(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】流速特定装置
(51)【国際特許分類】
G01P 5/20 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
G01P5/20 E
(21)【出願番号】P 2020569287
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2019003437
(87)【国際公開番号】W WO2020157926
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】317007266
【氏名又は名称】エア・ウォーター・バイオデザイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊池 育也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦也
(72)【発明者】
【氏名】加川 良平
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-506919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0016335(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0285984(US,A1)
【文献】国際公開第2011/099433(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/00- 5/26
G01F 1/00- 9/02
A61B 5/02- 5/0295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非球形の固体と液体とを含み、流路を流れる混合液に向けて照射光を照射する照射部と、
前記照射部が照射して前記流路を流れる前記混合液により反射された反射光を検出する検出部であって、前記照射光の光軸と前記反射光の光軸とを含む仮想平面の平面視にて、前記反射光の光軸を挟んで少なくとも一方側に配置されている検出部と、
前記検出部が検出した前記反射光の光量を用いて、前記混合液の流速を特定する特定部と、
を備え
、
前記検出部は、前記仮想平面の平面視にて、前記反射光の光軸を挟んで一方側に配置されている第1検出部と、他方側に配置されている第2検出部とを有し、
前記特定部は、前記第1検出部が検出した反射光の第1光量と前記第2検出部が検出した反射光の第2光量とを比較して、前記混合液の流速を特定する、
流速特定装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記第1光量が第2光量よりも多くかつ前記第1光量と第2光量との差が基準差よりも大きい場合、前記混合液の流れる方向を前記流路の一方から他方に向く第1方向と特定し、前記第1光量が第2光量よりも少なくかつ前記第1光量と第2光量との差が前記基準差よりも大きい場合、前記混合液の流れる方向を第1方向と逆の第2方向と特定する、
請求項
1に記載の流速特定装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記第1光量と前記第2光量との差が前記基準差以下の場合、前記混合液が流れていないと特定する、
請求項
2に記載の流速特定装置。
【請求項4】
前記混合液は、前記固体を赤血球とする血液とされている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の流速特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流速特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、生体表皮下任意の深度にある組織の所望の部位の血流速度のスカラー量と血流の三次元流速方向とを、生体表皮上から無侵襲かつリアルタイムで算出することにより、所望の測定領域の血流量の絶対値及び血流方向をリアルタイムで測定するレーザー血流計が開示されている。
このレーザー血流計は、レーザー光源により各二本で一組のレーザー光線を照射しかつ信号処理手段により該当測定領域に発生した干渉波を観測した光電センサーからの電気信号の演算処理をする動作を繰り返し行う。そのため、このレーザー血流計は、直交した各三方向の血流速度を逐次算出することで、血流速度及び血流方向を逐次算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のレーザー血流計は、血液の血流速度及び血流方向を算出することができるが、その構成が簡単なものではない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、簡単な構成で、非球形の固体と液体とを含み流路を流れる混合液の流速を特定することができる流速特定装置を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
