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特許7175383チアミン誘導体を含む血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】チアミン誘導体を含む血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/505 20060101AFI20221111BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20221111BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 5/30 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221111BHJP
   A23L 33/15 20160101ALN20221111BHJP
   A61K 31/51 20060101ALN20221111BHJP
【FI】
A61K31/505
A23L33/00
A61K31/506
A61P3/06
A61P3/10
A61P5/30
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P13/12
A61P29/00
A23L33/15
A61K31/51
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021506563
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 KR2019009015
(87)【国際公開番号】W WO2020032426
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0092019
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0087554
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510229201
【氏名又は名称】キョンブク ナショナル ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コーオペレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】インキュ・リ
(72)【発明者】
【氏名】ジェハン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チャンジョ・オ
(72)【発明者】
【氏名】ジミン・リ
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-236191(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00820770(EP,A2)
【文献】FURSULTIAMINE,PubChem,2016年06月24日,https://web.archive.org/web/20160624084354/https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Fursultiamine#section=European-Community-(EC)-Number
【文献】554-44-9,PubChem,2016年06月10日,https://web.archive.org/web/20160610114658/https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/3037212#section=Top
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 3/00- 3/14
A61P 5/00- 5/30
A61P 9/00- 9/14
A61P 13/00-13/12
A61P 29/00-29/02
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チアミン(Thiamine)誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含み、前記チアミン誘導体がフルスルチアミン又はアリチアミンであることを特徴とする血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物
【請求項2】
前記血管又は弁膜石灰化は、弁膜症、高脂血症、老化、エストロゲン不足、狭心症、心不全、腎臓疾患、尿毒症、糖尿病、炎症疾患及び心血管系疾患からなる群から選ばれるものに起因するものである、請求項1に記載の血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記血管石灰化は、中膜性石灰化(medial calcification)又は粥状硬化性石灰化(atherosclerotic calcification)である、請求項1又は2に記載の血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項4】
前記弁膜石灰化は、大動脈弁膜石灰化(Aortic valve calcification)である、請求項1から3のいずれかに記載の血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項5】
チアミン(Thiamine)誘導体又はその塩を含み、前記チアミン誘導体がフルスルチアミン又はアリチアミンであることを特徴とする血管又は弁膜石灰化改善用の食品組成物。
【請求項6】
前記血管又は弁膜石灰化は、弁膜症、高脂血症、老化、エストロゲン不足、狭心症、心不全、腎臓疾患、尿毒症、糖尿病、炎症疾患及び心血管系疾患からなる群から選ばれるものに起因するものである、請求項5に記載の血管又は弁膜石灰化改善用の食品組成物。
【請求項7】
