(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】半導体装置及びパワーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20221111BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20221111BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
H01L21/60 301P
H01L21/60 321E
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2021136430
(22)【出願日】2021-08-24
(62)【分割の表示】P 2018513160の分割
【原出願日】2017-04-14
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2016083634
(32)【優先日】2016-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】大塚 拓一
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-004796(JP,A)
【文献】特開2012-216772(JP,A)
【文献】特開2014-082367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板上に形成された第1の基板電極、第2の基板電極、および第3の基板電極と、
前記第1の基板電極上に配置され、
表面と裏面とを有する半導体チップであって、前記表面側に形成されている層間絶縁膜上に形成された制御電極に接続された信号に応じて
前記表面側の前記層間絶縁膜上に形成された第1電極と
裏面側に形成された第2電極と
の間のスイッチング動作を行う
前記半導体チップと、
前記表面側に形成され、
前記制御電極上を除いて前記第1電極を覆う高耐熱性膜と、
前記高耐熱性膜と前記第2の基板電極との間を電気的に接続する第1のワイヤまたは平板状の
上部配線と、
前記第3の基板電極と前記制御電極との間を電気的に接続する第3のワイヤと
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の基板電極および前記第2の基板電極には、外部接続用の端子がそれぞれ接続される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1電極上の前記高耐熱性膜に接続される前記第1のワイヤまたは前記上部配線とは別に、前記第1電極に直接接続される第4のワイヤを備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第4のワイヤが接続される部分の前記第1電極は、前記表面側に前記高耐熱性膜に覆われないように形成される、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1乃至第3の基板電極と前記半導体チップと前記第1のワイヤまたは
前記上部配線と前記外部接続用の端子の少なくとも一部とを封止する樹脂をさらに備える、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップの前記第1電極と前記第2の基板電極との間を電気的に接続する複数の前記第1のワイヤを前記高耐熱性膜に接合した、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1のワイヤまたは
平板状の前記上部配線の厚みは、前記第1乃至第3の基板電極の各々の厚みよりも厚い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップは、第1のSiC MISFETと第2のSiC MISFETとを備え、前記第1のSiC MISFETおよび前記第2のSiC MISFETにそれぞれ逆並列接続される第1のダイオードおよび第2のダイオードが1つのモジュールに内蔵されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記高耐熱性膜上に第3電極が形成されており、前記第3電極を介して
平板状の前記上部配線が前記高耐熱性膜に接合される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第3電極は前記高耐熱性膜よりも厚い、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記高耐熱性膜は、角部を面取りするようにして前記第1電極上にキャップ配置された、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記高耐熱性膜の厚さ範囲が10μm~100μmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記高耐熱性膜は、銀焼成膜である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記高耐熱性膜は、銅焼成膜である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1のワイヤは、銅ワイヤ、Alワイヤ若しくは、中心部のCuを覆うようにAlが接合されたクラッドワイヤを備え、
前記第1のワイヤの一方端が超音波接合されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体チップはパワー用トランジスタを備えており、
前記第1電極が設けられる場所の下方に前記パワー用トランジスタが形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1の基板電極には、パワー端子が接続され、前記第2の基板電極には、出力端子が接続され、前記第3の基板電極には、信号電極端子が接続される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の半導体装置を複数個備える、パワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、半導体装置及びパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールのジャンクション温度Tjの上昇とともに、パワーサイクル耐量が従来の技術(アルミワイヤ)では厳しくなっている。そこで、最近では、寿命を延ばすためにアルミワイヤではなく銅ワイヤを使用する場合がある。また、ワイヤに代えてリード材や電極柱などの上部配線を使用する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-4544号公報
【文献】特開2000-100849号公報
