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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20221111BHJP
   B60N 2/427 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
B60R21/207
B60N2/427
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021514857
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014563
(87)【国際公開番号】W WO2020213382
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019078489
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】下野 博賢
(72)【発明者】
【氏名】石前 陽
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-314075(JP,A)
【文献】独国実用新案第202014003658(DE,U1)
【文献】英国特許出願公開第02397047(GB,A)
【文献】特開平10-166986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40
B60N 2/427,2/68
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用座席の内部フレームのうち背もたれの側面に沿っているフレーム側板部と、
所定のエアバッグクッションおよびインフレータが固定された状態で前記フレーム側板部に取り付けられるブラケットと、
を備え、
前記フレーム側板部は、前縁の所定範囲を切り欠いた切欠領域を有し、
前記ブラケットは、
前記フレーム側板部の前記切欠領域に嵌め込まれ前記エアバッグクッションおよび前記インフレータが固定されている基部と、
前記基部の前側から屈曲して車幅方向の一方側へと延びている反力板と、
を有し、
前記切欠領域または前記基部の一方の上縁または下縁には、他方が摺動可能な前後方向に長手のガイド溝が形成されていて、
前記基部は、前記ガイド溝に沿って前記切欠領域に前方から挿入可能になっていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記切欠領域または前記基部の一方の後縁には、他方が挿入可能なストッパ溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ストッパ溝は、前記後縁の一部に形成されていて、
前記他方の後縁には、前記後縁の一部に形成されたストッパ溝に挿入可能な突出部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ガイド溝は、前記切欠領域または前記基部の上縁および下縁に形成されていて、
前記ストッパ溝は、前記ガイド溝の形成された前記切欠領域または前記基部の後縁に該ガイド溝に連続して形成されていることを特徴とする請求項またはに記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記フレーム側板部はさらに、前記切欠領域の周囲に所定の第1のリブを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記フレーム側板部はさらに、車幅方向の片側に形成され前方に向かって開口した箱状部を有し、
前記切欠領域は、前記フレーム側板部の前縁のうち前記箱状部の内側の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記フレーム側板部はさらに、前記箱状部に連続して設けられた所定の第2のリブを有することを特徴とする請求項6に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記ガイド溝は、前記切欠領域または前記基部の上縁に形成されていて、
前記切欠領域は、前記基部よりも下方の範囲にもわたって形成されていて、
前記反力板は、前記基部よりも下方に延び前記切欠領域に沿って窪んだ下側領域を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
車両用座席の内部フレームのうち背もたれの側面に沿っているフレーム側板部と、
所定のエアバッグクッションおよびインフレータが固定された状態で前記フレーム側板部に取り付けられるブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、
前記フレーム側板部の車幅方向外側の面に沿って取り付けられて前記インフレータおよび前記インフレータが固定される基部と、
前記基部から前記フレーム側板部の前縁を跨いで車幅方向へ延びている反力板と、
前記基部または前記反力板から延びて前記フレーム側板部に挿し込まれる複数の突起部と、
を有することを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項10】
前記複数の突起部は、前記反力板から前記フレーム側板部の前縁に向かって延びた1または複数の前側突起部を含み、
前記フレーム側板部は、前記前縁に形成され前記1または複数の前側突起部それぞれが挿し込まれる前側挿入孔を有することを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項11】
前記複数の突起部は、前記基部から前記フレーム側板部に向かって延びた1または複数の側面突起部を含み、
前記フレーム側板部は、車幅方向に貫通または窪んで形成され前記1または複数の側面突起部が挿し込まれる側面挿入孔を有することを特徴とする請求項10に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項12】
前記インフレータから延びるスタッドボルトは前記基部を貫通して前記フレーム側板部側に突出していて、
