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特許7175390耐久性のある高性能ワイヤグリッド偏光子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】耐久性のある高性能ワイヤグリッド偏光子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021518658
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2018054361
(87)【国際公開番号】W WO2020072060
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】16/150,478
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501218636
【氏名又は名称】モックステック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ニールソン, アール. スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ, マシュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】オグデン, ショーン
(72)【発明者】
【氏名】バウワーズ, ブライアン
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517973(JP,A)
【文献】特開2006-126338(JP,A)
【文献】国際公開第2010/005059(WO,A1)
【文献】特表2003-502708(JP,A)
【文献】国際公開第2012/115059(WO,A1)
【文献】特表2006-507517(JP,A)
【文献】特開2012-080065(JP,A)
【文献】特表2008-523422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤグリッド偏光子(WGP)を製造する方法であって、
隣り合うワイヤ間に空気で満たされているチャネルを有するワイヤのアレイを、下部保護層上に設けるステップと、
前記下部保護層から最も遠い、前記ワイヤの遠位端に、上部保護層を付着させるステップであって、前記上部保護層が、前記チャネルにまたがり前記チャネルを空気で満たされた状態に保ち、隣り合うワイヤ上の前記上部保護層が接触する状態で連続層を形成し、隣り合うワイヤ上の前記上部保護層間の透過性接合部を含む複数の透過性接合部を有するように、上部保護層を付着させるステップと、次いで
上側バリア層を、前記透過性接合部を通して前記チャネル内および前記チャネルの表面上に、ならびに前記上部保護層の最も外側の表面に、付着させるステップと
を上記の順序で含む、方法。
【請求項2】
前記下部保護層および前記上部保護層はそれぞれ、
熱伝導率が≧2W/(m*K)であり、
溶融温度が≧600℃であり、
酸素拡散係数が≦10-21/秒であり、
水溶性が≦0.005g/Lであり、
可視光スペクトルにわたって、屈折率nが≦2.2、吸光係数kが≦0.06である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上部保護層の厚さは、≧10nmかつ≦1μmであり、
前記下部保護層の厚さは、≧300μmかつ≦5mmである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記上側バリア層は、各チャネルが、前記下部保護層から最も遠い前記ワイヤの遠位端を越えて、前記上部保護層内へ≧5nmの深さで延在することを可能にするように付着される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ワイヤのアレイを前記下部保護層上に設けることは、前記下部保護層の上にスパッタ堆積によってフィルムを付着させることと、前記フィルムをエッチングして、前記ワイヤのアレイおよび隣り合うワイヤ間の前記チャネルを形成することと、前記下部保護層内にエッチングして、前記チャネルのサイズを深さ≧5nm増大させることとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記上側バリア層を付着させることは、前記WGPをオーブン内に置くことと、前記オーブン内で気相であるSi(R(R を前記オーブン内に導入することと、次いで前記Si(R(Rを前記WGP上に蒸着することとを含み、ここで、iは1または2、jは1、2、または3、およびi+j=4であり、R は-N(CH、RはCF(CF(CH、2≦n≦9、および1≦m≦3である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記上側バリア層を付着させることは、以下の順序で、
アミノホスホネートを付着させるステップと、次いで
