(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】ラミネート型通信デバイス用の不可逆スイッチ、及びそれを用いたラミネート型通信デバイス
(51)【国際特許分類】
H01H 13/02 20060101AFI20221114BHJP
H01H 13/14 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H01H13/02 C
H01H13/14 B
(21)【出願番号】P 2021522734
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020018209
(87)【国際公開番号】W WO2020241166
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2019098217
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502291610
【氏名又は名称】神田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(74)【代理人】
【識別番号】230116447
【氏名又は名称】野中 啓孝
(72)【発明者】
【氏名】玉水 陽規
(72)【発明者】
【氏名】中野 俊
(72)【発明者】
【氏名】菊池 匡斉
(72)【発明者】
【氏名】土井 美咲
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-077368(JP,A)
【文献】特開2001-126587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/02
H01H 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項14】
請求項1乃至3、5乃至13のいずれか1項に記載のラミネート型通信デバイス用スイッチと、可逆的なプッシュスイッチとの両方を搭載したラミネート型通信デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にラミネート型通信デバイスに好適に用いられる不可逆スイッチに関する。更に本発明は、それを用いたラミネート型通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信デバイスなどの通信デバイスを薄型化してフィルムやカードなどに搭載することが求められている。
【0003】
この際、通信デバイスの電源としては、コイン電池を使用することが多いが、出荷時には通電を避けるためにコイン電池部分に絶縁シートを挟んでおき、最初の使用時に絶縁シートを引き抜いて通電する構造を採用している例が一般的である。
【0004】
しかしながら、ラミネート型通信デバイスにおいては、通信デバイスを電源ごとラミネートで覆っているために、上記のような構造を取ることができない。
【0005】
このため、従来のラミネート型通信デバイスは、出荷時から通信デバイスが電源と電気的に接触している状態であり、漏れ電流が避けられない構造となっていた。
【0006】
従って、ラミネート型通信デバイスの製造から製品ストック、出荷時期や販売後に顧客が使用開始するまでの間の電池消費用が予測できず、製品の電池寿命保証や長寿命化に関して課題があった。
【0007】
他方、従来技術としては、ラミネート型通信デバイスに用いることのできる可逆的なスイッチが知られている。
【0008】
例えば、特許文献1~3では、弾性メタルドームを用いたシートスイッチ(メンブレンスイッチ)が開示されている(例えば、特許文献1の
図1、2を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-171267号公報
【文献】特開2010-129383号公報
【文献】特開2010-238376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術では、押下げ時のみスイッチがオンになる構造であり(すなわち可逆的スイッチであり)、出荷時における通電を回避することはできるものの、使用開始後に押下げ等の外部操作がなくても、常時通電できる構造ではなかったという問題があった。
【0011】
特に通信デバイスにおいては、一旦使用を開始してしまえば、その後常時通電しておく必要があり、従来技術では不都合が生じていた。
【0012】
また、従来技術では、弾性メタルドームを用いているので、ラミネート型通信用デバイスに採用した場合には、弾性メタルドームに由来する凹凸がデバイス表面に現れやすく、外観上の美観を損ねるという不都合が生じていた。
【0013】
そこで本発明は、上記の課題を克服し、ラミネート型通信デバイスのラミネート後に外部から操作できる不可逆的な電源スイッチ等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)は、
基板と、基板上に配置される電極と、電極から離間して電極と相対するように配置される脆性部材と、脆性部材の電極と相対する箇所に配置される導電性接着部とを含んで構成されることを特徴とする。