前記1または複数の側面突起部は、前記スタッドボルトを含んでいることを特徴とする請求項11に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項13】
前記フレーム側板部は、前記ブラケットの前記基部よりも下方にて該フレーム側板部の前縁の所定範囲を切り欠いた切欠領域を有し、
前記反力板は、前記基部よりも下方に延び前記切欠領域に沿って窪んだ下側領域を有することを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載するサイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両にはエアバッグ装置がほぼ標準装備されている。エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、袋状のエアバッグクッションをガス圧で膨張展開させて乗員を受け止めて保護する。
【0003】
エアバッグ装置には、設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。例えば、前後方向からの衝突から運転者を守るために、ステアリングの中央にはフロントエアバッグ装置が設けられている。その他にも、側面衝突等による車幅方向からの衝撃から乗員を守るために、サイドウィンドウの上方の天井付近にはカーテンエアバッグ装置が設けられ、座席の側部にはサイドエアバッグ装置が設けられている。
【0004】
一般的なエアバッグ装置のエアバッグクッションは、巻回または折り畳まれた収納形態となって、車両の各部位に収納されている。エアバッグ装置には、エアバッグクッションを迅速かつ円滑に膨張展開させるために、所定のブラケット類が備えられていることがある。例えば、特許文献1の車両用ファーサイドエアバッグ装置では、支持板54がファーサイドエアバッグ38と共に設置されている。引用文献1では、支持板54が膨張展開時のファーサイドエアバッグ38を支持することで、ファーサイドエアバッグ38の揺動が低減できると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-107721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、段落0034に記載されているように、ファーサイドエアバッグ38および支持板54は、インフレータ40から延びるスタッドボルト46およびナット48を使用して、サイドフレーム20Aに締結固定されている。現在、エアバッグ装置には、車両へより簡単に組付け可能な構成が求められている。その点において、締結固定を行う特許文献1の構成は、改良の余地を残している。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、車両へ簡単に組付け可能なサイドエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるサイドエアバッグ装置の代表的な構成は、車両用座席の内部フレームのうち背もたれの側面に沿っているフレーム側板部と、所定のエアバッグクッションおよびインフレータが固定された状態でフレーム側板部に取り付けられるブラケットと、を備え、フレーム側板部は、前縁の所定範囲を切り欠いた切欠領域を有し、ブラケットは、フレーム側板部の切欠領域に嵌め込まれエアバッグクッションおよびインフレータが固定されている基部と、基部の前側から屈曲して車幅方向の一方側へと延びている反力板と、を有し、切欠領域または基部の一方の上縁または下縁には、他方が摺動可能な前後方向に長手のガイド溝が形成されていて、基部は、ガイド溝に沿って切欠領域に前方から挿入可能になっていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ブラケットの基部をフレーム側板部の切欠領域にガイド溝に沿って挿し込むだけで、エアバッグモジュールを車両用座席に組付けることができる。したがって、組付作業が簡単で、労力の低減を図ることができる。
【0010】
上記の切欠領域または基部の一方の後縁には、他方が挿入可能なストッパ溝が形成されていてもよい。この構成によれば、ブラケットをフレーム側板部に十全に組み付けることが可能になる。
【0011】
上記のストッパ溝は、後縁の一部に形成されていて、他方の後縁には、後縁の一部に形成されたストッパ溝に挿入可能な突出部が形成されていてもよい。この構成によれば、ブラケットをフレーム側板部に十全に組み付けることが可能になる。
【0012】
上記のガイド溝は、切欠領域または基部の上縁および下縁に形成されていて、ストッパ溝は、ガイド溝の形成された切欠領域または基部の後縁にガイド溝に連続して形成されていてもよい。この構成によって、切欠領域およびブラケットの縁の全範囲が互いに結合するため、フレーム側板部の剛性をより補うことが可能になる。
【0013】
上記のフレーム側板部はさらに、切欠領域の周囲に所定の第1のリブを有してもよい。第1のリブによれば、フレーム側板部の剛性を補うことができる。
【0014】
上記のフレーム側板部はさらに、車幅方向の片側に形成され前方に向かって開口した箱状部を有し、切欠領域は、フレーム側板部の前縁のうち箱状部の内側の範囲に形成されていてもよい。箱状部によっても、フレーム側板部の剛性を補うことができる。
【0015】
フレーム側板部はさらに、箱状部に連続して設けられた所定の第2のリブを有してもよい。第2のリブによっても、フレーム側板部の剛性を補うことができる。
【0016】
