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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】コンタクト部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20221114BHJP
   H01R 13/66 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H01R13/24
H01R13/66
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018244274
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020107456
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】大橋 良紀
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-096036(JP,A)
【文献】特開2000-243518(JP,A)
【文献】特開2006-164600(JP,A)
【文献】特開2011-096601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24
H01R 13/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体によって形成され、二つの導電性部材間を電気的に接続する導電部と、
前記導電部の寄生成分に対して電気的に並列に接続されたコンデンサである蓄電部と、を備え、
前記蓄電部の静電容量は、前記蓄電部と前記寄生成分とからなる等価回路の共振周波数が、所望の周波数帯域の下限値より低くなるように設定されているコンタクト部材。
【請求項2】
前記寄生成分は、容量成分を備え、
前記蓄電部の静電容量は、前記容量成分の静電容量より大きくなるように設定されている請求項1に記載のコンタクト部材。
【請求項3】
前記導電部は、前記二つの導電性部材間が電気的に接続された際に弾性変形する弾性部を備え、
前記蓄電部は、前記弾性部が弾性変形することにより、前記寄生成分に対して電気的に並列に接続される請求項1または請求項2に記載のコンタクト部材。
【請求項4】
前記蓄電部は、チップ形のコンデンサである請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコンタクト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクト部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンデンサの機能を有するコンタクト部材が開示されている。特許文献1の図1に示すように、コンタクト部材1は、ベース部材2と、絶縁層3と、接触部材4と、からなる。ベース部材2は、銅合金の薄板をプレス加工などにより折り曲げて形成される。絶縁層3は、ベース部材2の表面に形成された薄膜であって、エポキシ系樹脂からなり、ベース部材2と接触部材4とを絶縁する。また、接触部材4は、絶縁層3の上に形成された薄膜であって、NiにAgコーティングのインクペーストからなり、導電性を有している。
【0003】
絶縁層3および接触部材4は、ベース部材2の延出部2dと突出部2eとを覆うように形成されている。このように構成されたコンタクト部材1は、ベース部材2および接触部材4を平行な電極板とし、絶縁層3を誘電体とするコンデンサとして機能するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-96601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなコンタクト部材は、例えば導体パターンが形成されたプリント基板に実装されて用いられる。このようなコンタクト部材を利用すれば、プリント基板のアースパターンと、グランド電位を有する筐体等の一部とを電気的に接続することにより、ノイズ対策などを図ることができる。
【0006】
しかしながら、このようなコンタクト部材の導体部分には、導体の断面積および長さに依って決定される抵抗成分の他に、寄生的な誘導成分も発生する。この誘導成分によってコンタクト部材のインピーダンスが所望の周波数帯域で大きくなる場合、ノイズ対策の効果が十分に発揮されないことが考えられる。
【0007】
また、コンタクト部材の構造によっては、寄生的な容量成分が上述した誘導成分に対して電気的に並列に発生する。この場合、コンタクト部材のインピーダンスが共振周波数にて極大になることが知られている。この共振周波数と上述の所望の周波数帯域とが一致する場合、ノイズ対策の効果が更に小さくなることが知られている。
【0008】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、所望の周波数帯域においてインピーダンスを、導電部材に含まれる誘導成分のインピーダンスよりも小さくすることができるコンタクト部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に係るコンタクト部材は、導体によって形成され、二つの導電性部材間を電気的に接続する導電部と、導電部の寄生成分に対して電気的に並列に接続されたコンデンサである蓄電部と、を備え、蓄電部の静電容量は、導電部の寄生成分とからなる等価回路の共振周波数が、所望の周波数帯域の下限値より低くなるように設定されている。
【発明の効果】
【0010】
これにより、コンタクト部材の蓄電部は、導電部の寄生成分とからなる等価回路の共振周波数が、所望の周波数帯域の下限値より低くなるように設けられている。よって、所望の周波数帯域においてコンタクト部材のインピーダンスを、導電部に含まれる誘導成分のインピーダンスよりも小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係るコンタクト部材の概要を示す縦断面図であり、コンタクト部材がプリント基板に実装された状態を示す図である。