【0015】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)は、更に、
脆性部材と導電性接着部との間に、金属配線又は金属層が配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)は、更に、
電極と導電性接着剤との距離が、0.05~0.1mmであることを特徴とする。
【0017】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)は、更に、
脆性部材が、ラミネート型通信デバイスの厚み方向の外部押圧力を受けて脆性破壊することで、電極と導電性接着部とが、不可逆的に電気的に接合することを特徴とする。
【0018】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)は、更に、
脆性部材が、ラミネート型通信デバイスの厚み方向の外部押圧力を受けて脆性破壊することで、電極と導電性接着部と金属配線又は金属層とが、不可逆的に電気的に接合することを特徴とする。
【0019】
本発明の別の構造であるラミネート型通信デバイス用スイッチ(2)は、
基板と、基板上に配置される電極と、電極から離間して電極と相対するように配置される脆性部材と、電極上に配置される導電性接着部と、脆性部材の電極側に配置される金属配線又は金属層とを含んで構成されることを特徴とする。
【0020】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(2)は、更に、
金属配線又は金属層と導電性接着剤との距離が、0.05~0.1mmであることを特徴とする。
【0021】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(2)は、更に、
脆性部材が、ラミネート型通信デバイスの厚み方向の外部押圧力を受けて脆性破壊することで、電極と導電性接着部と金属配線又は金属層とが、不可逆的に電気的に接合することを特徴とする。
【0022】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)(2)は、更に、
脆性部材がセラミックであることを特徴とする。
【0023】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)(2)は、更に、
脆性部材が、ラミネート型通信デバイスの厚み方向の外部押圧力を受けて脆性破壊しやすいように、厚み方向に、切り抜き、貫通孔、溝、切り込みのいずれかを有することを特徴とする。
【0024】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)(2)は、更に、
導電性接着部が、導電性接着シートであることを特徴とする。
【0025】
本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)(2)は、更に、
基板が配置されていない側のラミネートフィルム表面上に、導電性接着部の押下用部材が配置されていることを特徴とする。
【0026】
本発明のラミネート型通信デバイスは、
上記ラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)又は(2)を搭載したことを特徴とする。
【0027】
本発明のラミネート型通信デバイスは、更に、
上記ラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)又は(2)と、可逆的なプッシュスイッチとの両方を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチは、ラミネート後は通電しておらず、その後の外部押圧力によって、不可逆的に通電することができるという効果を有する。また、本発明の本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチは、構造上、弾性メタルドームを用いていないので、外見上もデバイス表面に弾性メタルドームに由来する凹凸が現れないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態におけるラミネート型通信デバイス用スイッチ1を含む全体構造であるラミネート型通信デバイス(1)を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるラミネート型通信デバイス用スイッチ1を含む全体構造であるラミネート型通信デバイス(2)を説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)の断面図(スイッチを押す前の状態)を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態におけるラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)の断面図(スイッチを押した後の状態)を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態におけるラミネート型通信デバイス用スイッチ(2)の断面図(スイッチを押す前の状態)を説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態におけるラミネート型通信デバイス用スイッチ(2)の断面図(スイッチを押した後の状態)を説明する図である。