上記のガイド溝は、切欠領域または基部の上縁に形成されていて、切欠領域は、基部よりも下方の範囲にもわたって形成されていて、反力板は、基部よりも下方に延び切欠領域に沿って窪んだ下側領域を有してもよい。窪んだ下側領域にエアバッグクッションを収容することで、車両用座席の内部の限られた空間を有効に活用することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明にかかるサイドエアバッグ装置の他の代表的な構成は、車両用座席の内部フレームのうち背もたれの側面に沿っているフレーム側板部と、所定のエアバッグクッションおよびインフレータが固定された状態でフレーム側板部に取り付けられるブラケットと、を備え、ブラケットは、フレーム側板部の車幅方向内側の面に沿って取り付けられてインフレータおよびインフレータが固定される基部と、基部からフレーム側板部の前縁を跨いで車幅方向へ延びている反力板と、基部または反力板から延びてフレーム側板部に挿し込まれる複数の突起部と、を有することを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、ブラケットの突起部をフレーム側板部に挿し込むだけで、エアバッグモジュールを車両用座席に組付けることができる。したがって、組付作業が簡単で、労力の低減を図ることができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明にかかるサイドエアバッグ装置の他の代表的な構成は、車両用座席の内部フレームのうち背もたれの側面に沿っているフレーム側板部と、所定のエアバッグクッションおよびインフレータが固定された状態でフレーム側板部に取り付けられるブラケットと、を備え、ブラケットは、フレーム側板部の車幅方向外側の面に沿って取り付けられてインフレータおよびインフレータが固定される基部と、基部からフレーム側板部の前縁を跨いで車幅方向へ延びている反力板と、基部または反力板から延びてフレーム側板部に挿し込まれる複数の突起部と、を有することを特徴とする。
【0020】
上記構成によっても、ブラケットの突起部をフレーム側板部に挿し込むだけで、エアバッグモジュールを車両用座席に組付けることができる。したがって、組付作業が簡単で、労力の低減を図ることができる。
【0021】
上記の複数の突起部は、反力板からフレーム側板部の前縁に向かって延びた1または複数の前側突起部を含み、フレーム側板部は、前縁に形成され1または複数の前側突起部それぞれが挿し込まれる前側挿入孔を有してもよい。この構成によっても、エアバッグモジュールを車両用座席に組付けることが可能になる。
【0022】
上記の複数の突起部は、基部からフレーム側板部に向かって延びた1または複数の側面突起部を含み、フレーム側板部は、車幅方向に貫通または窪んで形成され1または複数の側面突起部が挿し込まれる側面挿入孔を有してもよい。この構成によっても、エアバッグモジュールを車両用座席に組付けることが可能になる。
【0023】
上記のインフレータから延びるスタッドボルトは基部を貫通してフレーム側板部側に突出していて、1または複数の側面突起部は、スタッドボルトを含んでいてもよい。スタッドボルトを利用することによっても、エアバッグモジュールを車両用座席に組付けることが可能になる。
【0024】
上記のフレーム側板部は、ブラケットの基部よりも下方にてフレーム側板部の前縁の所定範囲を切り欠いた切欠領域を有し、反力板は、基部よりも下方に延び切欠領域に沿って窪んだ下側領域を有してもよい。窪んだ下側領域にエアバッグクッションを収容することで、車両用座席の内部の限られた空間を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、車両へ簡単に組付け可能なサイドエアバッグ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置を例示した図である。
図2図1(a)のエアバッグモジュールを拡大して各方向から例示した図である。
図3図2(a)のエアバッグモジュールをフレーム側板部から取り外した状態を例示した図である。
図4図3のブラケットを単独で各方向から例示した図である。
図5図3のエアバッグモジュールをフレーム側板部に組付ける過程を例示した図である。
図6図5のサイドエアバッグ装置の第1変形例を例示した図である。
図7図5のサイドエアバッグ装置の第2変形例を例示した図である。
図8図2(a)のサイドエアバッグ装置の第3変形例を例示した図である
図9図2(a)のフレーム側板部の第1変形例である。
図10図2(a)のフレーム側板部の第2変形例である。
図11図10(b)の箱状部に第2のリブを追加した例である。
図12】本発明の第2実施形態に係るサイドエアバッグ装置を例示した図である。
図13図12のサイドエアバッグ装置を別方向から例示した図である。
図14図13(b)のブラケットの第1変形例である。
図15図13(b)のサイドエアバッグ装置の第1変形例を例示した図である。
図16図13(b)のサイドエアバッグ装置の第2変形例を例示した図である。
図17図16(a)のサイドエアバッグ装置の断面図およびさらなる変形例を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置100を例示した図である。図1(a)ではサイドエアバッグ装置100、およびこのサイドエアバッグ装置100が適用されている車両用の座席102を、車両前方の車幅方向右側から例示している。図1では、座席102に対する前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Back)、左右方向をそれぞれ矢印L(Left)、R(Right)、上下方向をそれぞれ矢印U(up)、D(down)で適宜例示している。
【0029】
本実施形態では、座席102は、前列の左側に配置されることを想定している。しかしながら、当該サイドエアバッグ装置100は、車両の前列、後列、さらには左右いずれか側のどの座席にも設置することが可能である。また、座席102は、通常は車両の前方を向いているが、回転して後方を向くことも想定している。そのため、各図中に矢印で例示する方向は、車両に対する前後左右の方向に限定する意図ではなく、座席102に正規に着座した乗員から見て、正面の方向を「前」とし、背中側の方向を「後」としたものである。同様に、このときの乗員の右手の方向が「右」であり、左手の方向が「左」である。さらに、このときの乗員の身体の中心に対して、頭部に向かう方向が「上」であり、脚部に向かう方向が「下」である。
【0030】
図1(a)は、稼働前のサイドエアバッグ装置100を例示している。図1(a)および図1(b)では、座席102の背もたれの内部のフレーム部材114を、背もたれの表皮とパッド(詰め物)を省略した状態で例示している。図1(a)に例示するエアバッグモジュール106は、エアバッグクッション108、インフレータ110および後述するブラケット112を一体に結合させた構造物である。稼働前のサイドエアバッグ装置100では、エアバッグクッション108は巻回や折畳み等によって縮小された収納形態となっている。
