(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20221111BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221111BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
G03F9/00 Z
G03F7/20 501
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2022036821
(22)【出願日】2022-03-10
(62)【分割の表示】P 2017176123の分割
【原出願日】2017-09-13
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】山賀 勝
(72)【発明者】
【氏名】緑川 悟
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-001545(JP,A)
【文献】特開2010-217207(JP,A)
【文献】特開2015-222370(JP,A)
【文献】特開2006-106505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 9/00
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺基板を支持し、基板搬送ラインに沿って往復移動可能な露光ステージと、
前記露光ステージの上流側に配置され、供給リールを設けた基板供給部と、
前記露光ステージの下流側に配置され、巻取リールを設けた基板巻取部と、
前記露光ステージを基板搬送ラインに沿って往復移動させるステージ移動機構と、
前記基板供給部と前記基板巻取部とを基板搬送ラインに沿って往復移動させる搬送部移動機構とを備え、
前記基板供給部および前記基板巻取部が、前記露光ステージと前記基板供給部および前記基板巻取部との相対的位置関係を維持するように、前記露光ステージの移動に合わせて、基板搬送ラインに沿って移動することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
長尺基板を支持し、基板搬送ラインに沿って往復移動可能な露光ステージと、
前記露光ステージの上流側に配置され、供給リールを設けた基板供給部と、
前記露光ステージの下流側に配置され、巻取リールを設けた基板巻取部とを備え、
前記基板供給部および前記基板巻取部が、基板搬送ラインに沿って移動可能であり、
前記露光ステージと前記基板供給部および前記基板巻取部との相対的位置関係を維持するように、前記基板供給部および前記基板巻取部の移動を制御する移動制御部をさらに備えることを特徴とする露光装置。
【請求項3】
前記基板供給部と前記基板巻取部の少なくとも一方と、前記露光ステージとの距離間隔を検知するセンサをさらに備え、
前記移動制御部が、検出される距離間隔に応じて、前記露光ステージと前記基板供給部および前記基板巻取部の移動を制御することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
長尺基板を支持し、基板搬送ラインに沿って往復移動可能な露光ステージと、
それぞれ前記長尺基板に対してパターン光を投影する複数の露光ヘッドから構成される露光部と、
前記長尺基板の未露光部分を巻いた状態で保持し、送り出す供給リールと、
前記長尺基板の露光済み部分を巻き取り、保持する巻取リールとを備え、
露光動作のとき、前記供給リールおよび前記巻取リールが、前記露光ステージと前記供給リールおよび前記巻取リールとの間の互いの相対的位置関係を維持するように、前記露光ステージの移動機構とは異なる移動機構によって、基板搬送ラインに沿って移動することを特徴とする露光装置。
【請求項5】
長尺基板を支持し、基板搬送ラインに沿って往復移動可能な露光ステージと、
それぞれ前記長尺基板に対してパターン光を投影する複数の露光ヘッドから構成される露光部と、
前記長尺基板の未露光部分を巻いた状態で保持し、送り出す供給リールと、
前記長尺基板の露光済み部分を巻き取り、保持する巻取リールとを備え、
露光動作のとき、前記露光ステージと、前記供給リールと、前記巻取リールとを、基板搬送ラインに沿って、一体的に移動させる移動機構と
