(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】制御装置、空調システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20221111BHJP
F24F 11/47 20180101ALI20221111BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20221111BHJP
F24F 11/48 20180101ALI20221111BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20221111BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
H02J3/14 130
F24F11/47
F24F11/54
F24F11/48
G06Q50/06
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2021039406
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 律子
(72)【発明者】
【氏名】町田 芳広
(72)【発明者】
【氏名】小坂 忠義
(72)【発明者】
【氏名】藤平 達
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/020953(WO,A1)
【文献】特開2019-033613(JP,A)
【文献】特開2000-029531(JP,A)
【文献】特開2016-205736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/14
F24F 11/47
F24F 11/54
F24F 11/48
G06Q 50/06
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を消費する複数の機器の消費電力を制御する制御装置であって、
デマンドレスポンスサービスの開始時刻よりも前に、前記複数の機器のうち少なくとも一部の機器の運転を開始させ、前記少なくとも一部の機器の運転開始タイミングを異ならせ、かつ前記少なくとも一部の機器のデマンドレスポンスサービス期間中の消費電力の時間変化の周
期を異ならせる運転制御部を備える制御装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記デマンドレスポンスサービスの開始時刻よりも前に、前記少なくとも一部の機器の運転を停止させ、その後、前記少なくとも一部の機器の運転を開始させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記デマンドレスポンスサービスの開始時刻を取得する取得部を備え、
前記運転制御部は、前記取得部が前記開始時刻を取得した後、デマンドレスポンスサービスの前記開始時刻よりも前に、前記少なくとも一部の機器の運転を開始させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記少なくとも一部の機器の運転開始タイミングを、各機器の消費電力の時間変化の周期及び消費電力の振幅の少なくとも一方に応じて異ならせる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記複数の機器それぞれの消費電力に基づいて、前記周期及び前記振幅の少なくとも一方を特定する特定部をさらに備える、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記周期及び前記振幅の少なくとも一方に基づいて、前記運転開始タイミングを異ならせる対象機器を決定する機器決定部をさらに備える、請求項4又は5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記機器決定部は、前記デマンドレスポンスサービスにおいて定められる電力の評価期間と、前記複数の機器それぞれの前記周期と、に基づいて、前記対象機器を決定する、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記周期に基づいて、前記対象機器それぞれの前記運転開始タイミングを決定するタイミング決定部をさらに備える、請求項6又は7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記タイミング決定部は、さらに前記振幅に基づいて、前記運転開始タイミングを決定する、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記運転制御部は、前記対象機器の前記運転開始タイミングのいずれよりも前に、同一のタイミングで、前記対象機器の運転を停止させる、請求項
6に記載の制御装置。
【請求項11】
前記運転制御部は、前記複数の機器を前記周期及び前記振幅の少なくとも一方に基づいてグループ化し、同一のグループに属する機器の前記運転開始タイミングを異ならせる、請求項4乃至9の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記運転制御部は、前記複数の機器を、前記機器の種類に基づいてグループ化し、同一のグループに属する前記機器の前記運転開始タイミングを異ならせる、請求項1乃至10の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記機器は、空気調和機又は前記空気調和機が備える圧縮機であって、
前記運転制御部は、前記空気調和機の電源のオン、前記空気調和機の運転モードの変更、または前記空気調和機の設定温度の変更により、前記空気調和機又は前記圧縮機の前記運転開始タイミングを異ならせる、請求項1乃至12の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
圧縮機を備えた複数の空調機と、前記複数の空調機とネットワークを介して接続する制御装置とを備えた空調システムであって、
前記制御装置は、
デマンドレスポンスサービスの開始時刻よりも前に、前記複数の空調機のうち少なくとも一部の機器の運転を開始させ、前記少なくとも一部の空調機の運転開始タイミングを異ならせ、かつ前記少なくとも一部の機器のデマンドレスポンスサービス期間中の消費電力の時間変化の周
期を異ならせる運転制御部を備える空調システム。
【請求項15】
電力を消費する複数の機器とネットワークを介して接続するコンピュータを、