【0031】
エアバッグモジュール106は、フレーム部材114のフレーム側板部116に組み付けられる。フレーム側板部116は、フレーム部材114のうち、背もたれの左右の側面に沿った部位である。フレーム側板部116は、車幅方向の左右に一対設けられている。本実施形態では、エアバッグモジュール106は、車幅方向左側のフレーム側板部116に組み付けている。なお、エアバッグモジュール106は、車幅方向右側のフレーム側板部116に組み付けることも可能である。すなわち、エアバッグモジュール106は、座席102のうち衝突箇所に近いドア側の側部(ニアサイド)にも、衝突箇所から遠い車内側の側部(ファーサイド)にも、どちらにも設置可能である。
【0032】
図1(b)は、稼働時のサイドエアバッグ装置100を例示している。エアバッグクッション108は、車両の衝撃が検知されると、インフレータ110からのガスを利用して、座席102の表皮を押しのけつつ前方に向かって膨張展開する。エアバッグクッション108は、乗員を側方から受け止めるために、全体的に扁平な形状を有している。エアバッグクッション108は、基布に縫製や接着などを加えて形成されるほか、OPW(One-Piece Woven)を用いての紡織などによっても形成可能である。
【0033】
図2は、図1(a)のエアバッグモジュール106を拡大して各方向から例示した図である。図2(a)は、図1(a)のエアバッグモジュール106を拡大した斜視図である。図2(a)では、エアバッグクッション108を破線で例示し、インフレータ110およびブラケット112を透過させている。
【0034】
インフレータ110は、ガス発生装置であって、本実施形態ではシリンダ型(円筒型)のものを採用している。インフレータ110は、ブラケット112の基部126の車幅方向内側(車内側)に取り付けられている。インフレータ110は、一端側の外周面にガス噴出孔118を有し、他端側に所定のハーネスが接続される端子120(図9参照)を有している。インフレータ110は、その全体、またはガス噴出孔118を含む一部がエアバッグクッション108の内部に挿入されている。そして、インフレータ110は、端子120で車両側と電気的に接続し、車両側から衝撃の検知に起因する信号を受けて稼働し、エアバッグクッション108にガスを供給する。
【0035】
現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、または燃焼ガスと圧縮ガスとを両方利用するハイブリッドタイプのものなどがある。インフレータ110としては、いずれのタイプのものも利用可能である。
【0036】
図2(b)は、図2(a)のエアバッグモジュール106のA-A断面図である。インフレータ110には、取付用のスタッドボルト122が計2本設けられている。スタッドボルト122は、インフレータ110の筒状の本体から延び、ブラケット112を貫通して車外側からナット124で締められている。インフレータ110のスタッドボルト122がブラケット112に締結されることで、エアバッグクッション108もブラケット112に固定されている。
【0037】
図2(a)に例示するように、ブラケット112は、エアバッグクッション108およびインフレータ110を支える部材である。ブラケット112は、インフレータ110が固定されている基部126と、エアバッグクッション108の膨張時に反力を与える反力板128とを有している。図2(b)に例示するように、反力板128は、基部126の前側から屈曲して、車外側へと車幅方向に延びている。反力板128が存在することで、エアバッグクッション108は反力板128を押して車両前方へと効率よく膨張展開することが可能になっている。
【0038】
図3は、図2(a)のエアバッグモジュール106をフレーム側板部116から取り外した状態を例示した図である。本実施形態では、フレーム側板部116に前縁130の所定範囲を切り欠いた切欠領域132を設け、この切欠領域132にブラケット112を挿し込むことで、エアバッグモジュール106を車両に簡単に組み付けることが可能になっている。
【0039】
上述したブラケット112の組付けを達成するために、切欠領域132の上縁および下縁には、ガイド溝134、136が形成されている。ガイド溝134、136は、前後方向に長手に形成されていて、基部126の上縁138および下縁140を摺動させることが可能になっている。ガイド溝134は、二股の構造になっていて、溝にブラケット112の基部126を挿入させつつ、二股の突起で基部126を車幅方向の両側からガイドする。
【0040】
図4は、図3のブラケット112を単独で各方向から例示した図である。図4(a)は、図3と同じ方向からブラケット112を例示した斜視図である。上述したように、ブラケット112の基部126は、インフレータ110(図3参照)を固定および締結する部位であり、フレーム側板部116の切欠領域132に嵌め込まれる。基部126の上縁138および下縁140は直線状になっていて、フレーム側板部116の切欠領域132のガイド溝134、136を前後方向に摺動する。基部126には、インフレータ110のスタッドボルト122(図2(b)参照)を通すボルト孔127のほか、複数の肉抜孔が設けられている。
【0041】
図4(b)は、図4(a)のブラケット112を車外側から見た斜視図である。反力板128は、基部126に対して、車外側に屈曲した形状になっている。反力板128は、エアバッグクッション108に広く反力を与えるため、基部126よりも上下に長い形状になっている。反力板128は、フレーム側板部116の前縁130に沿って、やや下側の箇所で角度が変化し、上側の大部分が傾斜して延びている。
【0042】
図4(c)は、図4(a)のB-B断面図である。図4(c)に例示するように、基部126と反力板128との間では、車内側に突出するように湾曲した湾曲部142が設けられている。湾曲部142は、反力板128の適度なたわみを生み、膨張時にエアバッグクッション108(図2(b)参照)から受ける荷重を吸収する。
【0043】
基部126の後縁には、ストッパ溝144が設けられている。ストッパ溝144は、二股の構造になっていて、溝の部分に切欠領域132(図3参照)の後縁133を挿入させつつ、二股の突起で切欠領域132の後縁133の周辺を車幅方向の両側から挟む。