を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項6】
前記長尺基板が、並列した複数の長尺基板で構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の露光装置。
【請求項7】
前記露光ステージが、前記長尺基板を吸着保持しながら移動するとともに、昇降可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板などの長尺基板(ワークピース)を、ロールトゥロール搬送系(Roll to Roll carrier、以下、RtoR搬送系という)によって搬送する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RtoR搬送系を備えた露光装置では、露光ステージの上流側に供給リール(巻出しロール)、下流側に巻取リール(巻取ロール)がそれぞれ配置され、プリント配線基板などの長尺基板を供給リール、巻取リールに巻き回した後、上流側~下流側へ搬送しながら露光を行う。
【0003】
具体的には、長尺基板の裏面を吸着支持する露光ステージを長尺基板搬送方向に沿って移動させながら、長尺基板上方に設置された露光ヘッドによって投影エリア(露光対象エリア)の位置に応じたパターン光を投影する。露光ステージが露光完了位置まで移動すると、露光ステージが降下して最初の露光位置へ帰還する。同じ露光動作を繰り返すことで、長尺基板全体に対してパターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のRtoR搬送系は露光装置のベース(筐体)に固定されている。そのため、長尺基板は露光開始前に供給リールから間欠的に引き出され、下流側へ送り出される。また、露光終了後に露光ステージが上流側へ復帰するのに伴い、長尺基板の上流側への巻き戻しが生じる場合がある。このような基板の移動に起因して長尺基板に蛇行が生じ、また露光位置ずれ、あるいは長尺基板の反り、皺や擦れなどのダメージが生じる。特に、複数の長尺基板を並走させて同時露光する場合、蛇行調整が困難となる。
【0006】
したがって、長尺基板の蛇行を確実に抑えることができる基板搬送系を構成することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の露光装置は、長尺基板を支持し、基板搬送ラインに沿って往復移動可能な露光ステージと、露光ステージの上流側に配置され、供給リールを設けた基板供給部と、露光ステージの下流側に配置され、巻取リールを設けた基板巻取部と、露光ステージを基板搬送ラインに沿って往復移動させるステージ移動機構と、基板供給部と基板巻取部とを基板搬送ラインに沿って往復移動させる搬送部移動機構とを備える。
【0008】
そして、基板供給部および基板巻取部が、露光ステージと基板供給部および基板巻取部との相対的位置関係を維持するように、露光ステージの移動に合わせて、基板搬送ラインに沿って移動するここでの「上流側」は、露光ステージの供給リール側を支援し、「下流側」は、巻取リール側を表す。
【0009】
本発明の他の態様である露光装置は、長尺基板を支持し、基板搬送ラインに沿って往復移動可能な露光ステージと、露光ステージの上流側に配置され、供給リールを設けた基板供給部と、露光ステージの下流側に配置され、巻取リールを設けた基板巻取部とを備え、基板供給部および基板巻取部が、基板搬送ラインに沿って移動可能であり、露光ステージと基板供給部および基板巻取部との相対的位置関係を維持するように、基板供給部および基板巻取部の移動を制御する移動制御部をさらに備える。
【0010】
例えば、基板供給部と基板巻取部の少なくとも一方と、露光ステージとの距離間隔を検知するセンサをさらに備え、移動制御部は、検出される距離間隔に応じて、露光ステージと基板供給部および基板巻取部の移動を制御することができる。
【0011】