【文献】特開2016-4796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、銅ワイヤを半導体チップ上に接合する場合は、アルミワイヤに比べ超音波のパワーが非常に大きくなるため、デバイスを破壊してしまう。
【0005】
また、リード材や電極柱などの上部配線を使用する場合は、その接合材としてPbフリー系のはんだが使用される。しかし、Pbフリー系のはんだを使用した場合、シリコンカーバイド(SiC)など200℃以上の耐熱性を持つデバイスでは、融点がジャンクション温度Tj=200℃に近く、さらにΔTjパワーサイクルが大きくなるため、パワーサイクル耐量(パワーサイクル寿命)は小さくなってしまう。
【0006】
本実施の形態は、パワーサイクル耐量を向上させることが可能な半導体装置及びパワーモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の一態様によれば、絶縁性の基板上に形成された第1の基板電極、第2の基板電極、および第3の基板電極と、前記第1の基板電極上に配置され、表面と裏面とを有する半導体チップであって、前記表面側に形成されている層間絶縁膜上に形成された制御電極に接続された信号に応じて前記表面側の前記層間絶縁膜上に形成された第1電極と裏面側に形成された第2電極との間のスイッチング動作を行う前記半導体チップと、前記表面側に形成され、前記制御電極上を除いて前記第1電極を覆う高耐熱性膜と、前記高耐熱性膜と前記第2の基板電極との間を電気的に接続する第1のワイヤまたは平板状の上部配線と、前記第3の基板電極と前記制御電極との間を電気的に接続する第3のワイヤとを備える半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本実施の形態によれば、パワーサイクル耐量を向上させることが可能な半導体装置及びパワーモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の模式的鳥瞰図であり、(a)銅ワイヤ接合前の状態、(b)銅ワイヤ接合後の状態。
【
図3】第1の実施の形態に係る半導体装置のシミュレーションモデルを示す模式的断面構造図。
【
図4】
図3に示されるシミュレーションモデルの効果を示すグラフ。
【
図6】第2の実施の形態に係る半導体装置の模式的鳥瞰図。
【
図7】第2の実施の形態に係る半導体装置のシミュレーションモデル1(キャップ構造)を示す模式的断面構造図。
【
図8】比較例2に係る半導体装置のシミュレーションモデル2(はんだ構造)を示す模式的断面構造図。
【
図9】シミュレーションモデル1とシミュレーションモデル2の比較結果を示すグラフ。
【
図10】ΔTjパワーサイクルとパワーサイクル寿命の関係を示すグラフ。
【
図12】時間の経過とともにひずみ量が飽和することを示すグラフ。
【
図13】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す図であり、(a)半導体チップを示す図、(b)マスク印刷工程を示す図、(c)乾燥工程を示す図、(d)焼成工程を示す図。
【
図14】
図13に示される製造方法により製造された銀焼成キャップの写真。
【
図15】第2の実施の形態に係る半導体装置を用いたモジュールの構成図(写真)であり、(a)鳥瞰図、(b)平面図。
【
図16】
図15に示されるモジュールを成形した後の構成図(写真)。
【
図17】
図15に示されるモジュールを部分的に拡大した写真。
【
図18】
図15に示されるモジュールを部分的に拡大した写真。
【
図20】
図15に示されるモジュールを部分的に拡大した写真。
【
図21】第1の実施の形態に係る半導体装置を用いたモジュールの模式的構成図。
【
図22】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置のΔTjパワーサイクルテストにおける電流と温度の変化の模式図。
【
図23】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置の熱サイクルテストにおける温度プロファイル例。
【
図24】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置であって、(a)ワンインワンモジュール(1 in 1 Module)のSiC MISFETの模式的回路表現図、(b)ワンインワンモジュールのIGBTの模式的回路表現図。
【
図25】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置であって、ワンインワンモジュールのSiC MISFETの詳細回路表現図。
【
図26】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置であって、(a)ツーインワンモジュールのSiC MISFETの模式的回路表現図、(b)ツーインワンモジュールの絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)の模式的回路表現図。
【
図27】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置に適用する半導体デバイスの例であって、(a)SiC MISFETの模式的断面構造図、(b)IGBTの模式的断面構造図。
【
図28】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置に適用する半導体デバイスの例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC MISFETの模式的断面構造図。
【
図29】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置に適用する半導体デバイスの例であって、エミッタパッド電極EP、ゲートパッド電極GPを含むIGBTの模式的断面構造図。
【
図30】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置に適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC DI(Double Implanted)MISFETの模式的断面構造図。
【
図31】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置に適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC トレンチ(T:Trench)MISFETの模式的断面構造図。
【
