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▶ シーニン ゴォンジィン ニューマテリアル テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】転動体保持器及び軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/46 20060101AFI20221111BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20221111BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20221111BHJP
   F16D 41/067 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
F16C33/46
F16C19/26
F16D41/06 B
F16D41/067
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020543037
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2019106908
(87)【国際公開番号】W WO2020063467
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】201811141584.9
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522381214
【氏名又は名称】シーニン ゴォンジィン ニューマテリアル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ヨウジェ
(72)【発明者】
【氏名】フゥァン,ジェミン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジェルー
(72)【発明者】
【氏名】スー,イェンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,インファ
(72)【発明者】
【氏名】フー,シュティン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジュン
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160937(JP,A)
【文献】特開2005-042792(JP,A)
【文献】特開平07-332401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/46-33/56
F16C 19/24-19/28
F16D 41/06-41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と外輪との間に転動可能に設置された転動体を保持する転動体保持器であって、
環状の保持器本体と、前記保持器本体に取り付けられた弾性付勢部材及び隙間保持部材とを含み、前記隙間保持部材は複数あり、前記保持器本体の周方向に沿って前記保持器本体の内環面又は外環面に並んで配置され、前記保持器本体と前記内輪の外環面との間又は前記保持器本体と前記外輪の内環面との間に転動可能に設置され、前記保持器本体と前記内輪の外環面との間又は前記保持器本体と前記外輪の内環面との間の隙間を保持し、前記保持器本体の外周面には、前記保持器本体の周方向に間隔を置いて設置された複数の位置制限孔が開設され、前記位置制限孔は、前記保持器本体の軸方向に沿って延在してころ状の転動体を通過させて収容し、各前記位置制限孔の内壁には、前記保持器本体の周方向に沿って前記転動体を弾性的に押圧する少なくとも1つの前記付勢部材が固定され、全ての前記付勢部材は、前記保持器本体の周方向の同一方向に沿って対応する転動体を押圧する、転動体保持器。
【請求項2】