本発明の他の態様である露光装置は、長尺基板を支持し、基板搬送ラインに沿って往復移動可能な露光ステージと、それぞれ長尺基板に対してパターン光を投影する複数の露光ヘッドから構成される露光部と、長尺基板の未露光部分を巻いた状態で保持し、送り出す供給リールと、長尺基板の露光済み部分を巻き取り、保持する巻取リールとを備え、露光動作のとき、供給リールおよび巻取リールが、露光ステージと供給リールおよび巻取リールとの間の互いの相対的位置関係を維持するように、露光ステージの移動機構とは異なる移動機構によって、基板搬送ラインに沿って移動する。
【0012】
本発明の他の態様である露光装置は、長尺基板を支持し、基板搬送ラインに沿って往復移動可能な露光ステージと、それぞれ長尺基板に対してパターン光を投影する複数の露光ヘッドから構成される露光部と、長尺基板の未露光部分を巻いた状態で保持し、送り出す供給リールと、長尺基板の露光済み部分を巻き取り、保持する巻取リールとを備え、露光動作のとき、露光ステージと、供給リールと、巻取リールとを、基板搬送ラインに沿って、一体的に移動させる移動機構とを備える。
【0013】
例えば、長尺基板が、並列した複数の長尺基板で構成される。
【0014】
例えば、露光ステージが、長尺基板を吸着保持しながら移動するとともに、昇降可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、RtoR搬送系を備えた露光装置において、長尺基板の蛇行を抑えながら露光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態である露光装置の概略的構成図である。
【
図2】露光装置の一部を模式的に示した斜視図である。
【
図4】露光開始時と露光完了時の露光ステージおよび搬送系の位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態である露光装置の概略的構成図である。
図2は、露光装置の一部を模式的に示した斜視図である。
図3は、露光装置の概略的ブロック図である。
【0019】
露光装置10は、ロール状に巻かれた長尺基板Wを搬送しながら露光動作を行うRtoR搬送系を備えた露光装置であり、基板供給装置20、基板巻取装置30、露光部40を備える。長尺基板Wは、ここでは長尺フィルムに銅薄膜層を形成した上にフォトレジストなどの感光材料を塗布した(あるいは貼り付けた)長尺シート状の基板が巻回されてロール状に形成されている。
図2に示すように、長尺基板Wは、幅同一の2条(一対)の基板W1、W2から構成されている。
【0020】
露光ステージ(テーブル)15は、長尺基板Wの裏面を吸着して平坦に保持するとともに、裏面吸着位置と裏面から離れた所定の離間位置との間でZ方向に昇降可能であり、図示しない昇降機構によって昇降する。露光ステージ15は、後述するようにステージ移動機構50に支持され、X方向に沿って移動可能である。なお、以下では、長尺基板Wの搬送方向(搬送ライン)Mに沿った方向を“X”、搬送方向Mに垂直な方向(基板幅方向)を“Y”、そして、X、Yに垂直な方向(鉛直方向)を“Z”で表す。
【0021】
露光部40は、長尺基板W1、W2からZ方向に所定距離離れた場所に配置され、不図示のフレームを介してベース(基台)10Bに固定されている。
図3に示すように、露光部40は、半導体レーザなどの光源41と、照明光学系42と、複数のマイクロミラーをマトリクス配列させたDMD(Digital Micro-mirror Device)43と、結像光学系44などをそれぞれ備えた複数の露光ヘッドから構成され、各露光ヘッドには、搬送方向Mに沿った露光領域が規定されている。光源41は光源制御部110によって駆動される。
【0022】
各露光ヘッドのDMDは、露光制御部120から送られてくる露光エリア位置に応じた描画データ(ラスタデータ)に基づいてマイクロミラーの姿勢を位置決めし、これによってパターン光が長尺基板W1、W2に投影される。露光部40に対する長尺基板W1、W2の相対移動に応じてマイクロミラーの姿勢を切り替えることにより、長尺基板W1、W2の感光材料に対する露光(多重露光など)が行われ、これによってパターンが形成される。コントローラ100(
図3参照)は、露光装置10の露光動作全体を制御する。なお、マスクを用いた露光部によって構成することも可能である。
【0023】
