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項7】
前記1つ以上の界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウムである、請求項1に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項8】
化合物Iが約15%w/wから約35%w/wの範囲にあり、HPMCASが約50%w/wから約85%w/wの範囲にあり、前記1つ以上の界面活性剤が約1%w/wから約10%w/wの範囲にある、請求項8または9に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項9】
化合物Iが約20%w/wから約30%w/wの範囲にあり、HPMCASが約60%w/wから約80%w/wの範囲にあり、前記1つ以上の界面活性剤が約3%w/wから約7%w/wの範囲にある、請求項7または8に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項10】
化合物Iが約22%w/wから約28%w/wの範囲にあり、HPMCASが約65%w/wから約75%w/wの範囲にあり、前記1つ以上の界面活性剤が約4%w/wから約6%w/wの範囲にある、請求項7から9のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項11】
化合物Iが約25%w/wであり、HPMCASが約70%w/wであり、前記1つ以上の界面活性剤が約5%w/wである、請求項7から10のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項12】
前記1つ以上の流動促進剤が約1.5%w/wから約2.5%w/wの範囲にあり、前記1つ以上の崩壊剤が約5%w/wから約7%w/wの範囲にあり、前記1つ以上の充填剤/結合剤が約29%w/wから約33%w/wの範囲にあり、前記1つ以上の滑沢剤が約0.7%w/wから約0.8%w/wの範囲にあり、前記化合物I、HPMCASおよび界面活性剤の組み合わせが約56.7%w/wから約63.8%w/wの範囲にある、請求項1から11のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項13】
前記1つ以上の流動促進剤が、コロイド状二酸化ケイ素、微粉二酸化ケイ素、ケイ化微結晶性セルロース、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコールおよびクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択され、前記1つ以上の崩壊剤が、重炭酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、およびクロスポビドンからなる群から選択され、前記1つ以上の充填剤/結合剤が、微結晶性セルロース、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、マルトース、デキストリン、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、二塩基性リン酸カルシウム無水物、部分アルファ化デンプン、および三塩基性リン酸カルシウムからなる群から選択され、前記1つ以上の滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、カルナウバワックス、硬化植物油、鉱油、ポリエチレングリコールおよびステアリルフマル酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項14】
前記1つ以上の流動促進剤がコロイド状二酸化ケイ素であり、前記1つ以上の崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムであり、前記1つ以上の充填剤/結合剤がマンニトールおよび微結晶性セルロースであり、前記1つ以上の滑沢剤がステアリルフマル酸ナトリウムである、請求項13に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項15】
マンニトール対微結晶性セルロースの重量比が約2:3から約3:2の範囲にある、請求項13または14に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項16】
マンニトール対微結晶性セルロースの重量比が約1.1:1.0から約1.0:1.1の範囲にある、請求項13または14に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項17】
製剤が経口投与に適した錠剤形態である、請求項1から16のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項18】
錠剤が、75から150mgの化合物Iを含有する、請求項17に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項19】
錠剤が、150mgの化合物Iを含有する、、請求項17に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項20】
前記錠剤が、水または水含有溶媒に懸濁されている、請求項17に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項21】
BRAF変異関連疾患または状態を治療するための、請求項1から20のいずれか一項に記載の噴霧乾燥分散製剤であって、
BRAF変異関連疾患または状態が、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺乳頭がん、乳頭状頭蓋咽頭腫、甲状腺未分化がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、胃がん、胆管がん、バレット食道がん、頭頸部がん、肝細胞がん、乳がん、ランゲルハンス細胞組織球症、胃腸間質細胞腫瘍(GIST)、多発性骨髄腫、小児星状細胞腫、多形性黄色星状細胞腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、二重表現型B骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、母斑、エルドハイム・チェスター病、悪性末梢神経鞘腫、悪性末梢神経鞘腫疾患、腱滑膜巨細胞腫、色素性絨毛結節性滑膜炎、腱鞘の巨細胞腫、骨の巨細胞腫、子宮頸がん、子宮内膜がん、胚細胞腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、筋膜細胞腫、後腎腺腫、膵臓腫瘍、神経内分泌腫瘍、内分泌腫瘍、副腎腫瘍、副腎髄質腫瘍、耳下腺嚢胞腺がん、多形性膠芽腫、胆管腺腫を含む胆管がん、胆管がん、B細胞慢性リンパ増殖性疾患、樹状細胞肉腫、組織球性肉腫、またはリンパ腫である、噴霧乾燥分散製剤。
【請求項22】
前記BRAF変異関連疾患または状態が、肝細胞がん、ランゲルハン細胞組織球症、エルドハイム・チェスター病、胃腸間質細胞腫瘍、有毛細胞白血病、有毛細胞白血病、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺乳頭がん、甲状腺未分化がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、多形性膠芽腫、前立腺がん、胃がん、胆管がん、またはバレット食道がんである、請求項21に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項23】
併用するためのCYP阻害剤をさらに含む、請求項21または22に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項24】
CYP阻害剤がCYP3A阻害剤である、請求項23に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項25】
CYP3A阻害剤が、ボセプレビル、コビシスタット、コニバプタン、ダノプレビルおよびリトナビル、エルビテグラビルおよびリトナビル、グレープフルーツジュース、インジナビルおよびリトナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ロピナビルおよびリトナビル、ポサコナゾール、リトナビル、サキナビルおよびリトナビル、テラプレビル、チプラナビルおよびリトナビル、トロレアンドマイシン、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、ジルチアゼム、イデラリシブ、ネファゾドン、ネルフィナビル、またはパリタプレビルおよびリトナビル、ならびにオンビタビルおよび/またはダサブビルである、請求項24に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【請求項26】
前記CYP3A阻害剤がコビシスタットである、請求項25に記載の噴霧乾燥分散製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)条の下、2017年10月27日出願の米国仮特許出願第62/578,334号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
疾患を治療するのに有用な生物学的に活性な化合物の新たな組成物、およびそれら組成物の製造方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
(R)-N-(3-(5-(2-シクロプロピルピリミジン-5-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-カルボニル)-2,4-ジフルオロフェニル)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミドは、変異型のBRAFの強力な阻害剤であり、転移性黒色腫、甲状腺がん、および結腸直腸がんなどのBRAF媒介疾患の治療に有用であり得る。化合物およびその合成は、WO2012/109075およびWO2016/191303に記載されている。このおよび他の関連する生物学的に活性な化合物のための、効果的でありかつ安全な製剤を開発することに関心が残っている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、次式を有する化合物Iを含む固体分散体に関し、
【化1】
化合物I
化合物Iは実質的にアモルファスである。
【0005】
別の実施形態では、本開示の固体分散体は、1つ以上の賦形剤をさらに含む。
【0006】
別の実施形態では、本開示の固体分散体は、1つ以上の可溶化剤をさらに含む。
【0007】
本開示の固体分散体の別の実施形態では、化合物Iは、固体状態のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)によって形成されるポリマーマトリックス内に分子的に分散される。
【0008】
本開示はまた、本開示の固体分散体を製造する方法に関する。
【0009】
本開示はまた、本開示の方法によって製造される固体分散体に関する。
【0010】
本開示はまた、本開示の固体分散体の治療有効量を対象に投与することを含む、変異BRAF(BRAF V600Eを含む)によって媒介される疾患または状態を有する対象を治療する方法に関する。
【0011】
本開示はまた、1つ以上のCYP阻害剤(CYP3A4阻害剤を含む)と組み合わせて本開示の固体分散体のいずれかを対象に投与することを含む、変異BRAF(BRAF V600Eを含む)によって媒介される疾患または状態の対象を治療する方法にも関する。
【0012】
追加の態様および実施形態は、以下の発明を実施するための形態および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ホットメルト押出によりアモルファス化合物Iの固体分散体を製造するプロセスフロー図である。
【0014】
【
図2】噴霧乾燥分散によりアモルファス化合物Iの固体分散体を製造するプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書で使用される場合、別段明確に示されない限り、以下の定義が適用される。
【0016】
提供される構造内、またはその構造に関連する変数の定義内のいずれかに関わらず、本明細書に記載の式中で指定されるすべての原子は、反対であることが明確に示されない限り、その任意の同位体を含むことが意図される。任意の所与の原子について、同位体は、本質的にそれらの天然の存在に応じた比率で存在し得るか、または当業者に既知の合成方法を使用して1つ以上の特定の原子が1つ以上の同位体に対して増強されている場合があることが理解される。したがって、水素には例えば、1H、2H、3Hが含まれ、炭素には例えば、11C、12C、13C、14Cが含まれ、酸素には例えば、16O、17O、18Oが含まれ、窒素には例えば、13N、14N、15Nが含まれ、硫黄には例えば、32S、33S、34S、35S、36S、37S、38Sが含まれ、フッ素には例えば、17F、18F、19Fが含まれ、塩素には例えば、35Cl、36Cl、37Cl、38Cl、39Clが含まれるなどである。
【0017】
「BRAF」は、BRAFと呼ばれるプロテインキナーゼをコードするヒト遺伝子である。BRAF変異関連疾患は、BRAF V600変異および非V600変異であり得る。BRAF V600変異は、BRAFのポジション600(バリン)でのアミノ酸置換をもたらす。