【0044】
図5は、図3のエアバッグモジュール106をフレーム側板部116に組付ける過程を例示した図である。図5(a)は、エアバッグモジュール106をフレーム側板部116に組み付ける直前の状態を車外側から見て例示している。エアバッグモジュール106は、ブラケット112の基部126の上縁138および下縁140を、切欠領域132のガイド溝134、136に前方から挿入させて組み付ける。
【0045】
図5(b)は、図4(a)のエアバッグモジュール106を切欠領域132に嵌め込んだ状態を例示している。基部126のストッパ溝144に切欠領域132の後縁133(図5(a)参照)が挿入されることで、エアバッグモジュール106の組付けは完了する。
【0046】
図5(c)は、図5(b)のガイド溝136のC-C断面図である。上述したように、フレーム側板部116が有するガイド溝136は、二股の構造になっていて、溝の部分に基部126の下縁140を挿入させつつ、二股の突起で基部126の下縁140付近を車幅方向の両側からガイドする。これは、上側のガイド溝134も同様である。したがって、図5(b)のガイド溝134、136に挿入された基部126は、車幅方向への脱落が防止されている。
【0047】
図5(d)は、図5(b)のストッパ溝144のD-D断面図である。上述したように、ブラケット112が有するストッパ溝144も、二股の構造になっていて、溝の部分にフレーム側板部116の切欠領域132の後縁133を挿入させつつ、二股の突起で切欠領域132の後縁133付近を車幅方向の両側から挟む。したがって、ストッパ溝144によっても、ブラケット112の基部126は、車幅方向への脱落が防止されている。
【0048】
本実施形態の構成によれば、エアバッグクッション108、インフレータ110およびブラケット112を一体化してエアバッグモジュール106を形成させた後は、単にブラケット112の基部126をフレーム側板部116の切欠領域132に挿し込むだけで、エアバッグモジュール106を座席102(図1(a)参照)に組み付けることができる。特に、組付けの際にボルト類を締結する必要が無いため、組付作業が簡単で、労力の低減を図ることができる。
【0049】
本実施形態は、ブラケット112を切欠領域132に前方から挿し込むものの、ブラケット112のフレーム側板部116への固定は行っていない。しかしながら、ガイド溝134、136およびストッパ溝144によって、ブラケット112が車幅方向に脱落することは防がれている。エアバッグクッション108から受ける荷重は、ブラケット112に対して車外側および車両後方に向かってかかり、ブラケット112をフレーム側板部116から脱落させる方向にはかからない。そのため、ブラケット112は、エアバッグクッション108が膨張展開するときおよび乗員を拘束するときにおいて、エアバッグクッション108を十全に支持することができる。
【0050】
なお、ガイド溝134を設ける部位は、切欠領域132の上縁および下縁に限らない。例えば、ガイド溝134は、基部126の上縁138および下縁140に設けることも可能である。さらには、ガイド溝は、例えば上側では切欠領域132の上縁に設け、下側では基部126の下縁140に設けることも可能である。また、ストッパ溝144も、基部126の後縁ではなく、切欠領域132の後縁133に設けることが可能である。これら構成によっても、ブラケット112を切欠領域132に挿し込むだけで、ブラケット112をフレーム側板部116に組み付けることが可能になる。
【0051】
以上のように、本実施形態の構成によれば、エアバッグモジュール106を座席102、すなわち車両に対して簡単かつ十全に組み付けることが可能である。
【0052】
図6は、図5のサイドエアバッグ装置100の第1変形例(サイドエアバッグ装置200)を例示した図である。以降、既に説明した構成要素と同じものについては、同じ符号を付することによって説明を省略する。また、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有するものとする。
【0053】
図6(a)は、図5(a)に対応してサイドエアバッグ装置200を例示している。サイドエアバッグ装置200では、フレーム側板部202の切欠領域132の後縁203の一部にストッパ溝204、206が形成されている。そして、ブラケット208の基部126の後縁210には、ストッパ溝204、206に挿入可能な突出部212、214が形成されている。
【0054】
図6(b)は、図6(a)のストッパ溝202のE-E断面図である。ストッパ溝202もまた、二股の構造になっていて、溝の部分に基部126の突出部212(図6(a)参照)を挿入させつつ、二股の突起で基部126の突出部212を車幅方向の両側から挟む。
【0055】
図6(c)は、図5(b)に対応してサイドエアバッグ装置200を例示している。サイドエアバッグ装置200では、基部126の突出部212、214(図6(a)参照)を切欠領域132のストッパ溝202、204に挿入することで、エアバッグモジュール201の組付けが完了する。
【0056】
本実施形態の構成によっても、単にブラケット112の基部126をフレーム側板部116の切欠領域132に挿し込むだけで、エアバッグモジュール201を座席102(図1(a)参照)に簡単かつ十全に組み付けることが可能になる。
【0057】
図7は、図5のサイドエアバッグ装置100の第2変形例(サイドエアバッグ装置220)を例示した図である。図7は、図5(b)に対応してサイドエアバッグ装置200を例示している。サイドエアバッグ装置220のフレーム側板部222では、ガイド溝134、136が切欠領域132の上縁および下縁に形成されている。そして、切欠領域132の後縁には、ストッパ溝224がこれらガイド溝134、136に連続して形成されている。
【0058】
サイドエアバッグ装置220によれば、切欠領域132の縁の全範囲にわたって、ブラケット226の基部126の縁を挿し込む溝が形成されている。この構成であると、切欠領域132およびブラケット226の縁の全範囲が互いに結合するため、フレーム側板部222の剛性をより補い、エアバッグモジュール221の組付剛性を高めることができる。なお、この構成を応用して、ブラケットの基部の縁の全範囲にガイド溝およびストッパ溝を連続して設けることも可能である。