各前記位置制限孔は、前記保持器本体の回転方向において対向する第1の内壁及び第2の内壁を含み、前記付勢部材は、各前記位置制限孔の前記第1の内壁に設置され、かつ自由端が前記第2の内壁に向かって延在する、請求項1に記載の転動体保持器。
【請求項3】
前記保持器本体の内環面又は外環面には、前記隙間保持部材を嵌設する溝が開設され、前記隙間保持部材は、前記溝内に転動可能に設置され、かつ直径が前記溝の深さよりも大きい、請求項2に記載の転動体保持器。
【請求項4】
前記溝は、環状であり、前記隙間保持部材は、前記溝の周方向に緊密に配列される、請求項3に記載の転動体保持器。
【請求項5】
前記溝は、少なくとも2つあり、2つの前記溝は、前記保持器本体の軸方向に間隔を置いて設置される、請求項4に記載の転動体保持器。
【請求項6】
前記保持器本体は、間隔を置いて対向して設置された2つの環状位置決めリングと、2つの前記位置決めリングの間に接続された複数の連結梁とを含み、前記溝は、前記位置決めリングの内輪面又は外輪面に開設され、隣接した2つの前記連結梁の間に前記位置制限孔が形成され、各前記連結梁に少なくとも1つの前記付勢部材が固定される、請求項5に記載の転動体保持器。
【請求項7】
前記付勢部材は、板ばねであり、前記保持器本体の前記連結梁の周面には、間隔を置いて2つの位置決め溝が開設され、前記付勢部材の一端は、前記連結梁の表面に巻き付けられ、かつ前記位置決め溝内に嵌設され、前記付勢部材の自由端は、前記位置制限孔の反対側の内壁に向かって延出する、請求項6に記載の転動体保持器。
【請求項8】
各前記位置制限孔の内壁には、2つの前記付勢部材が固定され、各前記位置制限孔内の2つの前記付勢部材は、それぞれ、前記保持器本体の軸方向の2つの異なる箇所で前記転動体を押圧する、請求項1に記載の転動体保持器。
【請求項9】
前記隙間保持部材は、玉又はころである、請求項2に記載の転動体保持器。
【請求項10】
各前記位置制限孔の前記第1の内壁と前記第2の内壁とは、互いに平行である、請求項2に記載の転動体保持器。
【請求項11】
内輪と、外輪と、転動体と、転動体保持器とを含み、前記転動体は複数あり、前記内輪と前記外輪との間に転動可能に設置され、前記転動体保持器は、前記内輪と前記外輪との間に設置され、環状の保持器本体と、前記保持器本体に取り付けられた弾性付勢部材及び隙間保持部材とを含み、前記隙間保持部材は複数あり、前記保持器本体の周方向に沿って前記保持器本体の内環面又は外環面に並んで配置され、前記保持器本体の外周面には、前記保持器本体の周方向に間隔を置いて設置された複数の位置制限孔が開設され、前記位置制限孔は、前記保持器本体の軸方向に沿って延在してころ状の転動体を通過させて収容し、各前記位置制限孔の内壁には、前記保持器本体の周方向に沿って前記転動体を弾性的に押圧する少なくとも1つの前記付勢部材が固定され、全ての前記付勢部材は、前記保持器本体の周方向の同一方向に沿って対応する転動体を押圧し、前記隙間保持部材は、前記保持器本体と前記内輪の外環面との間又は前記保持器本体と前記外輪の内環面との間に転動可能に設置され、前記転動体は、前記位置制限孔内に収容され、かつ前記付勢部材の作用で前記保持器本体に弾性的に当接する、軸受。
【請求項12】
各前記位置制限孔は、前記保持器本体の回転方向において対向する第1の内壁及び第2の内壁を含み、前記付勢部材は、各前記位置制限孔の前記第1の内壁に設置され、かつ自由端が前記第2の内壁に向かって延在する、請求項11に記載の軸受。
【請求項13】
前記保持器本体の内環面又は外環面には、前記隙間保持部材を嵌設する溝が開設され、前記隙間保持部材は、前記溝内に転動可能に設置され、かつ直径が前記溝の深さよりも大きい、請求項12に記載の軸受。
【請求項14】
前記溝は、環状であり、前記隙間保持部材は、前記溝の周方向に緊密に配列される、請求項13に記載の軸受。
【請求項15】
前記溝は、少なくとも2つあり、2つの前記溝は、前記保持器本体の軸方向に間隔を置いて設置される、請求項14に記載の軸受。
【請求項16】
前記保持器本体は、間隔を置いて対向して設置された2つの環状位置決めリングと、2つの前記位置決めリングの間に接続された複数の連結梁とを含み、前記溝は、前記位置決めリングの内輪面又は外輪面に開設され、隣接した2つの前記連結梁の間に前記位置制限孔が形成され、各前記連結梁に少なくとも1つの前記付勢部材が固定される、請求項15に記載の軸受。