【
図7】本発明の第1実施形態における脆性部材40の構造例(1)について説明する図である。
【
図8】本発明の第2実施形態における脆性部材40の構造例(2)について説明する図である。
【
図9】本発明の第3実施形態における脆性部材40の構造例(3)について説明する図である。
【
図10】本発明の第4実施形態における脆性部材40の構造例(4)について説明する図である。
【
図11】本発明の第5実施形態における脆性部材40の構造例(5)について説明する図である。
【
図12】本発明の一実施形態におけるラミネート型通信デバイス用スイッチ(1)の断面図(スイッチを押す前の状態)において押下用部材70の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。しかし、以下の説明は、本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0031】
(ラミネート型通信デバイス)
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るラミネート型通信デバイススイッチ1を含む全体構造であるラミネート型通信デバイス100を説明する。
【0032】
図1は、ラミネート型通信デバイス100のラミネート加工前の状態を説明する図である。ラミネート型通信デバイス100の内部は、集積回路5とフィルム型電池3及びそれを電気的に接続する金属配線4を含んで構成される。この金属配線4の途中には、ラミネート型通信デバイススイッチ1が設けられている。言い換えると、金属配線4の第1の部分と、金属配線4の第2の部分とが、ラミネート型通信デバイススイッチ1を介して接続されている。その上で、全体をラミネート加工することにより、ラミネート型通信デバイス100が製造される。なお、ラミネート型通信デバイススイッチ1が設けられる位置は、金属配線4だけでなく、集積回路5内の適当な位置など、適宜設計することができる。
【0033】
ラミネート型通信デバイススイッチ1が設けられることにより、ラミネート型通信デバイス100は、出荷時には通電しない状態となっており、使用開始時にスイッチを押圧することによって初めて通電することが可能となる。このラミネート型通信デバイススイッチ1は、不可逆的なスイッチであり、後述するように、いったん押圧して通電させた後は、その後も通電状態を維持し続け、通電状態を解除することはできない。
【0034】
ラミネート型通信デバイス100には、通信機能が備えられている。通信機能は、例えば、ブルートゥース(近距離無線通信)技術、LPWA、Wifiを用いたビーコン信号などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、光や超音波などを用いた通信機能も含まれる。
【0035】
ラミネート型通信デバイス100には、適宜、GPSや加速度センサなどその他の機能が付与されていてもよい。
【0036】
ラミネート型通信デバイス100のサイズは、クレジットカードのサイズ(国際規格ISO/IEC7810)の他、縦長サイズなど適宜のサイズを採ることができる。その厚みは、特に制限はないが、2.54mm以下、好ましくは0.76mm以下である。固さは、独立して平面形状を維持できるもののほか、柔軟性を持たせたフィルム状であってもよい。
【0037】
本発明におけるラミネート型には、複数の材料を貼り合わせて積層させる加工を経て製造されるものの他、ディッピングや注型という一般的にはラミネート加工とは呼ばれないものであっても、ラミネート加工と同程度に薄く加工されるものも含まれる。
【0038】
図2は、別形態のラミネート型通信デバイス100を説明する図である。すなわち、ラミネート型通信デバイススイッチ1と並列して、可逆プッシュスイッチ2が設けられている。本図に示す例において、金属配線4が分岐し、一方の分岐にラミネート型通信デバイススイッチ1が配置され、他方の分岐に可逆プッシュスイッチ2が配置されている。ただし、金属配線4とは別に、金属配線4に並列な配線が設けられ、当該並列な配線に可逆プッシュスイッチ2が配置されていてもよい。
【0039】
ラミネート型通信デバイス100の出荷前においては、デバイスが適切に作動するか一時的に通電して作動チェックすることが求められる。しかしながら、上述の通り、ラミネート型通信デバイススイッチ1は、不可逆的なスイッチであり、作動チェック時に通電させることはできない。
【0040】
そこで、ラミネート型通信デバイススイッチ1と並列して、可逆プッシュスイッチ2を設けることで、一時的に通電して作動チェックすることが可能となる。すなわち、可逆プッシュスイッチ2は、作動チェックが終わった後、通電を解除することができる。
【0041】
このような可逆プッシュスイッチ2は、例えば弾性ドームスイッチを用いたシートスイッチなど公知のスイッチを用いることができる。