【0059】
図8は、図2(a)のサイドエアバッグ装置の第3変形例(サイドエアバッグ装置240)を例示した図である。図8(a)は、図2(a)に対応してサイドエアバッグ装置240を例示している。サイドエアバッグ装置240では、フレーム側板部242の切欠領域244が下方に広く、ブラケット246に窪んだ形状の下側領域248が形成されている点で、各サイドエアバッグ装置と構成が異なっている。
【0060】
図8(b)は、図3に対応してサイドエアバッグ装置240を例示している。フレーム側板部242のうち、切欠領域244は、ブラケット246の基部126よりも下方の範囲にもわたって形成されている。そして、エアバッグモジュール241のうち、ブラケット246の反力板250には、基部126よりも下方に延びた領域に、切欠領域244に沿って後方に窪んだ形状の下側領域248が形成されている。
【0061】
サイドエアバッグ装置240では、ブラケット246に窪んだ形状の下側領域248が形成されていることで、ここにエアバッグクッション108を収容することが可能になっている。収納形態のエアバッグクッション108は、下側に布地が集まることが多く、下側が厚くなりやすい。エアバッグクッション108に厚みがあると、座席102(図1(a)参照)に収納するときに座席内のパッドの形状を変えたり、座席102の表皮の開裂する範囲を工夫したりする必要が生じ、労力やコストが増える。サイドエアバッグ装置240であれば、下側領域248をエアバッグクッション108の退避場所として利用することで、座席102の内部の限られた空間を有効に活用することが可能になり、労力やコストの面でも有益である。
【0062】
図9は、図2(a)のフレーム側板部116の第1変形例(フレーム側板部260)である。フレーム側板部260は、切欠領域132の周囲に所定の第1のリブ262を有している。リブ262は、フレーム側板部260の車内側の面と後方のフランジ264とにわたるように設置されている。リブ262によれば、フレーム側板部260に切欠領域132を設けたとしても、フレーム側板部260の剛性を補うことができる。このリブ262は、上述したいずれのフレーム側板部にも設けることが可能である。
【0063】
図10は、図2(a)のフレーム側板部116の第2変形例(フレーム側板部280)である。図10(a)は、フレーム側板部280を車内側から見た斜視図である。フレーム側板部280は、切欠領域132の車外側に箱状部282を有している。箱状部282は、車幅方向の片側に形成され前方に向かって開口した構成になっている。切欠領域132は、フレーム側板部116の前縁130のうち箱状部282の内側の範囲に形成されている。
【0064】
図10(b)は、図10(a)のフレーム側板部280を車外側から見た斜視図である。箱状部282は、切欠領域132を車外側から覆っている。箱状部282によっても、切欠領域132を有するフレーム側板部280の剛性を補うことができる。
【0065】
図11は、図10(b)の箱状部282に第2のリブ290を追加した例である。リブ290は、箱状部282の上面とフレーム側板部280の車内側の面とにわたるように設置されている。箱状部282に連続してリブ290を設けることによって、フレーム側板部280の剛性をさらに補うことが可能になる。なお、これら箱状部283およびリブ290は、上述したいずれのフレーム側板部にも設けることが可能である。
【0066】
(第2実施形態)
図12は、本発明の第2実施形態に係るサイドエアバッグ装置300を例示した図である。図12(a)は、図2(a)に対応してサイドエアバッグ装置300を例示している。サイドエアバッグ装置300では、フレーム側板部302に切欠領域132(図3参照)が無く、エアバッグモジュール304がブラケット306の突起部(図12(b)の前側突起部308a~308c)を利用してフレーム側板部302に組み付けられる点で、第1実施形態の各サイドエアバッグ装置と構成が異なっている。
【0067】
図12(b)は、図3に対応してサイドエアバッグ装置300を例示した図である。ブラケット306の基部126は、フレーム側板部302の車内側の面に沿っている。反力板128は、基部126からフレーム側板部302の前縁130を跨いで、車外側へと車幅方向に延びている。そして、複数の突起部として、反力板128の後側には、反力板128から後方のフレーム側板部302に向かって延びる計3つの前側突起部308a~308cが設けられている。
【0068】
前側突起部308a~308cは、反力板128の上下方向に間隔を空けて設けられていて、それぞれフレーム側板部302の前縁130に向かって延びている。これら前側突起部308a~308cに対応して、フレーム側板部302の前縁130には、前側突起部308a~308cそれぞれが挿し込まれる計3つの前側挿入孔310a~310cが設けられている。
【0069】
図13は、図12のサイドエアバッグ装置300を別方向から例示した図である。図13(a)は、図12(b)のブラケット306を車外側から見て例示している。ブラケット306の基部126は、インフレータ110(図12(b)参照)のスタッドボルト122が車外側に向かって貫通して延びている。このスタッドボルト122は、側面突起部として利用することができる。
【0070】
図13(b)は、図12(a)のサイドエアバッグ装置300を車外側から例示した図である。上述した前側突起部308a~308cは、フレーム側板部302の前側挿入孔310a~310c(図12(b)参照)に車両前方から挿し込まれる。そして、側面突起部であるスタッドボルト122は、フレーム側板部302に車幅方向に貫通して形成された側面挿入孔312に、車内側から挿し込まれる。このとき、側面挿入孔312は、単にスタッドボルト122およびナット124を通して引っかけるだけの構成であって、ナット124よりも大きな径に形成されている。なお、側面挿入孔312は、フレーム側板部302が車幅方向に厚い場合は、貫通していない窪んだ形状として実現することも可能である。
【0071】