図2図1に示すコンタクト部材が、プリント基板と筐体とを電気的に接続した状態を示す図である。
図3図1に示すコンタクト部材の蓄電部と寄生成分とからなる等価回路を示す図である。
図4図1に示すコンタクト部材のインピーダンスを示す図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るコンタクト部材の概要を示す縦断面図である。
図6図5に示すコンタクト部材のインピーダンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態に係るコンタクト部材について図面を用いて説明する。なお、本明細書においては説明の便宜上、図1および図2における上側および下側をそれぞれコンタクト部材1の上方および下方として説明する。
【0013】
コンタクト部材1は、二つの導電性部材間を電気的に接続するものである。導電性部材は、導電性を有する部材であり、第一の導電性部材は、導体パターン(図示なし)が形成されたプリント基板2である。導体パターンは、交流回路(例えば高周波回路)である。第二の導電性部材は、プリント基板2を収納し、グランド電位を有する筐体3である。
【0014】
コンタクト部材1は、プリント基板2に発生するノイズを筐体3に逃がす役割を有する。コンタクト部材1は、図1および図2に示すように、導電部10およびチップ形のコンデンサである蓄電部20を備えている。
【0015】
導電部10は、導体によって形成され、二つの導電性部材間を電気的に接続するものである。導体は、電気導電体であり、本実施形態においては銅合金である。導電部10は、導体の薄板をプレス加工等により折り曲げられて形成されている。導電部10は、断面S字状に形成されている。なお、前記導電部10を構成する導体は、二つの導電性部材間に所定の導通性を与える電気的に接続するものであれば良く、例えばステンレス等の金属一般を利用し得る。
【0016】
導電部10は、第一接続部11、弾性部12、第二接続部13および第三接続部14を備えている。第一接続部11、弾性部12、第二接続部13および第三接続部14は、一体的に形成されている。
【0017】
第一接続部11は、導電部10の底部に設けられ、下面において、導体パターンと電気的に接続される部位である。また、第一接続部11は、上面において、蓄電部20における第一の外部電極21と電気的に接続される。プリント基板2が筐体3に収納されていない状態において、第一接続部11と、プリント基板2および蓄電部20とが、はんだによって固定される。
【0018】
弾性部12は、プリント基板2と筐体3とが電気的に接続された際に弾性変形するものである。弾性部12は、導電部10の上下方向の長さが変化するように弾性変形する。弾性部12は、具体的には、プリント基板2が筐体3に収納される場合に、プリント基板2と筐体3の内側面との隙間に応じて、導電部10の上下方向長さが短くなるように弾性変形する(図2参照)。
【0019】
第二接続部13は、弾性部12が弾性変形することにより、蓄電部20における第二の外部電極22と電気的に接続される部位である。第二接続部13は、第一接続部11より上方の部位に設けられている。上述したように導電部10が弾性変形することにより、第二接続部13と第二の外部電極22とが接触して電気的に接続される(図2参照)。
【0020】
第三接続部14は、導電部10の天井部に設けられ、プリント基板2が筐体3に収納される場合に、筐体3の内側面と電気的に接続される部位である。また、導電部10は、案内部15をさらに備えている。
【0021】
案内部15は、弾性部12が弾性変形する方向を案内するものである。案内部15は、第一接続部11から連続して上下方向に沿って延びるように設けられている。案内部15は、弾性部12および第二接続部13と隙間を有するように形成されている。
【0022】
また、導電部10は、寄生成分16を有している。寄生成分16は、導電部10の構造によって導電部10が発現する電気的な成分である。寄生成分16は、図3に示すように、抵抗成分16a、誘導成分16b(インダクタンス成分)および容量成分16c(キャパシタンス成分)を備えている。
【0023】
導電部10は、抵抗成分16aおよび誘導成分16bを、抵抗成分16aと誘導成分16bとが電気的に直列に接続された状態で有している。また導電部10は、容量成分16cを、抵抗成分16aおよび誘導成分16bに対して電気的に並列に接続された状態で有している。容量成分16cは、弾性部12および第二接続部13と、案内部15との隙間によって形成される。
【0024】
蓄電部20は、導電部10の寄生成分16に対して電気的に並列に接続されたコンデンサである。蓄電部20は、チップ形の積層セラミックコンデンサである。蓄電部20は、弾性部12が弾性変形することにより、寄生成分16に対して電気的に並列に接続される。上述したように弾性部12が弾性変形した場合、各外部電極21,22が各接続部11,13にそれぞれ接触するため、蓄電部20が第一接続部11および第二接続部13に電気的に接続される(図2参照)。換言すれば、第一接続部11と第二接続部13とが蓄電部20を介して電気的に接続される。
【0025】
この場合、蓄電部20は、図3に示すように、抵抗成分16aおよび誘導成分16bに対して電気的に並列に接続される。また、蓄電部20は、容量成分16cに対して電気的に並列に接続される。蓄電部20の静電容量は、蓄電部20と寄生成分16とからなる等価回路ECの共振周波数frが、所望の周波数帯域fbの下限値より低くなるように設定されている。
【0026】
等価回路ECの共振周波数frは、数式(1)によって示される。Lは、誘導成分16bのインダクタンスである。Csは、容量成分16cの静電容量である。Cpは、蓄電部20の静電容量である。また、蓄電部20の静電容量は、容量成分16cの静電容量より大きくなるように設定されている。
【0027】
【数1】
【0028】
所望の周波数帯域fbは、プリント基板2が使用される環境で用いられる周波数帯域である。所望の周波数帯域fbは、具体的には、530kHz~1605kHzや、76MHz~108MHzである。