疎水性化学物質を付着させるステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記上部保護層を付着させる前に、前記ワイヤ上および前記チャネルの内側の前記下部保護層上に、コンフォーマル層の形で、下側バリア層を付着させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記下側バリア層は原子層堆積法によって付着され、前記上部保護層はスパッタ堆積によって付着される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記下部保護層は酸化アルミニウムを含み、前記上部保護層は酸化アルミニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、ワイヤグリッド偏光子に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤグリッド偏光子(WGP:wire grid polarizer)の耐久性を向上させる需要が高まっている。たとえば、WGPは、たとえば、次第により小さくより明るくなり、それにつれて内部温度が一層高くなる、より新しいコンピュータプロジェクタなどにおいて、高温に耐える必要があり得る。
【0003】
選択吸収性のWGPは特に、入射光の大部分を吸収するので、高温による損傷を生じることが多い。かかるWGPは、典型的には、反射部分(たとえば、アルミニウム)および吸収部分(たとえば、シリコン)を有するワイヤを備える。吸収部分は、光の1つの偏光の約80%~90%を、したがって光の総量の40%超を吸収できる。この吸収された光からの熱の多くは、ワイヤの反射部分に伝導し、ワイヤが溶け、それによってWGPを破壊する可能性がある。
【0004】
可視光WGPのワイヤは、細く(約30nm)、かつ高背であり(約300nm)、その結果、壊れやすい場合がある。WGPの性能を劣化させることなく、こうしたワイヤがぐらつくのを防止するのは困難である。
【0005】
WGPのワイヤが酸化すると、WGPの性能が劣化するか、または破壊される可能性がある。ぐらつきの防止と同様に、保護のメカニズムが、WGPの性能を劣化させることなく、ワイヤを酸化から保護することは困難である。
【0006】
WGPのワイヤを腐食から保護することも重要である。ワイヤはナノメートルサイズであり、かつ高性能が要件であるため、少量の腐食でさえも、WGPを不満足なものにする可能性がある。性能を最低基準未満に低下させることなく、十分な腐食防止を実現することは困難である。
【発明の概要】
【0007】
ワイヤグリッド偏光子(WGP)を、高温による損傷、ワイヤのぐらつき、酸化、および腐食から保護することは、有利であることが認識されている。本発明は、これらのニーズを満たすWGPを製造する様々な方法を対象とする。各実施形態は、こうしたニーズの1つ、いくつか、またはすべてを満たすことができる。
【0008】
一実施形態では、方法は、(a)下部保護層上にワイヤのアレイを設けることと、(b)ワイヤ上に、ワイヤ間のチャネルにまたがる、上部保護層を付着させることと、次いで、(c)上部保護層上に、および上部保護層内の透過性接合部を通ってチャネル内に、上側バリア層を付着させることとを含み得る。この実施形態の変形形態では、方法は、上部保護層を付着させる前に、下側バリア層を付着させることをさらに含み得る。別の変形形態では、下部保護層および上部保護層は、酸化アルミニウムを含み得る。
【0009】
別の実施形態では、方法は、アミノホスホネート、次いで疎水性化学物質を、両方ともコンフォーマルコーティングとして、ワイヤ上に付着させることを含み得る。
【0010】
図面は、原寸に比例して描かれていない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による、上部保護層14および下部保護層14を含む一対の保護層14間に挟まれたワイヤ12(長さ方向は、ページの中へ延びている)のアレイを備える、ワイヤグリッド偏光子(WGP)10の概略側断面図である。
図2】本発明の実施形態による、WGP10と類似し、ワイヤ12の近位端12を越えて下部保護層14内に、およびワイヤ12の遠位端12を越えて上部保護層14内に延在する、各チャネル13をさらに備える、WGP20の概略側断面図である。
図3】本発明の実施形態による、図1図2のWGPと類似し、チャネル13内のワイヤ12の側壁表面12、チャネル13内の下部保護層14の表面14LI、ならびに各ワイヤ12の遠位端12と上部保護層14との間に、下側バリア層31をさらに備える、WGP30の概略側断面図である。
図4】本発明の実施形態による、図1図2のWGPと類似し、上部保護層14の最も外側の表面14UO、下部保護層14の最も外側の表面14LO、チャネル13の表面、またはその組合せに位置する上側バリア層41をさらに備える、WGP40の概略側断面図である。
図5】本発明の実施形態による、下側バリア層31(図3参照)および上側バリア層41(図4参照)を備える、WGP50の概略側断面図である。
図6】本発明の実施形態による、図1図5のWGPと類似し、吸収層63間に挟まれた反射層62を具備する、それぞれのワイヤ12をさらに備える、WGP60の概略側断面図である。
図7】本発明の実施形態による、保護層14上のワイヤ12のアレイと、ワイヤ12上および保護層14上の上側バリア層41とを備える、WGP70の概略側断面図である。
図8】本発明の実施形態による、上部保護層14と基板61との間に挟まれたワイヤ12のアレイを備える、WGP80の概略側断面図である。
図9】本発明の実施形態による、本明細書で説明される設計にしたがった少なくとも1つのWGP94を備える、光学システム90の概略側断面図である。
図10】本発明の実施形態による、下部保護層14の上にフィルム102を付着させることを含む、WGPの製造方法の1ステップを示す概略側断面図である。
図11】本発明の実施形態による、フィルム102をエッチングして、ワイヤ12のアレイおよび隣り合うワイヤ12間のチャネル13を形成することを含む、WGPの製造方法の1ステップを示す概略側断面図である。