基板供給装置20は、露光ステージ15の上流側に配置される供給リール22A、22Bと、支持ローラ24と、供給リール22A、22Bをそれぞれ軸回転させる駆動機構(図示せず)を備えている。駆動機構は、例えばステッピングモータなどで構成される。基板供給装置20によって片持ち支持される供給リール22A、22Bは、それぞれ長尺基板W1、W2の未露光部分をロール状に巻いた状態で保持、固定し、また、軸回転することによって下流側に向けて長尺基板Wを送り出すことができる。なお、露光ステージ15から見て供給リール22A、22B側を“上流側”、巻取リール32A、32B側を“下流側”とする。
【0024】
基板巻取装置30は、露光ステージ15の下流側に配置される巻取リール32A、32B、支持ローラ34と、巻取リール32A、32Bをそれぞれ軸回転させる駆動機構(図示せず)を備えている。巻取リール32A、32Bは、それぞれ長尺基板W1、W2の露光済み部分をロール状に巻いた状態で保持、固定し、また、軸回転することによって長尺基板W1、W2を巻き取ることができる。基板供給装置20、基板巻取装置30による長尺基板W1、W2の巻き取り処理などは、搬送制御部130(
図3参照)によって制御されている。
【0025】
供給リール22A、22B、巻取リール32A、32Bと露光ステージ15との間にそれぞれ配置される支持ローラ24、34は、長尺基板W1、W2を支持し、長尺基板W1、W2が搬送されるときに軸回転するフリーローラとして構成されている。支持ローラ24、34は、長尺基板W1、W2が露光面高さもしくは露光面高さより僅かに低い位置で下流側へ移動するようにその高さが調整されており、それぞれ基板供給装置20、基板巻取装置30によって片持ち支持されている。長尺基板W1、W2には、支持ローラ24、34の区間T(
図1参照)の架け渡し部分に適度なテンションがかかっており、長尺基板W1、W2は皺や伸びがない状態で搬送されていく。
【0026】
供給リール22A、22Bおよび巻取リール32A、32Bは、長尺基板W1、W2のロール状巻回部分を基板装着時に固定する周知の機構26A、26B、および36A、36Bを備える。また、基板供給装置20、基板巻取装置30それぞれの駆動機構は、供給リール22Aと巻取リール32A、供給リール22Bと巻取リール32Bとをそれぞれ同期回転させ、長尺基板W1、W2を所定長さだけ間欠的に搬送させる。
【0027】
ステージ移動機構50は、露光ステージ15を片持ち支持する昇降機構(図示しない)を装備した移動部材52と、ベース10Bに設置された一対のガイドレール54A、54Bおよびアクチュエータ55を備えている。一対のガイドレール54A、54Bは、X方向に沿って延び、移動部材52はガイドレール54A、54Bに沿ってX方向およびその逆方向に移動可能である。アクチュエータ55は、例えばボールネジによって構成される。
【0028】
搬送部移動機構60は、プレート状の移動部材62と、ベース10Bに設置された一対のガイドレール64A、64Bおよびアクチュエータ65を備えている。基板供給装置20と基板巻取装置30は、移動部材62の上に搭載されており、一体となって移動する(連動する)。一対のガイドレール64A、64Bは、X方向に沿って延び、移動部材62はガイドレール64A、64Bに沿ってX方向およびその逆方向に移動可能である。
【0029】
ベース10Bに設けられた移動制御部70は、アクチュエータ55、65の駆動を制御し、搬送系(基板供給装置20および基板巻取装置30)と露光ステージ15との相対的位置関係を維持する、すなわち相対的距離間隔が一定となるように、露光ステージ15と基板供給装置20、基板巻取装置30の移動をフィードバック制御する。
【0030】
露光ステージ15と基板供給装置20(基板巻取装置30)との搬送方向Mに沿った相対的距離間隔を測定するため、位置検出用フォトセンサ90が、基板供給装置20の露光ステージ15と対向する側面に配置されている(
図2参照)。位置検出用フォトセンサ90はLEDなどの光源を内蔵し、露光ステージ15の側面を照射する。露光ステージ15側面は、光の照射位置が基準位置とそれ以外の位置との間で光量差が生じるように形成されている。移動制御部70は、検出光量に応じた相対的距離間隔と基準となる相対的距離間隔との差に基づいて、アクチュエータ55、65を制御する。
【0031】