非球形の固体と液体とを含み、流路を流れる混合液に向けて照射光を照射する照射部と、
前記照射部が照射して前記流路を流れる前記混合液により反射された反射光を検出する検出部であって、前記照射光の光軸と前記反射光の光軸とを含む仮想平面の平面視にて、前記反射光の光軸を挟んで少なくとも一方側に配置されている検出部と、
前記検出部が検出した前記反射光の光量を用いて、前記混合液の流速を特定する特定部と、
を備え、
前記検出部は、前記仮想平面の平面視にて、前記反射光の光軸を挟んで一方側に配置されている第1検出部と、他方側に配置されている第2検出部とを有し、
前記特定部は、前記第1検出部が検出した反射光の第1光量と前記第2検出部が検出した反射光の第2光量とを比較して、前記混合液の流速を特定する、
流速特定装置である。
【0007】
上述した目的及びその他の目的、特徴並びに利点は、以下に述べる好適な実施の形態及びそれに付随する以下の図面によって更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】第1実施形態の流速特定装置を示す図であって、流速特定装置をチューブにセットした状態における縦断面図である。
【
図1B】
図1Aの状態の流速特定装置及びチューブの上面図である。
【
図2】第1実施形態の流速特定装置を構成する信号処理部の処理ブロック図である。
【
図3A】第1実施形態の流速特定装置による血液の流速特定動作時の図であって、血液が流れていない場合の反射光の分布を示す模式図である。
【
図3B】第1実施形態の流速特定装置による血液の流速特定動作時の図であって、血液が正方向に流れている場合の反射光の分布を示す模式図である。
【
図3C】第1実施形態の流速特定装置による血液の流速特定動作時の図であって、血液が逆方向に流れている場合の反射光の分布を示す模式図である。
【
図4】第1実施形態の流速特定装置による血液の流速特定動作の計測結果を示すグラフである。
【
図5】第1実施形態の流速特定装置により補正して得られる血流速度を示すグラフである。
【
図6】第2実施形態の流速特定装置を示す図であって、流速特定装置をチューブにセットした状態における縦断面図である。
【
図7】第2実施形態の流速特定装置による血液の流速特定動作の流速の特定に用いられるグラフである。
【
図8】第3実施形態の流速特定装置を示す図であって、流速特定装置をチューブにセットした状態における縦断面図である。
【
図9A】第3実施形態の流速特定装置による血液の流速特定動作時の図であって、血液が流れていない場合の反射光の分布を示す模式図である。
【
図9B】第3実施形態の流速特定装置による血液の流速特定動作時の図であって、血液が正方向に流れている場合の反射光の分布を示す模式図である。
【
図9C】第3実施形態の流速特定装置による血液の流速特定動作時の図であって、血液が逆方向に流れている場合の反射光の分布を示す模式図である。
【
図10】第1変形例の信号処理部の処理ブロック図である。
【
図11】第2変形例の流速特定装置及びチューブの配置例を示す上面図である。
【
図12】第3変形例の流速特定装置及びチューブの配置例を示す上面図である。
【
図13】第4変形例の流速特定装置及びチューブの配置例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪概要≫
以下、本発明の第1、第2及び第3実施形態について図面を参照しながら説明する。次いで、各実施形態の変形例について図面を参照しながら説明する。なお、参照するすべての図面では同様の機能を有する構成要素に同様の符号を付し、明細書では適宜説明を省略する。
【0010】
≪第1実施形態≫
以下、第1実施形態について説明する。まず、本実施形態の流速特定装置10の機能及び構成について
図1A、
図1B等を参照しながら説明する。次いで、本実施形態の流速特定装置10による血液BL(混合液の一例、
図1A等参照)の流速特定動作について
図3A~
図3B等を参照しながら説明する。なお、本実施形態の効果については、血液BLの流速特定動作の説明の中で説明する。
【0011】
<第1実施形態の機能及び構成>
図1Aは、本実施形態の流速特定装置10を示す図であって、流速特定装置10をチューブTB(流路の一例)にセットした状態における縦断面図である。
図1Bは、
図1Aの状態の流速特定装置10及びチューブTBの上面図である。
本実施形態の流速特定装置10は、チューブTBを流れる血液BLに照射され血液BLに反射された光(反射光L2)を検出し、検出した反射光L2の光量を用いて、血液BLの流速を特定する機能を有する。
本実施形態の流速特定装置10は、照射部20と、検出部30と、制御部40(特定部の一例)とを備えている。
【0012】
〔血液及び流路〕