デマンドレスポンスサービスの開始時刻よりも前に、前記複数の機器のうち少なくとも一部の機器の運転を開始させ、前記少なくとも一部の機器の運転開始タイミングを異ならせ、かつ前記少なくとも一部の機器のデマンドレスポンスサービス期間中の消費電力の時間変化の周
期を異ならせる運転制御部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、空調システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力消費機器の節約した電力を発電量として扱うネガワットの概念が現れた。太陽光発電や家庭用燃料電池などのコージェネレーション、蓄電池、電気自動車など、需要家側に導入される分散型のエネルギーリソースを電力システムに活用するバーチャルパワープラント構想と、新しい電力の需給調整サービス市場の整備が進んでいる。この電力の周波数調整に係る電力需給調整のデマンドレスポンス(DR)サービスでは、例えば、系統運用者からの削減指示電力に応じて、需要家側が5分毎に±10%の精度で電力制御しながら機器を運転することを3時間持続することが求められる。つまり、電力需要家側は、DRサービスに参加している期間(DR期間)中は、エアコンや照明などの電力消費機器群を、目標の消費電力値を保つよう、できるだけフラットな(上下動の無い)状態で運転させる必要がある。
【0003】
一方で、例えば、空調機や冷凍機、ヒートポンプ給湯器のようなインバータ圧縮機を搭載した電力消費機器の場合、ユーザ操作や室温、気温、各種保護制御運転によって、圧縮機の運転周波数は時々刻々変化する。このため、圧縮機を搭載した電力消費機器においては、その消費電力も時々刻々大きく変化する。特に空調機では、消費電力の大部分を占める圧縮機の消費電力が、ある一定の位相で大きく上下動する場合がある。そして、多数の空調機が接続する空調システムにおいては、個々の機器の電力変動周期が同期すると、システム全体の消費電力は、いよいよ変動の大きいものとなってしまう可能性がある。
【0004】
特許文献1には、複数の電気機器の協調電力制御システムにおいて、各電気機器の突入電流のパターンを記憶し、複数の突入電流が重ならないようにすることで一定の総電力を超えないようにする技術が開示されている。また、一般的に、起動電源オン時(運転開始時)には大きな突入電流が発生することから、例えば、停電復旧時に、家中の各機器の運転再開時刻をずらす仕組みも知られている。これにより、家中の機器が一斉に運転を再開することに起因した、多大な電力が発生するのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術においては、起動時の瞬間的な消費電力の増大を防ぐことはできる。しかしながら、DRサービスにおいては、消費電力を一定期間において継続的に目標電力に対して一定の誤差範囲に収めるような制御を行う必要があり、特許文献1の技術は、このような継続的な制御に適用することができない。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、複数の機器の総消費電力を平滑化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電力を消費する複数の機器の消費電力を制御する制御装置であって、デマンドレスポンスサービスの開始時刻よりも前に、前記複数の機器のうち少なくとも一部の機器の運転を開始させ、前記少なくとも一部の機器の運転開始タイミングを異ならせ、かつ前記少なくとも一部の機器のデマンドレスポンスサービス期間中の消費電力の時間変化の周期を異ならせる運転制御部を備える。
【0009】
本発明の他の形態は、圧縮機を備えた複数の空調機と、前記複数の空調機とネットワークを介して接続する制御装置とを備えた空調システムであって、前記制御装置は、デマンドレスポンスサービスの開始時刻よりも前に、前記複数の空調機のうち少なくとも一部の機器の運転を開始させ、前記少なくとも一部の空調機の運転開始タイミングを異ならせ、かつ前記少なくとも一部の機器のデマンドレスポンスサービス期間中の消費電力の時間変化の周期を異ならせる運転制御部を備える。
【0010】
本発明の他の形態は、電力を消費する複数の機器とネットワークを介して接続するコンピュータを、デマンドレスポンスサービスの開始時刻よりも前に、前記複数の機器のうち少なくとも一部の機器の運転を開始させ、前記少なくとも一部の機器の運転開始タイミングを異ならせ、かつ前記少なくとも一部の機器のデマンドレスポンスサービス期間中の消費電力の時間変化の周期を異ならせる運転制御部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の機器の総消費電力を平滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】機器情報記憶部のデータ構成を示す図である。
【
図4】周期特性記憶部のデータ構成を示す図である。
【
図5】1台の空調機の消費電力の時間変化を示す図である。
【
図9】評価期間に比べて十分に小さい周期の電力変化例を示す図である。
【
図10】平滑化計画のデータ構成例を示す図である。
【
図11A】5台の空調機を同時に起動した場合の電力変化を示す図である。
【
図11B】5台の空調機を異なるタイミングで起動した場合の電力変化を示す図である。
【
図12】86台の空調機を異なるタイミングで起動した場合の電力変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態に係る空調システム1の全体構成図である。空調システム1は、電力需給調整のデマンドレスポンス(以下、DRサービスと称する)に対応した、電力管理を行う。空調システム1は、制御装置10と、複数の空調機(空気調和機)20と、を備える。制御装置10は、複数の空調機20を管理する。制御装置10はまた、DRサービス事業者の運営するDR管理サーバ2とネットワーク3を介して接続されている。制御装置10とDR管理サーバ2との通信は、有線でも無線でもよい。制御装置10は、DRサービスの必要に応じて、DR管理サーバ2から、DRサービスへの参入の指令やDRサービスからの離脱の指令、電力削減指示、目標電力などを受信し、これらの情報に従い、管理下の空調機20の消費電力を制御する。制御装置10は、また空調機20における消費電力の実績などの情報をDR管理サーバ2へ送信する。
【0014】