露光ステージ15の支持ローラ24側には、長尺基板W1、W2それぞれの端面位置を検出する位置センサ80が設けられている。位置センサ80は、例えばラインセンサなどの透過型フォトセンサによって構成することが可能である。基板供給措置20と基板巻取装置30は、それぞれ供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32Bの軸方向位置を制御する機構(図示せず)を備えており、検出された端面位置に応じてリール軸方向位置を調整し、蛇行走行を補正することが可能である。
【0032】
図4は、露光開始時と露光完了時の露光ステージおおよび搬送系の位置を示した図である。
【0033】
露光開始前、露光ステージ15は長尺基板W1、W2を吸着保持し、供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32Bは、駆動されないため静止状態となっている。露光開始に伴い、露光ステージ15はX方向に沿って所定速度で移動していく。このとき、基板供給装置20および基板巻取装置30は、露光ステージ15の移動に合わせて移動する。
【0034】
すなわち、露光ステージ15と同期して移動開始し、基板供給装置20および基板巻取装置30と露光ステージ15との相対的位置関係を保つように、露光ステージ15と同一速度でX方向に移動していく(並走する)。したがって、長尺基板W1、W2は、露光ステージ15の移動前および露光ステージ15の移動中の間、下流側へ送り出されず、露光ステージ15に対して静止している。露光ステージ15の移動中、各露光ヘッドの露光エリア位置に応じたパターン光が、露光部40から投影される。
【0035】
露光ステージ15と、基板供給装置20および基板巻取装置30が露光完了位置に到達すると、露光ステージ15は長尺基板W1、W2の吸着支持を解除し、降下する。そして、供給リール22A、22Bおよび巻取リール32A、32Bが同期回転し、長尺基板W1、W2は所定長さ分だけ巻取リール32A、32Bに巻き取られる。
【0036】
巻取リール32A、32B側への巻き取りが終了すると、露光ステージ15と基板供給装置20および基板巻取装置30が同期移動し、露光開始位置へ戻る。この間、供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32Bは、駆動されないために静止状態となっている。上述した露光動作を繰り返すことによって、長尺基板W1、W2全体に対してパターンが形成されていく。
【0037】
このように本実施形態によれば、長尺基板W1、W2を搬送するRtoR搬送系を備えた露光装置10において、露光ステージ15の上流側に設けられた供給リール22A、22Bを保持する基板供給装置20と、下流側に設けられた巻取リール32A、32Bを保持する基板巻取装置30が設けられている。露光動作のとき、露光ステージ15はステージ移動機構50によってX方向に移動し、同時に、基板供給装置20および基板巻取装置30が、搬送部移動機構60によってX方向へともに移動する。
【0038】
基板搬送系(基板供給装置20、基板巻取装置30)が露光ステージ15と一緒に移動するため、長尺基板W1、W2が露光ステージ15の移動開始前および移動中に下流側へ送り出されない。そのため、従来の搬送系のような露光中の蛇行走行が抑制され、蛇行走行に起因する露光位置ずれ、あるいは基板の皺より、反りなどが生じない。また、このような基板搬送系を構成することによって、ダンサーローラーなどの機構を設ける必要がなく、簡易な構成で基板搬送系を構築することが可能となる。
【0039】
基板供給装置20と基板巻取装置30は、露光中、長尺基板Wを下流側の一方向のみ送り出せばよく、巻き戻しを行う必要がない。そのため、長尺基板Wの蛇行を抑えたパターン露光を実現することができる。特に、蛇行調整が困難な2条の長尺基板W1、W2を搬送する露光装置に好適である。
【0040】
基板搬送系が移動するため、基板搬送長(供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32B間の基板長さ)を短く構成することができる。基板搬送長が短くなることで、長尺基板W1、W2の皺、伸びなどが生じにくく、精度よくパターンを形成することができる。特に、1つの支持ローラ24、34を設けるだけで長尺基板W1、W2を送り出す搬送系を構成することができる。
【0041】