図12】本発明の実施形態による、ワイヤ12の近位端12を越えて下部保護層14内へ深さD14だけエッチングし、それによってチャネル13のサイズを増大させることを含む、WGPの製造方法の1ステップを示す概略側断面図である。
図13】本発明の実施形態による、ワイヤ12の露出面、およびチャネル13内の、下部保護層14の表面14LIに、またはその両方に、下側バリア層31を付着させることを含む、WGPの製造方法の1ステップを示す概略側断面図である。
図14】本発明の実施形態による、ワイヤの遠位端12に、チャネル13にまたがる、上部保護層14を付着させることを含む、WGPの製造方法の1ステップを示す概略側断面図である。
図15】本発明の実施形態による、上部保護層14の最も外側の表面14UO、下部保護層14の最も外側の表面14LO、チャネル13の一部もしくはすべての表面、またはその組合せに、上側バリア層41を付着させることを含む、WGPの製造方法の1ステップを示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書で使用される場合、「隣接する(adjoin)」という用語は、直接かつすぐ隣での接触を意味する。本明細書で使用される場合、「隣り合う(adjacent)」および「に位置する(located at)」という用語は、隣接することを含むが、間に他の固体材料がある状態で近く、または隣にあることも含む。
【0013】
本明細書で使用される場合、「コンフォーマルコーティング」という用語は、特徴部の形態の外形に適合する薄膜を意味する。たとえば、「コンフォーマル」とは、コーティングの最小厚さが≧0.1nmまたは≧1nmであり、コーティングの最大厚さが≦10nm、≦25nm、または≦40nmであることを意味し得る。別の例として、「コンフォーマル」とは、コーティングの最大厚さを最小厚さで割った値が、≦20、≦10、≦5、または≦3であることを意味し得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、「連続的な(continuous)」は、ピンホールなどのいくつかの不連続性を含む場合があるが、グリッドまたは別個のワイヤへの分割などの、大きな不連続性を含まない層を意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、厚さに関する「等しい(equal)」という用語は、厳密に等しいこと、通常の製造公差の範囲内で等しいこと、あるいはほぼ等しいため、厳密に等しいことからの任意の逸脱がデバイスの通常の使用に対して無視できるほどの影響しか与えないであろうことを意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「nm」という用語はナノメートルを意味し、μmという用語はマイクロメートルを意味し、「mm」という用語はミリメートルを意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「平行な(parallel)」という用語は、厳密に平行であること、通常の製造公差の範囲内で平行であること、あるいはほぼ平行であるため、厳密な平行からの任意の逸脱が、デバイスの通常の使用に対して無視できるほどの影響しか与えないであろうことを意味する。
【0018】
「上側の(upper)」、「下側の(lower)」、「上部(top)」、および「下部(bottom)」という用語は、図面を参照し、相異なるWGPの構成要素を区別するための便宜上のものであるが、WGPは、任意の構成で空間的に配置できる。
【0019】
光学構造体に使用される材料は、一部の光を吸収し、一部の光を反射し、一部の光を透過することができる。以下の定義は、主に吸収性、主に反射性、または主に透過性である材料間を区別する。各材料は、特定の波長範囲(たとえば、紫外線、可視、または赤外線スペクトル)で吸収性、反射性、または透過性であると見なすことができ、様々な波長範囲で様々な特性を有し得る。したがって、材料が吸収性、反射性、または透過性であるかどうかは、使用対象とされる波長範囲に依存する。材料は、反射率R、屈折率nの実数部、および屈折率の虚数部/吸光係数kに基づいて、吸収性、反射性、および透過性に分けられる。式1は、法線入射での、空気と材料の均一なスラブとの間の界面の反射率Rを判定するために使用される。
本明細書において特に明示的に特定されていない限り、特定の波長範囲でk≦0.1の材料は「透過性」材料であり、特定の波長範囲でk≧0.1およびR≦0.6の材料は「吸収性」材料であり、特定の波長範囲でk≧0.1およびR≧0.6の材料は「反射性」材料である。特許請求の範囲に明示的に特定されていない限り、材料は、可視波長範囲にわたって透過性、吸収性、または反射性の特性を有すると推定される。
【0020】
図1図8に示されるように、各ワイヤグリッド偏光子(WGP)は、ワイヤ12のアレイを備え得る。ワイヤ12は、ワイヤグリッド偏光子のワイヤで通常使用されるように、金属および/または誘電体を含む、光を偏光するための材料で作られ得るか、または含み得る。たとえば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,961,393号および米国特許第8,755,113号を参照されたい。
【0021】
図1図6に示されるように、ワイヤ12のアレイは、上部保護層14および下部保護層14を備える一対の保護層14間に挟まれ得る。保護層14は、平坦な平面形状を有し得る。
【0022】
保護層14は、高温に対する耐性の向上、ワイヤ12のぐらつきの防止、ワイヤの酸化からの保護、ワイヤの腐食からの保護、またはその組合せの、利点をもたらすことができる。本明細書の様々な実施形態で説明されているように、この保護は、WGPの性能劣化をほとんどまたはまったく伴わずに実現できる。