【0042】
(ラミネート型通信デバイススイッチ1)
図3は、本発明の実施形態に係るラミネート型通信デバイススイッチ1の断面図(スイッチを押す前の状態)を説明する図である。
【0043】
ラミネート型通信デバイススイッチ1は、基板20上に設けられた電極30と、電極30から離間して、すなわち、スペース60を確保しつつ、配置される脆性部材40と、脆性部材40の電極30と相対する箇所に配置された導電性接着部50とを含む構造を有する。スペース60は、スペーサー90を設けることによって確保される。
【0044】
基板20としては、特に限定はなく、プリント配線基板など公知のものが用いられる。その種類としても、リジッド基板、フレキシブル基板など特に限定されるものではない。フレキシブル基板のベースフィルムとしては、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などが挙げられる。
【0045】
電極30を構成する電極a31と電極b32とは、電気的に離間して配置されている。本図に示す例において、電極a31と電極b32は、基板20の同一面に、物理的に離間している。また、電極30と導電性接着部50についても、脆性部材40によって電気的に離間している。電極30と導電性接着部50との距離については、0.05~0.1mmが好ましい。この距離は、スペーサー90の高さを変えることによって調整することができる。
【0046】
脆性部材40及び導電性接着部50は、電極a31と電極b32の双方を覆うように設けられている。導電性接着部50は、電極a31と電極b32との両方に接着し、両者を継続的に電気的に接続させるものであれば何でもよく、公知の導電性接着剤が用いられる。導電性接着部50は、好ましくは、導電性接着シートである。
【0047】
脆性部材40と導電性接着部50との間に、金属配線又は金属層80が配置されていてもよい。この金属配線又は金属層80が配置されることにより、後述するようにスイッチを押した後の状態の通電状態をより良好にすることができる。
【0048】
ラミネート型通信デバイススイッチ1は、
図3、
図4に示すように、その厚み方向の充分な外部押圧力300がかけられることにより、スイッチがオンになる。この機構を以下に説明する。
【0049】
図4は、本発明の実施形態に係るラミネート型通信デバイススイッチ1の断面図(スイッチを押した後の状態)を説明する図である。
【0050】
外部押圧力300によって脆性部材40の一部が脆性破壊し、これにより電極30と導電性接着部50とが付着する。この際、導電性接着部50は、少なくとも電極a31と電極b32と重なる領域では電気的に導通した状態を維持する。これにより、当初は電気的に離間していた電極a31と電極b32とが電気的に接続され、ラミネート型通信デバイススイッチ1がオンになる。
【0051】
脆性部材40と導電性接着部50との間に、金属配線又は金属層80が配置されている場合は、外部押圧力300によって脆性部材40の一部が金属配線又は金属層80及び導電性接着部50と一体となって脆性破壊し、金属配線80と導電性接着部50とが電極30に付着する。これにより、当初は電気的に離間していた電極a31と電極b32とが電気的に接続され、ラミネート型通信デバイススイッチ1がオンになる。
【0052】
金属配線又は金属層80がない構造であっても、導電性接着部50には導電性があるので、電極a31と電極b32とは電気的に接続される。しかし、導電性接着部50は、平面方向の導電性が不十分な場合もある。そこで、金属配線又は金属層80を設けることで、導電性を高め、電極a31と電極b32との電気的接合性をより良くすることができる。
【0053】
一旦脆性破壊した脆性部材40は元に戻ることはなく、導電性接着部50は、金属配線又は金属層80や電極30に接着し続けるため、ラミネート型通信デバイススイッチ1はオンになった状態が維持される。これにより、不可逆スイッチが実現される。
【0054】
なお、本発明の本発明のラミネート型通信デバイス用スイッチは、構造上、弾性メタルドームを用いていないため、デバイス表面に弾性メタルドームに由来する凹凸が現れて美観を損ねることはない。
【0055】
(ラミネート型通信デバイススイッチ6)
図5は、本発明の実施形態に係るラミネート型通信デバイススイッチ6の断面図(スイッチを押す前の状態)を説明する図である。
【0056】
ラミネート型通信デバイススイッチ6は、基板20上に設けられた電極30と、その上に配置された導電性接着部50と、電極30から離間して、すなわち、スペース60を確保しつつ、配置される脆性部材40と、脆性部材40の電極30側に配置される金属配線又は金属層80とを含む構造を有する。
【0057】
ラミネート型通信デバイススイッチ1との違いは、導電性接着部50が電極30上に配置されている点と、脆性部材40上に金属配線又は金属層80が配置されている点である。
【0058】
図6は、本発明の別の実施形態に係るラミネート型通信デバイススイッチ6の断面図(スイッチを押した後の状態)を説明する図である。脆性部材40の脆性破壊によって電極a31と電極b32とが電気的に接続され、ラミネート型通信デバイススイッチ6がオンになる。