前記血管石灰化は、中膜性石灰化(medial calcification)又は粥状硬化性石灰化(atherosclerotic calcification)である、請求項5又は6に記載の血管又は弁膜石灰化改善用の食品組成物。
【請求項8】
前記弁膜石灰化は、大動脈弁膜石灰化(Aortic valve calcification)である、請求項5から7のいずれかに記載の血管又は弁膜石灰化改善用の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管又は弁膜石灰化の予防、改善又は治療用の組成物に関し、特に、チアミン誘導体を含む血管又は弁膜石灰化の予防、改善又は治療用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管は、体液の移動を持続的に調節する循環器官であり、酸素及び栄養分などを組織に供給し、二酸化炭素や老廃物を組織から受けて処理する機能を有する。
血管石灰化(Vascular calcification)は、血管にカルシウム及びリン酸などの無機質が沈着することであり、血管の硬直度を増加させ、血管破裂を招く。このような血管石灰化は、動脈硬化、糖尿、慢性腎不全患者にしばしば見られ、カルシウム蓄積抑制機序の消失、骨形成誘導、血液内核化複合体、及び細胞死などが血管石灰化の主な原因とされているが、その正確な機序はまだ明らかになっていない。
特に、心血管系石灰化は、高血圧、心不全、急性冠状動脈症候群と弁膜疾患の悪化に寄与し、これによる様々な合併症(心臓突然死、心筋梗塞、狭心症及び虚血性心不全など)を誘発する。しかし、上述したように、血管石灰化の正確な機序はまだ明らかになっておらず、その予防及び治療剤もまだ開発されていない現状である。
そのため、血管又は弁膜石灰化の予防、改善又は治療用の組成物に関する技術の開発が至急望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、血管又は弁膜石灰化の予防、改善又は治療用の組成物を開発しようと鋭意究努力してきた。その結果、チアミン(Thiamine)誘導体に血管石灰化抑制効果があることを糾明し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の目的は、チアミン(Thiamine)誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む、血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、チアミン(Thiamine)誘導体又はその塩を含む、血管又は弁膜石灰化改善用の食品組成物を提供することである。
発明のさらに他の目的は、チアミン(Thiamine)誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、血管又は弁膜石灰化の予防又は治療方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、チアミン(Thiamine)誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物の血管又は弁膜石灰化の治療用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、血管又は弁膜石灰化の予防、改善又は治療用の組成物を開発しようと鋭意究努力してきた。その結果、チアミン(Thiamine)誘導体が血管石灰化抑制効果を有することを究明した。
本発明は、チアミン誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物、チアミン誘導体又はその塩を含む血管又は弁膜石灰化改善用の食品組成物、チアミン誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を用いた血管又は弁膜石灰化の予防/治療方法及びその血管又は弁膜石灰化の治療用途に関する。
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0005】
本発明の一態様は、下記の式(1)で表示されるチアミン(Thiamine)誘導体及びその薬剤学的に許容可能な塩を含む血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物に関する。
【化1】
上記式(1)において、 Rは、
【化2】
からなる群から選ばれるいずれか一つであり、
は、
【化3】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0006】
本発明の一具現例において、前記Rは、
【化4】
であり、Rは、
【化5】
であり得る。
【0007】
上記式(1)において、R
【化6】
であり、R
【化7】
である場合、前記チアミン誘導体は、フルスルチアミン(Fursulthiamine;thiamine tetrahydrofurfuryl disulfide)である。
【0008】
上記式(1)において、R
【化8】
であり、R
【化9】
である場合、前記チアミン誘導体は、アリチアミン(Allithiamine;thiamine allyl disulfide)である。
上記式(1)において、R
【化10】
であり、R
【化11】
である場合、前記チアミン誘導体は、ベンフォチアミン(Benfotiamine;S-Benzoylthiamine O-monophospate)である。
【0009】
上記式(1)において、R
【化12】
であり、R
【化13】
である場合、前記チアミン誘導体は、スルブチアミン(Sulbutiamine;O-isobutyrylthiamine disulfide)である。
【0010】
本発明において、前記チアミン誘導体は、脂溶性の性質を有するので、小腸に直ちに吸収され、肝と筋肉、神経組織などで高い生体利用率を示すという長所がある。