【0023】
保護層14は、ワイヤ12から熱が逃げるように伝導するために、高い熱伝導率を有し得る。たとえば、保護層14の一方または両方は、≧2W/(m*K)、≧2.5W/(m*K)、≧4W/(m*K)、≧5W/(m*K)、≧10W/(m*K)、≧15W/(m*K)、≧20W/(m*K)、または≧25W/(m*K)の熱伝導率を有し得る。本明細書で特定されているすべての熱伝導率値は、25℃での値である。
【0024】
保護層14は、耐熱性を向上させるために、高い溶融温度を有し得る。たとえば、保護層14の一方または両方は、≧600℃、≧1000℃、≧1500℃、または≧1900℃の溶融温度を有し得る。
【0025】
保護層14は、ワイヤ12への構造的支持を可能にするために、高いヤング率を有し得る。たとえば、保護層14の一方または両方の材料は、≧1GPa、≧10GPa、≧30GPa、≧100GPa、または≧200GPaのヤング率を有し得る。
【0026】
保護層14は、少なくとも部分的に、チャネル13内のワイヤ12の側壁表面12に沿って延在できる。したがって、こうした保護層14は、この側壁表面12を保護することができる。したがって、保護層14が低い酸素拡散係数を有し、それによってワイヤ12への付加的な酸化防止を実現することが重要であり得る。したがって、前記酸化防止は、保護層14の酸素拡散係数が、すべて325℃で測定して、≦10-20/秒、≦10-21/秒、≦10-22/秒、≦10-23/秒、または≦10-24/秒である場合、有益であり得る。
【0027】
凝縮水による腐食は、WGPの一般的な故障メカニズムである。したがって、保護層14が水に不溶性であることは役立ち得る。したがって、たとえば、保護層14の水溶性は、すべて25℃で測定して、≦1g/L、≦0.1g/L、≦0.01g/L、≦0.005g/L、または≦0.001g/Lであり得る。
【0028】
保護層14が、WGPの性能への悪影響を最小限に抑えるか、または向上すらさせることは重要であり得る。最適な屈折率nおよび吸光係数kは、WGP全体の設計に応じて異なり得る。以下は、光の赤外線、可視光、または紫外線スペクトルにわたる、保護層14の屈折率nおよび吸光係数kの例示的な値である。n≧1.1またはn≧1.3;n≦1.8、n≦2.0、n≦2.2、またはn≦2.5;およびk≦0.1、k≦0.06、またはk≦0.03。
【0029】
保護層14は、高い電気抵抗率を有し得る。たとえば、保護層14は、≧10Ω*cm、≧10Ω*cm、≧10Ω*cm、≧10Ω*cm、≧10Ω*cm、≧10*cm、または≧1010Ω*cmの電気抵抗率を有し得る。いくつかの材料は、かかる高い電気抵抗率なしで保護層14として十分に機能することができる。たとえば、保護層14は、≧0.0001Ω*cmまたは≧0.0005Ω*cm、かつ、≦1Ω*cmまたは≦100Ω*cmの電気抵抗率を有し得る。本明細書で特定されている電気抵抗率の値は、20℃での電気抵抗率である。
【0030】
上記の基準の少なくともいくつかを満たす保護層14の例示的な材料には、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、アルミニウムドープ酸化亜鉛、窒化アルミニウム、および酸化アルミニウムが含まれる。たとえば、一方の保護層14または両方の保護層14は、≧50%、≧75%、≧90%、≧95%、または≧99%の酸化亜鉛、二酸化ケイ素、アルミニウムドープ酸化亜鉛、窒化アルミニウム、または酸化アルミニウムを含み得る。材料の堆積における不完全性により、これらの材料は、不定比で堆積される可能性がある。したがって、本明細書で使用される酸化アルミニウム(Al)という用語は、たとえばAlで、1.9≦x≦2.1および2.9≦y≦3.1であるなど、3個の酸素原子ごとに約2個のアルミニウム原子を意味する。本明細書で使用される窒化アルミニウム(AlN)という用語は、たとえばAlで、0.9≦m≦1.1および0.9≦n≦1.1であるなど、1個の窒素原子ごとに約1個のアルミニウム原子を意味する。本明細書で使用される酸化亜鉛(ZnO)という用語は、たとえばZnで、0.9≦i≦1.1および0.9≦j≦1.1であるなど、1個の酸素原子ごとに約1個の亜鉛原子を意味する。
【0031】
上部保護層14の厚さTh14Uおよび下部保護層14の厚さTh14Lの選択により、WGPの性能への悪影響を低減し、製造性を向上させ、コストを削減しながら、これらの保護層14の能力を向上させ、WGPに必要な保護を実現できる。保護層の厚さTh14UおよびTh14Lは、具体的な用途によって異なり得る。
【0032】
いくつかの用途では、WGPを対称にするために、上部保護層14の厚さTh14Uは、下部保護層14の厚さTh14Lと等しいか、または非常に近い場合がある。WGPを対称にする設計は、米国特許第9,726,897号でより完全に説明されているように、干渉法および3D投影ディスプレイに有益であり得る。たとえば、|Th14L-Th14U|≦1nm、|Th14L-Th14U|≦10nm、または|Th14L-Th14U|≦100nmである。
【0033】
他の用途、特に投影される画像の歪みを最小限に抑えるか、またはまったくないことが要求される用途では、上部保護層14の厚さTh14Uが、下部保護層14の厚さTh14Lと実質的に異なっていることが有益であり得る。たとえば、Th14L/Th14U≧10、Th14L/Th14U≧100、Th14L/Th14U≧1000、またはTh14L/Th14U≧2000、およびTh14L/Th14U≦10,000またはTh14L/Th14U≦100,000である。