また、露光動作完了後、露光ステージ15が長尺基板W1、W2を吸着支持していない間に長尺基板W1、W2を下流側に送り出して巻き取るため、巻き取りをスムーズに行うことができる。このとき基板搬送長が短いため、短時間での巻き取りが可能となる。
【0042】
本実施形態では、露光ステージ15と基板搬送系(基板供給装置20、基板巻取装置30)は、それぞれステージ移動機構50、搬送部移動機構60によって別々に駆動されている。長尺基板W1、W2に関して言うと、供給リール22A、22Bのロール状部分、巻取リール32A、32Bのロール状部分の巻径は、長尺基板W1、W2が基板巻取装置30に巻取られていく過程で逐次変化し、重量バランスが一定とならない。
【0043】
しかしながら、ステージ移動機構50とは異なる搬送部移動機構60を設けることにより、長尺基板W1、W2の重量バランス変化があっても露光ステージ15の移動制御に影響が出るのを防いでいる。また、従来のステージ移動機構を利用したまま搬送系を構築することが可能となる。
【0044】
一方、基板供給装置20と基板巻取装置30は、同じ移動部材62に固定支持されており、一体となって移動する。基板供給装置20と基板巻取装置30が連動するため、基板供給装置20と基板巻取装置30との間で相対的位置関係に変化が生じず、露光ステージ15との相対的維持関係を維持させることが容易となる。また、搬送部移動機構60を1つの駆動系でまとめることができる。
【0045】
一方で、移動制御部70が、露光ステージ15の移動中、露光ステージ15と基板供給装置20および基板巻取装置30との相対的位置関係を保つように、アクチュエータ55、65を駆動制御している。これによって、供給リール22A、22B、巻取リール32A、32Bが露光ステージ15に近づき、長尺基板W1、W2の伸び、反りなどが生じるのを抑え、また、露光位置ずれを防ぐことができる。
【0046】
なお、移動制御部70は、距離間隔が閾値以上となったときに移動速度、加速度を制御するようにしてもよい。あるいは、供給リール22A、22Bおよび/または巻取リール32A、32Bを軸回転制御して、長尺基板W1、W2に適切なテンションがかかるように調整してもよい。
【0047】
2条の長尺基板W1、W2だけでなく、より多くの複数の長尺基板を並列させて同時搬送させることも可能であり、また、1つの長尺基板で構成することも可能である。基板供給装置20と基板巻取装置30については、機械的に連結させず、別々の移動機構で移動させるようにしてもよい。また、露光ステージ15と基板供給装置20、基板巻取装置30とを同じ移動機構で移動させるようにしてもよい。
【0048】
以上の実施形態では、露光ステージ15の上流側に基板供給装置20と下流側に基板巻取装置30を設けて、長尺基板W1、W2を同方向に移動させように供給リール22A、22Bと巻取リール32A、32Bを駆動していたが、長尺基板W1とW2とがお互いに逆方向に移動するようにしてもよい。
【0049】
すなわち、露光ステージ15の両側に2対のリールを設け、一方のリール対をX方向に向けて巻き取るように供給リール、巻取リールを設置する一方、他方のリール対を-X方向に向けて巻き取るように供給リール、巻取リールを設けることが可能である。この場合、基板供給装置と基板巻取装置の機能を組み合わせた一対の搬送装置を露光ステージに対して移動させる。このように長尺基板W1とW2とがお互いに逆方向に移動するように構成すると、露光ステージの上流側と下流側における長尺基板の重量バランスの変化を軽減することが可能となる。
【0050】
また、以上の実施形態では露光ステージ15が移動することで長尺基板W1、W2と露光部40との相対移動を実現し露光を行っていたが、露光ステージ15がベース10Bに固定され、露光部40が不図示の移動装置によって基板搬送方向に移動することで相対移動するようにしてもよい。その場合、基板供給装置20と基板巻取装置30とが、露光ステージ15と相対的位置関係を維持するようにベース10Bに固定される。
【符号の説明】
【0051】
10 露光装置
15 露光ステージ
20 基板供給装置
22A、22B 供給リール
30 基板巻取装置
32A、32B 巻取リール
40 露光部
50 ステージ移動機構
60 搬送部移動機構
70 移動制御部
80 位置センサ
90 位置検出用フォトセンサ