本発明において“誘導体”とは、ある化合物を母体として作用基を導入、酸化、還元、原子の置換などを通じて化合物の一部を化学的に変化させて得られる化合物を意味し、母体化合物の構造と性質が大幅に変わらない限度で変化された類似の化合物である。普通は、化合物中の水素原子又は特定原子団が別の原子又は原子団に置換された化合物のことを指す。
【0011】
本発明において、“血管又は弁膜石灰化”とは、血管又は弁膜内に細胞外性基質(matrix)水酸化燐灰石(hydroxyapatite)(リン酸カルシウム)結晶沈着物(crystal deposits)の形成、成長又は沈着を意味する。
前記血管又は弁膜石灰化は、弁膜症、高脂血症、老化、エストロゲン不足、狭心症、心不全、腎臓疾患、尿毒症、糖尿病、炎症疾患又は心血管系疾患によるものであり得る。
【0012】
前記腎臓疾患は、例えば、糸球体腎臓炎、糖尿病性腎症、ループス腎炎、多発性の嚢胞腎、腎盂腎炎、腎結石、腎結核又は腎腫瘍であり得る。
前記炎症疾患は、例えば、喘息、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎又は腸炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、過敏性大腸症候群、炎症性疼痛、片頭痛、頭痛、腰痛、線維筋肉痛、筋膜疾患、ウイルス感染(例えば、C型感染)、バクテリア感染、カビ感染、火傷、外科的又は歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過剰症候群、アテローム性動脈硬化症、痛風、関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、虹彩炎、鞏膜炎、ブドウ膜炎、皮膚炎、湿疹又は多発性硬化症であり得る。
前記心血管系疾患は、例えば、心筋障害、原発性心臓停止、虚血性心不全、高血圧、虚血性心臓疾患、冠状動脈疾患、狭心症、心筋梗塞症、粥状硬化症又は不整脈であり得る。
【0013】
前記血管石灰化は、冠状動脈、大動脈及びその他血管の石灰化を含み、例えば、中膜性石灰化(medial calcification)又は粥状硬化性石灰化(atherosclerotic calcification)であり得る。
前記中膜性石灰化は、中膜壁石灰化(medial wall calcification)又はメンケベルグ硬化症(Moenckeberg’s sclerosis)と同じ意味で使われてもよく、中膜壁内に沈着したカルシウムによる石灰化を意味する。このような中膜性石灰化は、糖尿、カルシウム代謝機序異常又は腎臓疾患などによって骨形成促進因子が血管に発現して発生することが知られている。
前記粥状硬化性石灰化は、内膜層に沿ってアテローム性プラーク(artheromatous plaques)内に発生する石灰化を意味する。このような粥状硬化性石灰化は、粥状硬化病巣の部位にカルシウムが直接沈着して発生することが知られている。
前記弁膜石灰化は、例えば、大動脈弁膜石灰化(Aortic valve calcification)であってもよい。
【0014】
本発明において“予防”とは、本発明に係る薬学的組成物の投与によって血管又は弁膜の石灰化を抑制させたり、或いはその進行を遅延させる全ての行為を意味する。
本発明において“治療”とは、本発明に係る薬学的組成物の投与によって血管又は弁膜石灰化に対する症状が好転したり有益に変更される全ての行為を意味する。
本発明において薬剤学的に許容可能な塩は、当該技術の分野における通常の方法によって製造可能なものであり、例えば、塩酸、臭化水素、硫酸、硫酸水素ナトリウム、リン酸、炭酸などの無機酸との塩、又はギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、又はアセチルサリチル酸(アスピリン)のような有機酸と共に酸の塩を形成したり、又はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオンと反応してそれらの金属塩を形成したり、又はアンモニウムイオンと反応してさらに他の形態の薬剤学的に許容可能な塩を形成することを意味する。
【0015】
本発明に係る薬学的組成物は、前記の式(1)で表示される3-アリール-1,2,4-トリアゾール誘導体を有効成分として含み、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。前記薬学的に許容可能な担体は、製剤時に通常用いられるものであり、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、シクロデキストリン、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソームなどを含むが、これに限定されず、必要によって、抗酸化剤、緩衝液などの他の通常の添加剤をさらに含むことができる。さらに、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤などを付加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤に製剤化することができる。好適な薬学的に許容される担体及び製剤化に関しては、レミングトンの文献に開示の方法を用いて各成分によって好ましく製剤化できる。本発明の薬学的組成物は、剤形に特に制限はないが、注射剤、吸込剤、皮膚外用剤などに製剤化できる。
【0016】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与したり又は非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は局所に適用)でき、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者にとって適切に選択可能である。
【0017】