本実施形態の構成によっても、エアバッグクッション108、インフレータ110およびブラケット306を一体化してエアバッグモジュール304を形成させた後は、単にブラケット306の前側突起部308a~308cおよび側面突起部であるスタッドボルト122をフレーム側板部302に挿し込むだけで、エアバッグモジュール304を座席102(図1(a)参照)に組み付けることができる。この構成によっても、組付けの際にボルト類を締結する必要が無いため、組付作業が簡単で、労力の低減を図ることができる。
【0072】
本実施形態においても、ブラケット306は、各突起部をフレーム側板部302に挿し込んでいる他は、フレーム側板部302へのボルト締結などは行っていない。しかしながら、後方に延びる前側突起部308a~308cによってブラケット306の車幅方向への移動が防がれ、車外側に延びるスタッドボルト122によってブラケット306の前後方向への移動が防がれている。したがって、ブラケット306は、エアバッグクッション108から車外側および後方側へ荷重を受けても、フレーム側板部302から脱落する心配はなく、エアバッグクッション108を好適に支え続けることができる。
【0073】
以上のように、本実施形態の構成によっても、エアバッグモジュール304を座席102(図1(a)参照)、すなわち車両に対して簡単かつ十全に組み付けることが可能である。なお、前側突起部308a~308cの数は、さらに増やすことも可能である。前側突起部308a~308cを増やすことで、ブラケット306のフレーム側板部302に組み付けたときの姿勢は、より安定する。
【0074】
図14は、図13(b)のブラケットの第1変形例(ブラケット320)である。ブラケット320は、前側突起部308a~308cを省略し、側面突起部のみ設けることも可能である。例えば、ブラケット320には、側面突起部として機能する2本のスタッドボルト122a、122bの他、新たに2本の側面突起部322a、322bを追加している。
【0075】
ブラケット320は、スタッドボルト122a、122bおよび側面突起部322a、322bの、計4本の突起部をフレーム側板部302に挿し込んで、フレーム側板部302(図13(b)参照)の車内側に組み付けられる。この場合によっても、各突起部によってブラケット320の前後方向への移動が防がれている。したがって、ブラケット320は、エアバッグクッション108から車外側および後方側へ荷重を受けても、フレーム側板部302から脱落する心配はなく、エアバッグクッション118を好適に支え続けることができる。
【0076】
なお、側面突起部322a、322bの数は、さらに増やすことも可能である。側面突起部322a、322bを増やすことで、ブラケット306のフレーム側板部302に組み付けたときの姿勢は、より安定する。
【0077】
図15は、図13(b)のサイドエアバッグ装置300の第1変形例(サイドエアバッグ装置340)を例示した図である。図15(a)は、図11(a)に対応してサイドエアバッグ装置340を例示している。サイドエアバッグ装置340では、フレーム側板部342に切欠領域344が形成され、ブラケット346に窪んだ下側領域248が形成されている点で、各サイドエアバッグ装置と構成が異なっている。
【0078】
図15(b)は、図11(b)に対応してサイドエアバッグ装置340を例示している。フレーム側板部342の切欠領域344は、ブラケット346の基部126よりも下方の範囲に形成されている。そして、エアバッグモジュール341のブラケット346の反力板250には、基部126よりも下方に延びた領域に、切欠領域344に沿って後方に窪んだ形状の下側領域248が形成されている。
【0079】
サイドエアバッグ装置340では、ブラケット346に窪んだ形状の下側領域248が形成されていることで、図8のサイドエアバッグ装置240と同様に、ここにエアバッグクッション108を収容することが可能になっている。サイドエアバッグ装置340においても、下側領域248をエアバッグクッション108の退避場所として利用することで、座席102(図1(a)参照)の内部の限られた空間を有効に活用することが可能になり、労力やコストの面でも有益である。
【0080】
図16は、図13(b)のサイドエアバッグ装置300の第2変形例(サイドエアバッグ装置360)を例示した図である。図16(a)は、図13(b)に対応してサイドエアバッグ装置360を例示している。サイドエアバッグ装置360では、ブラケット362の基部364がフレーム側板部302の車幅方向外側の面に沿って取り付けられ、インフレータ110およびエアバッグクッション108も基部364の車幅方向外側に設けられている点で、サイドエアバッグ装置300と構成が異なっている。
【0081】
図16(b)は、図16(a)のブラケット362およびインフレータ110を例示した図である。ブラケット362の基部364は、フレーム側板部302(図16(a))の車幅方向外側の面に沿った平板状に設けられている。基部364の前縁には車幅方向外側に突出するよう湾曲した脚部366a、366bが設けられていて、反力板368は脚部366a、366bから車幅方向内側へと延びている。
【0082】
図17は、図16(a)のサイドエアバッグ装置360の断面図およびさらなる変形例を例示した図である。図17(a)は、図16(a)のサイドエアバッグ装置360のF-F断面図である。図17(a)に例示するように、反力板368は、基部364の前側から屈曲する脚部366aを介して、車幅方向内側へと延びている。当該サイドエアバッグ装置360においても、エアバッグクッション108は反力板368を押して車両前方へと効率よく膨張展開することが可能になっている。
【0083】
当該サイドエアバッグ装置360の構成によっても、エアバッグクッション108、インフレータ110およびブラケット362を一体化してエアバッグモジュール370を形成させた後は、単にブラケット362の前側突起部308a~308c(図16(b)参照)および側面突起部であるスタッドボルト122(図17(a)参照)をフレーム側板部302に挿し込むだけで、エアバッグモジュール370を座席102(図1(a)参照)に組み付けることができる。この構成によっても、組付けの際にボルト類を締結する必要が無いため、組付作業が簡単で、労力の低減を図ることができる。
【0084】