【0018】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、「療法(単数)」、「療法(複数)」という用語、および同様の用語は、物質、例えば、有効量の本明細書に記載の任意の1つ以上の化合物を投与して、ある疾患もしくは状態の1つ以上の症状、すなわち、適応症を予防、緩和、もしくは軽減すること、および/または治療されている対象の生存を延長することを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「カプセル製剤」という用語は、本開示における固体分散体のいずれかのカプセルを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「錠剤製剤」という用語は、本開示の固体分散体のいずれかの錠剤を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトなどの任意の哺乳動物、他の霊長類、競技用動物、ウシなどの商業的価値のある動物、ウマなどの家畜、またはイヌおよびネコなどのペットを含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の化合物で治療される生物を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、定量的測定の文脈において使用される「約」という用語は、示される量±10%を意味する。例えば、「約2:8」は1.8から2.2:7.2から8.8を意味するであろう。
【0023】
「アモルファス」という用語は、物質が、分子レベルで長距離秩序を欠き、温度に応じて、固体または液体の物理的性質を発現し得る状態を指す。典型的には、そのような材料は明確なX線回折パターンを与えず、固体の特性を呈する一方で、よりはっきりと液体として説明される。加熱すると、固体の特性から液体の特性への変化が起こり、これは状態の変化、典型的には二次(ガラス転移)を特徴とする。
【0024】
本明細書で使用される「実質的にアモルファス」という用語は、本明細書で使用される場合、組成物中に存在する60%超、または65%超、または70%超、または75%超、または80%超、または85%超、または90%超、または95%超、または99%超の化合物がアモルファス形態であることを意味するように意図されている。「実質的にアモルファス」はまた、約20%以下の結晶化度、または約10%以下の結晶化度、または約5%以下の結晶化度、または約2%以下の結晶化度、または約1%以下の結晶化度を有する物質を指し得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「固体分散体」という用語は、少なくとも2つの成分を有する任意の固体組成物を指す。特定の実施形態では、本明細書に開示される固体分散体は、好ましくは、少なくとも1つの他の成分、例えば、HPMCASなどのポリマー中に分散された、有効成分(例えば、化合物I)を含む。特定の実施形態では、本明細書で開示される固体分散体は、少なくとも1つの薬学的または生物学的に有効成分(例えば、化合物I)を含む薬学的分散体である。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ポリマーで分子的に分散された化合物Iを含む。好ましくは、固体分散体は一相系として存在する。
【0026】
本明細書で使用される「結晶性」という用語は、本明細書で使用される場合、物質が分子レベルで規則的に秩序化された内部構造を有し、規定されたピークを有する特徴的なX線回折パターンを与える固相を指す。そのような材料は、十分に加熱されるときに液体の特性も示すが、固体から液体への変化は、相変化、通常は1次(融点)によって特徴付けられる。
【0027】
本明細書で使用される「結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、活性成分および担体の不活性成分を一緒に結合して凝集部分および個別部分を維持するために使用できる任意の薬学的に許容できるフィルムを指す。結合剤の非限定的な例には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、コポビドン、エチルセルロースおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0028】
本明細書で使用される「崩壊剤」という用語は、本明細書で使用される場合、固形製剤に添加すると、投与後の分解または崩壊を促進し、有効成分の放出を可能な限り効率的に可能にして、急速溶解を可能にする物質を指す。崩壊剤の非限定的な例には、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン変性トウモロコシデンプンおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0029】
本明細書で使用される「滑沢剤」という用語は、本明細書で使用される場合、圧縮された粉末塊が錠剤化またはカプセル化プロセス中に機器に付着するのを防ぐために粉末ブレンドに添加される賦形剤を指す。それは、臼からの錠剤の排出を助け、粉末の流れを改善することができる。滑沢剤の非限定的な例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、鉱油およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0030】
本明細書で使用される「流動促進剤」という用語は、本明細書で使用される場合、錠剤圧縮中の流動特性を改善し、固結防止効果を生成するために錠剤およびカプセル製剤で使用される薬剤を指す。流動促進剤の非限定的な例には、コロイド状二酸化ケイ素、セルロース、酸化マグネシウムおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0031】
本明細書で使用される「%w/w」という用語は、本明細書で使用される場合、成分を含む組成物の総重量に基づく成分の重量を指す。例えば、成分Aが100mgの組成物中に50%w/wの量で存在する場合、成分Aは50mgの量で存在する。
【0032】
本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、液体と固体との間の表面張力を低下させ、活性剤の湿潤を改善し得るか、または活性剤の溶解性を改善し得る物質を指す。界面活性剤の非限定的な例には、ポロキサマー407およびラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0033】
本明細書で使用される「可溶化剤」という用語は、本明細書で使用される場合、活性薬剤の溶解度を増加させることができる物質を指す。可溶化剤の非限定的な例には、ポリエチレングリコールおよびコポビドンが含まれる。
【0034】
本明細書で使用される「オスモゲン」という用語は、本明細書で使用される場合、コアに含まれる有効成分が放出されるようにコア全体に水を分配する目的で優先的に水を錠剤コアに引き込む水溶性成分を指す。オスモゲンの非限定的な例には、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「分子的に分散された」という用語は、化合物(例えば、ポリマーと化合物I)のランダムな分布を指す。特定の実施形態では、化合物は、細分化の最終状態でポリマー中に存在する。例えば、M.G.Vachon et al.,J.Microencapsulation 14:281-301(1997)およびVandelli et al.,J.Microencapsulation,10:55-65(1993)を参照されたい。いくつかの実施形態では、化合物(例えば、化合物I)は、化合物がそのアモルファス形態で固定されるように、その固体状態のポリマーによって形成されるマトリックス内に分散され得る。化合物がポリマーに分子的に分散しているかは、例えば、単一のガラス転移温度を有する得られた固体分子複合体によって、様々な方法で証明され得る。
【0036】
モジュレーターであるか、またはモジュレーターであり得る化合物の使用、試験、またはスクリーニングの文脈において、「接触すること」という用語は、化合物(複数可)が、その化合物と他の特定の物質との間の潜在的な結合相互作用および/または化学反応が起こり得る特定の分子、複合体、細胞、組織、生物、または他の特定の物質に十分に近接するようになっていることを意味する。
【0037】
「薬学的に許容される」という用語は、示される物質が、治療される疾患または状態およびそれぞれの投与経路を考慮して、合理的に慎重な開業医に患者への物質の投与を回避させるような特性を有しないことを示す。例えば、そのような材料は、例えば注射剤のために、本質的に無菌であることが一般的に必要とされる。
【0038】
本文脈において、「治療的に有効な」または「有効量」という用語は、物質または物質の量が、疾患もしくは医学的状態の1つ以上の症状を予防、緩和、もしくは軽減するのに、かつ/または治療されている対象の生存を延長するのに有効であることを示す。特定の実施形態では、化合物Iの「治療有効量」は、BRAFキナーゼ、例えばBRAF V600Eを阻害するのに必要な期間の投薬量および/または投与を指す。さらに、治療有効量は、全体的な治療的に有益な効果が毒性または望ましくない副作用を上回るような量であり得る。治療有効量の化合物Iは、治療される対象の病状、年齢、および体重に応じて変動し得る。したがって、投薬計画は、典型的には、特定の各症例において個々の要件に合わせて調整され、かつ当業者の範囲内である。特定の実施形態では、化合物Iの成人への投与のための適切な1日用量は、約50mgから約3200mg、または約75mgから約2000mgであってもよいが、指示される場合には上限および下限を超えてもよい。化合物Iの1日投薬量は、単回用量として、分割用量で投与されても、または非経口投与の場合、それは皮下注射として投与されてもよい。
【0039】
本文脈において、「相乗的に有効な」または「相乗効果」という用語は、治療的に有効な2つ以上の化合物が、併用して使用した場合に、単独で使用される各化合物の効果に基づいて期待される相加効果よりも大きい、改善された治療効果を提供することを示す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「調節すること」または「調節する」という用語は、生物学的活性、特にタンパク質キナーゼなどの特定の生体分子に関連する生物学的活性を改変する効果を指す。例えば、特定の生体分子のアゴニストまたはアンタゴニストは、酵素などの生体分子の活性を増加させること(例えば、アゴニスト、活性化剤)、または減少させること(例えば、アンタゴニスト、阻害剤)のいずれかによって、その生体分子、例えば、酵素の活性を調節する。そのような活性は、典型的には、例えば、酵素に対する、阻害剤または活性化剤の、化合物の阻害濃度(IC50)または刺激濃度(EC50)の観点でそれぞれ示される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「混合する」または「ブレンドする」という用語は、互換的であり、2つまたは物質を組み合わせることを意味する。
【0042】
本開示の組成物は、対象への経口投与に使用して、BRAFによって調節される疾患および状態、ならびにBRAF媒介疾患の変異形態を治療することができる。特定の実施形態では、本開示の組成物は、改善されたバイオアベイラビリティを有する。
固体分散体
【0043】
実施形態1は、実質的にアモルファスである、次式を有する化合物Iを含む固体分散体に関する。
【化2】
化合物I
【0044】
化合物Iは、米国特許出願公開第2014/0128373号に記載されている。化合物Iは、BRAF V600Eを含む、非常に強力な変異BRAFキナーゼ阻害剤(本明細書では変異BRAFとも呼ばれる)であり、特に強力なパラドックスブレーカーでもある。化合物Iは、第1世代のBRAF V600E変異阻害剤に典型的であるMARK経路を活性化しない。したがって、化合物Iはこの点でかなり有利であり、試験の結果、米国特許出願公開第2016/0339025A1号に記載される様々な適応症に潜在的に有用であることが証明されている。
【0045】
実施形態2は、実施形態1による固体分散体に関し、化合物Iは、固体状態にあるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)によって形成されるポリマーマトリックス内に分子的に分散される。
【0046】
実施形態3は、実施形態2による固体分散体に関し、HPMCASは、HPMCAS-LF、HPMCAS-MF、HPMCAS-HF、HPMCAS-LG、HPMCAS-MG、またはHPMCAS-HGである。
【0047】
実施形態4は、実施形態3による固体分散体に関し、HPMCASはHPMCAS-HGである。
【0048】
実施形態5は、実施形態2から4のいずれか1つによる固体分散体に関し、固体分散体内の化合物I対HPMCASの重量比は、約1:1から約1:4の範囲にある。
【0049】
実施形態6は、実施形態2から5のいずれか1つによる固体分散体に関し、固体分散体内の化合物I対HPMCASの重量比は、約1:2.5から約1:3.5の範囲にある。
【0050】
実施形態7は、実施形態2から6のいずれか1つによる固体分散体に関し、固体分散体内の化合物I対HPMCASの重量比は、約1:2.6から約1:2.9の範囲にある。
【0051】
実施形態8は、実施形態2から7のいずれか1つによる固体分散体に関し、1つ以上の界面活性剤をさらに含む。
【0052】
実施形態9は、実施形態8による固体分散体に関し、1つ以上の界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム(SLS)である。
【0053】