図32】第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置を用いて構成した3相交流インバータの模式的回路構成において、(a)半導体デバイスとしてSiC MISFETを適用し、電源端子PL、接地端子NL間にスナバコンデンサを接続した回路構成例、(b)半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL、接地端子NL間にスナバコンデンサを接続した回路構成例。
【
図33】半導体デバイスとしてSiC MISFETを適用した第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置を用いて構成した3相交流インバータの模式的回路構成図。
【
図34】半導体デバイスとしてIGBTを適用した第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置を用いて構成した3相交流インバータの模式的回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
又、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
[比較例1]
既に説明したように、パワーモジュールのジャンクション温度Tjの上昇とともに、パワーサイクル耐量がアルミワイヤでは厳しくなっている。そこで、比較例1に係る半導体装置では、
図1に示すように、銅ワイヤ18を使用して第1の基板電極10Bと第2の基板電極20Bとを接続している。具体的には、第1の基板電極10B上に半導体チップ12を配置し、半導体チップ12上のソースパッド電極14の所定位置18Bに超音波を印加し、銅ワイヤ18を接合している。符号16はゲートパッド電極である。
【0013】
しかし、比較例1に係る半導体装置によると、銅ワイヤ18を接合する際に非常に大きな超音波のパワーが必要になり、デバイスを破壊してしまう。もしくは、破壊を防ぐためのパッドの構造を作成する必要があり、デバイス構造が複雑化してしまう。
【0014】
[第1の実施の形態]
(半導体装置)
図2は、第1の実施の形態に係る半導体装置の模式的鳥瞰図である。
【0015】
図2(a)に示すように、第1の実施の形態に係る半導体装置は、半導体チップ12と、半導体チップ12上のソースパッド電極14を覆うように形成される高耐熱性の焼成膜22とを備える。
【0016】
例えば、高耐熱性の焼成膜22は、銀焼成膜でもよいし、銅焼成膜でもよい。以下、銀焼成膜を「銀焼成キャップ22」、銅焼成膜を「銅焼成キャップ22」という。
【0017】
図2(b)に示すように、半導体チップ12が第1の基板電極10B上に配置され、超音波により銀焼成キャップ22上に銅ワイヤ18の一方端が接合される。また、超音波により銅ワイヤ18の他方端が第2の基板電極20Bに接合される。
【0018】
尚、銅ワイヤ18の代わりに、Alワイヤやクラッドワイヤを適用しても良い。クラッドワイヤにおいては、中心部はCuで形成されているが、中心部はCuを覆うようにAlが接合されている。クラッドワイヤは、Alワイヤに比べ高耐熱性・低熱抵抗性を有している。
【0019】
ここで、第1の基板電極10Bや第2の基板電極20Bは、金属とセラミックスと金属との接合体からなる回路基板、例えばDBC(Direct Bonding Copper)基板、DBA(Direct Brazed Aluminum)基板やAMB(Active Metal Brazed, Active Metal Bond)基板などの絶縁基板(回路基板)の、チップ搭載面側の導体パターンにより構成することもできる。絶縁基板の表面側電極および裏面側電極の金属材料としては基本的には同じものが使われる。例えば、DBC基板であれば、Cu/Al2O3/Cu構造、DBA基板であれば、Al/AlN/Al構造、AMB基板であれば、Cu/Si3N4/Cu構造などを適用可能である。ただし、表面側電極および裏面側電極では役割が多少異なる。表面側電極は、チップや電極などを接合したり、それぞれパターンを切り、正(P)側パワー電極、負(N)側パワー電極、出力(Out)側パワー電極などの役目を果たす。裏面側電極は、冷却器へ接合されたり、ヒートスプレッダに接合したりと熱を下に伝える役目を有する。
【0020】
以上のように、第1の実施の形態に係る半導体装置では、半導体チップ12上のソースパッド電極14上に高耐熱焼成材料(銀焼成又は銅焼成)でキャップを行う構造を採用している。これにより、銅ワイヤ接合時にかかる超音波のパワーが緩衝され、銅ワイヤ接合時にかかる大きな荷重からデバイスの破壊を防ぐことができるため、パワーサイクル耐量を向上させることが可能となる。
【0021】
(銀焼成キャップによるデバイスへのダメージの低減効果)
図3は、第1の実施の形態に係る半導体装置のシミュレーションモデルを示す模式的断面構造図である。ここでは、
図3に示すように、シリコンカーバイド(SiC)ベースの半導体チップ12上に酸化膜25が形成され、酸化膜25上にアルミニウム電極26が形成され、アルミニウム電極26上にメッキ工程で金(Au)薄膜28が形成され、金薄膜28上に銀焼成キャップ22が形成されている。
【0022】
ここでは、アルミニウム電極26を例示しているが、電極の材料はアルミニウムに限定されるものではなく、銅(Cu)でもよい。
【0023】
また、金薄膜28は、銀焼成キャップ22を付着させるためのものである。金薄膜28に代えて、銀薄膜、又はパラジウム(Pd)薄膜を形成してもよい。
【0024】
図4は、
図3に示されるシミュレーションモデルの効果を示すグラフである。横軸は、銀焼成キャップ22の膜厚tを示す。縦軸は、銀焼成キャップ22に変位DAを与えた際に酸化膜25にかかる最大主応力比を示す。ここでは、銀焼成キャップ22がない場合の酸化膜25にかかる応力を「1」としている(点P1参照)。
【0025】
図4に示される矢印Pを見ても分かるように、銀焼成キャップ22がある場合は、劇的に酸化膜25にかかる応力を低減できる。具体的には、銀焼成キャップ22の膜厚tが5μmである場合、最大主応力比は約0.4程度であった(点P2参照)。銀焼成キャップ22の膜厚tが10μmである場合、最大主応力比は約0.2程度であった(点P3参照)。銀焼成キャップ22の膜厚tが30μmである場合、最大主応力比は約0.1程度であった(点P4参照)。銀焼成キャップ22の膜厚tは特に限定されるものではないが、例えば、約10μm~100μm程度であるのが望ましい(線Q参照)。
【0026】
以上のように、第1の実施の形態に係る半導体装置では、デバイス上の電極に銀焼成を用いてキャップを行うようにしている。このキャップ構造は、緩衝材の役割を果たすため、銅ワイヤ18からのダメージを低減することが可能となる。もちろん、銅ワイヤ18を使用すれば、非常に強い接合が可能になり、パワーサイクル耐量が増加するという効果もある。
【0027】
[比較例2]
既に説明したように、パワーモジュールのジャンクション温度Tjの上昇とともに、パワーサイクル耐量がアルミワイヤでは厳しくなっている。そこで、比較例2に係る半導体装置では、