【0034】
上部保護層14の厚さTh14Uの例には、≧10nm、≧100nm、≧1μm、≧10μm、≧100μm、≧300μm、または≧600μm、かつ、≦300nm、≦1μm、≦1mm、または≦5mmが含まれる。下部保護層14の厚さTh14Lの例には、≧10nm、≧100nm、≧1μm、≧10μm、≧100μm、≧300μm、または≧600μm、かつ、≦300nm、≦1μm、≦1mm、または≦5mmが含まれる。
【0035】
アレイの各ワイヤ12は、下部保護層14に最も近い近位端12および、上部保護層14に最も近い遠位端を有し得る。ワイヤ12のアレイは、平行であり得る。ワイヤ12はまた、細長であり得る。本明細書で使用される場合、「細長い(elongated)」という用語は、ワイヤ12の長さが、ワイヤの幅W12またはワイヤ厚さTh12よりも実質的に大きいことを意味する(図1のWGP10参照)。ワイヤの長さは、図のページの中へ延びている寸法である。たとえば、ワイヤの長さは、ワイヤ幅W12、ワイヤ厚さTh12、またはその両方の≧10倍、≧100倍、≧1000倍、または≧10,000倍であり得る。
【0036】
チャネル
ワイヤ12のアレイは、チャネル13が隣り合うワイヤ12の各対間にある状態の、交互になったワイヤ12およびチャネル13を含み得る。保護層14は、チャネル13にまたがることができ、チャネル13内に延出し得ないか、またはチャネル13内に最小限しか延出し得ない。それによって、チャネル13は、WGPの性能を向上させるために、空気で満たすことができる。
【0037】
チャネル13のサイズは、WGPの性能を向上させるために、増大させることができる。図2のWGP20に示されるように、各チャネル13は、ワイヤ12の近位端12を越えて深さD14Lだけ下部保護層14内へ、ワイヤ12の遠位端12を越えて深さD14Uだけ上部保護層14内へ、またはその両方へ延在できる。保護層14内へのそれぞれのチャネル13のこうした延在部が、チャネルのサイズを増大させ、チャネル13内の低屈折率の空気の体積の増加により、WGPの性能を向上させ得る。
【0038】
これらの深さD14LおよびD14Uのそれぞれの値、ならびにこれらの深さD14LおよびD14Uの関係は、用途によって異なり得る。以下は、ある設計で効果的であることが証明されている、かかる値および関係のいくつかの例である。D14L≧1nm、D14L≧5nm、D14L≧10nm、D14L≧30nm;D14L≦50nm、D14L≦100nm、D14L≦200nm、D14L≦500nm;D14U≧1nm、D14U≧5nm、D14U≧10nm、D14U≧30nm;D14U≦50nm、D14U≦100nm、D14U≦200nm、D14U≦500nm;|D14L-D14U|≧1nm;および|D14L-D14U|≦5nm、|D14L-D14U|≦10nm、|D14L-D14U|≦20nm、|D14L-D14U|≦30nm、|D14L-D14U|≦50nm、または|D14L-D14U|≦200nm。これらの深さD14LおよびD14Uは、ワイヤ12の厚さT12に平行な方向に測定されている。チャネル13のサイズを増大させるための方法は、下記の製造方法の段落で説明される。
【0039】
下側バリア層
図3のWGP30に示されるように、下側バリア層31は、各ワイヤ12の遠位端12と上部保護層14との間、チャネル13内のワイヤ12の側壁表面12、チャネル13内の下部保護層14の表面14LI、またはその組合せに位置し得る。下側バリア層31は、コンフォーマルコーティングであり得る。下側バリア層31は、たとえば≧50%、≧75%、≧90%、≧95%、または≧99%など、被覆領域の大部分を被覆することができる。被覆の量は、付着させるために使用される器具および下側バリア層31の厚さT31によって変わり得る。
【0040】
下側バリア層31は、各ワイヤ12と下部保護層14との間に存在しなくてもよく、あるいは配置されなくてもよい。これにより、ワイヤ12の下部保護層14への接着力を向上させ、化学的コストを低減できる。したがって、各ワイヤ12の近位端12は、下部保護層14に隣接できる。さらに、下側バリア層31は、上部保護層14の最も外側の表面14UO、下部保護層14の最も外側の表面14LO、またはその両方に存在しなくてもよく、あるいは配置されなくてもよい。下側バリア層31は、チャネル13と隣り合い、チャネル13に面する上部保護層14の最も内側の表面14UIに存在しなくてもよく、あるいは配置されなくてもよい。これにより、上側バリア層41(下記に説明される)の上部保護層14への接着力を向上させることができる。
【0041】
下側バリア層31は、酸化、腐食、またはその両方から保護するための、様々な化学物質を含み得る。たとえば、下側バリア層31は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、希土類酸化物、またはその組合せを含み得る。下側バリア層31は、他の金属酸化物または相異なる金属酸化物の層を含み得る。
【0042】
一実施形態では、下側バリア層31は、酸化防止および腐食防止の両方のために、酸化バリアおよび水分バリアを含む、様々な材料の2つの層を備え得る。酸化バリアは、水分バリアとワイヤとの間に位置し得る。酸化バリアは、ワイヤとは異なってもよく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、希土類酸化物、またはその組合せを含み得る。水分バリアは、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化バリアの希土類酸化物とは別の希土類酸化物、またはその組合せを含み得る。下側バリア層31の希土類酸化物の例には、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムの酸化物が含まれる。