実施形態10は、実施形態8または9のいずれか1つによる固体分散体に関し、化合物Iは約15%w/wから約35%w/wの範囲にあり、HPMCASは約50%w/wから約85%w/wの範囲にあり、1つ以上の界面活性剤は約1%w/wから約10%w/wの範囲にある。
【0054】
実施形態11は、実施形態8から10のいずれか1つによる固体分散体に関し、化合物Iは約20%w/wから約30%w/wの範囲にあり、HPMCASは約60%w/wから約80%w/wの範囲にあり、1つ以上の界面活性剤は約3%w/wから約7%w/wの範囲にある。
【0055】
実施形態12は、実施形態8から11のいずれか1つによる固体分散体に関し、化合物Iは約22%w/wから約28%w/wの範囲にあり、HPMCASは約65%w/wから約75%w/wの範囲にあり、1つ以上の界面活性剤は約4%w/wから約6%w/wの範囲にある。
【0056】
実施形態13は、実施形態8から12のいずれか1つによる固体分散体に関し、化合物Iは約25%w/wであり、HPMCASは約70%w/wであり、1つ以上の界面活性剤は約5%w/wである。
【0057】
実施形態14は、実施形態8から13のいずれか1つによる固体分散体に関し、1つ以上の流動促進剤、1つ以上の崩壊剤、1つ以上の充填剤/結合剤、および1つ以上の滑沢剤をさらに含む。
【0058】
実施形態15は、実施形態14による固体分散体に関し、1つ以上の流動促進剤は約0.5%w/wから約4%w/wの範囲にあり、1つ以上の崩壊剤は約3%w/wから約9%w/wの範囲にあり、1つ以上の充填剤/結合剤は約20%w/wから約40%w/wの範囲にあり、1つ以上の滑沢剤は約0.25%w/wから約1.25%w/wの範囲にあり、化合物I、HPMCASおよび界面活性剤の組み合わせは約45.75%w/wから約76.25%w/wの範囲にある。
【0059】
実施形態16は、実施形態14による固体分散体に関し、1つ以上の流動促進剤は約1.0%w/wから約3%w/wの範囲にあり、1つ以上の崩壊剤は約4%w/wから約8%w/wの範囲にあり、1つ以上の充填剤/結合剤は約25%w/wから約35%w/wの範囲にあり、1つ以上の滑沢剤は約0.5%w/wから約1.0%w/wの範囲にあり、化合物I、HPMCASおよび界面活性剤の組み合わせは約53%w/wから約69.5%w/wの範囲にある。
【0060】
実施形態17は、実施形態14による固体分散体に関し、1つ以上の流動促進剤は約1.5%w/wから約2.5%w/wの範囲にあり、1つ以上の崩壊剤は約5%w/wから約7%w/wの範囲にあり、1つ以上の充填剤/結合剤は約29%w/wから約33%w/wの範囲にあり、1つ以上の滑沢剤は約0.7%w/wから約0.8%w/wの範囲にあり、化合物I、HPMCASおよび界面活性剤の組み合わせは約56.7%w/wから約63.8%w/wの範囲にある。
【0061】
実施形態18は、実施形態14から17のいずれか1つによる固体分散体に関し、1つ以上の流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素、微粉二酸化ケイ素、ケイ化微結晶性セルロース、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコールおよびクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択され、1つ以上の崩壊剤は、重炭酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、およびクロスポビドンからなる群から選択され、1つ以上の充填剤/結合剤は、微結晶性セルロース、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、マルトース、デキストリン、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、二塩基性リン酸カルシウム無水物、部分アルファ化デンプン、および三塩基性リン酸カルシウムからなる群から選択され、1つ以上の滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、カルナウバワックス、硬化植物油、鉱油、ポリエチレングリコールおよびステアリルフマル酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0062】
実施形態19は、実施形態14から18のいずれか1つによる固体分散体に関し、1つ以上の流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素であり、1つ以上の崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムであり、1つ以上の充填剤/結合剤はマンニトールおよび微結晶性セルロースであり、1つ以上の滑沢剤はステアリルフマル酸ナトリウムである。
【0063】
実施形態20は、実施形態19による固体分散体に関し、マンニトール対微結晶性セルロースの重量比は約2:3から約3:2の範囲にある。
【0064】
実施形態21は、実施形態19による固体分散体に関し、マンニトール対微結晶性セルロースの重量比は約1.1:1.0から約1.0:1.1の範囲にある。
【0065】
実施形態22は、実施形態19から21のいずれか1つによる固体分散体に関し、微結晶性セルロースは、Avicel PH-101、Avicel PH-102、Avicel PH-105、Avicel PH-112およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0066】
実施形態23は、実施形態19から22のいずれか1つによる固体分散体に関し、微結晶性セルロースは、Avicel PH-105およびAvicel PH-101の組み合わせである。
【0067】
実施形態24は、実施形態19から23のいずれか1つによる固体分散体に関し、粒内微結晶性セルロースはAvicel PH-105であり、粒外微結晶性セルロースはAvicel PH-101である。
【0068】
実施形態25は、実施形態24による固体分散体に関し、Avicel PH-105対Avicel PH-101の比は約1:1から約1:3である。
【0069】
実施形態26は、実施形態25による固体分散体に関し、Avicel PH-105対Avicel PH-101の比は約1:1.8から約1:2.2である。
【0070】
実施形態27は、実施形態1による固体分散体に関し、1つ以上の可溶化剤をさらに含む。
【0071】
実施形態28は、実施形態27による固体分散体に関し、1つ以上の可溶化剤は、タウロコール酸ナトリウム、ラブラゾール、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、コポビドン、Transcutol P、プロピレングリコール、Gelucire 44/14、HCO-60、エタノール、Cremophor EL、Tween 80、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択される。
【0072】
実施形態29は、実施形態28による固体分散体に関し、1つ以上の可溶化剤は、ポロキサマー407、ポリエチレングリコール400、およびコポビドンである。
【0073】
実施形態30は、実施形態27から29のいずれか1つによる固体分散体に関し、1つ以上の流動促進剤、1つ以上の崩壊剤、1つ以上の充填剤/結合剤、1つ以上の滑沢剤、1つ以上の1つ以上の界面活性剤、および1つ以上のオスモゲンをさらに含む。
【0074】
実施形態31は、実施形態30の組成物に関し、化合物Iは約5%w/wから約12%w/wの範囲にあり、1つ以上の可溶化剤は約35%w/wから約65%w/wの範囲にあり、1つ以上の流動促進剤は約0.5%w/wから約2%w/wの範囲にあり、1つ以上の充填剤/結合剤は約8%w/wから約22%w/wの範囲にあり、1つ以上の界面活性剤は約0.5%w/wから約4%w/wの範囲にあり、1つ以上の崩壊剤は約12%w/wから約24%w/wの範囲にあり、1つ以上の滑沢剤は約0.25%w/wから約3.0%w/wの範囲にあり、1つ以上のオスモゲンは約2%w/wから約6%w/wの範囲にある。
【0075】
実施形態32は、実施形態30の組成物に関し、化合物Iは約7%w/wから約10%w/wの範囲にあり、1つ以上の可溶化剤は約45%w/wから約55%w/wの範囲にあり、1つ以上の流動促進剤は約0.75%w/wから約1.5%w/wの範囲にあり、1つ以上の充填剤/結合剤は約12%w/wから約18%w/wの範囲にあり、1つ以上の界面活性剤は約1%w/wから約3%w/wの範囲にあり、1つ以上の崩壊剤は約16%w/wから約20%w/wの範囲にあり、1つ以上の滑沢剤は約0.50%w/wから約2%w/wの範囲にあり、1つ以上のオスモゲンは約3%w/wから約5%w/wの範囲にある。
【0076】
実施形態33は、実施形態30の組成物に関し、化合物Iは約7.5%w/wから約8.5%w/wの範囲にあり、1つ以上の可溶化剤は約48%w/wから約52%w/wの範囲にあり、1つ以上の流動促進剤は約0.9%w/wから約1.1%w/wの範囲にあり、1つ以上の充填剤/結合剤は約14%w/wから約16%w/wの範囲にあり、1つ以上の界面活性剤は約1.5%w/wから約2.5%w/wの範囲にあり、1つ以上の崩壊剤は約17%w/wから約19%w/wの範囲にあり、1つ以上の滑沢剤は約0.75%w/wから約1.25%w/wの範囲にあり、1つ以上のオスモゲンは約3.5%w/wから約4.55%w/wの範囲にある。
【0077】
実施形態34は、実施形態30から33のいずれか1つによる固体分散体に関し、1つ以上の界面活性剤は、ポロキサマー407、ポリエチレングリコール400、およびコポビドンであり、1つ以上の流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素、微粉二酸化ケイ素、ケイ化微結晶性セルロース、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコールおよびクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択され、1つ以上の崩壊剤は、重炭酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、およびクロスポビドンからなる群から選択され、1つ以上の充填剤/結合剤は、微結晶性セルロース、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、マルトース、デキストリン、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、二塩基性リン酸カルシウム無水物、部分アルファ化デンプン、および三塩基性リン酸カルシウムからなる群から選択され、1つ以上の滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、カルナウバワックス、硬化植物油、鉱油、ポリエチレングリコールおよびステアリルフマル酸ナトリウムからなる群から選択され、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムであり、オスモゲンは塩化ナトリウムである。
【0078】
実施形態35は、実施形態34の固体分散体に関し、1つ以上の界面活性剤は、ポロキサマー407、ポリエチレングリコール400、およびコポビドンであり、1つ以上の流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素であり、1つ以上の崩壊剤は、重炭酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、およびクロスポビドンであり、1つ以上の充填剤/結合剤は微結晶性セルロースおよびマンニトールであり、滑沢剤はステアリン酸マグネシウムであり、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムであり、オスモゲンは塩化ナトリウムである。
【0079】
実施形態36は、実施形態1から35のいずれか1つによる固体分散体に関し、組成物は経口投与に適した錠剤形態である。
【0080】
実施形態36(a)は、実施形態32に関し、錠剤は50から500mgの化合物Iを含有する。
【0081】
実施形態36(b)は、実施形態32に関し、錠剤は75から300mgの化合物Iを含有する。
【0082】
実施形態36(c)は、実施形態32に関し、錠剤は75から200mgの化合物Iを含有する。
【0083】
実施形態36(d)は、実施形態32に関し、錠剤は75から150mgの化合物Iを含有する。
【0084】
実施形態36(e)は、実施形態32に関し、錠剤は75から150mgの化合物Iを含有する。
【0085】
実施形態36(f)は、実施形態32に関し、錠剤は75から150mgの化合物Iを含有する。
【0086】
実施形態37は、実施形態32による固体分散体に関し、錠剤は水または水含有溶媒中に懸濁されている。
【0087】
実施形態37(a)は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる固体分散体に関し、固体分散体は経口投与に適した小袋形態である。
【0088】
実施形態37(b)は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる固体分散体を含む錠剤に関し、錠剤は150mgの化合物Iを含有する。
【0089】
実施形態37(c)は、実施形態37(b)に関し、固体分散体は噴霧乾燥分散体である。
【0090】
実施形態37(d)は、実施形態37(b)または37(c)に関し、錠剤は、矯味剤を任意に含有する水溶液に懸濁されている。