【請求項17】
前記付勢部材は、板ばねであり、前記保持器本体の前記連結梁の周面には、間隔を置いて2つの位置決め溝が開設され、前記付勢部材の一端は、前記連結梁の表面に巻き付けられ、かつ前記位置決め溝内に嵌設され、前記付勢部材の自由端は、前記位置制限孔の反対側の内壁に向かって延出する、請求項16に記載の軸受。
【請求項18】
各前記位置制限孔の内壁には、2つの前記付勢部材が固定され、各前記位置制限孔内の2つの前記付勢部材は、それぞれ、前記保持器本体の軸方向の2つの異なる箇所で前記転動体を押圧する、請求項11に記載の軸受。
【請求項19】
前記隙間保持部材は、玉又はころである、請求項12に記載の軸受。
【請求項20】
各前記位置制限孔の前記第1の内壁と前記第2の内壁とは、互いに平行である、請求項12に記載の軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的伝動及び技術分野に関し、特に転動体保持器及び軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界の機械的伝動業界において、「低精度の軸心線平行な転動体」を適用する構造的な現象は、産業技術の発展を制約する根本的な障害である。
【0003】
ここで、「軸心線平行な転動体」とは、従来の機械的伝動構造、例えば、オーバーランニングクラッチ、軸受などの類似の構造では、駆動輪から従動輪へトルクを伝達するか又は駆動輪が従動輪に対して回転する過程において、駆動輪と従動輪との間にあり、トルクを伝達するか又は駆動輪と従動輪との間の隙間を保持する転動体の軸心線が伝動軸と平行で偏向しない必要があることを意味し、このような転動体は、一般的には、ころ、楔形ブロックなどの形態で登場し、理想的な状態では、同一の製品には、これらの転動体の長手方向(軸心線方向)は、駆動輪/従動輪の軸方向に一致する必要があり、このように、各転動体が駆動輪/従動輪の伝動過程においていずれもトルク伝達又は伝動に関与する作用を保証することができる。
【0004】
しかしながら、駆動輪と従動輪の製作精度が非常に高く、両者の径方向及び軸方向の寸法がいずれも転動体と正確にマッチングしても、実際の機械的伝動過程において、このような転動体は、何の前兆もなく軸方向に傾斜して伝動軸方向と平行ではなくなり、それで単一の転動体が局所的に力を受けて応力集中が発生してしまい、また各転動体の間の力も一致せず、それで伝動構造全体に応力が不均一になってしまい、局所的な摩耗、変形、つぶれなどで表現され、騒音、振動、損傷などが現れ、伝動構造の耐用年数を著しく短縮する。
【0005】
現在、市場にもこれら転動体の軸方向平行度を改善する設計がいくつか現れ、最も代表的な設計は、伝動構造に転動体保持器を設計することであり、その目的が各転動体の軸方向を一致させることであり、しかしながら、該保持器が固定されず、駆動輪と従動輪との間に浮くものであるため、保持器自体の位置を正確に固定できなくなり、さらに転動体の正確な軸方向平行度を実現できなくなる。このような欠点は、特にオーバーランニングクラッチ及び高速、重荷重軸受などの伝動用の基本的部品においてより顕著である。
【0006】
理想的な状態で、軸方向に設置された各転動体が軸心線に対して高精度な軸方向平行状態にあり、駆動輪と従動輪との間の隙間に転動体が自由に転動し、転がり伝達し、しかしながら、軸方向に設置された各転動体が高精度に平行であり得ない場合、動作時に駆動輪と従動輪との間の隙間内の動作状態は強制状態の押圧転び伝達になってしまう。
【0007】