図5に示すように、リード材や電極柱などの上部配線24を使用して第1の基板電極10Bと第2の基板電極20Bとを接続している。
【0028】
このようにリード材や電極柱などの上部配線24を使用する場合は、その接合材としてPbフリー系のはんだ17A,17Bが使用される。Pbフリー系のはんだ17A,17Bとは、スズ(Sn)を主成分として、銀(Ag)、銅(Cu)、スズ(Sn)などが添加物として配合されているSn系のはんだである。しかし、Pbフリー系のはんだ17A,17Bを使用した場合、シリコンカーバイド(SiC)など200℃以上の耐熱性を持つデバイスでは、融点がジャンクション温度Tj=200℃に近く、さらにΔTjパワーサイクルが大きくなるため、パワーサイクル耐量は小さくなってしまう。
【0029】
[第2の実施の形態]
(半導体装置)
図6は、第2の実施の形態に係る半導体装置の模式的鳥瞰図である。
【0030】
図6に示すように、第2の実施の形態に係る半導体装置は、第1の実施の形態と同様、半導体チップ12と、半導体チップ12上のソースパッド電極14を覆うように形成される高耐熱性の焼成膜22とを備える。
【0031】
第1の実施の形態と同様、高耐熱性の焼成膜22は、銀焼成キャップ22(又は銅焼成キャップ22)である。銀焼成キャップ22の膜厚tは特に限定されるものではないが、例えば、約10μm~100μm程度であるのが望ましい。
【0032】
半導体チップ12が第1の基板電極10B上に配置され、はんだ26Aを接合材として高耐熱性の焼成膜22上に平板状の上部配線24の一方端が接合される。また、はんだ26Bを接合材として上部配線24の他方端が第2の基板電極20Bに接合される。はんだ26A,26Bには、比較例2と同様、Pbフリー系のはんだを用いることができる。
【0033】
以上のように、第2の実施の形態に係る半導体装置では、半導体チップ12上のソースパッド電極14上に高耐熱焼成材料(銀焼成又は銅焼成)でキャップを行い、その上に従来のはんだを使用するようにしている。これにより、はんだにかかる累積相当ひずみを減少させ、パワーサイクル耐量を向上させることが可能となる。
【0034】
(銀焼成キャップ有無での累積相当ひずみの比較)
図7は、第2の実施の形態に係る半導体装置のシミュレーションモデル1(キャップ構造)を示す模式的断面構造図である。
図7に示すように、シミュレーションモデル1では、Pbフリー系のはんだ17Aを銀焼成キャップ22上に使用している。はんだ17A,17Bの膜厚は100μmであり、銀焼成キャップ22の膜厚は50μmである場合を想定している。基板電極10Bの裏面は、65℃で冷却されることを想定している。
【0035】
図8は、比較例2に係る半導体装置のシミュレーションモデル2(はんだ構造)を示す模式的断面構造図である。
図8に示すように、シミュレーションモデル2では、Pbフリー系のはんだ17A,17Bのみを使用している。すなわち、銀焼成キャップ22は、半導体チップ12上には配置されておらず、半導体チップ12下にのみ配置されている。はんだ17A,17Bの膜厚は150μmである場合を想定している。
【0036】
図9は、シミュレーションモデル1とシミュレーションモデル2の比較結果を示すグラフである。縦軸は、はんだにかかる累積相当ひずみを示し、横軸は、ジャンクション温度Tjを示す。累積相当ひずみは、はんだなどの材料の寿命を推定する際の目安として使用される。同じ材料では、累積相当ひずみが大きいほど寿命が短くなる。
【0037】
点S1と点S2とを結ぶ線分Sは、シミュレーションモデル2(はんだ構造)における累積相当ひずみの変化を表している。線分Sを見ても分かるように、はんだ構造では、ジャンクション温度Tjの上昇とともに累積相当ひずみが大きくなる。
【0038】
一方、点C1と点C2とを結ぶ線分C+Sは、シミュレーションモデル1(キャップ構造)における累積相当ひずみの変化を表している。線分C+Sを見ても分かるように、キャップ構造では、銀焼成キャップ22の緩衝効果により、ジャンクション温度Tjが変わっても累積相当ひずみはほとんど変化しない。
【0039】
具体的には、キャップ構造によれば、はんだ構造に比べて、ジャンクション温度Tjが120℃である場合、累積相当ひずみは約32%程度減少することが分かった(点C1,点S1参照)。また、ジャンクション温度Tjが200℃である場合、累積相当ひずみは約44%程度減少することが分かった(点C2,点S2参照)。
【0040】
以上のように、キャップ構造によれば、パワーサイクル耐量を向上できる、もしくはΔTjパワーサイクル、MaxTjが大きくなってもパワーサイクル耐量を保持できる効果がある。
【0041】
ここで、ΔTjパワーサイクルは、次式に示すように、パワーサイクルをオンしたときのジャンクション温度Tjの最大値MaxTjとオフしたときのジャンクション温度MinTjとの差である。MaxTjが150℃でMinTjが50℃である場合、ΔTjパワーサイクルは100℃となり、MaxTjが200℃でMinTjが50℃である場合、ΔTjパワーサイクルは150℃となる。
【0042】
【0043】
ΔTjパワーサイクルとパワーサイクル寿命の関係は、模式的に
図10に示すように表される。通常、
図10に示すように、ΔTjパワーサイクルが低いときは寿命が長くなる傾向が見られ(T1参照)、ΔTjパワーサイクルが高いときは寿命が短くなる傾向が見られる(T2参照)。また、点で接合するワイヤ材は亀裂18Cが生じやすく(
図11参照)、面で接合するリード材の方が寿命が長い傾向がある。
【0044】
(はんだの寿命と累積相当ひずみの関係)
次に、疲労寿命の算出方法について説明する。非弾性ひずみ(塑性ひずみ、クリープひずみ)が発生するような大きな負荷を繰り返しかけて、少ない繰り返し数(105サイクル以下)で疲労破壊させる場合を低サイクル疲労と呼ぶ。低サイクル疲労の疲労寿命は以下に示すマンソン・コフィン則で表される。
【0045】
【0046】
ΔεPは塑性ひずみ振幅[-]であり、Njは塑性疲労(疲労寿命)[回]であり、C,Nは材料物性値である。
【0047】
【0048】
ε
ac_ne(fin_step)は2サイクル目の累積相当ひずみであり、ε
ac_ne(ref_step)は1サイクル目の累積相当ひずみである。
図12に示すように、時間の経過とともにひずみ量は飽和するため、数3では、1サイクル目と2サイクル目の間をとるようにしている。マンソン・コフィン則によれば、Δε
Pが小さいと寿命は延びる。キャップ構造によれば、累積相当ひずみが小さくなるため、はんだの寿命が延びることが分かる。
【0049】
以上のように、第2の実施の形態に係る半導体装置では、Pbフリー系のはんだ17A,17Bを銀焼成キャップ22上に使用するようにしている。これにより、はんだが直接受けていた応力を銀焼成キャップ22で緩衝することにより、はんだにかかる累積相当ひずみを減少させ、パワーサイクル耐量を向上させることが可能となる。
【0050】
[製造方法]