本発明の薬学的組成物は薬学的に有効な量で投与する。本発明において“薬学的に有効な量”は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、併用の薬物を含む要素及びその他の医学分野に周知の要素によって決定されてよい。本発明に係る薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり、或いは他の治療剤と併用して投与でき、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与でき、単回又は多重投与できる。上記の要素を全て考慮して、副作用無しで最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者にとっては容易に決定できる。
具体的に、本発明の薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内への活性成分の吸収度、不活性率及び排泄速度、疾病の種類、併用する薬物によって異なり得るが、通常、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは0.01~100mgを、毎日又は隔日投与でき、1日1回~3回に分けて投与できる。ただし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などにしたがって増減可能であり、前記投与量は、いかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
本発明の他の態様は、下記の式(1)で表示されるチアミン(Thiamine)誘導体及びその塩を含む血管又は弁膜石灰化改善用の食品組成物に関する。
【化14】
上記式(1)において、Rは、
【化15】
からなる群から選ばれるいずれか一つであり、
は、
【化16】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0019】
本発明の一具現例において、前記Rは、
【化17】
であり、Rは、
【化18】

であり得る。
【0020】
上記式(1)は、上述した本発明の血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物と同一であり、これら両者に共通する内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0021】
本発明の食品組成物は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル又は飲料などの形態で製造できる。例として、キャンディ類の各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、又は健康補助食品類などがある。
本発明の食品組成物は、アリチアミン、フルスルチアミン、ベンフォチアミン又はこれらの塩の他に、食品製造時に通常添加される成分も含むことができ、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど))及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を用いることができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤として製造される場合には、アリチアミン、フルスルチアミン、ベンフォチアミン又はこれらの塩の他に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、杜沖抽出液、ナツメ抽出液、甘草抽出液などもさらに含めることができる。
【0022】
本発明の他の態様は、チアミン(Thiamine)誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む血管又は弁膜石灰化の予防又は治療方法に関する。
前記個体は、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒト又は非ヒト霊長類、マウス(mouse)、イヌ、ネコ、ウマ及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0023】
本発明のさらに他の態様は、チアミン(Thiamine)誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物の血管又は弁膜石灰化の治療用途に関する。
前記組成物の重複する内容は、本明細書の複雑性を考慮して省略する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、チアミン誘導体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む血管又は弁膜石灰化の予防又は治療用の薬学的組成物、及びチアミン誘導体又はその塩を含む血管又は弁膜石灰化改善用の食品組成物に関し、本発明の組成物は、血管又は弁膜石灰化の予防、治療又は改善用途に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例に係るフルスルチアミン(Fursulthiamine;F)及びアリチアミン(Allithiamine;A)による石灰化抑制効果を示す図である。
図2】本発明の一実施例に係るフルスルチアミン及びアリチアミンによる石灰化抑制効果を確認するために、石灰化したカルシウムを定量した図である。
図3】本発明の一実施例に係るフルスルチアミンによる石灰化抑制効果(in vivo)を確認するために、フォンコッサ染色(Von Kossa staining)を行った結果である。
図4】本発明の一実施例に係るフルスルチアミンによる石灰化抑制効果(in vivo)を確認するために、血管に沈着したカルシウムを定量した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0027】
準備例1.血管平滑筋細胞(Vascular smooth muscle cells,VSMCs)一次培養