図1に示すように、従来のトラックの軸受の応力概略図であり、軸受は、内輪A、外輪B、ころC及びころ保持器Dを含み、軸受の内輪Aは、固定された中心軸に取り付けられて回転せず、外輪Bは、時計回りに回転し、トラックの重力作用を受けて内輪Aは、下方のころCにより外輪Bに対して一定の圧力を印加し、上方のころCは、圧力を受けずに空転状態になり、ころ保持器D自身の位置が拘束されず、ころCを収容するころ保持器Dの位置制限孔の寸法もころCよりも大きく、ころCが位置制限孔内で周方向に実際の拘束力を受けないため、その両端は、任意に揺動する状態となり、上方の空転状態にあるころCは、圧力を受けない場合に任意に揺動し、外輪Bに連れて回転する過程において下方に入る場合、それは軸受の軸方向と完全に平行ではないため、その回転過程において内輪A、外輪Bの押圧力を同時に受けると、強制的な押圧転がり伝達が発生し、ころCが最下方に入るときに受ける押圧力が最大となる。理想的な状態で、ころCは、内輪A、外輪Bと線接触状態にあり、ころCが振れ状態にある場合、ころCと内輪Aの外弧面とは、一点(ころの中部寄りの接触点)接触状態となって力を受け、ころCと外輪Bの内弧面とは、二点(ころの両端寄りの接触点)接触状態となって力を受け、すなわち「強制状態の押圧転がり伝達」が発生し、典型的には、ころCの両端の振れ幅が大きいほど、その両端が限られた径方向の間隙内で受ける押圧力が大きくなり、発生する騒音、振動、損傷が大きくなり、軸受の内輪A、外輪Bに対する摩耗、損傷も大きくなる。
【0008】
このような軸受は、一定時間の使用された後に、一方では、ころに長期的に押圧転がり伝達が発生するため、ころの変形、深刻な摩耗、つぶれ等の現象が発生してしまい、他方では、軸受の内輪と外輪が長期的に非正常的に押圧され、必然的に非規則的な圧痕、圧溝等が現れ、ころの動作隙間がさらに増大し、かつ非規則的な隙間になり、ころの軸方向の合わせ精度がさらに低下し、軸受の破損プロセスがさらに速くなり、それで従来の軸受の耐用年数が一般的に短縮し、ころ保持器は、実際に顕著な役割を果たさない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の不足に鑑み、本発明は、転動体が稼働中においても高精度な軸方向平行度を保持することを保証し、構造の運転安定性と信頼性を大幅に向上させ、騒音を低減し、軸受の耐用年数を大幅に延長することができる、高い転動体平行度を保持する転動体保持器及び軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は次のような技術的解決手段を採用する。
【0011】
高い転動体平行度を保持する転動体保持器は、環状の保持器本体と、前記保持器本体に取り付けられた弾性付勢部材及び隙間保持部材とを含み、前記隙間保持部材は複数あり、前記保持器本体の周方向に沿って前記保持器本体の内環面又は外環面に並んで配置され、前記保持器本体の外周面には、前記保持器本体の周方向に間隔を置いて設置された複数の位置制限孔が開設され、前記位置制限孔は、前記保持器本体の軸方向に沿って延在してころ状の転動体を通過させて収容し、各前記位置制限孔の内壁には、周方向に沿って前記転動体を弾性的に押圧する少なくとも1つの前記付勢部材が固定される。
【0012】
一実施形態として、前記保持器本体の内環面又は外環面には、前記隙間保持部材を嵌設する溝が開設され、前記隙間保持部材は、前記溝内に転動可能に設置され、かつ直径が前記溝の深さよりも大きい。
【0013】
一実施形態として、前記溝は、環状であり、前記隙間保持部材は、前記溝の周方向に緊密に配列される。
【0014】
一実施形態として、前記溝は、少なくとも2つあり、2つの前記溝は、前記保持器本体の軸方向に間隔を置いて設置される。
【0015】
一実施形態として、前記保持器本体は、間隔を置いて対向して設置された2つの環状位置決めリングと、2つの前記位置決めリングの間に接続された複数の連結梁とを含み、前記溝は、前記位置決めリングの内輪面又は外輪面に開設され、隣接した2つの前記連結梁の間に前記位置制限孔が形成され、各前記連結梁に1つの前記付勢部材が固定される。
【0016】
一実施形態として、各前記位置制限孔の内壁には、2つの前記付勢部材が固定され、各前記位置制限孔内の2つの前記付勢部材は、それぞれ、前記保持器本体の軸方向の2つの異なる箇所で前記転動体を押圧する。
【0017】
一実施形態として、前記隙間保持部材は、玉又はころである。
【0018】
一実施形態として、各前記位置制限孔は、前記保持器本体の回転方向において対向する第1の内壁及び第2の内壁を含み、前記付勢部材は、各前記位置制限孔の前記第1の内壁に設置され、かつ自由端が前記第2の内壁に向かって延在する。