【0091】
実施形態37(e)は、実施形態37(d)に関し、錠剤は、芳香剤を任意に含有する水に懸濁されている。この実施形態における矯味剤の非限定的な例には、結晶光(crystal light)が含まれる。
【0092】
本開示の固体分散体で使用できる流動促進剤の非限定的な例には、コロイド状二酸化ケイ素、微粉二酸化ケイ素、ケイ化微結晶性セルロース、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコールおよびクロスカルメロースナトリウムなど、またはそれらの混合物が含まれる。一態様では、本開示の固体分散体は、滑沢剤としてコロイド状二酸化ケイ素を含む。上記の滑沢剤はすべて市販されている。
【0093】
本開示の固体分散体中で使用することができる充填剤/結合剤の非限定的な例には、微結晶性セルロース、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、マルトース、デキストリン、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、二塩基性リン酸カルシウム無水物、部分アルファ化デンプン、および三塩基性リン酸カルシウムなど、またはそれらの混合物が含まれる。特定の実施形態では、本開示の固体分散体は、充填剤/結合剤として微結晶性セルロースおよびマンニトールの両方を含有する。上記の賦形剤はすべて市販されている。
【0094】
本開示の固体分散体中で使用することができる崩壊剤の非限定的な例には、重炭酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、およびクロスポビドンなど、またはそれらの混合物が含まれる。他の実施形態では、本開示の固体分散体には、崩壊剤として、重炭酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、およびクロスポビドンが含まれる。他の実施形態では、本開示の固体分散体には、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムが含有される。上記の崩壊剤はすべて市販されている。
【0095】
本開示の固体分散体中で使用することができる滑沢剤の非限定的な例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、カルナウバワックス、硬化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、およびステアリルフマル酸ナトリウムなど、またはそれらの混合物が含まれる。一態様では、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリルフマル酸ナトリウムである。他の実施形態では、本開示の固体分散体には、滑沢剤としてステアリルフマル酸ナトリウムが含まれる。上記の滑沢剤はすべて市販されている。
【0096】
本開示の固体分散体で使用することできる非限定的な例または可溶化剤には、タウロコール酸ナトリウム、ラブラゾール、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、コポビドン、Transcutol P、プロピレングリコール、Gelucire 44/14、HCO-60、エタノール、Cremophor EL 、Tween 80、2ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンおよびジメチルスルホキシドが含まれる。他の実施形態では、本開示の固体分散体には、可溶化剤として、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、コポビドンが含まれる。他の実施形態では、本開示の固体分散体には、可溶化剤として、ポロキサマー407、ポリエチレングリコール400、およびコポビドンが含まれる。上記の可溶化剤はすべて市販されている。
【0097】
別の実施形態では、本開示の固体分散体で使用される可溶化剤はポロキサマーを含む。ポロキサマーは、様々なグレードで入手可能である。入手可能なグレードの例には、ポロキサマー(68、88、98、108、124、188、237、338、および407)が含まれる。別の実施形態では、ポロキサマーはポロキサマー407である。上記のポロキサマーはすべて市販されている。
【0098】
本開示の他の実施形態では、化合物I対ポロキサマーの重量比は約2:3から約3:2の範囲にある。本開示の他の実施形態では、化合物I対ポロキサマーの重量比は約3:4から約4:3の範囲にある。本開示の他の実施形態では、化合物I対ポロキサマーの重量比は約4:5から約5:4の範囲にある。本開示の他の実施形態では、化合物I対ポロキサマーの重量比は約9:10から約10:9の範囲にある。本開示の他の実施形態では、化合物I対ポロキサマーの重量比は約1:1である。
【0099】
本開示の他の実施形態では、本明細書に記載の組成物のいずれかにおけるクロスポビドンは、Polyplasdone(登録商標)Ultra、Polyplasdone(登録商標)Ultra-10、Polyplasdone(登録商標)XL、またはPolyplasdone(登録商標)XL-10である。本開示の他の実施形態では、本明細書に記載の組成物のいずれかにおけるクロスポビドンは、Polyplasdone(登録商標)UltraまたはPolyplasdone(登録商標)Ultra-10である。
【0100】
本開示の他の実施形態では、化合物Iの固体分散体は、アモルファス製剤アプローチを使用して製造することができる。本開示の他の実施形態は、本開示に記載されているアモルファス製剤アプローチのいずれかによって製造される固体分散体に関する。特定の実施形態では、ホットメルト押出(HME)プロセスを使用して、化合物Iのアモルファス固体分散体製剤を製剤化することができる。他の実施形態では、噴霧乾燥分散プロセスを使用して、化合物Iのアモルファス固体分散体製剤を製剤化することができる。他の実施形態では、化合物Iのアモルファス固体分散体製剤はカプセル化または錠剤化することができる。他の実施形態では、化合物Iのアモルファス固体分散体製剤をカプセル化することができる。他の実施形態では、化合物Iのアモルファス固体分散体製剤を錠剤化することができる。
化合物Iの固体分散体の製造方法
ホットメルト押出により製造されるアモルファス化合物Iの固体分散体
【0101】
アモルファス化合物Iの固体分散体は、ホットメルト押出、粉砕、ブレンド、および任意に錠剤化を含むホットメルト押出プロセス(本明細書では製剤、HME固体分散体製剤、またはHME製剤と呼ぶ)を使用して製剤化できる。複数のホットメルト押出および粉砕バッチを組み合わせて、ブレンドおよび錠剤化を行ってより大きなバッチサイズにすることができる。
【0102】
固体分散体を作製するために使用される材料の量は、本開示に記載の実施形態のいずれかにおける重量百分率または比率の範囲内にある。
ホットメルト押出および粉砕
【0103】
適切な量の化合物Iおよび非限定的な例としてのコポビドンなどの1つ以上の可溶化剤をブレンダーに加えて、約5分間ブレンドする。使用できるブレンド/混合装置の非限定的な例には、拡散ミキサー(例えば、Vブレンダーまたはビンブレンダー)または対流ミキサー(例えば、垂直高強度ミキサー)が含まれる。別の実施形態では、Vブレンダーがブレンド/混合に使用される。次に、内容物をふるいにかけ、ブレンダーに戻して、約10分間ブレンドする。
【0104】
適切な量の1つ以上の可溶化剤(ポリエチレングリコール400(PEG400)など)を適切な容器に秤量する。押出機を設定するために追加の約20gのPEG 400を使用するが、この追加の約20gのPEG 400は固体分散体の一部ではなかった。適切な設定点を使用して押出機を設定し、約20gのPEG400を使用して流量を調整する。
【0105】
ブレンド物が供給ホッパーに追加され、押出プロセスが開始される。押出パラメータを、必要に応じて、調整および監視する。得られたペレット化押出物を収集し、秤量して適切な容器に入れることができる。
ブレンド
【0106】
粉砕した押出物に、本開示に記載されている量で以下の材料を加える。賦形剤、すなわち、非限定的な例としてコロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、および重炭酸ナトリウムなどの1つ以上の崩壊剤、非限定的な例としてのマンニトールおよび微結晶性セルロースなどの1つ以上の充填剤/結合剤、非限定的な例としてのポロキサマー407などの1つ以上の可溶化剤、非限定的な例としての塩化ナトリウムなどの1つ以上のオスモゲン、ならびに非限定的な例としてのラウリル硫酸ナトリウムなどの1つ以上の界面活性剤を、粉砕した押出物に加える前に、先ず秤量し、ふるいにかける/粉砕する。粉砕した押出物およびふるいにかけた賦形剤を、例えば、ビンブレンダーなどのブレンダーに加えて、ブレンドする。
【0107】
次に、ブレンダーに、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を加え、次に、それをブレンドする。滑沢剤を、ブレンダーに加える前に秤量して、ふるいにかけることができる。
【0108】
次に、錠剤化するために回転式錠剤プレスホッパにブレンドを移すことにより、ブレンドを錠剤化することができる。錠剤プレスを、目標のタブレットの重量、硬度、および破砕性を得るように設定することができる。錠剤化したブレンドを、錠剤の重量および硬度について監視することができる。
噴霧乾燥分散により製造されるアモルファス化合物Iの固体分散体
【0109】
固体分散体を作製するために使用する材料の量は、本開示に記載の実施形態のいずれかにおける重量百分率または比率の範囲内にある。
【0110】
非限定的な例としてのアセトンおよび水などの噴霧溶液溶媒、HPMCAS、1つ以上の界面活性剤および化合物Iを秤量して、適切な容器に入れる。界面活性剤を混合しながらステップ1の噴霧溶液にゆっくりと加え、続いて、化合物Iを加えて、混合を続ける。混合中、HPMCASをゆっくり加えて、混合を続ける。得られた溶液を、MS-150などの標準的な医薬品グレードの噴霧乾燥器を使用して噴霧乾燥する。噴霧乾燥の完了後、残留アセトンがICHガイドラインの5000ppm未満になるまで、噴霧乾燥分散体(SDD)をオーブンで乾燥させる。次に、乾燥したSDDを、乾燥剤を備えた適切な容器内に移して、湿気から保護する。このSDDは、開示されている範囲のイヌで示されている薬理活性を有することがテストされています。このSDDは、以下に説明するように乾式造粒およびブレンドによってさらに製剤化できる。
粒内賦形剤および粒外賦形剤との噴霧乾燥分散体の乾式造粒およびブレンド
【0111】
乾燥したSDDおよび粒内賦形剤を、適切な容器に分配することができる。使用される粒内賦形剤は、1つ以上の滑沢剤(非限定的な例としてのステアリルフマル酸ナトリウムなど)、1つ以上の流動促進剤(非限定的な例としてのコロイド状二酸化ケイ素)、1つ以上の崩壊剤(非限定的な例としてのクロスカルメロースナトリウムなど)、および1つ以上の充填剤/結合剤(非限定的な例としてのマンニトールおよび微結晶性セルロースなど)である。SDDおよび粒内賦形剤は、適切な大きさのブレンダーに加えられて、ブレンドされる。ブレンドをふるい(コミルなど)に通して、ブレンドの均一性を高め、大きい粒子を除去する。このブレンドをさらにブレンドして、次に、適切な容器に排出する。
【0112】
次に、ブレンドを乾式造粒して、TFC-220ローラーコンパクターなどの適切なローラーコンパクターを使用し、かつ選択したプロセスパラメータ(ロールタイプ、RPMおよびロール圧縮力)を使用することによって、リボンを得る。得られたリボンは粉砕されて(例えば、コミルを使用して行うことができる)、自由流動性造粒が得られる。
【0113】
次に、適切な量の粒外賦形剤を加える。粒外賦形剤には、錠剤圧縮用のブレンドを得るために造粒およびブレンドに対して、1つ以上の滑沢剤(非限定的な例としてのステアリルフマル酸ナトリウムなど)、1つ以上の流動促進剤(非限定的な例としてのコロイド状二酸化ケイ素およびクロスカルメロースナトリウムなど)が含まれる。
【0114】
次に、以下に記載するように、造粒したSDDを錠剤化し、パッケージングすることができる。
錠剤化
【0115】
造粒したSDDを、回転式錠剤プレスで錠剤化することができる。目標の錠剤の重量、硬度、および破砕性を得るように回転式錠剤プレスを設定する。初期始動時におよび約15分間隔で重量および硬度を監視できる。金属チェックおよび重量選別を錠剤について行うことができる。
【0116】
一実施形態では、本開示の組成物を調製する方法は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、および可溶化剤を混合することを含む。本開示の組成物を調製する上で使用することができる混合機器の非限定的な例には、拡散ミキサー(例えば、Vブレンダーもしくはビンブレンダー)または対流ミキサー(例えば、垂直高強度ミキサー)が含まれる。本開示の別の実施形態は、この方法によって調製される組成物に関する。
【0117】
他の実施形態では、本開示の組成物は、化合物Iの固体分散体および担体を含む。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、リポソームおよびナノ粒子(天然に備わっているナノ粒子、例えば、エキソソーム)などを含むことを意味する。エキソソームは、高度に効果的な薬物担体であり得ることが知られており、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、J Control Release,2015 December 10;219:396-405に記載される技法を含む、薬物をエキソソーム中に装填することができる様々な方法が存在する。