空調機20は、1台の室外機21と、室外機21と冷媒配管4を介して接続される4台の室内機22とを含む。例えば1つのビル内に、複数の空調機20が設けられる。空調機20としては、例えば、業務用空調機、所謂ビルマルチエアコン等が挙げられる。例えば、1つのビルの各フロアに1つの空調機20に属する4台の室内機22が設置される。なお、各室外機21は、ビルの屋上等の屋外に設置される。室内機22は、例えば天井等に設置される。
【0015】
制御装置10と、空調機20とは空調通信網5により接続され、空調用ネットワークが形成される。空調通信網5は、有線でも無線でもよい。本実施形態においては、各空調機20に含まれる室外機21及び室内機22のすべてが制御装置10と接続する。空調通信網5を介して、各空調機20の機器情報が、各空調機20の室外機21から制御装置10に送信される。ここで、機器情報とは、各室内機22の運転のオンオフ、運転モード、設定温度など、機器の運転状況に関する情報である。機器情報には、さらに、空調機20の消費電力が含まれる。また、制御装置10から各空調機20に対し、運転指令が送信される。運転指令とは、各室内機22の運転のオンオフ、設定温度、運転モード等の指令を示す情報である。また、制御装置10から各室外機21へ運転指令が送信されるものとする。なお、室外機21は、運転のオンオフ、運転モード、設定温度などの情報を各室内機22から受信するものとする。また、室外機21は、運転指令を受信すると、指令の対象の室内機22へこれを送信するものとする。
【0016】
ただし、制御装置10と空調機20の間で機器情報及び運転指令の送受信が実現されればよく、そのための通信網の接続形態、各情報の送受信の主体は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、室外機21は、同一の空調機20内の各室内機22と接続し、室内機22は、室外機21を介して制御装置10と接続するような形態でもよい。また、他の例としては、各空調機20の代表の1台の室内機22が、制御装置10と接続し、同一の空調機20内の室外機21及び室内機22は、代表の室内機22を介して制御装置10と接続するような形態でもよい。この場合、代表の室内機22が室外機21及び他の室内機22と制御装置10との間の情報の送受信を行えばよい。
【0017】
図2は、制御装置10の構成図である。制御装置10は、制御部100と、記憶部110と、機器通信部120と、DR管理サーバ通信部130と、クロック140と、ユーザIF部150と、を備える。制御部100は、CPU、ROM、RAM等を備える。制御部100は、記憶部110やROMに記憶された種々のプログラムを実行することにより、管理下の空調機20の消費電力を制御するための処理を行う。記憶部110は、ハードディスク等であり、各種情報や、各種プログラムを格納している。本実施形態においては、記憶部110は、機器情報記憶部111と、周期特性記憶部112と、DR情報記憶部113と、平滑化計画記憶部114とを記憶する。
【0018】
図3は、機器情報記憶部111のデータ構成を示す図である。機器情報記憶部111は、管理下の複数の空調機20それぞれの機器情報を記憶する。本実施形態においては、機器情報は、消費電力と、運転状態と、運転モードと、各室内機の設定温度、室温、外気温などを含む。機器情報には、また、これらの情報が検出された時刻が含まれる。機器情報記憶部111には、1台の空調機に対し、時系列に沿った複数の機器情報が履歴として蓄積される。なお、
図3には、「空調1」で識別される1台の空調機20の機器情報のみを示したが、機器情報記憶部111には制御装置10の管理下のすべての空調機20の機器情報が記憶される。
【0019】
図4は、周期特性記憶部112のデータ構成を示す図である。周期特性記憶部112は、制御装置10の管理下のすべての空調機20の周期特性を記憶する。具体的には、周期特性記憶部112には、空調機20を識別する機器IDと、周期特性とが対応付けて記憶される。ここで、周期特性は、空調機20の運転開始からの時間経過に伴う、消費電力の変動特性である。空調機20の消費電力の変動は、周期性を有しており、周期特性は、この周期に関する情報である。本実施形態においては、周期特性は、周期と、振幅と、を含む。なお、本実施形態においては、各周期における振幅の平均値が振幅として記憶されるものとする。ただし、他の例としては、各周期における振幅の最大値が振幅として記憶されてもよい。
【0020】
図2に戻り、機器通信部120は、空調通信網5を介して、室外機21及び室内機22との通信を行う。DR管理サーバ通信部130は、ネットワーク3を介してDR管理サーバ2と通信を行う。クロック140は、時刻をカウントするリアルタイムクロックである。ユーザIF部150は、入力部と出力部とを備える。ユーザIF部150は、例えば、ディスプレイを備えたタッチパネルである。
【0021】
制御部100は、DR制御を行う。DR制御は、DRサービスに対応した空調機20の運転制御である。DRサービスに参加した需要家は、DRサービスが開始されると、制御装置10の管理下の複数の空調機20の総消費電力が、DRサービスにおいて指示される目標電力の±10%の誤差範囲内に収まるように制御しなければならない。さらに、総消費電力が、DRサービスにおいて指示される目標電力の誤差範囲内に収まっているか否かは、DRサービスにおいて定められた評価期間を単位として評価される。DRサービスに参加する期間(以下、DR期間と称する)及び評価期間は、特に限定されないが、本実施形態においては、それぞれ30分及び5分とする。この場合、DR期間に含まれる6つの評価期間それぞれにおいて、総消費電力が目標電力の誤算範囲内に収まっているか否かの評価が行われる。
【0022】
図5は、1台の空調機20の消費電力の時間変化を示す図である。
図5に示すグラフの横軸は時刻、縦軸は消費電力を示す。なお、
図5に示す消費電力の時間変化は、同じ設定での運転が実施された期間において得られたものである。空調機20の消費電力は、圧縮機の消費電力とほぼ等しい。圧縮機の消費電力は、その回転数に依存する部分が大きく、その圧縮機の回転数を設定する周期に応じて、
図5に示すように、空調機20の消費電力は大きく変動する場合が多い。このような消費電力の変動に対し、5分の評価期間における消費電力は、各評価期間の起点がどのタイミングになるかにより大きく変動してしまう。このため、DR期間中において、DRサービスにおける目標電力を継続して満たすことは困難である。
【0023】