以下、第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0051】
まず、
図13(a)に示すように、半導体チップ12の上部に金薄膜28を形成する。次いで、
図13(b)に示すように、スキージ30を用いてマスク28Mの開口部から焼成ペースト22Pを押し込み、ソースパッド電極14に対応する領域にマスク印刷を行う。次いで、
図13(c)に示すように、焼成ペースト22Pがマスク印刷された半導体チップ12をホットプレート32の上で乾燥させる。最後に、
図13(d)に示すように、加熱プレート34U,34Dを用いて半導体チップ12を焼成(熱+加圧)する。これにより、
図14に示すように、半導体チップ12の上部に銀焼成キャップ22を形成することができる。
【0052】
尚、上記の工程において、マスク印刷の代わりに、ディスペンス法を適用しても良い。ディスペンス法を用いても同程度の品質の焼成膜を作成可能である。
【0053】
[モジュール]
以下、第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置を複数個備えるパワーモジュールの構成について説明する。
【0054】
図15は、第2の実施の形態に係る半導体装置を用いたモジュールの構成図(写真)であり、(a)は鳥瞰図、(b)は平面図である。
図15に示すように、第1の基板電極10Bと第2の基板電極20Bとが上部配線24により接続されている。第1の基板電極10Bと第2の基板電極20Bのそれぞれから外方に信号電極端子G1,D1,S1、信号電極端子G4,D4,S4が引き出されている。もちろん、第1の基板電極10Bと第2の基板電極20B以外の基板電極を上部配線24により接続することも可能である。また、基板電極10Bには、ハイレベル側のMISFETQ1のドレインD1に対応するパワー端子Pが接続され、基板電極20Bには、ローレベル側のMISFETQ4のドレインD4若しくはハイレベル側のMISFETQ1のソースS1に対応するに対応するパワー端子O(出力端子)が接続される。さらに、ローレベル側のMISFETQ1のソースパッド電極S1に上部配線24を介して接続されるランド電極には、ローレベル側のMISFETQ4のソースS4に対応するパワー端子Nが接続される。以上の説明において、ハイレベル側のMISFETQ1およびローレベル側のMISFETQ4は、例えば、
図26(a)に示すようなツーインワンモジュールの回路を構成する半導体デバイスの対応している。尚、
図26(b)に示すようなツーインワンモジュールのIGBT Q1・Q4であっても良い。以下同様である。
【0055】
図16は、
図15に示されるモジュールを成形した後の構成図(写真)である。
図16に示すように、第1の基板電極10Bや第2の基板電極20Bは樹脂Mなどで成形される。
【0056】
図17及び
図18は、
図15に示されるモジュールを部分的に拡大した写真である。
図17及び
図18に示すように、第1の基板電極10B上に半導体チップ12が配置されている。半導体チップ12に銀焼成キャップ22が形成され、その銀焼成キャップ22上にはんだ26A,26Bを使用して上部配線24を接合している。
【0057】
図19は、
図15に示されるモジュールの全体を示す写真である。
図20は、
図15に示されるモジュールを部分的に拡大した写真である。
図19及び
図20に示すように、半導体チップ12がワイヤーWを介して信号電極端子G1,D1,S1、信号電極端子G4,D4,S4に接続されている。
【0058】
図21は、第1の実施の形態に係る半導体装置を用いたモジュールの模式的構成図である。
図21に示すように、1つの半導体チップ12に複数本の銅ワイヤ18を接合することも可能である。
【0059】
[接合エネルギー]
次に、超音波で接合する際の接合エネルギーについて説明する。
【0060】
接合エネルギーは、次式に示すように、接合時の摩擦係数μと速度vと圧力Pを時間で積分したものである。摩擦係数μも速度vも圧力Pの関数である。一般的に、接合エネルギーが高い程接合力も高くなる。
【0061】
【0062】
[ΔTjパワーサイクルテスト]
第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置のΔTjパワーサイクルテストにおける電流I
Cと温度Tの変化の模式図は、
図22に示すように表される。
【0063】
ΔTjパワーサイクルテストは、
図22に示すように、接合温度を相対的に短時間の周期で上昇・下降させるテストであり、例えば、ワイヤ接合部などの寿命を評価することができる。
【0064】
パワーサイクル試験の場合は、
図22に示すように、半導体装置モジュールに通電・遮断を繰り返し、チップを発熱させる。第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置のΔTjパワーサイクルテストにおいては、例えば、Tj=150℃を2s、その後オフして冷却温度になるまでの時間(例Tj=50℃、オフ時間=18s)を繰り返し行う。
【0065】
[熱サイクルテスト]
第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置において、熱サイクルテストにおける温度プロファイル例は、
図23に示すように表される。熱サイクルテストは大気雰囲気中で行われ、マイナス40℃~プラス150℃の範囲で実施した。熱サイクルの1サイクルの周期は80分であり、その内訳は、マイナス40℃で30分、マイナス40℃からプラス150℃までの昇温時間10分、プラス150℃で30分、プラス150℃からマイナス40℃までの冷却時間10分である。100サイクル毎に順方向電圧降下Vf、逆方向耐圧Vrを測定したが、特性劣化は観測されていない。
【0066】
通常、熱サイクルテスト、もしくはパワーサイクル試験でも接合部の劣化が始まると、順方向などの高電流を流す試験では抵抗が増加し、順方向電圧Vfが変化する。
パワーサイクル耐量は特性劣化も含めて起こってもその劣化の進行が遅い場合には、パワーサイクル耐量が高いと評価することができる。
【0067】
以上のΔTjパワーサイクルテストおよび熱サイクルテストの結果より、第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置の銅ワイヤ18又は上部配線24の接合強度は、充分に確保されている。
【0068】
なお、第1又は第2の実施の形態では、銀焼成キャップ22上に銅ワイヤ18又ははんだ26Aを配置することとしているが、これに限定されるものではない。例えば、銀焼成キャップ22上に銀焼成で上部配線24を接合するようにしてもよい。銀焼成キャップ22上に銀焼成することで膜厚を増加させることができる。これにより、はんだ26Aよりも高耐熱化を図ることができ、信頼性を向上させることが可能となる。
【0069】
[半導体装置の具体例]