【0043】
下側バリア層31は、ワイヤ12とは異なり得る。これは、(a)ワイヤ12と下側バリア層31との間に境界線または境界層が存在し得るか、または(b)ワイヤ12の材料と比較して、下側バリア層31の材料になんらかの違いがあり得ることを意味する。たとえば、天然酸化アルミニウムを、アルミニウムワイヤ12の表面に形成できる。次いで、酸化アルミニウムの層(酸化バリア)をワイヤに付着させることができる。天然酸化アルミニウムの厚さおよび/または密度が、ワイヤ12(たとえば、ほぼ純粋なアルミニウム)の芯を酸化から保護するには不十分な可能性があるので、酸化アルミニウムのこの追加される層は重要であり得る。この例では、酸化バリア(Al)は、ワイヤ12の表面(Al)と同じ材料組成を有しているが、それでもなお、酸化バリアとワイヤ12との間の境界層、天然酸化アルミニウムに比べて酸化バリアが高密度であることなどの材料特性の違い、またはその両方により、酸化バリアはまったく別のものであり得る。
【0044】
上側バリア層
図4のWGP40に示されるように、上側バリア層41は、上部保護層14の最も外側の表面14UO、下部保護層14の最も外側の表面14LO、チャネル13の一部もしくはすべての表面、またはその組合せに位置し得る。チャネル13のかかる表面は、チャネル13と隣り合い、チャネル13に面する上部保護層14の最も内側の表面14UI、チャネル13内の下部保護層14の表面14LI、およびチャネル13内のワイヤの側壁表面12を含み得る。こうした位置に上側バリア層41を設けることにより、上側バリア層は、保護層14の露出面の多くまたはすべての保護が可能となり得る。ワイヤ12の保護層14への接着力を向上させるために、上側バリア層41は、各ワイヤ12の近位端12と下部保護層14との間、各ワイヤ12の遠位端12と上部保護層14との間、またはその両方に存在しなくてもよく、あるいは配置されなくてもよい。
【0045】
上側バリア層41は、コンフォーマルコーティングであり得る。上側バリア層41は、被覆領域(14UO、14LO、チャネル13の表面、またはその組合せ)の、たとえば≧50%、≧75%、≧90%、≧95%、または≧99%など、被覆領域の大部分を被覆できる。被覆の量は、WGPの使用条件、および完全な被覆が必要かどうかによって変わり得る。
【0046】
上側バリア層41は、酸化、腐食、またはその両方から保護するための、様々な化学物質を含み得る。上側バリア層41用に望ましい多くの化学物質は、上部保護層14の堆積中に熱で破壊される可能性がある。したがって、最初に上部保護層14を付着させ、次いで上側バリア層41を付着させることが望ましい場合がある。上部保護層14は連続層であるため、ワイヤ12へ構造的支持をもたらすことが重要であり得る。上部保護層14は、連続層の形で付着させることができ、各ワイヤ12上の上部保護層14は、隣り合うワイヤ上の上部保護層14に接触しているが、隣り合うワイヤ12上の上部保護層14間に透過性接合部42を有している。この透過性接合部42は、上側バリア層41の化学物質がチャネル13の表面に入り込み、チャネルの表面のコーティングを可能にするための、小さな空間を有し得る。しかし、こうした透過性接合部42は、ワイヤ12の構造的支持に悪影響を及ぼさないように、十分に小さくできる。上部保護層14は、下記の製造方法の段落で説明される手順により、こうした特性を持って付着させることができる。
【0047】
上側バリア層41には、アミノホスホネート、疎水性化学物質、下側バリア層31に関して上記で説明されたものなどの金属酸化物、またはその組合せが含まれ得る。アミノホスホネートは、ATMPとしても知られている、化学式N[CHPO(OH)のニトリロトリ(メチルホスホン酸)であり得る。ATMPと疎水性化学物質との両方を組み合わせると、WGPの初期および長期の保護性を向上させることができる。疎水性化学物質は、当初は水に対して優れた耐性をもたらし得るが、WGPの使用中に高温下で、より素早く分解する可能性もある。ATMPはより高い耐熱性を有し得るので、疎水性化学物質よりも長期に保護性をもたらす。ATMPは、疎水性化学物質とワイヤ12との間に挟まれた下側の層であり得る。
【0048】
ATMP/疎水性化学物質の質量分率は、それぞれのコスト、および当初のWGPの保護性または長期のWGPの保護性のどちらがより重要であるかに応じて異なり得る。たとえば、この質量分率は、≦10、≦5、または≦2、および≧1、≧0.5、または≧0.1であり得る。
【0049】
疎水性化学物質の例には、シラン化学物質、ホスホネート化学物質、またはその両方が含まれる。たとえば、シラン化学物質は、化学式(1)、化学式(2)、またはその組合せを有し得、ホスホネート化学物質は、化学式(3)を有し得る。
ここで、rは正の整数であり得、各Rは独立して疎水基であり得、各XおよびZはワイヤ12への結合であり得、各RおよびRは独立して任意の化学元素または基であり得る。
【0050】
およびRの例には、反応基、R、R、またはワイヤへの結合XもしくはZが含まれる。反応基の例には、-Cl、-OR、-OCOR、-N(R、または-OHが含まれる。各Rは、独立して、-CH、-CHCH、-CHCHCH、他の任意のアルキル基、アリール基、またはその組合せであり得る。
【0051】