【0059】
(脆性部材40)
脆性部材40は、例えば板状又はシート状の部材である。脆性部材40には、脆性材料が用いられている。脆性材料は、ラミネート型通信デバイススイッチ1、6の厚み方向に外部押圧力がかけられた際に、脆性破壊(破断)するものであればよく、公知の脆性材料を用いることができる。脆性材料の具体例としては、セラミックス、ガラス、ケイ素、硬質の樹脂などが挙げられるが、上記性質を有する材料であればよく、これらに限定されるものではない。
【0060】
脆性部材40は、人が指先で押した程度の力で脆性破壊することが好ましい。あまり脆すぎると、輸送時などちょっとした衝撃で意図せず脆性破壊してしまうことから問題が生じる。他方、脆性破壊させるために工具などが必要となれば、スイッチ操作の簡易さが損なわれてしまう上に、誤操作により基板20など他の箇所を破損する恐れがあり好ましくない。
【0061】
人が指先でラミネート型通信デバイスを押し下げる力(外部押圧力300)は、10N(ニュートン)程度である。このうち、例えばスイッチの大きさが10mm×10mmの正方形であるとした場合は、スイッチ全体にかかる圧力は100kPa程度となる。スイッチに組み込まれる脆性部材40には、スイッチ全体にかかる圧力が集中することから、数十~数百倍の圧力がかかるものと推定される。
【0062】
脆性部材40は、導電性を有していても良い。導電性セラミックスがその例である。その場合、金属配線又は金属層80の機能も備えることになるため、脆性部材40と金属配線又は金属層80とが一体化した部材となる。
【0063】
図7~
図11は、脆性部材40の構造例を示す図である。
【0064】
図7は、脆性部材40の構造例(1)である。脆性部材40は、単純な円盤形状であり、スペーサー90上に脆性部材40が載せられている。スペーサー90は、脆性部材40が脆性破壊されるような外部押圧力300がかかった場合でも破壊されないものであることが好ましい。
【0065】
図8は、脆性部材40の構造例(2)である。脆性部材40はスペーサー90部分も含んだ構造をしている。これにより、スペーサー90を設置する工程を省略することができる。
【0066】
脆性部材40は、必要に応じて、ラミネート型通信デバイス1の厚み方向の外部押圧力を受けて脆性破壊しやすいように、厚み方向に、切り抜き、貫通孔、溝、切り込みのいずれかを有していてもよい。
このような構造は、レーザー加工や金型による成型など公知の方法によって製造される他、脆性部材40としてケイ素を用いる場合には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスによって製造することも可能である。
【0067】
図9は、脆性部材40の構造例(3)として、導電性接着部50が配置されている脆性部材40の箇所が、切り抜き44で周囲を切り抜かれており、ブリッジ43において一部のみ固定されている脆性部材40を図示している。
【0068】
図10は、脆性部材40の構造例(4)として、導電性接着部50が配置されている脆性部材40の箇所が、多数の貫通孔45によって周囲をミシン目状に切り抜かれている脆性部材40を図示している。この場合は、脆性部材40として、セラミックス、ガラス、ケイ素に加えて、硬質の樹脂をより好適に使用することができる。
【0069】
図11は、脆性部材40の構造例(5)として、導電性接着部50が配置されている脆性部材40の箇所が、切り込み46によって周囲に切り込みを設けられた脆性部材40を図示している。
【0070】
脆性部材40の上記構造(3)~(5)により、ラミネート型通信デバイススイッチ1の厚み方向に外部押圧力がかけられた際に、脆性破壊が起きて、電極30と導電性接着部50とが電気的に接続しやすくなる。
【0071】
(押下用部材70)
ラミネート型通信デバイススイッチ1は、小型化されることが想定される。その際、外部押圧力300が指先で与えられても、圧力のかかる範囲が広いために、十分な強度と局所性をもってスイッチを押圧できないこともあり得る。
【0072】
そのような場合であっても、
図10に示した通り、ラミネート型通信デバイススイッチ1を確実にオンにするために、押下用部材70をラミネートフィルム10上の導電性接着部50に対応する箇所に配置しておくこともできる。この押下用部材70を指先で押下げることにより、適切な強度と局所性をもって確実にスイッチをオンにすることができる。
【0073】
なお、この押下用部材70は、ラミネートフィルム10上に一時的に配置されているだけで、使用後は剥がして破棄することもできる。
【符号の説明】
【0074】
1、6 ラミネート型通信デバイススイッチ
2 可逆的プッシュスイッチ
3 フィルム型電池
4 金属配線
5 集積回路
10 ラミネートフィルム
20 基板
30 電極
31 電極a
32 電極b
40 脆性部材
41 脆性破断した脆性部材
42 脆性部材破断部
43 ブリッジ
44 切り抜き
45 貫通孔
46 切り込み
50 導電性接着部
60 スペース
70 押下用部材
80 金属配線又は金属層
90 スペーサー
100 ラミネート型通信デバイス
300 外部押圧力