また、本実施形態に係る空調システム1のように、同じ種類の機器(空調機20)が多数存在する場合には、各機器の消費電力の変動の周期が同期した場合には、空調システム1の全体の消費電力の変動も増幅する可能性がある。しかし、その一方で、各機器の消費電力の変動の周期がずれている場合には、各機器の変動が相殺されることで、空調システム1の全体の消費電力を平滑化(平均化)することができる。
【0024】
そこで、本実施形態の制御部100は、このような各機器の消費電力の周期をずらすことで、空調システム1の全体の総消費電力の変動を小さくするような制御を行う。このように、空調システム1の全体の総消費電力の変動が小さくなれば、評価期間の起点のタイミングによらず、常に、空調システム1の総消費電力を、目標電力の誤差範囲内に収めることができる。さらに、上述のように、空調機20においては、その消費電力のほとんどが圧縮機の消費電力である。そこで、本実施形態の制御装置10は、機器の消費電力として圧縮機の消費電力を制御することとする。すなわち、本実施形態の制御装置10が消費電力制御の対象とする機器は、圧縮機であり、制御装置10は、圧縮機の消費電力を空調機20の消費電力とみなして消費電力の制御を行う。すなわち、圧縮機は、電力を消費する機器の一例である。
【0025】
制御部100は、このような処理を実現するための機能構成として、機器情報取得部101と、DR情報取得部102と、周期特性特定部103と、対象機器決定部104と、タイミング決定部105と、運転制御部106と、を備える。なお、これらの機能は、CPUが記憶部110等に格納されるプログラムを読み出し、このプログラムを実行することにより実現されるものである。すなわち、以降において、各機能部が実行するものとして記載する処理は、制御部100が実行する処理である。
【0026】
また、本実施形態においては、制御部100は、コンピュータにより実現されるものとするが、制御部100の機能の少なくとも一部は、ハードウェア回路により実現されてもよい。また、他の例としては、制御部100の機能や処理の少なくとも一部は、例えば複数のCPU、RAM、ROM、及びストレージを協働させることにより実現してもよい。
【0027】
機器情報取得部101は、機器通信部120を介して、各室外機21から機器情報を取得する。なお、室外機21には、外気温を検出する温度センサが設けられており、室内機22には、室温を検出する温度センサ(不図示)が設けられているものとする。
【0028】
DR情報取得部102は、DR管理サーバ通信部130を介して、DR管理サーバ2からDR情報を取得する。ここで、DR情報は、DR開始時刻、DR終了時刻、DRにおける目標電力、DR期間等を含む。DR情報取得部102は、取得したDR情報を、機器IDに対応付けてDR情報記憶部302に格納する。
【0029】
周期特性特定部103は、機器情報取得部101が取得した各空調機の機器情報に含まれる消費電力に基づいて、各空調機20の消費電力の周期及び振幅、すなわち周期特性を特定する。周期特性特定部103は、各空調機20を識別する機器IDに対応付けて、周期特性を周期特性記憶部112に格納する。
【0030】
対象機器決定部104は、各空調機20の周期及び振幅に基づいて、再起動処理の対象となる空調機20を決定する。ここで、再起動処理とは、DR制御の開始前に、空調機20の電源をいったんオフし、再度電源をオンする処理である。本実施形態の制御部100は、空調機20の運転開始タイミングを異ならせるために、再起動処理を行う。以下では、再起動処理の対象となる空調機20を対象機器と称する。
【0031】
タイミング決定部105は、各空調機20の周期に基づいて、対象機器の運転停止タイミング及び運転開始タイミング及びを決定する。ここで、運転停止タイミングは、再起動処理において電源をオフする時刻、すなわち停止時刻である。運転開始タイミングは、再起動処理において、電源をオフした後で再び電源をオンする時刻、すなわち起動時刻である。対象機器決定部104により決定された対象機器それぞれの停止時刻及び起動時刻が平滑化計画記憶部114に書き込まれることで、平滑化計画が生成される。
【0032】
図6は、室外機21の主要構成図である。室外機21は、DR制御に係る構成として、制御部211と、記憶部212と、通信部213と、圧縮機214と、センサ群215と、を主に備えている。制御部211は、CPU、ROM、RAM等を備える。制御部211は、記憶部212やROMに記憶された種々のプログラムを実行することにより、室外機21の全体を制御する。記憶部110は、各種情報や、各種プログラムを格納している。通信部213は、空調通信網5を介して他の機器との通信を行う。
【0033】
圧縮機214は、冷媒配管4と接続し、冷媒を圧縮する。センサ群215には、圧縮機214の消費電力を計測する電力センサや、圧力を計測する圧力センサ、外気温や冷媒配管温度を測定する温度センサが含まれる。なお、センサ群215は、これ以外のセンサを含んでもよい。制御部211は、電力センサにより得られた消費電力や温度センサにより得られた外気温と、室内機22から取得した運転モード、設定温度、室温等の情報と、を機器情報として、通信部213を介して制御装置10へ送信する。
【0034】
図7は、制御装置10によるDR制御処理を示すフローチャートである。DR制御処理は、制御装置10の電源がオンされた場合に開始される。まず、ステップS101において、機器情報取得部101は、空調機通信タイミングか否かを確認する。空調機通信タイミングは、例えば、10秒など予め定められた定期的なタイミングであるものとする。機器情報取得部101は、クロック140のカウントを参照し、空調機通信タイミングか否かを判定する。機器情報取得部101は、空調機通信タイミングでない場合には(ステップS100でN)、処理をステップS104へ進める。機器情報取得部101は、空調機通信タイミングの場合には(ステップS100でY)、処理をステップS102へ進める。
【0035】
ステップS102において、機器情報取得部101は、すべての空調機20の機器情報の取得要求を各機器(室外機21及び室内機22)へ送り、これに対する応答として機器情報を取得する。機器情報取得部101は、さらに、取得した機器情報を機器情報記憶部111に格納する。このように、機器情報取得部101は、定期的にすべての機器から機器情報を取得し、これを機器情報記憶部111へ格納する。
【0036】
次に、ステップS104において、周期特性特定部103は、クロック140のカウントを参照し、解析タイミングか否かを判定する。解析タイミングは、例えば毎日0時等予め定められた定期的なタイミングであるものとする。周期特性特定部103は、解析タイミングでない場合には(ステップS104でN)、処理をステップS108へ進める。周期特性特定部103は、解析タイミングの場合には(ステップS104でY)、処理をステップS106へ進める。