ここで、血液BL及びチューブTBは、本実施形態の流速特定装置10の構成要素ではない。しかしながら、血液BLの流速は本実施形態の流速特定装置10の特定対象であり、チューブTBは流速特定装置10により血液BLの流速を特定する(測定する)際に血液BLを流すための部材として利用される。そこで、本実施形態の流速特定装置10の各構成要素の説明の前に、血液BL及びチューブTBについて説明する。
血液BLは、赤血球BC(非球形の固体の一例)と血漿BP(液体の一例)とを含んで構成されている(
図1A、
図3A~
図3C等参照)。チューブTBは、一例として照射部20が照射する光(照射光L1)を透過可能な材料で形成され、血液BLを流すための管とされている(
図3A~
図3C参照)。赤血球BCの形状は、一例として、直径7μm~8μm、厚さ1μm~2μmで、周縁側の部分が内側の部分よりも厚い円盤状とされていることで、非球形の固体の一例とされている。
【0013】
〔照射部〕
照射部20は、一例としてレーザー光源とされ、
図1Aに示されるように、チューブTBを流れる血液BLに向けてコヒーレントな光(照射光L1)を照射する機能を有する。照射部20は、自身が出射する照射光L1がチューブTB、すなわち、チューブTBを流れる血液BLに対して斜め方向に光軸L1Aを有するように配置されている。本実施形態では、チューブTBに対する光軸L1Aの角度を角度θ1(一例として45°)とする。
【0014】
〔検出部〕
検出部30は、照射部20が照射してチューブTBを流れる血液BLにより反射された光(反射光L2)を検出する機能を有する。本実施形態の検出部30は、
図1Aに示されるように、反射光L2の光軸L2Aを挟んで一方側に配置されている第1検出部32と、他方側に配置されている第2検出部34とを有している。ここで、チューブTBに対する光軸L2Aの角度を角度θ2とすると、角度θ2は―45°、すなわち、―θ1である。
また、
図1Aは、光軸L1Aと光軸L2Aとを含む仮想平面(図示省略)を平面視した図(当該仮想平面に直交する方向から見た図)ともいえる。そうすると、
図1Aに示されるように、第1検出部32と第2検出部34とは、光軸L1Aと光軸L2Aとを含む仮想平面(図示省略)の平面視にて、それぞれ、光軸L2Aを挟んで、一方側及び他方側(両側)に配置されている。この場合の光軸L2Aとは、チューブTBの中の血液BLが流れていない場合の光軸とされる。別言すると、本実施形態では、第1検出部32と第2検出部34とは、光軸L2Aを挟んで、チューブTBの中の血液BLが流れていない場合の光軸L2Aを対象線として、線対称に配置されている関係を有する。
なお、第1検出部32及び第2検出部は、後述する血液BLの流速特定動作時に、それぞれ、血液BLによって反射した光を検出すると、それぞれの検出信号を制御部40に送信するようになっている。
【0015】
〔制御部〕
制御部40は、照射部20及び検出部30を制御する機能と、検出部30の第1検出部32及び第2検出部から送信された各検出信号を受信して、血液BLの血流方向(流れる方向)、流速等を特定する機能とを有する。そして、制御部40の記憶装置42には、後者の機能を発揮するための測定プログラムCPが収容されている。
なお、制御部40の具体的な機能については、後述する本実施形態の血液BLの流速特定動作の説明の中で説明する。
【0016】
以上が、本実施形態の流速特定装置10の機能及び構成についての説明である。
【0017】
<第1実施形態の流速特定動作>
次に、本実施形態の流速特定装置10による血液BLの流速特定動作について、主に
図3A~
図3Bを参照しながら説明する。
【0018】
まず、測定者が流速特定装置10の測定準備(機械のセッティング等)をした後に測定開始ボタン(図示省略)を押すと、流速特定動作が開始される。本動作は、制御部40が測定プログラムCPに従って行われる。全体としては、まず、照射部20が照射光L1を照射する。照射光L1は血液BLに含まれる赤血球BCにより反射され反射光L2となる。この場合、反射光L2は赤血球BCの形状に起因して散乱するが、この散乱分布は血液BLの流速により規則性を有する(
図3A~
図3C参照)。
【0019】
次いで、第1検出部32及び第2検出部34は、それぞれ反射光L2を検出しつつ、逐次、検出した反射光L2の検出信号を制御部40に送信する。
【0020】
次いで、第1検出部32及び第2検出部34から送信された検出信号を受信した制御部40は、第1検出部32が検出した反射光L2の光量(第1光量)の検出信号と、第2検出部34が検出した反射光L2の光量(第2光量)の検出信号とを比較して、血液BLの流速を特定する。
【0021】
ここで、
図3Aは、血液BLの流速特定動作時の図であって、血液BLが流れていない場合の反射光L2の分布を示す模式図である。
図3Bは、血液BLが正方向に流れている場合の反射光L2の分布を示す模式図である。
図3Cは、血液BLが逆方向に流れている場合の反射光L2の分布を示す模式図である。