治療方法
【0118】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の固体分散体のいずれかの治療有効量を対象に投与することによって、それを必要とする対象における疾患または状態を治療する方法を提供する。
【0119】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の化合物Iの固体分散体を投与することを含む、BRAF変異関連疾患または状態を有する対象を治療する方法を提供する。他の実施形態では、BRAF変異関連疾患または状態はBRAF V600変異関連疾患または状態である。BRAF V600変異の非限定的な例には、V600E、V600K、V600A、V600G、V600M、およびV600Rが含まれる。他の実施形態では、BRAF変異関連疾患または状態はBRAF V600E変異関連疾患または状態である。
【0120】
BRAF V600E変異は、すべての黒色腫(Rajagopalan 2002)の約半分、および他の追加のがん、ならびに他の種類の疾患または状態で発生する。本明細書に記載の化合物Iの方法および使用について、以下のBRAF V600E変異関連疾患または状態が考えられる。
【0121】
BRAF V600変異関連疾患または状態の非限定的な例には、黒色腫(転移性黒色腫、3A期黒色腫、3B期黒色腫、3C期黒色腫、および皮膚色素沈着黒色腫を含む)、結腸直腸がん(結腸直腸腺がんを含む)(Cohen 2003)、甲状腺乳頭がん(Fukushima 2003、Kimura 2003、Xu 2003)、甲状腺未分化がん(Xu 2003)、漿液性卵巣がん(Nikiforova 2003)、非小細胞肺がん(Singer 2003)、胃がん(Brose 2002)、胆管がん(Lee 2003)、バレット食道がん(Tannapfel 2003)、頭頸部がん(Sommerer 2004、Weber 2003)が含まれる。BRAF V600変異関連がんの他の非限定的な例には、肝細胞がん(Colombino 2012)、ランゲルハンス細胞組織球症(Badalian-Very 2010)、消化管間質細胞腫瘍(Agaram 2008)、多発性骨髄腫(Chapman 2011)、小児星細胞腫(主にBRAFの重複)(Jones 2008、Pfister 2008、Sievert 2009)、多形性黄色星状細胞腫(Dias-Santagata 2011、Schindler 2011)、慢性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、二重表現型骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病、および有毛細胞白血病(Tiacci 2011)が含まれる。BRAF V600変異関連がんの他の非限定的な例には、良性および悪性の末梢神経鞘腫瘍などの末梢神経鞘腫瘍が含まれる(Serrano 2013)。BRAF V600変異は、母斑でも非常に頻繁に起こり(Pollock 2003)、メラノサイトに由来する一般的な異形成病変であり、休止状態にあり、したがって良性である。BRAF V600変異は、エルドハイム・チェスター病でも発生する。
【0122】
他のBRAF 600V関連の状態または障害には、炎症性および自己免疫疾患(関節リウマチなど)(Mol Immunol.2013 Oct;55(3-4):247-52)、腱滑膜巨細胞腫瘍、色素性絨毛結節性滑膜炎、腱鞘の巨細胞腫瘍、骨の巨細胞腫瘍、子宮頸がん(Gynecol Oncol.2007 June;105(3):662-6.)、子宮内膜がん(Fam Cancer.2014 Mar;13(1):1-12、胚細胞腫瘍(J Clin Oncol.2009 May 1;27(13):2129-36)、前立腺がん(Genes Chromosomes Cancer.2012 Nov;51(11):1014-23)、膀胱がん(Mol Cancer Res.2015 Mar 12. pii:molcanres.0689.2014)、筋膜腫(J Natl Cancer Inst.2014 Jul 25;106(8))、後腎腺腫(Am J Surg Pathol.2015 Apr;39(4):549-57、膵臓新生物(J Pathol.2014 Mar;232(4):428-35)、神経内分泌腫瘍(Am J Clin Pathol.2005 Feb;123(2):256-60)、内分泌腫瘍(Endocr Relat Cancer.2004 Dec;11(4):855-60)、副腎腫瘍(Endocr Relat Cancer.2009 Jun;16(2):565-72)、副腎髄質腫瘍、耳下腺嚢胞腺がん(Springerplus.2013 Dec 18;2:679.doi:10.1186/2193-1801-2-679)、多形性膠芽腫(World J Surg Oncol.2015 Mar 11;13:100)、胆管腺腫を含む胆管がん(Hepatology.2015 Jan;61(1):403-5、胆管がん、B細胞慢性リンパ増殖性疾患(Blood.2012 Jan 5;119(1):188-91)、樹状細胞肉腫(Ann Diagn Pathol.2015 Jun;19(3):113-6)、組織球性肉腫、およびリンパ腫(例えば、リヒター症候群、非ホジキンリンパ腫)(Cell.2015 Apr 9;161(2):319-32)が含まれる。
【0123】
本開示の実施形態38は、本明細書に記載されているその任意のサブ実施形態を含む、任意の実施形態1から37による固体分散体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、BRAF変異関連疾患または状態を治療する方法に関し、ここで、BRAF変異関連疾患または状態は、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺乳頭がん、乳頭頭蓋咽頭腫、甲状腺未分化がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、胃がん、胆管がん、バレット食道がん、頭頸部であるがん、肝細胞がん、乳がん、ランゲルハン細胞組織球症、胃腸間質細胞腫瘍(GIST)、多発性骨髄腫、小児星細胞腫、多形性黄色星状細胞腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、両側表現型B骨髄単球性白血病、白血病母斑、エルドハイム・チェスター病、悪性末梢神経鞘腫瘍、炎症性および自己免疫疾患、腱滑膜巨細胞腫瘍、色素性絨毛結節性滑膜炎、腱鞘の巨細胞腫瘍、骨巨細胞腫瘍、子宮頸がん、子宮内膜がん、胚細胞腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、筋膜細胞腫、後腎腺腫、膵臓腫瘍、神経内分泌腫瘍、内分泌腫瘍、副腎腫瘍、副腎髄質腫瘍、耳下腺の嚢胞腺がん、多形性膠芽腫、胆管腺腫を含む胆管がん、B細胞慢性リンパ増殖性疾患、樹状細胞肉腫、組織球性肉腫、またはリンパ腫である。
【0124】
本開示の実施形態38(a)は、実施形態38に関し、BRAF突然変異関連疾患または状態はエルドハイム・チェスター病である。
【0125】
本開示の実施形態38(b)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は黒色腫である。
【0126】
本開示の実施形態38(c)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、転移性黒色腫である。
【0127】
本開示の実施形態38(d)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、結腸直腸がんである。
【0128】
本開示の実施形態38(e)は、実施形態38に関し、BRAF突然変異関連疾患または状態は、乳頭状甲状腺がんである。
【0129】
本開示の実施形態38(f)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、乳頭状頭蓋咽頭腫である。
【0130】
本開示の実施形態38(g)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、卵巣がんである。
【0131】
本開示の実施形態38(h)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、未分化甲状腺がんである。
【0132】
本開示の実施形態38(i)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、非小細胞肺がんである。
【0133】
本開示の実施形態38(j)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、胃がんである。
【0134】
本開示の実施形態38(k)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、ランゲルハンス細胞組織球症である。
【0135】
この開示の実施形態38(l)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、小児星細胞腫である。
【0136】
本開示の実施形態38(m)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、神経膠芽腫である。
【0137】
本開示の実施形態38(n)は、実施形態38に関し、BRAF突然変異関連疾患または状態は、多発性骨髄腫である。
【0138】
本開示の実施形態38(o)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、前立腺がんである。
【0139】
本開示の実施形態38(p)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、膀胱がんである。
【0140】
本開示の実施形態38(q)は、実施形態38に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、GIST、胃がんまたはバレット食道がんである。
【0141】
本開示の実施形態38(r)は、実施形態38に関し、BRAF突然変異関連疾患または状態は、頭頸部がんである。
【0142】
本開示の実施形態39は、実施形態38に記載の方法に関し、BRAF変異関連疾患または状態は、肝細胞がん、ランゲルハンス細胞組織球症、エルドハイム・チェスター病、消化管間質細胞腫瘍、有毛細胞白血病、有毛細胞白血病、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺乳頭がん、甲状腺未分化がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、多形性膠芽腫、前立腺がん、胃がん、胆管がん、またはバレット食道がんである。
併用療法
【0143】
いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする動物対象において本明細書に記載の疾患または状態のいずれかを治療する方法を提供し、斯かる方法は、疾患または状態に対する1つ以上の他の治療法と組み合わせて、本開示の化合物Iの固体分散体の有効量を対象に投与することを含む。
A.別の薬剤と組み合わせた化合物I
【0144】
別の態様では、本開示は、有効量の本開示の化合物Iの固体分散体を1つ以上の適切な化学療法剤と共に対象に投与することにより、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法を提供する。