【0037】
ステップS106において、周期特性特定部103は、周波数解析を行う。具体的には、周期特性特定部103は、機器情報記憶部111に格納されている、前日の24時間分の、すべての機器情報を参照する。そして、周期特性特定部103は、運転している状態が一定時間継続している場合に、その消費電力の時系列データを周波数解析し、支配的な周波数を変動特性として抽出する。ここで、一定時間は例えば3時間とする。また、周期特性特定部103は、消費電力がゼロでないことを条件に運転していると判断する。周期特性特定部103は、抽出された変動特性における周期と振幅を求め、これを周期特性として周期特性記憶部112に機器IDに対応付けて格納する。このように、周期特性特定部103は、制御装置10の管理対象の複数の機器(空調機20)それぞれの周期特性(周期及び振幅)を特定する特定部の一例である。
【0038】
なお、空調機通信タイミングや解析タイミングは、予め設定されているものとするが、例えば、ユーザIF150経由で、使用者が任意に設定、変更可能であるものとする。
【0039】
制御部100は、このように、ステップS100からステップS106の処理を定期的に繰り返すことで、機器情報及び周期特性をそれぞれ機器情報記憶部111及び周期特性記憶部112に格納する。なお、周期特性記憶部112には、最新の周期特性が格納されていればよく、新たな周期特性が格納される際に、既に記憶されている過去の周期特性は削除されるものとする。ただし、他の例としては、周期特性記憶部112は、過去の周期特性も履歴として記憶することとしてもよい。
【0040】
次に、ステップS108において、DR情報取得部102は、DR管理サーバ2からの通知の有無を確認する。DR管理サーバ2は、DRサービスを実施する日の前日中に、DRサービスの予定として、DR開始時刻、DR終了時刻(又は継続時間)、評価期間を制御装置10へ通知する。DR管理サーバ2はさらに、DRサービスの実施の当日の開始時刻から1時間前に、DRサービスにおける目標電力を制御装置10へ通知する。DR情報取得部102は、これらの通知を受信する。
【0041】
DR情報取得部102は、DR管理サーバ2からの通知がない場合には(ステップS108でN)、処理をステップS112へ進める。DR情報取得部102は、DR管理サーバ2からの通知がある場合には(ステップS108でY)、処理をステップS110へ進める。ステップS110において、DR情報取得部102は、通知内容をDR情報としてDR情報記憶部113に格納する。DR情報には、DR開始時刻、DR終了時刻、評価期間、目標電力などが含まれる。
【0042】
次に、ステップS112において、運転制御部106は、処理時点がDR準備開始時刻か否かを判定する。ここで、DR準備開始時刻は、DR情報記憶部113に格納されているDR開始時刻よりも一定時間前の時刻である。ここで、一定時間は、予め定められた時間であり、本実施形態においては、1時間に設定されているものとする。運転制御部106は、DR準備開始時刻でない場合には(ステップS112でN)、処理をステップS118へ進める。運転制御部106は、DR準備開始時刻の場合には(ステップS112でY)、処理をステップS114へ進める。
【0043】
ステップS114において、運転制御部106は、すべての空調機20のDR自動運転を開始する。具体的には、運転制御部106は、すべての空調機20の不図示のリモコンにおける操作を無効とし、すべての空調機20の運転モードを遠隔自動運転モードに設定する。ここで、遠隔自動運転モードとは、リモコンからの操作を無効とし、制御装置10からの指示に従い、運転を行う動作モードである。
【0044】
次に、ステップS116において、制御部100は、平滑化処理を行う。平滑化処理は、DR期間において、すべての空調機20の総消費電力がDRサービスにおいて要求される目標電力の誤差範囲に収まるように、総消費電力量を平滑化するように、運転開始タイミングを異ならせる処理である。
【0045】
図8は、
図7を参照しつつ説明した平滑化処理における詳細な処理を示すフローチャートである。ステップS200において、対象機器決定部104は、管理下の複数の空調機20の中から、1台の空調機20を処理対象として選択する。そして、処理対象の空調機20の機器情報及び周期特性をそれぞれ機器情報記憶部111及び周期特性記憶部112から読み出す。次に、ステップS202において、対象機器決定部104は、処理対象の空調機20の機器情報を参照することで、処理対象の空調機20が、処理時点において、運転中か否かを確認する。対象機器決定部104は、運転中でない場合には(ステップS202でN)、処理をステップS208へ進める。対象機器決定部104は、運転中の場合は(ステップS202でY)、処理をステップS204へ進める。
【0046】
ステップS204において、対象機器決定部104は、処理対象の空調機20が、DR評価に影響を与えるか否かを、下記、第1条件及び第2条件に基づいて判定する。ここで、DR評価に影響を与えるとは、処理対象の空調機20の消費電力が、評価期間において、制御装置10の管理下の空調機20の総消費電力が目標電力の誤差範囲を超える要因になり得る可能性があることである。対象機器決定部104は、処理対象の空調機20が第1条件及び第2条件の少なくとも一方を満たす場合にDR評価に影響を与えると判定する。
【0047】
第1条件は、処理対象の空調機20の振幅が(式1)を満たすことである。なお、(式1)における振幅としては、周期特性記憶部112に格納されている値が用いられる。
処理対象の空調機の振幅>すべての空調機の振幅の合計値×0.025 …(式1)
振幅が他の空調機20の振幅に比べて十分に小さい場合には、DR評価に影響を与える可能性が低い。そこで、このような空調機20は、DR評価に影響しないと判定される。換気や送風専用で圧縮機を搭載せず、電力消費がフラットに推移するような空調機20等は、第1条件を満たさない可能性が高い。
図4に示す周期特性においては、機器ID「空調7」及び「空調8」で特定される2台の空調機20は、第1条件を満たさない。したがって、これらの空調機20は、DR評価に影響を与えないと判定される。
【0048】