【0019】
一実施形態として、各前記位置制限孔の前記第1の内壁と前記第2の内壁とは、互いに平行である。
【0020】
本発明は、内輪と、外輪と、転動体と、高い転動体平行度を保持する転動体保持器とを含み、前記転動体は複数あり、前記内輪と前記外輪との間に転動可能に設置され、前記高い転動体平行度を保持する転動体保持器が前記内輪と前記外輪との間に設置され、前記隙間保持部材が前記保持器本体と前記内輪の外環面との間又は前記保持器本体と前記外輪の内環面との間に転動可能に設置され、前記転動体が前記位置制限孔内に収容され、かつ前記付勢部材の作用で前記保持器本体に弾性的に当接する、軸受を提供することを他の目的とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の転動体保持器は、転動体が伝動中に常に軸方向の高精度な平行度を保持することを保証し、設備の運転中の騒音、振動、損傷等の発生を最大限に回避することができ、軸方向に設置された各転動体が軸心線に対して高精度な軸方向平行状態にあり、駆動輪と従動輪との間の隙間に転動体が自由に転動し、転がり伝達し、理想的な状態の応力が実現され、軸受の耐用年数を大幅に延長する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術の重荷重用軸受の使用過程における応力概略図である。
図2】本発明の実施例に係る軸受の構造分解概略図である。
図3】本発明の実施例に係る軸受の構造概略図である。
図4図3のK-K矢視断面図である。
図5図4のM-M矢視断面図である。
図6】本発明の実施例に係る転動体保持器の構造分解概略図である。
図7】本発明の実施例に係る別の軸受の構造分解概略図である。
図8】本発明の実施例に係る別の軸受の構造概略図である。
図9図8のK1-K1矢視断面図である。
図10図9のM1-M1矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明において、「設ける」、「設置」、「接続」という用語は、広義に理解されるべきである。例えば、固定接続、取り外し可能な接続又は一体式構造であってもよく、機械的接続又は電気的接続であってもよく、直接的接続又は中間媒体による間接的接続、或いは2つの装置、素子又は構成部分の間の内部の連通であってもよい。当業者にとっては、具体的な状況に応じて上記用語の本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0024】
また、「上」、「下」、「左」、「右」、「頂部」、「底部」、「時計回り」、「反時計回り」、「内」、「外」、「中」、「鉛直」、「水平」などで示される方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものである。これらの用語は、主に本発明及びその実施例をよりよく説明するためのものであり、示される装置、素子又は構成部分が特定の方位を有するか又は特定の方位で構造及び操作を行う必要があることを限定するものではない。
【0025】
また、上記の部分用語は、方位又は位置関係を示す以外、他の意味を示し、例えば、用語「上」は、場合によって何らかの依存関係又は接続関係を示すことができる。当業者にとっては、具体的な状況に応じてこれらの用語の本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0026】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。理解すべきこととして、ここで述べた具体的な実施例は、単に本発明を解釈するものであり、本発明を限定するものではない。
【0027】