一実施形態では、1つ以上の適切な化学療法剤は、アドゼレシン、アルトレタミン、ベンダムスチン、ビゼレシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルボコン、カルモフール、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、エストラムジン、エトグルシド、フォテムスチン、ヘプスルファム、イホスファミド、インプロスルファン、イロフルベン、ロムスチン、マンノスルファン、メクロレタミン、メルファラン、ミトブロニトール、ネダプラチン、ニムスチン、オキサリプラチン、ピポスルファン、プレドニムスチン、プロカルバジン、ラニムスティンク、サトラプラチン、セムスチン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、チオテパ、トレオスルファン、トリアジクオン、トリエチレンメラミン、四硝酸トリプラチン、トロホスファミド、およびウラムスチンなどを含むが、これらに限定されないアルキル化剤、アクラルビシン、アムルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エルサミトルシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ネオカルチノスタチン、ペントスタチン、ピラルビシン、プリカマイシン、バルルビシン、およびゾルビシンを含むが、これらに限定されない抗生物質、アミノプテリン、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロキシリジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキセート、ネララビン、ペメトレキセド、アザチオプリン、ラルチトレキセド、テガフールウラシル、チオグアニン、トリメトプリム、トリメトレキセト、およびビダラビンを含むが、これらに限定されない代謝拮抗剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤を含み、PD-1阻害剤(ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブなど)またはPD-L1(BMS-936559、MEDI4736、MPDL3280A、またはMSB0010718Cなど)などの免疫チェックポイント阻害剤、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、90Yイブリツマブチウキセタン、イピリムマブ、トレメリムマブ、および抗CTLA-4抗体を含むが、これらに限定されない免疫療法、アナストロゾール、アンドロゲン、ブセレリン、ジエチルスチルベストロール、エキセメスタン、フルタミド、フルベストラント、ゴセレリン、イドキシフェン、レトロゾール、ロイプロリド、マゼストロール、ラロキシフェン、タモキシフェン、およびトレミフェンを含むが、これらに限定されないホルモンまたはホルモンアンタゴニスト、DJ-927、ドセタキセル、TPI287、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、DHA-パクリタキセル、およびテセタキセルを含むが、これらに限定されないタキサン、アリトレチノイン、ベキサロテン、フェンレチニド、イソトレチノイン、およびトレチノインを含むが、これらに限定されないレチノイド、デメコルシン、ホモハリングトニン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、およびビノレルビンを含むが、これらに限定されないアルカロイド、AE-941(GW786034、Neovastat)、ABT-510、2-メトキシエストラジオール、レナリドマイド、およびサリドマイドを含むが、これらに限定されない抗血管新生剤、アムサクリン、ベロテカン、エドテカリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、エキサテカン、イリノテカン(同様に活性代謝産物SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン))、ルカントン、ミトキサントロン、ピキサントロン、ルビテカン、テニポシド、トポテカン、および9-アミノカンプトテシンを含むが、これらに限定されないトポイソメラーゼ阻害剤、アキシチニブ(AG013736)、ダサチニブ(BMS354825)、エルロチニブ、ゲフィチニブ、フラボピリドール、メシル酸イマチニブ、ラパチニブ、二リン酸モテサニブ(AMG706)、ニロチニブ(AMN107)、セリシクリブ、ソラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ、AEE-788、BMS-599626、UCN-01(7-ヒドロキシステアロスポリン)、およびバタラニブを含むが、これらに限定されないキナーゼ阻害剤、ボルテゾミブ、ゲルダナマイシン、およびラパマイシンを含むが、これらに限定されない標的シグナル伝達阻害剤、イミキモド、インターフェロン-α、およびインターロイキン-2を含むが、これらに限定されない生物学的応答調節剤、インドキシモドを含むが、これらに限定されないIDO阻害剤、ならびに3-AP(3-アミノ-2-カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン)、アルトラセンタン、アミノグルテチミド、アナグレリド、アスパラギナーゼ、ブリオスタチン-1、シレンギチド、エレスクロモル、メシル酸エリブリン(E7389)、イキサベピロン、ロニダミン、マソプロコール、ミトグアナゾン、オブリムセン、スリンダク、テストラクトン、チアゾフリン、mTOR阻害剤(例えば、INK28、AZD8055、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、デフォロリムス)、PI3K阻害剤(例えば、BEZ235、GDC-0941、XL147、XL765)、Cdk4阻害剤(例えば、PD-332991)、Akt阻害剤、Hsp90阻害剤(例えば、ゲルダナマイシン、ラディシコール、タネスピマイシン)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、チピファルニブ)およびアロマターゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない他の化学療法剤から選択される。本明細書に記載の方法および使用の別の実施形態では、本明細書に記載の固体分散体は、カペシタビン、5-フルオロウラシル、カルボプラチン、ダカルバジン、ゲフィチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、SN-38、テモゾロミド、ビンブラスチン、ベバシズマブと組み合わせて投与される、セツキシマブ、インターフェロン-α、インターロイキン2、またはエルロチニブから選択される化学療法剤と組み合わせて投与される。一実施形態では、化学療法剤はMek阻害剤である。例示的なMek阻害剤には、トラメチニブ、コビメチニブ、AS703026、AZD6244(セルメチニブ)、AZD8330、BIX02188、CI-1040(PD184352)、GSK1120212(JTP-74057)、PD0325901、PD318088、PD98059、RDEA119(BAY869766)、TAK-733およびU0126-EtOHが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、化学療法剤はチロシンキナーゼ阻害剤である。例示的なチロシンキナーゼ阻害剤には、AEE788、AG-1478(チルホスチンAG-1478)、AG-490、アパチニブ(YN968D1)、AV-412、AV-951(チボザニブ)、アキシチニブ、AZD8931、BIBF1120(バーガテフ)、BIBW2992(アファチニブ)、BMS794833、BMS-599626、ブリバニブ(BMS-540215)、ブリバニブアラニネート(BMS-582664)、セジラニブ(AZD2171)、クリソファン酸(クリソファノール)、クレノラニブ(CP-868569、CUDC-101、CYC116、ドビチニブジ乳酸(TKI258ジ乳酸)、E7080、塩酸エルロチニブ(タルセバ、CP-358774、OSI-774、NSC-718781)、フォレチニブ(GSK1363089、XL880)、ゲフィチニブ(ZD-1839またはイレッサ)、イマチニブ(グリーベック)、メシル酸イマチニブ、Ki8751、KRN633、ラパチニブ(タイケルブ)、リニファニブ(ABT-869)、マシチニブ(マシベット、AB1010)、MGCD-265、モテサニブ(AMG-706)、MP-470、ムブリチニブ(TAK165)、ネラチニブ(HKI-272)、NVP-BHG712、OSI-420(デスメチルエルロチニブ、CP-473420)、OSI-930、パゾパニブHCl、PD-153035HCl、PD173074、ペリチニブ(EKB-569)、PF299804、ポナチニブ(AP24534)、PP121、RAF265(CHIR-265)、Raf265誘導体、レゴラフェニブ(BAY73-4506)、トシル酸ソラフェニブ(ネクサバール)、リンゴ酸スニチニブ(スーテント)、テラチニブ(BAY57-9352)、TSU-68(SU6668)、バンデタニブ(ザクティマ)、二塩酸バタラニブ(PTK787)、WZ3146、WZ4002、WZ8040、カボザンチニブ、XL647、EGFR siRNA、FLT4 siRNA、KDR siRNA、メトホルミンなどの抗糖尿病剤、PPARアゴニスト(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、インデグリタザール)、およびDPP4阻害剤(シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、デュトグリプチン、ゲミグリプチン、アログリプチン)を含むが、これらに限定されない。別の実施形態では、化学療法剤はBET阻害剤(BRD2、BRD3、BRD4および/またはBRDTなど)である。別の実施形態では、化学療法剤はEGFR阻害剤である。例示的なEGFR阻害剤には、AEE-788、AP-26113、BIBW-2992(Tovok)、CI-1033、GW-572016、イレッサ、LY2874455、RO-5323441、タルセバ(エルロチニブ、OSI-774)、CUDC-101、セツキシマブおよびWZ4002が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、本開示は、トポイソメラーゼ阻害剤(イリノテカンなど)およびEGFR阻害剤(セツキシマブなど)と共に有効量の本明細書に記載の固体分散体を対象に投与することにより、それを必要とする対象のがんを治療する方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、Gタンパク質共役エストロゲン受容体(GPER)アゴニストと共に本明細書に記載の有効量の固体分散体を対象に投与することにより、それを必要とする対象のがんを治療する方法を提供する。
【0145】
他の実施形態では、本開示のBRAF変異関連疾患または状態を治療する方法は、CYP阻害剤と同時投与して、治療されている対象における化合物Iの曝露および有効性を改善することをさらに含む。
【0146】
本開示の実施形態40は、CYP阻害剤を前記対象に同時投与することをさらに含む、実施形態38、38(a)から34(r)および39のいずれか1つによる方法に関する。
【0147】
本開示の実施形態40(a)は、実施形態36に関し、固体分散体およびCYP阻害剤は連続して投与される。
【0148】
本開示の実施形態41は、実施形態36による方法に関し、CYP阻害剤はCYP3A阻害剤である。
【0149】
本開示の実施形態42は、実施形態41に記載の方法に関し、CYP3A阻害剤は、ボセプレビル、コビシスタット、コニバプタン、ダノプレビル、リトナビル、エルビテグラビル、リトナビル、グレープフルーツジュース、インジナビル、リトナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ロピナビル、リトナビル、パリナビル、パリナビル、リトナビルである、リトナビル、オンビタビル、ダサブビル、ポサコナゾール、リトナビル、サキナビル、リトナビル、テラプレビル、チプラナビル、リトナビル、トロレアンドマイシン、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、ジルチアゼム、イデラリシブ、ネファゾドン、ネルフィナビル、またはそれらの組み合わせである。
【0150】
本開示の実施形態42(a)は、実施形態41による方法に関し、CYP3A阻害剤は、ボセプレビル、コビシスタット、コニバプタン、ダノプレビルおよびリトナビル、エルビテグラビルおよびリトナビル、グレープフルーツジュース、インジナビルおよびリトナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ロピナビルおよびリトナビル、ポサコナゾール、リトナビル、サキナビルおよびリトナビル、テラプレビル、チプラナビルとリトナビル、トロレアンドマイシン、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、ジルチアゼム、イデラリシブ、ネファゾドン、ネルフィナビル、またはパリタプレビルおよびリトナビルとオンビタビルおよび/またはダサブビルである。
【0151】
本開示の実施形態43は、実施形態42に記載の方法に関し、CYP3A阻害剤はコビシスタットである。
B.別の治療法と組み合わせた化合物Iの固体分散体
【0152】
別の実施形態では、本開示は、がんを治療する上で有効な1つ以上の他の療法または医学的手技と組み合わせて、有効量の化合物Iの固体分散体を対象に投与することによって、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法を提供する。他の療法または医学的手技には、好適な抗がん療法(例えば、薬物療法、ワクチン療法、遺伝子療法、光線力学療法)、または医学的手技(例えば、外科手術、放射線治療、温熱療法、骨髄もしくは幹細胞移植)が含まれる。一実施形態では、1つ以上の好適な抗がん療法または医学的手技は、化学療法剤(例えば化学療法薬物)を用いる治療、放射線治療(例えば、x線、γ線、または電子、陽子、中性子、もしくはα粒子線)、温熱療法(例えば、マイクロ波、超音波、高周波アブレーション)、ワクチン療法(例えば、AFP遺伝子肝細胞がんワクチン、AFPアデノウイルスベクターワクチン、AG-858、同種GM-CSF-分泌乳がんワクチン、樹状細胞ペプチドワクチン)、遺伝子療法(例えば、Ad5CMV-p53ベクター、MDA7をコードするアデノベクター、アデノウイルス5-腫瘍壊死因子アルファ)、光線力学的療法(例えば、アミノレブリン酸、モテキサフィンルテチウム)、腫瘍溶解性ウイルスもしくはバクテリア療法、外科手術、または骨髄および幹細胞移植から選択される。特定の実施形態では、本開示は、有効量の本明細書に記載の化合物Iの固体分散体の成分を対象に投与することと、別々にまたは同時に本明細書に記載の放射線治療を適用することとによって、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法を提供する。一実施形態では、本開示は、有効量の本明細書に記載の化合物Iの固体分散体を対象に投与することによって、それに続いて放射線治療(例えば、X線、γ線、または電子、陽子、中性子、もしくはα粒子線)することによって、それを必要とする対象におけるがんを治療するための方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、放射線治療(例えば、X線、γ線、または電子、陽子、中性子、もしくはα粒子線)を対象に適用することによって、それに続いて有効量の本明細書に記載の化合物Iの固体分散体を対象に投与することによって、それを必要とする対象におけるがんを治療するための方法を提供する。さらに別の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の化合物Iの固体分散体および放射線治療(例えば、X線、γ線、または電子、陽子、中性子、もしくはα粒子線)を同時に対象に投与することによって、それを必要とする対象におけるがんを治療するための方法を提供する。