第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置20であって、ワンインワンモジュールのSiC MISFETの模式的回路表現は、
図24(a)に示すように表され、ワンインワンモジュールのIGBTの模式的回路表現は、
図24(b)に示すように表される。
【0070】
図24(a)には、MISFETQに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。MISFETQの主電極は、ドレイン端子DTおよびソース端子STで表される。同様に、
図24(b)には、IGBTQに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。IGBTQの主電極は、コレクタ端子CTおよびエミッタ端子ETで表される。ダイオードDIとしては、ファーストリカバリダイオード(FRD)や、ショットキーバリアダイオード(SBD)を外付けしても良い。また、MISFETの半導体基板中に形成されるダイオードのみを用いても良い。
【0071】
また、第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置20であって、ワンインワンモジュールのSiC MISFETの詳細回路表現は、
図25に示すように表される。
【0072】
また、1つのモジュールに複数個のMISFETが内蔵されていても良い。一例として5チップ(MISFET×5)搭載可能であり、それぞれのMISFETQは、5個まで並列接続可能である。尚、5チップの内、一部をダイオードDI用として搭載することも可能である。
【0073】
さらに詳細には、
図25に示すように、MISFETQに並列にセンス用MISFETQsが接続される。センス用MISFETQsは、MISFETQと同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。
図25において、SSは、ソースセンス端子、CSは、電流センス端子であり、Gは、ゲート信号端子である。尚、第1又は第2の実施の
形態においても半導体デバイスQには、センス用MISFETQsが同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。
【0074】
また、第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置20Tであって、ツーインワンモジュールのSiC MISFETの模式的回路表現は、
図26(a)に示すように表される。
【0075】
図26(a)に示すように、2個のMISFETQ1・Q4と、MISFETQ1・Q4に逆並列接続されるダイオードD1・D4が1つのモジュールに内蔵されている。G1は、MISFETQ1のゲート信号端子であり、S1は、MISFETQ1のソース端子である。G4は、MISFETQ4のゲート信号端子であり、S4は、MISFETQ4のソース端子である。Pは、正側電源入力端子であり、Nは、負側電源入力端子であり、Oは、出力端子である。
【0076】
また、第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置20Tであって、ツーインワンモジュールのIGBTの模式的回路表現は、
図26(b)に示すように表される。
図26(b)に示すように、2個のIGBTQ1・Q4と、IGBTQ1・Q4に逆並列接続されるダイオードD1・D4が1つのモジュールに内蔵されている。G1は、IGBTQ1のゲート信号端子であり、E1は、IGBTQ1のエミッタ端子である。G4は、IGBTQ4のゲート信号端子であり、E4は、IGBTQ4のエミッタ端子である。Pは、正側電源入力端子であり、Nは、負側電源入力端子であり、Oは、出力端子である。
【0077】
(半導体デバイスの構成例)
第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC MISFETの模式的断面構造は、
図27(a)に示すように表され、IGBTの模式的断面構造は、
図27(b)に示すように表される。
【0078】
第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイス110(Q)の例として、SiC MISFETの模式的断面構造は、
図27(a)に示すように、n-高抵抗層からなる半導体基板126と、半導体基板126の表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたソース領域130と、pボディ領域128間の半導体基板126の表面上に配置されたゲート絶縁膜132と、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138と、ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134と、半導体基板126の表面と反対側の裏面に配置されたn
+ドレイン領域124と、n
+ドレイン領域124に接続されたドレイン電極136とを備える。
【0079】
図27(a)では、半導体デバイス110は、プレーナゲート型nチャネル縦型SiC MISFETで構成されているが、後述する
図31に示すように、nチャネル縦型SiC TMISFETなどで構成されていても良い。
【0080】
また、第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイス110(Q)には、SiC MISFETの代わりに、GaN系FETなどを採用することもできる。
【0081】
第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイス110には、SiC系、GaN系のいずれかのパワーデバイスを採用可能である。
【0082】
さらには、第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイス110には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV~8eVのワイドギャップ型と云われる半導体を用いることができる。
【0083】
同様に、第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイス110A(Q)の例として、IGBTは、
図27(b)に示すように、n-高抵抗層からなる半導体基板126と、半導体基板126の表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたエミッタ領域130Eと、pボディ領域128間の半導体基板126の表面上に配置されたゲート絶縁膜132と、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138と、エミッタ領域130Eおよびpボディ領域128に接続されたエミッタ電極134Eと、半導体基板126の表面と反対側の裏面に配置されたp