本実施形態においても、ブラケット362は、各突起部をフレーム側板部302に挿し込んでいる他は、フレーム側板部302へのボルト締結などは行っていない。しかしながら、後方に延びる前側突起部308a~308c(図16(b)参照)によってブラケット362の車幅方向への移動が防がれ、車幅方向内側に延びるスタッドボルト122によってブラケット362の前後方向への移動が防がれている。したがって、ブラケット362は、エアバッグクッション108から車幅方向内側および後方側へ荷重を受けても、フレーム側板部302から脱落する心配はなく、エアバッグクッション108を好適に支え続けることができる。
【0085】
以上のように、当該サイドエアバッグ装置360の構成によっても、エアバッグモジュール370を座席102(図1(a)参照)、すなわち車両に対して簡単かつ十全に組み付けることが可能である。なお、前側突起部308a~308c(図16(b)参照)の数は、さらに増やすことも可能である。また、図14のブラケット320の側面突起部322a、322bと同様に、ブラケット362は前側突起部308a~308の代わりに基部364から車幅方向内側に延びる側面突起部を設けることも可能である。この場合においても、ブラケット362は、スタッドボルト122および側面突起部をフレーム側板部302に挿し込むことで、フレーム側板部302の車幅方向外側に組み付けられ、エアバッグクッション108を好適に支え続けることができる。
【0086】
図17(b)は、図2(b)のサイドエアバッグ装置1000の第4変形例(サイドエアバッグ装置380)である。サイドエアバッグ装置380では、図17(a)のサイドエアバッグ装置360と同様に、インフレータ110およびエアバッグクッション108がブラケット382の基部384の車幅方向外側に設けられている。
【0087】
サイドエアバッグ装置380は、図2(a)のサイドエアバッグ装置100と同様に、フレーム側板部116の切欠領域132にブラケット382の基部384を挿し込んで組み付ける構成になっている。ブラケット382においても、基部384の後縁のストッパ溝144が切欠領域132の後縁の周辺を車幅方向両側から挟む。そして、反力板368は、基部384の前側から屈曲する脚部366aを介して、車幅方向内側へと延びている。当該サイドエアバッグ装置380においても、エアバッグクッション108は反力板368を押して車両前方へと効率よく膨張展開することが可能になっている。
【0088】
当該サイドエアバッグ装置380においても、図2(b)等に例示した第1実施形態のサイドエアバッグ装置100と同様に、次の効果が得られる。すなわち、エアバッグクッション108、インフレータ110およびブラケット382を一体化してエアバッグモジュール390を形成させた後は、単にブラケット382の基部384をフレーム側板部116の切欠領域132に挿し込むだけで、エアバッグモジュール390を座席102(図1(a)参照)に組み付けることができる。特に、組付けの際にボルト類を締結する必要が無いため、組付作業が簡単で、労力の低減を図ることができる。そして、サイドエアバッグ装置380においても、ガイド溝134、136(図5参照)およびストッパ溝144を利用することによって、ブラケット382が車幅方向に脱落することを防ぎ、ブラケット382によってエアバッグクッション108を十全に支持することができる。
【0089】
なお、図17(a)のサイドエアバッグ装置360、および図17(b)のサイドエアバッグ装置380においても、図15のフレーム側板部342の切欠領域344や、図8(b)のフレーム側板部242の切欠領域244を設けたうえで、各ブラケットの下側に下側領域248を設置することが可能である。この場合、サイドエアバッグ装置360、380においても、図8のサイドエアバッグ装置240と同様に、下側領域248をエアバッグクッション108の退避場所として利用でき、座席102(図1(a)参照)の内部の限られた空間を有効に活用することが可能になるため、労力やコストの面で有益である。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0091】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、車両に搭載するエアバッグ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
100…サイドエアバッグ装置、102…座席、106…エアバッグモジュール、108…エアバッグクッション、110…インフレータ、112…ブラケット、114…フレーム部材、116…フレーム側板部、118…ガス噴出孔、120…端子、122…スタッドボルト、122a、122b…スタッドボルト、124…ナット、126…基部、128…反力板、130…前縁、132…切欠領域、133…後縁、134…ガイド溝、138…上縁、140…下縁、142…湾曲部、144…ストッパ溝、200…サイドエアバッグ装置、201…エアバッグモジュール、202…フレーム側板部、204…ストッパ溝、208…ブラケット、210…後縁、212…突出部、220…サイドエアバッグ装置、221…エアバッグモジュール、222…フレーム側板部、224…ストッパ溝、226…ブラケット、240…サイドエアバッグ装置、241…エアバッグモジュール、242…フレーム側板部、244…切欠領域、246…ブラケット、248…下側領域、250…反力板、260…フレーム側板部、262…リブ、264…フランジ、280…フレーム側板部、282…箱状部、290…リブ、300…サイドエアバッグ装置、302…フレーム側板部、304…エアバッグモジュール、306…ブラケット、308a~308c…前側突起部、310a…前側挿入孔、312…側面挿入孔、320…ブラケット、322a~322b…側面突起部、340…サイドエアバッグ装置、341…エアバッグモジュール、342…フレーム側板部、344…切欠領域、346…ブラケット、360…サイドエアバッグ装置、362…ブラケット、364…基部、366a、366b…脚部、368…反力板、370…エアバッグモジュール、380…サイドエアバッグ装置、382…ブラケット、384…基部、390…エアバッグモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17