キナーゼ活性アッセイ
【0153】
キナーゼ活性についての複数の異なるアッセイを、活性モジュレーターをアッセイし、および/またはその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第US2016/0339025A1号に記載のものなどの特定のキナーゼまたはキナーゼの群に対するモジュレーターの特異性を決定するために、利用することができる。当業者であれば、利用することができる他のアッセイを容易に特定することができ、特定の用途のためにアッセイを修正することができる。例えば、キナーゼに関する多数の論文が、使用することができるアッセイを記載している。
【0154】
追加の代替的なアッセイは、結合判定を用い得る。例えば、この種類のアッセイは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)形式であるか、またはストレプトアビジンもしくはホスホ特異的抗体に結合するドナー試薬および受容体試薬を変化させることによるAlphaScreen(増幅発光近接均一性アッセイ)形式を使用する。
【0155】
本明細書で使用される場合、略語は、以下のそれぞれの意味を有する。
【表1】
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【実施例】
【0156】
本開示に関連する実施例を、以下に記載する。ほとんどの場合、代替的な技術を使用してもよい。実施例は、例示的であり、本開示の範囲の限定も、それへの拘束もされないことが意図される。
実施例1:化合物Iの合成
【0157】
当業者はまた、有機化学における標準的なワークアップ手順中に、酸および塩基が頻繁に使用されることを認識するであろう。親化合物の塩は、それらが必要な固有の酸性または塩基性を有する場合、本開示の中で記載している実験手順中に生成されることがある。さらに、化合物を、質量分析法、核磁気共鳴(NMR)分光法などの標準的な方法を使用して特徴づけた。
1H核磁気共鳴(NMR)分光法を、300MHzで動作する分光計を使用して行った。
ステップ1 (5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロフェニル)メタノン(3)の調製
【化3】
【0158】
50リットルのフラスコに1,2-ジクロロエタン(DCE、20L)を、続いて5-ブロモアザインドール(1)(2kg、10.152mol)を添加して、オレンジ色のスラリーが得られた。塩化アルミニウム(5.421kg、40.608mol)をフラスコにゆっくりと加えた。添加の最初の1.5kgは発熱性であり、その結果として暗色の液体が得られた。残りのAlCl
3を加えて、反応混合物が得られた。反応混合物に、2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンゾイルクロリド2(2.25kg、10.125mol)を、添加漏斗を介して1.5時間掛けて加えた。添加の間、反応温度を45℃以下に維持した。添加後、反応混合物を50℃で一晩撹拌し、室温(約22℃)まで冷却し、2つの別々の20Lフラスコに移した。水(25L)とアセトニトリル(12L)を50リットルのフラスコに加えて、0℃まで冷却した。反応混合物を、温度を40℃以下に保ちながら、水/アセトニトリル溶液を加えることによりクエンチした。得られた混合物を濾過し、濾液をアセトニトリル:水(1:1、2x4L)、水(4L)、アセトニトリル(4L)で洗浄し、真空乾燥した。化合物3が得られた。MS(ESI):M+H
+=383.9。
1H NMR(DMSO-d
6、δppm):7.55(1H,m)、8.47(2H,m)、8.53(1H,d,J=2.2Hz)、8.65(1H,d,J=2.2Hz)、13.25(1H,s)。
ステップ2 (3-アミノ-2,6-ジフルオロフェニル)-(5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)メタノン(4)の調製
【化4】
【0159】
50リットルのフラスコに、2-メチルテトラヒドロフラン(2-メチル-THF)(36L)、化合物3(2.85kg、7.455mol)、塩化スズ(II)(5.03kg、22.365mol)を加えた。混合物を60℃まで加熱した。反応終了後、反応を炭酸カリウム水溶液(20%)でクエンチした。得られた混合物を、セライトを用いて濾過し、固体残留物を2-メチル-THFおよびテトラヒドロフラン(THF)で洗浄した。濾液をNaCl水溶液(15L、10%)で洗浄し、有機層を分離した。有機層をNaCl水溶液(15L、20%)でさらに洗浄し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、化合物4を得た。MS(ESI):M+H
+=353および354。
1H NMR(DMSO-d
6、δppm):5.22(2H,s)、6.93(2H,m)、8.12(1H,s)、8.47(1H,dJ=2.3Hz)、8.54(1H,dJ-1.6Hz)、13.2(1H,s)。
ステップ3: (3-アミノ-2,6-ジフルオロ-フェニル)-[5-ブロモ-1-(2,6-ジクロロベンゾイル)ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]メタノン(5)
【化5】
【0160】
ステップ2で得られた化合物4(2.5kg、7.114mol)を50リットルのフラスコに加えて、9.3℃まで冷却した。50リットルフラスコ中の化合物4に、トリエチルアミン(0.864kg、8.537mol)を加え、続いて4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.087kg、0.7114mol)および2,6-ジクロロベンゾイルクロリド(1.34kg、6.40mol)の2-メチル-THF(25L)溶液を、2時間掛けて加えた。反応物を、メタノール(0.30L)を用いて室温でクエンチし、NaCl水溶液(12.5L、15%)およびセライト(0.5kg)を加えた。混合物を撹拌し、セライトを用いて濾過した。濾液を濃縮し、5倍容量のヘプタンを加えた。得られた溶液を約1時間撹拌した後、硫酸ナトリウム(1kg)で乾燥させ、濾過した。真空中で溶媒留去することにより、化合物5を単離した。MS(ESI):M+H
+=524、525.8、527.8。
1H NMR(DMSO-d
6、δppm):5.36(2H,s)、7.01(2H,m)、7.68(3H,s)、8.34(1H,brs)、8.61(1H,brs)、8.72(1H,dJ=2.3Hz)。
ステップ4: (3-(3-アミノ-2,6-ジフルオロベンゾイル)-5-(2-シクロプロピルピリミジン-5-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル)(2,6-ジクロロフェニル)メタノン
【化6】
【0161】
2メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)(1,720mL)中の化合物5(40g、0.076mol)および2-シクロプロピルプリミジン-5-イル-5-ボロン酸(化合物A)(23g、0.141mol)に、8%重炭酸ナトリウム(窒素でスパージング)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1g、0.0014mol)を加えた。混合物を加熱還流し、化合物6を得、これを単離し、洗浄し、乾燥させた。LCMS:m/z=564.0(M+H)
+。
1H NMR(DMSO-d6、δppm):9.05(s,2H)、9.00(s,1H)、8.62(s,1H)、8.58(s,1H)、7.70(m,3H)、7.04(m,2H)、5.36(brs,2H)、2.30(m,1H)、1.16(m,4H)。
ステップ5: (R)-N-(3-(5-(2-シクロプロピルピリミジン-5-イル)-1-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-カルボニル)-2,4-ジフルオロフェニル)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド
【化7】
【0162】
化合物6(15g、0.021mol)、1,4ジオキサン(150mL)、ピリジン(15mL、49.6mol)、および化合物B(3-R-フルピロリジンスルホニルクロライド、11.81g、0.063mol)をフラスコに入れた。反応物を室温で撹拌し、次に50℃に加熱し、一晩反応させた。次に、反応フラスコに酢酸エチル(60mL)および水(60mL)を加えた。有機層を分離し、洗浄し、活性炭(Darco KG-B、2.25g)で処理し、セライトパッドを用いて濾過し、化合物7を得た。1H NMR(DMSO-d6、δppm):9.70(s,1H)、9.02(s,2H)、8.81(m,2H)、8.57(m,2H)、7.71(m,2H)、7.38(m,2H)、5.24~5.37(2s,1H)、3.31~3.42(m,4H)、2.05~2.29(m,3H)、1.12(m,4H)。
【0163】
(R)-3-フルオロピロリジンスルホニルクロリド(化合物B)は、ジクロロメタン(293kg)およびトリメチルアミン(32kg)の溶液中、市販の3-R-フルオロピロリジンHCl塩(20kg、159.3mol)および市販の塩化スルフリル(21kg、155.6mol)を加える事により組み合わせることによって得られた。
ステップ6: (R)-N-(3-(5-(2-シクロプロピルピリミジン-5-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-カルボニル)-2,4-ジフルオロフェニル)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミドの調製
【化8】
【0164】
化合物7(26.9kg)をテトラヒドロフラン(95.8kg)に溶解させ、メタノール中の7Nアンモニア(50.2kg)を反応混合物に加えた。HPLCにより反応が完了したとみなされた後、化合物8は、ジクロロメタンとの溶媒交換により単離された。化合物8をテトラヒドロフランに溶解させ、濾過した後、濃縮し、分離した物質を精製、単離し、WFI(注射用水)中で粉砕した(17.8kg、収率87%)。
実施例2:ホットメルト押出法(HME)を使用したアモルファス化合物Iの固体分散体の製造プロセス
【0165】
化合物Iの代表的なバッチ組成は、以下の表1に示すようなものである。
表1:化合物Iの固体分散体組成
【表2】
a非ウシ由来を入手。
b量は、押出物粉砕プロセス中で、得られた化合物I/コポビドンブレンドに基づいて調整してもよい。
【0166】
アモルファスの化合物Iの固体分散体を製造する工程フロー図を、
図1に示す。
ホットメルト押出成形(HME)の製造工程および工程管理についての説明
ホットメルト押出製剤
【0167】
アモルファスの化合物Iの固体分散体は、ホットメルト押出、粉砕、ブレンド、および任意で錠剤化を含むホットメルト押出プロセス(本明細書では、製剤、HME固体分散体製剤、またはHME製剤と呼ばれる)を使用して製剤化できる。複数のホットメルト押出および粉砕バッチを組み合わせて、ブレンドおよび錠剤化を行って、より大きなバッチサイズにすることができる。
ホットメルト押出および粉砕
【0168】
ステップ1. 適切な量の化合物I(固体分散体製剤の約7.95w/w%)およびコポビドン(固体分散体製剤の約37.1w/w%)を、Vブレンダーに加えた。
【0169】
ステップ2. 1の内容物を約5分間ブレンドし、次に内容物を篩過した。
【0170】
ステップ3. ステップ2の内容物をVブレンダーに戻し、約10分間ブレンドした。
【0171】
ステップ4. 適切な量のポリエチレングリコール400(PEG400)(約7.95w/w%の固体分散体製剤)を、適切な容器で秤量した。追加の約20gのPEG 400を押出機のセットアップに使用した。この追加の約20gのPEG 400は、製剤の一部ではなかった。
【0172】
ステップ5. 適切な設定点を使用し、ステップ4からの約20gのPEG400を使用して流量を調整して、押出機を設定した。
【0173】
ステップ6. ステップ3による化合物Iのブレンドを、フィードホッパに加え、押出プロセスを開始した。押出パラメータを、必要に応じて、調整および監視した。
【0174】
ステップ7. 得られたペレット化された押出物を収集し、秤量した。
【0175】
ステップ8. ペレット化した押出物を適切な容器に入れた。
ブレンド
【0176】
ステップ9. 以下の材料を秤量し、ふるい分け/粉砕した:コロイド状二酸化ケイ素(固体分散体製剤の約1.0w/w%)、クロスカルメロースナトリウム(固体分散体製剤の約3.0w/w%)、クロスポビドン(固体分散体製剤の約7.0w/w%)、マンニトール(固体分散体製剤の約7.0w/w%)、微結晶性セルロース(固体分散体製剤の約8.0w/w%)、ポロキサマー407(固体分散体製剤の約6.0w/w%)、重炭酸ナトリウム(固体分散体製剤の約8.0w/w%)、塩化ナトリウム(固体分散体製剤の約4.0w/w%)、およびラウリル硫酸ナトリウム(固体分散体製剤の約2.0w/w%)。