+コレクタ領域124Pと、p
+コレクタ領域124Pに接続されたコレクタ電極136Cとを備える。
【0084】
図27(b)では、半導体デバイス110Aは、プレーナゲート型のnチャネル縦型IGBTで構成されているが、トレンチゲート型nチャネル縦型IGBTなどで構成されていても良い。
【0085】
第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイス110の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC MISFETの模式的断面構造は、
図28に示すように表される。ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134に接続される。
【0086】
また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、
図28に示すように、半導体デバイス110の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144上に配置される。尚、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体基板126内には、
図27(a)或いは、
図28の中央部と同様に、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
【0087】
さらに、
図28に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜144上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。
【0088】
第1又は第2の実施の形態に適用する半導体デバイス110Aの例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むIGBTの模式的断面構造は、
図29に示すように表される。ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138に接続され、エミッタパッド電極EPは、エミッタ領域130Eおよびpボディ領域128に接続されたエミッタ電極134Eに接続される。
【0089】
また、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPは、
図29に示すように、半導体デバイス110Aの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144上に配置される。尚、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPの下方の半導体基板126内には、
図27(b)或いは、
図29の中央部と同様に、微細構造のIGBT構造が形成されていても良い。
【0090】
さらに、
図29に示すように、中央部のIGBT構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜144上にエミッタパッド電極EPが延在して配置されていても良い。
【0091】
ーSiC DIMISFETー
第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイス110の例であって、SiC DIMISFETの模式的断面構造は、
図30に示すように表される。
【0092】
第1又は第2の実施の形態に適用可能なSiC DIMISFETは、
図30に示すように、n-高抵抗層からなる半導体基板126と、半導体基板126の表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn
+ソース領域130と、pボディ領域128間の半導体基板126の表面上に配置されたゲート絶縁膜132と、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138と、ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134と、半導体基板126の表面と反対側の裏面に配置されたn
+ドレイン領域124と、n
+ドレイン領域124に接続されたドレイン電極136とを備える。
【0093】
図30では、半導体デバイス110は、pボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn
+ソース領域130が、ダブルイオン注入(DI)で形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134に接続される。ゲートパッド電極GP(図示省略)は、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GP(図示省略)は、
図30に示すように、半導体デバイス110の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144上に配置される。
【0094】
SiC DIMISFETは、
図30に示すように、pボディ領域128に挟まれたn-高抵抗層からなる半導体基板126内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R
JFETが形成される。また、pボディ領域128/半導体基板126間には、
図30に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
【0095】
ーSiC TMISFETー
第1又は第2の実施の形態に適用可能な半導体デバイス110の例であって、SiC TMISFETの模式的断面構造は、
図31に示すように表される。
【0096】
第1又は第2の実施の形態に適用可能なSiC TMISFETは、
図31に示すように、n層からなる半導体基板126Nと、半導体基板126Nの表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn
+ソース領域130と、pボディ領域128を貫通し、半導体基板126Nまで形成されたトレンチの内にゲート絶縁層132および層間絶縁膜144U・144Bを介して形成されたトレンチゲート電極138TGと、ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134と、半導体基板126Nの表面と反対側の裏面に配置されたn
+ドレイン領域124と、n
+ドレイン領域124に接続されたドレイン電極136とを備える。
【0097】