の例には、炭素鎖、少なくとも1つのハロゲンを有する炭素鎖、過フッ素化基を有する炭素鎖、またはその組合せが含まれる。炭素鎖または炭素鎖の過フッ素化基の長さの例には、≧3個の炭素原子、≧5個の炭素原子、≧7個の炭素原子、または≧9個の炭素原子、かつ、≦11個の炭素原子、≦15個の炭素原子、≦20個の炭素原子、≦30個の炭素原子、または≦40個の炭素原子が含まれる。炭素鎖の炭素原子は、Si原子またはP原子に直接結合できる。Rは、CF(CF(CHを含み得るか、またはCF(CF(CHからなり得る。ここで、n≧1、n≧2、n≧3、n≧5、またはn≧7、およびn≦8、n≦9、n≦10、n≦15、またはn≦20、ならびにm≧1、m≧2、またはm≧3、およびm≦3、m≦4、m≦5、またはm≦10である。
【0052】
下側バリア層31は、図3に示されるように、固体材料の最も外側の層であり得、空気に露出され得る。別法として、上側バリア層41は、図4図7に示されるように、固体材料の最も外側の層であり得、空気に露出され得る。図5図6に示されるように、下側バリア層31は上側バリア層41と組み合わせることができる。この組合せは、酸化および腐食からの優れた保護性をもたらし得るが、やはりWGPへのコスト追加となる。
【0053】
下側バリア層31、上側バリア層41、またはその両方は、コンフォーマルコーティングであり得る。コンフォーマルコーティングを使用すると、化学物質の厚さT31またはT41がより薄くなるため、コストが節約され、化学物質がWGPの性能に及ぼすどんな悪影響も軽減されるという結果になり得る。
【0054】
バリア層の厚さ
ワイヤ12に十分な保護性をもたらすために、下側バリア層31の十分な厚さT31、上側バリア層41の十分な厚さT41、またはその両方を有することが重要であり得る。厚さT31またはT41の最小値の例には、≧0.1nm、≧0.5nm、≧1nm、≧5nm、または≧10nmが含まれる。この化学物質によって引き起こされるWGPの性能劣化を回避または最小限に抑えるために、下側バリア層31の薄い厚さT31、上側バリア層41の薄い厚さT41、またはその両方を有することが重要であり得る。厚さT31またはT41の最大値の例には、≦12nm、≦15nm、≦20nm、または≦50nmが含まれる。これらの厚さの値は、コンフォーマルコーティングの任意の位置での最小厚さもしくは最大厚さであり得るか、または特許請求の範囲で特定される平均厚さであり得る。
【0055】
吸収性
図6のWGP60に示されているように、それぞれのワイヤ12は、吸収層63間に挟まれた反射層62を備え得る。吸収層63は、光を吸収するにつれて温度が容易に上昇するので、一対の保護層14間に2つの吸収性WGPのワイヤ12を挟むことは、特に有用であり得る。熱伝達を向上させるために、各吸収層63は保護層14に隣接できる。
【0056】
保護層14は、吸収層63によって吸収される熱のためのヒートシンクであり得る。保護層14の体積を増加させることは、この熱を吸収するのに十分な体積を可能にするために有益であり得る。したがって、たとえば、保護層14のそれぞれの体積は、各吸収層63の体積の≧2倍、≧3倍、≧5倍、≧8倍、≧12倍、または≧18倍であり得る。
【0057】
基板、単一のバリア層、バリア層なし
図6のWGP60にさらに示されているように、基板61は、下部保護層14の最も外側の表面14LOに隣り合うことができるか、または隣接できる。基板61は、たとえば、紫外線、可視、赤外線、またはその組合せなど、使用する波長範囲に対して、光学的に透過性の材料で作ることができる。基板61は、厚さTh61を有し得、ワイヤ12および保護層14に構造的支持をもたらす材料を含み得る。たとえば、厚さth61は、≧0.1mm、≧0.3mm、≧0.5mm、または≧0.65mmであり得る。保護層14がワイヤ12に十分な構造的支持をもたらす場合、追加基板61は不要となる可能性がある。かかる設計により、性能が向上し、コストが削減され得る。
【0058】
図7に示されるように、WGP70は、単一の保護層14上にワイヤ12のアレイを備え得る。上記のように、疎水性化学物質、ATMP、またはその両方を含む上側バリア層41は、ワイヤ12および基板61の露出面上のコンフォーマルコーティングであり得る。WGP70はまた、上側バリア層41とワイヤとの間に、下側バリア層31も備え得る。
【0059】
図8に示されるように、WGP80は、基板61と単一の保護層14との間に挟まれた、ワイヤ12のアレイを備え得る。WGP80は、より低コストのWGPであり得る。
【0060】
光学システム
図9に示される光学システム90は、本明細書に記載される設計による少なくとも1つのWGP94、および空間光変調器92を備える。2つのWGP94が使用される場合、空間光変調器92は2つのWGP間に位置し得る。
【0061】
下部保護層14が上部保護層14よりも厚い場合、上部保護層14は、空間光変調器92に面することができ、下部保護層14よりも空間光変調器92の近くに位置し得る。より厚い保護層14を空間光変調器92とは反対側に向けることにより、光の歪みを最小限に抑えることができる。
【0062】
光源93からの光は、WGPで偏光され得る。空間光変調器92は、WGP94から透過または反射された光ビームを受光するように位置し得る。空間光変調器92は、複数のピクセルを有することができ、各ピクセルは信号を受信できる。信号は、電子信号であり得る。各ピクセルが信号を受信するかどうかに応じて、または信号の強度に応じて、ピクセルは、光ビームの一部の偏光を回転させるか、または光ビームの一部の偏光を変化させることなく、透過もしくは反射することができる。空間光変調器92は、液晶を備えることができ、透過性、反射性、または半透過性であり得る。
【0063】