血液BLは、前述のとおり、ほぼ赤血球BCで構成される血球(固体)部分と、ほぼ水分からなる血漿BPが混じり合った混合液である。赤血球BCはその中央部分が凹んだ円盤状の形状をしていることが知られている。そして、このような形状の固体が液体とともに流れた場合に、各赤血球BCが同一の方向を向く(同じように傾いた姿勢になる)ことも知られている(
図3B及び
図3C参照)。本実施形態の流速特定装置10は、この現象を利用して血流方向を特定する。
【0022】
ここで、
図2は、本実施形態の流速特定装置10の制御部40が有する信号処理部44の処理ブロック図である。信号処理部44は、変換部44Aと、差動ブロック部44Bと、係数決定ブロック部44Cと、周波数解析ブロック部44Dとを有している。信号処理部44は、第1検出部32及び第2検出部34からの検出信号を変換部44AでI―V変換し(それぞれ電圧V
A及び電圧V
Bに変換し)、電圧V
A及び電圧V
Bが入力された差動ブロック部44Bにより電圧V
A及び電圧V
BはV
diff=V
B-V
Aに変換される。そして、係数決定ブロック部44Cは、V
diffが下記(条件式1)で1の場合は血流方向を正方向(第1方向、
図3Bの血流方向)、V
diffが下記(条件式1)で-1の場合は血流方向を逆方向(第2方向、
図3Cの血流方向)、V
diffが下記(条件式1)で0の場合は血流停止(血液BLが流れていない、
図3A参照)と判断する。係数決定ブロック部44CではV
diffの大きさ判定が行われV
diffの大きさに応じて係数を決定する。
【0023】
(条件式1)
-1:Vdiff<-|α|
0:Vdiff≦|α|
1:Vdiff>|α|
ここで、αは、設定した定数である。
【0024】
具体的には、第1検出部32及び第2検出部34は、血液BLが流れていない状態(
図3A)では、結果的にそれぞれの検出出力が等しくなる位置に配置されている。
血液BLが正方向に流れている状態(
図3B参照)では、赤血球BCが
図3Bのように配向した状態となり反射光L2は
図3Aの場合に対して時計回りに傾いた塊となって反射される。これに伴い、
図3Aの状態に比べて、第1検出部32に入射する反射光L2の検出強度は減少し、第2検出部34に入射する反射光L2の検出強度は増大することになる。
また、
図3Cの場合、すなわち、血流方向が
図3Bの場合と逆方向の場合、
図3Aの状態に比べて、第1検出部32に入射する反射光L2の検出強度は増大し、第2検出部34に入射する反射光L2の検出強度は減少することになる。
【0025】
図4は、本実施形態の流速特定装置10による血液BLの流速特定動作の計測結果を示すグラフである。このグラフは、横軸が毎分流量ml/Min.であり、縦軸がV
diff/(V
B+V
A)である。毎分流量0(流速0)で急峻に値が反転する。すなわち、前述の係数αは、流れの方向を示す係数として使用することが可能である。
ここで、横軸の毎分流量ml/Min.が正の場合、すなわち、V
diff(=V
B-V
A)>0の場合は血液BLの流れる方向は正方向と特定される。これに対して、横軸の毎分流量ml/Min.が負の場合、すなわち、V
diff(=VB-VA)<0の場合は血液BLの流れる方向は逆方向と特定される。さらに、V
diff≦|α|の場合、すなわち、V
BとV
Aとの差が定められた差α(基準差の一例)以下の場合、血液BLは流れていないと特定される。
【0026】
周波数解析ブロック部44Dは、血液BLの速さを判断する。なお、信号処理部44が上記のとおりの判断をできる理由は、照射部20がレーザー光源であり、第1検出部32及び第2検出部34には血液BLの流れによってドップラーシフトされた光L2が入射するので、このドップラーシフトした光L2による出力を演算(FFTによりパワースペクトルを求め、平均周波数を求める等の演算)することによる。具体的には、以下のとおりである。
図5は、本実施形態の流速特定装置10の測定プログラムCPにより補正して得られる血流速度を示すグラフである。
図4のグラフのとおり、得られた毎分流量に(条件式1)の係数αを乗じることで血液BLの速度が得られる。さらに、この血液の速度と血液回路の断面積(チューブTBの断面積)等の大きさのパラメータを用いて計算することで血流量を求めることができる。
【0027】
以上のとおり、本実施形態の流速特定装置10によれば、簡単な構成で、チューブTBを流れる血液BLの流速を特定することができる。
【0028】
以上が、本実施形態の流速特定動作についての説明である。また、以上が、第1実施形態についての説明である。
【0029】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態について
図6及び
図7を参照しながら説明する。本実施形態の説明では、本実施形態の構成要素に、第1実施形態の構成要素と同等の構成要素を用いる場合、同じ名称、符号等を用いることとする。以下、本実施形態における第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0030】