雄ウシから分離した胸腹部大動脈から周辺組織を除去し、血管内壁の内皮細胞を除去した。手入れした血管を小さい断片に分け、20%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum;FBS,Hyclone,Australia)含有のダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium;DMEM,Low Glucose,Thermo Fisher Scientific,USA)を入れた培養皿に整列した後、37℃、5% CO細胞培養器で3~4週間培養した。2日ごとに培地を新しく入れ換えながら、血管組織周囲から延び出た血管平滑筋細胞を一次培養した。
【0028】
準備例2.血管平滑筋細胞の石灰化誘導
前記準備例1で培養した血管平滑筋細胞は、ペニシリン/ストレプトマイシン抗生剤及び10% FBSが添加されたDMEM(High Glucose)で継代培養(subculture)によって安定化させた後、6ウェル培養皿に各4×10個ずつ接種し、接種翌日に、無機リン酸(Pi)、又は無機リン酸及びチアミン(フルスルチアミン又はアリチアミン;100 μM 又は200μM)を共に処理した。48時間ごとに培地及び薬物を新しく入れ替えながら10日間培養した。
【0029】
実験例1.血管平滑筋細胞の石灰化確認
前記準備例2の方法で石灰化を誘導した後、培養皿から培地を除去し、リン酸緩衝食塩水(phosphate buffer saline;PBS)で3回洗浄した。その後、4%パラホルムアルデヒド(Paraformaldehyde)を入れ、4℃で15分間固定した。固定が終わると、1次蒸留水で5分間2回洗浄し、5%硝酸銀(Silver Nitrate)を処理後に20~30分間紫外線を照射して発色した。その後、1次蒸留水で2~3回洗浄した後、光学顕微鏡(BX53microscope,Olympus,Japan)で石灰化程度を確認した。
図1から確認できるように、無機リン酸だけを処理した血管平滑筋細胞(Pi)では、石灰化(黒い点)が増加したが、フルスルチアミン(Fursulthiamine;F)及びアリチアミン(Allithiamine;A)をそれぞれ100μM及び200μMずつ共に処理した血管平滑筋細胞(Pi+F 100μM、Pi+F 200μM、Pi+A 100μM、及びPi+A 200μM)では、石灰化(黒い点)が抑制した。
【0030】
実験例2.血管平滑筋細胞のカルシウム定量
前記準備例2の方法で石灰化を誘導した後、培養皿から培地を除去し、PBSで洗浄した。その後、0.6N HClを処理して4℃で24時間脱カルシウム化(decalcification)させた。上澄液は、カルシウム定量に用いるために回収し、細胞から0.1N NaOH/0.1% SDSを用いてタンパク質を抽出し、BCA方法を用いてそれを定量した。
QuantichromTMカルシウム分析キット(DICA-500,BioAssay System,USA)を用いて612nmにおいてカルシウムサンプル(Standard)の吸光度を測定し、下記の計算式1を用いてカルシウム濃度を測定した後、その値を前記定量したタンパク質量で割って(補正して)最終的にカルシウムを定量した。
【数1】
(ODSAMPLE及びODBLANKはそれぞれ、カルシウムサンプル及びBLANK(水)のOD612nm値を表し、Slopeは、測定された吸光度グラフの勾配値を表す。)
図2から確認できるように、無機リン酸だけを処理した血管平滑筋細胞(ビークル)では無機リン酸によってカルシウムの量が増加したが、フルスルチアミン(Fursulthiamine)及びアリチアミン(Allithiamine)をそれぞれ100μM及び200μMずつ共に処理した血管平滑筋細胞では、無機リン酸によって増加したカルシウムの量がフルスルチアミン及びアリチアミン処理によって減少した(*p<0.01 vs対照群;**p<0.01 vsビークル)。
【0031】
実験例3.In vivo
8~9週齢C57BL/6Jマウスを7匹ずつ総5つの群に分け、4つの群(1つの群は対照群として使用)に高容量(9.0×10IU)のビタミンD3(Vit.D3)を1日1回で総3日間皮下投与して血管石灰化を誘導した。
このうち、3つの群に対してはそれぞれ、10mg/kg及び30mg/kgのフルスルチアミン(Fursulthiamine)、及び50mg/kgのジクロロアセテート(dichloroacetate;DCA、陽性対照群)を、前記ビタミンD3の初投与3日前から経口投与し始め、1日1回で総13日間投与した。
【0032】
3-1.フォンコッサ染色
まず、ビタミンD3投与10日後にマウスを犠牲させて開腹し、大動脈周辺組織をきれいに除去して分離した後、4% PFA(paraformaldehyde)に24時間固定した。固定した大動脈を洗浄後に5%硝酸銀(Silver Nitrate)溶液に浸し、UVに30分間反応させた。
図3から確認できるように、ビタミンD3グループでは、血管石灰化の増加によって大動脈の大部分が暗く着色したのに対し、陽性対照群のDCAグループでは、ビークルグループに比べて着色した部分が明確に減少した。本願発明のフルスルチアミングループでも濃度依存的に着色した部分が減少(回復)したが、特に、30mg/kg投与グループでは陽性対照群のDCAに比べて回復程度が優れていた。
【0033】
3-2.カルシウム定量
さらに、前記ビタミンD3投与10日後にマウスを犠牲させて開腹し、大動脈周辺組織をきれいに除去して分離した後、液体窒素に冷凍させた。冷凍した組織を解凍させ、水気を除去して重量を測った後、0.6N HCl溶液で脱石灰化を行った。比色(colormetric)Ca定量キット(Bioassay DICA-500)を用いて脱石灰化させた0.6N HCl溶液でカルシウムを定量し、組織重量で補正した。
図4から確認できるように、ビタミンD3グループでは、ビタミンD3を注射していない対照群に比べて、カルシウム量が10倍近く増加したが、陽性対照群のDCAグループにおいて、ビタミンD3によって増加する大動脈のカルシウム量が有意に減少した。本願発明のフルスルチアミングループにおいても濃度依存的にカルシウム量が減少し、陽性対照群のDCAに比べてその程度が優れていた。

図1
図2
図3
図4