空間光変調器92からの光は、2つのWGPが使用される場合、2番目のWGP94で偏光され得る。次いで、光は、デバイス91に入ることができ、デバイスは、投影システム、または、たとえばX-Cubeなどの色を組み合わせる光学系であり得る。
【0064】
方法
WGPを製造する方法は、以下のステップの一部またはすべてを含むことができ、以下の順序で、またはそのように特定されている場合は他の順序で、実行できる。いくつかのステップは、特許請求の範囲に特に明示的に記載されていない限り、同時に実行できる。以下に説明されていない、追加のステップがある可能性がある。こうした追加のステップは、説明されているステップの前、間、または後にあり得る。WGPの構成要素、およびWGP自体は、上記のような特性を有し得る。
【0065】
図10に示されるステップは、下部保護層14の上にフィルム102を付着させることを含む。たとえば、フィルム102は、下部保護層14上にスパッタリングできる。フィルム102は、反射層、透過層、吸収層、またはその組合せを含み得る。
【0066】
図11に示されるステップは、フィルム102をエッチングして、ワイヤ12のアレイ、および隣り合うワイヤ12間のチャネル13を形成することを含む。図12に示されるステップは、ワイヤ12の近位端12を越えて、下部保護層14内へ深さD14だけエッチングし、それによってチャネル13のサイズを増大させることを含む。
【0067】
図13に示されるステップは、下側バリア層31を付着させることを含む。下側バリア層31は、ワイヤ12の露出面、およびチャネル13内の、下部保護層14の表面14LIに付着させることができる。したがって、下側バリア層31は、下部保護層14から最も遠いワイヤ12の遠位端12、チャネル13内のワイヤ12の側壁表面12、およびチャネル13内の下部保護層14の表面14LIに付着させることができる。下側バリア層31は、原子層堆積法などによって、コンフォーマル層の形で付着させることができる。したがって、下側バリア層31は、チャネル13を空気で満たしたままにしながら薄い保護層を設ける、コンフォーマルコーティングであり得る。
【0068】
図14に示されるステップは、上部保護層14を付着させることを含む。上部保護層14は、たとえば以下で説明されるように、チャネルにまたがり、チャネル13を空気で満たされた状態に保つように、付着させることができる。本明細書で「空気で満たされた」という用語は、空気で満たされたチャネルが保持されることを意味するが、かかるチャネルは、チャネル13内に延在する上部保護層14によって、たとえばワイヤ12の側面12に沿って部分的に、サイズが縮小され得る。
【0069】
さらに、以下で説明される方法により、隣り合うワイヤ12上の上部保護層14は、隣り合うワイヤ12上の上部保護層14間の透過性接合部42に接触できるが、透過性接合部を保持できる。また、以下に説明される方法により、各チャネル13は、ワイヤ12の遠位端12を越えて、深さD14Uだけ上部保護層14内に延在でき、それによってチャネル13のサイズを増大させ、性能を向上させる。
【0070】
上部保護層14は、スパッタ堆積によって付着させることができる。以下は、上記の特性を実現させるための堆積条件の例である。チャンバの圧力は、1~5mTorrであり得る。堆積温度は、約50℃であり得る。約1:1の比率のOガスとArガスとの混合物を、チャンバ全体にわたって噴射できる。堆積は、約1000ボルトのバイアス電圧および4000ワットの電力で実行できる。ワイヤは、約100~140nmのピッチP、約30~40nmのワイヤ幅W12、約250~300nmのワイヤ厚さT12を有し得る。堆積条件を調整して、上部保護層14を成形できる。たとえば、バイアス電圧、ガス流量、ガス比率、およびチャンバ圧力を調整して、上部保護層14の堆積速度を変更し、それによって上部保護層の形状を変更できる。前述の条件は、使用されるスパッタ器具、ターゲット材料の種類、スパッタ堆積の種類、および上部保護層14の所望の形状に応じて異なり得る。
【0071】
図15に示されるステップは、上側バリア層41を付着させることを含む。上側バリア層41は、化学気相蒸着法を含む様々な方法によって付着させることができる。上側バリア層41は、上部保護層14の最も外側の表面14UO、下部保護層14の最も外側の表面14LO、チャネル13の一部もしくはすべての表面、またはその組合せに位置し得る。被覆が望ましくない位置は、堆積中にブロックされ得る。
【0072】
上側バリア層41は、隣り合うワイヤ12間の上部保護層14の透過性接合部42を通って入ることにより、チャネル13に入り込み、コーティングできる。堆積条件は、透過性接合部42を通して、上側バリア層41のチャネル13内への侵入を可能にするか、または向上させるように調整できる。たとえば、上側バリア層41の液相での化学物質を、フラスコに注ぐことができる。この液体は、WGPを収容するオーブンに取り付けられた容器内にポンプ移送するか、または引き込むことができる。オーブンは、化学物質が素早く蒸気になる(flash to vapor)圧力および温度を有し得る。たとえば、オーブンの温度は≧100℃かつ≦200℃、圧力は≧1Torrかつ≦3Torrであり得る。
【0073】
上側バリア層41を付着させるために使用される化学物質には、Si(R(Rが含まれ得る。iは、1または2であり得る。jは、1、2、または3であり得る。i+jは、4に等しくなり得る。RおよびRは、上記の通りである。Si(R(R は、オーブン内で気相であり、次いでWGPに蒸着され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15