本発明に係る転動体保持器は、環状の保持器本体と、該保持器本体に取り付けられた弾性付勢部材及び隙間保持部材とを有し、隙間保持部材及び付勢部材がいずれも複数あり、隙間保持部材は、保持器本体の周方向に沿って保持器本体の内環面又は外環面に並んで配置され、保持器本体の外周面には、保持器本体の周方向に間隔を置いて設置された複数の位置制限孔が開設され、位置制限孔は、保持器本体の軸方向に沿って延在してころ状の転動体を通過させて収容し、各位置制限孔の内壁には、少なくとも1つの付勢部材が固定され、該付勢部材の自由端は、反対側の内壁に向かって延出し、転動体を位置制限孔内に組み立てた後に、周方向に沿って位置制限孔内の転動体を弾性的に押圧する。全ての付勢部材は、保持器本体の回転方向にある各位置制限孔の同じ側の内壁から反対側の内壁に向かって延出する(例えば、時計回り方向において、上流から下流に向かって延出する)。ここで、「上流」及び「下流」とは、回転方向において回転経路上にある2つの相対的な方位であり、回転方向において、「上流」から「下流」までの周方向移動方向は、回転方向と一致する。
【0028】
転動体保持器が軸受内に組み立てられた後に、転動体保持器は、軸受上の相対回転可能な内輪と外輪との間に位置し、かつ隙間保持部材により内輪又は外輪の背面を転動して内輪又は外輪との確実な位置制限の精度を確保し、転動体保持器は任意に動くことがなくなる。同時に、転動体保持器内に組み立てられたころ転動体は、付勢部材の弾性付勢力を受け、具体的には、軸受の上方にあるころ転動体は、外輪の圧力を受けず、かつ上流の付勢部材の付勢力の作用で位置制限孔の下流の内壁に当接されて転動又は軽微な転動が発生せず、これらのころ転動体は、位置制限孔の下流の内壁に密着して周方向に拘束され、絶対的な軸方向平行状態にあり、軸受の下方にあるころ転動体は、内輪と外輪の押圧力を同時に受けて転動して外輪の回転方向と一致するようになり、上方のころ転動体は、転動体保持器に連れて軸受の下方まで移動する場合、該ころ転動体は内輪と外輪の押圧力を同時に受けることで付勢部材が圧縮され、該ころ転動体は位置制限孔の下流の内壁から離脱し、周方向に拘束されずに転動することができ、該ころ転動体は、位置制限孔の下流の内壁から離脱する前に正確な軸方向付勢状態にあるため、後続の転動過程において高い軸方向精度を維持することができる。
【0029】
図2図5を示すように、本実施例では、高い転動体平行度を保持する転動体保持器30は、主に、環状の保持器本体31と、保持器本体31に取り付けられた弾性付勢部材32及び隙間保持部材331とを含み、隙間保持部材33は複数あり、保持器本体31の周方向に沿って保持器本体31の内環面又は外環面に並んで配置され、保持器本体31を軸受の内輪10又は外輪20に取り付けた後に、周方向に配列された隙間保持部材33により軸受の内輪又は外輪と高精度の隙間を保持することができ、かつ保持器本体31の周方向の回転に影響を与えない。ここで、玉又はころであってよい。
【0030】
図5及び図6に示すように、具体的には、保持器本体31の外周面には、保持器本体31の周方向に間隔を置いて設置された複数の位置制限孔312が開設され、位置制限孔312は、保持器本体31の軸方向に沿って延在してころ状の転動体40を通過させて収容し、各位置制限孔312の内壁には、周方向に沿って転動体40を弾性的に押圧する少なくとも1つの付勢部材32が固定される。
【0031】
なお、位置制限孔312の幅(すなわち、保持器本体31の周方向に沿う寸法)は、転動体40の径方向の寸法よりも僅かに大きく、位置制限孔312の長手方向は、保持器本体31の軸方向と同じであり、位置制限孔312の深さ方向は、保持器本体31の径方向であり、各位置制限孔312は、保持器本体31の回転方向において対向する第1の内壁及び第2の内壁を含み、付勢部材32は、各位置制限孔312の第1の内壁に設置され、かつ自由端が第2の内壁に向かって延在し、位置制限孔312の第1の内壁と第2の内壁とは、互いに平行であり、いずれも位置制限孔312の深さ方向と平行であり、すなわち位置制限孔312の幅方向に垂直であるため、転動体40が位置制限孔312内で完全に垂直な周方向の付勢力を受けて確実な位置制限が実現され、各位置制限孔312の第1の内壁はいずれも第2の内壁の上流/下流に位置する。
【0032】