図6は、本実施形態の流速特定装置10Aを示す図であって、流速特定装置10AをチューブTBにセットした状態における縦断面図である。
本実施形態の流速特定装置10Aは、第1実施形態の流速特定装置10の場合(
図1A参照)に対して、検出部30が第1検出部32のみで構成されている点のみ異なる。すなわち、本実施形態の場合、検出部30は、光軸L1Aと光軸L2Aとを含む仮想平面(図示省略)の平面視にて、光軸L2Aを挟んで、両側のいずれか一方側に配置されている。
【0031】
ここで、
図7は、本実施形態の流速特定装置10Aによる血液BLの流速の特定に用いられるグラフであって、第1実施形態の
図4のグラフを毎分流量0のときの電圧V
minで正規化したグラフである。
図7のグラフに示されるように、各計測値の規格値V
A/V
min、V
B/V
minは流量0(血液BLが流れていない状態)を境に大きく変化する。したがって、例えば、図中の破線を閾値に設定することで、第1検出部32及び第2検出部34のいずれか一方のみでも血液BLの流れる方向及び流量を特定することができる。
【0032】
さらに、図中の破線を第1閾値(第1基準量の一例)、第2閾値(第2基準量の一例)とすることで、以下のことを血液BLが正方向に流れている状態、停止している状態及び逆方向に流れている状態を特定することができる。具体的には、検出部30(この場合、第1検出部32)が検出した光量が第1閾値よりも多い場合、血液BLの流れる方向を正方向と特定する。また、検出部30(この場合、第1検出部32)が検出した光量が第1閾値よりも少なくかつ第2閾値よりも多い場合、血液BLの流れる方向を逆方向と特定する。さらに、検出部30(この場合、第1検出部32)が検出した光量が第2閾値以下の場合、血液BLは停止している(流れていない)と特定する。また、
図7のグラフの値から、毎分流量も特定できる。
【0033】
以上のとおりであるから、本実施形態の場合、第1実施形態の場合(
図1A参照)に比べて、より簡単な構成(第1検出部32及び第2検出部34のいずれか一方のみの構成)で第1実施形態と同じ効果を奏する。
【0034】
以上が、第2実施形態についての説明である。
【0035】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態について
図8及び
図9A~
図9Cを参照しながら説明する。本実施形態の説明では、本実施形態の構成要素に、第1実施形態の構成要素と同等の構成要素を用いる場合、同じ名称、符号等を用いることとする。以下、本実施形態における第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0036】
図8は、本実施形態の流速特定装置10Cを示す図であって、流速特定装置10CをチューブTBにセットした状態における縦断面図である。
本実施形態の流速特定装置10Cは、第1実施形態の流速特定装置10の場合(
図1A参照)と異なり、照射部20Cは、自身が出射する照射光L1がチューブTB、すなわち、チューブTBを流れる血液BLに対して垂直方向(チューブTBの径方向)に光軸L1Aを有するように配置されている。また、照射部20Cが照射する光L1は、コヒーレントな光ではなく、チューブTBの径方向に光軸L1Aを有しつつ広がりを有する光とされている。また、本実施形態の場合、第1検出部32及び第2検出部33は、照射部20Cの両側(光軸L1Aを挟んで両側)に配置されている。
本実施形態において第1実施形態の場合と異なる点は以上である。
【0037】
ここで、
図9Aは、本実施形態の流速特定装置10Cによる血液BLの流速特定動作時の図であって、血液BLが流れていない場合の反射光L2の分布を示す模式図である。また、
図9Bは、血液BLが正方向に流れている場合の反射光L2の分布を示す模式図である。さらに、
図9Cは、血液BLが逆方向に流れている場合の反射光L2の分布を示す模式図である。
本実施形態の場合、前述の点で第1実施形態の構成と異なるが、流速による血液BLの散乱分布(
図9A~
図9C参照)は、第1実施形態の場合(
図3A~
図3C参照)と同じ傾向の散乱分布となる規則性を有する。
【0038】
以上のとおりであるから、本実施形態の場合、第1実施形態の場合と同様の効果を奏する。
【0039】
以上のとおり、本発明について第1~第3実施形態を一例として説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0040】
例えば、第1実施形態の場合には、I-V変換された検出信号を差動してから処理していたが(
図2参照)、
図10に示される第1変形例の信号処理部44Eのように、差動してから処理せずに、信号処理ブロック部44Fにより直接処理してもよい。
【0041】
また、
図11に示される第2変形例の流速特定装置10Dの場合のように、第1検出部32及び第2検出部34(検出部30)を第1実施形態の場合(