また、上記の通り、「振幅が小さい」という判定については、絶対値ではなく、空調システム1の全体の総消費電力に対する相対値で判定を行うこととする。これは、他の空調機20の振幅に対し、相対的に小さければDR評価への影響が小さいことに起因する。また、本実施形態においては、「0.025」を係数として用いているが、すべての空調機20の合計値に対して乗じる係数は、管理者等が任意に設定可能であるものとする。
【0049】
第2条件は、周期が(式2)を満たすことである。なお、(式2)における周期としては、周期特性記憶部112に格納されている値が用いられる。
(評価期間/4)<処理対象の空調機の周期<(DR期間) …(式2)
【0050】
処理対象の空調機20の周期が評価期間よりもはるかに小さい場合には、評価期間内において、消費電力の変動が平均化され、消費電力推移はフラットに見える。したがって、周期が「評価期間/4」以下の場合には、評価に影響を与えないと判定されるようにした。
図9は、周期が評価期間に比べて十分に小さい周期の電力変化の例を示す図である。
図9に示すグラフの横軸は時刻、縦軸は電力を示す。このように、周期が小さい場合には、評価期間である5分間の平均電力の変動は小さく、したがって、DR評価への影響は小さい。
【0051】
一方、周期がDR期間よりも十分に長い場合には、運転開始タイミングを異ならせたとしても、その効果がDR期間中に現れない。そこで、周期が「DR期間」以上の場合には、評価に影響を与えないと判定されるようにした。
【0052】
図4に示す周期特性においては、周期が75s(評価期間(5分)/4)以下の機器ID「空調3」の空調機20と、周期がDR期間(30分)以上の機器ID「空調5」及び「空調13」の空調機20は、評価に影響を与えないと判定される。
【0053】
対象機器決定部104は、DR評価に影響を与えないと判定した場合には(ステップS204でN)、処理をステップS208へ進める。対象機器決定部104は、DR評価に影響を与えると判定した場合には(ステップS204でY)、処理をステップS206へ進める。ステップS206において、対象機器決定部104は、処理対象の空調機20を、再起動処理の対象機器として決定する。このように、対象機器決定部104は、空調機20の振幅及び周期と、評価期間と、DR期間と、に基づいて、当該空調機20を対象機器とするか否かを決定する。
【0054】
なお、他の例としては、対象機器決定部104は、振幅及び周期の何れか一方のみに基づいて、対象機器を決定してもよい。例えば、対象機器決定部104は、第1条件及び第2条件の何れか一方のみに基づいて、対象機器を決定してもよい。
【0055】
次に、ステップS208において、対象機器決定部104は、管理下のすべての空調機20に対し、ステップS200~ステップS206の処理により対象機器とするか否かの判定が完了したか否かを確認する。対象機器決定部104は、未処理の空調機20が残っている場合には(ステップS208でN)、処理をステップS200へ進める。対象機器決定部104は、すべての空調機20に対し判定が完了した場合には(ステップS208でY)、処理をステップS210へ進める。以上のように、対象機器決定部104は、運転中かつDR評価に影響を与える空調機20を、再起動処理の対象となる対象機器として決定する。
【0056】
ステップS210において、タイミング決定部105は、各対象機器の運転開始の順番、すなわち再起動の順番と、ずらし時間を決定する。このとき、タイミング決定部105は、ステップS200~ステップS208において対象機器として決定された各空調機20の周期、振幅及び対象機器の台数を参照する。タイミング決定部105は、例えば、すべての空調機20の、周期と振幅とに基づいて、DR期間中の振幅の平均が最小になるようなずらし時間の組み合わせを算出する最適化計算を行う。そして、タイミング決定部105は、各対象機器の運転開始の順番とずらし時間を、平滑化計画記憶部114に書き込む。次に、ステップS212において、タイミング決定部105は、各対象機器の起動時刻及び停止時刻を決定し、これらを平滑化計画記憶部114に書き込む。これにより、平滑化計画の登録が完了する。
【0057】
図10は、平滑化計画のデータ構成例を示す図である。平滑化計画においては、再起動の順番に機器IDが格納される。さらに、各機器IDに対応付けて、ずらし時間、起動時刻及び停止時刻が格納される。
【0058】
各対象機器の起動時刻及び停止時刻を決定する処理について説明する。タイミング決定部105は、まず、DR開始時刻の一定時間前を基準機器の起動時刻として決定する。一定時間は、本実施形態においては5分とする。なお、この時間は、DR開始時刻よりも前タイミングであればよい。また、基準機器は、対象機器のうち最後の順番が割り当てられた機器とする。そして、タイミング決定部105は、各対象機器に対して設定されたずらし時間だけ前の時刻を1つ前の対象機器の起動時刻として決定する。タイミング決定部105は、この処理を1番目の対象機器まで繰り返すことですべての対象機器の起動時刻を算出する。このように、タイミング決定部105は、制御装置10の管理下の複数の機器のうち少なくとも一部の機器を対象機器として決定し、各対象機器の起動時刻、すなわち運転開始タイミングを、各対象機器の周期及び振幅に応じて異ならせるような制御を行う。
【0059】
なお、本実施形態においては、タイミング決定部105は、上述のように、周期及び振幅に基づいて起動時刻(運転開始タイミング)を決定したが、タイミング決定部105は、周期及び振幅のいずれか一方に基づいて、起動時刻を決定してもよい。例えば、タイミング決定部105は、周期が一致しないように起動時刻を決定してもよい。また、他の例としては、タイミング決定部105は、振幅が大きいタイミングが一致しないような起動時刻を決定してもよい。これにより、運転制御部106は、周期及び振幅の少なくとも一方に応じて、対象機器の運転開始タイミング異ならせるような制御を行うことができる。
【0060】
タイミング決定部105はさらに、各対象機器の起動時刻よりも所定時間前の時刻を停止時刻として決定する。停止時刻は、基本的に空調機20の消費電力の周期(位相)をずらす運転制御には影響を与えない。そこで、機器の性質や都合に合わせて起動時刻の前の適当な時刻が停止時刻として設定されればよい。本実施形態のように、制御対象の機器が空調機の場合は、室温が変わってユーザに不快感を与えないよう、停止から起動までの時間は短い方がよい。一方で、圧縮機214の保護のため、圧縮機214の運転のオンオフの間隔は、3、4分間あける必要がある。本実施形態においては、このような事情を鑑み、開始時刻の一定時間前として、5分前が設定されているものとする。すなわち、これにより、再起動処理を実行しつつも、ユーザに不快感を与えるような、運転制限を行わないようにすることができる。