好ましくは、位置制限孔312は、保持器本体31の周方向に均一に配置され、各位置制限孔312内に1つの転動体40が取り付けられ、転動体40は、転動体保持器30内の位置制限孔312の数と一致する。各位置制限孔312内の転動体40は、付勢部材32からの少なくとも2つの同じ方向の弾性押圧力を同時に受ける。例えば、1つの付勢部材32が転動体40の長手方向の少なくとも2つの異なる部位を同時に押圧してもよく、各位置制限孔312の内壁に2つの付勢部材32が固定され、各位置制限孔312内の2つの付勢部材32がそれぞれ転動体40の長手方向の2つの異なる部位に作用して転動体40を押圧してもよい。
【0033】
保持器本体31の内環面又は外環面には、隙間保持部材33を嵌設する溝311が開設され、隙間保持部材33は、溝311内に転動可能に設置され、かつ直径が溝311の深さよりも大きいため、隙間保持部材33の一部は、溝311外に突出する。ここで、溝311は、環状であり、隙間保持部材33が溝311の周方向に緊密に配列され、該溝311は、少なくとも2つあり、2つの溝311は、保持器本体31の軸方向に間隔を置いて設置され、保持器本体31が回転過程において軸方向のバランスを保持し、2つの溝311は、保持器本体31の軸方向の両端に開設されていることが好ましく、位置制限孔312の開設及び隙間保持具33の装着を容易にする。
【0034】
一実施形態として、保持器本体31は、間隔を置いて対向して設置された2つの環状位置決めリング3aと、2つの位置決めリング3aの間に接続された複数の連結梁3bとを含み、溝311は、位置決めリング3aの内輪面又は外輪面に開設され、隣接した2つの連結梁3bの間に位置制限孔312が形成され、各連結梁3bに1つの付勢部材32が固定される。
【0035】
さらに、本実施例の付勢部材32は、板ばねであり、保持器本体31の連結梁3bの外面には、間隔を置いた2周の位置決め溝Pが開設され、付勢部材32の一端は、連結梁3bの表面に巻き付けられ、かつ位置決め溝P内に嵌設され、付勢部材32の自由端は、位置制限孔312の反対側の内壁に向かって延出し、このように、位置制限孔312をより狭くし、位置制限孔312をより多く設計し、また、より多くの転動体40がより多くの押圧力を分担することができ、位置制限孔312が転動体40の径方向の半径方向の寸法により近づき、また軸方向の平行度を向上させることにさらに役立つ。他の実施形態では、付勢部材32の代わりに、圧縮ばね、ねじりばね等を使用してもよい。
【0036】
また、本発明は、内輪10、外輪20、転動体保持器30及び転動体40を含み、転動体40は複数あり、内輪10と外輪20との間に転動可能に設置され、転動体保持器30が内輪10と外輪20との間に設置され、隙間保持部材33が保持器本体31と内輪10の外環面との間又は保持器本体31と外輪20の内環面との間に転動可能に設置され、転動体40が位置制限孔312内に収容され、かつ付勢部材32の作用で保持器本体31に弾性的に当接する、上記転動体保持器30を有する軸受をさらに提供する。
【0037】
保持器本体31の内環面と外環面との間の距離、すなわち保持器本体31の肉厚は、転動体40よりも小さく、転動体40は、位置制限孔312内に位置し、かつ内輪10の外面と外輪20の内面に転動可能である。
【0038】
図2図6に示すように、間隙保持部材33が保持器本体31の内輪面に転動可能に設置された状況であり、溝311は、保持器本体31の内輪面に開設され、隙間保持部材33は、溝311内に間隔を置いて配列され、内輪10の両端にはそれぞれ面取り面10Sが設置され、転動体保持器30が軸受の内輪10に組み付けられると、隙間保持部材33は、面取り面10Sと溝311との間に位置する。転動体保持器30が内輪10に取り付けられると、転動体40を各位置制限孔312内に取り付けることにより各転動体40を付勢部材32によって位置制限孔312の第2の内壁に弾性的に当接させ、さらに外輪20を転動体保持器30に外嵌して軸受の軸方向に対して位置制限すれば組み立てを完了する。
【0039】
軸受端面の一位置制限態様として、軸受は、カラー50、止め輪60をさらに含むことができ、外輪20の一端の内面には、カラー50を係止する係止溝200が開設されている。外輪20を転動体保持器30に外嵌した後、まず止め輪60を外輪20に入れ、さらにカラーを係止溝200に係止し、保持器本体31が止め輪60によって軸方向に受け止められて軸方向の位置制限が実現される。
【0040】