図31では、半導体デバイス110は、pボディ領域128を貫通し、半導体基板126Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁層132および層間絶縁膜144U・144Bを介して形成されたトレンチゲート電極138TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134に接続される。ゲートパッド電極GP(図示省略)は、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GP(図示省略)は、
図31に示すように、半導体デバイス110の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144U上に配置される。
【0098】
SiC TMISFETでは、SiC DIMISFETのような接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗RJFETは形成されない。また、pボディ領域128/半導体基板126N間には、ボディダイオードBDが形成される。
【0099】
第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置を用いて構成した3相交流インバータ140の模式的回路構成において、半導体デバイスとしてSiC MISFETを適用し、電源端子PL、接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、
図32(a)に示すように表される。同様に、第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置を用いて
構成した3相交流インバータ140Aの模式的回路構成において、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL、接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、
図32(b)に示すように表される。
【0100】
第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置を電源Eと接続する際、接続ラインの有するインダクタンスLによって、SiC MISFETやIGBTのスイッチング速度が速いため、大きなサージ電圧Ldi/dtを生ずる。例えば、電流変化di=300A、スイッチングに伴う時間変化dt=100nsecとすると、di/dt=3×109(A/s)となる。インダクタンスLの値により、サージ電圧Ldi/dtの値は変化するが、電源Vにこのサージ電圧Ldi/dtが重畳される。電源端子PLと接地端子NL間に接続されるスナバコンデンサCによって、このサージ電圧Ldi/dtを吸収することができる。
【0101】
(半導体装置を適用した応用例)
次に、
図33を参照して、半導体デバイスとしてSiC MISFETを適用した第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置を用いて構成した3相交流インバータ140について説明する。
【0102】
図33に示すように、3相交流インバータ140は、ゲートドライブ部150と、ゲートドライブ部150に接続された半導体装置部152と、3相交流モータ部154とを備える。半導体装置部152は、3相交流モータ部154のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。ここで、ゲートドライブ部150は、SiC MISFETQ1・Q4、SiC MISFETQ2・Q5、およびSiC MISFETQ3・Q6に接続されている。
【0103】
半導体装置部152は、蓄電池(E)146が接続されたコンバータ148のプラス端子(+)とマイナス端子(-)間に接続され、インバータ構成のSiC MISFETQ1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、SiC MISFETQ1~Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードD1~D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0104】
次に、
図34を参照して、半導体デバイスとしてIGBTを適用した第1又は第2の実施の形態に係る半導体装置20Tを用いて構成した3相交流インバータ140Aについて説明する。
【0105】
図34に示すように、3相交流インバータ140Aは、ゲートドライブ部150Aと、ゲートドライブ部150Aに接続された半導体装置部152Aと、3相交流モータ部154Aとを備える。半導体装置部152Aは、3相交流モータ部154AのU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。ここで、ゲートドライブ部150Aは、IGBTQ1・Q4、IGBTQ2・Q5、およびIGBTQ3・Q6に接続されている。
【0106】
半導体装置部152Aは、蓄電池(E)146Aが接続されたコンバータ148Aのプラス端子(+)とマイナス端子(-)間に接続され、インバータ構成のIGBTQ1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。さらに、IGBTQ1~Q6のエミッタ・コレクタ間には、フリーホイールダイオードD1~D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0107】
本実施の形態に係る半導体装置或いはパワーモジュールは、ワンインワン、ツーインワン、フォーインワン、シックスインワン若しくはセブンインワン型のいずれにも形成可能
である。
【0108】
以上説明したように、本実施の形態によれば、パワーサイクル耐量を向上させることが可能な半導体装置、パワーモジュール及びその製造方法を提供することができる。
【0109】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態について記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0110】
このように、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本実施の形態の半導体装置およびパワーモジュールは、IGBTモジュール、ダイオードモジュール、MOSモジュール(Si、SiC、GaN)等の半導体モジュール作製技術に利用することができ、HEV/EV向けのインバータ、産業機器向けのインバータ、コンバータなど幅広い応用分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
10B…第1の基板電極
12…半導体チップ
14…ソースパッド電極
16…ゲートパッド電極
17A,17B,26A,26B…はんだ
18…銅ワイヤ
20B…第2の基板電極
22…高耐熱性の焼成膜(銀焼成キャップ,銅焼成キャップ)
24…上部配線
25…酸化膜
26…アルミニウム電極
28…金薄膜
Tj…ジャンクション温度