【0029】
このように、蓄電部20の静電容量が設定されることにより、図4の実線にて示すように、所望の周波数帯域fbにおいて、コンタクト部材1のインピーダンスZは小さくなる。インピーダンスZは、式(2)によって示される。Rは、抵抗成分16aの抵抗値である。ωは、角周波数である。
【0030】
【数2】
【0031】
なお、コンタクト部材1が蓄電部20を備えない場合、共振周波数frは高くなることが考えられる。この場合において、図4の一点鎖線にて示すように、共振周波数frが所望の周波数帯域fbに含まれるとき、所望の周波数帯域fbにおいてコンタクト部材1のインピーダンスZは極大となる。これに対して、蓄電部20は、所望の周波数帯域fbにおいて、コンタクト部材1のインピーダンスZが小さくなるように設けられている。
【0032】
本第一実施形態によれば、コンタクト部材1は、導体によって形成され、プリント基板2と筐体3とを電気的に接続する導電部10と、導電部10の寄生成分16に対して電気的に並列に接続されたコンデンサである蓄電部20と、を備えている。蓄電部20の静電容量は、蓄電部20と寄生成分16とからなる等価回路ECの共振周波数frが、所望の周波数帯域fbの下限値より低くなるように設定されている。
【0033】
これにより、コンタクト部材1の蓄電部20は、導電部10の寄生成分16とからなる等価回路ECの共振周波数frが、所望の周波数帯域fbの下限値より低くなるように設けられている。よって、上述の所望の周波数帯域fbにおいてコンタクト部材1のインピーダンスZを、導電部10に含まれる誘導成分16bのインピーダンスよりも小さくすることができる。
【0034】
また、導電部10の寄生成分16は、容量成分16cを備えている。蓄電部20の静電容量は、容量成分16cの静電容量より大きくなるように設定されている。
これにより、所望の周波数帯域fbにおいてコンタクト部材1のインピーダンスZを、確実に小さくすることができる。
【0035】
また、導電部10は、プリント基板2と筐体3とが電気的に接続された際に弾性変形する弾性部12を備えている。蓄電部20は、弾性部12が弾性変形することにより寄生成分16に対して電気的に並列に接続される。
【0036】
これにより、コンタクト部材1をプリント基板2に実装される前に、蓄電部20における二つの外部電極21,22の一方のみを導電部10に接続しておけば良いため、予め二つの外部電極21,22の両方を導電部10に接続する場合に比べて、コンタクト部材1を簡便に製造することができる。
【0037】
また、蓄電部20は、チップ形のコンデンサである。
これにより、コンタクト部材1の小型化を図ることができる。
【0038】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態に係るコンタクト部材1について、主として上述した第一実施形態のコンタクト部材1と異なる部分を、図5を用いて説明する。本第二実施形態の導電部110は、第四接続部117および第五接続部118を備えている。
【0039】
第四接続部117は、第一接続部11より上方にて、弾性部12に隣接して設けられている。第五接続部118は、第四接続部117より上方の位置に設けられている。プリント基板2が筐体3に収納されていない状態において、第四接続部117は、蓄電部20における第一の外部電極21にはんだによって固定される。また、プリント基板2が筐体3に収納されていない状態において、第五接続部118は、蓄電部20における第二の外部電極22にはんだによって固定される。このように、本第二実施形態において、第一接続部11および第二接続部13には、蓄電部20が接続されない。
【0040】
また、本第二実施形態において、導電部110は、案内部15を備えない。これにより、導電部110の寄生成分16は、容量成分16cを有さない。この場合、コンタクト部材1のインピーダンスZは、図6の一点鎖線に示すように、共振点が現れずに、周波数に比例して増加する。
【0041】
なお、上述した各実施形態において、コンタクト部材の一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、導電部10,110は、弾性部12を備えなくても良い。
【0042】
また、上述した各実施形態において、第一接続部11、第四接続部117および第五接続部118と蓄電部20とは、はんだにてそれぞれ固定されているが、これに代えて、第一接続部11、第四接続部117および第五接続部118と蓄電部20とを、導電性接着剤や溶接を用いて固定しても良い。
【0043】
また、上述した各実施形態において、導電性部材は、プリント基板2および筐体3であるが、これに代えて、ヒートシンクとしてもよい。この場合、コンタクト部材1がプリント基板2とヒートシンクとを電気的に接続しても良い。また、コンタクト部材1がプリント基板2と、このプリント基板2とは別に設けられたプリント基板2とを電気的に接続しても良い。
【0044】
また、上述した第一実施形態において、蓄電部20における第一の外部電極21が第一接続部11に固定されているが、これに代えて、第一の外部電極21を第一接続部11に固定せずに、第二の外部電極22を第二接続部13に固定しても良い。
【0045】
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、導電部10,110の材質および形状、各接続部11,13,14,117,118の導電部10,110における位置、大きさおよび導電部10,110に占める範囲、蓄電部20の種類および形状、導電性部材の種類、並びに、導電性部材の材質および形状を変更しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1…コンタクト部材、2…プリント基板(導電性部材)、3…筐体(導電性部材)、10…導電部、12…弾性部、16…寄生成分、16c…容量成分、20…蓄電部、EC…等価回路、fb…所望の周波数帯域、fr…共振周波数。
図1
図2
図3
図4
図5
図6