以下、軸受の受圧過程において、転動体40の稼働状況を解析するが、ここでは、軸受の内輪10が回転せず、外輪20が時計回りに回転するという状況を例として説明する。なお、ここでの「内輪10が回転しない」ことは、外輪20に対する運動状況を意味し、実際の稼働中に、外輪20が回転せず、内輪10が回転してよい。
【0041】
本発明の高精度の軸心線保持器は、特に線状接触転動体の重荷重軸受に適し、図5に示すように、内輪10が下向きの圧力を受け、軸受の外輪20が受圧面(例えば、床面)に垂直な圧力を印加すると共に、外輪20が時計回りに回転する。この過程において、内輪10が受圧面へのわずかに偏心する状態であることが考えられ、軸受の軸心線Xの上方にある転動体40は、内輪40の縦方向の圧力を受けず、圧力が主に軸受の軸心線Xの下方にある転動体40に集中的に印加され、軸受の軸心線Xの下方にある転動体40は、内輪10、外輪20の押圧で時計回りに同期転動する。軸受の軸心線Xの上方にあるころ転動体40は、外輪20の圧力を受けず、かつ時計回り方向の付勢力の作用で位置制限孔312の下流の内壁(第2の内壁)に当接されて転動又は軽微な転動が発生せず、これらのころ転動体40は、位置制限孔312の下流の内壁に密着して周方向に拘束され、絶対的な軸方向平行状態にあり、上方のころ転動体40が転動体保持器30に連れて軸受の軸心線Xの下方まで移動した後、該転動体40が内輪10と外輪20の押圧力を同時に受けることで付勢部材32が圧縮され、位置制限孔312の下流の内壁から離脱し、周方向に拘束されずに転動することができ、該転動体40は、受けた押圧力が徐々に大きくなるため、外輪20の内面を外輪2と共に同期転動し、該転動体40が位置制限孔312の下流の内壁から離脱する前に高い軸方向精度を保持するため、周方向の揺動が発生せず、転動体40は、軸受の軸心線Xから時計回りに最下方まで移動する過程において、受けた押圧力が徐々に大きくなり、転動体40は、下方から軸受の軸心線Xの他側(図5の左側)まで移動する過程において、受けた押圧力が徐々に小さくなり、付勢部材32は、変形を復元して転動体40を再び位置制限孔312の下流の内壁まで押し付けて保持器本体31に連れて回転する。
【0042】
図7図10に示すように、隙間保持具33が保持器本体31の外輪面に転動可能に設置された状況であり、溝311’は、保持器本体31の外環面に開設され、隙間保持部材33は、溝311’内に間隔を置いて配列され、まず、外輪20を保持器本体31と隙間保持部材33の外面に外嵌し、さらに各転動体40を各位置制限孔312内に取り付けることにより各転動体40を付勢部材32によって位置制限孔312の第2の内壁に弾性的に当接させ、転動体保持器30を軸受の外輪20に組み付けると、隙間保持部材33は、外輪20と溝311’との間にある。転動体保持器30を外輪20に取り付けた後、さらに内輪10を転動体保持器30内に挿設し、軸受の軸方向に対して位置制限すれば組立を完了する。
【0043】
前述した軸受の実施形態との相違点は、本実施形態には、内輪10の一端の外面にカラー50を係止する係止溝100を開設することができることである。内輪10が転動体保持器30内に挿設された後、まず、止め輪60を内輪10に嵌設し、さらに、カラー50を係止溝100に係入し、保持器本体31が軸方向に止め輪60によって受け止められて軸方向の位置制限が実現される。
【0044】
本発明の転動体保持器は、転動体が伝動中に常に軸方向の高精度な平行度を保持することを保証し、設備の運転中の騒音、振動、損傷等の発生を最大限に回避することができ、軸方向に設置された各転動体が軸心線に対して高精度な軸方向平行状態にあり、駆動輪と従動輪との間の隙間に転動体が自由に転動し、転がり伝達し、理想的な状態の応力が実現され、軸受の耐用年数を大幅に延長する。
【0045】
以上の説明は、本願の具体的な実施形態に過ぎず、説明すべきこととして、当業者にとって、本願の原理から逸脱することなく、さらに複数の改善及び修正を行うことができ、これらの改善及び修正も本願の保護範囲内にあると考えられる。
図1
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