【0061】
他の例としては、停止時刻は、すべての対象機器に対し同一のタイミング、すなわち同一時刻としてもよい。例えば、上記のように、停止から起動までの時間が短い方がよいといった事情がない場合には、タイミング決定部105は、同一時刻を停止時刻として決定してもよい。これにより、起動時刻に応じて停止時刻を決定する処理を省略することができる。
【0062】
ステップS212において、平滑化計画の登録が完了すると、続いて、ステップS214において、運転制御部106は、平滑化計画記憶部114に記憶されている平滑化計画を参照し、平滑化計画の実行を開始する。具体的には、運転制御部106は、クロック140のカウントを参照し、各対象機器を平滑化計画に示される停止時刻に電源オフし、さらに起動時刻に再起動する。次に、ステップS216において、運転制御部106は、平滑化計画の実行が完了したか否かを判定する。運転制御部106は、最後の順番の対象機器の再起動が完了した場合には平滑化計画が終了したと判定する。運転制御部106は、平滑化計画が完了していない場合には(ステップS216でN)、平滑化計画の実行を継続する。運転制御部106は、平滑化計画が完了した場合には(ステップS216でY)、平滑化処理を終了する。平滑化処理が終了すると、対象機器を含む複数の空調機20の消費電力の振幅が相殺される。したがって、その後のDR期間において、目標電力の誤差範囲内での、需給調整のDR制御が可能となる。なお、平滑化処理において再起動の対象とならなかった、残りの空調機20に対しては、DR制御の開始前に再起動は行われず、運転が継続される。
【0063】
図11Aは、5台の空調機を同時に起動した場合の電力変化を示す図である。
図11A及び
図11Bのグラフの横軸は時刻、縦軸は消費電力を示す。また、A1で示す5つの線は、5台の空調機それぞれ消費電力を示し、A2は、5台の空調機の総消費電力を示す。
図11Aのグラフに示されるように、同様の周期特性を有する空調機においては、総消費電力は振幅が増大される。一方で、
図11Bに示すように各空調機の起動のタイミングをずらすことで、
図11Aに比べて総消費電力の振幅を小さくすることができる。さらに、
図12は、同様の周期特性を有する86台の空調機の起動のタイミングをずらした場合の総消費電力の時間変化を示す図である。
図12のグラフの横軸は時刻、縦軸は消費電力を示す。このように、加算対象の機器の台数が多くなるほど、起動のタイミングを異ならせる効果が大きくなる。
【0064】
本実施形態の制御装置10は、平滑化処理により、起動のタイミングを異ならせることができる。したがって、この状態で、DR期間に移行した場合に、DR期間において、制御装置10の管理下の空調機20の総消費電力の時間変動を小さく抑えることができる。
【0065】
図7へ戻り、運転制御部106は、平滑化処理(ステップS116)の終了後、ステップS118において、DR情報記憶部113に格納されているDR開始時刻と、クロック140のカウントと、に基づいて、DR開始時刻か否かを判定する。運転制御部106は、DR開始時刻でない場合には(ステップS118でN)、処理をステップS122へ進める。運転制御部106は、DR開始時刻の場合には(ステップS118でY)、処理をステップS120へ進める。ステップS120において、運転制御部106は、DR制御を開始する。具体的には、DR情報記憶部113に記憶されている目標電力を参照し、複数の空調機20の総消費電力が目標電力の誤差範囲を超えないように、各空調機20を制御する。
【0066】
次に、ステップS122において、運転制御部106は、DR管理サーバ2から目標電力指示を受信したか否かを確認する。なお、DR管理サーバ2は、DR期間中は、定期的に目標電力指示を制御装置10に送信する。運転制御部106は、目標電力指示を受信しなかった場合には(ステップS122でN)、処理をステップS126へ進める。運転制御部106は、目標電力指示を受信した場合には(ステップS122でY)、ステップS124へ進める。ステップS124において、運転制御部106は、受信した目標電力指示に示される目標電力を新たな目標電力として設定する。具体的には、DR情報記憶部113に記憶されている目標電力を新たに受信した目標電力に更新する。
【0067】
次に、ステップS126において、運転制御部106は、DR情報記憶部113に格納されているDR終了時刻と、クロック140のカウントと、に基づいて、DR終了時刻か否かを判定する。運転制御部106は、DR終了時刻でない場合には(ステップS126でN)、処理をステップS122へ進める。なお、この場合には、DR制御は継続される。運転制御部106は、DR終了時刻の場合には(ステップS126でY)、処理をステップS128へ進める。ステップS128において、運転制御部106は、DR自動運転を終了し、その後処理をステップS100へ進める。なお、複数の空調機20の総消費電力が平滑化されるように運転開始タイミングが調整された状態のまま、通常の運転モードに戻った場合に、空調機20にとっても、ユーザにとっても、不都合はない。したがって、DR期間が終了した場合に、運転開始タイミングに対する処理は不要である。
【0068】
以上のように、本実施形態の制御装置10は、DR制御の開始時刻よりも前において、対象機器の運転開始タイミングを異ならせる。このように、比較的簡単な方法で、複数の空調機20の総消費電力の振幅を小さくすることができる。これにより、DRサービスにおいて要求される目標電力の誤差範囲に収めることができる。
【0069】
第1の変形例としては、制御装置が消費電力の制御を行う対象となる機器は、電力を消費する機器であればよく、空調機に限定されるものではない。ただし、圧縮機を用いた機器においては、空調機と同様に消費電力の時間変動が大きい。したがって、圧縮機を用いた機器を対象とした場合に、特に平滑化の効果が大きい。このような機器としては、例えばヒートポンプ、冷凍機などが挙げられる。
【0070】