図1B参照)の検出部30の位置よりもチューブTBの周方向にオフセットさせて配置してもよい。
【0042】
また、
図12に示される第3変形例の流速特定装置10Eの場合のように、第1検出部32及び第2検出部34(検出部30)を第1実施形態の場合(
図1B参照)の検出部30の位置よりもチューブTBの周方向における互いに異なる方向にオフセットさせて配置してもよい。
【0043】
また、
図13に示される第4変形例の流速特定装置10Fの場合のように、チューブTBの横断面図を見た場合に、照射部20と検出部30とがそれぞれチューブTBの径方向に対して傾斜した位置に配置されていてもよい。
【0044】
また、第1及び第3実施形態では、第1検出部32と第2検出部34とは、光軸L2Aを挟んで配置されていると説明した(
図1A及び
図8参照)。しかしながら、一方の検出部(第1検出部32及び第2検出部34のいずれか一方)が光軸L2Aを跨いで配置されていてもよい(図示省略)。また、第2実施形態の検出部30(
図6参照)が光軸L2Aを跨いで配置されていてもよい(図示省略)。これらの場合、跨いで配置される検出部を反射光L2の強度分布の変化を検出可能とするために、例えば、PSDや多分割の光検出器とすればよい。
【0045】
また、本明細書では、便宜上、各実施形態を個別に説明したが、例えば、各実施形態のいずれか1つに他の実施形態の要素を組み込んでもよい。例えば、第3実施形態の流速特定装置10C(
図8参照)の検出部30の1つ(第1検出部32及び第2検出部33の一方)をなくして、第2実施形態の思想(
図7参照)で当該変形例により流速の特定を行ってもよい。
【0046】
また、各実施形態では、混合液の一例を血液BLとして説明した。しかしながら、非球形の固体を含む混合液であれば、各実施形態の流速特定装置10等により測定される対象は血液BLでなくてもよい。例えば、混合液の他の一例は、磁性流体、マイクロカプセルを含む混合液等であってもよい。
【0047】
また、各実施形態の流速特定装置10等は、血液BLの流速を特定するものであるが、以下のようなアプリケーションに適用してもよい。例えば、透析、人工心肺等に用いられる血流回路に設置し、血液回路に流れる血液の流量を非接触で測定する装置(図示省略)に提要してもよい。また、透析、人工心肺等に用いられる血流回路に設置し、血流が逆流することを検知し、警報、緊急時動作を行う血流の逆流監視装置(図示省略)に適用してもよい。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
非球形の固体と液体とを含み、流路を流れる混合液に向けて照射光を照射する照射部と、
前記照射部が照射して前記流路を流れる前記混合液により反射された反射光を検出する検出部であって、前記照射光の光軸と前記反射光の光軸とを含む仮想平面の平面視にて、前記反射光の光軸を挟んで少なくとも一方側に配置されている検出部と、
前記検出部が検出した前記反射光の光量を用いて、前記混合液の流速を特定する特定部と、
を備える流速特定装置。
2.
前記検出部は、前記仮想平面の平面視にて、前記反射光の光軸を挟んで一方側に配置されている第1検出部と、他方側に配置されている第2検出部とを有し、
前記特定部は、前記第1検出部が検出した反射光の第1光量と前記第2検出部が検出した反射光の第2光量とを比較して、前記混合液の流速を特定する、
1.に記載の流速特定装置。
3.
前記特定部は、前記第1光量が第2光量よりも多くかつ前記第1光量と第2光量との差が基準差よりも大きい場合、前記混合液の流れる方向を前記流路の一方から他方に向く第1方向と特定し、前記第1光量が第2光量よりも少なくかつ前記第1光量と第2光量との差が前記基準差よりも大きい場合、前記混合液の流れる方向を第1方向と逆の第2方向と特定する、
2.に記載の流速特定装置。
4.
前記特定部は、前記第1光量と前記第2光量との差が前記基準差以下の場合、前記混合液が流れていないと特定する、
3.に記載の流速特定装置。
5.
前記特定部は、前記検出部が検出した前記反射光の光量を、前記流路を流れていない状態の前記混合液により反射された前記反射光の光量と比較して、前記混合液の流速を特定する、
1.に記載の流速特定装置。
6.
前記特定部は、前記検出部が検出した前記反射光の光量が第1基準量よりも多い場合、前記混合液の流れる方向を前記流路の一方から他方に向く第1方向と特定し、前記検出部が検出した前記反射光の光量が前記第1基準量より少ない第2基準量よりも多くかつ前記第1基準量以下の場合、前記混合液の流れる方向を前記第1方向と逆の第2方向と特定する、
1.又は5.に記載の流速特定装置。
7.
前記特定部は、前記検出部が検出した前記反射光の光量が前記第2基準量以下の場合、前記混合液が流れていないと特定する、
6.に記載の流速特定装置。
8.
前記混合液は、前記固体を赤血球とする血液とされている、
1.~7.のいずれか1つに記載の流速特定装置。