【0177】
ステップ10. ステップ8による粉砕された押出物およびステップ9によるふるい分けされた賦形剤を、ビンブレンダーに加え、約30分間ブレンドした。
【0178】
ステップ11. ステアリン酸マグネシウム(固体分散体製剤の約1.0w/w%)を秤量し、篩過した。
【0179】
ステップ12. ステアリン酸マグネシウムを、ステップ10のビンブレンダーの内容物に加え、約5分間ブレンドした。
【0180】
ステップ13. ステップ12によるブレンドを、適切なラベル付けした容器に入れた。
錠剤化
【0181】
ステップ14. ステップ13によるブレンドを、回転式錠剤機ホッパに移した。
【0182】
ステップ15. 錠剤機は、目標のタブレットの重量、硬度、および破砕性が得られるように設定された。
【0183】
ステップ16. ブレンドを錠剤化し、錠剤の重量および硬度を、約15分毎に監視した。
【0184】
ステップ17. ステップ16による錠剤に関して、金属チェックおよび重量選別を行った。
【0185】
ステップ18. ステップ17により得られた錠剤は、必要に応じて、パッケージ化できる。
実施例3: 噴霧乾燥分散(SDD)を使用するアモルファスの化合物Iの、固体分散体の製造プロセス
表2:化合物Iの噴霧乾燥分散体製剤
【表3】
a処理中に除去された。
b概算の錠剤収率:最終ブレンド均一性サンプリングのアッセイに基づいて、錠剤1錠当たりのブレンドの重量を調整して、完成製剤のラベル表記100%を目標にしてもよい。
【0186】
噴霧乾燥分散による、アモルファスの化合物Iの固体分散体を製造するためのプロセスフロー図およびその表を
図2に示す。
製造プロセスおよびプロセス制御についての説明
【0187】
化合物IのSDD製剤は、噴霧乾燥分散を使用して初期噴霧乾燥分散体を形成し、それに続いて、SDDを乾式造粒し、ブレンドすることにより噴霧乾燥分散体最終ブレンドを製造することを含む、噴霧乾燥分散アプローチを用いて製造することができる。SDD最終ブレンドは、錠剤化して、対象に投与する前に包装することができる。
噴霧乾燥分散体(初期ブレンド)-最終ブレンドの60%w/w
【0188】
ステップ1. 噴霧溶液溶媒(アセトンおよび水)、HPMCAS-HG(噴霧乾燥分散体の70%w/w)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)(噴霧乾燥分散体の5%w/w)、および化合物I(噴霧乾燥分散体の25%w/w)を計量し、適切な容器に入れた。
【0189】
ステップ2. SLSを混合しながらステップ1の噴霧溶液にゆっくりと加え、続いて化合物Iを加え、目に見える粒子が観察されなくなるまで混合を続けた。
【0190】
ステップ3. 混合中、HPMCAS-HGをゆっくり加え、固体粒子が観察されなくなるまで混合を続けた。
【0191】
ステップ4. 得られた溶液を、MS-150などの標準的な医薬品グレードの噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥した。
【0192】
ステップ5. 噴霧乾燥の完了後、噴霧乾燥分散体(初期ブレンド)を、オーブン内で約8時間、残留アセトンがICHガイドラインの5000ppm未満になるまで乾燥した。
【0193】
ステップ6. ステップ5による乾燥されたSDDを、湿気から保護するために乾燥剤を備えた適切な容器に移した。
乾式造粒およびブレンド
【0194】
ステップ7. SDD(最終ブレンドの60%w/w)および粒内賦形剤を適切な容器に分注した。使用した粒内賦形剤は、ステアリルフマル酸ナトリウム(最終ブレンドの0.50%w/w)、コロイド状二酸化ケイ素(最終ブレンドの2%w/w)、クロスカルメロースナトリウム(最終ブレンドの3%w/w)、マンニトール(最終ブレンドの16%w/w)、および微結晶性セルロース(最終ブレンドの10.25%w/w)であった。
【0195】
ステップ8. SDDおよび粒内賦形剤を適切な大きさのブレンダーに加えて、12±5分間ブレンドした。
【0196】
ステップ9. ブレンドをコミルに通過させて、ブレンドの均一性を改善し、大きな粒子を除去した。
【0197】
ステップ10. ステップ9によるブレンドをさらにブレンドし、次に適切なコンテナに排出した。
【0198】
ステップ11. ステップ10によるブレンドを、TFC-220ローラーコンパクターなどの適切なローラーコンパクターを用いて、特定のプロセスパラメータ(ロールタイプ、RPM、ロール圧縮圧)で乾式造粒し、リボンを作成した。
【0199】
ステップ12. ステップ11により得られたリボンを、コミルを使用して粉砕し、自由流動性造粒した。
【0200】
ステップ13. 適切な量の粒外賦形剤(ステアリルフマル酸ナトリウム、微結晶性セルロース、およびクロスカルメロースナトリウム)を造粒物に加え、ブレンドし、錠剤圧縮用ブレンドを得た。
錠剤化および包装
【0201】
回転式錠剤機を、目標の錠剤の重量、硬度、および破砕性が得られるように設定した。
【0202】
最終ブレンドを錠剤化し、錠剤の重量および硬度を、初期の起動時および約15分間隔で監視した。
【0203】
錠剤について金属チェックおよび重量選別を行った。
表3:プロセス制御-噴霧乾燥分散
【表4】
pXRD=粉末X線回折
実施例4: 結晶性化合物Iおよびアモルファス化合物Iの固体分散体の比較研究
【0204】
次の表4は、3つの製剤、すなわち、結晶性化合物I製剤、アモルファス化合物Iの固体(噴霧乾燥)分散体、および化合物Iの固体(ホットメルト押出)分散体の組成ならびにそれらの比較を示している。
表4:3つの製剤の組成
【表5】
【表6】
USP=米国薬局方協会。NF=国民医薬品集
a非ウシ由来を入手。
bマンニトールの量は、化合物Iの量に基づいて調整される。
c品質基準はUSP-NFである。
化合物Iの結晶製剤
【0205】
化合物Iの製剤(表4に記載)は、結晶性製剤アプローチを使用して開発された。可溶化剤ビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコールコハク酸)およびポロキサマー407を加えて、溶解度とバイオアベイラビリティを向上させた。追加の公定医薬賦形剤が、標準的な機能を実行するために含まれた。
【0206】
結晶性製剤は、即時放出150mgカプセル製剤として製造され、ヒトの臨床試験で使用された。この試験において達成された最大暴露AUC
T=2500ng・時間/mL
(表5)は、期待目標有効暴露(74000ng・時間/mL)よりかなり低かった。この結晶性製剤を使用するヒトにおけるこの臨床研究の開始につながったかなり良好な前臨床試験データが存在している場合に、この結果は予期しないものである。このヒトにおける臨床試験は、この予期しない結果に基づいて中止され、150mgの結晶性カプセルはもはや使用されなくなった。
表5:化合物Iの結晶性製剤の薬物動態パラメータ
【表7】
C1D1=サイクル1、1日目。C1D15=サイクル1、15日目。
アモルファスの化合物Iの固体分散体製剤(75mg錠剤)
【0207】
化合物Iのアモルファス固体分散体を使用する製剤は、ヒトで観察された結晶性カプセル製剤の予想外の低曝露を克服するために開発された。固体分散体製剤を、ホットメルト押出し(HME)プロセスを使用して開発した。
【0208】
75mgの錠剤製剤(表4に記載している)は、本開示に記載しているホットメルト押出(HME)プロセスを使用して作製された。この75mgの錠剤は、ヒト臨床試験(健常人ボランティアにおける単回投与試験)および(がん患者における反復投与試験)で使用された。2つの治験の薬物動態(PK)パラメータを、表6および表7にまとめた。75mgHME錠剤として投与された化合物Iの単回投与後に、C
maxおよびAUCの両方で表される、用量に比例した曝露の増加が観察された(表6)。反復投与に続いて、評価最高用量(900mgのBID)での定常状態曝露AUC
T=68700ng・時間/mLが目標の有効な暴露に近づいた(表7)。
表6:ヒトにおける化合物Iの単回投与薬物動態パラメータ
【表8】
a中央値(最小-最大)。
表7:ヒトにおける化合物Iの反復投与薬物動態パラメータ
【表9】
*C1D1=サイクル1、1日目。C1D15=サイクル1、15日目。
【0209】
75mgHME錠剤の1つの制限は、所望の用量(900mgBID)での高い錠剤負荷であった。
アモルファスの化合物Iの固体分散体製剤(150mg錠剤)
【0210】
噴霧乾燥分散技術を使用した第2のアモルファス製剤は、HMEにより調製された75mg錠剤よりも錠剤の負担を低減し、錠剤の物理的特性を改善する、150mg錠剤として開発された。複数のSDDベースの錠剤製剤が、前臨床試験においてスクリーニングされた。表4に記載されているアモルファスの化合物Iの固体分散体(150mg錠剤)が、動物における加工性、錠剤の物理化学的特性、およびバイオアベイラビリティに基づいて選択された。イヌにおける単回投与PK試験で、2つの固体分散体アモルファス製剤(HMEおよびSDD)が、同様の暴露を示した(表8)。
表8:2つの異なる固体分散体アモルファス製剤を用いた、犬における45mg/kgでの化合物Iの薬物動態
【表10】
【0211】
SDD錠剤製剤は、単位投与用量を75mgから150mgに増やすことにより、患者の錠剤負荷を、1日当たり24錠から12錠に減らし、錠剤の物理的特性も改善した。
実施例5: CYP阻害剤の有無による、化合物I(HME)の薬物動態プロファイル
【0212】
CYP反応表現型分類分析により、化合物Iの代謝に関与している主要なチトクロームP450酵素としてCYP3A4が特定された。フェーズIの臨床試験では、幅広いスペクトラムのCYP阻害剤であるABTまたは選択的CYP3A4阻害剤であるコビシスタットの添加が、化合物Iの代謝を妨げることが観察された。
【0213】
フェーズ1のオープンラベル2パート試験を、(i)化合物Iの単回上昇投与の薬物動態(PK)および安全性を評価し、(ii)健常人における化合物IのPKへのCYP3A4阻害剤コビシスタットの効果の評価するために行った。平均年齢37歳の合計40人の成人を登録した。パートAでは、150~900mgの範囲の化合物Iの、4つの単回投与コホートに対象を登録し、PKデータを評価して、パートBで使用する最も適切な当量レベル(900mg)を選択した。パートBでは、パートAでの900mgコホートの進行中の対象が、7日間のウォッシュアウトを完了し、1日目から6日目に150mgのコビシスタットを1回、さらに3日目に900mgの化合物Iを1回経口投与を受け、このコホートに追加された新しい対象は、13日目に2回目の化合物Iの単独投与を受けた。追加のコホートは、1日目に300mgの化合物Iの単回経口投与、5~10日目にコビシスタットの150mgの単回経口投与、7日目にコビシスタットと併用した化合物Iの300mgの単回経口投与を受けた。各薬物のすべての投与は、空腹時に行われた。この試験では、ホットメルト押出(HME)プロセスで製造された化合物Iのアモルファス固体分散体製剤を使用した。PKパラメータを、表9Aおよび9Bにまとめた。
表9A:化合物Iの薬物動態プロファイル
【表11】
a中央値(最小-最大)として提示されたT
maxデータ。
表9B:化合物Iの薬物動態プロファイル
【表12】
【0214】
パートAでは、化合物Iは、絶食条件下で単回漸増用量として投与した場合、線形PKを示した。150から900mgの試験用量範囲に亘って、暴露は用量に比例して増加した。パートBは、2シーケンスクロスオーバー設計に従って、絶食状態の化合物Iの単回経口投与のPKに対するコビシスタット(CYP3A4阻害剤)の効果を評価した。コビシスタットの併用投与は、化合物Iの暴露を増加させた。化合物Iの単独投与と比較して、平均AUC0-tおよびAUC0∞は2.6倍(300mgレベル)および3.8倍(900mgレベル)増加し、平均Cmaxは1.8倍(300mgレベル)および2.7倍(900mgレベル)増加した。
実施例6: CYP阻害剤を用いた化合物I(HME)および(SDD)の薬物動態プロファイル
【0215】
噴霧乾燥分散技術を使用した化合物Iのアモルファス固体分散体製剤は、錠剤の負担を克服し、物理的特性を改善し、薬物を経口懸濁液として投与できるようにするために開発された。
【0216】
150mgの錠剤製剤(表4に記載)は、本開示に記載されている噴霧乾燥分散(SDD)プロセスを使用して作製された。この150mgの錠剤は、ヒトの臨床試験(がん患者の反復投与試験)で使用された。結果として得られる、化合物I[SDD]1350mgBID+コビシスタットの1日目のAUC
0~12(161,000ng・時間/mL、N=4)は、目標の推奨されるフェーズ2用量(RP2D)の曝露(AUC
0~12=149,000ng・時間/mL)の、80から125%の標準的な生物学的同等性の制限内にある。化合物I[SDD]1350mgBID+コビシスタットの定常状態(15日目)AUC
0~24(630,000ng・時間/mL、N=3)は、化合物I[HME]RP2D定常状態曝露より約1.8倍高い(AUC
0~24=用量漸増の場合は318,000/N=6、RP2D延長の場合は324,000ng・時間/mL/N=22)。治験の薬物動態(PK)パラメータを、表10にまとめた。900mgから2700mgへの曝露の用量比例的増加は、C
maxおよびAUCの両方で示されるように、150mgのSDD錠剤として投与された化合物Iの単回投与後に観察された(表10)。次の反復投与、評価最高用量(1350mgBID)での定常状態曝露AUC
T=315,000ng・時間/mLは、目標有効露光に近づいた(表10)。
表10:ヒトにおける化合物Iの反復投与薬物動態パラメータ
【表13】
*C1D1=サイクル1、1日目。C1D15=サイクル1、15日目。