第2の変形例について説明する。本実施形態の制御装置10は、空調機20の運転を停止し、再起動する処理を行った。ただし、制御装置10は、圧縮機214の運転を停止させた後で運転を再開させるための処理を行えばよく、そのための具体的な処理は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、制御装置10は、圧縮機214の運転を停止、再開させるような運転モードの変更、設定温度の変更を行ってもよい。具体的には、制御装置10は、圧縮機214の運転を停止させるためには、送風や換気など冷凍サイクルを使用しないモードに変更すればよい。また、制御装置10は、圧縮機214の運転を停止させるためには、負荷がゼロになるように暖房運転では室温より下の温度を設定温度とすればよく、冷房運転では室温より上の温度を設定温度とすればよい。さらに、機器毎に、どの方法で圧縮機214の運転のオンオフを制御するかを、ユーザ操作に応じて設定変更可能としてもよい。
【0071】
第3の変形例としては、制御装置10は、周期特性の特定は行わなくてもよい。例えば、各空調機の周期特性の特定は、各空調機20において実行され、各空調機20から定期的に周期特性が制御装置10へ送信されるものとしてもよい。
【0072】
第4の変形例としては、制御装置10は、空調機20のうち圧縮機214の消費電力を制御することとしたが、これに替えて、空調機20の全体の消費電力を制御してもよい。
【0073】
第5の変形例としては、制御装置10は、対象機器のうち1つの対象機器については再起動を行わないこととしてもよい。制御装置10は、例えば、対象機器のうち1つの対象機器が運転中の場合、当該運転の開始タイミング、すなわち過去のタイミングを基準とし、この対象機器の周期と重ならないように、順次、残りの対象機器の運転開始タイミング(再起動のタイミング)を決定してもよい。
【0074】
第6の変形例としては、制御装置10は、少なくとも周期特性が類似する対象機器の運転開始タイミングを異ならせればよい。例えば、対象機器の周期及び振幅の少なくとも一方に基づいて、周期特性の類似する対象機器をグループ化し、各グループ内の対象機器の運転開始タイミングを異ならせるように、起動時刻を決定してもよい。なお、この場合、(式3)を満たすように、ずらし時間を決定するのが好ましい。
グループ内の各機器のずらし時間<評価期間<グループ内の各機器のずらし時間の合計 …(式3)
例えば、
図4に示す周期特性からは、
図13に示すように、3つのグループ(グループ1~3)にグループ化される。
図13に示す例においては、120s前後の周期のグループ1と、240s前後の周期のグループ2と、それ以外の周期のグループ3とにグループ化されている。この場合、タイミング決定部105は、各グループ内の対象機器に対し、独立に起動時刻を決定すればよい。これにより、起動時刻を決定するための処理を簡略化することができる。
【0075】
また、他の例としては、制御装置10は、管理対象に異なる種類の機器を含んでもよく、この場合には、機器の種類に応じて、対象機器をグループ化し、同一グループの機器の運転開始タイミングを異ならせるように起動時刻を決定してもよい。なお、異なる種類の機器としては、空調機、換気扇、水冷式の空調機(チラー)、冷凍機、扇風機などが挙げられる。機器の種類が異なる場合には、周期特性も異なることから、周期が重なることで総消費電力の振幅が増幅することがない。したがって、このように、異なる種類の機器については別個に電力開始タイミングをずらせば足りる。
【0076】
さらに、他の例としては、制御装置10は、周期及び振幅によらず、ランダムに対象機器の運転開始タイミングを異ならせてもよい。このように、ランダムに対象機器の運転開始タイミングを異ならせた場合であっても、運転開始タイミングを異ならせない場合に比べて、複数の機器の総消費電力をより平滑化することができる。
【0077】
第7の変形例としては、複数の機器の消費電力の制御を行う主体となる装置は、制御装置10に限定されるものではない。他の例としては、DR管理サーバ2であってもよい。また、他の例としては、制御の主体となる装置は、複数の空調機20のうちマスターとなる空調機20の室外機21であってもよく、複数の空調機20のうちマスターとなる空調機20の複数の室内機22のうちマスターとなる室内機22であってもよい。なお、この場合には、マスターとなる機器にすべての機器の機器情報が送信されるものとする。
【0078】
図14は、第8の変形例の説明図である。
図14に示すように、複数の機器がそれぞれ異なる制御装置10A~10Fにより制御されていてもよい。
図14の例では、制御装置10A~10Cは、空調機20を制御し、制御装置10Dは、ヒートポンプ(HP)湯機30を制御する。制御装置Eは、冷凍機40を制御し、制御装置10Fは、チラー50を制御する。この場合に、複数の制御装置10A~10Fがそれぞれ独立に各機器の起動時刻を決定した場合に、異なる制御装置の管理下の機器の周期が一致してしまう可能性がある。そこで、このような事態を避けるべく、各制御装置10A~10Fは、それぞれ、起動時刻を決定する場合の基準となる機器の起動時刻に異なる時刻を設定するものとする。
【0079】
また、他の例としては、各制御装置10A~10Fの上位制御装置がすべての機器の起動時間を決定してもよい。上位制御装置は、例えばDR管理サーバ2であってもよい。この場合、DR管理サーバ2は、各制御装置10A~10Fの周期特性記憶部112に記憶された周期特性を参照し、各制御装置10A~10Fの管理する機器それぞれに対する複数の平滑化計画を生成し、これを各制御装置10A~10Fに送信する。各制御装置10A~10Fは、受信した平滑化計画に従い、再起動処理を行えばよい。なお、上記の機器は、DR管理サーバ2とは異なる装置であってもよい。
【0080】
以上、空調機などの機器の制御装置について、上述した実施形態をもって詳細に説明してきた。ただし、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。したがって、上記のプログラムが記録された記録媒体等のプログラム製品も、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 空調システム
2 DR管理サーバ
3 ネットワーク
4 冷媒配管
5 空調通信網
10、10A~10F 制御装置
20 空調機
21 室外機
22 室内機
30 HP湯機
40 冷凍機
50 チラー
100 制御部
101 機器情報取得部
102 DR情報取得部
103 周期特性特定部
104 対象機器決定部
105 タイミング決定部
106 運転制御部
110 記憶部
111 機器情報記憶部
112 周期特性記憶部
113 DR情報記憶部
114 平滑化計画記憶部
120 機器通信部
130 DR管理サーバ通信部
140 クロック
150 ユーザIF部
211 制御部
212 記憶部
213 通信部
214 圧縮機
215 センサ群